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特許7494223大規模水体の2つの異なる処理ゾーンを創出して直接接触型レクリエーション活動を促すための低コストで衛生効率の高いシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】大規模水体の2つの異なる処理ゾーンを創出して直接接触型レクリエーション活動を促すための低コストで衛生効率の高いシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20230101AFI20240527BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20240527BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20240527BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240527BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20240527BHJP
【FI】
C02F1/50 520L
C02F1/50 510A
C02F1/50 531K
C02F1/50 560C
C02F1/76 A
C02F1/78
C02F1/32
C02F1/52 Z
【請求項の数】 64
(21)【出願番号】P 2021574994
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2020034909
(87)【国際公開番号】W WO2020263488
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】16/456,762
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521284554
【氏名又は名称】クリスタル ラグーンズ テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュマン,フェルナンド ベンジャミン
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507536(JP,A)
【文献】特開2008-194676(JP,A)
【文献】特開平05-076254(JP,A)
【文献】特開2016-155133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/20-1/38
C02F1/50-1/56
C02F1/70-1/78
C02F9/00
B01D21/00-21/34
E02B1/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接接触型レクリエーション目的に適した大規模水体を提供するための低コストで衛生効率の高い方法において、前記大規模水体は少なくとも3,000mの表面を有し、
-前記大規模水体内に堆積ゾーン1及び放散ゾーン2を指定することであって、両方が異なる構成と処理方法を有し、
-前記堆積ゾーン1及び放散ゾーン2は同じ水体3内にあり、物理的バリアでは分離されず、前記放散ゾーン2内に含まれる水の量と前記堆積ゾーン1内に含まれる量の比は1:2~1:40であり、
-前記堆積ゾーン1は、審美的な目的を有し、主として二次的な非直接的レクリエーション親水目的に使用され、前記堆積ゾーンは前記放散ゾーン2より低い水浴客密度を有するように設計され、1日平均として、前記大規模水体3内の全水浴客数の20%以下が前記堆積ゾーン1内にいて、
-前記放散ゾーン2は、遊泳や水浴等の直接接触目的のために使用され、高い水浴客密度を有するように設計され、1日平均として、前記大規模水体3内の全水浴客数の少なくとも80%が前記放散ゾーン2内にいて、最大密度は2mあたり水浴客1名である
ような、指定することと、
-前記堆積ゾーン1の水量にCTインデックスに基づく消毒方法を適用することであって、前記CTインデックスは、前記堆積ゾーン1が、消毒剤を前記堆積ゾーン1の前記水量において最低接触時間「T」中に前記消毒剤の特定の濃度「C」を実現するように添加することによって処理されることを要求し、前記消毒方法は、前記消毒剤が前記堆積ゾーン1に含まれる前記水量に添加されて、72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するように実行されるような、適用することと、
-前記堆積ゾーン1の中に、前記堆積ゾーン1内に存在する各種の微生物及び/又は汚染物質の沈降を助ける十分な量の凝集剤組成物を適用することであって、前記堆積ゾーン1内の水流及び水循環が保持されて、適正な堆積が行われるような、適用することと、
-十分な量の塩素を添加することによって前記放散ゾーン2の水量内の永久残留塩素濃度を保持して、前記放散ゾーン2内に含まれる前記水量内で少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるようにすることと、
-1つ又は複数の入口ノズル26によって前記放散ゾーン2に水を注入することであって、それが風及び/又は水温差により生成される自然の流動と共に、前記放散ゾーン2内の前記水量の前記堆積ゾーン1への水放散パターンを生成させる能力を有するような、注入することと、
を含み、
前記放散ゾーン2は最大30分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される方法。
【請求項2】
前記堆積ゾーン1と前記放散ゾーン2は仕切り手段(4)によって仕切られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仕切り手段(4)は、視覚的仕切り、浮遊線、仕切り線、架空フラッグ、ブイ、傾斜の変化、深さの違い、及びそれらの組合せを含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記仕切り手段(4)は、パンフレット、看板又はルールによる指定、ハンドブック、ユーザ向けガイドラインによって、及び書面及び/又は口頭による説明によって確立される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積ゾーン1の深さは、その最も深い地点で少なくとも1.8メートルであり、微生物及び汚染物質の沈降のための十分な深さが確立され、水浴客による攪乱が最小化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記堆積ゾーン1は、少なくとも10,000mの表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凝集剤組成物は、合成ポリマ、第四アンモニウムカチオンポリマ、ポリカチオンポリマ、アルミニウム塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの組合せを含む群から選択される1つ又は複数の凝集剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集剤は、カチオン又はアニオンポリマ凝集剤及びその混合物を含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝集剤組成物は前記堆積ゾーン1に、少なくとも7日に1回、前記堆積ゾーン1の水量1mあたり0.03g~3.0gの速さで添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積ゾーン1の底面の定期的クリーニングが行われ、それによって前記堆積ゾーン1は、自然の湖及びラグーンのような、より自然な態様を有し、毎日のクリーニングは不要である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記堆積ゾーン1の前記底面は、少なくとも7日間に1回クリーニングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記堆積ゾーン1は、水浴客が前記堆積ゾーン1に入りたくないように設計され、それによって直接接触型レクリエーション目的が最小化され、二次的な接触目的の水上スポーツの実践が奨励される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記放散ゾーン2は、それがその最も深い点で1.4メートルまでの深さを有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記放散ゾーン2は、それがその最も深い点で1.6メートルまでの深さを有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記放散ゾーン2は、それがその最も深い点で1.8メートルまでの深さを有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記放散ゾーン2は、周辺12から底面まで、15%までの傾斜が得られ、前記大規模水体3への安全な進入を実現する角度αの下降傾斜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記放散ゾーン2は、1日平均として、前記大規模水体3内の全水浴客数の少なくとも90%が前記放散ゾーン2内にいるように指定される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記放散ゾーン2は、2mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記放散ゾーン2は、6mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記放散ゾーン2は、8mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数の入口ノズル26を通じて前記放散ゾーン2に提供される水は、紫外線(UV)で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数のノズル26の設置場所、設計、及び構成は、前記放散ゾーン2内の異なる種類の水入替えパターンを実現するように変更できる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記放散ゾーン2は、最大25分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記放散ゾーン2は、最大20分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記放散ゾーン2は、最大15分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
放散ゾーン2の底面の定期的クリーニングを適用して、このような放散ゾーン2の前記底面を、前記水内の審美的、安全上、又は衛生上の影響を生じさせるかもしれない粒子のない状態にすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記放散ゾーン2の前記底面は、少なくとも72時間に1回クリーニングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記放散ゾーン2内の永久残留塩素濃度は、塩素錠剤の添加により、前記放散ゾーン2内にある前記1つ又は複数の入口ノズル26からの希釈塩素の適用によって、又はそのようなゾーンに塩素を手作業で添加することによって保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記大規模水体3は、前記水体3の周辺12に配置された複数の別々の放散ゾーン2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記大規模水体3は、最大50,000mの体積を有し、前記水体の水量全体をろ過できる中央集中ろ過システムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記放散ゾーン内の永久残留消毒剤濃度は、塩素、臭素、オゾン、その誘導体、及びそれらの混合物を含む群から選択される消毒剤を添加することによって保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記堆積ゾーンに十分な量の塩素消毒剤を添加して、少なくとも0.5mg/Lの前記堆積ゾーン内の永久的遊離塩素レベルを保持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
