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特許7494208冷間成型装置およびブランクの冷間成型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】冷間成型装置およびブランクの冷間成型方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20240527BHJP
   B21D 37/18 20060101ALI20240527BHJP
   B21D 22/22 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B21D22/20 A
B21D37/18
B21D22/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021564253
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 SE2020050395
(87)【国際公開番号】W WO2020222687
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】1950512-2
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・サンドバリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・イナラ
(72)【発明者】
【氏名】ペッテル・ウルフバリ
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193293(JP,A)
【文献】特開2003-010928(JP,A)
【文献】特開平09-253770(JP,A)
【文献】特公平05-065231(JP,B2)
【文献】特開2016-122047(JP,A)
【文献】特開2004-338218(JP,A)
【文献】特開平06-071357(JP,A)
【文献】特開2011-200912(JP,A)
【文献】特開平11-309737(JP,A)
【文献】特開2013-224346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0318909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 37/18
B21D 22/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク(104)を成型するための冷間成型装置(102;202)であって、冷間成型装置(102;202)は、第1の金型(106;206)および第2の金型(108)を含み、第1の金型(106;206)は、少なくとも1つの金型凹部(110;210)を有し、第2の金型(108)は、少なくとも1つの金型突出部(112)を有し、第2の金型(108)の金型突出部(112)は、第1の金型(106; 206)の金型凹部(110;210)と相補的であり、冷間成型装置(102;202)は、第1および第2の金型(106,108;206,108)によって、第1および第2の金型(106,108;206,108)の間に配置されたブランク(104)をプレス成型するように構成されており、第1および第2の金型(106,108;206,108)の少なくとも1つは、絞り半径(116;216)を有し、絞り半径(116;216)を有する金型(106;206)には、部材(118;218)が取り付けられており、部材(118;218)の少なくとも一部(119.219)が、絞り半径(116;216)に隣接して、または絞り半径上に配置されており、部材(118;218)が第1のプレス成型面(120;220)を規定し、部材(118;218)を保持する金型(106;206)が、第1のプレス成型面(120;220)の外側に第2のプレス成型面(122;222)を規定しており、部材(118;218)および部材(118;218)を保持する金型(106;206)が、プレス成型中に、ブランク(104)が部材(118;218)と接触しているときに、ブランク(104)と第1のプレス成型面(120;220)との間に第1の摩擦が生じ、ブランク(104)が部材(118;218)を保持する金型(106;206)と接触しているときに、ブランク(104)と第2のプレス成型面(122;222)との間に第2の摩擦が生じ、第1の摩擦が第2の摩擦よりも低くなるように構成されており、
部材(118)は、第1の表面(120)および第2の表面(124)を有する粘着テープからなり、粘着テープの第1の表面(120)は、部材(118)の第1のプレス成型面(120)を形成し、かつ、粘着テープの第2表面(124)が、少なくとも1つの粘着物質を備えており、接着テープの第2の表面(124)が、少なくとも1つの接着物質によって、絞り半径(116)を有する金型(106)に取り付けられていることを特徴とする、上記の冷間成型装置。
