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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】往復圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
F04B27/12 L
F04B27/12 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021560036
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020059700
(87)【国際公開番号】W WO2020207936
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】102019109701.0
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019112245.7
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ギーゼ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-052183(JP,A)
【文献】特開平03-258975(JP,A)
【文献】特開平03-210079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動プレート(30)と少なくとも2つの往復ピストン(25)とを有する往復圧縮機であって、
前記揺動プレート(30)は少なくとも1つの揺動カム(31、32)と少なくとも1つのバランスウェイト(38、39)を有し、それらがプレート本体(40)の第1の環状面(41)に配置され、かつ前記往復ピストン(25)はそれぞれピストン軸線Kを有し、該ピストン軸線は円直径dpを有する円の共通の円ライン上に配置され、
前記揺動プレート(30)は、
揺動プレート質量mと、
密度ρと、
揺動プレート(30)の傾斜角度Ψに依存する重心位置yと、
前記プレート本体(40)の平行な第2の環状面(41、42)に対する第1の環状面(41)の間隔に相当する厚みzと、
駆動中に、前記揺動プレート(30)の傾斜角度Ψに依存する揺動プレートアンバランスと、を有し、
前記揺動プレートアンバランスと基準アンバランスとの間のアンバランス比率Mについて、
【数1】
が、成立し、
前記基準アンバランスは、基準質量mrefと半分の円直径dpからなる積であり、前記基準質量mrefは前記プレート本体(4)の厚みz、前記円直径dp及び前記揺動プレート(30)の密度ρから求められ、Ψ=0°とΨ=23°の間の傾斜角度範囲内の複数の離散的な全ての傾斜角度Ψにおけるアンバランス比率Mの二乗平均平方根MRMSについて、
【数2】
が成立し、
RMS<0.045である、
往復圧縮機。
【請求項2】
前記揺動プレート質量mと前記基準質量mrefとの間の質量の比率m/mrefは、最大で2.2である、ことを特徴とする請求項1に記載の往復圧縮機。
【請求項3】
前記プレート本体(40)は、複数の環状面(41、42)の間に平行に配置された中心平面Eを有し、中心平面Eからの前記揺動プレート(30)の重心Sの間隔fと前記プレート本体(40)の厚みzとの間の比率f/zは、最大で0.である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の往復圧縮機。
【請求項4】
重心Sが、前記プレート本体(40)の外部、及び/又はプレート本体(40)の回転軸線Aの外部に配置されている、ことを特徴とする請求項3に記載の往復圧縮機。
【請求項5】
第1及び/又は第2の環状面(41、42)にそれぞれ接触カム(43、44)が配置され、該接触カムはプレート本体(40)と堅固に結合され、前記接触カム(43、44)は圧縮ばね(45、46)のための外側へ湾曲した支持面を有している、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項6】
前記揺動プレート(30)が、往復圧縮機の駆動軸(10)を挿通するための軸孔(34)を有し、前記接触カム(43、44)は直接的に前記軸孔(34)に隣接している、ことを特徴とする請求項5に記載の往復圧縮機。
【請求項7】