直接接触型レクリエーション目的に適した大規模水体3を設立するシステムにおいて、前記大規模水体3は少なくとも3,000mの表面を有し、周辺12及び底を有し、
a)前記大規模水体3の一部の中の、前記周辺の一部に沿った堆積ゾーン1と、
b)前記堆積ゾーン1内の前記周辺に沿った、
i)72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するための前記堆積ゾーン1内の水量中への消毒剤、ただし、Cは濃度として定義され、Tは最小接触時間と定義され、及び
ii)前記水体中に存在し、CTサイクルによって不活性化される各種の微生物、寄生生物、及び原虫の沈降プロセスを助ける、前記堆積ゾーン1への凝集剤組成物を投入するように配置され、構成された化学薬品投入システム19と、
c)前記大規模水体の一部の中の、前記周辺の一部に沿った放散ゾーン2と、
d)前記放散ゾーン2に水を注入して、前記放散ゾーン内の水量の拡散パターンを生成させるように配置され、構成された、前記放散ゾーン2内の1つ又は複数の入口ノズル26と、
e)前記放散ゾーンの水の前記水量中の永久残留塩素濃度を保持するように構成された前記放散ゾーン2への化学薬品投入システム29であって、前記放散ゾーン内にある前記水量中で少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるような化学薬品投入システム29と、
を含むシステム。
【請求項34】
前記堆積ゾーン1と前記放散ゾーン2は仕切り手段4により仕切られる、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記仕切り手段4は、視覚的仕切り、浮遊線、仕切り線、架空フラッグ、ブイ、傾斜の変化、深さの違い、看板又はルールによる指定、及びそれらの組合せを含む群から選択される、請求項34のシステム。
【請求項36】
前記堆積ゾーン1の深さは、その最も深い地点で少なくとも1.8メートルであり、微生物及び汚染物質の沈降のための十分な深さが確立される、請求項33のシステム。
【請求項37】
前記堆積ゾーン1は、少なくとも10,000mの表面を有する、請求項33のシステム。
【請求項38】
前記凝集剤組成物は、合成ポリマ、第四アンモニウムカチオンポリマ、ポリカチオンポリマ、アルミニウム塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの組合せを含む群から選択される1つ又は複数の凝集剤を含む、請求項33のシステム。
【請求項39】
前記凝集剤は、カチオン又はアニオンポリマ凝集剤及びその混合物を含む群から選択される、請求項38のシステム。
【請求項40】
前記凝集剤組成物は前記堆積ゾーン1に、少なくとも7日に1回、前記堆積ゾーン1の水量1mあたり0.03g~3.0gの速さで添加される、請求項33のシステム。
【請求項41】
前記堆積ゾーン1を定期的にクリーニングする底面クリーニング装置をさらに含み、それによって前記堆積ゾーン1は自然の湖のような、より自然な態様を有し、毎日のクリーニングは不要である、請求項33のシステム。
【請求項42】
前記堆積ゾーン1の前記底面は、少なくとも7日間に1回クリーニングされる、請求項41のシステム。
【請求項43】
前記堆積ゾーン1への前記化学薬品投入システム19は1つ又は複数の入口ノズル18を含む、請求項33のシステム。
【請求項44】
前記堆積ゾーン1は、水浴客が前記堆積ゾーン1に入りたくないように配置され、構成され、それによって直接接触型レクリエーション目的が最小化され、二次的な接触目的の水上スポーツの実践が奨励される、請求項33のシステム。
【請求項45】
前記放散ゾーン2は、それがその最も深い地点で1.8メートルまでの深さを有するように設計される、請求項33のシステム。
【請求項46】
前記放散ゾーン2は、前記周辺12から前記底面まで、15%までの傾斜が得られ、前記大規模水体3への安全な進入を実現する角度αの下降傾斜を含む、請求項33のシステム。
【請求項47】
前記放散ゾーン2は、1日平均として、前記大規模水体3内の全水浴客数の少なくとも90%が前記放散ゾーン2内にいるように指定される、請求項33のシステム。
【請求項48】
前記放散ゾーン2は、2mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項49】
前記放散ゾーン2は、6mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項50】
前記放散ゾーン2は、8mあたり水浴客1名の最大水浴客密度を有するように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項51】
紫外線(UV)処理装置28をさらに含み、前記1つ又は複数の入口ノズル26を通じて前記放散ゾーン2に提供される水は紫外線(UV)で処理される、請求項33のシステム。
【請求項52】
前記1つ又は複数の入口ノズルは、前記放散ゾーン2内の異なる種類の水入替えパターンを実現するために、数、方向、及び水流において異なっていてもよい、請求項33のシステム。
【請求項53】
前記放散ゾーン2への前記化学薬品投入システム29は、前記放散ゾーン2内の前記1つ又は複数の入口ノズル26を通じて前記化学薬品を投入するように構成される、請求項33のシステム。
【請求項54】
前記放散ゾーン2は、最大25分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項55】
前記放散ゾーン2は、最大20分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項56】
前記放散ゾーン2は、最大15分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように配置され、構成される、請求項33のシステム。
【請求項57】
放散ゾーン2の底面をクリーニングするように配置され、構成された底面クリーニング装置をさらに含み、それによって前記放散ゾーン2の前記底面は前記水中に審美的、安全上、又は衛生上の影響を生じさせるかもしれない粒子がない状態に保持される、請求項33のシステム。
【請求項58】
前記放散ゾーン2の前記底面は、少なくとも72時間に1回クリーニングされる、請求項57のシステム。
【請求項59】
前記放散ゾーン2内の永久残留塩素濃度は、塩素錠剤の添加により、前記放散ゾーン2内にある前記1つ又は複数の入口ノズルからの希釈塩素の適用によって、又はそのようなゾーンに塩素を手作業で添加することによって保持される、請求項33のシステム。
【請求項60】
前記1つ又は複数の入口ノズル26は、前記放散ゾーンの前記表面全体にわたり、その周辺に沿って、中央に、又は仕切り手段4に沿って配置される請求項33のシステム。
【請求項61】
前記大規模水体3は、前記水体3の前記周辺12内に配置された複数の別々の放散ゾーン2を含む、請求項33のシステム。
【請求項62】
前記大規模水体3は、最大50,000mの体積を有し、前記水体の水量全体をろ過できる中央集中ろ過システムを含む、請求項33のシステム。
【請求項63】
前記化学薬品投入システム19は、少なくとも0.5mg/Lの前記堆積ゾーン内の永久遊離塩素レベルを保持するために、前記堆積ゾーン1内に塩素消毒剤を適用するように構成される、請求項33のシステム。
【請求項64】
前記放散ゾーン内への前記化学薬品投入システム29は、塩素、臭素、オゾン、その誘導体、及びそれらの混合物を含む群から選択される消毒剤を添加するように構成される、請求項33のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年5月28日にPCT国際出願として出願されるものであり、2019年6月28日に出願された米国特許出願第16/456,762号の優先権の利益を主張し開示全体が参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、水をレクリエーション目的に適したものとするために大規模水体を処理することに関し、より詳しくは、低コストの衛生システム及び方法を利用して水を処理し、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の微生物育成のリスクを最小化し、したがって現行方法及びシステムの非効率性を革新的に低コストで解決することに関する。より詳しくは、本発明は、大規模水体の中に2つの異なる処理ゾーンを創出して、直接接触型レクリエーション活動を促すための低コストで衛生効率の高いシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
従来の水泳プールテクノロジは何十年も前から、小型のレクリエーション用水体のための標準的な水処理として使用され、適用されてきた。しかしながら、このような水泳プールテクノロジは、比較的小規模な水体からの何種類かの微生物の処理と除去において非効率的であることがわかっている。
【0004】
それに対して、より高い希釈容量を有する遊泳に使用される湖(以下、「遊泳湖」という)等のより大規模な水体にも問題があり、水体が定期的に処理されているか、又は処理されないかを問わず、一部の微生物の不活性化と除去においては非効率的であった。さらに、従来の水泳プールテクノロジは、このような大規模水体に適用される場合、そのために多額の資本費用が必要であり、その運転とメンテナンスを完了させるのに大量のエネルギと化学薬品を要する。こうした結果的なコストによって、水泳プールの従来のテクノロジは、大規模水体に適用された場合、非常に高くつく。
【0005】
一般に、水泳プール及びそれより大規模な遊泳湖などの水体をはじめとするレクリエーション用水体は常に、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の微生物により汚染されやすく、これは、水泳、水浴、及びその他の直接接触型レクリエーション用途のためにこのような水体を使用する水浴客に対するリスクを生じさせる。
【0006】
A.水泳プール
長年にわたり、水泳プールテクノロジは、レクリエーション遊泳の目的で使用される小規模水体のための最も広く使用される水処理技術であった。その間に、世界中の様々な健康機関が水処理に関する規制を採択して、水泳プール用の最低限の健康基準を規定してきた。
【0007】
従来の水泳プールテクノロジでは基本的に、高いORP(酸化還元電位: Oxidation Reduction Potential)又は消毒剤濃度、例えば水上の遊離塩素レベル等を永久に保持するために、水全量の永久的消毒が必要である。それに加えて、このような水量からすべての懸濁粒子及び汚染物質を除去するためには、1日1~6回(一般的には1日4回)、水全量をろ過しなければならない。
【0008】
