(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G05G 1/32 20080401AFI20240527BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G05G1/32
B60T7/06 A
(21)【出願番号】P 2021164506
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 卓也
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1710542(KR,B1)
【文献】特開2020-83023(JP,A)
【文献】特開2020-57274(JP,A)
【文献】特開2017-224221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/32
B60T 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車両構成部材に固定されるサポート部材と、
前記サポート部材に設けられ、前記サポート部材に対して回転可能な踏部と、前記踏部が車両前方側へ踏み込まれることで車両前方側に向けて回転する操作レバーと、
前記操作レバーを前記サポート部材に対して回転可能に支持する中間軸部と、を有する操作ペダル機構と、
車両後方側に向けて延びる第1当接部を有し、前記第1当接部よりも車両下方側で第1回転軸部によって前記操作レバーに対して車両前方側に向けて回転可能に支持され、前記第1車両構成部材から車両後方側へ突き出したオペレーティングロッドを保持する回転レバーと、
車両後方側に向けて延びる第2当接部を有し、前記第2当接部よりも車両下方側で、第2回転軸部によって前記回転レバーに対して車両前方側に回転可能に支持された差動レバーと、
前記差動レバーと前記操作レバーとを固定する固定部材と、
前記オペレーティングロッドの先端に固定された連結部材と、
前記操作レバーに設けられた逃げ穴の内側に収容された状態で、前記連結部材を前記回転レバーに保持する保持部材と、
を備え、
前記差動レバーは、
前記固定部材により前記操作レバーに固定されている場合は、前記第2当接部が前記回転レバーの前記第1当接部よりも車両後方側に出る規制位置となり、
前記第1回転軸部は、
前記差動レバーが前記規制位置にあり、かつ前記踏部が踏込み操作されない初期位置において、前記オペレーティングロッドの延びる方向での線分よりも車両上方側に位置しており、
前記第1車両構成部材が車両衝突時に車両後方に向けて変位した場合に、前記第1車両構成部材よりも車両後方側に位置する第2車両構成部材が前記第2当接部に当接することで、
前記差動レバーは、前記第2当接部が前記第1当接部よりも車両前方側の位置となるとともに、前記固定部材に前記第2車両構成部材の前記第2当接部への当接に応じた荷重を加える解除位置に変位し、
前記固定部材による前記差動レバーと前記操作レバーとの固定が解除されることで、前記回転レバーは、前記第2車両構成部材が前記第1当接部に当接することにより、前記第1回転軸部により車両前方に向けて回転
し、前記回転レバーの回転に応じ、前記操作レバーが前記中間軸部を中心に車両前方側へ回転することで、前記踏部が車両前方側へ変位する、
車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記操作レバーを車幅方向に貫通する係合軸部と、前記差動レバーに設けられ、車両前方側に切り欠かれた切欠き部とを有し、前記切欠き部に前記係合軸部が係合することで、前記差動レバーと前記操作レバーとを固定する請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記差動レバーを車幅方向に貫通する係合軸部と、前記操作レバーに設けられ、車両後方側に切り欠かれた切欠き部とを有し、前記切欠き部に前記係合軸部が係合することで、前記差動レバーと前記操作レバーとを固定する請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記オペレーティングロッドからの反力に応じて揺動する揺動レバーと、前記揺動レバーの揺動量に基づいて、前記踏部に加えられる踏力を検出する踏力スイッチと、を有する踏力検出装置を備え、
前記保持部材は、前記連結部材を、前記オペレーティングロッドからの反力が加わる方向に揺動可能に前記回転レバーに保持しており、
前記揺動レバーは、前記保持部材により、前記連結部材と共に揺動可能に保持されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項5】
前記操作レバーは、車両上方側の端部に前記第1回転軸部よりも車両後方側にオフセットして延びるオフセット部を有し、
前記固定部材は、前記オフセット部に位置している
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項6】
第1車両構成部材に固定されるサポート部材と、
前記サポート部材に設けられ、前記サポート部材に対して回転可能な踏部と、前記踏部が車両前方側へ踏み込まれることで車両前方側に向けて回転する操作レバーと、前記操作レバーを前記サポート部材に対して回転可能に支持する中間軸部と、を有する操作ペダル機構と、
