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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ロボット支援研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20240527BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20240527BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B27/00 A
B25J19/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022198655
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2019556981の分割
【原出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2023021282
(43)【公開日】2023-02-10
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】102017108426.6
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515315521
【氏名又は名称】フェルロボティクス コンプライアント ロボット テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ferrobotics Compliant Robot Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナデレア ロナルド
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-159366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0277373(US,A1)
【文献】特開平08-294881(JP,A)
【文献】特開平09-047382(JP,A)
【文献】特開2011-041992(JP,A)
【文献】特開2003-145404(JP,A)
【文献】特開2019-130645(JP,A)
【文献】米国特許第03824745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/05 - 55/10
B24B 27/00
B24B 23/00 - 23/08
B25J 1/00 - 21/02
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット支援研削装置であって、
マニピュレータと、
研削機械と、
前記研削機械を前記マニピュレータに結合するリニアアクチュエータと、
前記研削機械により生成された研削ダストを吸い込むための吸引装置と、
前記吸引装置と、前記研削機械のハウジングの内部とを連絡させるホースと、
を有し、
前記ホースの一端は、前記吸引装置に接続され、前記ホースの他端は、前記研削機械の前記ハウジングの出口に接続されており、
前記ホースは、前記研削機械の前記ハウジング及び前記リニアアクチュエータの周りにほぼ螺旋状に配置され、前記ホースの前記一端が、前記マニピュレータに機械的に取り付けられている
ロボット支援研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット支援研削装置であって、
前記研削機械は、
前記ハウジングの内部に配置されたモータと、
前記ハウジングの前記内部で前記モータのモータシャフトに配置されたホイール状ファンと、
前記モータシャフトに結合し、研削板を取り付けるための支持板であって、前記ハウジングの前記内部に研削ダストを吸い込むための開口部を有する支持板と、
前記ハウジングの壁に配置され、前記ハウジングの前記内部から空気を逃がし、前記ハウジングの前記内部へ空気が吸入されることを阻止するように構成された逆止弁と、
を有し、
前記出口は、前記ハウジングの壁に配置され、前記ハウジングの前記内部から研削ダストを外へ吸引するためのものである
ロボット支援研削装置。
【請求項3】
前記支持板の前記開口部から前記出口への空気流が前記モータを冷却するとともに前記研削ダストを搬出するように前記モータが前記ハウジングの前記内部に配置されている請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項4】
前記研削機械は、前記支持板が軌道運動をすることができるように前記モータシャフトを前記支持板に接続する偏心ベアリングをさらに有し、前記支持板の前記開口部から前記出口への空気流が前記モータを冷却するとともに前記研削ダストを搬出する請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項5】