しかしながら、一般的な認識と異なり、従来のプール消毒技術は全ての細菌又は微生物を瞬時に死滅させるわけではないと理解することが重要である。そうではなく、塩素耐性の微生物があり、これは塩素処理後のプールの水の中でも生存して、「レクリエーション水病」(以下、「RWIs: Recreational Water Illness」という)の引き金となるかもしれない。通常の水泳プール消毒レベルで数秒以内に死滅する特定のバクテリアもあるものの、塩素又はその他の消毒剤に対して高い耐性を有する微生物も多い。このような微生物は、汚染イベントがプール内で発生してから何日間も生存する可能性があり、これは、水泳プールの消毒処理がこのような微生物の全てを死滅させるように考案されているとは限らないからである。従来の水泳プール消毒技術に対する耐性の高い微生物のひとつは、例えばクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)である。これは、前述のように、特に水泳プール等の処理済み水体におけるRWIsの重大原因である。事実、幾つかの研究から、約1~3ppmの遊離塩素レベル(従来の手法で処理された水泳プール内で見られるレベル)でクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストの99.9%不活性化するのに10日を超える時間がかかる可能性があることが示されており、これは、そのような微生物が従来の水泳プール消毒方法に対して高い耐性を有するからである。したがって、多くの水浴客は、その10日間の期間中は水泳プール消毒基準の関連規則に準じて処理されたプール内で泳ぎながら、そのような微生物による感染にさらされるかもしれない。
【0009】
それに加えて、従来のプールろ過技術に関して、一般にはサンドフィルタは20~25マイクロメートルまでの大きさの粒子を取り除くことができ、カートリッジフィルタは典型的に、5~10マイクロメートルまでの大きさの粒子を除去できる。しかし、例えば、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストの大きさは約4~6マイクロメートルである。これによって、それらは一般的に使用されているフィルタによる従来のプールろ過で除去することは非常に難しく、1回のフィルタ通過でオーシストの約25%しかろ過できない。
【0010】
以上のことに基づき、プール内汚染のイベントがあった場合に、消毒及びろ過システムではこのような微生物の除去に対応できないことがわかるであろう。従来の消毒は、このような微生物を不活性化し、又は死滅させるのに十分ではなく、ろ過システムは、汚染が発生したときに人々が確実に感染しなくなるための適切な時間枠内で水からそれらを除去するのには適していない。特にこれは、従来の水泳プールテクノロジではプール内の水の全量をろ過するという、適切な時間内に全てのオーシストを完全に除去できないほど時間のかかるプロセスが必要であることと、塩素では10日以下の期間で特定の微生物のオーシストを完全に不活性化できるとはかぎらないかもしれないという事実による。したがって、プール内で汚染イベントが発生すると、このような微生物は検出されないままで、適正に処理され、プールの水から除去される前に、多くの水浴客を感染させかねない。
【0011】
したがって、水泳プールは、水中に存在する、従来の水泳プール水処理方法に対して高い耐性を有する可能性のあるバクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の微生物により引き起こされるRWIsを発生させやすく、したがって、水を飲み込んだり、再懸濁した微生物を吸い込んだり、又は単に水に直接触れたりすることによって水浴客に到達する可能性がある。
【0012】
米国疾病対策予防センタ(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)によるある調査では、2011、2012年の32の州及びプエルトリコからのレクリエーション水病の流行に関する90件の報告がまとめられたが、そのうち69件の発生(76.6%)が従来の方法で処理された水泳プールで見られた。それに加えて、CDCによる2007年の調査では、2005~2006年に起こった全体で78件のレクリエーション水病の流行がまとめられ、その患者は4,412人に上り、116人が入院し、5人が死亡した。これら78件の流行の報告のうち31件(40%)がクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)に起因していた。他の調査では、2003年6月にジアルジア鞭毛虫(Giardia intestinalis)の大発生がマサチューセッツ州の会員制クラブのプールで始まり、その結果として、人から人への二次感染の事例を含め発症が149件に上ったことが示されている。また、2003年7月には、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)の流行がカンザス州の複数のプール及びデイケアセンタで広がり、617件の発症が見られた。この最後の流行は、2003~2004年の最大のレクリエーション水病の流行であった。さらに、2004年7月には、オハイオ州の公共プールでのクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)の流行により、3つの郡で160人が胃腸炎を起こし、2004年8月に、カリフォルニア州のウォーターパークで胃腸炎を患う従業員がプール内で仕事及びレクリエーション活動を続けた結果、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)が流行し、関連する疾患に336人が罹患した。
【0013】
さらに、2008年にCDCは、米国でのクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)に起因するRWIsの症例が2004年から3倍になったと発表した。しかしながら、この増加は、検出技術の進歩による影響を受けていた可能性があり、例えば、過去に症例が存在してはいたが、検出されなかったかもしれないことを意味している。より最近では、2013~2014年にCDCから収集されたデータによれば、米国内で報告された水泳プールからは71件を超える流行の事例があり、その結果、950件を超える発症があったことが示された。2000~2014年に450件を超える流行が報告され、そこから27,000件を超える症例が生じ、その症例の半分以上がクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)によるものであった。
【0014】
上述のケースは、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)やジアルジア鞭毛虫(Giardia intestinalis)その他等の一部の微生物が従来の水泳プールの処理方法又はシステムでは有効に排除されないとの事実を裏付けている。したがって、RWIsは処理されていない水体のみにおけるリスクであると一般的に考えられているが、RWIsが複数の人の罹患につながった事例のほとんどが、水泳プール等、従来の方法で処理された水体で発生しており、これはレクリエーションを目的とする水体を処理し、保守するための方法とシステムを改善する必要性を浮き彫りにしている。
【0015】
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)及びジアルジア鞭毛虫(Giardia intestinalis)等の微生物による汚染に加えて、水泳プールでは水体中に存在するアメーバに起因するRWIsも発生しやすい。例えば、チリのサンチャゴで実施された2003年の調査では、8ヵ所の公共プールのうち5ヵ所で夏季の間に自由生活性アメーバが見られ、検体の36.3%にフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)とアカントアメーバ(Acanthoamoebas)が存在していた。さらに、このような調査では、前記公共水泳プールのうち自由生活性アメーバ又は微生物が発見されなかった1ヵ所は、極端に高い塩素濃度を有しており、それによって周囲の空気は呼吸できず、目の痛みを生じさせるほどであったと報告された(特に、空気循環の悪い屋内プールであったことによる)。
【0016】
より最近では、スペインでトレド県の10歳の女児が、スペインでの第一例目となるフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)に起因する原発性アメーバ脳炎(PAM: primary amoebic encephalitis)から回復しており、罹患場所は標準的な水泳プールテクノロジで処理と保守が行われた公共の水泳プールであった。原発性アメーバ髄膜炎(PAM: primary amoebic meningitis)は極めて侵攻性の高い疾患であり、それによって激しい頭痛、発熱、頸部のこわばりが数日続き、検出された症例の97%で死に至っている。この症例が医師及び防疫係官を驚かせたのは、この女児が罹患した公共水泳プールが安全であると考えられる塩素レベルとろ過基準の両方に適合していたからである。
【0017】
現在、この種の汚染イベントが水泳プールで発生した場合、一般には以下の2つの結果の何れかとなる:
-通常起こることであるが、汚染イベントが検出されないままであると、微生物は水中にとどまって広がり、おそらくは多くの水浴客を感染させ(水が従来のプールシステムにより処理されていたとしても)、これは、水浴客が危険な微生物に10日より長くさらされることになりかねないことを意味する。また、すでに強調したように、従来のプールろ過システムでは、部分的なろ過であるため、水からオーシストを除去するのに長時間かかり、また、場合によってはその大きさから、オーシストを全く除去できない。
-汚染イベントが検出された場合、オーシストを不活性化し、除去するために、プールを数日閉鎖して、時には、稀ではあるが、プールを完全に排水する必要さえある。或いは、水泳プールに塩素高濃度処理を施すことができ、これには極めて高い遠視濃度が必要であり、これによって、前述のように周囲の空気は呼吸できなくなるほか、目及び皮膚の痛みも発する可能性がある。
【0018】
結論として、消毒及びろ過プロセスを組み合わせた従来の水泳プールテクノロジでは、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)及びジアルジア(Giardia)その他の一部の微生物を処理できる用意がなく、それによって、直接的なレクリエーション目的に使用される水に病原体となる微生物がいないことを確実にするのは難しい。従来のプールシステムは、たとえそれらが必要な地元の規則に適合していたとしても、こうした種類の微生物を排除することにおいて、時間がかかり、又は不効率である。
【0019】
B.より大規模な水体
前述のように、直接接触の目的に使用される遊泳湖のような、何らかの方法で処理される、より大規模な水体もある。これらの水体もまた、バクテリア、原虫、アメーバ、微生物、及び寄生生物その他のような微生物の存在に関連するリスクが高い。場合によっては、人が感染すると致命的である。
【0020】
一般に、このようなより大規模な水体は、基本的に従来の水泳プールテクノロジの適用を縮小することからなる方法を使って部分的に処理される。それゆえ、これらの水体が処理される際、消毒レベル及びろ過レベルは典型的に、従来の水泳プールで求められるものよりはるかに低い。例えば、水全量における遊離塩素を(従来の水泳プールのように)永久的に1ppmに保持する代わりに、このような大規模水体は、はるかに低いレベルを保持し、しかも必ずしも永久的ではなく、(従来の水泳プールで求められるように)1日に4~6回水の全量をろ過する代わりに、水量の一部がろ過され、及び/又は頻度が減らされる。この部分的消毒及びろ過はこのような大規模な水体に、主として経済的理由から適用され、それは、従来の水泳プールテクノロジを大規模水体で使用する場合、非常に大容量のシステムと設備のコストのほか、必要な大量の化学薬品とろ過のための電気に関係する高額な運転コストが必要となるからである。
【0021】
このような部分的に処理された遊泳湖は一般に、水の透明度が低い点に留意することも重要である。これは、従来の水泳プールの透明さ及び明澄状態と対照的であり、これは主として水量の部分的ろ過の結果である。
【0022】