車両後方側に向けて延びる第1当接部を有し、前記第1当接部よりも車両下方側で第1回転軸部によって前記操作レバーに対して車両前方側に向けて回転可能に支持され、前記第1車両構成部材から車両後方側へ突き出したオペレーティングロッドを保持する回転レバーと、
車両後方側に向けて延びる第2当接部を有し、前記第2当接部よりも車両下方側で、第2回転軸部によって前記回転レバーに対して車両前方側に回転可能に支持された差動レバーと、
前記操作レバーと前記差動レバーを車幅方向に貫通する係合軸部と、前記差動レバーにおける車両前方側または前記操作レバーにおける車両後方側に切り欠かれた切欠き部とを有し、前記切欠き部に前記係合軸部が係合することで、前記差動レバーと前記操作レバーとを固定する固定部材と、
を備え、
前記差動レバーは、
前記固定部材により前記操作レバーに固定されている場合は、前記第2当接部が前記回転レバーの前記第1当接部よりも車両後方側に出る規制位置となり、
前記差動レバーが前記規制位置にある場合に、前記第1回転軸部と前記係合軸部とを結ぶ直線と、前記第2回転軸部と前記係合軸部とを結ぶ直線とが直交するように、前記係合軸部の位置が定められており、
前記第1車両構成部材が車両衝突時に車両後方に向けて変位した場合に、前記第1車両構成部材よりも車両後方側に位置する第2車両構成部材が前記第2当接部に当接することで、前記第2当接部が前記第1当接部よりも車両前方側の位置となるとともに、前記固定部材に前記第2車両構成部材の前記第2当接部への当接に応じた荷重を加える解除位置に変位し、
前記固定部材による前記差動レバーと前記操作レバーとの固定が解除されることで、前記回転レバーは、前記第2車両構成部材が前記第1当接部に当接することにより、前記第1回転軸部により車両前方に向けて回転し、前記回転レバーの回転に応じ、前記操作レバーが前記中間軸部を中心に車両前方側へ回転することで、前記踏部が車両前方側へ変位する、
車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突に伴って車両構成部材が車両後方側へ変位した場合に、操作ペダル機構の踏部が車両後方側へ後退することを抑える(以下、「車両衝突時における操作ペダル機構の踏部の後退防止」という。)車両用操作ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
踏部の後退防止を実現する車両用操作ペダル装置として、特許文献1に記載されたものがある。車両用操作ペダル装置は、サポート部材と、踏部と、操作ペダルと、オペレーティングロッドを保持する回転レバーと、固定部材とを備えている。回転レバーは、回転軸部により操作ペダルに対して回転可能に支持されるとともに、固定部材により操作ペダルに固定されている。車両の衝突時において、サポート部材が固定された第1車両構成部材が車両後方側に後退し、回転レバーが第2車両構成部材に当接することで、回転レバーを介して固定部材に所定の荷重が作用し、固定部材は、回転レバーと操作ペダルとの固定を解除する。これにより、回転レバーが車両前方側に回転することで、踏部の車両後方側への後退を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用操作ペダル装置では、固定部材による回転レバーと操作ペダルとの固定を解除するための荷重を、踏部への踏み込み操作が行われる場合に固定部材に加わる荷重よりも大きくする必要がある。そのため、踏部に対する踏み込み操作により回転レバーを介して固定部材に加わる荷重と、車両が衝突する際に回転レバーを介して固定部材に加わる荷重との2つの荷重を考慮して、各レバーの回転軸位置や、形状等を設計する必要がある。そのため、車両用操作ペダル装置に対する設計の自由度が低くなることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、車両衝突時における操作ペダル機構の踏部の後退防止を実現する車両用操作ペダル装置において、設計の自由度を高めることが可能な車両用操作ペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために第1に係る発明は、第1車両構成部材に固定されるサポート部材と、サポート部材に設けられ、サポート部材に対して回転可能な踏部と、踏部が車両前方側へ踏み込まれることで車両前方側に向けて回転する操作レバーと、を有する操作ペダル機構と、車両後方側に向けて延びる第1当接部を有し、第1当接部よりも車両下方側で第1回転軸部によって操作レバーに対して車両前方側に向けて回転可能に支持され、第1車両構成部材から車両後方側へ突き出したオペレーティングロッドを保持する回転レバーと、車両後方側に向けて延びる第2当接部を有し、第2当接部よりも車両下方側で、第2回転軸部によって回転レバーに対して車両前方側に回転可能に支持された差動レバーと、差動レバーと操作レバーとを固定する固定部材と、を備え、差動レバーは、固定部材により操作レバーに固定されている場合は、第2当接部が回転レバーの第1当接部よりも車両後方側に出る規制位置となり、第1車両構成部材が車両衝突時に車両後方に向けて変位した場合に、第1車両構成部材よりも車両後方側に位置する第2車両構成部材が第2当接部に当接することで、第2当接部が第1当接部よりも車両前方側に位置するとともに、固定部材に第2車両構成部材の第2当接部への当接に応じた荷重を加える解除位置に変位し、固定部材による差動レバーと操作レバーとの固定が解除されることで、回転レバーは、第2車両構成部材が第1当接部に当接することにより、第1回転軸部により車両前方に向けて回転することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ペダル装置であって、固定部材は、操作レバーを車幅方向に貫通する係合軸部と、差動レバーに設けられ、車両前方側に切り欠かれた切欠き部とを有し、切欠き部に係合軸部が係合することで、差動レバーと操作レバーとを固定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ペダル装置であって、固定部材は、差動レバーを車幅方向に貫通する係合軸部と、操作レバーに設けられ、車両後方側に切り欠かれた切欠き部とを有し、切欠き部に係合軸部が係合することで、差動レバーと操作レバーとを固定することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ペダル装置であって、オペレーティングロッドの先端に固定された連結部材と、連結部材を回転レバーに保持する保持部材と、を備え、操作レバーは、逃げ穴を有し、保持部材は、操作レバーの逃げ穴の内側に収容された状態で、連結部材を回転レバーに保持しており、第1回転軸部は、差動レバーが規制位置にあり、かつ踏部が踏込み操作されない初期位置において、オペレーティングロッドの延びる方向での線分よりも車両上方側に位置していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用ペダル装置であって、オペレーティングロッドからの反力に応じて揺動する揺動レバーと、揺動レバーの揺動量に基づいて、踏部に加えられる踏力を検出する踏力スイッチと、を有する踏力検出装置を備え、保持部材は、連結部材を、オペレーティングロッドからの反力が加わる方向に揺動可能に回転レバーに保持しており、揺動レバーは、保持部材により、連結部材と共に揺動可能に保持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用ペダル装置であって、操作レバーは、車両上方側の端部に第1回転軸部よりも車両後方側にオフセットして延びるオフセット部を有し、固定部材は、オフセット部に位置していることを特徴とする。
【0012】
第7に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用ペダル装置であって、差動レバーが規制位置にある場合に、第1回転軸部と係合軸部とを結ぶ直線と、第2回転軸部と係合軸部とを結ぶ直線とが直交するように、オフセット部における係合軸部の位置が定められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、踏部の後退防止を実現する車両用操作ペダル装置において、設計の自由度が高い車両用操作ペダル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態のブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
【
図2】ブレーキペダル装置の一部を分解して示す図である。
【
図3】
図1の線A-Aで切断された同ブレーキペダル装置の断面が表された図である。
【
図4】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
【
図5】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
【
図6】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
【
図7】第2実施形態に係る、ブレーキペダル装置の一部を分解して示す図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る、ブレーキペダル装置の一部を分解して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用操作ペダル装置について、常用ブレーキ用のブレーキペダル装置を例に説明する。以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0016】
以下の説明では、ブレーキペダル装置を、車両に搭載した状態での方向を用いて説明する。具体的には、車両の前方を「車両前方」と記載し、後方を「車両後方」と記載し、車両の上方を「車両上方」と記載し、車両の下方を「車両下方」と記載する。また、車両の左右方向を「車幅方向」と記載する。各図において、「車両前方」を「前方」と、「車両後方」を「後方」と、「車両上方」を「上方」、「車両後方」を「下方」と簡略化して記載している。また、「車幅方向」の一方を「左」、他方を「右」と記載している。
【0017】
(1-1)第1実施形態の概略
図1,
図2に表されたように、ブレーキペダル装置1は、ペダルブラケット10、操作ペダル機構20、回転レバー50、衝突小レバー60、踏力検出装置80を主に備えている。
【0018】
ペダルブラケット10は、ダッシュパネルPに固定されている。ダッシュパネルPは、車両の一部を構成するものであって、操作ペダル機構20よりも車両前方側に位置している。ペダルブラケット10は、一対の側板16を有している。一対の側板16は、車幅方向で所定間隔を置いた状態で対向しており、ダッシュパネルPに対してボルト等で固定されている。
【0019】
図1,