吸引がない場合には、前記支持板の前記開口部を介して前記ホイール状ファンにより吸入された空気が前記逆止弁を介して流出する請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項6】
前記ホイール状ファンが、前記ハウジングの前記内部の停滞圧力を引き起こす場合には、空気は、前記ハウジングの前記内部から前記逆止弁を介して周囲に流出する請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項7】
前記モータに電力を供給するためのケーブルをさらに有し、前記ケーブルは、前記ハウジングの周りにほぼ螺旋状に案内される請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項8】
前記リニアアクチュエータの作用方向は、前記モータの回転軸に実質的に平行である請求項2に記載のロボット支援研削装置。
【請求項9】
前記研削機械を動作させるためのケーブルを有し、
前記ケーブルは、前記研削機械の前記ハウジングと前記リニアアクチュエータの長軸の周りに、ほぼ螺旋状のカーブに沿って配置され、
前記ケーブルは、前記マニピュレータに機械的に接続されている
請求項1に記載のロボット支援研削装置。
【請求項10】
前記ケーブルは、ケーブルホース内に、他のケーブルとともに配置されている請求項9に記載のロボット支援研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援研削のための研削装置、特に、マニピュレータに搭載するためのコンパクトで軽量の研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット研削装置では、研削工具(電動式の回転砥石板を有する研削装置など)は、産業用ロボットなどのマニピュレータによってガイドされる。この場合、研削工具はマニピュレータのいわゆるTCP(ツールセンターポイント)とさまざまな方法で結合され、マニピュレータは、工具の位置と方向を実質的に任意に設定できる。産業用ロボットは通常、位置制御されており、所望の軌道に沿ってTCPを正確に移動できる。ロボット支援研削において良好な結果を達成するためには、多くの使用において加工力(研削力)の制御が必要であり、これは、従来の産業用ロボットでは十分な精度で達成することがしばしば困難となっている。産業用ロボットの大きくて重いアームセグメントは慣性が大きいので、コントローラ(閉ループコントローラ)がプロセス力の変動に十分迅速に反応できない。この問題を解決するために、マニピュレータのTCPと研削工具との間に産業用ロボットと比較して小さなリニアアクチュエータが配置され得え、このリニアアクチュエータは、マニュピレータのTCPに研削工具とともに結合される。リニアアクチュエータは、研削中、プロセス力(工具とワークピース間の接触力)のみを調整し、マニピュレータは、事前定義可能な軌道に沿って位置制御され、研削工具をリニアアクチュエータとともに移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE 10 2005 036195 A1
【文献】US 3 824 745 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の軌道研削装置または偏心研削装置は、手動操作用に設計されているため、比較的性能が劣っている。ロボットはより高速に動作し、そのため、より多くの力で動作することができ、これにより多くの電力が必要である。ただし、小さくコンパクトな設計では、軌道研削装置または偏心研削装置で熱の問題が発生する可能性がある。さらに、粉砕中に加工力を変化させる外乱力を引き起こす可能性がある、ホースとケーブルの曲げ力は、コントローラによって除去することはできない。
【0005】
本発明者らは、ロボット支援研削に適し、研削中の加工力の比較的正確な制御を可能にするコンパクトな研削機械を開発することを彼らの使命とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1に記載の研削機械、請求項7に記載の方法、および請求項10に記載の装置によって達成される。様々な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項の主題である。
【0007】