部分的に処理されたより大規模な人工湖及びラグーン又はそれと類似するもののような範囲の限定されたリクリエーション水体を扱う際、それらが従来の水泳プールテクノロジで処理されない場合は重大な衛生上のリスクが発生するかもしれない点に留意することが重要である。例えば、従来の水泳プール技術を使って処理されず、その中の部分的な適用を用いて処理された、範囲の限定された人工の大規模水体の中の危険な微生物に起因する多くの事故が、これまでに起こっている。
【0023】
代表的な事例はディズニ・リバー・カウンティにおけるものであり、11歳男児がフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)により死亡したものであり、感染したのはその人工ラグーンで泳いでいる時であった。そのほか、ノースカロライナのナショナル・ホワイトウォータ・センタでも発生しており、その時には18歳の女性がその施設でのラフティング中にアメーバに感染した1週間後に死亡した。
【0024】
別の最近の事故はテキサスのワコにある人工サーフレイクで発生しており、そこでは従来のプールテクノロジは使用されず、部分的な消毒とろ過が使用されていた。この事故では29歳のサーファがフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)アメーバに感染し、2018年9月21日に死亡した。この事故の転帰は死亡であったが、2018年9月27日に水質分析が行われると、アメーバはそのサーフレイクでは発見されず、近所の水体で発見された。したがって、単純な水質分析は通常、この種の事故の防止には十分ではない点を強調することが非常に重要であり、これは、これらの微生物が水体内の特定の区画内に存在し、及び/又は隅部にある可能性があるからである。
【0025】
問題の大きさを示すものとして、米国では140を超えるフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)アメーバの登録症例があり、その死亡率は97%である。
【0026】
フォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)は鼻を通じて器官に侵入し、そこから中央神経系へと移動して急性脳炎を起こし、最終的に原発性髄膜脳炎(PAM: Primary Meningoencephalitis)という脳組織の破壊を招く脳の感染症へと至る。この理由から、これは「脳食いアメーバ」とも呼ばれることがある。髄膜脳炎は、2~8日の潜伏期間があり、ほとんどの場合、感染した患者の死亡に帰結する。
【0027】
それに対して、アカントアメーバ(Acanthoamoebas)は、目又は皮膚の切傷から人体に侵入し、中央神経系へと移動し、その潜伏期間はわずか数日である。後者の場合、ほとんどの症例の転帰は死亡である。
【0028】
アメーバもアカントアメーバも、これらが波が高く、常に水の動きがあり、それが水体の底面に堆積した堆積物の再懸濁を発生させるような水体中に存在している場合、特に危険である。再懸濁は、バクテリアが水浴客の鼻及び目に到達する機会を増やす。
【0029】
水質分析を通じたアメーバのモニタは非常に複雑であり、特別な知識を要する。また、水体内の異なる場所で数例の水サンプル採取を行うだけでは不十分であり、そのため、分析は前述のように他の場所での同じ結果の結論を出すのには役立たない。このようなアメーバは、水体内の特定の場所にあり、隅部又は底の堆積物の中に隠れている可能性がある。したがって、これらのアメーバの検出には訓練と特別な分析及び管理が必要であり、これらは全て、このようなリスクを回避又は軽減するためにレクリエーション用途の遊泳湖を適正に処理するシステムと方法の必要性を示している。
【0030】
したがって、今日、従来の水泳プール又は、一部が処理されるレクリエーション目的用の大規模な水体において完全な衛生上の安全性を提供する方法又はシステムはない。従来のシステムは、水泳プール用であっても、高濃度の消毒剤が必要であり、これは極めてコストがかかることのほかに、水浴客及び見ている人にとって有毒な環境と安全でない状態を発生させる可能性がある。それに加えて、水泳プールにおいて一般的に安全であると考えられている基準の全てが満たされていても、RWIsは依然として発生し得ることが証明されている。
【0031】
C.消毒インデックス
水泳プール又はより大規模水体の処理及び保全のためのパターン及び要求事項は従来の水泳プールの要求事項であり、例えばU.S.E.P.A.による細菌学的標準である。しかしながら、これらの標準は場合によっては、水中のバクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の微生物の存在による衛生上の危険がないことを保証するには不十分であるかもしれない。
【0032】
バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の異なる微生物を不活性化するために適正な消毒を行う1つの方法は、CTインデックスの使用である。このインデックスは、消毒剤の特定の濃度「C」と、適当な消毒を実現するためにこの消毒剤がその特定の濃度で水と接触している時間「T」から求められる。したがって、CTインデックスは次式からわかるように両方の値を乗じることによって特定される:
【数1】
【0033】
使用される消毒剤の種類、水の温度とpH、及び必要な不活性化レベルに基づいて、異なる微生物、寄生生物、及び原虫の不活性化には異なるCT値となる可能性がある。下の表1に微生物の不活性化のCTレベルを示す。
【0034】
【表1】
【0035】
不活性化は、下表2に示すように、1 log、2 log、3 log、又は4 logとして測定される。
【0036】
【表2】
【0037】
一般に、バクテリアは容易に不活性化されるが、ジアルジア鞭毛虫(Giardia intestinalis)やクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)その他のような微生物は、不活性化が非常に難しい。例えば、温度10℃、pH 7でのジアルジアシスト体の1 log不活性化には112のCT値が必要である。これは、以下の消毒の選択肢を使用できることを意味する:
-1 ppmの濃度Cを112分の時間Tにわたり使用でき、112のCTが得られる
【数2】

-2 ppmの濃度Cを56分の時間Tにわたり使用でき、112のCTが得られる
【数3】
【0038】
それゆえ、上の例から、同じCT値を実現するために、より高い濃度Cの場合はより低い適用時間Tとなることがわかる。
【0039】
レクリエーション用水体では、直接接触を目的として安全な衛生状態を提供するために、適正な消毒を実現しなければならない。一部の微生物は従来のプール消毒レベルで容易に不活性化されるが、従来の消毒及びろ過方法に対する耐性を有する微生物があり、したがって衛生上安全な水体を提供するために他の種類の処理が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
したがって、非効率な現在の方法とシステムを革新的な方法と低コストで解決することによってバクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような、レクリエーション用の水域で一般的に発見される微生物による大規模水体の汚染のリスクを最小化できるような水処理システム及び方法の必要性が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0041】
概要
本発明は、大規模水体を処理して水をレクリエーション目的に適したものとするためのシステムと方法を提供する。
【0042】
本発明の原理による方法とシステムは、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような微生物による汚染リスクを最小化する低コストの衛生システム及び方法を提供する。このようなシステムと方法は、遊泳湖や人工の大規模水体その他で利用されてよい。
【0043】
何れの場合も、本発明の原理には大規模な水体における2種類の処理ゾーンを指定することが含まれる。2つのゾーンは異なる構成と処理方法を有する。第一のゾーンは堆積ゾーンである。このゾーンは主として、微生物及び/又は汚染物質の処理と沈降を提供して、これらを不活性化し、及び/又は水体から除去するために使用される。第二のゾーンは放散ゾーンである。このゾーンは、主要な直接接触型レクリエーション親水活動が行われるように意図される場所である。この放散ゾーンでは、水流が起こされ、それが風及び/又は水温差により生じる自然な流動と共に放散ゾーン2内の水の堆積ゾーン1への水放散パターンを発生させることができる。それに加えて、放散ゾーン内の水量の連続的な殺菌が提供される。
【0044】
したがって、本発明の第一の態様によれば、少なくとも3,000mの、直接接触型レクリエーション用大規模水体を提供するための低コストで衛生効率の高い方法が提供され、この方法は、大規模水体中に堆積ゾーン1と放散ゾーン2を指定することと、CTインデックスに基づく消毒方法を適用することと、堆積ゾーン1に、堆積ゾーン1内に存在する各種の微生物及び/又は汚染物質の沈降を助け、堆積ゾーン内の水量をほとんど攪乱させず、それによって堆積プロセスへの攪乱が最小化されるのに十分な量の凝集剤組成物を適用することと、放散ゾーン2に十分な量の塩素消毒剤を加えることによって放散ゾーン2内の永久残留塩素濃度を保持して、放散ゾーン2内に含まれる水量中に少なくとも0.5m/Lの遊離塩素レベルが保持されるようにすることと、1つ又は複数の入口ノズルによって放散ゾーンに水を注入することであって、それが風及び/又は水温差により生じる自然の流動と共に放散ゾーン2内の水量の堆積ゾーン1への水放散パターンを発生させることのできるようにする、注入することと、を含み、放散ゾーン2は「汚染削減インデックス(CRI: Contamination Reduction Index)」が最大30分間可能となるように構成され、配置される。
【0045】
前段落に記載される方法による別の態様によれば、堆積ゾーン1と放散ゾーン2は物理的なバリアにより分離されず、放散ゾーン内の水量と堆積ゾーン内の水量との比は1:2~1:40である。方法は、堆積ゾーンを、1日平均で大規模水体を利用する全水浴客数の20%以下が堆積ゾーン1内にいるように設計することをさらに含み、堆積ゾーン1は主として二次的な非直接的なレクリエーション親水の目的のためとされ、遊泳等の直接接触用に放散ゾーンを設計することをさらに含み、及び/又は放散ゾーンを、1日平均で大規模水体を利用するスイマの80%以上が放散ゾーン2内にいるように設計することをさらに含む。
【0046】
本発明の原理を利用してよい大規模水体には既存の水体(遊泳湖など)又は建設される水体が含まれると理解されたい。
【0047】
本発明の第二の態様によれば、直接接触型レクリエーション目的に適した大規模水体を設立するシステムが提供され、大規模水体は、少なくとも3,000mにわたり、周辺12と底部を有するタイプであり、大規模水体3の一部の中に、周辺12の一部に沿って配置される堆積ゾーン1と、i)72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するための堆積ゾーン内の水量中への消毒剤、ただし、Cは濃度として定義され、Tは最小接触時間と定義され、及びii)水体中に存在し、CTサイクルによって不活性化される各種の微生物、寄生生物、及び原虫の沈降プロセスを助ける、堆積ゾーンへの凝集剤を投入するように配置され、構成された堆積ゾーン内の化学薬品投入システム19と、大規模水体の一部の中に、周辺12の一部に沿って配置された放散ゾーンと、放散ゾーンの水の水量中の永久残留塩素濃度を保持するように構成された放散ゾーンへの化学薬品投入システム29であって、放散ゾーン内にある水量中で少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるような化学薬品投入システム29と、放散ゾーンに水を注入するように配置され、構成され、それが風及び/又は水温差によって生じる自然の流動と共に放散ゾーン2内の水量の堆積ゾーン1への放水放散パターンを発生させ、堆積ゾーン内の水体をほとんど攪乱せず、それによって堆積プロセスへの攪乱が最小化されるようにする、放散ゾーン内の放散ゾーン2全体にわたる1つ又は複数の入口ノズル26と、を含む。
