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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240527BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240527BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
A43B13/04 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021566565
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2020089301
(87)【国際公開番号】W WO2020228621
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/086382
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カトリン サルヴィチェク
(72)【発明者】
【氏名】チェンユー イェ
(72)【発明者】
【氏名】ウアス ヴェルツ-ビアマン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヒュルスマン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ トン
(72)【発明者】
【氏名】ヂション ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジュエン グオ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531706(JP,A)
【文献】特開2014-043577(JP,A)
【文献】特開2008-280483(JP,A)
【文献】国際公開第2006/046571(WO,A1)
【文献】特開2016-035072(JP,A)
【文献】特開2013-016069(JP,A)
【文献】特開昭55-128015(JP,A)
【文献】国際公開第2021/191547(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109135268(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 7/14
A43B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、
a)少なくとも1種の脂肪族ポリアミド91~98質量%、ここで、少なくとも1個のモノマー単位が炭素原子10~14個を有し、かつ前記脂肪族ポリアミドが半結晶性である;及び
b)Sガラス繊維2~質量%
を含み、
a)及びb)の質量%は、前記ポリアミド組成物の全質量を基準としており、ここで、前記ポリアミド組成物が、
ポリオレフィン系コポリマー耐衝撃性改良剤の全質量を基準として、
エテンベースのモノマー単位35~94.9質量%、
炭素原子3~8個を有する1-アルケンをベースとするモノマー単位5~65質量%、
別のオレフィンをベースとするモノマー単位0~10質量%、及び
脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をベースとするモノマー単位0.1~2.5質量%
を含む、ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤を含まず、かつ
以下のコア-シェル改良剤:
コアの全質量をそれぞれ基準として、ブタジエン単位60~100質量%及びスチレン単位0~40質量%を含むコアを含み、ここで、前記コアは、コア-シェル改良剤の60~95質量%を占める;及び
シェルの全質量を基準として、メチルメタクリレート単位80~100質量%及び変性モノマー単位0~20質量%を含むシェルを含み、ここで、前記シェルは、コア-シェル改良剤の5~40質量%を占める、コア-シェル改良剤
も含まず、
前記ポリアミド組成物が、Eガラス繊維を含まない、前記ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドが、PA610、PA106、PA612、PA126、PA613、PA136、PA10、PA1010、PA1011、PA812、PA128、PA11、PA1111、PA1110、PA1012、PA1210、co-PA12/1012、co-PA12/1212、co-PA11/1010、PA913、PA139、PA814、PA148、PA12、PA1212、PA1113、PA1311、PA1014、PA1410、PA13、PA1313、PA1214、PA1412、PA1115、PA1511、PA1016、PA1610、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドが、PA613、PA11、PA1012、PA1210、PA12、PA1014、PA1410、PA13、PA1214、PA1412、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記Sガラス繊維が、前記Sガラス繊維の全質量を基準として、SiO 64~66%、Al 24~25%、MgO 9.5~10%、CaO 0~0.2%、NaO+KO 