【請求項2】
部材(118;218)の少なくとも一部(119;219)が、絞り半径(116;216)上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の冷間成型装置。
【請求項3】
部材(118;218)の少なくとも一部が、金型凹部(110;210)または金型突出部(112)を取り囲んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷間成型装置。
【請求項4】
部材(118;218)の少なくとも一部が、金型凹部(110;210)または金型突出部(112)の外側に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項5】
部材(118)が、絞り半径(116)を有する金型(106)に適用されるコーティングとして設けられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項6】
部材(118)が、絞り半径(116)を有する金型(106)に塗布される液体として設けられ、その後硬化されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項7】
絞り半径(216)を有する金型(206)に、部材(218)を保持する少なくとも1つの凹部(226)が設けられていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項8】
部材(218)が弾力性を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項9】
第1の金型(106;206)が絞り半径(116;216)を有し、部材(118;218)が第1の金型(106;206)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項10】
部材(118;218)が、ポリマー部材(118;218)であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項11】
ポリマー部材(118;218)が、エラストマーまたはエラストマーの混合物であることを特徴とする、請求項10に記載の冷間成型装置。
【請求項12】
ポリマー部材(118;218)の少なくとも一部が、ポリイミドであることを特徴とする、請求項10または11に記載の冷間成型装置。
【請求項13】
第1および第2の金型(106,108;206,108)の一方が、下の金型(106;206)の上に配置された上の金型(106,108)であり、第1および第2の金型(106,108;206,108)の少なくとも一方が、他方の金型(106,108;206,108)に対して垂直方向に移動可能であり、垂直方向に移動可能な金型(106、108;206、108)が、ブランク(104)をプレス成型するために、他の金型(106、108;206、108)に向かって垂直方向に移動するように構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の冷間成型装置。
【請求項14】
ブランクを冷間成型する方法であって、以下の工程を含む方法。
- ブランク(104)を第1の金型(106)と第2の金型(108)との間に配置する工程(301)であって、第1の金型(106)は少なくとも1つの金型凹部(110
)を有し、第2の金型(108)は少なくとも1つの金型突出部(112)を有し、第2の金型(108)の金型突出部(112)は第1の金型(106)の金型凹部(110)と相補的であり、第1および第2の金型(106、108)のうちの少なくとも1つは絞り半径(16)を有しており、部材(118)は、絞り半径(116)を有する金型(106)に取り付けられており、部材(118)の少なくとも一部(119)が絞り半径(116)に隣接またはその上に配置され、部材(118)が第1のプレス成型面(120)を規定し、部材(118)を保持する金型(106)が第1のプレス成型面(120)の外側に第2のプレス成型面(122)を規定し、そして
- 第1および第2の金型(106、108)によって第1および第2の金型(106、108)の間に配置されたブランク(104)をプレス成型(302)する工程であって、プレス成型の間に ブランク(104)が部材(118)と接触しているときに、ブランク(104)と第1のプレス成型面(120)との間に第1の摩擦が生じ、ブランク(104)が部材(118)を保持する金型(106)と接触しているときに、ブランク(104)と第2のプレス成型面(122)との間に第2の摩擦が生じ、第1の摩擦は第2の摩擦よりも低いものとし、
部材(118)は、第1の表面(120)および第2の表面(124)を有する粘着テープからなり、粘着テープの第1の表面(120)は、部材(118)の第1のプレス成型面(120)を形成し、かつ、粘着テープの第2表面(124)が、少なくとも1つの粘着物質を備えており、接着テープの第2の表面(124)が、少なくとも1つの接着物質によって、絞り半径(116)を有する金型(106)に取り付けられていることを特徴とする方法。
