(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ピーニング装置
(51)【国際特許分類】
B24C 3/12 20060101AFI20240527BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20240527BHJP
B24C 1/10 20060101ALI20240527BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20240527BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20240527BHJP
B24C 3/18 20060101ALI20240527BHJP
B24C 3/22 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B24C3/12
B24C9/00 L
B24C1/10 Z
B24C5/02 C
B24C5/04 Z
B24C5/04 A
B24C3/18
B24C3/22
(21)【出願番号】P 2021150193
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】松井 大貴
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093382(JP,A)
【文献】特開2002-113663(JP,A)
【文献】特開2001-179143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 3/12
B24C 9/00
B24C 1/10
B24C 5/02
B24C 5/04
B24C 3/18
B24C 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口を有し、研磨粒子と処理液を貯留し、前記研磨粒子を前記処理液によって流動化させる処理槽と、
前記処理槽内に配置され、ワークを載置するテーブルと、
移動部であって、
ノズル移動装置と、
前記ノズル移動装置に配置されたクイルと、
装着穴を有し、前記クイルの先端部に配置された第1ヘッドと、
前記クイルの基端部に配置されたモータと、
前記モータと接続される第1スピンドルであって、前記装着穴から露出して、前記第1ヘッド内に鉛直軸周りに回転可能に設置された第1スピンドルと、
を有する移動部と、
前記移動部に対して分離可能なノズルヘッド部であって、
前記装着穴と接続される接続口を有し、前記第1ヘッドに配置される第2ヘッドと、
前記第2ヘッド内に配置され、前記接続口を介して前記第1スピンドルと接続される接続軸と、
前記接続軸と接続される第2スピンドルであって、前記第2ヘッドで鉛直軸周りに回転可能に配置された第2スピンドルと、
前記第2スピンドルの下方に配置されたノズルと、
前記第2スピンドルの内部を貫通し、前記ノズルに接続されるノズル流路であって、前記第2スピンドルの上端部に開口を有するノズル流路と、
前記第2スピンドルの上端部に配置され、前記ノズル流路に接続されるスイベル接手と、
を有するノズルヘッド部と、
を有する、ピーニング装置。
【請求項2】
前記第1ヘッド内に配置され、前記モータに接続される第1傘歯車と、
前記第1スピンドルに設置され、前記第1傘歯車と噛み合う第2傘歯車と、
を更に有する、請求項1に記載のピーニング装置。
【請求項3】
前記装着穴は、前記第1ヘッドの上方に配置され、
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドの上方に接続される、
請求項1又は2に記載のピーニング装置。
【請求項4】
前記第2ヘッドは内部に、
前記接続軸に配置された原動プーリと、
前記第2スピンドルに配置された従動プーリと、
前記原動プーリと前記従動プーリの間に架けられた無端ベルトと、を有する、
請求項1~3のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項5】
前記第1スピンドルは、先端に、水平方向に延びる第1キー溝を有し、
前記接続軸は、基端に、水平方向に延びる第2キー溝を有し、
前記第1キー溝と前記第2キー溝の間に配置され、前記第1スピンドルから前記接続軸に回転を伝達するキーを更に有する、