0~0.2%、及びFe 0~0.1%を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記Sガラス繊維が、B及び/又はTiOを含まない、請求項4に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド組成物が、少なくとも1種の脂肪族ポリアミド91~97.5質量%及びSガラス繊維2.5~質量%を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドと前記Sガラス繊維との室温での屈折率の差が、DIN EN ISO 489:1999に従って方法Aにより測定して、0.01未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
前記ポリアミド組成物が、ASTM D1003に従って厚さが3mmの射出成形された試験片で測定して、60%以下のヘイズを有して、透明である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の添加剤をさらに含み、全量が、前記ポリアミド組成物の全質量を基準として、5質量%以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド組成物を含む、成形材料。
【請求項11】
請求項10に記載の成形材料から製造される、成形品。
【請求項12】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリアミド組成物を含む、靴アウトソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー組成物の分野、及び特にポリアミド組成物に関する。
【0002】
背景
脂肪族ポリアミド、例えばPA12をベースとするものは、多様な工業において応用される。例えば、PA12又は類似のポリアミドは、靴アウトソールを製造するのに使用することができる。その透明性のため、そのミッドソールのデザインパターン&色は、ヒトの眼によりそのポリマーアウトソールを通して見ることができる。
【0003】
この用途のためには、より高い剛性及びより高い衝撃強さを有し、機械的強さ及び耐摩耗性に関する要件を満たすことが時には望ましい。そのような理由のために、普通、ガラス繊維及び耐衝撃性改良剤が添加されて、該ポリアミドを変性する。しかしながら、該ポリアミドの透明性は普通、損なわれる。美的観点から、該ポリアミドが変性されてその機械的性質を改善する際に、その透明性を維持することが時には望ましい。
【0004】
米国特許出願公開第2014/066561号明細書(US 2014066561 A1)には、熱可塑性合成物、繊維型集合体、粒状フィラー材料及び添加物からなるポリアミド成形コンパウンドが開示されており、ここで、該熱可塑性合成物が、ポリアミド混合物(例えば脂肪族ポリアミド及び耐衝撃性改良剤)であってよく、かつ該繊維型集合体は、高強度ガラス繊維(例えばAGYからのS-1及びS-2ガラス繊維)であってよい。該成形コンパウンドの透明度は、該開示において議論されていない。
【0005】
したがって、高い機械的強さを有する透明なポリアミド組成物が必要とされる。前記の透明な組成物は、57以下のヘイズ値を有するべきである(実施例の部に記載されたように測定される)。
【0006】
要約
本開示の1つの目的は、ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤を用いずに、かつブタジエンコア及びメチルメタクリレートシェルを有するコア-シェル改良剤を用いずに、高い透明度及び高い機械的強さを有するポリアミド組成物を提供することである。
【0007】
本開示のこの目的は、次のものを含むポリアミド組成物により達成される:
a)少なくとも1種の脂肪族ポリアミド88.5~98質量%、ここで、少なくとも1個のモノマー単位が炭素原子10~14個を有し、かつ該脂肪族ポリアミドが半結晶性である;及び
b)Sガラス繊維2~11.5質量%、
a)及びb)の質量%は、該ポリアミド組成物の全質量を基準としており、ここで、該ポリアミド組成物が、ポリオレフィン系コポリマー耐衝撃性改良剤の全質量を基準として、
エテンベースのモノマー単位35~94.9質量%、
炭素原子3~8個を有する1-アルケンをベースとするモノマー単位5~65質量%、
別のオレフィンをベースとするモノマー単位0~10質量%、及び
脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をベースとするモノマー単位0.1~2.5質量%
を含む、ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤を含まず、かつ
以下のコア-シェル改良剤:
コアの全質量をそれぞれ基準として、ブタジエン単位60~100質量%及びスチレン単位0~40質量%を含むコアを含み、ここで、該コアは、コア-シェル改良剤の60~95質量%を占める;及び
シェルの全質量をそれぞれ基準として、メチルメタクリレート単位80~100質量%及び変性モノマー単位0~20質量%を含むシェルを含み、ここで、該シェルは、コア-シェル改良剤の5~40質量%を占める、コア-シェル改良剤
も含まない。
【0008】