【請求項15】
第1および第2の金型(106、108)の一方は、下側の金型(106)である他方の金型(106)の上に配置された上側の金型(108)であり、ブランク(104)をプレス成型するために、第1および第2の金型(106、108)の少なくとも一方を他方の金型(106、108)に向かって垂直に移動させることを特徴とする、
請求項14に記載のブランクを冷間成型する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランク(素材、blank)を成型するための冷間成型装置に関し、冷間成型装置は、第1の金型と第2の金型を含む。第1の金型は、少なくとも1つの金型凹部(雌型、die cavity)を有し、第2の金型は、少なくとも1つの金型突出部(雄型、die protrusion)を有し、第2の金型の突出部は、第1の金型の凹部と相補的になっている。冷間成型装置は、第1および第2の金型によって、第1および第2の金型の間に配置されたブランクをプレス成型するように構成されている。さらに、本発明は、ブランクを冷間成型する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷間成型された金属部品、例えばアルミニウムの部品は、自動車産業において、自動車の様々な部分、例えば敷居、バンパー、支持要素および構造体などに使用されることが多い。また、他の分野への応用も可能である。2つの金型の間でブランクをプレス成型して金属部品を作る場合、プレス成型後に金型のプレス成型面にブランク材が残ることがある。これは「クラッディング」と呼ばれるもので、金属部品のプレス成型の工程を阻害し、得られる金属部品の品質を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来の解決策の欠点や問題点を、緩和または解決する解決策を提供することである。
【0004】
本発明の第1の側面によれば、本発明のその他の目的は、ブランクを形成するための冷間成型装置を提供することによって達成され、冷間成型装置は、第1の金型および第2の金型を含む。第1の金型は、少なくとも1つの金型凹部を有し、第2の金型は、少なくとも1つの金型突出部を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第2の金型の金型突出部は、第1の金型の凹部と相補的である。冷間成型装置は、第1および第2の金型によって、第1および第2の金型の間に配置されたブランクをプレス成型するように構成されている。
【0006】
第1および第2の金型の少なくとも一方は、絞り半径(draw radius)を有している。絞り半径を有する金型には部材が取り付けられており、部材の少なくとも一部は絞り半径に隣接またはその上に配置されている。
【0007】
部材は第1のプレス成型面を規定し、部材を保持する金型は第1のプレス成型面の外側に第2のプレス成型面を規定する。前記部材と、前記部材を保持する金型は、冷間成型時に、ブランクが前記部材に接触しているときには、ブランクと第1プレス成型面との間に第1の摩擦を生じ、ブランクが前記部材を保持する金型に接触しているときには、ブランクと第2プレス成型面との間に第2の摩擦を生じるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
第1の摩擦は、第2の摩擦よりも小さい。部材は装置の金型に取り付けられているので、装置は部材を含む。
【0009】
第1の側面による装置の利点は、増加または改善された変形性、または成型のための適合性が得られることである。
【0010】
その理由は、発明者により見いだされたものであるが、絞り半径に隣接する部分や絞り半径上で摩擦が大きいと、ブランクを絞り半径上に引き寄せるために強い力が必要となり、その結果、ブランクの歪みや伸びが大きくなり、結果として金属部品の破断や破損のリスクが高まるからである。
【0011】
本発明者は、画期的な部材および部材の画期的な配置により、絞り半径に隣接するまたは絞り半径上の摩擦が低減されることで、ブランクを絞り半径上に引き寄せるために必要な力が少なくなり、ブランクの過剰な歪みや伸びが回避されることを見出した。その結果、得られる金属部品の品質が向上する。
【0012】
第1の側面による装置のさらなる利点は、金型上のクラッド(被覆物、clad)が減少することで、特に金型の摩耗が減り、必要なメンテナンス量が減ることである。また、クラッドが減少することで全体の摩擦が安定し、結果的に金属部品の公差が改善される。クラッドが発生すると、ブランクの摩擦が変化し例えば増加する。この場合、ブランクから部品を成型するのに必要な力が大きくなり、結果的に金属部品に亀裂が入ったり、破損したりするリスクが高まる。また、冷間成型中のブランクの動きが、異なるプレス間で同一でないため、結果としてブランクの過度の歪みや伸びが生じ、結果として金属部品の公差に悪影響を及ぼす。
【0013】