前記揺動プレート(30)は、2つの揺動カム(31、32)を有し、それらが互いに対して平行に方向づけされている、ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項8】
前記第1の環状面(41)に第1のバランスウェイト(38)が設けられ、該第1のバランスウェイト(38)は前記プレート本体(40)の中心軸線Tに関して第1の角度α1だけ回動して配置され、中心軸線Tは前記プレート本体(40)の直径に沿って前記揺動カム(31、32)の間の中央に延びている、ことを特徴とする請求項7に記載の往復圧縮機。
【請求項9】
前記第2の環状面(42)に第2のバランスウェイト(39)が設けられ、該第2のバランスウェイト(39)は前記プレート本体(40)の中心軸線Tに関して第2の角度α2だけ回動して配置され、中心軸線Tは前記プレート本体(40)の直径に沿って前記揺動カム(31、32)の間の中央に延びている、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の往復圧縮機。
【請求項10】
前記第2の環状面(42)に第2のバランスウェイト(39)が設けられ、該第2のバランスウェイト(39)は前記プレート本体(40)の中心軸線Tに関して第2の角度α 2 だけ回動して配置され、
第1の角度α1と第2の角度α2は、異なる大きさであり、及び/又は異なる符号を有している、ことを特徴とする請求項に記載の往復圧縮機。
【請求項11】
前記揺動プレート(30)は2つの揺動カム(31、32)を有し、第1の揺動カム(31)は第2の揺動カム(32)よりも大きい材厚を有している、ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項12】
駆動プレート(20)が設けられ、該駆動プレート(20)は揺動カム(31、32)の間に延び2つの駆動カム(22、23)を有する、ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項13】
前記駆動プレート(20)は第3のバランスウェイト(24)を有し、該第3のバランスウェイト(24)はセンター軸線Zに関して第3の角度α3だけ回動して配置され、該センター軸線Zは前記駆動プレート(20)の直径に沿って前記駆動カム(22、23)の間の中央に延びている、ことを特徴とする請求項12に記載の往復圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載された往復圧縮機に関する。この種の往復圧縮機は、たとえば特許文献1から知られている。
【背景技術】
【0002】
この既知の往復圧縮機は駆動軸を有し、駆動軸と駆動プレートとが共同回転するために結合されている。揺動プレートは、滑り軸受を介して複数の往復ピストンと結合され、かつ軸孔を有しており、その軸孔に駆動軸が挿通されている。さらに、揺動プレートには揺動カムが設けられており、それが湾曲したカム先端を有し、そのカム先端が駆動プレートの滑り面に当接する。
【0003】
駆動中に発生する力を吸収するために、揺動プレートは他と比べて中実に構成されている。それが、比較的大きい質量慣性モーメントをもたらし、それが振動をもたらす。この振動が騒音発生をもたらし、その騒音発生は、内燃機関を有する自動車内で既知の往復圧縮機を使用する場合には、知覚されることはない。むしろ、内燃機関の騒音がこの騒音発生に重畳される。
【0004】
もちろん、特に車両空調設備のために利用される、往復圧縮機の騒音発生は、ますます多くなる電気車両又はハイブリッド車両においては、もはやエンジン騒音に重畳されることはなく、したがって煩わしいと感じられる。その限りにおいて、往復圧縮機の騒音発生を減少させる努力がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第1148241(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、静かな駆動と高い効率を特徴とする、往復圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の主題によって解決される。
【0008】
具体的には、本発明は、揺動プレートと少なくとも2つの往復ピストンとを有する往復圧縮機を提供する考えに基づいており、揺動プレートは、少なくとも1つの揺動カムと、少なくとも1つのバランスウェイトとを有している。揺動カムとバランスウェイトは、プレート本体の第1の環状面に配置されている。往復ピストンは、それぞれピストン軸線Kを有しており、それが、円直径dpを有する円の共通の円ライン上に配置されている。