【0048】
本発明を特徴付ける利点と特徴は、本明細書に添付され、その一部を構成する特許請求項の中で具体的に指摘されている。しかしながら、本発明をよりよく理解できるように、本発明の好ましい実施形態が図解され、説明されている、本明細書の一部を構成する図面及びそれに伴う説明的事項を参照すべきである。
【0049】
図面の簡単な説明
図面に関して、複数の図面にわたり、同様の番号は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】2つの別々のゾーン、すなわち堆積ゾーン1と放散ゾーン2を含む大規模水体の1つの例示的な実施形態を示す。
図2】堆積ゾーン1と2つの放散ゾーン2を含む大規模水体の1つの例示的な実施形態を示す。
図3】ある実施形態の堆積ゾーン1と放散ゾーン2を示す、図1の水体の拡大図を示す。
図4A】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4B】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4C】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4D】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4F】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4E】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図4G】本発明の方法が示される本発明の例示的な実施形態を示す。
図5】本発明の実施形態で利用できる各種の構成要素の機能ブロック図を概略的に示す。
図6】放散ゾーン2の領域の中の大規模水体の周辺12の一部を概略的に示す。
図7】本発明に関して利用されるある実施形態の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、添付の図面に関する。本発明の実施形態が説明されるが、改変、適応、及びその他の実行が可能である。例えば、図中に示される要素に置換、追加、又は壊変を行ってもよく、本明細書に記載の方法は、開示されている方法のステージを置き換え、その順序を変更し、又は追加することによって改変されてよい。したがって、以下の詳細な説明は本発明の範囲を限定しない。
【0052】
本発明は、直接接触型レクリエーション目的のための2つの異なる処理ゾーンを有する大規模水体を提供するための低コストで衛生効率の高い方法に関する。
【0053】
本発明の低コストで衛生効率の高い方法は、水体内の安全で衛生的な状態を保持することにおける従来の水泳プールテクノロジの技術的非効率性に、特定の、効率的な水放散パターンのほか、塩素消毒剤の最小永久濃度を有する、直接接触型レクリエーション目的のための放散ゾーン2の技術的特徴を、放散ゾーン2のから物理的に分離されず、放散ゾーン2からそれ以前に放散した有害な微生物を不活性化し、凝集し、排除するように構成された、主として二次的な非直接的レクリエーション親水目的のための堆積ゾーン1と組み合わせることによって対処する。
【0054】
本明細書に記載されているように、本発明による複合的な消毒方法、効率的な拡散パターン、及び水体の堆積容量により、以前は述べられても適用されてもいなかった、従来の水泳プールテクノロジ及び一部が処理される大規模水体のそれらの不効率性を解決する、水によるレクリエーション目的のための前例のない安全環境を創出し、それゆえ、微生物(例えば、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他)に起因する感染症のリスクを最小化するレクリエーション用水体の創出が可能となり、そのようにして現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決する。
【0055】
本発明に関して、直接接触型レクリエーション活動は、水浴客が水と繰り返し、又は継続的に直接接触することが含まれ、水泳、ウォータスキー、ダイビング、サーフィン、及びウェイディング等、子供達が水を飲み込む重大なリスクをはらむ。それに対して、二次的接触又は非接触型レクリエーション用途は水浴客が水と直接接触することを伴わないため、釣りやボート等、水を飲み込む重大なリスクをはらんでいない。
【0056】
本発明の方法により、大規模水体から汚染物質及び/又は微生物を不活性化及び/又は除去することができるが、このような微生物は空気、水源、外的汚染、又はそれより高い可能性としては、そのような汚染物質を保有している水浴客が水体に入ることからもたらされる可能性がある。
【0057】
より具体的には、本発明は直接接触型レクリエーション目的に適した大規模水体を提供するための低コストで衛生効率の高い方法に関し、この方法は特に、
-大規模水体内に堆積ゾーン1及び放散ゾーン2を指定することであって、両方が異なる構成と処理方法を有し、
-堆積ゾーン1と放散ゾーン2は同じ水体3内にあり、物理的バリアでは分離されず、
-堆積ゾーン1は、審美的な目的であって、主として二次的な非接触型レクリエーション目的に適した大規模水体を親水目的のためであることが意図される第二の目的を(例えば、堆積ゾーンとしての機能のほかに)有することができ、したがって、放散ゾーン2をより低い水浴客密度を有するように設計され、
-放散ゾーン2は、遊泳や水浴等の直接的接触目的のために使用され、高い水浴客密度を有するように設計される
ような指定することと、
-堆積ゾーン1の水量にCTインデックスに基づく消毒方法を適用することと、
-堆積ゾーン1の中に、堆積ゾーン1内に存在する各種の微生物及び/又は汚染物質の沈降を助ける十分な量の凝集剤組成物を適用することであって、堆積ゾーン1内の水流及び水循環が保持されて、適正な堆積が行われ、好ましくは堆積ゾーン1内の水流と水循環が最小限に保持されてそれによって、堆積プロセスへの攪乱が最小化されるような、指定することと、
-放散ゾーン2の水量内の永久残留塩素濃度を保持することと、
-1つ又は複数の入口ノズルによって放散ゾーン2に水を注入し、それが風及び/又は水温差により生成される自然の流動と共に、放散ゾーン2内の水量の堆積ゾーン1への水放散パターンを生成させることができるようにすること、
により定義され、
放散ゾーン2は汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように構成される。
【0058】
より具体的には、本発明はまた、直接接触型レクリエーション目的に適した大規模水体3を設立するシステムに関し、システムは、
a)大規模水体3の一部の中の、周辺の一部に沿った堆積ゾーン1と、
b)堆積ゾーン1内の周辺に沿った、
i)72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するための堆積ゾーン1内の水量中への消毒剤、ただし、Cは濃度として定義され、Tは最小接触時間と定義され、及び
ii)水体中に存在し、CTサイクルによって不活性化される各種の微生物、寄生生物、及び原虫の沈降プロセスを助ける、堆積ゾーン1への凝集剤組成物
を投入するように配置され、構成された化学薬品投入システムと、
c)大規模水体の一部の中の、周辺の一部に沿った放散ゾーン2と、
d)放散ゾーン2に水を注入して、放散ゾーン内の水量の拡散パターンを生成させるように配置され、構成された、放散ゾーン2内の周辺に沿った1つ又は複数の入口ノズル26と、
e)放散ゾーンの水内の水量中の永久残留塩素濃度を保持するように構成された放散ゾーン2への化学薬品投入システム29であって、放散ゾーン内にある水量中で少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるような化学薬品投入システム29と、
を含む。
【0059】
本発明の原理が実践されてよい大規模水体は、自然の、又は人工の水体とすることができ、その表面積は少なくとも3,000m、より好ましくは少なくとも8,000m、及びさらにより好ましくは少なくとも12,000m、最も好ましくは少なくとも24,000mとすることができる。
【0060】
図1を参照すると、大規模水体3内に2つの異なるゾーン、すなわち第一の堆積ゾーン1と第二の放散ゾーン2が指定され、これらはどちらも異なる構成、消毒方法、クリーニング要件、及び放散状態を有する。
【0061】
どちらのゾーンも同じ大規模水体3内にあり、物理的バリアによって分離されず、これは、放散ゾーン2が堆積ゾーン1へと開放しているからである。どちらのゾーンも仕切り手段又は装置4の使用によって仕切られてもよい。したがって、本発明のある実施形態において、仕切り手段4が堆積ゾーン1と放散ゾーン2を分離する。本発明による仕切り手段4は、視覚的仕切り、架空フラッグ、ブイの連続、浮遊線、仕切り線、傾斜の変化、深さの違い、及びそれらの組合せその他を含む群から選択されてよい。他の実施形態において、仕切り手段のおおよその位置は、パンフレット、看板又はルールの指定、ハンドブック、ユーザ向けガイドラインの中、及び書面及び/又は口頭による説明等の他の説明によって設定できる。
【0062】
本発明によれば、放散ゾーン2内に含まれる量と堆積ゾーン1内に含まれる量の比は、好ましくは1:2、より好ましくは1:10、さらにより好ましくは1:30、最も好ましくは1:40である。
【0063】
堆積ゾーン1は、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他等の汚染物質及び/又は微生物の処理と沈降を提供して、それらを不活性化し、水体3から除去するように構成される。堆積ゾーン1は、懸濁汚染物質及び微生物の効率的な堆積を可能にし、それらの再懸濁を回避する特定の特徴を含み、これには(a)それが所定の深さを有すること、(b)それが限定的な水浴客密度を有するように設計されること、(c)それがCTインデックスに基づく消毒処理を含むこと、(d)それが微生物及び/又は汚染物質の沈降を助ける凝集剤の適用を含むこと、及び(e)それが沈降プロセスの障害となるかもしれない水流及び水循環を最小限にするために平水の状態を確実に保持する所定の表面を有すること、が含まれる。上記の特徴を以下に詳しく説明する:
a)所定の深さ:堆積ゾーン1は、その深さによって微生物の効率的な沈降が可能となるように設計される。本発明のある実施形態において、堆積ゾーン1の深さは、その最も深い地点において少なくとも1.8メートルであり、これは水浴客が堆積ゾーンの底面を踏んで、堆積ゾーン1の底にすでに沈降している微生物及び不純物の再懸濁を生じさせるかもしれない事態を防止するのに寄与する。本発明の他の実施形態において、堆積ゾーン1の深さは、その最も深い地点において少なくとも2メートル、好ましくはその最も深い地点において少なくとも2.2メートルである。
b)限定的な水浴客密度:堆積ゾーンは、主として二次的な非直接的レクリエーション親水目的のためとされ、その深さから、このようなゾーンに入り、とどまりたいと考えるかもしれない水浴客は、直接接触型レクリエーション目的に適した放散ゾーン2に戻る傾向があり、したがって、堆積ゾーン1は、そのような堆積ゾーン内の水浴客密度が大規模水体3内にいる全水浴客の20%未満、より好ましくは水体3内にいる全水浴客の10%未満に限定されるように設計される。このような全水浴客の20%及び10%とは、1日平均で、水体3に入る水浴客の総数を考慮して計算される。