請求項1~4のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項6】
前記第2スピンドルの下方に、前記第2スピンドルに沿って延びるノズルホルダを更に有し、
前記ノズルは、前記ノズルホルダの下端部に接続され、
前記ノズルホルダの上端からノズルまでの長さは、前記処理槽の液面から前記ワークの下面までの深さよりも長い、
請求項1~5のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項7】
前記第2スピンドルの下端は、前記第1ヘッドの下端よりも下方に配置される、
請求項1~6のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項8】
前記処理槽は、
前記処理槽の下方に配置された分散室と、
前記分散室の上方に均等に配列され、上方に前記処理液を噴出する複数の流動ノズルと、を有する、
請求項1~7のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項9】
前記分散室は、上面に均等に配列された複数の窪みを有し、
前記流動ノズルは、前記窪みのそれぞれに配置される、
請求項8に記載のピーニング装置。
【請求項10】
前記流動ノズルは、
ボディと、
前記ボディの下端に配置された流入口と、
前記ボディの上端に配置された
噴出口と、
前記噴出口と接続し、前記ボディの中央部に配置された混合室と、
前記ボディの下方部に配置され、前記流入口と接続し、前記混合室に向かって噴出する内部噴口と、
前記窪みの内部に開口し、前記混合室の側面を貫通して前記ボディに配置された粒子吸入口と、を有する、
請求項8又は9に記載のピーニング装置。
【請求項11】
前記テーブルを前記処理槽内の処理液の液面付近から前記処理槽の底部までの間で昇降させる昇降装置であって、
前記テーブルから前記処理槽の上端よりも上方に延びる支柱と、
前記支柱の上端部に配置され、前記支柱から前記処理槽の側方まで延びる連結板と、
前記連結板と接続され、前記処理槽の側方に配置されたシリンダと、を有する昇降装置を更に有する、
請求項1~10のいずれかに記載のピーニング装置。
【請求項12】
前記処理槽の第1側面に配置された第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに回転可能に配置されたテーブル旋回シャフトと、
前記テーブル旋回シャフトと接続され、前記処理槽の外部に配置されたテーブル旋回装置と、
ピンを有し、前記処理槽の内部で、前記テーブル旋回シャフトに接続された第1ブラケットと、
前記処理槽の前記第1側面と反対側の第2側面側の前記処理槽の上方に配置されたガイドレールと、
前記昇降装置に接続され、前記処理槽の内部に配置された第2ハウジングと、
前記ガイドレールに沿って前記テーブルを案内するガイドを有し、前記第2ハウジングに回転可能に配置された第2ブラケットと、を有し、
前記テーブルは、
前記第2ブラケットに接続され、
前記第1側面側に配置され、前記ピンが挿入されるピン穴を有し、
前記昇降装置によって下端まで下りたときに、前記ガイドが前記ガイドレールから切り離され、前記ピン穴が前記ピンに挿入されて、前記第1ブラケットと一体となって前記テーブル旋回装置によって旋回でき、
前記ガイドは、前記ガイドレールに案内されて、前記昇降装置によって上昇する、
請求項11に記載のピーニング装置。
【請求項13】
前記昇降装置が前記テーブルを下降位置まで下ろしたときに、前記ガイドレールの下端は前記第2ブラケットの上端よりも上方に位置し、
前記昇降装置がテーブルを前記下降位置から上昇させたときに、前記ガイドが前記ガイドレールに案内される、
請求項12に記載のピーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造によって製造された金属材料などの試料の表面粗さを改善する方法が提案されている(H. Soyama and D. Sanders, Use of an Abrasive Water Cavitating Jet and Peening Process to Improve the Fatigue Strength of Titanium Alloy 6Al-4V Manufactured by the Electron Beam Powder Bed Melting (EBPB) Additive Manufacturing Method, JOM 71(12), 4311-4318 (2019)、以下、非特許文献1)。