さらに、第1の側面に基づく装置の利点は、改善された表面品質が達成されることである。クラッドが発生すると、冷間成型時にブランクを引っ張ることで傷が発生することが多く、特に実装した時に目に見えることとなる金属部品の場合に問題となる。
【0014】
本発明者が、ブランクの最大の横方向の変位は、絞り半径に隣接して、または絞り半径上で起こることを見いだしたことで、上記の問題は、第1の側面による装置によって解決される。
【0015】
冷間成型装置の有利な実施形態によれば、部材の少なくとも一部が絞り半径上に配置されている、または位置している。この実施形態に関連する好ましい技術的効果は上述のとおりである。
【0016】
冷間成型装置の実施形態によれば、部材の少なくとも一部は、金型凹部または金型突出部を取り囲んでいる。この実施形態の利点は、金型上のクラッドがさらに低減され、好ましい技術的効果がさらに強化されることである。
【0017】
冷間成型装置のさらに有利な実施形態によれば、部材の少なくとも一部は、金型凹部または金型突出部の外側に配置されている。この実施形態の利点は、金型上のクラッドがさらに低減され、上述の好ましい技術的効果がさらに強化されることである。
【0018】
冷間成型装置の別の有利な実施形態によれば、部材は、絞り半径を有する金型に塗布されるコーティングとして提供される。この実施形態の利点は、部材が効率的な方法で金型に取り付けられることであり、それにより、上述の好ましい技術的効果がさらに高められる。
【0019】
冷間成型装置のさらに別の有利な実施形態によれば、部材は、絞り半径を有する金型に塗布され、その後硬化される液体として提供される。この実施形態の利点は、部材が効率的な方法で金型に取り付けられることであり、それによって好ましい技術的効果がさらに高められる。
【0020】
冷間成型装置のさらに別の有利な実施形態によれば、部材は、第1の表面と第2の表面とを有する粘着テープを備え、粘着テープの第1の表面は部材の第1のプレス成型面を形成し、粘着テープの第2の表面は少なくとも1つの粘着物質を備え、粘着テープの第2の表面は、少なくとも1つの粘着物質によって、絞り半径を有する金型に取り付けられることを特徴とする。
【0021】
この実施形態の利点は、部材が効率的かつ複雑でない方法で金型に取り付けられることであり、それにより、好ましい技術的効果がさらに高められる。
【0022】
冷間成型装置の有利な実施形態によれば、絞り半径を有する金型が、部材を保持する少なくとも1つの凹部を備えている。この実施形態の利点は、部材が効率的な方法で金型に取り付けられることであり、それによって好ましい技術的効果がさらに高められる。
【0023】
冷間成型装置のさらに有利な実施形態によれば、部材は弾力性を有する。この実施形態の利点は、冷間成型中のブランクの変位、例えばブランクの横方向の変位がさらに改善されることである。また、この実施形態の利点は、好ましい技術的効果がさらに向上することである。
【0024】
冷間成型装置の別の有利な実施形態によれば、第1の金型は、絞り半径を有し、部材は、第1の金型に取り付けられる。本発明者は、絞り半径についての問題が、金型凹部に関して特に重要であることを確認した。
【0025】
本実施形態の利点は、冷間成型時のブランクの横方向の変位がさらに改善されることである。また、この実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに向上することである。
【0026】
冷間成型装置のさらに別の有利な実施形態によれば、部材はポリマー部材である。この実施形態の利点は、冷間成型中のブランクの横方向の変位がさらに改善されることである。また、この実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに向上することである。
【0027】
冷間成型装置のさらに別の有利な実施形態によれば、ポリマー部材は、エラストマーまたはエラストマーの混合物でできている。この実施形態の利点は、冷間成型中のブランクの横方向の変位がさらに改善されることである。また、この実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに向上することである。
【0028】
冷間成型装置の有利な実施形態によれば、ポリマー部材は、少なくとも部分的にポリイミドでできている。この実施形態の利点は、冷間成型中のブランクの変位がさらに改善されることである。また、この実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに向上することである。
【0029】
冷間成型装置のさらに有利な実施形態によれば、第1および第2の金型のうちの一方は、下側の金型である他方の金型の上方に配置された上側の金型であり、第1および第2の金型のうちの少なくとも一方は、他方の金型に対して本質的に垂直方向に移動可能であり、本質的に垂直方向に移動可能な金型は、ブランクをプレス成型するために他方の金型に向かって本質的に垂直方向に移動するように構成されていることを特徴とする。本実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに強化されることである。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、本発明の実施形態の上記およびその他の目的は、ブランクを冷間成型する方法を提供することによって達成され、この方法は、以下の工程を含む。
