IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ ディベロップメント エービーの特許一覧

<>
  • 特許-オートバイ用安全装置 図1
  • 特許-オートバイ用安全装置 図2
  • 特許-オートバイ用安全装置 図3
  • 特許-オートバイ用安全装置 図4
  • 特許-オートバイ用安全装置 図5
  • 特許-オートバイ用安全装置 図6
  • 特許-オートバイ用安全装置 図7
  • 特許-オートバイ用安全装置 図8
  • 特許-オートバイ用安全装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】オートバイ用安全装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/20 20200101AFI20240527BHJP
   B62J 17/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B62J27/20
B62J17/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021205621
(22)【出願日】2021-12-18
(65)【公開番号】P2023090587
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】土生 優
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207777(WO,A1)
【文献】米国特許第11021126(US,B1)
【文献】特開2002-137780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/00 - 27/20
B62J 17/00
B62J 23/00
B60J 1/00 - 1/02
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイの乗員を保護するオートバイ用安全装置であって、
ハンドルの前方に位置し、進行方向前方に面する第1のシールドと、当該第1のシールドの後方に位置し、乗員に面するように配置された第2のシールドとを有する2重構造のウィンドシールドと;
前記第1及び第2のシールドの間で膨張・展開するエアバッグと;
前記エアバッグに送出される膨張ガスを発生するインフレータと;
を備え
前記エアバッグは、前記ウィンドシールドの左側縁部に沿って展開する左側チャンバと、前記ウィンドシールドの右側縁部に沿って展開する右側チャンバとを含む
ことを特徴とするオートバイ用安全装置。
【請求項2】
前記エアバッグが展開した状態において、前記左側チャンバと前記右側チャンバは、前記ウィンドシールドの中央付近において離間していることを特徴とする請求項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項3】
前記エアバッグが展開した状態において、前記左側チャンバ及び前記右側チャンバの各々の上部及び下部には、前記ウィンドシールドの中央側に突出した突出領域が形成されることを特徴とする請求項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項4】
前記エアバッグを収容し、当該エアバッグの展開に伴って開裂するエアバッグケースを備えたことを特徴とする請求項1、2又はに記載のオートバイ用安全装置。
【請求項5】
前記エアバッグケースは、前記ウィンドシールドの左縁部に沿って配置され、前記エアバッグの前記左側チャンバを収容する左側ケースと;前記ウィンドシールドの右縁部に沿って配置され、前記エアバッグの前記右側チャンバを収容する右側ケースとを含むことを特徴とする請求項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項6】
前記インフレータからの膨張ガスを前記エアバッグに導くガイド部材を更に備えたことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、入力側の端部が前記インフレータに連結され、出力側の端部が前記左側チャンバと前記右側チャンバとに連結されるY字状の流路を形成することを特徴とする請求項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項8】
前記エアバッグは、単一のチャンバから構成されることを特徴とする請求項1に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項9】
前記エアバッグは、前記ウィンドシールドの下端付近から上方に向かって展開することを特徴とする請求項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項10】
前記第1及び第2のシールドは、前記エアバッグが膨張・展開することによって、互いの間隔が広がるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項11】