揺動プレートは、
揺動プレート質量mと、
密度ρと、
揺動プレートの傾斜角度Ψに依存する重心位置yと、
プレート本体の平行な第2の環状面に対する第1の環状面の間隔に相当する、厚みzと、
駆動中に、揺動プレートの傾斜角度Ψに依存する揺動プレートアンバランスと、
を有している。
【0009】
揺動プレートアンバランスと基準アンバランスとの間のアンバランス比率Mについて、
【数1】
が成立し、基準アンバランスは、基準質量mrefと半分の円直径dpとの積である。基準質量mrefは、プレート本体の厚みz、円直径dp及び揺動プレートの密度ρから求められる。
【0010】
本発明によれば、Ψ=0°とΨ=23°の間の傾斜角度範囲内の複数の、特にすべての、離散的な完全な傾斜角度Ψにわたるアンバランス比率Mの二乗平均平方根MRMSについて、
【数2】
が成立し、MRMS<0.045、特にMRMS<0.035、特にMRMS<0.022、特にMRMS<0.01、特にMRMS<0.006である。「n」は、傾斜角度Ψの数(傾斜角度数)である。傾斜角度の数nについて、n=23が成立すると、効果的である。
【0011】
本発明において、揺動プレートは小さい質量慣性モーメントを有しているので、駆動中にわずかな騒音しか発生しない。したがって、往復圧縮機は、重要な傾斜角度範囲にわたってきわめてしずかに作動し、したがって特に電気車両又はハイブリッド車両に使用するのに適している。
【0012】
基準質量mrefを計算するために用いられる円直径dpは、往復圧縮機の駆動軸に対して垂直に方向づけされている円の直径に相当し、かつすべての往復ピストン、特にその長手軸線を結合する。
【0013】
本出願の枠内で、カムと称するのは、軸又はプレート上に配置されている、角丸の突出部であって、それが相手部材の接触輪郭もしくは滑り輪郭に沿って滑り移動する。すなわち揺動カムは、たとえば揺動プレートに突出部として形成されている。
【0014】
本出願の枠内で、プレート本体というのは、揺動プレートの一部であって、2つの平行な環状面の間に延びており、かつ軸方向において揺動プレートの外側エッジによって制限されている。プレート本体は、好ましくは揺動プレートの一体的な構成要素である。特に揺動プレートは、好ましくは一体的に形成されており、かつプレート本体、少なくとも1つの揺動カム及び少なくとも1つのバランスウェイトを有している。
【0015】
揺動カムとバランスウェイトは、実質的にアンバランス質量であって、揺動プレートが回転する場合に、それらが振動をもたらすことができる。プレート本体の質量に対する揺動カムとバランスウェイトの質量(もしくはプレート本体の質量に対する揺動プレート全体の質量)が小さい場合に、振動がより小さい騒音発生をもたらすことが、明らかにされている。同時に、減少された質量によって効率が高まる。
【0016】
その限りにおいて、好ましい実施形態において、プレート本体の質量mrefに対する揺動プレート全体の質量mの質量比率(m/mref)は、最大で2.2、特に最大で1.9、特に最大で1.85である。
【0017】
質量比率m/mrefの調節の代わりに、あるいはそれに加えて、プレート本体は環状面の間に平行に配置された中心平面Eを有することができ、中心平面Eからの揺動プレートの重心Sの間隔fとプレート本体の厚みzの間の間隔比率f/zは、最大で0.である。特に重心Sはプレート本体の外部及び/又はプレート本体の回転軸線の外部に配置することができる。
【0018】
さらに重心Sは、駆動軸の長手軸線に関して偏心して配置することができる。
【0019】
揺動プレートの重心の位置は、揺動プレートの駆動中に発生する振動及びそれに伴って揺動プレートを搭載した往復圧縮機の騒音発生に影響を与える。プレート本体の中心平面からの最大で0.の間隔比率(f/z)が、揺動プレートの特に静かな運転をもたらすことが、明らかにされている。
【0020】
本発明に係る往復圧縮機の好ましい実施形態において、プレート本体の第1及び/又は第2の環状面にそれぞれ接触カムが配置されており、その接触カムがプレート本体と堅固に結合されており、接触カムは圧縮ばねのための、外側へ湾曲した支持面を有している。好ましくは、接触カムは、揺動プレートの軸孔に直接隣接しており、その軸孔は往復圧縮機の駆動軸を挿通するために設けられている。
【0021】
