(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240527BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20240527BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/54
(21)【出願番号】P 2021039390
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
(72)【発明者】
【氏名】増田 修
(72)【発明者】
【氏名】松村 一輝
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212301(JP,A)
【文献】特開2020-150097(JP,A)
【文献】特開2020-113537(JP,A)
【文献】特開2021-009898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095971(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111048647(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装された発光素子と、
前記発光素子に近接して配置される配線パターンと、
前記配線パターンに両端が接続され、前記発光素子を挟んで配置される
一対のワイヤである一対の薄膜ワイヤと、
基板から前記一対の薄膜ワイヤのそれぞれに向かって起立して配置される一対の薄膜と、
前記発光素子から出射された出射光を変換し、前記出射光と波長が異なる光を放射する蛍光体を含有し、前記一対の薄膜の間に配置された蛍光体樹脂と、
前記発光素子、前記一対の薄膜ワイヤ及び前記蛍光体樹脂を封止する封止樹脂と、を有し、
前記一対の薄膜ワイヤは、前記基板を平面視したときに前記発光素子と重畳しないように配置される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子のアノードに電気的に接続されるアノード電極と、
前記発光素子のカソードに電気的に接続されるカソード電極と、
を更に有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記一対の薄膜ワイヤは、前記アノード電極及び前記カソード電極の何れとも電気的に接続されない、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記一対の薄膜ワイヤは、前記アノード電極及び前記カソード電極の何れかに電気的に接続される、請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子のアノードと前記アノード電極との間を電気的に接続するアノードワイヤと、
前記発光素子のカソードと前記カソード電極との間を電気的に接続するカソードワイヤと、
を更に有する、請求項2~4の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
平面視したときに前記一対の薄膜ワイヤの延伸方向に直交する方向に延伸し且つ前記発光素子と重畳しないように配置される一対の薄膜ワイヤを更に有する、請求項1~5の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記薄膜ワイヤの端部が配置された島パターンを更に有する、請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
島パターンの高さは、前記発光素子の高さよりも低い、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記薄膜ワイヤは、隣接して配置される一対の前記発光素子の対向する辺
の内側に位置する部分の少なくとも一部が前記発光素子の表面よりも高い、請求項1~8の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記薄膜ワイヤは、隣接して配置される一対の前記発光素子の対向する辺
の内側に位置する部分が全体に亘って前記発光素子の表面よりも高い、請求項1~8の何れか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)を発光素子として使用する発光装置において、ボンディングワイヤとも称される金属線から基台の主面、パターン配線及び発光素子までを覆う透明樹脂を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される技術は、透明樹脂によって基台の主面、パターン配線、発光素子及び金属線を覆うことで、金属線における封止材の熱による膨張及び収縮による断線が抑制され、発光装置の耐ヒートサイクル性を向上させることができる。
【0003】
また、蛍光体が混合された液体を発光素子に噴霧した後に、噴霧された液体を気化することで、発光素子の表面及び側面に蛍光体を配置する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載される技術では、発光素子の表面及び側面に蛍光体が配置されるので、放熱特性が高くすることができると共に、均一性が高い光を放射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-145711号公報