図2では、一対の側板16のうち、車幅方向左側の側板16のみが表されており、車幅方向右側のものは表されていない。この点は、後述する
図4~6においても、同様である。
【0020】
ダッシュパネルPからは、オペレーティングロッド90が車両後方側へ突き出ている。オペレーティングロッド90におけるダッシュパネルPよりも車両前方側の端部は、クレビス70及びクレビスピン71により操作ペダル機構20に連結されている。オペレーティングロッド90は、操作ペダル機構20の踏部21に対する踏込み操作に伴い、車両前方側へ変位することで、その踏込み操作時の操作力を、油圧回路又は電子回路等を通して、車両の運転状態を制御する制動装置又は制御装置に伝達する。
【0021】
ペダルブラケット10における一対の側板16の間には、操作ペダル機構20が配設されている。操作ペダル機構20は、リンク式の操作ペダル機構であって、踏部21、第1アーム22、リンク部材30、第2アーム40、操作軸部11、中間軸部12を主に有している。
【0022】
第1アーム22は、金属製であって、第1アーム22が延びる方向である長手方向における上端部22Aで、車幅方向に貫通する操作軸部11によりペダルブラケット10に対して回転可能に支持されている。第1アーム22の長手方向における下端部22Bには、踏部21が設けられている。これにより、車両の運転者によって踏部21が車両前方側へ踏み込まれること(以下、「踏込み操作」という。)により、第1アーム22を、操作軸部11を中心に車両前方に回転させることができる。なお、
図1では、踏部21は、踏込み操作が行われない状態での初期位置を示している。
【0023】
第2アーム40は、厚みの薄い金属製の板状部材であり、第2アーム40が延びる方向である長手方向に連続するオフセット部40A、中間部40B、下端部40Cを有している。オフセット部40Aは、第2アーム40の長手方向において、中間部40Bから、車両後方側にオフセットして延びる部位である。これにより、第2アーム40の車両上方側は、オフセット部40Aと、中間部40Bとにより、逆L字形状を形成している。
【0024】
図2に表されるように、第2アーム40の下端部40Cには、中間軸部12が貫通するボス41が形成されている。中間軸部12は、第2アーム40をペダルブラケット10に対して回転可能に支持する軸部である。下端部40Cには、ボス41よりも中間部40B側(即ち、車両上方側)にリンク部材30のリンクピン31が貫通する貫通穴42が形成されている。なお、中間軸部12は、一対の側板16の間において、操作軸部11に対して、略水平で且つ車幅方向と略平行な状態で配設されている。
【0025】
中間部40Bには、車幅方向に第2アーム40を貫通する開口である逃げ穴43が形成されている。中間部40Bにおいて、逃げ穴43よりもオフセット部40A側(即ち、車両上方側)には、第1回転軸部13が貫通する軸受穴44が形成されている。オフセット部40Aには、後述するカシメピン15が貫通する貫通穴45が形成されている。
【0026】
リンク部材30は、第1アーム22と、第2アーム40とを連結する部材である。リンク部材30は、リンクピン31により、第1アーム22を貫通し、リンクピン32により、第2アーム40の貫通穴42を貫通することで、第1アーム22と第2アーム40とを連結している。これにより、操作ペダル機構20は、踏部21に対する踏み込み操作による、第1アーム22の操作軸部11での回転を、リンク部材30を通じて伝達し、第2アーム40を中間軸部12で回転させることが可能な構成となっている。
【0027】
第2アーム40には、回転レバー50が回転可能に取り付けられている。
図2に表されるように、回転レバー50は、厚みの薄い金属製の板状部材であり、回転レバー50の延びる長手方向で連続する下端部50Cと、中間部50Bと、第1当接部50Aとを有している。中間部50Bは、踏力検出装置80を配置可能な面である配置領域を有する部位である。配置領域は、第2アーム40に回転レバー50を配置した場合に、第2アーム40に重ならない領域であり、言い換えると、回転レバー50の中間部50Bのうち、オフセット部40Aに重ならない領域である。第1当接部50Aは、回転レバー50の長手方向において、中間部50Bから車両後方側に向けて屈曲して延びた部位である。
【0028】
図2に表されるように、下端部50Cには、クレビス70が保持されるクレビス保持部材51が固定されている。クレビス保持部材51の詳細については後述する。下端部50Cにおいて、回転レバー50の長手方向でクレビス保持部材51よりも中間部50B側(即ち、車両上方側)には、第1回転軸部13が貫通する軸受穴52が形成されている。第1回転軸部13は、回転レバー50を、第2アーム40に対して回転可能に支持する軸である。中間部50Bには、第2回転軸部14が貫通する軸受穴53が形成されている。第2回転軸部14は、衝突小レバー60を、回転レバー50に対して回転可能に支持する軸である。具体的には、回転レバー50において、第2回転軸部14の軸受穴53は、踏力検出装置80が配置される配置領域よりも車両上方側形成されている。言い換えると、第1回転軸部13の軸受穴52と第2回転軸部14の軸受穴53との間に配置領域が形成されている。
【0029】
回転レバー50には衝突小レバー60が回転可能に支持されている。衝突小レバー60は、厚みの薄い金属製の板状部材であり、この衝突小レバー60が延びる長手方向で連続する下端部60C、中間部60B、第2当接部60Aを有している。第2当接部60Aは、中間部60Bから車両後方側に向けて屈曲して延びた部位である。
