(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】伝達機構
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240527BHJP
F16H 25/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16H1/32 Z
F16H25/06 Z
(21)【出願番号】P 2022501716
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002008
(87)【国際公開番号】W WO2021166540
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020025839
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直幸
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-251374(JP,A)
【文献】特開2009-281422(JP,A)
【文献】実開昭63-30657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸線を中心として回転可能な第1の軸であって、前記第1の軸は、前記第1の軸と同心に前記第1の軸に固定されたカムを備え、前記カムの側面は、前記第1の回転軸線から視て正の曲率を有する、第1の軸と、
前記カムの側面に沿って配列された複数のピンと、
第2の回転軸線を中心として回転可能な第2の軸と、
前記第2の軸と同心であるガイドプレートであって、前記ガイドプレートには、前記第2の軸の回転方向に沿って複数のガイド孔が設けられ、各ピンは、対応するガイド孔に収容されている、ガイドプレートと、
前記第2の軸と同心である一対の歯車であって、前記カムを挟むように配置されている一対の歯車と
を備え
、前記ガイドプレート及び前記一対の歯車のうちの何れか一方が、前記第2の軸に固定されている、伝達機構であって、
各ピンは、前記一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触し、前記第1の軸及び前記第2の軸のうちの一方の回転に伴って、各ピンが対応するガイド孔に案内されて前記カム及び対応する歯車に沿って運動することによって、前記第1の軸及び前記第2の軸のうちの他方が前記第1の軸及び前記第2の軸のうちの一方に対して回転する、伝達機構。
【請求項2】
各ピンは、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とは異なる前記一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触する、請求項1に記載の伝達機構。
【請求項3】
各ピンは、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とチェーンによって連結されている、請求項1又は2に記載の伝達機構。
【請求項4】
前記ガイドプレートは、前記カムを挟むように配置された一対のガイドプレートであって、各ピンは、前記一対のガイドプレートのうちの何れか一方の対応するガイド孔に収容されている、請求項1~3の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項5】
各ピンは、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とは異なる前記一対のガイドプレートのうちの何れか一方の対応するガイド孔に収容されている、請求項4に記載の伝達機構。
【請求項6】
前記一対の歯車の各々は、内歯歯車であって、前記複数のピンは、前記カムの外側に配列されている、請求項1~
5の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項7】
前記第1の軸の回転方向に沿って一周して得られる前記カムの側面の曲率が2つ以上の極大値を有し、前記一対の歯車の各々の歯部の数は、前記複数のピンの数と前記極大値の数との和である、請求項
6に記載の伝達機構。
【請求項8】
前記一対の歯車の各々は、外歯歯車であって、前記複数のピンは、前記カムの内側に配列されている、請求項1~
5の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項9】
前記第1の軸の回転方向に沿って一周して得られる前記カムの側面の曲率が2つ以上の極大値を有し、前記複数のピンの数は、前記一対の歯車の各々の歯部の数と前記極大値の数との和である、請求項
8に記載の伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化に適し、運動伝達誤差を低減することができる伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、楕円カムと、ローラを介して楕円カムの外周に接するローラリンクと、楕円カムと同軸のガイドプレートと、ローラリンクの各ピンの両端に対応する一対の内歯プレートとを備える減速機構が開示されている。この減速機構において、楕円カムを入力軸とし、ガイドプレート又は一対の内歯プレートを出力軸とし、ガイドプレートは、ローラリンクのローラ用の各ピンに対応するガイド孔を円形に配列し、一対の内歯プレートは、ローラリンクのピン本数より多い歯数の内歯を円形に形成し、ローラリンクの各ピンは、楕円カムの回転に伴い、各ガイド孔、内歯の双方を介してガイドされ、内歯の歯溝に進退してガイドプレート又は一対の内歯プレートを相対回転させる。
【0003】