非特許文献1の方法では、研磨材と水を入れたタンク内に試料を固定する。そして、タンク内に浸漬させて下方に向けたノズルから、プランジャポンプで加圧した水を試料に噴射する。これにより、試料の表面の残留応力を低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、金属表面処理方法を実行でき、メンテナンスしやすいピーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、
上方に開口を有し、研磨粒子と処理液を貯留し、前記研磨粒子を前記処理液によって流動化させる処理槽と、
前記処理槽内に配置され、ワークを載置するテーブルと、
移動部であって、
ノズル移動装置と、
前記ノズル移動装置に配置されたクイルと、
装着穴を有し、前記クイルの先端部に配置された第1ヘッドと、
前記クイルの基端部に配置されたモータと、
前記モータと接続される第1スピンドルであって、前記装着穴から露出して、前記第1ヘッド内に鉛直軸周りに回転可能に設置された第1スピンドルと、
を有する移動部と、
前記移動部に対して分離可能なノズルヘッド部であって、
前記装着穴と接続される接続口を有し、前記第1ヘッドに配置される第2ヘッドと、
前記第2ヘッド内に配置され、前記接続口を介して前記第1スピンドルと接続される接続軸と、
前記接続軸と接続される第2スピンドルであって、前記第2ヘッドで鉛直軸周りに回転可能に配置された第2スピンドルと、
前記第2スピンドルの下方に配置されたノズルと、
前記第2スピンドルの内部を貫通し、前記ノズルに接続されるノズル流路であって、前記第2スピンドルの上端部に開口を有するノズル流路と、
前記第2スピンドルの上端部に配置され、前記ノズル流路に接続されるスイベル接手と、
を有するノズルヘッド部と、
を有する、ピーニング装置である。
【0005】
クイルは、円形や矩形の断面を有する送り台である。
ピーニング装置は、更に、研磨粒子と処理液の飛散を抑制するカバーを有しても良い。
カバーは、伸縮カバーを含む。伸縮カバーは、例えば、ジャバラやテレスコピックカバーである。クイルは、カバーを貫通して配置される。好ましくは、モータは、処理槽から見てカバーの外部に配置される。
【0006】
ピーニング装置は、クイルの内部にクイルに沿って配置され、モータと接続されるプロペラシャフトを有しても良い。第1傘歯車は、プロペラシャフトに接続される。好ましくは、モータは、サーボモータやステッピングモータである。
接続軸は、第1スピンドルと同軸に配置される。第2スピンドルは、接続軸と平行に、接続軸とオフセットして配置される。第2スピンドルは、例えば、接続軸の先端方向に配置される。原動プーリ、従動プーリは、好ましくは、歯付プーリである。無端ベルトは、好ましくは、歯付ベルトである。
【0007】
シリンダは、例えば、エアシリンダや、電動シリンダである。昇降装置は、直動ガイドを含んで良い。直動ガイドは、例えば、ガイドブッシュとガイドシャフトとの組合せである。ガイドシャフトは、ガイドブッシュ内を摺動する。ガイドブッシュは、処理槽の上方に配置される。好ましくは、ガイドブッシュは、液面の上方に配置される。直動ガイドは、例えば、ボールスプラインや直線ガイドでも良い。
昇降装置がテーブルを昇降する際には、ガイドがガイドレールに案内されて、テーブルの回転が制限される。テーブルが下降位置に達したときに、第1シャフトと第2シャフトの中心軸が一致する。テーブルが下降位置に達したときに、テーブルと、第2ブラケットと、第1ブラケットが一体となって回転できる。
【0008】
テーブル旋回装置は、シリンダやモータである。
ガイドは、例えば、カムシャフトである。ガイドレールは、例えば、カムシャフトが転動するガイド溝を有する。また、ガイドはスライダであり、ガイドレール上を摺動しても良い。好ましくは、ピンがピン穴から外れたときに、ガイドがガイドレールに案内される。
【0009】
第2ブラケットは、支柱の下端部に配置される。昇降装置は、第2ハウジングと、従動軸と、第2ブラケットと、テーブルとを一体として昇降する。第2シャフトは、第2ハウジングに回転可能に配置されても良い。第2ブラケットは、第2シャフトに設置される。
好ましくは、ガイドレールの下端は、処理槽の液面よりも上方に配置される。
【0010】