【0030】
衝突小レバー60における下端部60Cには、カシメピン15が貫通する貫通穴61が形成されている。カシメピン15は、衝突小レバー60を、操作ペダル機構20の構成要素である第2アーム40に固定するための軸である。中間部60Bには、第2回転軸部14が貫通する貫通穴62が形成されている。本実施形態では、カシメピン15は、カシメ加工されており、第2アーム40及び衝突小レバー60から抜け落ちないようになっている。また、カシメピン15は、所定の荷重が加わることで破断するように材質及び直径が設計されている。
【0031】
上記構成において、回転レバー50は、第1回転軸部13により、第2アーム40に対して回転可能に支持される。衝突小レバー60は、第2回転軸部14により、回転レバー50に対して回転可能に支持される。カシメピン15は、第2アーム40と衝突小レバー60とを貫通することで、第2回転軸部14での衝突小レバー60の回転を規制する。これにより、カシメピン15により第2回転軸部14での回転が規制された衝突小レバー60を介して、回転レバー50を第2アーム40に対して固定する。その結果、第2アーム40の中間軸部12での回転に伴い、回転レバー50を、第2アーム40の回転方向と同方向に回転させることができる。
【0032】
図3は、
図1で示すブレーキペダル装置1のA-Aでの断面を表している。オペレーティングロッド90の先端には、クレビス70が固定されている。クレビス70は、第2アーム40の逃げ穴43内に収容されたクレビス保持部材51により、クレビスピン71を介して揺動可能に保持されている。具体的には、クレビス保持部材51は、クレビスピン71が貫通する貫通穴51aを有している。クレビス保持部材51の貫通穴51aの内径は、クレビスピン71の直径よりも大きい。クレビス70は、1対の側板部72を有しており、1対の側板部72により、第2アーム40と、この第2アーム40の逃げ穴43内に位置するクレビス保持部材51とを挟んだ状態で、クレビス保持部材51とともに、クレビスピン71により貫通されている。なお、側板部72を貫通したクレビスピン71の先端部は、例えば、クリップ等によって、クレビス保持部材51、及びクレビス70から抜けないようにされている。これにより、オペレーティングロッド90から反力がクレビス70に加えられた場合、クレビス70は、クレビス保持部材51の貫通穴51aとクレビスピン71との間の隙間の分だけ、オペレーティングロッドの延びる方向(即ち、反力の方向)に揺動することができる。
【0033】
回転レバー50の中間部50Bには、踏力検出装置80が取り付けられており、踏部21が踏込み操作されることにより、回転レバー50及び踏力検出装置80が協働することによって、踏込み操作に基づく踏力を検出するように構成されている。
【0034】
図1に表されるように、踏力検出装置80は、踏力SW81と、揺動レバー82とを有している。踏力SW81は、周知の回路であり、検出軸の押し込み量に応じて、踏力に応じた信号を出力する。踏力SW81は、検出軸が回転レバー50よりも車両前方側に出るように、中間部50Bに固定されている。揺動レバー82は、踏力SW81の検出軸に対向する受部83を有し、クレビスピン71に固定されることで、クレビス保持部材51により揺動可能に保持されている。揺動レバー82の受部83は、ばねを介して踏力SW81の検出軸に対向配置されており、オペレーティングロッド90からの反力に応じて揺動し、踏力SW81の検出軸に当接する。本実施形態では、揺動レバー82は、車幅方向において第2アーム40と反対側で、クレビスピン71に固定されている。
【0035】
(1-2)踏込み操作時における第1実施形態の動作
踏部21に対する踏込み操作が行われると、第1アーム22は、操作軸部11を中心として回転する。このとき、第1アーム22は、操作軸部11を中心として所定方向(
図1における時計回り方向)へ回転するため、第1アーム22の回転は、リンク部材30を介して、第2アーム40に伝達される。第2アーム40は、第1アーム22の回転に伴って、中間軸部12を中心として所定方向(
図1における反時計回り方向)へ回転する。そのため、衝突小レバー60により、第2アーム40に対して第1回転軸部13での回転が規制された回転レバー50は、第2アーム40の回転方向と同一方向に回転し、オペレーティングロッド90のクレビス70に接続された先端を、車両前方側へ変位させる。
【0036】
オペレーティングロッド90からは、オペレーティングロッド90の延びる方向において車両後方側に向けた反力FAが、クレビス70を介してクレビスピン71に作用する。上述のように、クレビス保持部材51の貫通穴51aの内径は、クレビスピン71の直径よりも大きく、オペレーティングロッド90からの反力により、クレビス70及び揺動レバー82が揺動する。これにより、揺動レバー82の受部83が踏力SW81の検出軸に当接し、踏力SW81は、検出軸の押し込み量に応じた踏力を検出し得る。踏力SW81は、検出された踏力に応じた、信号を不図示のコントローラに出力する。
【0037】
この際、カシメピン15には、オペレーティングロッド90からの反力に応じた荷重が作用する。例えば、踏部21が運転者に車両前方側へ最大に踏み込まれることによって、オペレーティングロッド90からの反力FAがクレビスピン71に作用する場合には、カシメピン15に作用する第1荷重F1は、以下の式(I)で表される。