特許文献2には、環状溝が表面に形成された第1カムと、環状溝内に配置され、環状溝内を自由に転動する複数の段付ピンと、各段付ピンの運動を個々に規制する円形孔が複数配列された第2カムと、段付ピンに噛み合う歯を有し、第1カムの回転運動を所定の減速比の回転運動に変換する第3カムとを備える減速装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-251374号公報
【文献】特開2009-281422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の減速機構は、ピンが入力軸の回転を受ける楕円カムの入力軸側と出力軸側との両側に突き出し、入力軸側では一方の内歯プレートと接触し、出力軸側ではガイドプレート及び他方の内歯プレートに接触する構造となっており、入力軸側と出力軸側との両側に存在する一対の内歯プレートの間で形状誤差、組立時位相誤差があると、両端で一対の内歯プレートと接触するピンは傾斜してしまい、この傾斜によって、入力軸側と出力軸側との間に運動伝達誤差が生じるという問題点がある。特許文献2の減速装置は、段付ピンが環状溝に囲まれるように配置されている構造となっており、段付ピンが環状溝との接触により磨耗しやすく、長寿命化を期待することができないという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、小型化に適し、運動伝達誤差を低減することができる伝達機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、伝達機構が、第1の回転軸線を中心として回転可能な第1の軸であって、第1の軸が、第1の軸と同心に第1の軸に固定されたカムを備え、カムの側面が、第1の回転軸線から視て正の曲率を有する、第1の軸と、カムの側面に沿って配列された複数のピンと、第2の回転軸線を中心として回転可能な第2の軸と、第2の軸と同心であるガイドプレートであって、ガイドプレートには、第2の軸の回転方向に沿って複数のガイド孔が設けられ、各ピンが、対応するガイド孔に収容されている、ガイドプレートと、第2の軸と同心である一対の歯車であって、カムを挟むように配置されている一対の歯車とを備え、各ピンが、一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触し、第1の軸及び第2の軸のうちの一方の回転に伴って、各ピンが対応するガイド孔に案内されてカム及び対応する歯車に沿って運動することによって、第1の軸及び第2の軸のうちの他方が第1の軸及び第2の軸のうちの一方に対して回転する。
【0008】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、各ピンが、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とは異なる一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触する。
【0009】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、各ピンが、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とチェーンによって連結されている。
【0010】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、ガイドプレートが、カムを挟むように配置された一対のガイドプレートであって、各ピンが、一対のガイドプレートのうちの何れか一方の対応するガイド孔に収容されている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、各ピンが、隣接する2つのピンのうちの少なくとも一方とは異なる一対のガイドプレートのうちの何れか一方の対応するガイド孔に収容されている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、ガイドプレート及び一対の歯車のうちの何れか一方が、第2の軸に固定されている。
【0013】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、一対の歯車の各々が、内歯歯車であって、複数のピンが、カムの外側に配列されている。
【0014】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、各歯車が内歯歯車である場合に、第1の軸の回転方向に沿って一周して得られるカムの側面の曲率が2つ以上の極大値を有し、一対の歯車の各々の歯部の数が、複数のピンの数と極大値の数との和である。
【0015】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、一対の歯車の各々は、外歯歯車であって、複数のピンが、カムの内側に配列されている。
【0016】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、各歯車が外歯歯車である場合に、第1の軸の回転方向に沿って一周して得られるカムの側面の曲率が2つ以上の極大値を有し、複数のピンの数が、一対の歯車の各々の歯部の数と極大値の数との和である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各ピンが一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触することによって、形状誤差及び組立誤差による入力軸側と出力軸側との間の運動伝達誤差を低減することができる。
【0018】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明の一実施形態としての伝達機構の分解斜視図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態としての伝達機構の分解斜視図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態としての伝達機構の分解斜視図である。
