(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】関節の抗炎症剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20240527BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240527BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20240527BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240527BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K31/352
A23L33/105 ZNA
A61K36/73
A61P19/02
A61P29/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022025864
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2021138198の分割
【原出願日】2021-08-26
【審査請求日】2022-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595135774
【氏名又は名称】ダイドーグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 清佑
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 江里子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 章人
(72)【発明者】
【氏名】野村 義宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 麻里奈
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】天野 宏樹
【審判官】磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】Applied Biological Chemistry,2020年,63:51
【文献】Functional Food Research,2017年,vol.13,p.50-56
【文献】基礎老化研究,2018年,vol.42,No.3,p.49-52
【文献】日本薬学会第133年会要旨集,2013年,133rd,p.225 29amE-025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580(JDREAMIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口剤であり、関節の炎症を抑制するために用いられるまたは関節の疼痛を抑制するために用いられる、
リンゴ由来ポリフェノールを含むIL-10発現促進剤。
【請求項2】
前記関節は膝関節である、請求項
1に記載の剤。
【請求項3】
前記関節は関節滑膜である、請求項1
または2に記載の剤。
【請求項4】
前記リンゴ由来ポリフェノールはプロシアニジン類を含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
前記リンゴ由来ポリフェノールは未完熟リンゴ由来である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項6】
保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の剤。
【請求項7】
関節痛を有する人に用いられる、請求項1~
6のいずれか1項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節の抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、主に外界からの刺激によって誘起される生体防御反応である。炎症が起こると、発赤、腫脹、熱感、疼痛といった症状が生じる。炎症は生体組織に対してもダメージを与えることから、過剰な炎症反応や慢性的な炎症反応はかえって有害となる。
【0003】
非特許文献1には、リンゴ由来プロシアニジンを投与されたマウスで軟骨損傷が抑制されたことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Masuda et al., "Apple procyanidins promote mitochondrial biogenesis and proteoglycan biosynthesis in chondrocytes", Sci. Rep. 2018 May 8;8(1):7229. doi:10.1038/s41598-018-25348-1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たな関節の抗炎症剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する項目に関する。
[1]果実由来ポリフェノールを含む関節の抗炎症剤。
[2]リンゴ由来ポリフェノールを含む関節滑膜の抗炎症剤。
[3]リンゴ由来ポリフェノールを含む関節痛抑制剤であって、抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤。