好ましくは、処理槽は、上方にオーバーフロー口を有する。このとき、処理槽内の処理液の液面は、オーバーフロー口の高さによって定まる。好ましくは、処理槽は、第1返し部や、第2返し部を有する。第1返し部は、処理槽の上方端を囲み、処理槽の内側に延びる。好ましくは、第1返し部は、処理槽の全周を囲む。第1返し部は、水平方向に延びる。第2返し部は、第1返し部の先端部に配置され、下方に延びる。好ましくは、第2返し部は、第1返し部の内周の全周を囲む。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピーニング装置によれば、金属表面処理方法を実行でき、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1及び
図3に示すように、本実施形態のピーニング装置10は、処理槽11と、分散室12と、流動ノズル14と、テーブル21と、カバー63と、移動部49と、ノズルヘッド部61とを有する。ピーニング装置10は、タンク94と、第1ポンプ96と、第2ポンプ95と、昇降装置19とを有しても良い。ここで、
図1は、昇降装置19がテーブル21を下降位置に位置した状態を示す。
【0014】
処理槽11は、胴部11aと、拡大部11bと、オーバーフロー口11cと、第1返し部11dと、第2返し部11eとを有する。胴部11aは、筒状であり、矩形又は円形の横断面を有する。拡大部11bは、胴部11aよりも大きな横断面を有する。拡大部11bは、胴部11aの上方に配置される。胴部11aから拡大部11bへの遷移域において、横断面は徐々に拡大する。オーバーフロー口11cは、拡大部11bの上部に配置される。オーバーフロー口11cの高さが、処理液4の液面15の高さを定める。
第1返し部11dは、処理槽11の上端部に配置され、処理槽11の内周全周を囲む。第1返し部11dは、水平面に配置された平板である。第2返し部11eは、第1返し部11dの内側端部に配置され、第1返し部11dの下方に延びる。第2返し部11eは、第1返し部11dの内周の全周に配置される。
【0015】
分散室12は、処理槽11の下方に配置される。分散室12は、処理槽11の内部の下部に配置されても良い。分散室12は、上面に分散板13aを有する(
図2参照)。分散板13aは、複数のノズル穴13bを有する。ノズル穴13bは、例えば、格子状や千鳥格子状に配列される。ノズル穴13bは、それぞれ雌ねじを有する。各ノズル穴13bには、流動ノズル14が配置される。好ましくは、各ノズル穴13bの周囲に、窪み13cが配置される。
【0016】
図2に示すように、流動ノズル14は、ボディ14aと、流入口14bと、混合室14dと、内部噴口14cと、噴出口14eと、複数の粒子吸入口14fと、取付ねじ14gとを有する。
図2は、ボディ14a及び粒子吸入口14fの中心を通過する平面における流動ノズル14の縦断面図である。ボディ14aは、円筒状であり、先端部がやや細くなっていても良い。取付ねじ14gは、雄ねじである。取付ねじ14gは、ノズル穴13bにねじ込まれる。
【0017】
流入口14bは、ボディ14aの下端に配置される。噴出口14eは、ボディ14aの上端に配置される。噴出口14eは、上方に向けて配置されて良い。噴出口14eは、側方又は下方に向けて配置されても良い。混合室14dは、ボディ14aの中央部を上下方向に延びて、噴出口14eに接続される。
内部噴口14cは、ボディ14aの下方部に配置され、流入口14bと接続される。内部噴口14cは、混合室14dの下端部に配置され、混合室14dに向けて開口する。複数の粒子吸入口14fは、ボディ14aの下方部の側方に、円周方向に均等に配置される。各粒子吸入口14fは、ボディ14aを半径方向に貫通する。粒子吸入口14fは、ボディ14aの半径方向内側が上方に向くように傾斜する。粒子吸入口14fは、窪み13cの内部から、混合室14dの下部に接続する。
【0018】
図1に示すように、テーブル21は、処理槽11の下部に設置される。テーブル21は、ピン22を有しても良い。ピン22は、テーブル21から上方に立てて設置される。ワーク3は、ピン22の上に設置される。ここで、液面15からワーク3の下面までは、深さ28を有する。
【0019】
昇降装置19は、昇降ブラケット23と、シリンダ24とを有する。昇降装置19は、ガイドシャフト25と、ガイドブッシュ27とを有しても良い。昇降ブラケット23は、支柱23aと、連結板23bとを有する。