c)CTインデックスに基づく消毒処理:堆積ゾーン1はCTインデックスに基づいて処理され、CTは、フォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)、ジアルジア(Giardia)、又はクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、その他のような最も有害な微生物を不活性化するのに適したものに特定できる。CTインデックスに基づく消毒処理では、堆積ゾーン1が、堆積ゾーン1の水量全体において最短接触時間「T」中に特定の濃度「C」を実現するための消毒剤を添加することによって処理されることが必要となる。本発明の好ましい実現では、消毒方法は、消毒剤が堆積ゾーン1内に含まれる水量に適用されて、72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するように実行され、これは、それがフォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)だけでなく、レクリエーション用水体中に存在するその他の有害な微生物を不活性化するために安全で衛生的な状態を提供するCTインデックスであることが証明されているからである。
フォーレネグレリア(Naegleria Fowleri)等の一部の微生物は、海水又は塩水中で生存できない点を強調することが重要である。それでも、本発明による水体3が海水、塩水、又はその組合せを含んでいても、堆積ゾーン1は何れの場合も、72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するように消毒剤が適用されるように構成される。本発明の他の実施形態において、消毒剤は、表1に示される、又は相応に規定されるその他のインデックスの何れかによるCTインデックスを少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間、より好ましくは最大72時間で実現するように適用される。
d)凝集剤の適用:堆積ゾーン1は、水体中に存在し、CTサイクルを通じて不活性化されているかもしれない汚染物質及び/又は微生物の沈降プロセスを助ける凝集剤組成物で処理される。
本発明のある実施形態において、凝集剤組成物は、有機及び無機凝集剤を含む群から選択される1つ又は複数の凝集剤を含む。好ましくは、凝集剤は、合成ポリマ、第四アンモニウムカチオンポリマ、ポリカチオンポリマ、アルミニウム塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの組合せを含む無機凝集剤から選択される。
本発明のある実施形態において、凝集剤は好ましくは、カチオン又はアニオンポリマ凝集剤を含む群から選択され、好ましくは堆積ゾーン1に少なくとも7日に1回、堆積ゾーン1の水量1mあたり0.03g~3.0gの速さで添加される。
e)大表面:堆積ゾーン1は、少なくとも1,500m、好ましくは少なくとも6,000m、より好ましくは少なくとも10,000mの大表面を有し、これによって堆積ゾーン1の底面からの沈降汚染物質の再懸濁に影響を与える可能性のある水流及び水循環の効果を最小化することができる。
【0064】
本発明による放散ゾーン2は、直接接触型レクリエーション目的に適しており、好ましくは水体3の周辺12の付近に配置され、堆積ゾーン1へと開放する。放散ゾーン2は、高い水浴客密度を有するように指定されたゾーンである。放散ゾーン2は、放散ゾーン2内の水量に連続的な消毒を提供し、堆積ゾーン1への水の効率的な放散を可能にする特定の特性と状態を有する。したがって、放散ゾーンは以下の3つの主要な技術的特徴により定義される:
a)連続的消毒:放散ゾーン2内で永久残留塩素濃度が保持され、このようなゾーンは、放散ゾーン内に含まれる水量中で少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるように消毒される。本発明の主要な実施形態によれば、塩素は放散ゾーン内に適用される好ましい消毒剤であるが、適当な消毒パラメータを実現するその他の種類の消毒剤、例えば臭素、オゾン、その誘導体、及びそれらの混合物等も使用できる。
b)特定の深さと形状:放散ゾーン2は、それが水浴客が放散ゾーンに近付き、入るのに適したデザインと深さとなるように設計される。本発明のある実施形態において、放散ゾーンは下降傾斜を有し、深さはその最も深い地点で1.4メートルである。好ましくは、放散ゾーンは、周辺12から底面への角度αの下降傾斜を含み、それによって最大15%の傾斜が得られて、大規模水体への安全な進入が実現され、また、それによって水浴客にとって、このような領域にとどまるのに適したものとなる。代替的な実施形態において、放散ゾーン2は、その深さがその最も深い地点において1.6メートル、好ましくはその最も深い地点において1.8メートルとなるように設計される。
c)1つ又は複数の入口ノズル:放散ゾーン2は、風及び/又は水体内の水平及び垂直水温差によって生じる水の流動の自然な影響と共に、堆積ゾーン1へと開放している放散ゾーン2内に含まれるそのような水量の水の移動と入替えを生じさせる水流を放散ゾーン2へと提供するために、そのようなゾーン内にある1つ又は複数の入口ノズル26を含む。本発明のある実施形態において、1つ又は複数の入口ノズル26の位置、設計、及び構成は、放散ゾーン内の異なるタイプの水入替えパターンを実現するために変えることができる。1つ又は複数の入口ノズル26は、放散ゾーンの何れかの部分、例えばその周辺及び/又は中央に沿って配置できる。特定の実施形態において、1つ又は複数の入口ノズル26は、(a)に記載されているように少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルの遊離塩素濃度を保持するために、放散ゾーンに十分な量の塩素消毒剤を添加するように構成できる。
【0065】
放散ゾーン2は、高い水浴客密度を有するように指定されたゾーンであり、そこでは大規模水体3の全水浴客の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が放散ゾーン2内にいて、2mあたり水浴客1名の最大密度、好ましくは4mあたり水浴客1名の最大密度、より好ましくは6mあたり水浴客1名の最大密度、最も好ましくは8mあたり水浴客1名の最大密度となる。このような80%及び90%とは、1日平均で、水体3に入る全水浴客数を考慮して計算され、このような水浴客の少なくとも80%、より好ましくは90%が放散ゾーン2内にいる。
【0066】
深さ、形状、及び1つ又は複数の入口ノズル26に関する上述のゾーン要素と風及び/又は水体中の水平及び垂直水温差により生じる水流の自然の影響との組合せによって、(a)に記載されているような前記放散ゾーン2内の連続的消毒を提供することに加えて、放散ゾーン2に含まれる水量の堆積ゾーン1への水の移動と放散を生じさせる。
【0067】
驚くべきことに、本発明による低コストで衛生効率の高い方法は、直接接触型レクリエーション目的のための放散ゾーン2の技術的特徴を組み合わせ、特定の効率的な水放散パターンと、汚染イベントが発生したときに有害微生物を安全且つ適時に不活性化し、主として二次的な非直接的レクリエーション親水目的のためとされる堆積ゾーン1へと放散させることのできる消毒剤の最低永久量を有し、前記堆積ゾーン1が放散ゾーン2から物理的に分離されず、CT消毒方法によって微生物を不活性化し、それらを凝集させて、効果的で安全且つ低コストで排除するように構成されることによって、大規模水体中の安全で衛生的な状態を保持することにおける従来の水泳プールテクノロジの技術的非効率性に対処できることがわかった。
【0068】
現時点では、直接接触型レクリエーション目的のためとされるゾーンにおける効率的な水放散パターン及び最小消毒基準の効果を、放散ゾーンからそれ以前に放散していた汚染物質及び/又は有害な微生物を不活性化し、凝集させ、排除するように構成された堆積ゾーン1と組み合わせた本発明のうちの1つのような、大規模水体のための、従来の水泳プールの技術的不効率性に効率的で低コストに対処できる方法又はシステムは存在しない。天然の遊泳湖のような幾つかのより大規模な水体は何らかの方法で放散パターンを再現できるが、これらには本発明のような技術的特徴、すなわち、放散ゾーン2が永久的最小消毒剤濃度と項目及び効率的な放散パターンを有することのほか、CT消毒方法の適用を、レクリエーション親水目的のための衛生的で安全なゾーンを保持するために汚染物質及び/又は微生物の適切に不活性化し、排除できるようにする凝集剤の適用と組み合わせる堆積ゾーン1はない。
【0069】
したがって、本発明による複合的な消毒方法、効率的な拡散パターン、及び水体の堆積容量により、以前は述べられても適用されてもいなかった、従来の水泳プールテクノロジ及び一部が処理される大規模水体のそれらの不効率性を解決する、水によるレクリエーション目的のための前例のない安全環境を創出し、それゆえ、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような微生物に起因する感染症のリスクを最小化するレクリエーション用水体の創出が可能となり、そのようにして現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決する。
【0070】
前述のように、放散ゾーン2は、このようなゾーン内に水流を注入する1つ又は複数の入口ノズル26と風及び/又は水体の水平及び垂直温度差により生じる水の流動の自然の影響の複合的効果によって、放散ゾーン2内の水量の効率的な拡散パターンを発生させるように構成され、これは放散ゾーン2内に水流及び効率的拡散パターンを発生させ、それによってこのような水量が強制的に放散ゾーン2から出され、堆積ゾーン1へと移動される。1つ又は複数の入口ノズル26により作られる循環と、風及び水体の水平及び垂直水温差により生じる水の流動の自然の影響は、このような放散ゾーン2内に放散速度を発生させるのに寄与し、これは、このようなゾーンに入る水流が水量を押し込み、放散ゾーン2から出て、堆積ゾーン1に到達するからである。したがって、1つ又は複数の入口ノズル26の構成と容量、風及び/又は水体の水平及び垂直水温差のほか、堆積ゾーンとの開放型水力接続の存在に基づいて、放散ゾーン2内に含まれる水量の入替えを可能にするような放散パターンがある。
【0071】
本発明の特定の実施形態において、水体はより強い風を受けるかもしれず、これは放散ゾーン内の放散パターンに影響を与える可能性がある。このような場合、放散ゾーン内の1つ又は複数の入口ノズルにより作られる循環は、適当な放散パターンを保持するのに必要に応じて調整できる。例えば、風が放散ゾーンの中の放散パターンにプラスの影響を与える場合、1つ又は複数の入口ノズルからの水流は、風により作られる放散パターンが放散ゾーンから堆積ゾーンへの水量の必要な放散を発生させるのに十分であれば、最小化又は完全に抑制することができる。それに対して、風が放散ゾーン内の放散パターンにマイナスの影響を与える場合、1つ又は複数の入口ノズルからの水流は、放散ゾーンから堆積ゾーンへの水量の必要な放散を発生させるように調整できる。
【0072】
これは従来の水泳プールと比較して明らかな利点であり、なぜなら、水泳プールは放散パターンを創出するために別の放散ゾーン2を持たないからであり、したがって、本発明の方法においては、永久的残留消毒剤濃度と放散ゾーン2内の効率的な放散パターンを組み合わせることによって、このようなゾーンは、このようなゾーンの衛生品質を損なうことなく、大勢の水浴客による使用に耐えることができ、これは、汚染イベントが発生したときに、微生物を従来の水泳プールと比較してより効率的及び安全な方法で放散させることができるという点による。
【0073】
効率的な放散パターンを有することによって、汚染イベントが発生した場合、例えば汚染物質が感染性の微生物を有する新規の水浴客によって、又はその他の手段によりもたらされた場合、前記汚染を放散ゾーン2から堆積ゾーン1へと放散させ、それを不活性化及び/又は除去できる。本発明に関して、汚染イベントは、水浴客の健康に対するリスクを生じさせる有機若しくは無機物質又は微生物が水体にもたらされるあらゆるイベントを指す。