【
図4A】本発明の別の実施形態としての伝達機構の分解斜視図である。
【
図5A】本発明の伝達機構におけるピンの一実施形態としての斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
図1A~
図5Cを参照して、伝達機構101の様々な実施形態を説明する。伝達機構101は、第1の回転軸線104を中心として回転可能な第1の軸(図示されない)と、第2の回転軸線108を中心として回転可能な第2の軸(図示されない)とを備える。第1の回転軸線104と第2の回転軸線108とは同一線上にあってもよい。第1の軸が入力軸、第2の軸が出力軸であってもよい。また、第2の軸が入力軸、第1の軸が出力軸であってもよい。第1の軸は、第1の軸と同心に第1の軸に固定されたカム102を備える。伝達機構101は、カム102の側面103に沿って配列された複数のピン105と、第2の軸と同心であって、第2の軸の回転方向に沿って複数のガイド孔が設けられたガイドプレートと、第2の軸と同心である一対の歯車とを更に備える。各ピン105は、ガイドプレートに設けられた複数のガイド孔のうちの対応する何れかのガイド孔に収容される。一対の歯車は、第2の軸と同心であって、第2の軸の回転方向に沿って複数の歯部を有する第1の歯車106aと、第2の軸と同心であって、第2の軸の回転方向に沿って複数の歯部を有する第2の歯車106bとから構成される。第1の歯車106a及び第2の歯車106bは、それらの間にカム102を挟むように配置される。また、第1の歯車106a及び第2の歯車106bは、伝達機構101を上面から視て、第1の歯車106aの歯部及び第2の歯車106bの歯部の位置を大よそ一致させて歯部の位相を大よそ一致させるように配置される。
【0022】
カム102の側面103は、第1の回転軸線104から視て正の曲率を有する。すなわち、第1の回転軸線104に垂直な平面におけるカム102の側面103の断面において、カム102の側面103の法線ベクトルが第1の回転軸線104の方向を向く場合を正の曲率とすると、カム102の側面103の曲率は、断面において常に正である。
図1A~
図1H及び
図3A~
図3Gに示されるように、一対の歯車が内歯歯車である場合には、カム102は、第1の回転軸線104から視て凸状の側面を有する柱体による側面103を有してもよい。
図2A~
図2H及び
図4A~
図4Gに示されるように、一対の歯車が外歯歯車である場合には、カム102は、第1の回転軸線104から視て凸状の側面を有する柱体の貫通孔による側面103を有してもよい。例えば、カム102の側面103は、第1の回転軸線104を中心として、楕円筒、又は略正三角筒、略正四角筒、略正五角筒、等のような略正多角筒の側面の形状を有してもよい。
【0023】
各ピン105は、第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの何れか一方にのみ接触する。各ピン105は、カム102に対して一方の側に大きく突出しており、第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの何れか一方にのみ接触することができる。各ピン105は、第1の軸及び第2の軸のうちの一方の回転に伴って、対応するガイド孔に案内されて、カム102及び対応する歯車に沿って運動し、それによって、第1の軸及び第2の軸のうちの他方が第1の軸及び第2の軸のうちの一方に対して相対回転する。例えば、各ピン105は、入力軸としての第1の軸又は第2の軸が回転すると、そのピン105が収容されているガイド孔に案内されて、カム102、及び第1の歯車106a又は第2の歯車106bに沿って運動する。この各ピン105の運動によって出力軸としての第2の軸又は第1の軸が、入力軸としての第1の軸又は第2の軸に対して相対回転する。各ピン105が第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの何れか一方にのみ接触することによって、伝達機構101を上面から視て、第1の歯車106aと第2の歯車106bとの間に歯部の位置、形状、等の誤差があったとしても、各ピン105の第2の回転軸線108に対する傾斜を抑制することができ、形状誤差及び組立誤差による入力軸側と出力軸側との間の運動伝達誤差を低減することができる。なお、各ガイド孔は、入力軸としての第1の軸又は第2の軸が回転する場合に、各ピン105を対応するガイド孔内において所定量運動させるような形状に形成される。例えば、各ガイド孔は、長軸が第2の回転軸線108の方向を向く略楕円形に形成されてもよい。
【0024】
ガイドプレートは、カム102に対して一方の側に配置されてもよく、また、
図1A~
図4Gに示されるように、ガイドプレートは、第2の軸と同心である第1のガイドプレート107aと、第2の軸と同心である第2のガイドプレート107bとから構成される一対のガイドプレートであってもよい。第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bは、カム102を挟むように配置される。なお、第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bが、第1の歯車106a及び第2の歯車106bを挟むように配置されてもよく、第1の歯車106a及び第2の歯車106bが第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bを挟むように配置されてもよい。第1のガイドプレート107aに、第2の軸の回転方向に沿って複数の第1のガイド孔109aが設けられ、第2のガイドプレート107bに、第2の軸の回転方向に沿って複数の第2のガイド孔109bが設けられる。各ピン105は、第1のガイドプレート107aの対応する第1のガイド孔109a、又は第2のガイドプレート107bの対応する第2のガイド孔109bに収容され、対応する第1のガイド孔109a又は第2のガイド孔109bに案内されて、カム102及び対応する歯車に沿って運動する。