支柱23aは、テーブル21の上方に設置される。好ましくは、支柱23aは、処理槽11の上端よりも上方まで延びる。連結板23bは、支柱23aの上端部に接続され、処理槽11の側方まで横方向に延びる。シリンダ24は、処理槽11の側方に配置され、連結板23bに接続される。シリンダ24は、伸縮して、テーブル21を上昇位置と下降位置の間で上下させる。上昇位置において、テーブル21は、液面15と実質的に同じ高さか、液面15よりも上方に位置する。下降位置において、テーブル21は、処理槽11の底部に位置する。
【0020】
図3に示すように、移動部49は、ノズル移動装置50と、クイル52と、モータ54と、第1ヘッド53と、第1スピンドル58と、を有する。移動部49は、プロペラシャフト56と、第1傘歯車57と、第2傘歯車60と、ベアリング55,59とを有しても良い。
【0021】
カバー63は、処理槽11の周囲を覆う。カバー63は、伸縮カバーを有する。
図3に示すように、クイル52は、前後方向に延びて、カバー63を貫通する。クイル52は、ノズル移動装置50に配置される。ノズル移動装置50は、処理槽11から見て、カバー63の外側に配置される。ノズル移動装置50は、例えば、移動コラムである。ノズル移動装置50は、クイル52を、左右方向(X)、前後方向(Y)、上下方向(Z)に自在に移動する。
【0022】
モータ54は、クイル52の基端部に配置される。モータ54は、処理槽11から見て、カバー63の外側に配置される。第1ヘッド53は、クイル52の先端部に配置される。第1ヘッド53は、カバー63の内側に配置される。第1ヘッド53は、上部に装着穴53aを有する。
【0023】
プロペラシャフト56は、クイル52の内部で、ベアリング55に支持される。プロペラシャフト56は、前後方向に延びる。プロペラシャフト56の基端部は、モータ54に接続される。第1傘歯車57は、第1ヘッド53の内部で、プロペラシャフト56の先端部に締結される。
【0024】
第1スピンドル58は、第1ヘッド53の内部で、ベアリング59に支持される。第1スピンドル58は、上下方向に延びる。第2傘歯車60は、第1スピンドル58に締結され、第1傘歯車57と噛み合う。第1スピンドル58の上端は、装着穴53aに向かって配置される。第1スピンドル58は、上端面に第1キー溝58aを有する。
【0025】
ノズルヘッド部61は、第2ヘッド65と、接続軸66と、第2スピンドル76と、ノズル90と、ノズル流路87と、スイベル接手81と、を有する。ノズルヘッド部61は、キー68と、原動プーリ69と、従動プーリ70と、無端ベルト71と、チュービングカラー継手83と、ノズルホルダ88と、ベアリング67,77とを有しても良い。
【0026】
第2ヘッド65は、接続口65aを有する。第2ヘッド65は、第1ヘッド53の上方に配置される。第2ヘッド65は、第1ヘッド53の前方に延びる。第2ヘッド65は、スピンドルハウジング75を有しても良い。
接続口65aは、第2ヘッド65の下方に配置され、装着穴53aに接続される。接続口65aは、装着穴53aに嵌合して挿入されても良い。好ましくは、第2ヘッド65は、ピンなどにより第1ヘッド53に位置決めされる。
スピンドルハウジング75は、第1ヘッド53の前方に配置される。スピンドルハウジング75は、第2ヘッド65から下方に延びる。スピンドルハウジング75の下端は、第1ヘッド53の下端と実質的に同一の高さか、その更に下方まで延びる。
【0027】
接続軸66は、第2ヘッド65の内部で、ベアリング67に支持される。接続軸66は、第1スピンドル58と同軸に配置される。接続軸66は、下方端に第2キー溝66aを有する。
【0028】
キー68は、第2キー溝66aに締結される。キー68は、第1キー溝58aに挿入されて、第1スピンドル58と接続軸66とを接続する。キー68は、例えば、平行キー、半月キーである。なお、キー68は、第1キー溝58aに締結されても良い。
【0029】
第2スピンドル76は、第2ヘッド65及びスピンドルハウジング75を貫通して、ベアリング77に支持される。第2スピンドル76は、上下方向に延びる。第2スピンドル76の下端は、第1ヘッド53の下端と同じ高さか、第1ヘッド53の下端よりも下方に延びる。
【0030】
原動プーリ69は、接続軸66に締結される。従動プーリ70は、第2スピンドル76に締結される。無端ベルト71は、原動プーリ69と従動プーリ70との間に架けられる。