研削機械であって、ハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されたモータと、前記ハウジングの内部で前記モータのモータシャフトの配置されたファンと、研削板を取り付けるための支持板であって、前記モータシャフトに結合し、前記ハウジングの内部に研削ダストを吸い込むための開口部を有する支持板と、前記ハウジングの壁に配置され、前記ハウジングの内部から研削ダストを吸引するための出口であって、前記研削機械の前記ハウジングの内部で負圧を発生可能な吸引装置に接続可能である出口と、前記ハウジングの前記壁に配置され、前記ハウジングの内部から空気を逃がすことが可能で、前記ハウジングの内部への空気の流入を阻止する逆止弁と、を有する研削機械が記載される。
【0008】
ロボット支援研削装置であって、マニピュレータと、研削機械と、前記研削機械を前記マニピュレータのTCPと結合するリニアアクチュエータと、前記研削機械のハウジングの出口に接続された吸引装置と、を有するロボット支援研削装置が記載される。
【0009】
研削板を取り付けるための回転可能な支持板を有する研削機械を冷却する方法であって、前記研削機械のハウジングの壁に設けられた空気出口を介して前記ハウジングの内部に接続されている吸引装置によって前記ハウジングの内部に負圧を生成するステップを有し、前記負圧により前記支持板の開口部を通る空気流が生成され、前記空気流が研削ダストを前記ハウジングの内部に搬送し、前記研削ダストが前記壁の前記空気出口を介して吸引され、前記空気流により前記ハウジングの内部に配置されたモータが冷却され、前記方法は、前記吸引装置が非アクティブな場合には、前記支持板の前記開口部を通過し、前記モータを冷却するための更なる空気流をファンにより生成するステップを有し、このステップにより前記ハウジングの内部に停滞圧力が生成されて前記壁に配置された逆止弁が開き、前記更なる空気流が流出する方法が記載される。
【発明の効果】
【0010】
コンパクトな研削機械で、研削中の加工力の比較的正確な制御を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロボット支援研削装置の実施形態を概略的に示す図である。
図2】空冷と吸引を組み合わせた軌道研削盤を概略的に示す図である。
図3】吸引装置が作動していない状況での図2の例を示す図である。
図4図2の開口部を備えた回転支持体(支持板)を下から見た図である。
図5A】ロボット支援研削装置上のケーブルの案内の例を示す図である。
図5B】ロボット支援研削装置上のケーブルの案内の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、図に示される例を参照してより詳細に説明される。図は必ずしも縮尺通りではなく、本発明は提示された態様に限定されない。むしろ、本発明の根底にある原理を表すことに重点が置かれている。
【0013】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明する前に、ロボット支持研削装置の例について最初に説明する。これは、例えば産業用ロボットであるマニピュレータ1と、回転研削工具(例えば軌道研削機)を備えた研削機械10を備え、回転研削工具は、リニアアクチュエータ20を介してマニピュレータ1のいわゆるツール・センター・ポイント(TCP)に連結されている。6自由度の産業用ロボットの場合、マニピュレータは、それぞれジョイント3a、3b、3cで接続された4つのセグメント2a、2b、2c、2dで構成される。通常、第1のセグメントは基礎41にしっかりと接続されている(ただし、必ずしもそうである必要はない)。ジョイント3cは、セグメント2cとセグメント2dとを接続する。ジョイント3cは2軸とすることができ、水平回転軸(仰角)および垂直回転軸(方位角)の周りでセグメント2cの回転を可能にする。ジョイント3bは、セグメント2bとセグメント2cとを接続し、セグメント2cの位置に対するセグメント2bの旋回運動を可能にする。ジョイント3aは、セグメント2aとセグメント2bとを接続する。ジョイント3aは2軸とすることができ、したがって(ジョイント3cと同様に)2つの方向への旋回運動を可能にする。TCPはセグメント2aに対して固定された相対位置を持ち、セグメント2aは、通常は、回転ジョイント(図示せず)を含み、これにより、セグメント2aの長軸A(図1に点線で示されている研削工具の回転軸に対応)を中心とした回転運動が可能になる。ジョイントの各軸には、それぞれのジョイント軸を中心に回転運動を引き起こすアクチュエータが対応付けられている。ジョイント内のアクチュエータは、ロボットプログラムに従ってロボットコントローラ4によって制御される。
【0014】