F1=FA×sinθ1×LA/LB ・・・式(I)
【0038】
ここで、θ1は、クレビスピン71において、クレビスピン71とカシメピン15とを結ぶ直線がオペレーティングロッド90の反力FAの方向と交わる角度である。LAは、クレビスピン71から第1回転軸部13までの距離である。LBは、第1回転軸部13からカシメピン15までの距離である。
【0039】
踏部21が運転者に車両前方側へ最大に踏み込まれた場合において、更に、踏部21が運転者に車両前方側へ踏み込まれることによって、踏部21に作用する操作荷重が大きくなると、反力FAも大きくなり、第1荷重F1も大きくなる。そこで、本実施形態では、操作荷重が設計上最大である場合にカシメピン15に作用する荷重を、第1荷重F1としている。
【0040】
(1-3)車両衝突時における第1実施形態の動作
図4に表されたように、車両衝突時において、ダッシュパネルPが車両後方側へ変位すると、インパネリインフォースメントの衝突用ブラケット200が、衝突小レバー60の第2当接部60Aに突き当たる。そのため、カシメピン15には、荷重が作用する。例えば、衝突用ブラケット200と衝突小レバー60が突き当たった当接点Cにおいて、衝突力FBが衝突小レバー60に作用する場合には、カシメピン15に作用する第2荷重F2は、以下の式(II)で表される。
F2=FB×cosθ2×LC/LD ・・・式(II)
【0041】
ここで、θ2は、衝突小レバー60の当接点Cにおいて、当接点Cとカシメピン15を結ぶ直線の垂線が衝突力FBの方向と交わる角度である。LCは、第2回転軸部14から当接点Cまでの距離である。LDは、カシメピン15から第2回転軸部14までの距離である。
【0042】
また、第1荷重F1と第2荷重F2との関係は、以下の式(III)で表される。
F2>F1 …式(III)
上記式(III)は、第2荷重F2が第1荷重F1よりも大きくなるように各距離LA,LB,LC,LDを設計することで、ブレーキペダル装置1の操作時において、カシメピン15による回転レバー50と第2アーム40との固定が解除されるのを防止することができることを示している。本実施形態では、カシメピン15が破断する場合の荷重を、第2荷重F2以上になるように、カシメピン15を設計している。
【0043】
図4に表されるように、第1荷重F1を算出するための各距離は、回転レバー50内の各軸部間の距離LA,LBであるのに対して、第2荷重F2を算出するための距離LC,LDは、衝突小レバー60における当接点Cや各軸部間の距離LC,LDとなる。これは、車両の衝突時において、第2荷重F2が回転レバー50に直接作用しないためである。上記式(I)~(III)を満たす範囲内において、第2アーム40及び回転レバー50の形状や各軸部の位置を設計することができる。
【0044】
第2荷重F2が第1荷重F1よりも大きな基準荷重を超えると、
図5に表されるように、第2荷重F2によってカシメピン15が断ち切られ、衝突小レバー60が第2回転軸部14で回転可能となり、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定が解除される。その後、衝突用ブラケット200の突き当りが継続することで、衝突小レバー60の第2当接部60Aが第2回転軸部14で車両前方側に回転し、衝突小レバー60は、規制位置から、解除位置となる。規制位置は、衝突小レバー60において、第2当接部60Aが第1当接部50Aよりも車両後方側に出る位置である。解除位置は、衝突小レバー60において、第2当接部60Aが第1当接部50Aよりも車両前方側となる位置である。これにより、回転レバー50の第1当接部50Aが衝突用ブラケット200に突き当たる。
【0045】
図6に表されるように、衝突用ブラケット200の第1当接部50Aに対する突き当りにより、回転レバー50が第1回転軸部13を中心にして、車両前方側(
図6における反時計回り方向)へ回転する。
【0046】
回転レバー50の回転に伴い、オペレーティングロッド90の先端が、クレビス70を介して、車両前方側へ変位する。回転レバー50の回転に応じて、第2アーム40が、中間軸部12を中心に車両前方側(
図6における反時計回り方向)へ回転するので、第1アーム22の踏部21が車両前方側へ変位する。なお、二点鎖線で表された踏部21は、踏込み操作が行われない場合の踏部21の初期位置を示している。
【0047】
更に、回転レバー50の中間軸部12での回転に応じて逃げ穴43に収容されたクレビス保持部材51は、逃げ穴43の内側を第1回転軸部13周りに回転する。本実施形態では、第1回転軸部13は、衝突小レバー60が規制位置にあり、かつ踏部21が踏込み操作されない初期位置において、オペレーティングロッド90の延びる方向での線分よりも車両上方側に位置している。言い換えると、第1回転軸部13は、クレビス保持部材51が収容される第2アーム40の逃げ穴43よりも車両上方側に位置している。
【0048】