前記第1及び第2のシールドの両方又は一方が、前記エアバッグが膨張・展開することによって、他方から離れる方向に移動することを特徴とする請求項10に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項12】
前記移動は、前記第1及び第2のシールドの上方部分の間隔が広がるように、前記第1及び第2のシールドの少なくとも一方の下端を軸とした回動であることを特徴とする請求項11に記載のオートバイ用安全装置。
【請求項13】
前記第1及び第2のシールドの少なくとも一方の下部には当該シールドを支持する支持部材が設けられており、
前記エアバッグが膨張・展開することによって、前記支持部材が変形することを特徴とする請求項11に記載のオートバイ用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを用いたオートバイ用の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(4輪車)においては、事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを装備することが標準的になりつつある。近年では更に、オートバイ(2輪車)にエアバッグ装置を搭載することが、提案され、実用化されている。
【0003】
自動車に搭載されるエアバッグ装置においては、ステアリングホイールやインストルメントパネル等を展開したエアバッグの支持面(反力面)として利用することができるため、エアバッグの展開挙動及び展開姿勢を安定させることが比較的容易である。これに対して、オートバイに搭載されるエアバッグは、展開したエアバッグを支持する部分が少なく、エアバッグの展開挙動、展開姿勢を安定させることが課題である。
【0004】
また、オートバイは自動車に比べてエアバッグ装置を収容するスペースが限られるため、エアバッグ装置の設置位置によっては、展開したエアバッグがハンドルに干渉して、展開挙動が不安定となったり、乗員に傷害を与えたりする恐れがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、安定した乗員保護性能を発揮することができるオートバイ用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、オートバイの乗員を保護するオートバイ用安全装置であって、ハンドルの前方に位置し、進行方向前方に面する第1のシールドと、当該第1のシールドの後方に位置し、乗員に面するように配置された第2のシールドとを有する2重構造のウィンドシールドと;前記第1及び第2のシールドの間で膨張・展開するエアバッグと;前記エアバッグに送出される膨張ガスを発生するインフレータと;を備えている。
【0007】
ここで、「乗員を保護する」とは、少なくとも、衝突によって乗員が前方に投げ出されるのを抑制すること、すなわち前方への移動を拘束することと、乗員の頭部や胸部が自分のオートバイの前方部分に衝突するのを防ぐことを含む。
【0008】
また、「ウィンドシールド」とは、「風防」、「ウィンドスクリーン」、「メーターバイザー」等と称することができ、乗員の前方において、オートバイのヘッドライトやハンドル等の他の構造部よりも上方に延びる、板状の部材であり、透明、半透明、不透明の場合がある。
【0009】
なお、以下の説明において、オートバイの進行方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、進行方向に対して右側を「右方向」、左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、垂直上方を「上方」、垂直下方を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0010】
上記のように、本発明においては、二重構造のウィンドシールドの間でエアバッグを展開させる構成であるため、エアバッグの膨張・展開によって第1及び第2のシールドが前後方向に拡張し、衝突や急ブレーキ等の非常事態の際に、前方に投げ出されようとする乗員をクッション性が付与されたウィンドシールドによって受け止め、拘束することが可能となる。
【0011】
エアバッグは、2枚のシールドの間で展開するため、シールドが反力面として作用し、展開挙動が安定することになる。
【0012】
本発明ではウィンドシールドの表面で乗員を拘束するため、拘束面積を拡大するためにエアバッグ自体を大きくする必要は無く、エアバッグの容量、インフレータの能力を最小限する抑えることができる。すなわち、エアバッグによって乗員を拘束する場合に比べて、乗員を受け止める面積を容易に拡大することができる。
【0013】
前記エアバッグは、前記ウィンドシールドの左側縁部に沿って展開する左側チャンバと、前記ウィンドシールドの右側縁部に沿って展開する右側チャンバとを含む構成とすることができる。
【0014】
上記のように、エアバッグを左右に分割することにより、エアバッグをウィンドシールドの左右縁部に収容することができ、エアバッグ装置が作動していない状況で、ウィンドシールドを通した視界を大きく確保することができる。
【0015】
前記エアバッグが展開した状態において、前記左側チャンバと前記右側チャンバは、前記ウィンドシールドの中央付近において離間させることができる。