[4]前記関節は膝関節である、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]IL-10発現促進作用、TNF-α発現抑制作用またはMMP-13発現抑制作用によって関節の炎症を抑制する、[1]~[4]のいずれかに記載の剤。
[6]前記リンゴ由来ポリフェノールはプロシアニジン類を含む、[2]または[3]に記載の剤。
[7]前記リンゴ由来ポリフェノールは未完熟リンゴ由来である、[2]または[3]に記載の剤。
[8]経口剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の剤。
[9]保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、[8]に記載の剤。
[10]関節痛を有する人に用いられる、[1]~[9]のいずれかに記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新たな関節の抗炎症剤および関節痛抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実験1において、IL-10の遺伝子発現量を示すグラフである。
【
図2】実験2において、TNF-αの遺伝子発現量を示すグラフである。
【
図3】実験2において、MMP-13の遺伝子発現量を示すグラフである。
【
図4】実験2において、SOD1の遺伝子発現量を示すグラフである。
【
図5】実験2において、被験物質の抗酸化作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る剤の一態様は、果実由来ポリフェノールを含む関節の抗炎症剤である。関節の抗炎症剤は全身または局所的な関節の炎症を抑制することができる。炎症の抑制により関節の発赤、腫脹、熱感、疼痛等が予防、抑制または緩和され得る。本発明に係る剤の一態様は、果実由来ポリフェノールを含む関節痛抑制剤であって、抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤である。
【0010】
本明細書において、関節には、膝関節、肩関節、首関節、股関節、脊椎関節、顎関節、指関節、肘関節、手関節、足関節等の各種関節を含む。関節の炎症には変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨損傷、膝関節骨壊死症、大腿骨壊死症、肩関節炎、細菌性関節炎、ウイルス性関節炎、神経病性関節症等を含む。
【0011】
本発明に係る剤の一態様は、果実由来ポリフェノールを含む関節滑膜の抗炎症剤である。滑膜は関節軟骨周辺に付着し、滑液を分泌し、関節の安定性に寄与する。果実由来ポリフェノールは、特に滑膜の炎症を抑制することにより、関節の炎症を抑制することができる。
【0012】
関節の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、インターロイキン10(IL-10)発現促進作用、腫瘍壊死因子α(TNF-α)発現抑制作用またはマトリックスメタプロテアーゼ13(MMP-13)発現抑制作用によって関節、好ましくは滑膜の炎症を抑制する。IL-10は抗炎症性サイトカイン、TNF-αは炎症性サイトカイン、MMP-13はコラーゲン分解酵素である。本発明の一態様は、果実由来ポリフェノールを含むIL-10発現促進剤、TNF-α発現抑制剤またはMMP-13発現抑制剤ということもできる。果実由来ポリフェノールは、抗酸化作用を有し、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現を抑制できる。
【0013】
関節の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、関節の炎症の予防、治療または悪化の抑制に用いることができる。関節の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、関節痛を有しない人に用いてもよいし、関節痛を有する人に用いてもよい。
【0014】
果実由来ポリフェノールの原料となる果実としては、ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等のベリー類、イチゴ、クロフサスグリ、チェリー、ブドウ、ネクタリン、プラム、アプリコット、キーウィ、アボカド、マンゴー、デーツ(ナツメヤシ)、バナナ等の果実、およびリンゴ、ナシ、モモ等のバラ科に属する果実等である。果実由来ポリフェノールは、好ましくはリンゴ由来ポリフェノールである。
【0015】
リンゴ由来ポリフェノールは、リンゴの抽出物であってよく、果皮および/または果肉の抽出物であってよい。リンゴ由来ポリフェノールは、未完熟リンゴ由来であってよい。リンゴ由来ポリフェノールは、例えば次の方法で精製して得ることもできる。リンゴ未熟果を洗浄後、破砕、搾汁して果汁を得る。果汁からペクチンなどの不溶性成分を酵素分解および/または濾過することにより除去する。この果汁をカラムに通液し、ポリフェノール成分をカラムに保持させ、糖類、有機酸類などを水洗浄によって除去する。アルコール水溶液を用いてカラムよりポリフェノール成分を溶出し、ポリフェノール画分が得られる。ポリフェノール画分は減圧濃縮後、噴霧乾燥してもよい。
【0016】
リンゴ由来ポリフェノールは、プロシアニジン類を含むことが好ましい。プロシアニジン類は例えばリンゴ由来ポリフェノールの10質量%以上または15質量%以上である。リンゴ由来ポリフェノールは、プロシアニジン類以外にカテキン類、フェノールカルボン酸類、フロレチン配糖体類等を含んでよい。
【0017】