接触カムの湾曲した支持面によって、揺動プレートは容易に傾斜することができ、圧縮ばねに対する接触は実質的に変化しない。特に接触カムと圧縮ばねとの間の接触面積は、揺動プレートの様々な傾斜角度において、実質的に等しく留まることができる。したがって全体として、揺動プレートの騒音の少ない揺動を達成することができる。というのは、湾曲した支持面によって、揺動プレートが傾く場合に生じる抵抗が小さいからである。それが、往復圧縮機の安定した静かな駆動に寄与する。
【0022】
好ましくは、揺動プレートは、2つの揺動カムを有しており、それらは互いに対して平行に方向づけされている。揺動プレートは、さらに、中心軸線Tを有しており、それがプレート本体の直径に沿って揺動カムの間の中央に延びている。
【0023】
往復圧縮機の好ましい形態において、プレート本体の第1の環状面に第1のバランスウェイトが設けられており、それが、好ましくはプレート本体の中心軸線Tに関して第1の角度α1だけ回動して配置されている。このバランスウェイトが、揺動カムによって発生されるアンバランスもしくは質量慣性モーメントを補償する。
【0024】
代替的又は付加的に、プレート本体の第2の環状面に第2のバランスウェイトを設けることができ、それが、プレート本体の中心軸線Tに関して第2の角度α2だけ回動して配置されている。したがってこの第2のバランスウェイトは、プレート本体の、揺動カムに対向する側に配置されており、傾斜角度が異なる場合でも、揺動プレートのアンバランスを補償する。全体として、このようにして、第2のバランスウェイトは、さらに、揺動プレートの駆動中に発生する振動とそれに伴って往復圧縮機内の騒音発生も減少させる。
【0025】
好ましくは第1の角度α1と第2の角度α2は、異なる大きさであり、及び/又は異なる符号を有している。言い換えると、第1のバランスウェイトと第2のバランスウェイトは、互いに対して回動して配置されている。
【0026】
本発明の他の好ましい形態において、揺動プレートは2の揺動カムを有しており、それらが第1の揺動カムと第2の揺動カムを形成する。第1の揺動カムは、第2の揺動カムよりも大きい材厚を有することができる。もたらされるピストン力に基づいて、第1の揺動カムには第1の揺動カムよりも大きい力が作用する。したがってより強い力で負荷をかけられる第1の揺動カムが、より大きい材厚で形成される。負荷の少ない第2の揺動カムは、より小さい材厚を有することができる。したがって重量削減が得られ、それが、往復圧縮機の全体質量と騒音発生の著しい削減に寄与する。
【0027】
好ましくは駆動プレートが設けられており、その駆動プレートは、揺動カムの間に延びる2つの駆動カムを有している。この駆動プレートが第3のバランスウェイトを有することができ、それがセンター軸線Zに関して第3の角度α3だけ回動して配置されている。このセンター軸線Zは、好ましくは駆動プレートの直径に沿って駆動カムの間の中央に延びている。
【0028】
以下で、添付の図式的な図面を参照しながら、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は好ましい実施例に基づく本発明に係る往復圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2図1に示す往復圧縮機の駆動プレートと揺動プレートとを有する駆動軸を示す平面図である。
図3図3図1に示す往復圧縮機の駆動プレートと揺動プレートとを有する駆動軸を示す縦断面図である。
図4図4は、湾曲した支持面を有する、接触カムを備えた揺動プレートの一部を示す側面図である。
図5a図5aは第2のバランスウェイトを有する揺動プレートの背面図である。
図5b図5bは図5aに示す揺動プレートの側面図である。
図5c図5cは、第1のバランスウェイトと揺動カムとを有する、図5aに示す揺動プレートの正面図である。
図6図6は基準質量を計算するための実際の基準揺動プレートの平面図と側面図である。
図7図7図1に示す本発明に係る往復圧縮機と従来技術に基づく往復圧縮機のアンバランス比率を比較するための図である。
図8a図8aは駆動カムと第3のバランスウェイトとを有する駆動プレートの背面図である。
図8b図8bは図8aの駆動プレートの側面図である。
図8c図8cは図8aの駆動プレートの正面図である。
図9図9は本発明に係る往復圧縮機の重要な寸法の図式的な表示である。