【0074】
本発明の効率的な放散パターンは従来の水泳プールとは異なり、新規の感染している水浴客によって、又は感染イベントによってもたらされた何れかの汚染は、それが除去されるか適正に不活性化されるまで、同じ限定された水量内に数時間又はそれより長く残るかもしれず、他の水浴客に対する潜在的リスクをもたらす。前述のように、特定の微生物は、水泳プールの従来のろ過及び消毒方法に対して高い耐性を有し、したがって、それを除去する前にプールの水量内に何時間も、さらには何日も生存する可能性がある。
【0075】
特筆すべき点として、本発明の方法とシステムでは、従来の水泳プールの頻度で(例えば、1日に1~6回)水の全量をろ過する必要はないものの、従来のろ過システムの使用を追加の処理として水体に使用してもよい。このような使用は、現地の法令による要求や所有者/開発業者の決定によるものであってよい。水体の従来のろ過システムの使用は、本発明の方法及びシステムと両立するが、堆積ゾーン内の水流は、粒子の適正な堆積を可能にするべきである。しかしながら、このように従来のろ過システムを水体への追加の処理として使用することには、より高い建設及び営業費用が関わるかもしれず、したがって、好ましくは50,000mまでの量の水体において実装されてよい。
【0076】
それに加えて、堆積ゾーン内の永久的遊離塩素レベルを保持する必要はないが、このようなレベルは、現地の法令による要求や所有者の決定により求められるかもしれず、その場合も本発明の方法及びシステムと矛盾しない。
【0077】
放散ゾーン2内の永久塩素レベルは、塩素錠剤の使用により、放散ゾーン2内にある1つ又は複数の入口ノズル26からの希釈塩素の適用によって、又は少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルを保持するために有効な量の塩素をそのようなゾーンに手作業で添加することによって実現できる。
【0078】
本発明のある実施形態によれば、1つ又は複数の入口ノズル26から放散ゾーン2に注入される水は、紫外線(UV)で処理される。
【0079】
本発明のある実施形態において、水体は、複数の別々の放散ゾーン2を含み、これは好ましくは水体3の周辺12に沿って配置され、堆積ゾーン1へと開放し、この場合、放散ゾーン2は遊泳、水浴、及びその他の直接接触型レクリエーション目的に使用され、それに対して堆積ゾーン1は、審美的目的を有し、主として二次的な非直接的なレクリエーション親水目的用とされる。
【0080】
堆積ゾーン1に関して、沈降粒子や落下したごみを除去するための底面の毎日のクリーニングは不可欠ではなく、これは、このようなゾーンは、底面が放散ゾーン2の底部より暗い色調を有していてよい天然の湖やラグーンのような、より自然な様相を有していてよいからである。本発明の好ましい実施形態において、堆積ゾーン1の底面は少なくとも7日に1度クリーニングされる。しかしながら、その他の周期が採用されてもよい。本発明のある実施形態において、底面をクリーニングするために底面クリーニング装置が提供される。
【0081】
放散ゾーン2には、両ゾーンの底面を水中に審美性、安全、又は衛生上の影響を生じさせるかもしれない粒子が存在しない状態に保持するために、底面の定期的クリーニングが必要である。また、このようなゾーンは、沈降した微生物の再懸濁を完全に防止するためにも、定期的にクリーニングしなければならない。本発明の好ましい実施形態において、放散ゾーン2の底面は少なくとも72時間に1回クリーニングされる。しかしながら、他の周期が採用されてもよい。
【0082】
本発明のある実施形態において、堆積ゾーン1は、大規模水体3にいる全水浴客の10%未満と、さらに低い水浴客密度に限定される。他の好ましい実施形態では、堆積ゾーン1は、水浴客が直接接触型レクリエーション目的のために存在できないようになっており、二次的接触目的の水上スポーツの実践のみが可能となるように構成される。
【0083】
放散ゾーン2に含まれる水量と堆積ゾーン1に含まれる水量の比は、好ましくは1:2、より好ましくは1:10、さらにより好ましくは1:30、最も好ましくは1:40であり、このような関係は放散ゾーン2に含まれる水の全量の合計を堆積ゾーン1の水量で割ることにより計算される。
【0084】
本発明のある実施形態において、堆積ゾーン1からの、すでに処理済みの水は、堆積ゾーン1から抽出して、放散ゾーン2へと送出できる。このような水は、部分的又は完全に補給水と混合できる。
【0085】
微生物生育リスクを最小化することに加えて、本発明はまた、凝集しやすい粒子と汚染物質も排除する。本発明のある実施形態において、凝集剤は、有機及び無機凝集剤を含む群から選択できる。好ましくは、凝集剤は、合成ポリマ、第四アンモニウムカチオンポリマ、ポリカチオンポリマ、アルミニウム塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの組合せを含む無機凝集剤から選択される。好ましくは、堆積ゾーン1に添加される凝集剤は、カチオン又はアニオンポリマ凝集剤及びそれらの組合せを含む群から選択され、好ましくは堆積ゾーン1に少なくとも7日に1回、堆積ゾーン1の水量1mあたり0.03g~3.0gの速さで添加される。
【0086】
次に、図5を参照すると、本発明の実施形態と一緒に利用されてよい各種の構成要素を示す機能ブロック図が示されている。大規模水体は、参照番号3で示されている。図5では水体の形状は4辺からなる形状として示されているが、この形状は例に過ぎないと理解されたい。その他の形状は、図1~3に示されている。堆積ゾーン1及び放散ゾーン2は、大規模水体3の指定された部分として示されている。物理的バリアではない仕切り手段4のための境界は、堆積ゾーン1と放散ゾーン2との会合点又は交差点として示されている。周辺12は大規模水体3の縁部に沿って延びる。
【0087】
ポンプ25への入力水は、放散ゾーン2、堆積ゾーン1からの処理済み水、及びブロック27からの必要又は所望の補給水から提供される。様々な場所からの水の量は、大規模水体3内に適切な流動/流れを確立すること、蒸発、その他の要素に基づいて調整されてよい。ポンプ25は、1つ又は複数の入口ノズル26に水を提供し、それが風及び/又は水体の水平及び垂直水温差により生成される水の流動の自然の影響と共に、放散ゾーン2から堆積ゾーン1への流動又は流れ(複数の矢印14で示される)を確立する。化学薬品投入システム29は、化学薬品をポンプ25へと提供し、また、任意選択により化学薬品を放散ゾーン2へと直接提供する。
【0088】
1つ又は複数の入口ノズルを含む化学薬品投入システム19は、必要な化学薬品を堆積ゾーン1に提供する。例えば、化学薬品投入システム19は、所望のCTサイクルのために必要な消毒剤と、凝集剤を提供する。1つ又は複数の入口ノズルを含む化学薬品投入システム19は、大規模水体3の大きさに基づいて、処理のために周辺12に沿って追加の長さ又は位置に延長されてよい。処理済み水もまた、堆積ゾーン1からポンプ30を通じてポンプ25へと、又は化学薬品投入システム19へと送出できる。
【0089】
次に、図6を参照すると、放散ゾーン2の一部の概略断面図が示されている。周辺12は、海岸又は縁15と、大規模水体3内の水との間の境界として示されている。周辺12から底面への下降傾斜は好ましくは角度αであり、その結果、最大15%の傾斜が得られる。これによって、海岸15から水16への、安全で、一般的に水に入る水浴客にとって快適な入口が提供される。
【0090】
汚染削減インデックス(CRI)は、本開示の中で、本発明の方法により処理された水体の安全で衛生的な状態を表すために策定された標準プロトコルに基づいて計算される。
【0091】
本発明に関して、汚染削減インディクス(CRI)は、画定された水域外へと水溶液のサンプルを放散させるために必要な分の単位の時間を特定するインデックスである。特に、汚染削減インデックス(CRI)は、着色した溶液のサンプルが放散ゾーン2内の特定の地点に添加された瞬間からその着色溶液が放散し、前記放散ゾーン2内で目視で検出されなくなるまでカウントされた分の単位の時間を示す。
【0092】
汚染削減インデックス(CRI)は、水浴客によって、又はその他の手段によって放散ゾーン2へと持ち込まれた水性汚染物質が放散ゾーン2から堆積ゾーン1へと放散するのに必要な時間を公正に表す。CRIはしたがって、前記水体ゾーンが汚染物質を短時間で堆積ゾーン1へと放散させる能力を評価するための適当で客観的な基準であり、前記汚染物質はその後、不活性化し、凝集させ、堆積ゾーン1から排出することができ、それゆえ、汚染イベントの場合に安全で衛生的な状態が保持される。
【0093】
CRIは、特定の着色された溶液のサンプルが放散ゾーン2内に添加された瞬間からそれが前記放散ゾーン2内で目視で検出できなくなるまでの時間をカウントするものであり、幾つかの要素に依存する。本発明に関して、放散ゾーン2のCRIは、主として堆積ゾーン1への開放型接続の存在、水流を放散ゾーン2へと注入する1つ又は複数の入口ノズルの配置、及び風及び/又は水体の水平及び垂直水温差により生じる水の流動の自然の影響によって影響を受ける。
【0094】
本発明の好ましい実施形態において、放散ゾーン2は、最大30分、より好ましくは最大25分、より好ましくは最大20分、及びさらにより好ましくは最大15分、及びさらにより好ましくは最大10分の汚染削減インデックス(CRI)を可能にするように構成される。
【0095】
CRIは、定性的及び/又は定量的データ及び分析の何れからも幾つかの方法で特定できる。
【0096】
1つの実施形態において、着色された溶液の散布の放散の完了に必要な時間に関する情報は、目視検査、実験に基づく方法、又は推定により定性的に取得できる。他の実施形態において、着色された溶液のサンプルの放散の完了に必要な時間に関する情報は、1つ又は複数のマニュアル式又は自動モニタ機器から取得できる。
【0097】
本発明による汚染削減インデックス(CRI)を特定するための標準化されたプロトコルは、144mの水体ゾーン(放散ゾーン2)が、30g/Lのカルミン(天然赤4)と77g/LのNaClを含む着色水溶液7Lを前記水体ゾーンからその着色溶液が前記水体ゾーン内で目視検出できなくなるまでに必要な時間を評価することを含む。このテストが行われている間に、放散ゾーン2内の着色溶液の目視検出を確実に行うために、水体ゾーンには、塩素やその他の消毒剤等、色素の検出を低減させるかもしれない化学的試薬がないようにすべきである。試験が終了したら、化学的試薬は放散ゾーン2の仕様に従って回収すべきである。
【0098】
したがって、汚染削減インデックス(CRI)は、永久的最小消毒剤濃度及び、有害な微生物を不活性化し、凝集させ、及び排除するように構成された堆積ゾーン1との開放的接続その他の要素と組み合わせられて、直接接触型レクリエーション目的用大規模水体のための安全で衛生的な状態を提供できる本発明による放散ゾーン2内の効率的な水放散パターンの客観的予測を提供する。
【0099】
本発明による複合的な消毒方法、効率的な拡散パターン、及び水体の堆積容量により、以前は述べられても適用されてもいなかった、従来の水泳プールテクノロジ及び一部が処理される大規模水体のそれらの不効率性を解決する、水によるレクリエーション目的のための前例のない安全環境を創出し、それゆえ、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような微生物に起因する感染症のリスクを最小化するレクリエーション用水体の創出が可能となり、そのようにして現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決する。
【0100】
上記に加えて、本発明による方法では、従来の水泳プール用のシステム及び方法と比べて、コスト削減も可能となり、例えば、2ヘクタールの従来の水泳プールの場合、化学薬品の使用と電気の使用を考慮した年間の運転コストは190万米ドルにも上るが、本発明による方法では、年間運転コストは140,000米ドル未満となり(化学薬品及びエネルギの費用も考慮する)、年間の保守コストは最大90%削減される。