【文献】特開2020-113717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載される技術により発光装置を製造するとき、蛍光体を含有する液体は、発光素子に噴霧された後に流動し、発光素子の周囲の基板上に拡散するおそれがある。蛍光体を含有する液体が基板上に拡散すると、発光素子の表面及び側面に配置される蛍光体の量が減少するため、発光装置から出射される光の色度は、所望の色度からずれるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、発光素子の周囲に所望の量の蛍光体を配置可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、基板と、基板に実装された発光素子と、発光素子に近接して配置される配線パターンと、配線パターンに両端が接続され、発光素子を挟んで配置される一対の薄膜ワイヤと、基板から一対の薄膜ワイヤのそれぞれに向かって起立して配置される一対の薄膜と、発光素子から出射された出射光を変換し、出射光と波長が異なる光を放射する蛍光体を含有し、一対の薄膜の間に配置された蛍光体樹脂と、発光素子、一対の薄膜ワイヤ及び蛍光体樹脂を封止する封止樹脂と、を有し、一対の薄膜ワイヤは、基板を平面視したときに発光素子と重畳しないように配置される。
【0008】
さらに、本発明に係る発光装置では、発光素子のアノードに電気的に接続されるアノード電極と、発光素子のカソードに電気的に接続されるカソード電極とを更に有することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る発光装置では、一対の薄膜ワイヤは、アノード電極及びカソード電極の何れとも電気的に接続されないことが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る発光装置では、一対の薄膜ワイヤは、アノード電極及びカソード電極の何れかに電気的に接続されることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る発光装置では、発光素子のアノードとアノード電極との間を電気的に接続するアノードワイヤと、発光素子のカソードとカソード電極との間を電気的に接続するカソードワイヤとを更に有することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る発光装置では、平面視したときに一対の薄膜ワイヤの延伸方向に直交する方向に延伸し且つ発光素子と重畳しないように配置される一対の薄膜ワイヤを更に有することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る発光装置は、薄膜ワイヤの端部が配置された島パターンを更に有することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る発光装置では、島パターンの高さは、発光素子の高さよりも低いことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る発光装置では、薄膜ワイヤは、隣接して配置される一対の発光素子の対向する辺に含まれる部分の少なくとも一部が発光素子の表面よりも高いことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る発光装置では、薄膜ワイヤは、隣接して配置される一対の発光素子の対向する辺に含まれる部分が全体に亘って発光素子の表面よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発光装置は、発光素子の周囲に所望の量の蛍光体を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は第1実施形態に係る発光装置の平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図2】
図1に示す発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示すS101の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図4】
図2に示すS102の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図5】
図2に示すS103の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図6】
図2に示すS104の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図7】
図2に示すS105の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図8】
図2に示すS106の処理が実行された状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図9】(a)は第2実施形態に係る発光装置の平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図10】(a)は第3実施形態に係る発光装置の平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る発光装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
(第1実施形態に係る発光装置の構成および機能)
図1(a)は第1実施形態に係る発光装置の平面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、
図1(c)は
図1(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、
図1(d)は
図1(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【0021】