図10図10は、揺動プレートと、駆動プレートと、駆動軸とを有する往復圧縮機のパワートレインを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、ハウジング15を有する往復圧縮機が示されている。ハウジング15内には駆動軸10が軸承されている。駆動軸10が駆動プレート20を支持しており、その駆動プレートが駆動軸10と共同回転するために結合されている。さらに揺動プレート30が設けられており、それが軸孔34を有し、その軸孔に駆動軸10が挿通されている。揺動プレート30は、滑り軸受37を介して複数の往復ピストン25と力を伝達するように係合している。往復ピストン25はシリンダ26内で案内されており、それらのシリンダがそれぞれ終端面28を有している。
【0031】
揺動プレート30は、第1の環状面41と第2の環状面42を有している。これらの環状面41、42は、互いに対して平行に配置されており、かつプレート本体40を画成している。このプレート本体40は厚みzを有している。したがって、この厚みzは第1の環状面41と第2の環状面42の間の間隔に相当する。
【0032】
第1の環状面41は駆動プレート20へ向けられ、それに対して第2の環状面42はシリンダ26へ向けられている。第1の環状面41から第1の揺動カム31と第2の揺動カム32が出ており、それらがそれぞれカム先端33を有している。各カム先端33は、対応する滑り面21に当接し、その滑り面は駆動プレート20に形成されている。
【0033】
駆動プレート20は第1の駆動カム22と第2の駆動カム23を有しており、それらは揺動カム31、32の間に延びている。滑り面21は、それぞれ側方外側において駆動カム22、23に直接隣接して形成されている。図1においては、第2の揺動カム32に対向する滑り面21は、駆動プレート20の第2の駆動カム23によって覆われている。滑り面21は、駆動プレート20と一体的に形成されている。
【0034】
振動のない回転のために、揺動プレート30にはさらに、第1のバランスウェイト38と第2のバランスウェイト39が設けられている。第1のバランスウェイト38は、第1の環状面41から出ている。揺動プレート30の回転軸に関して、第1のバランスウェイト38は、揺動カム31、32に実質的に対向している。
【0035】
揺動カム31,32と第1のバランスウェイト38は、プレート本体40と一体的に形成されている。言い換えると、プレート本体40が揺動カム31、32及びバランスウェイト38、39と共に一体となって揺動プレート30を形成している。
【0036】
図2においては、揺動プレート30が全部で2つの揺動カム31、32を有していることが、上面で認識される。その場合に第1の揺動カム31が、第2の揺動カム32よりも大きい材厚を有している。
【0037】
2つの揺動カムのそれぞれの内側面は、駆動プレート20の駆動カム22、23に当接する。
【0038】
駆動プレート20は、駆動中に駆動軸10と共に回転し、その場合に回転力を揺動プレート30へ伝達する。もたらされる往復ピストン25の力は、主として第1の揺動カム31へ作用するので、この揺動カムがより厚い材厚で形成される。第2の揺動カム32は、第1の揺動カム31よりも少ない材厚を有しており、したがって往復圧縮機の重量を削減するのに寄与する。
【0039】
図2においては、2つの揺動カム31、32の各々がそれぞれ滑り面21に当接することも、認識される。したがってそれぞれの滑り面21とそれぞれの揺動カム31、32の間の接触面積は、大きさが異なる。特に第1の揺動カム31は、第2の揺動カム32よりも滑り面21に対して大きい接触面積を有する。したがって、長手軸線方向において第1の揺動カム31のための力伝達面積も、第2の揺動カム32に比較して増大される。これは、良好に力を伝達し、かつ重量を削減するために同様に効果的である。
【0040】
重量を削減し、かつ振動を減少させるために、特に寄与するのは、揺動プレート30全体の質量mと基準質量mrefの間の質量比率m/mrefが最大で2.2となることである。重量削減は、様々な措置によって達成することができる。たとえばプレート本体40の厚みzを減少させることができる。それによってプレート本体40の質量が低下するだけでなく、その場合にバランスウェイト38、39の質量も減少させることができる。
【0041】
基準質量mrefはプレート本体40、円直径dp及び揺動プレート30の密度ρから求められる。
【0042】