【0016】
ここで、「離間」とは、左右のエアバッグ(チャンバ)がウィンドシールドの左右縁部に沿って細長く展開する場合の他、左右のチャンバがウィンドシールドの中心側に向かって張り出すが、密着しないような状態を含むものである。
【0017】
前記エアバッグが展開した状態において、前記左側チャンバ及び前記右側チャンバの各々の上部及び下部には、前記ウィンドシールドの中央側に突出した突出領域を形成することができる。
【0018】
ここで、「上部及び下部」とは、厳密に上端及び下端のみに限定されるものではなく、ウィンドシールドの形状に応じて適宜配置変更可能である。例えば、ウィンドシールドが概ね長方形であれば、四隅に突出領域を形成することができる。そうすることにより、エアバッグが展開した時に、第1及び第2のシールドが捻れる(波打つ)ことなく、安定して姿勢を維持することが可能となる。
【0019】
前記エアバッグを収容し、当該エアバッグの展開に伴って開裂するエアバッグケースを備えることができる。
【0020】
前記エアバッグケースは、前記ウィンドシールドの左縁部に沿って配置され、前記エアバッグの前記左側チャンバを収容する左側ケースと;前記ウィンドシールドの右縁部に沿って配置され、前記エアバッグの前記右側チャンバを収容する右側ケースとを含むことができる。
【0021】
前記インフレータからの膨張ガスを前記エアバッグに導くガイド部材を更に備えることができる。
【0022】
ガイド部材を採用することにより、インフレータをウィンドシールドから少し離れた位置に固定したり、シリンダ状のインフレータを水平に倒して配置することが可能となる。すなわち、インフレータの配置の自由度が向上する。
【0023】
前記ガイド部材は、入力側の端部が前記インフレータに連結され、出力側の端部が前記左側チャンバと前記右側チャンバとに連結されるY字状の流路を形成する構造とすることができる。
【0024】
前記エアバッグは、単一のチャンバから構成することができる。そして、前記エアバッグは、前記ウィンドシールドの下端付近から上方に向かって展開する構成とすることができる。
【0025】
単一のエアバッグを採用することにより、構造がシンプルになるとともに、エアバッグの展開速度の向上を図ることが可能となる。この場合、エアバッグは円形、楕円形の他、長方形や逆三角形、ハート型等の形状とすることができる。
【0026】
前記第1及び第2のシールドは、前記エアバッグが膨張・展開することによって、互いの間隔が広がるように構成されている。
【0027】
2枚のシールドを前後方向に広げることにより、乗員を受け入れる際のクッション性を確保することができる。
【0028】
前記第1及び第2のシールドの両方又は一方が、前記エアバッグが膨張・展開することによって、他方から離れる方向に移動する構成とすることができる。
【0029】
前記移動は、前記第1及び第2のシールドの上方部分の間隔が広がるように、前記第1及び第2のシールドの少なくとも一方の下端を軸とした回動とすることができる。
【0030】
前記第1及び第2のシールドの少なくとも一方の下部には当該ウィンドシールドを支持する支持部材が設けられており、前記エアバッグが膨張・展開することによって、前記支持部材が変形する構造とすることができる。
【0031】
本発明は、あらゆるタイプのオートバイに適用可能である。例えば、スクーター、アドベンチャー、ツアラー、スポーツツアラー、スクラブラー、クラシック(レトロ)、アメリカン(クルーザー)、ネイキッド、ストリートファイター、オフロード・スーパーモタード、スーパースポーツ、ストリート、ミニバイク、三輪車トライク、四輪車バギー等が含まれる。
更には、海、湖、川等の水面を移動する水上バイクや、雪上を移動するスノーモービル、オートバイの横に連結されたサイドカー等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1(A)は、本発明に係るオートバイ用安全装置を装備したオートバイを示す側面図であり、当該装置が作動していない状態を示す。また、同図(B)は、当該安全装置の要部の構造を示す側面図である。
図2図2(A)は、本発明に係るオートバイ用安全装置を装備したオートバイを示す側面図であり、衝突によって当該装置が作動した状態を示す。また、同図(B)は、当該安全装置の要部の構造を示す側面図である。
図3図3(A)は、本発明に係るオートバイ用安全装置の構成を示す正面図であり、当該装置が作動する前の状態を示す。また、同図(B)は、A-A方向の概略断面図である。
図4図4(A)は、本発明に係るオートバイ用安全装置のエアバッグが展開した状態を示す正面図であり、エアバッグ以外の構成については図示を省略する。また、同図(B)は、B-B方向の概略断面図である。
図5図5は、本発明に係るオートバイ用安全装置のインフレータ周辺の構造を示す説明図である。
図6図6(A),(B)は、本発明に係るオートバイ用安全装置に適用可能なウィンドシールド支持部材の構成を示す概略平面図である。
図7図7(A),(B),(C),(D)は、本発明に係るオートバイ用安全装置におけるウィンドシールドの移動(変形)の態様を示す説明図である。
図8図8(A),(B),(C)は、本発明に係るオートバイ用安全装置におけるウィンドシールドの態様を示す説明図である。