第2アーム40において、第1回転軸部13が逃げ穴43に対して車両後方側にある場合を想定する。この場合、車両衝突時における、回転レバー50の回転に応じたクレビス保持部材51の移動軌跡は、第1回転軸部13を中心として、車両下方側に向けて円弧状に推移する。このため、第2アーム40には、クレビス保持部材51の移動軌跡に応じて、車両下方側に向けた円弧状の逃げ穴43が形成される必要がある。しかし、第2アーム40において、逃げ穴43周りの肉厚の確保から、中間部40Bにおける車両下方側の寸法が大きくなり、例えば、第1アーム22における操作軸部11が貫通する位置を車両下方側にずらす必要が生じ得る。これに対して、本実施形態では、第2アーム40において、第1回転軸部13が逃げ穴43に対して車両上方側に位置している。このため、回転レバー50の回転に応じて、クレビス保持部材51の移動軌跡は、第1回転軸部13を中心として、車両後方に推移する。そのため、第2アーム40には、クレビス保持部材51の移動軌跡に応じた、車両後方側に向けた逃げ穴43が形成されている。これにより、第2アーム40における中間部40Bの寸法を車両下方側に増加させることなく逃げ穴43周りの肉厚を確保し易い。このため、第2アーム40と第1アーム22の操作軸部11の位置とが干渉しにくくなり、ひいては、ブレーキペダル装置1の寸法が増加するのを抑制することができる。
【0049】
本実施形態では、第2アーム40が操作レバーの一例である。衝突小レバー60が差動レバーの一例である。カシメピン15が固定部材の一例である。クレビス70が連結部材の一例である。クレビス保持部材51が、保持部材の一例である。ペダルブラケット10が、サポート部材の一例である。ダッシュパネルPが、車両第1車両構成部材の一例であり、衝突用ブラケット200が第2車両構成部材の一例である。
【0050】
(1-4)第1実施形態のまとめ
以上説明したブレーキペダル装置1では、衝突用ブラケット200が衝突小レバー60の第2当接部60Aに当接することで、第2当接部60Aが、解除位置に向けて変位すると、カシメピン15に加えられた荷重により、カシメピン15が破断し、衝突小レバー60を介した回転レバー50の第2アーム40への固定が解除される。このとき、衝突小レバー60が衝突用ブラケット200に当接することで、車両衝突時の第2荷重F2が回転レバー50に直接作用しない。その後、衝突用ブラケット200が回転レバー50の第1当接部50Aに当接することにより、回転レバー50は、第1回転軸部13により車両前方に向けて回転し、第1アーム22の踏部21を車両前方側に回転させる。そのため、踏部21の操作時にカシメピン15に作用する第1荷重F1を算出する各距離LA,LBと、車両の衝突時にカシメピン15に作用する第2荷重F2を算出する各距離LC,LDと、を独立して定めることができる。その結果、第2アーム40及び回転レバー50の形状や各軸部の位置に対して、設計の自由度を高めることができる。
【0051】
クレビス保持部材51は、第2アーム40の逃げ穴43の内側に収容された状態で、クレビス70を回転レバー50に保持している。第1回転軸部13は、衝突小レバー60が規制位置にあり、かつ踏部21が踏込み操作されない初期位置において、オペレーティングロッド90の延びる方向での線分よりも車両上方側に位置している。これにより、第2アーム40において逃げ穴43周りの肉厚を確保し易く、第2アーム40の寸法を増加させることなく、第2アーム40の形状を設計することができ、ひいては、ブレーキペダル装置1の寸法が増加するのを抑制することができる。
【0052】
クレビス保持部材51は、クレビス70を、オペレーティングロッド90からの反力が加わる方向に揺動可能に回転レバーの中間部に保持しており、踏力検出装置80の揺動レバー82は、クレビス保持部材51により、クレビス70と共に揺動可能に保持されている。これにより、踏力検出装置80を備えるブレーキペダル装置1においても、第2アーム40及び回転レバー50の形状や軸部の位置に対して設計の自由度を高めることができる。
【0053】
カシメピン15は、第2アーム40のオフセット部40Aを貫通している。これにより、衝突小レバー60を介して回転レバー50が第2アーム40に固定されている状態で、回転レバー50において、第2アーム40に重ならない領域を形成することができ、回転レバー50の寸法を増加させることなく、踏力SW81等の配置スペースを確保することができる。
【0054】
(2-1)第2実施形態の概要
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0055】
上述の第1実施形態では、車両衝突時に、カシメピン15を破断させることで、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定を解除した。これに代えて、本実施形態では、車両衝突時に、衝突小レバー60とカシメピン15との係合を解除することで、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定を解除する。本実施形態では、カシメピン15が係合軸部の一例である。
【0056】
図7に表されるように、衝突小レバー60の下端部60Cには、カシメピン15に係合する切欠き部63が形成されている。切欠き部63は、下端部60Cにおいて車両前方側の縁が切り欠かれた形状であり、切欠き部63の内側の径は、カシメピン15を貫通可能な寸法となっている。
【0057】
本実施形態において、衝突小レバー60が規制位置である場合に、第2アーム40のオフセット部40Aにおけるカシメピン15の位置は、第2回転軸部14よりも車両後方側に位置している。具体的には、第1回転軸部13とカシメピン15とを結ぶ直線と、第2回転軸部14とカシメピン15とを結ぶ直線とが直交するように、オフセット部40Aにおけるカシメピン15の位置が定められている。
【0058】