振動の減少は重心位置の改良によって達成することができる。そのために、揺動プレート30の重心Sをプレート本体40の中心平面Eから、大きさ(間隔f)だけ離隔させることができ、その大きさは最大でプレート本体40の0.6倍の厚みzに相当する(図9)。揺動プレート30の重心Sは、図9においてよく認識できるように、好ましくはプレート本体40の外部に位置している。さらにこの重心Sは、回転軸線Aの外部、特に上方、すなわち揺動カム31、32の近傍に配置することができる。
【0043】
図9は、図式的な表示において、改良された騒音放出と重量削減のために重要な、揺動プレートの寸法を示している。特にプレート本体40が示されている。バランスウェイト38、39は、見やすくする理由から示されていない。揺動カム31、32も、示されていない。むしろ揺動カム31、32は図式的に、すなわちそのリアルな外側輪郭によってではなく、1点鎖線で示唆されている。
【0044】
重心Sの位置は、図9においてよく認識され、その重心は、長手軸線14からyだけ、そして揺動プレート30の中心平面Eからは間隔fだけ変位して配置されている。重心Sの図示される位置は、揺動プレート30の駆動中に振動を減少するために特に好ましいことが明らかにされている。それによって往復圧縮機の騒音発生が、著しく減少される。
【0045】
図3は、明確にするために、駆動軸10、駆動プレート20及び揺動プレート30を通る長手断面を再度示している。図3からは、駆動プレート20と揺動プレート30が互いに対してどのように配置されているかが、よく認識できる。揺動プレート30は軸孔34を有しており、その軸孔は2つの円錐台形状の切り欠きから形成されている。それによって揺動プレートにとっては、あらかじめ定められた角度範囲内で揺動角度もしくは傾斜角度Ψを変化させることが、可能である。これは、好ましくは往復ピストン25内の背圧を用いて行われる。揺動プレート30が揺動する場合に、カム先端33が滑り面21に沿って滑り移動し、それが個々の往復ピストン25のストロークにも影響を与える。揺動プレート30の変化可能な傾斜角度Ψが、図9に同様に示されている。
【0046】
図5a~5cには、2つのバランスウェイト38、39を有する揺動プレート30が示されている。その場合に第1のバランスウェイト38は第1の環状面41から、そして第2のバランスウェイト39は第2の環状面42から出ている(図5b)。
【0047】
図5aにおいて認識できるように、第2のバランスウェイト39は、揺動プレート30の軸孔34を中心に実質的にU字状に形成されている。軸孔34は、貫通孔として形成されている。さらに第2のバランスウェイト39は、中心軸線Tから始まって第2の角度α2だけ回動して方向づけされている。
【0048】
図5cは揺動プレート30を正面図で示しており、第1のバランスウェイト38が認識可能である。第1のバランスウェイト38は、実質的に台形の形状を有しており、軸孔34に直接隣接している。この第1のバランスウェイト38は、中心軸線Tから始まって第1の角度α1だけ変位して配置されている。第1の角度α1と第2の角度α2は、それぞれ同じ回転方向に方位づけされており、すなわち2つのバランスウェイト38、39は、中心軸線Tに対して同じ方向に回動して配置されている。
【0049】
図6の表示は、基準質量mrefを計算するための基礎として用いられる、基準体積を簡単に示している。基準体積は、厚みz、すなわちプレート本体40の厚みを有するシリンダもしくはプレート本体40の環状面41、42の間の間隔に、相当する。シリンダの直径は、往復ピストン25が揺動プレート30と結合される、すべてのリンク点を通って延びる、もしくはこれらすべてのリンク点を結合する、円の直径に相当する。厚みzと円直径dpから基準体積が得られ、その基準体積から揺動プレート30の材料の密度と共に基準質量mrefが求められる。
【0050】
図7には、0°~23°の揺動プレート30の傾斜角度範囲にわたるアンバランス比率Mが示されている。実線は、本発明に係る往復圧縮機におけるアンバランス比率Mを示している。破線と点線は、それぞれ従来技術から知られた往復圧縮機に関する。本発明に係る往復圧縮機が全体としてよりよい、特により低い、アンバランス比率Mを有することが、よく認識できる。したがって特に、本発明に係る往復圧縮機においては、傾斜角度範囲全体にわたって小さいアンバランスが存在し、それがもたらす騒音発生は小さい。したがって本発明に係る往復圧縮機は、駆動中きわめて静かである。
【0051】