リンゴ由来ポリフェノールは市販品が容易に入手可能である。市販品としては、フロンティアフーズ株式会社の商品名「リンゴポリフェノール粉末」、BGG Japan株式会社の商品名「ApplePhenon(登録商標)アップルフェノン SH」、「ApplePhenon(登録商標)アップルプロシアニジン」、「ApplePhenon(登録商標)アップルフェノンC-100」、株式会社アクセスワンの商品名「リンゴポリフェノール」、ヴィディヤジャパン株式会社「アップルエキス末」などが挙げられる。
【0018】
本発明に係る剤は、経口剤または非経口剤であってよい。非経口剤は、例えば外用または注射によって投与することができる。投与される対象は特に限定されないが、ヒトのほか、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット等の哺乳類、ニワトリ等の鳥類が挙げられる。投与される対象は家畜、家禽、愛玩動物、実験動物等であってもよい。
【0019】
経口剤は、食品、医薬品または医薬部外品であってよい。食品には飲料および飼料等が含まれる。食品は、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、健康補助食品、サプリメントが含まれる。医薬品としては、治療薬または動物薬、予防薬等が含まれる。
【0020】
経口剤中の果実由来ポリフェノールの配合量は、0.01質量%以上50質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1質量%以上または3質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%または10質量%以下であってもよい。果実由来ポリフェノールの配合量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0021】
本発明に係る剤が経口剤である場合、摂取対象者の性別、年齢、体重の他、症状の軽重等により広範に調整することができるが、一般に果実由来ポリフェノールの1日の1人あたりの摂取量は1mg以上2000mg以下であってよく、100mg以上、200mg以上または500mg以上であってよく、1500mg以下であってもよい。経口剤は、1日1回または数回に分けて摂取すればよい。
【0022】
食品としては、例えば、チーズ、調製粉乳、アイスクリーム、ヨーグルト等の乳製品、氷菓、チョコレート、タブレット(錠菓)、グミ、クッキー、ビスケット、キャンディー、和菓子、米菓、ケーキ、パイ、プリン等の菓子類、パン、麺類等の小麦粉製品、雑炊、米飯等の米製品、しょうゆ、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料等を挙げることができる。食品は、水産加工品、農産加工品、畜産加工品であってもよい。
【0023】
飲料としては、茶、コーヒー、牛乳、乳飲料、果汁飲料、ジュース、乳酸飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンク等を挙げることができる。
【0024】
食品は、液状、ペースト状、粉末状、フレーク状、顆粒状等の食品添加剤であってもよい。食品添加剤には飲料用の添加剤も含まれる。食品添加剤は、一般的な食品添加剤の製造方法に準じて製造することができる。果実由来ポリフェノールを含む経口剤は、他の食品に添加されてもよい。
【0025】
食品は、その種類に応じて経口に適した添加成分を含むことができる。添加剤としては、甘味料が挙げられる。甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マルチトール等が挙げられる。
【0026】
その他の添加剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等が挙げられる。
【0027】
経口剤の剤形は特に限定されず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、チュアブル錠、丸剤、トローチ剤、舌下錠、軟膏、クリーム剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤、シロップ、液剤等であってもよい。
【0028】
経口剤の調製は、無毒性の賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、矯味剤、緩衝剤、pH調整剤、粘稠化剤、光沢剤等の添加剤を使用して、公知の方法により実施することができる。これらの製剤に含まれる無毒性の添加剤としては、例えば、でんぷん、ゼラチン、ブドウ糖、デキストリン、ヒアルロン酸、乳糖、果糖、マルトース、炭酸マグネシウム、二酸化珪素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ペトロラタム、グリセリン、エタノール、シロップ、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸、ポリビニルピロリドン、水、シェラック、カルナウバロウ等が挙げられる。製剤中には、本発明に係る剤の有用性を増強するために、他の成分、例えば骨砕補抽出物、ステロイド系もしくは非ステロイド系抗炎症化合物等を含有させてもよい。本発明の一態様は、上記剤の製造における果実由来ポリフェノールの使用である。
【0029】
非経口剤は、医薬品、医薬部外品または化粧品であってよい。外用剤は、例えば皮膚に直接塗布または貼付することができ、液剤、クリーム剤、乳液剤、ローション剤、軟膏、ゲル剤、エアゾール剤、パック、マイクロニードルパッチ、湿布剤等であってよい。注射剤は、例えば関節、静脈、皮下または筋肉へ投与することができる。
【0030】