【0031】
スイベル接手81は、第2スピンドル76の上方に配置される。スイベル接手81は、スイベルハウジング85と、ベアリング84と、スイベルシャフト82とを有する。スイベルシャフト82は、スイベルハウジング85の内部で、ベアリング84に支持される。スイベルシャフト82は、第2スピンドル76の上端部に接続される。スイベルハウジング85は、その回転を制限される。
【0032】
ノズルホルダ88は、第2スピンドル76の下方に配置される。ノズルホルダ88は、上下方向に長く延びる。ノズル90は、ノズルホルダ88の下端部に、水平方向に向けて配置される。
ノズル流路87は、ノズルホルダ88と、第2スピンドル76を貫通する。ノズル流路87は、上下方向に延びる。ノズル流路87は、ノズルホルダ88の下端部において、直角に折れ曲がり、ノズル90に接続される。
【0033】
スイベルシャフト82と、第2スピンドル76と、ノズルホルダ88と、ノズル90は、それぞれチュービングカラー継手83で接続される。チュービングカラー継手83は、チュービングカラー89と、締結継手86と、一対のカラー装着穴93とを有する。
チュービングカラー89は、両端が尖った中空円筒状を有する。チュービングカラー89は、外筒面89aと、円錐面89bを有する。円錐面89bは、外筒面89aの両端に配置される。チュービングカラー89の内部には、流体が流れる。チュービングカラー89は、ノズル流路87の一部を構成する。締結継手86は、フランジやねじ部品である。
【0034】
カラー装着穴93は、内筒面93aと、円錐面93bとを有する。カラー装着穴93は、接続する2つの部材の両端部にそれぞれ配置される。内筒面93aは、外筒面89aに面接触する。円錐面93bは、円錐面89bよりもやや大きい頂角を有しても良い。
チュービングカラー89は、2つのカラー装着穴93の間に挿入される。締結継手86で両側の部材が締結されると、円錐面89bが円錐面93bに面接触して、押圧されて変形する。これにより、2つの部材の間の隙間を封止する。
なお、チュービングカラー89が、一方の部材と一体に形成されても良い。
【0035】
ノズル90は、チュービングカラー89と一体に形成されても良い。ノズル90は、噴口90aと、導液路90bとを有する。好ましくは、導液路90bは、噴口90aの内径の5~8倍の長さを有する。導液路90bは、ノズル流路87と噴口90aとを接続する。ノズル90は、ノズルホルダ88にねじ込まれて固定される。ノズル90は、直射ノズル(straight spray nozzle)や平射ノズル(flat spray nozzle)である。ノズル90とノズルホルダ88の軸方向の長さ97は、ワーク3と昇降装置19との間隙29よりも小さい。
【0036】
図1を参照して、タンク94は、処理液4を貯留する。タンク94は、沈殿タンクを有する。タンク94は、処理槽11から戻った処理液4から研磨粒子5を分離する。
ポンプ95は、例えば、渦巻ポンプや、ダイアフラムポンプである。ポンプ95は、処理液4を分散室12内に送る。ポンプ95の吐出圧力は、例えば、0.3~0.7MPaである。
【0037】
処理液4は、流動ノズル14から噴射される。
図2を参照して、処理液4は、内部噴口14cから混合室14d内に噴射される。内部噴口14cの周囲の圧力が低下し、粒子吸入口14fから処理槽11底部の処理液4を吸い込む。このとき、処理液4の流れに乗って、窪み13cの内部や周囲に浮遊する研磨粒子5が、粒子吸入口14fから混合室14d内に流入する。粒子吸入口14fに流入した処理液4や研磨粒子5は、内部噴口14cから噴出した処理液4の噴流と混合されて、噴出口14eから吐き出される。研磨粒子5は、処理液4によって攪拌されて流動化する。研磨粒子5は、処理槽11の底部に浮遊する。処理液4は、処理槽11内を上昇し、オーバーフロー口11cから排出し、タンク94へ戻る。
【0038】
ポンプ96は、ピストンポンプである。ポンプ96は、スイベルハウジング85に接続される。ポンプ96は、処理液4を、スイベル接手81とノズル流路87を介して、ノズル90へ送る。ポンプ96の吐出圧力は、例えば、100MPa~245MPaである。処理液4は、ノズル90から処理槽11内で噴射される。ノズル90から噴出した処理液4は、処理槽11内でキャビテーションを発生させる。発生したキャビティは、処理液4の噴流に乗って移動し、ワーク3に衝突する。キャビティは、ワーク3の表面を押しつぶして、残留応力を発生させる。また、処理液4の噴流は、処理槽11の底部に浮遊する研磨粒子5を巻き込み、ワーク3の表面に衝突させる。研磨粒子5は、ワーク3の表面を研削する。