本開示のもう1つの目的は、本開示のポリアミド組成物を含む成形材料を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、該成形材料から製造される成形品を提供することであり、ここで、好ましくは該成形品が、以下の分野の1つにおける使用のためである:
電気装置、スポーツ用品、光学機器、サニタリー及び衛生用品、家庭用機器、通信技術、自動車技術、エネルギー及び駆動技術、機械工学、及び医療機器。
【0010】
本開示のさらなる目的は、本開示のポリアミド組成物を含む靴アウトソールを提供することである。
【0011】
詳細な説明
以下の説明は、本開示の範囲を限定するものではなく、例証のためのみに使用される。
【0012】
用語「脂肪族ポリアミド」は、本開示では、そのモノマー単位が脂肪族であるポリアミドをいう。該脂肪族ポリアミドは、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、又は芳香族アミノカルボン酸である芳香族モノマーから製造されるものを含まない。該脂肪族モノマーは、開鎖状(直鎖状、分岐状)又は脂環式であってよい。該脂肪族モノマーは、飽和又は不飽和であってよい。
本開示による脂肪族ポリアミドは、大多数のモノマー単位において平均して炭素原子10~14個を有する。該脂肪族ポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸の組合せから、ω-アミノカルボン酸及び/又は対応するラクタムから製造できる。したがって、該モノマー単位は、ラクタム、ω-アミノカルボン酸、ジアミン又はジカルボン酸に由来する単位である。
【0013】
高い透明度を保証するために、該脂肪族ポリアミドは、半結晶性であってよい。ポリアミドのより高い結晶化度は、透明度を著しく低下させうる。
【0014】
適した脂肪族ポリアミドはさらに、適したコモノマー選択に基づいて、該モノマー単位が、平均して炭素原子10~14個を含む条件に従うコポリアミド、例えば、ラウロラクタム、デカンジアミン及びドデカン二酸(co-PA12/1012)から構成されるコポリアミドを含む。別の例として、該コポリアミドは、ラウロラクタム及び10-アミノデカン酸のコポリマー(co-PA12/10)であってよい。
【0015】
本明細書で使用される該ポリアミドが、 適切な脂肪族ポリアミドのコンパウンドであってもよく、その際に十分な相互融和性が有利であることが理解される。
【0016】
好ましくは、該脂肪族ポリアミド内で、少なくとも1個のモノマー単位は炭素原子10~14個を有する。以下のポリアミドは、例として適している:
- PA610、PA106;
- PA612、PA126;
- PA613、PA136;
- PA10、PA1010、PA812、PA128、PA614、PA146;
- PA1011、PA1110、co-PA11/1010、PA912、PA129、PA813、PA138;
- PA11、PA1012、PA1210、PA913、PA139、PA814、PA148、PA616;
- PA1112、PA1211、co-PA12/1012、PA1013、PA1310、PA914、PA149;
- PA12、PA1212、co-PA12/1212、PA1113、PA1014、PA1410、PA816、PA618;
- PA1213、PA1312、PA1114、PA1411、PA1015、PA1510、PA916、PA169、PA817、PA178;
- PA13、PA1313、PA1214、PA1412、PA1115、PA1511、PA1016、PA1610;
- PA1314、PA1413、PA1215、PA1512、PA1116、PA1611;PA1017、PA1710;及び
- PA14、PA1414、PA1315、PA1513、PA1216、PA1612、PA1117、PA1711、PA1018、PA1810。
【0017】
好ましくは、前記の少なくとも1種のポリアミドは、PA610、PA106、PA612、PA126、PA613、PA136、PA10、PA1010、PA1011、PA812、PA128、PA11、PA1111、PA1110、PA1012、PA1210、co-PA12/1012、co-PA12/1212、co-PA11/1010、PA913、PA139、PA814、PA148、PA12、PA1212、PA1113、PA1311、PA1014、PA1410、PA915、PA159、PA816、PA168、PA13、PA1313、PA1214、PA1412、PA1115、PA1511、PA1016、PA1610、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
より好ましくは、前記の少なくとも1種のポリアミドは、PA613、PA11、PA1012、PA1210、PA12、PA1014、PA1410、PA13、PA1214、PA1412、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
該ポリアミド組成物中のポリアミドの含有率は、好ましくは89~98質量%、より好ましくは90~97.5質量%、いっそう好ましくは91~97質量%、よりいっそう好ましくは91.5~97質量%である。前記のポリアミドの含有率が高すぎる、例えば、98質量%を上回る場合には、該ガラス繊維は、質量パーセンテージで2%未満である。したがって、該ポリアミド組成物は、機械的強度が弱くなってしまう場合があり、ひいては機械的性質の一部の要件を満たすことができないことがある。前記のポリアミドの含有率が低すぎる、例えば、80質量%未満である場合には、該ガラス繊維は高濃度である。生じる組成物は、脆性が高くなってしまう場合及び透明度が低くなってしまう場合がある。