発光装置1は、基板10と、発光素子11と、複数のアノードワイヤ12と、複数のカソードワイヤ13と、複数の第1薄膜ワイヤ14と、複数の第2薄膜ワイヤ15と、複数の薄膜16と、蛍光体樹脂17と、封止樹脂18と、ダム材19とを有する。発光装置1は、発光素子11から出射された光、並びに蛍光体樹脂17に含有される蛍光体及び封止樹脂18に含有される蛍光体から出射された光を混色して、発光領域20から出射する。
【0022】
基板10は、長方形状の平面形状を有するアルミニウム等の金属基板である。なお、基板10は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で形成されたプリント基板(Printed Circuit Board、PCB)でもよく、セラミック基板であってもよい。基板10の表面には、第1アノード電極21、第2アノード電極22、第1カソード電極23及び第2カソード電極24が配置される。また、基板10の表面には、複数の第1配線パターン25a~25g、複数の第2配線パターン26a~26e及び複数のダミー配線パターン27a~27cを更に有する。
【0023】
第1アノード電極21、第2アノード電極22、第1カソード電極23及び第2カソード電極24並びに第1配線パターン25a~25g複数の第2配線パターン26a~26e及び複数のダミー配線パターン27a~27cは、銅等の導電性部材で形成され、発光素子11に近接して配置される。第1アノード電極21及び第2アノード電極22は、基板10の長手方向の一端の近傍に配置され、一部がダム材19から露出する。また、第1カソード電極23及び第2カソード電極24は、基板10の長手方向の他端の近傍に配置され、一部がダム材19から露出する。第1アノード電極21、第2アノード電極22、第1カソード電極23及び第2カソード電極24は、不図示の外部電源から電力が供給可能な配線等の導電体が配置される。
【0024】
第1アノード電極21は、発光素子11、アノードワイヤ12、カソードワイヤ13、第1薄膜ワイヤ14、第2薄膜ワイヤ15及び第1配線パターン25a~25gを介して第1カソード電極23に電気的に接続される。第2アノード電極22は、発光素子11、アノードワイヤ12、カソードワイヤ13、第2薄膜ワイヤ15及び第2配線パターン26a~26eを介して第2カソード電極24に電気的に接続される。
【0025】
8個の発光素子11のそれぞれは、矩形の平面形状を有する青色LEDダイであり、基板10の長手方向に沿って配列されると共に、4個ずつ直列接続される。4個ずつ直列接続される発光素子を含む一対の発光素子群に含まれる発光素子11は、交互に配置される。発光素子11を含む発光素子群の一方は第1アノード電極21と第1カソード電極23との間に直列接続され、発光素子11を含む発光素子群の他方は第2アノード電極22と第2カソード電極24との間に直列接続される。
【0026】
発光素子11のそれぞれは、第1アノード電極21と第1カソード電極23との間、及び第2アノード電極22と第2カソード電極24との間にしきい値電圧が印加されることに応じて青色の光を出射する。発光素子11から出射される青色の光の主波長は、445nmと495nmとの間の範囲内であり、一例では450nmである。第1アノード電極21と第1カソード電極23との間、及び第2アノード電極22と第2カソード電極24との間に印加されるしきい値電圧は、発光素子11の順方向電圧の4倍の電圧である。
【0027】
複数のアノードワイヤ12及び複数のカソードワイヤ13は、金等の導電性部材で形成された線状部材である。複数のアノードワイヤ12のそれぞれは、発光素子11のアノードと、第1配線パターン25a、25c、25e及び25g並びに第2配線パターン26a、26b、26c及び26dのそれぞれとを電気的に接続する。複数のカソードワイヤ13のそれぞれは、発光素子11のカソードと、第1配線パターン25b、25d及び25f並びに第2配線パターン26b、26c、26d及び26eのそれぞれとを電気的に接続する。
【0028】
複数の第1薄膜ワイヤ14及び複数の第2薄膜ワイヤ15は、金等の導電性部材で形成された線状部材であり、発光素子11を挟むように基板10の短手方向及び発光素子11の一対の辺の延伸方向に平行に延伸する。複数の第1薄膜ワイヤ14及び複数の第2薄膜ワイヤ15のそれぞれは、基板10を平面視したときに発光素子11と重畳しないように配置される。
【0029】
第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15は、隣接して配置される一対の発光素子11の対向する辺に含まれる部分が発光素子11の表面よりも高くなる。なお、第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15は、隣接して配置される一対の発光素子11の対向する辺に含まれる部分の少なくとも一部が発光素子11の表面よりも高くなることが好ましい。
【0030】
複数の薄膜16のそれぞれは、アクリル成分、フッ素成分、シリコーン成分等を含有する剛性が蛍光体樹脂17及び封止樹脂18よりも高い材料で形成され、基板10の表面から複数の第1薄膜ワイヤ14及び複数の第2薄膜ワイヤ15のそれぞれに向かって起立して配置される。
【0031】
蛍光体樹脂17は、シリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、蛍光体を含有する。蛍光体樹脂17は、第1アノード電極21と第1カソード電極23との間に電気的に接続された4つの発光素子11の表面及び側面を覆うように配置される。蛍光体樹脂17の基板10の短手方向の両端はダム材19によって保持され、蛍光体樹脂17の基板10の長手方向の両端は薄膜16によって保持される。