【0039】
ノズルヘッド部61は、
図4に示すノズルホルダ91を有しても良い。ノズルホルダ91は、第2スピンドル76の延長上に、下向きにノズル90を装着できる。ノズルホルダ91の他の構成は、ノズルホルダ88と実質的に同一である。ノズルホルダ91は、ノズルホルダ88と交換できる。
【0040】
本実施形態の第2ヘッド65は、第1ヘッド53から取り外しできる。このため、移動部49と、ノズルヘッド部61とを分離できる。ノズルヘッド部61は、高圧の処理液4や、研磨粒子5、処理液4の噴流に曝されるため、消耗しやすい。ノズルヘッド部61を移動部49から分離することにより、消耗しやすいノズルヘッド部61を容易にメンテナンスできる。
【0041】
また、第2ヘッド65は、第1ヘッド53の上方に配置される。そのため、第1ヘッド53の下方に、ノズルホルダ88やノズル90の周囲を妨げる部材が存在しない。そのため、ノズル90の移動範囲を広く確保できる。そして、第2ヘッド65と第1ヘッド53との接続部が上方に位置するため、接続部が処理液4や研磨粒子5によって損傷することを抑制できる。
【0042】
第2スピンドル76が、ベルト機構(原動プーリ69,従動プーリ70,無端ベルト71)によって接続軸66からオフセットしている。そのため、第2スピンドル76を第1ヘッドの前方や側方に配置できる。また、第2スピンドル76を第1スピンドル58の下方に直接接続する構成と比較して、第2スピンドル76の下端を上方に配置できる。第2スピンドル76の下端は、第1ヘッド53の下端よりも実質的に下方にある。そのため、ノズル移動装置50が第2スピンドル76を液面15付近まで下ろしたときも、第1ヘッド53は、液面15よりも上方に位置する。このため、処理液4や研磨粒子5によって移動部49が、損傷することを抑制できる。
【0043】
第1スピンドル58は、装着穴53aから露出する。そのため、第2ヘッド65を第1ヘッド53から取り外したときに、キー68と第1キー溝58aが装着穴53aから露出する。そのため、作業者は、キー68や第1キー溝58a(第1スピンドル58)と、ノズル移動装置50やテーブル21との平行度を測定できる。また、作業者は、第1傘歯車57と第2傘歯車60とのバックラッシを測定し、調整できる。
【0044】
ノズルホルダ88の上端からノズル90までの長さ92は、テーブル21が下降位置にある場合の処理槽11の液面15からワーク3の下端までの深さ28よりも長い。そのため、ノズル90を処理槽11内に浸漬してワーク3に向けたときに、ノズルホルダ88と第2スピンドル76との接続部(チュービングカラー継手83)が処理液4内に浸漬しない。そのため、処理液4の噴流や研磨粒子5によって、第2スピンドル76やチュービングカラー継手83が摩耗や破損することが抑制される。
【0045】
昇降装置19は、テーブル21を処理槽11の液面15付近まで上昇できる。そのため、作業者は、液面15より上方でワーク3をテーブル21に着脱できる。作業者は、処理槽11内の処理液4や研磨粒子5を排出することなく、ワーク3をテーブル21に着脱できる。
【0046】
ノズル90は、処理槽11内に貯留された処理液4に浸漬された状態で、処理液4を噴射する。ノズル90からの処理液4の噴射により、液面15が乱れる。しかし、処理槽11の上端部に配置される第1返し部11dや第2返し部11eにより、処理液4が処理槽11から溢れ出すことを抑制できる。
【0047】
ガイドブッシュ27は、液面15の上方に配置される。そのため、ガイドブッシュ27の内部に研磨粒子5が詰まりにくい。シリンダ24は、処理槽11の外部に配置される。そのため、処理液4や研磨粒子5によるシリンダ24の破損を抑制できる。
【0048】
(第2実施形態)
図5~
図8に示すように、本実施形態のピーニング装置100は、テーブル旋回装置39と、一つの昇降装置119と、テーブル121とを有する。
図6及び
図8は、テーブル旋回軸を通り、正面に平行な平面で切断したピーニング装置100の断面図である。本実施形態のピーニング装置100のその他の構成は、第1実施形態のピーニング装置10と実質的に同一である。
図5及び
図6は、昇降装置119がテーブル121を下降位置に位置する状態を示す。