- ブランクを第1の金型と第2の金型の間に配置する工程であって、第1の金型は少なくとも1つの金型凹部を有し、第2の金型は少なくとも1つの金型突出部を有し、第2の金型の金型突出部は第1の金型の金型凹部と相補的であり、第1および第2の金型の少なくとも1つは絞り半径を有し、絞り半径を有する金型に部材が取り付けられ、部材の少なくとも一部が絞り半径に隣接または上に配置され、部材が第1のプレス成型面を規定し、部材を保持する金型が第1のプレス成型面の外側に第2のプレス成型面を規定する工程と、
- 第1および第2の金型の間に配置されたブランクを、第1および第2の金型を用いてプレス成型する工程であって、プレス成型中に、ブランクが部材と接触しているときには、ブランクと第1のプレス成型面との間に第1の摩擦が生じ、ブランクが部材を保持する金型と接触しているときには、ブランクと第2のプレス成型面との間に第2の摩擦が生じ、第1の摩擦は第2の摩擦よりも低い、工程。
【0031】
本発明の第2の態様による方法の利点は、第1の態様による冷間成型装置に関連して上記の利点に対応する。
【0032】
第2の側面による方法の有利な実施形態によれば、第1および第2の金型の一方は、下側の金型である他方の金型の上方に配置された上側の金型であり、この方法は、ブランクをプレス成型するために、第1および第2の金型の少なくとも一方を他方の金型に向かって本質的に垂直に移動させることを特徴とする。この実施形態の利点は、上記の好ましい技術的効果がさらに強化されることである。
【0033】
冷間成型装置および方法のそれぞれの上記の特徴および実施形態は、さらに有利な実施形態を提供する様々な方法を組み合わせることができる。
【0034】
本発明による冷間成型装置および方法のさらに有利な実施形態、および本発明の実施形態によるさらなる利点は、従属請求項および実施形態の詳細な説明により明らかになる。
【0035】
本発明は、実施形態を用いて、図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1の側面による冷間成型装置の第1の実施形態を示す概略側面図である。
図2図1の装置の第1の金型の概略的な上面図である。
図3】第1の側面による冷間成型装置の第2の実施形態の概略的な側面図である。
図4図3の装置の第1の金型の概略上面図である。
図5】本発明の第2の側面による方法の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2を参照して、ブランク104を成型するための冷間成型装置102を示す。ブランク104は、金属または金属合金で構成されていてもよい。ブランク104は、アルミニウムまたはアルミニウムを含む金属合金で構成されていてもよい。また、ブランク104は、例えば、金属又は金属合金からなる又は構成されるシートなどの材料のシートであってもよい。
【0038】
冷間成型装置102は、第1の金型106と第2の金型108とを含む。第1の金型106は、少なくとも1つの金型凹部110を有し、この金型凹部は、第1の金型106の残りの部分によって囲まれている。第2の金型108は、少なくとも1つの金型突出部112を有する。第2の金型108の金型突出部112は、第1の金型106の金型凹部110と相補的である。第1の金型106は、雌型と呼ぶことができ、第2の金型108は、雄型と呼ぶことができる。
【0039】
第1および第2の金型106,108のそれぞれは、金属または金属合金で構成されるか、またはそれらであってもよい。図1および図2に示す実施形態では、第1および第2の金型106,108の一方は、下側の金型106である他方の金型106の上に配置された上側の金型108である。
【0040】
第1および第2の金型106,108の少なくとも一方は、他方の金型106,108に対して本質的に垂直方向114に移動可能である。本質的に垂直方向に移動可能な金型106,108は、ブランク104をプレス成型するために、他の金型106,108に向かって本質的に垂直方向に移動するように構成されている。
【0041】
第1の金型106は、第2の金型108との関係で、下側の金型106、または上側の金型とすることができる。第2の金型108は、第1の金型106に対して、上側の金型108、または下側の金型とすることができる。図1および2に示す実施形態では、第1の金型106は下側の金型106であり、第2の金型108は上側の金型108である。なお、第1および第2の金型106,108の他の位置も可能である。
【0042】