【0032】
蛍光体樹脂17に含有される蛍光体は、発光素子11から出射された青色の出射光を変換して発光素子11から出射された青色の出射光の波長と異なる波長の黄色の光を放射する。蛍光体樹脂17に含有される蛍光体は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet、YAG)である。蛍光体樹脂17に含有される蛍光体から出射される黄色の光の主波長は、第1波長と異なる第2波長の一例であり、525nmと575nmとの間の範囲内であり、一例では550nmである。
【0033】
封止樹脂18は、蛍光体樹脂17と同様にシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、蛍光体及びフィラーを含有する。封止樹脂18は、第2アノード電極22と第2カソード電極24との間に電気的に接続された4つの発光素子11の表面及び側面を覆うように配置されると共に、発光素子11~複数の第2薄膜ワイヤ15を封止する封止樹脂である。
【0034】
封止樹脂18に含有される蛍光体は、発光素子11から出射された青色の出射光を変換して発光素子11から出射された青色の出射光の波長と異なる波長の黄色の光を放射する。封止樹脂18に含有される蛍光体は、蛍光体樹脂17に含有される蛍光体と同様に、例えばSCASNである。蛍光体樹脂17に含有される蛍光体から出射される黄色の光の主波長は、第1波長と異なる第2波長の一例であり、600nmと650nmとの間の範囲内であり、一例では620nmである。
【0035】
封止樹脂18に含有されるフィラーは、発光素子11から出射された光並びに蛍光体樹脂17及び封止樹脂18に含有される蛍光体から出射された光を拡散する拡散材であり、例えばシリカである。発光装置1は、発光素子11から出射された青色の光と、蛍光体樹脂17及び封止樹脂18に含有される蛍光体から出射された黄色の光とを封止樹脂18に含有されるフィラーによって混色することで白色の光を上方に出射する。
【0036】
発光装置1は、第1アノード電極21と第1カソード電極23との間にしきい値電圧が印加され、第2アノード電極22と第2カソード電極24との間にしきい値電圧が印加されないとき、例えば色温度3500Kである暖色の光を出射する。また、発光装置1は、第2アノード電極22と第2カソード電極24との間にしきい値電圧が印加され、第1アノード電極21と第1カソード電極23との間にしきい値電圧が印加されないとき、例えば色温度6500Kである寒色の光を出射する。
【0037】
ダム材19は、酸化チタン(TiO2)等の白色の粒子が含有されたシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、発光領域20の周囲を囲むように配置される。発光素子11から出射された光の一部は、反射面13aに反射して発光装置1の上方に出射される。
【0038】
図2は発光装置1の製造方法を示すフローチャートである。
図3は
図2に示すS101の処理が実行された状態を示し、
図4は
図2に示すS102の処理が実行された状態を示し、
図5は
図2に示すS103の処理が実行された状態を示す。
図6は
図2に示すS104の処理が実行された状態を示し、
図7は
図2に示すS105の処理が実行された状態を示し、
図8は
図2に示すS106の処理が実行された状態を示す。
図3~8において、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、(c)は(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、(d)は(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
図2~8に示す製造方法は、コンピュータの記憶装置に予め記憶されているプログラムに基づいて、CPU等のコンピュータの制御回路により製造装置の各要素と協働して実行される。
【0039】
まず、基板準備工程において、基板10が準備される(S101)。基板10の表面には、第1アノード電極21、第2アノード電極22、第1カソード電極23及び第2カソード電極24並びに第1配線パターン25a~25g、第2配線パターン26a~26e及びダミー配線パターン27a~27cが配置される。
【0040】
次いで、実装工程において、基板10の発光領域20に8個の発光素子11が実装される(S102)。8個の発光素子11のそれぞれは、発光領域20の所定の位置にボンディング材により接着される。8個の発光素子11は、基板10の長手方向に沿って均等の配置ピッチで配列される。
【0041】
次いで、ワイヤボンディング工程において、発光素子11、第1アノード電極21~第2カソード電極24並びに第1配線パターン25a~25g、第2配線パターン26a~26e及びダミー配線パターン27a~27cの間を電気的に接続する(S103)。発光素子11は、アノードワイヤ12及びカソードワイヤ13によって第1配線パターン25a~25g及び第2配線パターン26a~26eに結線される。第1アノード電極21~第2カソード電極24並びに第1配線パターン25a~25g、第2配線パターン26a~26e及びダミー配線パターン27a~27cは、複数の第1薄膜ワイヤ14及び複数の第2薄膜ワイヤ15によって結成される。
【0042】
次いで、ダム材形成工程において、発光領域20を囲むように、ダム材19が形成される(S104)。まず、ダム材19の原料である樹脂が発光領域20の周囲に枠状に塗布される。次いで、ダム材19の原料を固化することで、ダム材19が形成される。
【0043】