非経口剤中の各成分の含有量は、経口剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。非経口剤剤における果実ポリフェノールの配合量は、例えば0.001質量%以上20質量%以下であってよく、0.01質量%以上または0.05質量%以上であってよく、10質量%以下または5質量%以下であってよい。非経口剤は、1日1回または数回に分けて投与されてよい。
【0031】
非経口剤は、果実由来ポリフェノールと、医薬品、医薬部外品または化粧品に通常使用される基剤または担体と、を常法に従い混合して製剤化することができる。基剤または担体としては、ヤシ油、オリーブ油、コメヌカ油、シアバター等の油脂;ワセリン、流動パラフィン等の炭化水素類;ホホバ油、ミウロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等のロウ類;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール、コレステロール等の高級アルコール;ジメチコン、環状シリコーン、変性シリコーン等のシリコーン類;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のエステル類;デキストリン、マルトデキストリン等の多糖類;カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;水が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、またそれらの使用量は当業者に公知の範囲から適宜選択される。製剤中には、本発明に係る剤の有用性を増強するために、他の成分、例えば骨砕補抽出物、ステロイド系もしくは非ステロイド系抗炎症化合物等を含有させてもよい。
【0032】
非経口剤には、本発明の効果を損なわない範囲で公知の添加剤、例えば界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤、キレート剤、pH調整剤、保存剤、増粘剤、刺激低減剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血管拡張剤等を添加することができる。これらの添加剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
界面活性剤としては、例えばソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミン等のアミン類が挙げられる。
【0034】
安定化剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩酸システイン、リン酸塩、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム;グリシン、各種アミノ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩が挙げられる。
【0036】
着色剤としては、例えば無機顔料、天然色素が挙げられる。
【0037】
分散剤としては、例えばピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸架橋コポリマー、有機酸が挙げられる。
【0038】
キレート剤としては、例えばEDTA・2ナトリウム塩、クエン酸が挙げられる。
【0039】
pH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸;乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等の有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0040】
保存剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン類、フェノキシエタノールが挙げられる。
【0041】
増粘剤としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系増粘剤、白糖、グアーガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーが挙げられる。
【0042】
刺激低減剤としては、例えば甘草エキス、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、甘草エキス、アルギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミルおよびその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物が挙げられる。
【0044】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、トレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン)、エラスチン、コラーゲン、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物が挙げられる。
【0045】
血管拡張剤としては、例えば塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、ミノキシジル、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキが挙げられる。
【実施例】
【0046】
〔実験1:動物試験(ラット外傷性関節症モデルにおける滑膜の遺伝子発現解析)〕