衝突小レバー60が規制位置である場合、切欠き部63にカシメピン15が係合することで、衝突小レバー60を介して、回転レバー50と第2アーム40とが固定されている。一方、衝突用ブラケット200が衝突小レバー60の第2当接部60Aに当接すると、衝突小レバー60は解除位置となり、カシメピン15と切欠き部63との係合が解除される。このとき、衝突小レバー60の回転開始直後では、切欠き部63が、第1回転軸部13とカシメピン15とを結ぶ直線に沿って、車両後方側と車両上方側との間を移動するため、カシメピン15を切欠き部63から速やかに外すことができる。その結果、カシメピン15を破断することなく、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定が解除され、回転レバー50を第1回転軸部13で回転させ、踏部21を車両前方側に変位させることができる。
【0059】
以上説明した本実施形態では、車両衝突時において、カシメピン15を破断させることなく、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定を解除することができる。そのため、カシメピン15の破断荷重等を考慮することなく、第2アーム40及び回転レバー50の形状や各軸部の位置を設計することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0060】
衝突小レバー60が規制位置である場合に、第1回転軸部13とカシメピン15とを結ぶ直線と、第2回転軸部14とカシメピン15とを結ぶ直線とが直交するように、第2アーム40におけるカシメピン15の位置が定められている。これにより、衝突小レバー60の回転開始直後において、切欠き部63が、第1回転軸部13とカシメピン15とを結ぶ直線に沿って、車両後方側と車両上方側との間を移動するため、カシメピン15が切欠き部63から外れやすくなり、ブレーキペダル装置1における後退防止時の不作動を抑制できる。
【0061】
(2-2)第2実施形態の変形例
第2アーム40に切欠き部を設けることで、車両衝突時に、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定を解除してもよい。
図8に表されるように、第2アーム40のオフセット部40Aには、カシメピン15に係合する切欠き部46が形成されている。切欠き部46は、オフセット部40Aにおいて車両後方側の縁が切り欠かれた形状であり、切欠き部46の内側の径は、カシメピン15を貫通可能な寸法となっている。
【0062】
本実施形態では、衝突小レバー60が規制位置である場合、第2アーム40の切欠き部46に衝突小レバー60を貫通するカシメピン15が係合することで、衝突小レバー60を介して、回転レバー50と第2アーム40とが固定されている。一方、衝突用ブラケット200が衝突小レバー60の第2当接部60Aに当接すると、第2回転軸部14を中心として下端部60Cをカシメピン15ごと、車両後方側に回転させる。本実施形態においても、衝突小レバー60の回転開始直後では、切欠き部63が、第1回転軸部13とカシメピン15とを結ぶ直線に沿って、車両後方側と車両上方側との間を移動するため、カシメピン15を切欠き部46から速やかに外すことができる。これにより、衝突小レバー60を介した回転レバー50と第2アーム40との固定が解除され、回転レバー50を第1回転軸部13で回転させ、踏部21を車両前方側に変位させる。
【0063】
(3)その他の実施形態
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、固定部材としてカシメピン15を用いた。これに代えて、ボルト及びナットによって、回転レバー50と第2アーム40との固定及びその固定の解除を実現させてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、ブレーキペダル装置1は、踏力検出装置80を備えていた。これに代えて、ブレーキペダル装置1は、踏力検出装置80を備えていなくともよい。
【0065】
上述の実施形態では、操作ペダル機構20は、第1アーム22と、第2アーム40とがリンク部材30により結合されていた。これに代えて、操作ペダル機構20は、第1アームのみを有するものであってもよい。この場合において、第1アームには、第1回転軸部13により、回転レバー50を回転支持するとともに、上端部でカシメピン15を介して回転レバー50に固定されている。
【0066】
また、上述の実施形態では、第1アーム22をブレーキペダルとして本発明が適用されているが、車両で使用される各ペダル(例えば、アクセルペダル又はクラッチペダル等)として本発明が適用されてもよい。
【0067】
ブレーキペダル装置1の各部品は、金属製に限定されず、樹脂製であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…ブレーキペダル装置、10…ペダルブラケット、11…操作軸部、12…中間軸部、15…カシメピン、20…操作ペダル機構、21…踏部、22…第1アーム、30…リンク部材、40…第2アーム、40A…オフセット部、50…回転レバー、50A…第1当接部、51…クレビス保持部材、54…切欠き部、60…衝突小レバー、60A…第2当接部、70…クレビス、80…踏力検出装置、81…踏力SW、82…揺動レバー、90…オペレーティングロッド、200…衝突用ブラケット、P…ダッシュパネル