次いで、薄膜形成工程において、複数の薄膜16が基板10の表面から第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15のそれぞれに向かって起立して配置するように形成される(S105)。まず、複数の薄膜16の原料が混合された液体をダム材19によって囲まれた発光領域20に充填する。次いで、発光領域20に充填された液体を気化することで、複数の薄膜16が基板10の表面と複数の第1薄膜ワイヤ14及び複数の第2薄膜ワイヤ15との間に形成される。
【0044】
次いで、蛍光体樹脂配置工程において、蛍光体樹脂17が第1アノード電極21及び第1カソード電極23に電気的に接続された4個の発光素子11を覆うように配置される(S106)。まず、蛍光体樹脂17の原料である樹脂を、第1アノード電極21及び第1カソード電極23に電気的に接続された4個の発光素子11に塗布する。蛍光体樹脂17の原料である樹脂は、一対のワイヤである第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15並びにダム材19に囲まれた領域に塗布される。次いで、蛍光体樹脂17の原料である樹脂が固化されることで、蛍光体樹脂17は形成される。
【0045】
次いで、封止樹脂配置工程において、封止樹脂18が発光素子11、アノードワイヤ12、カソードワイヤ13、第1薄膜ワイヤ14、第2薄膜ワイヤ15、薄膜16及び蛍光体樹脂17を覆って封止するように配置される(S107)。封止樹脂18の原料である樹脂をダム材19に囲まれた発光領域20の全体に亘って塗布する。次いで、封止樹脂18の原料である樹脂が固化されることで、封止樹脂18は形成される。
【0046】
(第1実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置1では、発光素子11を挟んで配置される一対の薄膜ワイヤである第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15並びにダム材19によって囲まれた領域に蛍光体樹脂17が充填されるので、発光素子11の周囲に所望の量の蛍光体を配置することができる。
【0047】
(第2実施形態に係る発光装置の構成および機能)
図9(a)は第2実施形態に係る発光装置の平面図であり、
図9(b)は
図9(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、
図9(c)は
図9(a)に示すB-B線に沿う断面図であり、
図9(d)は
図9(a)に示すC-C線に沿う断面図である。
【0048】
発光装置2は、第1アノード電極31、第2アノード電極32、第1カソード電極33及び第2カソード電極34を第1アノード電極21、第2アノード電極22、第1カソード電極23及び第2カソード電極24の代わりに有することが発光装置1と相違する。また、発光装置2は、ダミー配線パターン35a~35rを複数の第2配線パターン26a~26e及び複数のダミー配線パターン27a~27cの代わりに有することが発光装置1と相違する。第1アノード電極~第2カソード電極34及びダミー配線パターン35a~35r以外の発光装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された発光装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
第1アノード電極31、第2アノード電極32、第1カソード電極33及び第2カソード電極34のそれぞれは、基板10の長手方向に向かって延伸する短冊形の延伸部を有し、第1アノード電極31、第2アノード電極32、第1カソード電極33及び第2カソード電極34のそれぞれの延伸部は、ダム材19の下方に位置する。第1アノード電極31の延伸部は、蛍光体樹脂17に表面及び側面が覆われた4個の発光素子11のアノードにアノードワイヤ12を介して電気的に接続される。第1カソード電極33の延伸部は、蛍光体樹脂17に表面及び側面が覆われた4個の発光素子11のカソードにカソードワイヤ13を介して電気的に接続される。第2アノード電極32の延伸部は、蛍光体樹脂17に表面及び側面が覆われない4個の発光素子11のアノードにアノードワイヤ12を介して電気的に接続される。第2カソード電極34の延伸部は、蛍光体樹脂17に表面及び側面が覆われない4個の発光素子11のカソードにカソードワイヤ13を介して電気的に接続される。
【0050】
ダミー配線パターン35a、35c、35e、35g及び35iは、第2薄膜ワイヤ15を介して、ダミー配線パターン35j、35l、35n、35p及び35rに接続される。また、ダミー配線パターン35b、35d、35f及び35hは、第1薄膜ワイヤ14を介して、ダミー配線パターン35k、35m、35o及び35qに接続される。
【0051】
発光装置2では、第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15は、第1アノード電極31、第2アノード電極32、第1カソード電極33及び第2カソード電極34の何れにも電気的に接続されない。第1薄膜ワイヤ14及び第2薄膜ワイヤ15の両端は、ダミー配線パターン35a~35rのそれぞれに接続される。
【0052】
(第3実施形態に係る発光装置の構成および機能)
図10(a)は第3実施形態に係る発光装置の平面図であり、
図10(b)は
図10(a)に示すA-A線に沿う断面図であり、
図10(c)は
図10(a)に示すB-B線に沿う断面図である。
図10(d)は、
図10(a)に示す発光装置における発光素子11と第1島パターン41及び第1薄膜ワイヤ44との位置関係を示す図である。
図10(e)は、
図10(a)に示す発光装置における発光素子11と第1島パターン41及び第1薄膜ワイヤ44との位置関係の変形例を示す図である。
【0053】