【0101】
それに加えて、本発明の方法により、現行技術では処理できない微生物の汚染のリスクも最小化することができる。前述のように、現行の水泳プールテクノロジ又は人工水体のための部分的処理技術は、高い衛生的効果を効率的に提供できず、レクリエーション水病又は、死に至ることさえあるその他の感染症の原因となる微生物を不活性化及び/又は排除できなかった。それに対して、本発明による方法は、資本及び運転コストが低いことに加えて、レクリエーション水体からの微生物の不活性化及び/又は除去を革新的に行い、低コストで水衛生の新たな概念を生み出すことができる。
【0102】
本発明の方法を使用することによって最適な沈降及び衛生状態が実現され、堆積ゾーン1は、そのような堆積ゾーン1の水量内に含まれる微生物を効率的に沈降させるように設計され、放散ゾーン2は、高い水浴客密度のための安全で衛生的な状態を低コストで保つことができる。
【0103】
図7を参照すると、本発明の原理による実施形態における、700で示されるステップの概要が提供される。それに加えて、図7に示されるステップは、それらのステップが図示されている順序で行われる必要はない。
【0104】
まず、ステップ701で、堆積ゾーン1と放散ゾーン2は、同じ大規模水体3内で指定される。2つのゾーンは、物理的バリアにより分離されず、放散ゾーン2内に含まれる水の量と堆積ゾーン内に含まれる量との比は1:2~1:40である。消毒及び堆積の機能に加えて、堆積ゾーン1はまた、審美的目的も有し、主として二次的接触を目的とした水上スポーツの実践のために使用される。したがって、これは放散ゾーン2より低い水浴客密度を有するように設計され、1日平均で大規模水体3内の全水浴客数の20%以下が堆積ゾーン1内にいる。放散ゾーン2は、遊泳や水浴等、直接接触の目的に使用される。これは、高い水浴客密度を有するように設計され、1日平均で大規模水体3内の全水浴客数の少なくとも80%が放散ゾーン2内にいて、最大密度は2mあたり水浴客1名である。
【0105】
次に、ブロック702で、CTインデックスに基づく消毒方法が堆積ゾーン1の水量に適用される。CTインデックスは、堆積ゾーン1が消毒剤を添加して、堆積ゾーン1の水量全量において最小接触時間「T」中に消毒剤の特定の濃度「C」を実現することによって処理される。消毒方法は、消毒剤が堆積ゾーン1に含まれる水量に適用されて、72時間ごとに少なくとも42のCTインデックスを実現するように行われる。
【0106】
ブロック703で、十分な量の凝集剤組成物が堆積ゾーン1に適用される。凝集剤は、堆積ゾーン1内に存在する様々な微生物及び/又は汚染物質の沈降を助ける。堆積ゾーン1内の水流及び水循環は好ましくは、適正な堆積を可能にするように保持される。
【0107】
ブロック704で、十分な量の塩素を添加して、放散ゾーン2内に含まれる水量が少なくとも0.5mg/Lの遊離塩素レベルが保持されるようにすることによって、放散ゾーン2の水量中で永久残留塩素濃度が保たれる。
【0108】
ブロック705で、1つ又は複数の入口ノズルによって水が放散ゾーンに注入され、これは、風及び/又は水温差により生成される自然の流動と共に、放散ゾーン2内の水の量の堆積ゾーン1への水放散パターンを発生させる。放散ゾーン2は、最大30分の汚染削減インデックス(CRI)が可能となるように構成される。
【実施例
【0109】
実施例I
本発明の技術的効果を実証するために、以下の試験を行った。
【0110】
図3は、本発明による堆積ゾーン1と放散ゾーン2を有する水体3を示しており、放散ゾーン2はノズルシステムを含み、その残留塩素濃度は約0.5mg/Lである。図2は、破線で示される、物理的バリアではない仕切り手段4の推定位置を示しており、また、隣接する(ただし、完全に独立した)水泳プール(7)も示しており、これは従来の水泳プールテクノロジを有し、すなわち本発明による別々の放散ゾーン2と堆積ゾーン1を持たない。
【0111】
図4Aは、t=0で、30g/Lの天然赤4の色素と77g/LのNaClを含む赤く着色された溶液(5)7Lを、水体3の、主として遊泳、水浴、及び直接接触型レクリエーション目的に使用されるゾーンである放散ゾーン2内のあるスポットに直接添加して、前記ゾーンのCRIを特定し、例えば放散ゾーン2に持ち込まれた水性糞便汚染物又はその他の種類の汚染物の挙動を模倣したことを示している。図4Aはまた、同等の量の第二の赤色着色溶液(6)が隣接する水泳プール(7)の内部のスポットに添加されたことも示している。
【0112】
t=0で、標準的な動作パラメータに従って水泳プール(7)の標準的再循環システムを動作させながら、放散ゾーン2の水ノズルを作動させた。
【0113】
t=5分で(図4B)、赤色着色溶液が堆積ゾーン1へと急速に放散しているように見え、他方で水泳プール(7)では赤色着色溶液の存在は、t=0から減少したようには見えない。
【0114】
t=10分で及びt=16分で(それぞれ図4C及び4D)、放散ゾーン2内の赤色着色溶液(5)の目に見える存在はずっと減ったが、水泳プール(7)では依然としてかなりの量の赤色着色溶液(6)があった。
【0115】
t=20分及びt=25分で(それぞれ図4E及び4F)、水泳プール(7)内で赤色着色溶液(6)は依然として目に見えて存在し、それに対して放散ゾーン2では赤色着色溶液(6)は目視検出されなかった。図3Gは、t=60で、赤色着色溶液(6)が水泳プール(7)内で目に見えて存在することを示している。
【0116】
テストが終了したところで、この例の堆積ゾーン2のCRIは20分であり、水泳プール(7)のCRIは100分であったことが特定され、どちらのインデックスも赤色着色溶液の存在が目視検出されなくなるまでの分単位での時間を表している。
【0117】
以上のことから、汚染イベント(例えば、水性糞便汚染又はその他の種類の汚染)が本発明による水体中で発生した場合、放散ゾーン2は、風及び/又は水体中の温度差により生じる水の流動の自然の影響と共に、有害な微生物を含んでいるかもしれない前記汚染を堆積ゾーン1へと、その後のその不活性化、凝集、及び除去のために短時間で安全且つ効率的に放散させることができ、それによって水浴客が有害な微生物により感染するリスクが最小化されると推察できる。さらに、放散ゾーン2は、少なくとも0.5mg/Lの残留遊離塩素濃度を有するように構成されているため、前記放散ゾーン2は、そのようなゾーンの衛生品質を損なうことなく、大勢の水浴客の利用に耐えることができ、これは、汚染が発生した場合に、微生物は従来の水泳プールと比較してより効率的且つ安全に放散でき、それと同時に直接接触型レクリエーション目的に使用されるゾーンである放散ゾーン2の安全で衛生的な状態が保持されることによる。同じ状況で、従来の水泳プール(7)で有害な微生物を含む糞便汚染又はその痕跡が発生した場合、汚染物は水量中に長時間とどまり、水浴客が前記有害な微生物により感染するリスクが高まる。
【0118】
したがって、本発明による複合的な消毒方法、効率的な拡散パターン、及び水体の堆積容量は、水泳プールテクノロジと比較して、水を利用するレクリエーション目的のための、これまでにない、より安全な環境を創出し、それゆえ、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物、その他のような微生物に起因する感染症のリスクを最小化するレクリエーション用水体の創出が可能となり、このようにして、現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決することが示された。
【0119】
実施例II
米国フロリダ州に建設された総面積約7エーカ(2.8ヘクタール)の人工湖は、給水プロセス中に、この湖へと吹き飛ばされたその付近の有機物を含むサンドパイルの存在によって重度に汚染された。実験室でのテストを行ったところ、水中に有害微生物、特にクリストスポリジウム(Crystosporidium)オーシストが同定され、これは汚染発生から数週間後も存在したままであった。
【0120】
本発明による方法がこの人工湖に適用された。
【0121】
この人工湖は、2つの異なるゾーン、すなわち、直接接触型レクリエーション目的用であり、放散ゾーン2と呼ばれる1つのゾーンと、二次的接触型レクリエーション目的用、すなわち、例えば審美的目的のため、及びウォータスポーツを実践するための、堆積ゾーン1と呼ばれる第二のゾーンを含むように指定された。放散ゾーンと堆積ゾーンとの間の量の比は約1:6であり、堆積ゾーン1はその最も深い地点で深さ2メートルであり、それによって微生物の効率的な沈降が可能となるように設計された。
【0122】
以下のパラメータがこの人工湖に適用された:
-放散ゾーン2に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、遊離塩素が少なくとも0.5mg/Lの永久残留塩素濃度を実現した。
-30m/時間の平均水流を有する、放散ゾーンの周辺12に配置されたノズルを作動させた。
-堆積ゾーン1に塩素を添加して、堆積ゾーン1内で72時間ごとに42のCTインデックスを実現することにより、CTに基づく消毒処理を適用した。
-カチオンポリマ凝集剤を含む組成物を堆積ゾーン1に添加して、7日間以内に水量1mあたり1.5gが組み込まれるようにした。
-堆積ゾーン1内で水流を最小限に保持し、それによって堆積プロセスの攪乱がなるべくないようにした。
【0123】
本発明の方法を適用した後、実験室でのテストを実施したところ、クリストスポリジウム(Crystosporidium)オーシストは同定されず、下表2にまとめるように、この結果はその後の2回の試験でも確認された。
【0124】
【表3】
【0125】
それに加えて、下表3に示すように、全ての水サンプルが、水の要求事項に関するチリ水質基準NCh 409/1 2005(飲料水)等のより厳しい物力学的及び微生物学的基準に適合した。
【0126】
【表4】
【0127】
この実施例では、本発明による方法が直接接触型レクリエーション目的の、2つの異なる処理ゾーンを有する大規模水体を提供するための低コストで衛生効率の高い方法を提供することが確認されており、これによってバクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような微生物の生育リスクを最小化でき、それゆえ、現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決する。
【0128】
本発明による複合的な消毒方法、効率的な拡散パターン、及び水体の堆積容量により、以前は述べられても適用されてもいなかった、従来の水泳プールテクノロジ及び一部が処理される大規模水体のそれらの不効率性を解決する、水によるレクリエーション目的のための前例のない安全環境を創出し、それゆえ、バクテリア、原虫、アメーバ、微細藻類、及び寄生生物その他のような微生物に起因する感染症のリスクを最小化するレクリエーション用水体の創出が可能となり、そのようにして現行方法及びシステムの不効率性を革新的に低コストで解決する。
【0129】
本発明の特定の実施形態を説明したが、その他の実施形態も存在するかもしれない。さらに、開示されたいずれかの方法ステップ又はステージも、ステップの順番を入れ替える、及び/又はステップを挿入若しくは削除することを含め、本発明から逸脱せずにいかなる方法でも変更されてよい。本明細書には、詳細な説明とそれに関連する図面が含まれているが、発明の範囲は以下の特許請求の範囲により示されている。さらに、本明細書は構造的特徴及び/又は方法論的行為に特定の文言で書かれているが、特許請求の範囲は上述の特徴や行為に限定されない。そうではなく、上述の具体的な特徴と行為は、本発明の例示的な態様と実施形態として開示されている。本明細書の説明を読んだ後、当業者であれば他の様々な態様、実施形態、改良、及び等価物を本発明の主旨又は特許請求される主題の範囲から逸脱せずに着想するかもしれない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7