図1および図2を参照すると、冷間成型装置102は、第1および第2の金型106,108によって、第1および第2の金型106,108の間に配置されたブランク104をプレス成型するように構成されている。第1および第2の金型106,108の少なくとも一方は、絞り半径116を有するか、または絞り半径116を定義または提示している。図1および図2に示す実施形態では、少なくとも第1の金型106は、絞り半径116を有する。絞り半径116は、第1の金型106の金型凹部110に隣接していてもよい。第2の金型108、すなわち雄型が絞り半径を有する場合、絞り半径は、第2の金型108の金型突出部112に隣接していてもよい。
【0043】
装置102は、絞り半径116を有する金型106に取り付けられた第1の部材118を含む。装置102は、金型106に取り付けられた複数の部材118を含み得る。したがって、図1および図2に示す実施形態では、部材118は、第1の金型106に取り付けられている。部材118の少なくとも一部119は、絞り半径116に隣接して、または絞り半径1 16上に配置される。部材118は、第1のプレス成型面120を規定する。第1の部材118を保持する金型106(本例では第1の金型106)は、第1のプレス成型面120の外側に第2のプレス成型面122を規定する。第1のプレス成型面120の面積は、第2のプレス成型面122の面積の25%以下、例えば10%以下であってもよい。
【0044】
第1の部材118と、部材118を保持する金型106とは、冷間成型中に、ブランク104が部材118と接触し、場合によっては部材118に対して移動する際に、ブランク104と第1プレス成型面120との間に第1の摩擦が生じる。また、ブランク104が部材118を保持する金型106と接触し、場合によっては部材118に対して移動する際に、ブランク104と第2プレス成型面122との間に第2の摩擦が生じるように構成されている。上記のように、図1および図2に示す実施形態では、第1の金型106が第1の部材118を保持している。第1の摩擦、すなわち、ブランク104と第1のプレス成型面120との間の摩擦は、第2の摩擦、すなわち、ブランク104と第2のプレス成型面122との間の摩擦よりも低い。
【0045】
摩擦とは、固体表面、流体層、および材料要素が互いに摺動する相対的な動きに抵抗する力である。乾性摩擦は、接触している2つの固体表面、すなわち、ブランク104と第1のプレス成型面120、または本開示に記載されている解決策に関するブランク104と第2のプレス成型面122の相対的な横方向の動きに対抗する力である。
【0046】
乾式摩擦は、非移動面間の静摩擦(stiction)と、移動面間の動摩擦とに細分化される。前記第1の摩擦は、前記第2の摩擦に関連して低減され、すなわち、第1の摩擦は、第2の摩擦よりも低い。第1のプレス成型面120の摩擦係数COFは、第2のプレス成型面122の摩擦係数COFよりも低く、これは静摩擦と動摩擦/滑り摩擦の両方に有効である。
【0047】
第1の摩擦は、第2の摩擦よりも、少なくとも10%低く、例えば、少なくとも30%低く、または、少なくとも50%低くてもよい。例えば、第1のプレス成型面120のCOFは、第2のプレス成型面122のCOFよりも、少なくとも10%低く、例えば少なくとも30%低く、または少なくとも50%低くてもよい。また、部材は、摩擦低減部材と呼ばれてもよい。
【0048】
部材118は、有利には細長い。第1の部材118の材料、または第1のプレス成型面120の材料は、部材118を保持する金型106の材料とは異なっていてもよいし、第2のプレス成型面122の材料と異なっていてもよい。第1および第2プレス成型面120,122のそれぞれは、構造またはパターンを備えていてもよい。構造またはパターンは、溝および/またはバーを含んでいてもよい。第1のプレス成型面120の構造またはパターンは、第2のプレス成型面122の構造またはパターンと異なっていてもよい。また、部材118は、第1の金型106の金型凹部110に隣接していてもよい。
【0049】
第2の金型108が部材を保持している場合、部材は金型突出部112に隣接していてもよい。第1および第2の金型106、108の両方が、それ自身の部材118または部材118を保持し得る。部材118は、ポリマー部材118であってもよい。ポリマー部材118は、エラストマーまたはエラストマーの混合物でできていてもよい。有利には、ポリマー部材118は、少なくとも部分的にポリイミドで作られている。部材118の全体がポリイミドでできていてもよい。
【0050】
図2を参照すると、部材118の少なくとも一部または部材118全体が、第1の金型106の金型凹部110を取り囲んでいる。第2の金型108が部材188を保持している場合、部材118は、第2の金型108の金型突出部112を取り囲むことができる。第1の部材18の少なくとも一部は、第1の金型106の金型凹部110の外側に配置されている。第2の金型108が部材118を保持している場合、部材118の少なくとも一部は、第2の金型108の金型突出部112の外側に配置される。
【0051】