【0025】
各ピン105は、隣接する2つのピン105のうちの少なくとも一方とは異なる一対のガイドプレートのうちの何れか一方の対応するガイド孔に収容されてもよい。例えば、1つのピン105が、第1のガイドプレート107aの対応する第1のガイド孔109aに収容される場合には、その1つのピン105に隣接するピン105は、第2のガイドプレート107bの対応する第2のガイド孔109bに収容されてもよい。1つのピン105を第1のガイドプレート107aの対応する第1のガイド孔109aに収容させ、その1つのピン105に隣接する2つのピン105を第2のガイドプレート107bのそれぞれの対応する第2のガイド孔109bに収容させるようにして、各ピン105を、その隣接するピン105に対して互い違いに第1のガイド孔109a又は第2のガイド孔109bに収容させてもよい。なお、以下では、ガイドプレートが第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bから構成される一対のガイドプレートであることを前提に説明されるが、ガイドプレートが、カム102に対して一方の側に配置されている場合も同様である。
【0026】
各ピン105は、隣接する2つのピン105のうちの少なくとも一方とは異なる一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触してもよい。例えば、1つのピン105が、第1の歯車106aに接触する場合には、その1つのピン105に隣接するピン105は、第2の歯車106bに接触してもよい。1つのピン105を第1の歯車106aに接触させ、その1つのピン105に隣接する2つのピン105を第2の歯車106bに接触させるようにして、各ピン105を、その隣接するピン105に対して互い違いに第1の歯車106a又は第2の歯車106bに接触させてもよい。
【0027】
図5A~
図5Cに示されるように、各ピン105は、内軸部105aと、内軸部105aの周りを回転する外輪部105bとを備えてもよい。外輪部105bは、滑り接触して内軸部105aの周りを回転してもよく、ころ等を介して転がり接触して内軸部105aの周りを回転してもよい。各ピン105は、外輪部105bがカム102の側面103、及び隣接するピン105の外輪部105bに接触するように配置される。各ピン105の内軸部105aの外輪部105bから突出する部分のみが、第1の歯車106a又は第2の歯車106bに接触する。ガイドプレートがカム102に対して一方の側に配置される場合には、各ピン105の内軸部105aの一方の端部が、ガイドプレートの対応するガイド孔に収容される。ガイドプレートが第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bから構成される一対のガイドプレートである場合には、各ピン105の内軸部105aの外輪部105bから突出する部分のみが、第1のガイドプレート107aの対応する第1のガイド孔109a、又は第2のガイドプレート107bの対応する第2のガイド孔109bに収容される。
【0028】
各ピン105は、隣接する2つのピン105のうちの少なくとも一方とチェーン110によって連結されてもよい。各ピン105が隣接する2つのピン105のうちの少なくとも一方とは異なる一対の歯車のうちの何れか一方にのみ接触する場合、例えば、1つのピン105が第1の歯車106aに接触する一方で、その1つのピン105に隣接するピン105が第2の歯車106bに接触する場合に、各ピン105とそれに隣接するピン105とをそれぞれに対して回転可能であるようにチェーン110で連結することよって、2つの隣接するピン105は、連動してカム102及びそれぞれの対応する歯車に沿って運動することができる。2つの隣接するピン105は、それぞれの外輪部105bを2つのチェーン110によって挟むように連結されてもよい。また、各ピン105の内軸部105aの一方の端部にピン止め111を配置することによって、チェーン110及び外輪部105bが内軸部105aの軸線方向に対して運動しないようにしてもよい。
【0029】
第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bから構成される一対のガイドプレートと、第1の歯車106a及び第2の歯車106bから構成される一対の歯車とのうちの一方が、第2の軸に固定され、それらのうちの他方が、伝達機構101のハウジング(図示されない)に固定される。すなわち、第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bと、第1の歯車106a及び第2の歯車106bとのうちの何れかが第2の軸と共に回転する。
【0030】
図1A~
図1H及び
図3A~
図3Gに示されるように、一対の歯車を構成する第1の歯車106a及び第2の歯車106bは内歯歯車であってもよい。この場合、カム102は、第1の回転軸線104を中心として、楕円柱の側面103(
図1Aを参照)、又は略正三角柱(