発光装置3は、基板40、第1薄膜ワイヤ44、第2薄膜ワイヤ45及びダム材49を基板10、第1薄膜ワイヤ14、第2薄膜ワイヤ15及びダム材19の代わりに有することが発光装置1と相違する。また、発光装置3は、複数の第1島パターン41、複数の第2島パターン42及び接続配線パターン43を有することが発光装置1と相違する。また、発光装置3は、第1アノード電極51、第2アノード電極52、第1カソード電極53及び第2カソード電極54を第1アノード電極21~第2カソード電極24の代わりに有することが発光装置1と相違する。また、発光装置3は、発光素子11の数が発光装置1と相違する。発光素子11の数、基板40~第2薄膜ワイヤ45、ダム材49及び第1アノード電極51~第2カソード電極54以外の発光装置3の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された発光装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0054】
基板40は、長方形状ではなく正方形状の平面形状を有することが基板10と相違する。平面形状以外の基板40の構成及び機能は、基板10の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0055】
4個の第1島パターン41及び8個の複数の第2島パターン42は、ボンディングワイヤがワイヤボンディング処理により接続可能な銅等の導電性部材により形成され、基板40の中央部に形成される発光領域50に配置される。なお、第1島パターン41及び第2島パターン42は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で形成されたプリント基板でもよく、セラミック基板であってもよい。第1島パターン41及び第2島パターン42が絶縁性材料で形成されるとき、第1島パターン41及び第2島パターン42は、発光領域50の所定の位置にボンディング材により接着される。また、第1島パターン41及び第2島パターン42が絶縁性で形成されるとき、第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45は、第1島パターン41及び第2島パターン42の上面に配置される導電性の接続パターンを介して接続される。
【0056】
4個の第1島パターン41のそれぞれは、4個の発光素子11に囲まれるように配置され、第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45の一端が配置される。8個の複数の第2島パターン42は、発光領域50の外縁に沿って配置され、第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45の一端が配置される。第1島パターン41及び第2島パターン42の高さは、発光素子11の高さよりも低い。
【0057】
なお、第1島パターン41及び第2島パターン42の高さは、発光素子11の高さと同一であってもよく、第1島パターン41及び第2島パターン42の高さは、発光素子11の高さよりも高くてもよい。しかしながら、第1島パターン41及び第2島パターン42の高さが高くなると発光素子11から出射された光を遮蔽するおそれがあるため、第1島パターン41及び第2島パターン42の高さは、発光素子11の高さよりも低いことが好ましい。
【0058】
接続配線パターン43は、銅等の導電性部材で形成され、ダム材49の下方に配置される。接続配線パターン43は、発光素子11の間を電気的に接続する。第1薄膜ワイヤ44は平面視したときに基板40の一辺の延伸方向に平行な方向に延伸するように配置され、第2薄膜ワイヤ45は平面視したときに第1薄膜ワイヤ44の延伸方向に直交する方向に延伸するように配置される。第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45は、蛍光体樹脂17を囲むように配置される。
【0059】
第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45は、隣接して配置される一対の発光素子11の対向する辺に含まれる部分が発光素子11の表面よりも高くなる。なお、第1薄膜ワイヤ44及び第2薄膜ワイヤ45は、隣接して配置される一対の発光素子11の対向する辺に含まれる部分の少なくとも一部が発光素子11の表面よりも高くなることが好ましい。
【0060】
第1アノード電極51と第1カソード電極53との間には、アノードワイヤ12及びカソードワイヤ13を介して4個の発光素子11が電気的に接続される。第2アノード電極52と第2カソード電極54との間には、アノードワイヤ12及びカソードワイヤ13並びに接続配線パターン43を介して5個の発光素子11が電気的に接続される。
【0061】
(実施形態に係る発光装置の変形例)
発光装置1及び2では、8個の発光素子11が基板10の長手方向に配列されるが、実施形態に係る発光装置では、7個以下又は9個以上の発光素子11が基板10の長手方向に配列されてもよい。また、発光装置1及び2では、8個の発光素子11は、1列で配列されるが、実施形態に係る発光装置では、2列以上で配列されてもよい。
【0062】
また、発光装置1~3では、二対のアノード電極及びカソード電極が配置されるが、実施形態に係る発光装置では、一対のアノード電極及びカソード電極が配置されてもよく、三対以上のアノード電極及びカソード電極が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1~3 発光装置
10、40 基板
11 発光素子
12 アノードワイヤ
13 カソードワイヤ
14、44 第1薄膜ワイヤ
15、45 第2薄膜ワイヤ
16 薄膜
17 蛍光体樹脂
18 封止樹脂
19、49 ダム材