実験には、10週齢の雄のWisterラット(Crij:WI)を用いた。Sham手術(偽手術、皮膚および筋層の切開のみ実施)によるOA非発症モデルと、内側側副靭帯および内側半月板切除手術(MTT手術)によるOA発症モデルとを作製した。手術は全個体で右膝のみに実施し、左膝は無処置膝とした。手術から2日後に動物飼育室に導入し、1週間の予備飼育の後、各試験群の平均体重に偏りがないように割付を行った。ラットの飼育条件は12時間明暗周期、室温24±2℃とした。飼料は、一般飼育用固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業社製)を用いて、常時給餌・給水条件で飼育した。
【0047】
試験条件を表1に示す。果実由来ポリフェノールとしては、リンゴ未完熟果実由来ポリフェノール抽出物「アップルフェノン(登録商標)」(AP)(BGG JAPAN社製)を投与した。N-アセチルシステイン(NAC)は陽性対照として投与した。Sham群およびControl群には滅菌水を投与した。被験物質は胃ゾンデにより試験期間中1日1回毎日経口投与した。
【0048】
【0049】
8週間の投与終了後に解剖を行った。セボフレン(登録商標)吸入麻酔液(丸石製薬株式会社)による麻酔下で下大静脈採血を行ってラットを安楽死させ、右膝の膝蓋骨下の滑膜組織および右後肢膝関節を採取した。右後肢膝関節の関節軟骨周辺部の組織切片を作製し、変形性ひざ関節症が発症していることを確認した。
【0050】
滑膜の遺伝子発現解析のために、右膝関節より滑膜組織の採取を行った。単離した滑膜組織はPBSで洗浄後、RNAlater(Invitrogen社製)に4℃で一晩浸漬した後、TRIzol(登録商標)reagent(Invitrogen社製)で処理し、totalRNAを精製した。これを鋳型として、PrimeScript RT reagent Kit(Perfect Real Time、タカラバイオ株式会社製)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型として、TB Green Premix Ex Taq II(タカラバイオ株式会社製)およびThermal Cycler Dice Real Time System TP800(タカラバイオ株式会社製)を用いて、定量的リアルタイムPCRを行った。用いたプライマーの塩基配列を表2および配列番号1~4に示す。
【0051】
【0052】
反応終了後、遺伝子発現量を専用のソフトウェア(Thermal Cycler Dice Real Time System TP800 Software Ver.1.02A)で解析した。それぞれのサンプルの遺伝子発現量は共に増幅させたβ-Actinで標準化し、結果はそれぞれ平均値±標準誤差(S.E.)で示した。
【0053】
滑膜におけるIL-10の遺伝子発現解析結果を
図1に示す。Control群ではSham群に比べてIL-10の遺伝子発現量が比較的低値となった。AP投与群ではControl群に比べてIL-10の遺伝子発現量が顕著に増加した。IL-10は抗炎症性サイトカインのひとつとして知られている。果実由来ポリフェノールはIL-10の遺伝子発現を強く促進し、関節の炎症、特に滑膜の炎症を軽減する可能性が示唆された。
【0054】
〔実験2:動物試験(ラット外傷性関節症モデルにおける滑膜の遺伝子発現解析)〕
実験2では、APの投与量が異なること以外は実験1と同じ方法でラットに被験物質を投与した。試験条件を表3に示す。実験1と同じ方法で膝関節の滑膜組織からcDNAを得て、定量的リアルタイムPCRを行った。用いたプライマーの塩基配列は表4および配列番号3~10に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
滑膜におけるTNF-αの遺伝子発現解析結果を
図2に示す。Control群ではSham群に比べてTNF-αの遺伝子発現量が有意に高値となった。一方で、AP投与群ではControl群に比べてTNF-αの遺伝子発現量が有意に低値となり、Sham群と同等であった。TNF-αは代表的な炎症性サイトカインのひとつである。果実由来ポリフェノールはTNF-αの遺伝子発現を抑制し、関節の炎症、特に滑膜の炎症を軽減する可能性が示唆された。
【0058】
滑膜におけるMMP-13の遺伝子発現解析結果を
図3に示す。Control群ではSham群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が有意に高値となった。一方で、AP投与群ではControl群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が低値となり、陽性対照であるNAC投与群とほぼ同等であった。MMP-13は軟骨の主成分のひとつであるコラーゲンを分解する働きがある。果実由来ポリフェノール抽出物はMMP-13の遺伝子発現を抑制し、軟骨分解の抑制に作用する可能性が示唆された。
【0059】
滑膜におけるSOD1の遺伝子発現解析結果を
図4に示す。Control群ではSham群に比べてSOD1の遺伝子発現量が有意に高値となった。一方で、AP投与群ではControl群やNAC投与群に比べてSOD1の遺伝子発現量が有意に低値となり、Sham群と同等であった。炎症により亢進された滑膜の酸化ストレスが、APが有する抗酸化作用によって軽減されて、SOD1の遺伝子発現量が低下したと推測される。
【0060】
NACおよびAPの抗酸化作用(ORAC値)をCao G et al., Free Radical Biology and Medicine, vol. 14, Issue 3, 303-311, March 1993に記載の方法に基づいて測定した。NACおよびAPの抗酸化作用は標準物質として用いたビタミンC(L-アスコルビン酸)よりも高いこと、ならびにNACおよびAPの抗酸化作用の程度と
図4で示されたSOD1の抑制作用の程度との間に相関あることが示された(
図5)。
【配列表】