図8は、昇降装置119がテーブル121を下降位置と上昇位置の中間に位置する状態を示す。
【0049】
テーブル旋回装置39は、第1ハウジング41と、モータ(テーブル旋回装置)40と、第1シャフト43と、ベアリング42と、第1ブラケット44と、ピン45とを有する。第1ハウジング41は、処理槽11の右側面(第1側面)に配置される。第1ハウジング41は、中空円筒状である。第1シャフト43は、第1ハウジング41の内部で、ベアリング42に支持される。モータ40は、処理槽11の外側で、第1ハウジング41に固定される。モータ40の出力軸は、第1シャフト43に接続される。第1ブラケット44は、正面視でL字状をなし、垂直面が第1シャフト43に締結される。ピン45は、第1ブラケット44の水平面に立てられる。好ましくは、2本のピン45が第1ブラケット44の水平面に配置される。
【0050】
昇降装置119は、左側面(第2側面)側に配置される。昇降装置119は、シリンダ24と、昇降ブラケット23と、第2ハウジング131と、第2シャフト133と、ベアリング132と、第2ブラケット125と、カムフォロア(ガイド)126と、一対のガイドレール127とを有する。
【0051】
第2ハウジング131は、中空のブロックであり、処理槽11の内部の左側面寄りに設置される。第2ハウジング131は、昇降ブラケット23の下方に接続される。第2シャフト133は、第2ハウジング131の内部で、ベアリング132に支持される。第2ブラケット125は、直方体状を成し、テーブル121の左端部に配置される。一対のカムフォロア126が、第2ブラケット125の前端部と後端部に配置される。カムフォロア126は、前後方向を中心として回転する。好ましくは、複数組のカムフォロア126が、上下方向に並べて配置される。
【0052】
ガイドレール127は、ガイド溝127aを有する。ガイドレール127は、平面視でC字状である。ガイドレール127は、処理槽11の上方で鉛直方向に延びる。
図5及び
図7に示すように、上方視でそれぞれのガイド溝127aが第2シャフト133の中心軸に向かい、カムフォロア126の中心に一致する。昇降装置119がテーブル121を上昇させたときに、カムフォロア126は、ガイド溝127a上を転動して、第2ブラケット125がガイドレール127に案内される。
【0053】
図5及び
図7に示すように、テーブル121は、ピン穴121aを有する。ピン穴121aは、テーブル121の右端部に配置される。ピン45は、ピン穴121aに挿入される。好ましくは、テーブル121がシリンダ24によって上昇し、カムフォロア126がガイド溝127aにさしかかったときに、ピン45がなおピン穴121aにかかっている。
【0054】
モータ40が第1ブラケット44を初期位置(
図6では水平)に保っているときに、昇降装置119がテーブル121を昇降する。このとき、カムフォロア126がガイド溝127aに案内されて、第2ブラケット125とテーブル121の回転が制限される。そのため、テーブル121は、概ね水平姿勢を保ったまま昇降する(
図8参照)。
【0055】
昇降装置119がテーブル121を降下させると、テーブル121が下降位置付近に達したときに、ピン45がピン穴121aに挿入される。次いで、カムフォロア126がガイド溝127aを外れる。テーブル121が下降位置に達したときに、第1シャフト43と第2シャフト133の中心軸が一致する。また、テーブル121は、ピン45を介して第1ブラケット44と接続される。そのため、第1ブラケット44と、テーブル121と、第2ブラケット125は、一体となって旋回できる。モータ40は、テーブル121を自在に回転する。
【0056】
本実施形態のモータ40は、処理槽11の外側に配置される。そのため、処理液4や研磨粒子5によって、モータ40が破損することが抑制される。また、ガイドレール127は、液面15の上方に位置する。そのため、処理液4や研磨粒子5によって、ガイドレール127が破損することが抑制される。
【0057】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10,100 ピーニング装置
11 処理槽
21,121 テーブル
49 移動部
50 ノズル移動装置
52 クイル
53 第1ヘッド
54 第1モータ
58 第1スピンドル
61 ノズルヘッド部
65 第2ヘッド
66 接続軸
76 第2スピンドル
81 スイベル接手
87 ノズル流路
90 ノズル