マニピュレータ1は通常、位置制御されており、ロボットコントローラはTCPの姿勢(位置と方向)を設定し、TCPを事前定義された軌道に沿って移動できる。図1では、TCPが配置されているセグメント2aの縦軸はAで示されている。アクチュエータ20がエンドストップに当接したとき、TCPの姿勢により研削工具の姿勢が定義される。既に述べたように、アクチュエータ20は、研削加工中に、工具(研削機械10)とワークピース40との間の接触力(加工力)を所望の値に設定する働きをする。マニピュレータ1のセグメント2a-cの慣性が大きいため、従来のマニピュレータでは力ピーク(ワークピース40に研削工具を配置する場合など)の急速な補償が実際上は不可能であるため、マニピュレータ1による直接的な力制御は、通常は、研削での使用では、不正確となる。このため、ロボットコントローラはマニピュレータのTCPの姿勢を制御するように構成され、力の制御はもっぱらアクチュエータ20によって行われる。
【0015】
すでに述べたように、研削プロセス中、(線形)アクチュエータ20と力制御(たとえば、コントローラ4で実装できる)を用いて、研削工具(研削機械10)とワークピース40との間の接触力(加工力)FKは、研削工具とワークピース40との間の(縦軸Aの方向の)接触力が所定の目標値に対応するように調整される。この接触力は、線形アクチュエータ20がワークピース表面を押すアクチュエータ力に対する反作用である。ワークピース40と研削工具との間に接触がない場合、ワークピース40にエンドストップ(アクチュエータ20に一体化されたものとして示されていない)に対する接触力がないため、アクチュエータ20が移動する。マニピュレータ1の位置制御(コントローラ4でも実装可能)は、アクチュエータ20の力制御とは完全に独立して動作できます。アクチュエータ20は、研削機械10の位置決めに関与せず、研削加工中に所望の接触力を設定および維持し、研削工具とワークピースとの間の接触を検出することのみに関与する。
【0016】
アクチュエータは、空気圧アクチュエータ、例えば複動空気圧シリンダであり得る。ただし、ベローズシリンダーとエアマッスルなど他の空気圧アクチュエータも使用できる。代替として、電気ダイレクトドライブ(ギアレス)が考慮される。アクチュエータ20の作用方向が、マニピュレータのセグメント2aの長軸Aと必ずしも一致しなくとも良い。空気圧アクチュエータの場合、制御バルブ、コントローラ(コントローラ4に実装された)、および圧縮空気リザーバによる従来の方法で力制御を実現できる。ただし、具体的な実装は以下の説明では重要ではないため、詳細には説明しない。研削機械には、通常、研削ダストを吸引する吸引装置が設けられている。図1には、吸引装置のホースの接続部15が示されている。この吸引については、後で詳しく取り上げる。
【0017】
前述のように、接触力(加工力)を正確に制御するために研削機械の慣性が役割を果たす。ただし、研削機械の小型でコンパクトな設計により、結果として電力密度が大きくなり、比較的小さなスペースに大きな熱出力(およびそれに対応する高温)が発生する。軌道研削機械の場合、熱損失は一方で研削機械の電動機で発生し(例えば、オーム損失、鉄損、ベアリングの摩擦損失)、他方で軌道運動を可能にする偏心ベアリングで発生する。ここに示されている例では、特に冷却と吸引を組み合わせることでコンパクトにすることを可能にしている。すなわち、通常の動作において研削粉塵の吸引によって引き起こされる空気流が冷却のために同時に使用される。
【0018】
図2は、冷却と吸引を組み合わせた研削機械10の概略例を示している。研削機械10は、ロボット研削加工を可能にするために、図1に示されるようにマニピュレータ1に取り付けられ得る。図2は、研削機械10の長軸Aに沿った概略的な縦断面図である(セグメント2aの軸と一致してもよい。図1を参照)。研削機械10は、実質的に円筒形の基本形状を有し得る(しかし有する必要はない)ハウジング11を備える。ハウジング11内には、電動モータ12が配置されている。電動モータ12のモータシャフトの回転軸も研削機械10の長軸Aに対応する。この例では、モータシャフトは、偏心ベアリング16を介して、動作中に研削板が固定される回転サポート19(サポートプレート、バッキングパッド)に結合される。たとえば、研削板は、面ファスナー(Velcro(商標)、)を使用して回転サポートに固定できる。偏心ベアリング16は、長軸Aの周りを回転する偏心回転軸A´の周りを回転サポートが回転することを可能にする。モーターシャフト(回転軸A)と偏心シャフト(回転軸A´)間の軸方向のオフセットは、図2のeで示されている。回転サポート19の駆動部の基本構造はそれ自体知られており、したがって詳細には説明しない。
【0019】
前述のように、研削機械、特に軌道研削機械は、研削ダストを吸引するための吸引装置と組み合わせることができる。吸気装置は、掃除機と同様に、負圧を生成し、ホースによってハウジング11の内部に結合される。本例では、吸引装置のホースは空気出口15に接続され得る。研削作業中、空気は回転サポート19の開口部17から吸い込まれ、ダスト粒子は空気流によって開口部17を通ってハウジング11の内部に運ばれ、最終的に空気出口15から吸い出される。ハウジング11を通る空気の流れは、図2に破線の矢印で示されている。吸気装置によって生成されるハウジング内部の負圧により(内部圧力pi、は周囲の圧力paよりも小さい)、ハウジング11の内部を環境に接続する図2に示す逆止弁14は閉じられている。吸引が動作し、逆止弁14が閉じられている図示の状況では、モータシャフトに取り付けられた軸ファン13は、実際には冗長であり、吸気によって引き起こされる空気の流れを増幅するために設けられている。