図9図9(A),(B)は、本発明の他の態様に係るエアバッグの展開形状を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るオートバイ用安全装置について、添付図面に基づいて説明する。
【0034】
図1及び図2は、本発明に係るオートバイ用安全装置を装備したオートバイを示す側面図であり、当該装置が作動していない状態(図1)と、衝突によって当該装置が作動した状態(図2)を示す。
【0035】
本発明は、オートバイ10の乗員Rを保護するオートバイ用安全装置であって、ハンドル18の前方に位置し、進行方向前方に面する第1のシールド12aと、当該第1のシールド12aの後方に位置し、乗員Rに面するように配置された第2のシールド12bとを有する2重構造のウィンドシールド12と;第1及び第2のシールド12a,12bの間で膨張・展開するエアバッグ16と;エアバッグに送出される膨張ガスを発生するインフレータ14と;を備えている。
【0036】
図2(B)に示すように、第1及び第2のシールド12a,12bは、エアバッグ16が膨張・展開することによって、互いの間隔が相対的に広がるように構成されている。すなわち、第1及び第2のシールド12a,12bの両方又は一方が、エアバッグ16が膨張・展開することによって、他方から離れる方向に移動する構成となっている。
【0037】
図3は、本発明に係るオートバイ用安全装置の構成を示す正面図であり、当該装置が作動する前の状態を示す。また、同図(B)は、A-A方向の概略断面図である。図4(A)は、本発明に係るオートバイ用安全装置のエアバッグ16が展開した状態を示す正面図であり、エアバッグ16以外の構成については省略して示す。また、同図(B)は、B-B方向の概略断面図である。
【0038】
図3図4に示すように、本発明に係る安全装置は、エアバッグ16を収容し、当該エアバッグ16の展開に伴って開裂するエアバッグケース22L,22Rを備えることができる。エアバッグケース22L,22Rは、ウィンドシールド12の左縁部に沿って配置され、エアバッグ16の左側チャンバ16Lを収容する左側ケース22Lと;ウィンドシールド12の右縁部に沿って配置され、エアバッグ16の右側チャンバ16Rを収容する右側ケース22Rとから構成されている。
【0039】
図4(A)に示すように、エアバッグ16は、ウィンドシールド12の左側縁部に沿って展開する左側チャンバ16Lと、ウィンドシールド12の右側縁部に沿って展開する右側チャンバ16Rとを含んでいる。これら一対のチャンバ16L,16Rは、バッグとして独立している。
【0040】
上記のように、エアバッグ16を左右に分割することにより、エアバッグ16をウィンドシールド12の左右縁部に収容することができ、エアバッグ装置が作動していない状況で、ウィンドシールド12を通した視界を大きく確保することができる。
【0041】
図4(A)に示すように、エアバッグ16が展開した状態において、左側チャンバ12Lと右側チャンバ12Rは、ウィンドシールド12の中央付近において離間した構造となっている。
【0042】
図3(B)に示すように、エアバッグケース22L,22Rは、樹脂等によって三角筒状に成形されており、エアバッグ16の膨張に伴って内側縁部が開裂するようになっている。この開裂箇所は、他の箇所よりも脆弱に成形されている。なお、エアバッグケース22L,22Rの形状は、三角筒状以外にも、四角筒状や円筒状とすることもできる。エアバッグケース22L,22Rに収容される左右のチャンバ16L,16Rは、例えば、ロール状又は蛇腹状に圧縮される。
【0043】
図5は、インフレータ14周辺の構造を示す説明図である。インフレータ14と左側チャンバ16Lと右側チャンバ16Rとは、柔軟な素材からなるガイド部材20によって連結される。ガイド部材20は、例えば、エアバッグ16と同一の生地によって成形され、入力側の端部20aがインフレータ14に連結され、一対の出力側の端部20bが左側チャンバ16Lと右側チャンバ16Rとに連結されるY字状の流路を形成する。そして、インフレータ14から放出される膨張ガスが、左側チャンバ16Lと右側チャンバ16Rに均等に分配されることになる。
【0044】
また、図5に示すように、エアバッグユニットの実際の収容状態においては、インフレータ14を概ね水平な状態で収容するインフレータボックス30が使用される。そして、スタッドボルト14aによってインフレータ14を当該ボックス30に固定するようになっている。
【0045】
図6(A)、(B)は、本発明に係るオートバイ用安全装置に適用可能なウィンドシールド支持部材の構成を示す概略平面図である。(A)に示す例では、左右一対の支持部材26L,26Rによってウィンドシールド12を支持している。なお、第1のシールド12aと第2のシールド12bの何れか一方、又は両方に支持部材26L,26Rを設けることができる。
【0046】
図6(B)に示す例では、ウィンドシールド12の下端中心付近に1つの支持材28が設けられている。なお、第1のシールド12aと第2のシールド12bの何れか一方、又は両方に支持部材28を設けることができる。
【0047】
なお、本発明においては、ウィンドシールド12を支持する特別な支持部材を設けることなく、車両構造部に対してウィンドシールド12を直接連結することも可能である。