揺動プレート30のソフトな運動は、圧縮ばね45、46と協働する接触カム43、44がそれぞれ外側へ湾曲した支持面47を有することによって(図4)、達成される。これらの接触カム43、44は、直接に軸孔34に隣接する。好ましくは、接触カム43、44は、軸孔34を中心にリング形状に形成されている。接触カム43、44は、それぞれ完全に閉成されたリングを形成することができる。接触カム43、44は、揺動プレート30の一体的な構成要素とすることができる。
【0052】
図4において認識できるように、第1の圧縮ばね45は、揺動プレート30の第1の接触カム43の支持面47に当接する。それに対して第1の接触カム43に対向して配置された、第2の接触カム44は、第2の圧縮ばね46から離隔している。しかし、第2の接触カム44の支持面47は、他の傾斜角度においては第2の圧縮ばね46と当接する。
【0053】
接触カム43、44は、好ましくは揺動プレート30と一体的に形成されている。
【0054】
図8a~8cには駆動プレート20が示されている。駆動プレート20は、駆動カム22、23を有しており、それらは実質的に同種であるが、センター軸線Zに対して軸対称に形成されている(図8a)。駆動プレート20は、さらに第3のバランスウェイト24を有しており、それが駆動プレート20の円形の外側輪郭を越えて張り出している。この張り出しは、図8cの背面図においてよく認識できる。第3のバランスウェイトは、実質的に台形状に形成されている。往復圧縮機の騒音発生を減少させるために、このバランスウェイトはセンター軸線Zから始まって第3の角度α3だけ回動して配置されている。その場合に第3の角度α3の大きさが、第1の揺動カム31の質量にしたがって定められる。言い換えると、この第3のバランスウェイト24は、駆動プレート20の質量バランスのためだけでなく、駆動軸10、駆動プレート20及び揺動プレート30を有するパワートレイン全体の内部の質量バランスにも用いられる。
【0055】
図10は、本発明の重要なパラメータを計算するための重要な寸法を示している。特に基準質量mrefは、以下のように計算される。
【数3】
ρは揺動プレート30の密度を表す。
【0056】
第1の揺動カム31の幅c、第2の揺動カム32の幅a及び揺動カム31、32の間隔bが、互いに対してあらかじめ定められた比率にあり、もしくはプレート本体40の直径dpに依存していると(図2を参照)、好ましいことが明らかにされており、その限りにおいて優先される。
【0057】
すなわち好ましくは、揺動カム31、32の間隔bとプレート本体40の直径dpの間の比率(b/dp)は、0.2と0.5の間、特に0.34である。揺動カム31、32のそれぞれの幅a、cは、好ましくは互いに対して、0.7と4.0の間、特に1.6となる比率(c/a)にある。
[構成1]
揺動プレート(30)と少なくとも2つの往復ピストン(25)とを有する往復圧縮機であって、
前記揺動プレート(30)は少なくとも1つの揺動カム(31、32)と少なくとも1つのバランスウェイト(38、39)を有し、それらがプレート本体(40)の第1の環状面(41)に配置され、かつ前記往復ピストン(25)はそれぞれピストン軸線Kを有し、該ピストン軸線は円直径d p を有する円の共通の円ライン上に配置され、
前記揺動プレート(30)は、
揺動プレート質量mと、
密度ρと、
揺動プレート(30)の傾斜角度Ψに依存する重心位置yと、
前記プレート本体(40)の平行な第2の環状面(41、42)に対する第1の環状面(41)の間隔に相当する厚みzと、
駆動中に、前記揺動プレート(30)の傾斜角度Ψに依存する揺動プレートアンバランスと、を有し、
前記揺動プレートアンバランスと基準アンバランスとの間のアンバランス比率Mについて、
[数1]
が、成立し、
前記基準アンバランスは、基準質量m ref と半分の円直径d p からなる積であり、前記基準質量m ref は前記プレート本体(4)の厚みz、前記円直径d p 及び前記揺動プレート(30)の密度ρから求められ、Ψ=0°とΨ=23°の間の傾斜角度範囲内の複数の、特にすべての、離散的な全ての傾斜角度Ψにおけるアンバランス比率Mの二乗平均平方根M RMS について、
[数2]
が成立し、
RMS <0.045、特にM RMS <0.035、特にM RMS <0.022、特にM RMS <0.01、特にM RMS <0.006である、
往復圧縮機。
[構成2]