【0020】
吸引によって引き起こされる気流は、同時にハウジングの内部を冷却し、モータ12と偏心ベアリング16から熱を除去する。コンパクト設計のため、この冷却は研削機械の過熱を防ぐために必要である。冷却しないと、150°を超える温度はモータまたは機械部品に損傷を与える可能性がある。ところで、何らかの理由で吸気装置が適切に機能しないリスクがある。例えば、作業者が吸気装置をオンにするのを忘れたり、エアホースが緩んだりする場合がある。従来の研削装置では、これは、問題とはならない。というのは、一方で、コンパクトな設計の構成が少ないので、廃熱は低くなり、他方で、吸引と冷却は2つの独立したサブシステムだからである。ただし、ここで説明する冷却と吸引を組み合わせた研削装置のコンパクトな構造は、吸引が機能しない場合に、研削装置の過熱を防ぐために他の対策を講じない場合には、作動する吸引に依存する。吸引が停止すると、特に空気出口15を通る流れ抵抗が高すぎる場合、軸ファン13は常に十分な対流を生成できない。これは例えば吸引装置がホースを介して空気出口15に接続されている場合には、吸引装置のスイッチが切れているか、故障している場合があり得る。
【0021】
図3は、排気システムが作動していない状況での図2の例を示している。この場合でも、研削機械10の過熱を防ぐために、モータ12のモータシャフト上には、(通常の動作での吸引には冗長な)軸ファン(ファン、プロペラ)が搭載されており、これにより、冷却のためにハウジングの内部を通る空気の流れを生成することができる。図3に示すように、軸ファンは同様に開口部17から空気を吸い込み、ハウジング11の内部を冷却するための空気流を生成する。上述したように、軸ファン12によって生成された空気流が空気出口15を介して外部に吹き飛ばすことが保証されない状況が生じる可能性がある。例えば、ホースが依然として出口15に取り付けられている場合、ホースの空気抵抗は非常に大きく、軸ファン12はハウジングの内部を十分に冷却するのに十分な体積流量を生成できない可能性がある。このため、図2および図3に示されている研削機械は、空気がハウジング11の内部から環境に逃げることを可能にする逆止弁14を備えている。吸引装置が停止しているとき、軸ファンは、周囲圧力paよりも大きい内部圧力(停滞圧力)を生成する。このため、逆止弁が開き、逆止弁14を介して比較的低い空気抵抗でハウジングから空気を逃がすことができ、その際、熱を放散する。したがって、個別の(吸引とは無関係の)冷却のない機械の場合、軸ファン13は逆止弁14と組み合わせて、排気がエンジンの冷却に十分な空気流を生成しない場合にエンジンの過熱を防ぐ安全機能を発揮する。軸ファンは、ハウジング11内の唯一のファンである場合がある(必ずしも唯一のファンである必要はない)。ここで、積極的に吸引する「通常の」動作では、モータを冷却する空気の流れは、吸引によって生成されることが再度強調される必要がある。
【0022】
図4は、下から見た開口部17を備えた回転サポート19(支持板)を示す。上述のように、回転サポート19の表面は、研削板を回転サポート19の表面に固定するために接着性(例えば、平面ファスナーにより)を有してもよい。図4には、モータシャフトの回転軸Aとサポート19の偏心回転軸A´が示されている。なお、本明細書で説明される実施形態は、軌道研削機械に限定されないことに留意されるべきである。図2および3を参照して説明した冷却と吸引の組み合わせは、他の回転研削工具(研削板)を有する研削機械であって、その研削工具が軌道運動ではなく純粋な回転運動を行う場合でも適用できる。
【0023】
最初に説明したように、研削機械のコンパクトで軽量な構造は、慣性力を減らし、接触力の制御を改善するのに役立つ。接触力の調節に役割を果たす可能性のある別の側面は、ケーブルとホースの曲げによって引き起こされる外乱力である。これらの外乱力は、アクチュエータ20と平行に作用し(研削機械10とマニピュレータ1のTCPとの間で)、したがってアクチュエータによって容易に補償することはできない。図5Aおよび図5Bは、研削機械10およびアクチュエータ20を備えたロボット支持研削装置のケーブルの案内の例を示しており、研削機の動作に必要なケーブル(電線)は、長軸Aの周りの螺旋曲線にほぼ沿って案内されている。図5Aは概略正面図であり、図5Bは概略底面図である。
【0024】