【0048】
図7(A),(B),(C),(D)は、本発明に係るオートバイ用安全装置におけるウィンドシールド12の移動(変形)の態様を示す説明図である。
【0049】
図7(A)に示す態様においては、第1及び第2のシールド12a,12bの下端部に支持部材32a,32bが設けられている。そして、エアバッグ16が展開すると、第1及び第2のシールド12a,12bの両方が、支持部材32a,32bを介して、軸34を中心に回動し、両方のシールド12a,12bが離れる方向に移動する。
【0050】
図7(B)に示す態様においては、第1のシールド12aの下端はオートバイ10の構造部に固定され、第2のシールド12bの下端部に支持部材32bが設けられている。そして、エアバッグ16が展開すると、第2のシールド12bが、支持部材32bを介して、軸36を中心に回動し、第2のシールド12bが第1のシールド12aから離れる方向に移動する。
【0051】
図7(C)に示す態様においては、第2のシールド12bの下端はオートバイ10の構造部に固定され、第1のシールド12aの下端部に支持部材32aが設けられている。そして、エアバッグ16が展開すると、第1のシールド12aが、支持部材32aを介して、軸38を中心に回動し、第1のシールド12aが第2のシールド12bから離れる方向に移動する。
【0052】
図7(D)に示す態様においては、第1のシールド12aの下端はオートバイ10の構造部に固定され、第2のシールド12bの下端部に変形可能な支持部材42が設けられている。そして、エアバッグ16が展開すると、支持部材42が変形し、第2のシールド12bが第1のシールド12aから離れる方向に移動する。
【0053】
図8(A),(B),(C)は、本発明に係るオートバイ用安全装置におけるウィンドシールド12の態様を示す説明図である。なお、各図に示す状態はエアバッグ16が展開する前の状態であり、説明の便宜上、ウィンドシールド12(12a,12b)以外の構成要素については図示を省略する。
【0054】
図8(A)に示す態様においては、第1及び第2のシールド12a,12bが平行な状態で湾曲している。図8(B)に示す態様においては、第1及び第2のシールド12a,12bの上方部分の間隔が狭く、下方部分の間隔が広くなっている。また、図8(C)に示す態様においては、第1及び第2のシールド12a,12bの下方部分の間隔が狭く、上方部分の間隔が広くなっている。
【0055】
図9(A),(B)は、本発明の他の態様に係るエアバッグの展開形状を示す概略正面図である。なお、説明の便宜上、エアバッグ以外の構成要素については図示を省略する。
【0056】
図9(A)に示す態様においては、エアバッグを構成する左右のチャンバ116L,116Rの形状に特徴がある。一対のチャンバ116L,116Rは、ガイド部材20との連結部から上方に向かって延びている。左側チャンバ116Lの上部及び下部には、ウィンドシールド12の中央側に突出した突出領域126a、126bが形成されている。同様に、右側チャンバ116Rの上部及び下部には、ウィンドシールド12の中央側に突出した突出領域128a、128bが形成されている。
【0057】
ここで、「上部及び下部」とは、厳密に上端及び下端のみに限定されるものではなく、ウィンドシールドの形状に応じて適宜配置変更可能である。例えば、ウィンドシールドが概ね長方形であれば、四隅に突出領域を形成することができる。その場合、第1及び第2のシールドを安定して保持することが可能となる。
【0058】
図9(B)に示す態様においては、エアバッグ216は、単一のチャンバから構成されている。そして、エアバッグ216は、ウィンドシールド12の下端付近から上方に向かって展開する構成となっている。
【0059】
単一のエアバッグ216を採用することにより、構造がシンプルになるとともに、エアバッグ216の展開速度の向上を図ることが可能となる。なお、エアバッグ216は円形、楕円形の他、長方形や逆三角形、ハート型等の形状とすることができる。
【0060】
(作用、効果)
上記のように、本発明においては、二重構造のウィンドシールド12(12a,12b)の間でエアバッグ16(116,216)を展開させる構成であるため、エアバッグの膨張・展開によって第1及び第2のシールド12a,12bが前後方向に拡張し、衝突や急ブレーキ等の非常事態の際に、前方に投げ出されようとする乗員Rをクッション性が付与されたウィンドシールド12によって受け止め、拘束することが可能となる。
【0061】
また、エアバッグ16,116,216は、2枚のシールド12a,12bの間で展開するため、シールド12a,12bが反力面として作用し、エアバッグの展開挙動が安定することになる。
【0062】
さらに、本発明ではウィンドシールド12(12b)の表面で乗員を拘束するため、拘束面積を拡大するためにエアバッグ自体を大きくする必要は無く、エアバッグの容量、インフレータの能力を最小限する抑えることができる。すなわち、エアバッグによって乗員を直接拘束する場合に比べて、乗員を受け止める面積を容易に拡大することができる。
【0063】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9