前記揺動プレート質量mと前記基準質量m ref との間の質量の比率m/m ref は、最大で2.2、特に最大で1.9、特に最大で1.85である、ことを特徴とする構成1に記載の往復圧縮機。
[構成3]
前記プレート本体(40)は、複数の環状面(41、42)の間に平行に配置された中心平面Eを有し、中心平面Eからの前記揺動プレート(30)の重心Sの間隔fと前記プレート本体(40)の厚みzとの間の比率f/zは、最大で0.6mmである、ことを特徴とする構成1又は2に記載の往復圧縮機。
[構成4]
重心Sが、前記プレート本体(40)の外部、及び/又はプレート本体(40)の回転軸線Aの外部に配置されている、ことを特徴とする構成3に記載の往復圧縮機。
[構成5]
第1及び/又は第2の環状面(41、42)にそれぞれ接触カム(43、44)が配置され、該接触カムはプレート本体(40)と堅固に結合され、前記接触カム(43、44)は圧縮ばね(45、46)のための外側へ湾曲した支持面を有している、ことを特徴とする構成1~4の何れか一項に記載の往復圧縮機。
[構成6]
前記揺動プレート(30)が、往復圧縮機の駆動軸(10)を挿通するための軸孔(34)を有し、前記接触カム(43、44)は直接的に前記軸孔(34)に隣接している、ことを特徴とする構成5に記載の往復圧縮機。
[構成7]
前記揺動プレート(30)は、2つの揺動カム(31、32)を有し、それらが互いに対して平行に方向づけされている、ことを特徴とする構成1~6の何れか一項に記載の往復圧縮機。
[構成8]
前記第1の環状面(41)に第1のバランスウェイト(38)が設けられ、該第1のバランスウェイト(38)は前記プレート本体(40)の中心軸線Tに関して第1の角度α 1 だけ回動して配置され、中心軸線Tは前記プレート本体(40)の直径に沿って前記揺動カム(31、32)の間の中央に延びている、ことを特徴とする構成7に記載の往復圧縮機。
[構成9]
前記第2の環状面(42)に第2のバランスウェイト(39)が設けられ、該第2のバランスウェイト(39)は前記プレート本体(40)の中心軸線Tに関して第2の角度α 2 だけ回動して配置され、中心軸線Tは前記プレート本体(40)の直径に沿って前記揺動カム(31、32)の間の中央に延びている、ことを特徴とする構成7又は8に記載の往復圧縮機。
[構成10]
第1の角度α 1 と第2の角度α 2 は、異なる大きさであり、及び/又は異なる符号を有している、ことを特徴とする構成9に記載の往復圧縮機。
[構成11]
前記揺動プレート(30)は2つの揺動カム(31、32)を有し、第1の揺動カム(31)は第2の揺動カム(32)よりも大きい材厚を有している、ことを特徴とする構成1~10の何れか一項に記載の往復圧縮機。
[構成12]
駆動プレート(20)が設けられ、該駆動プレート(20)は揺動カム(31、32)の間に延び2つの駆動カム(22、23)を有する、ことを特徴とする構成1~11の何れか一項に記載の往復圧縮機。
[構成13]
前記駆動プレート(20)は第3のバランスウェイト(24)を有し、該第3のバランスウェイト(24)はセンター軸線Zに関して第3の角度α 3 だけ回動して配置され、該センター軸線Zは前記駆動プレート(20)の直径に沿って前記駆動カム(22、23)の間の中央に延びている、ことを特徴とする構成12に記載の往復圧縮機。
【符号の説明】
【0058】
10 駆動軸
14 長手軸線
15 ハウジング
20 駆動プレート
21 滑り面
22 第1の駆動カム
23 第2の駆動カム
24 第3のバランスウェイト
25 往復ピストン
26 シリンダ
28 終端面
30 揺動プレート
31 第1の揺動カム
32 第2の揺動カム
33 カム先端
34 軸孔
37 滑り軸受
38 第1のバランスウェイト
39 第2のバランスウェイト
40 プレート本体
41 第1の環状面
42 第2の環状面
43 第1の接触カム
44 第2の接触カム
45 第1の圧縮ばね
46 第2の圧縮ばね
47 支持面
α1 第1の角度
α2 第2の角度
α3 第3の角度
Ψ、PSi 傾斜角度
a 第2の揺動カム32の幅
b 揺動カム31、32の間隔
c 第1の揺動カム31の幅
m 揺動プレート30の質量
Ref 基準質量
p 往復ピストン25もしくはシリンダ26の部分円直径
y 偏り
S 重心
z プレート本体40の厚み
A 回転軸線
E 中心平面
T 中心軸線
Z センター軸線
RMS 二乗平均平方根
K ピストン軸線
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10