研削機械10およびアクチュエータ20の周りの(少なくとも部分的に)ほぼ螺旋状の曲線に沿ってケーブル18が案内されることにより、アクチュエータ20のたわみαが変化するとき、ケーブル18のたわみはできるだけ変化しない。さらに、螺旋状のケーブルの案内は、一般に、ケーブル18の曲げにより、長軸Aに沿った(すなわち、アクチュエータの有効方向に沿った)非常に低い干渉力を可能にする。アクチュエータ20の片側でループに曲げられる従来のケーブルに比較すると、外乱力ははるかに大きくなり、より変動する。
【0025】
研削ダストが吸い出される出口15(図3参照)に接続されたホース(図示せず)も同様に、ケーブル18のように螺旋曲線に沿って案内することができる。複数のケーブル18を1つのホースの中でガイドすることができる。図5に示すように、ケーブル18の一端は研削機械10に接続され(ハウジング11の壁を貫通して)、ケーブル18の他端はマニピュレータ1の最も外側のセグメント2aに機械的に接続されている。
【0026】
以下において、本明細書で説明される実施形態のいくつかの重要な態様が要約される。しかし、以下は完全なものとしてではなく、例示的なリストとしてのみ理解されるものである。一実施形態は、ロボット研削プロセスに適した研削機械10に関する(図2を参照)。研削機械は、ハウジング11、ハウジングの内部に配置されたモータ12、ハウジングの内部のモータ12のモータシャフトに配置されたファンホイール13、および研削ホイールを取り付けるための、モータシャフト12に結合された回転可能なマウント19(支持板)を備えている。支持板は、研削ダストをハウジング11の内部に吸い込むための開口部17を有する。研削機械10は、ハウジング11の内部から研削ダストを吸い出すための、ハウジングの壁に配置された出口15と、ハウジング11の壁に配置された逆止弁14とをさらに備えている。逆止弁14は、空気がハウジング内から出ることを可能にするが、空気がハウジングの内部に吸入されることを防ぐ(図2および3を参照)。
【0027】
例示的な一実施形態では、モータ12は、支持板19の開口部17から研削ダストとともに出口15へ空気流が搬送されるとともに、空気流がモータ12を冷却するように、ハウジング11の内部に配置される。したがって、吸引のために生成された空気流は、モータの冷却にも使用される。軌道研削機の場合、研削機械は偏心ベアリング16を有し、これはモータシャフトをサ支持板19に接続し、支持板19が軌道運動を行えるようにしている。支持板19の開口部17から出口15に向かう前述の空気流は、研削ダストが除去し、偏心ベアリング16を冷却する。
【0028】
出口15からの吸引が不足している場合、支持板19の開口部17から逆止弁14を通ってファン13によって吸引される空気が入る(図3参照)。言い換えれば、ファン13は、ハウジング11の内部に停滞圧力を生じさせ、ハウジング11の内部からの空気が逆止弁14を通って周囲に逃げることができるようにする。
【0029】
研削機械に接続されたケーブルとホースによる妨害力を減らすために、モータ12に電力を供給するケーブル18をハウジング11の周りにほぼ螺旋状に案内することができる。
【0030】
別の態様は、マニピュレータ1(例えば産業用ロボット)、本実施形態に記載の研削機械10、研削機械10をマニピュレータ1のTCPと結合するリニアアクチュエータ20、および研削機械のハウジングの出口が接続にされる吸気装置を有するロボット研削のための装置に関する(図1図2参照)。さらなる態様は、研削板を取り付けるための回転可能な支持板19を備えた研削機械10を冷却する方法に関する。この方法は、ハウジングの壁の空気出口15を介してハウジングの内部に接続された吸気装置によって、研削機械10のハウジング11の内部に負圧を生成する工程を含む(図2および3を参照)。この場合、支持板19の開口部17を通る空気流が負圧によって生成され、これが研削ダストをハウジング11の内部に運搬する。次に、これはハウジング壁の出口15から吸引される。同時に、ハウジングの内部に配置されたモータは、この空気流によって冷却される。非アクティブな排気システムの場合、この方法は、ファンホイール13によって支持板19の開口17を介してモータ12を冷却するためのさらなる空気流を生成する工程を含み、それにより、ハウジング11の内部に停滞圧力が生成され、ハウジングの壁に配置された逆止弁14が開き、空気流が逃げることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…マニピュレータ
2a、2b、2c、2d…セグメント
3a、3b、3c…ジョイント
4…コントローラ
10…研削機械
11…ハウジング
12…モータ
13…ファン
14…逆止弁
15…空気出口
16…偏心ベアリング
17…開口部
18…ケーブル
19…支持板
20…アクチュエータ
40…ワークピース
41…基礎
A…長軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B