【0020】
前記のガラス繊維の含有率は、好ましくは2~11質量%、より好ましくは2.5~10質量%、いっそう好ましくは3~9質量%、よりいっそう好ましくは3~8.5質量%である。前記のガラス繊維の含有率が高すぎる、例えば、15質量%を上回る場合には、該ブレンドは、著しいヘイズ、並びに増大した脆性をまねきうる。
【0021】
より好ましくは、該Sガラス繊維は、B及び/又はTiOを含まない。そして特に好ましくは、該Sガラス繊維は、さらなる酸化物を含まない。
【0022】
好ましくは、該Sガラス繊維は、該ガラス繊維の全質量を基準として、SiO 64~66質量%、Al 24~25質量%、MgO 9.5~10質量%、CaO 0~0.2質量%、NaO+KO 0~0.2質量%、及びFe 0~0.1質量%を含む。伝統的なガラスと比べて、該Sガラス繊維は、より低い含有率の酸化カルシウム及びアルカリ金属酸化物を含有するが、はるかに高い含有率の酸化マグネシウムを含有する。
【0023】
本開示によるポリアミド組成物は、上記に記載されるような、ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤を含有しておらず、かつブタジエンコア及びメチルメタクリレートシェルを有するコア-シェル改良剤も含有していない。当該技術分野において公知のように、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、ポリオレフィン、スチレンブロックコポリマー(SBCs)、並びにブタジエンコア及びメチルメタクリレートシェルを有するコア-シェル改良剤が、ポリアミド及びポリエステルの耐衝撃性改良のために入手可能である。本開示は、そのような耐衝撃性改良剤の使用を回避し、かつ高い機械的強さと高い透明性との双方を有するポリアミド組成物を達成する。
【0024】
該ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤は、無水マレイン酸変性EPDM、無水マレイン酸グラフト化エチレン/プロピレンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、並びにエチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、及びスチレン等を含む共重合により製造されるコポリマーを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0025】
高い透明度を維持するために、次のことが好ましい:
前記のa)によるポリアミド成分と前記のb)によるSガラス繊維との室温での屈折率の差は、DIN EN ISO 489:1999に従って方法Aにより測定して、0.01未満である。
これらの屈折率は、DIN EN ISO 489:1999に従って方法Aにより測定される(Zeiss AbbeモデルA機器、Schott KL 150 Bランプ、白色冷光源)。しかしながら、より低い範囲内の粒度、例えば200nm未満及び特に160nm未満については、比較的高い屈折率の差であっても、高い透明度が保持される。
【0026】
好ましくは、該ポリアミドは、厚さが3mmの射出成形された試験片でASTM D1003に従って測定して、60%以下、より好ましくは50%以下のヘイズを有して、透明である。
【0027】
[添加剤]
本発明によるポリアミド組成物は、成分として、a)及びb)による成分に加えて、好ましくは難燃剤、安定剤、可塑剤、充填剤、ナノ粒子、帯電防止剤、染料、顔料、離型剤又は流動助剤から選択されるさらなる添加剤を、該ポリアミド組成物の全質量を基準として10質量%以下、好ましくは5質量%以下の全量で、含んでいてよい。
【0028】
好ましくは、本発明によるポリアミド組成物は、上記で特定された成分からなる。
【0029】
[製造及び使用法]
該ポリアミド組成物は、適したニーダー又は配合機での溶融混練、排出及び粉砕により、製造することができる。多相系は、ここでは、該改良剤が、該ポリアミドマトリックス中に微細分散した形で存在する場合に関係している。該溶融混練は、混練装置における従来の方法、一般にストランド/押出物の形での排出及び一般にペレット化、破砕、又は摩砕による粉砕によって実現される。
【0030】
該ポリアミド組成物は、成形材料の主成分として使用されてよい。しかしながら、該成形材料は、当業者により理解されるように、本開示の範囲から逸脱することなく、1つ以上の少量成分を含みうる。
【0031】
該成形材料は、当業者に公知の方法、例えば選択的レーザー焼結、複合フィラメント製造、選択的熱焼結、熱溶解積層、熱溶解フィラメント製造、射出成形、押出し、プレス、又はロール成形による溶融及び成形によって、成形品へ加工することができる。
【0032】
該成形品は、以下の分野の1つにおいて使用されてよい:電気装置、スポーツ用品、光学機器、サニタリー及び衛生用品、家庭用機器、通信技術、自動車技術、エネルギー及び駆動技術、機械工学、又は医療機器。該成形品は、関連する工業の燃焼性要件を満たしうる。
【0033】
本開示は、以下に例及び比較例として例証される。
【実施例
【0034】
以下の材料を、リファレンス、例(A1~A6)及び比較例(B~H)において使用した:
ポリアミド1:VESTAMID LX9012、熱及び光安定化された半結晶性PA12 成形組成物、Evonik Resource Efficiency GmbHから商業的に入手可能;
ポリアミド2:TROGAMID CX9704 nc、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン及びドデカン二酸から製造された、熱及び光安定化された非晶質PA PACM12、Evonik Resource Efficiency GmbHから商業的に入手可能;
AGY 544:次の組成を有するS-2ガラス繊維、SiO 64~66質量%、Al 24~25質量%、CaO 0~0.2質量%、MgO 9.5~10質量%、NaO+KO 0~0.2質量%及びFe 0~0.1質量%、AGYから商業的に入手可能;
CS 7974:LANXESS Deutschland GmbHからのE-ガラス繊維。
ECS301HP:Chongqing Polycomp International Corp.からのE-ガラス繊維。
【0035】
溶融混練物を、Coperion ZSK-26mc同方向二軸スクリュー押出機で製造し、排出し、ペレット化して、第1表に示される配合表によるポリアミド組成物を得て、ここで、耐衝撃性改良剤を有する/有しない該ポリアミドを、ドライブレンドし、かつ押出機のメインポート中へ供給し、ついで250℃で混合し、かつ該ガラス繊維を、サイドフィーダーを経て該押出機中へ供給した。
【0036】
前記のペレット型のポリアミド組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度240℃;金型温度60℃)で加工して、機械的性能試験用の試験片を製造した。
【0037】
引張弾性率、引張降伏応力、引張破壊応力及び破断伸びを、Zwick Z020材料試験システムにより、ISO 527に従って、ISO引張試験片、タイプ1A、170mm×10mm×4mmで、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で測定した。
【0038】
ノッチ付衝撃強さを、CEAST Resil Impactor 6967.000により、ISO 179/1eA(シャルピー)に従って、両端を切り離した引張試験片ISO 527 タイプ1Aで、80mm×10mm×4mm 温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で測定した。
【0039】
硬さ(ショアD)を、Time groupショアD硬さ試験機TH210により、ISO 868に従って、引張試験片ISO 527 タイプ1Aで170mm×10mm×4mm 温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で測定した。
【0040】
前記のペレット型のポリアミド組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度270℃;金型温度50℃)でさらに加工して、ヘイズ値試験用の試験片を製造した。
【0041】
ヘイズ値を、23℃で、KONICA MINOLTAからの分光光度計CM-3600dによりASTM D1003(CIE C イルミナント)に従ってサイズ55mm×30mmの3mm厚さのプレートで測定し、かつヘイズ値をパーセンテージで示した。
【0042】
ロス屈曲試験を、Lab Tech LAB-F2000コールドロス屈曲試験機により、ロス屈曲試験片150mm×20mm×2mmで、曲げ度0°-60°-0°で100000回、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で測定した。クラックは、試験片の表面におけるヘアラインクラックを意味する。破壊は、該試験片の全破壊を意味する。
【0043】
全体の結果は、第1及び2表に示される。
【0044】
第1表:配合表及び性能
【表1】
【0045】
第2表:配合表及び性能
【表2】
【0046】
Sガラス繊維を4%~10%として含む本発明の化合物A1~A4は、高い機械的強さ及び低いヘイズ値を有する。それら全てが該ロス屈曲試験に合格した。
対照的に、本発明によらない化合物は、高いヘイズ値のために低い透明度を有する。さらに、A6、D、G、及びHは、該ロス屈曲試験に合格しなかった。
【0047】
多様な態様及び実施態様が可能である。これらの態様及び実施態様の一部が本明細書に記載される。本明細書を読んだ後に、当業者は、それらの態様及び実施態様が例示的にすぎず、かつ本開示の範囲を限定するものではないことが理解される。実施態様は、以下に列記される実施態様のいずれか1つ以上に従うことができる。
【0048】
実施態様
[実施態様1]
ポリアミド組成物であって、次のもの:
a)少なくとも1種の脂肪族ポリアミド88.5~98質量%、ここで、少なくとも1個のモノマー単位は炭素原子10~14個を有し、かつ該脂肪族ポリアミドは半結晶性である;及び
b)Sガラス繊維2~11.5質量%、
を含み、a)及びb)の質量%は、前記ポリアミド組成物の全質量を基準としており、ここで、前記ポリアミド組成物が、
ポリオレフィン系コポリマー耐衝撃性改良剤の全質量を基準として、
エテンベースのモノマー単位35~94.9質量%、
炭素原子3~8個を有する1-アルケンをベースとするモノマー単位5~65質量%、
別のオレフィンをベースとするモノマー単位0~10質量%、及び
脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をベースとするモノマー単位0.1~2.5質量%
を含む、ポリオレフィン系耐衝撃性改良剤を含まず、かつ
以下のコア-シェル改良剤:
コアの全質量をそれぞれ基準として、ブタジエン単位60~100質量%及びスチレン単位0~40質量%を含むコアを含み、ここで、前記コアは、コア-シェル改良剤の60~95質量%を占める;及び
シェルの全質量をそれぞれ基準として、メチルメタクリレート単位80~100質量%及び変性モノマー単位0~20質量%を含むシェルを含み、ここで、前記シェルは、コア-シェル改良剤の5~40質量%を占める、コア-シェル改良剤
も含まない。
【0049】
[実施態様2]
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドが、PA610、PA106、PA612、PA126、PA613、PA136、PA10、PA1010、PA1011、PA812、PA128、PA11、PA1111、PA1110、PA1012、PA1210、co-PA12/1012、co-PA12/1212、co-PA11/1010、PA913、PA139、PA814、PA148、PA12、PA1212、PA1113、PA1311、PA1014、PA1410、PA915、PA159、PA816、PA168、PA13、PA1313、PA1214、PA1412、PA1115、PA1511、PA1016、PA1610、及びそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1に記載のポリアミド組成物。
【0050】
[実施態様3]
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドが、PA613、PA11、PA1012、PA1210、PA12、PA1014、PA1410、PA13、PA1214、PA1412、及びそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1又は2に記載のポリアミド組成物。
【0051】
[実施態様4]
前記Sガラス繊維が、前記Sガラス繊維の全質量を基準として、SiO 64~66%、Al 24~25%、MgO 9.5~10%、CaO 0~0.2%、NaO+KO 0~0.2%、及びFe 0~0.1%を含む、前記実施態様のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【0052】
[実施態様5]
前記Sガラス繊維がB及び/又はTiOを含まない、好ましくは前記Sガラス繊維がさらなる酸化物を含まない、実施態様4に記載のポリアミド組成物。
【0053】
[実施態様6]
前記少なくとも1種の脂肪族ポリアミドと前記Sガラス繊維との室温での屈折率の差が、DIN EN ISO 489:1999に従って方法Aにより測定して、0.01未満である、前記実施態様のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【0054】
[実施態様7]
前記ポリアミド組成物が、ASTM D1003に従って厚さが3mmの射出成形された試験片で測定して、60%以下、好ましくは50%以下のヘイズを有して、透明である、前記実施態様のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【0055】
[実施態様8]
少なくとも1種の添加剤、好ましくは難燃剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、充填剤、ナノ粒子、帯電防止剤、染料、顔料、離型剤、又は流動助剤から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含み、全量が、前記ポリアミド組成物の全質量を基準として、10質量%以下、好ましくは5質量%以下である、前記実施態様のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【0056】
[実施態様9]
前記実施態様のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む、成形材料。
【0057】
[実施態様10]
好ましくは以下の分野の1つにおける使用のための、実施態様9に記載の成形材料から製造される成形品:
電気装置、スポーツ用品、光学機器、サニタリー及び衛生用品、家庭用機器、通信技術、自動車技術、エネルギー及び駆動技術、機械工学、及び医療機器。
【0058】
[実施態様11]
実施態様1~8のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む、靴アウトソール。
【0059】
上記の説明は、当業者が本開示を作り、かつ使用することを可能にするために提示され、かつ出願及びその要件に関して提供される。前記の好ましい実施態様への多様な変更態様は、当業者に明らかであり、かつ本明細書に定義される一般原則は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施態様及び用途に適用されてよい。したがって、本開示は、示された実施態様に限定されるものではなく、本明細書に開示された原則及び特徴に終始一貫して最も広い範囲を与えるものである。これに関して、本開示内のある特定の実施態様は、本開示の全ての利益を示さないこともあり、幅広く考慮される。