図1および図2の第1の実施形態を参照すると、部材118は、例えば第1の金型106に、絞り半径116を有する金型106に塗布されるコーティングとして提供されてもよい。あるいは、部材118は、絞り半径116を有する金型106に塗布される液体として提供されてもよく、その後硬化されてもよい。あるいは、部材118は、第1の表面120および第2の表面124を有する粘着テープで構成されていてもよい。粘着テープの第1表面120は、部材118の第1フォーム押え面120を形成し、テープの第2表面124は、少なくとも1つの粘着物質を備える。テープの第2の表面124は、少なくとも1つの接着物質によって、絞り半径116を有する金型106、すなわち図1および図2に示す実施形態における第1の金型106に取り付けられる。
【0052】
図3および図4を参照すると、装置202の第2の実施形態が示されている。ほとんどの部分において、図3および図4の第2の実施形態の装置202は、図1および図2の第1の実施形態の装置102に対応している。異なる点は、金型206、例えば、絞り半径216を有する金型凹部210を備えた第1の金型206が、部材218を保持する少なくとも1つの凹部226または溝を備えていることである。部材218の少なくとも一部219は、絞り半径216に隣接して、または絞り半径上に配置される。部材218は、図1および図2の部材1 18に本質的に対応してもよい。例えば、部材218はまた、第1のプレス成型面220を規定する。
【0053】
何れにしても、図3及び図4の部材218は、冷間成型の前に、部材218の第1のプレス成型面220が第1の金型206の第2のプレス成型面222よりも僅かに高くなっており、第2のプレス成型面222が第1のプレス成型面220の外側にあるように、弾力性又は柔軟性がある。ブランク104が第1および第2の金型206,108によってプレスされると、弾力性のある部材218が圧縮され、その結果、部材218の第1のプレス成型面220は、第1の金型206の第2のプレス成型面222と同じレベルに向かって移動する。その他、図3および図4の第2の実施形態の装置202の特徴は、図1および図2の第1の実施形態の装置102の特徴に対応しており、したがって、ここでは繰り返さない。例えば、図3および図4の第2の実施形態の装置202の第2の金型108は、図1および図2の第1の実施形態の装置の第2の金型108に対応する。
【0054】
図5は、本発明の第2の態様によるブランク104を冷間成型する方法の実施形態を示すフローチャートである。この方法は、以下の工程を含む。
- ブランク104を第1の金型106と第2の金型108との間に配置する工程301であって、第1の金型106は、少なくとも1つの金型凹部110を有し、第2の金型108は、少なくとも1つの金型突出部112を有する。第2の金型108の金型突出部112は、第1の金型106の金型凹部110と相補的である。
第1および第2の金型106、108のうちの少なくとも1つが絞り半径16を有し、部材118が絞り半径116を有する金型106に取り付けられ、部材118の少なくとも一部119が絞り半径116に隣接またはその上に配置され、部材118が第1のプレス成型面120を規定し、部材118を保持する金型106が第1のプレス成型面120の外側に第2のプレス成型面122を規定する。そして
- 第1および第2の金型106、108を用いて、第1および第2の金型106、108の間に配置されたブランク104をプレス成型する工程302であって、冷間成型の間に、ブランク104が部材118と接触し、場合によっては部材118に対して移動しているときに、ブランク104と第1のプレス成型面120との間に第1の摩擦が生じ、ブランク104が部材118を保持する金型106と接触し、場合によっては部材118に対して移動しているときに、ブランク104と第2のプレス成型面122との間に第2の摩擦が生じ、第1の摩擦は第2の摩擦よりも低い。
【0055】
プレス成型302の工程は、第1および第2の金型106,108の一方が、下側の金型106である他方の金型106の上に配置された上側の金型108である場合、ブランク104をプレス成型するために、第1および第2の金型106,108の少なくとも一方の106,108を他方の金型106,108に向かって本質的に垂直に移動することを含んでもよい。
【0056】
第1の金型106と第2の金型108との間にブランク104を配置する工程301は、例えばブランク104の横方向の移動によって、第1および/または第2の金型106,108に対してブランク104を移動させることによって、あるいは、第1および/または第2の金型104,106の横方向の移動によって、ブランク104に対して第1および/または第2の金型104,106を移動させることによって行われてもよい。
【0057】
上記の装置および方法の異なる実施形態の特徴は、さらなる有利な実施形態を提供する様々な可能な方法で組み合わせることができる。
【0058】
本発明は、図示された実施形態に限定されるものではなく、請求項の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの方法により修正および変更され得る。
図1
図2
図3
図4
図5