図3Aを参照)、略正四角柱、略正五角柱、等のような略正多角柱の側面103を有する形状であってもよく、複数のピン105は、カム102の側面103に沿って外側に配列される。例えば、第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bから構成される一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定される場合には、入力軸としての第1の軸の回転に伴ってカム102が回転すると、各ピン105は、そのピン105が収容されているガイド孔に案内されて、カム102と第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの対応する歯車との間において、対応する歯車をカム102の回転方向とは反対方向に回転させるようにそれらに接触して運動する。また、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定される場合には、入力軸としての第1の軸の回転に伴ってカム102が回転すると、各ピン105は、そのピン105が収容されているガイド孔に案内されて、カム102と第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの対応する歯車との間において、対応するガイドプレートをカム102の回転方向とは反対方向に回転させるようにそれらに接触して運動する。入力軸としての第2の軸が回転する場合も同様である。
【0031】
一対の歯車を構成する第1の歯車106a及び第2の歯車106bは内歯歯車である場合に、0~360°に亘って第1の軸の回転方向に沿って一周して得られるカム102の側面103の曲率は、2つ以上の極大値を有する。2つ以上の曲率の極大値は、0~360°に亘って等間隔に得られる。例えば、カム102が楕円柱の側面103を有する形状である場合には、カム102の第1の回転軸線104に垂直な平面での断面において180°の間隔で楕円形の長軸の2つの頂点のそれぞれに曲率の極大値を有し、カム102が略正三角柱の側面103を有する形状である場合には、カム102の第1の回転軸線104に垂直な平面での断面において120°の間隔で略正三角形の3つの頂点のそれぞれに曲率の極大値を有する。第1の軸及び第2の軸のうちの一方が回転すると、このような極大値を有するカム102の側面103と、内歯歯車である第1の歯車106a及び第2の歯車106bとの間の関係に従って、各ピン105が係合する第1の歯車106a又は第2の歯車106bの歯部を変え、それによって、一方の回転が、他方を回転させるように他方に伝達される。第1の歯車106a及び第2の歯車106bの各々の歯部の数をNTとし、複数のピンの数をNPとし、曲率の極大値の数をNMすると、NT=NP+NMの関係にある。第1の軸を入力軸とする場合、一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNM/NTであり、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNM/NPである。また、第2の軸を入力軸とする場合、一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNT/NMであり、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNP/NMである。
【0032】
図2A~
図2H及び
図4A~
図4Gに示されるように、一対の歯車を構成する第1の歯車106a及び第2の歯車106bは外歯歯車であってもよい。この場合、カム102には、第1の回転軸線104を中心として、楕円柱の側面103(
図2Aを参照)、又は略正三角柱(
図4Aを参照)、略正四角柱、略正五角柱、等のような略正多角柱の側面103を有する貫通孔が設けられてもよく、複数のピン105は、カム102の側面103に沿って内側に配列される。例えば、第1のガイドプレート107a及び第2のガイドプレート107bから構成される一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定される場合には、入力軸としての第1の軸の回転に伴ってカム102が回転すると、各ピン105は、そのピン105が収容されているガイド孔に案内されて、カム102と第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの対応する歯車との間において、対応する歯車をカム102の回転方向とは反対方向に回転させるようにそれらに接触して運動する。また、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定される場合には、入力軸としての第1の軸の回転に伴ってカム102が回転すると、各ピン105は、そのピン105が収容されているガイド孔に案内されて、カム102と第1の歯車106a及び第2の歯車106bのうちの対応する歯車との間において、対応するガイドプレートをカム102の回転方向とは反対方向に回転させるようにそれらに接触して運動する。入力軸としての第2の軸が回転する場合も同様である。
【0033】
一対の歯車を構成する第1の歯車106a及び第2の歯車106bは外歯歯車である場合に、0~360°に亘って第1の軸の回転方向に沿って一周して得られるカム102に設けられた貫通孔の側面103の曲率は、2つ以上の極大値を有する。2つ以上の曲率の極大値は、0~360°に亘って等間隔に得られる。例えば、カム102に楕円柱の貫通孔の側面103が設けられる場合には、カム102の第1の回転軸線104に垂直な平面での断面において180°の間隔で楕円形の長軸の2つの頂点のそれぞれに曲率の極大値を有し、カム102に略正三角柱の貫通孔の側面103が設けられる場合には、カム102の第1の回転軸線104に垂直な平面での断面において120°の間隔で略正三角形の3つの頂点のそれぞれに曲率の極大値を有する。第1の軸及び第2の軸のうちの一方が回転すると、このような極大値を有するカム102の側面103と、外歯歯車である第1の歯車106a及び第2の歯車106bとの間の関係に従って、各ピン105が係合する第1の歯車106a又は及び第2の歯車106bの歯部を変え、それによって、一方の回転が、他方を回転させるように他方に伝達される。複数のピンの数をNPとし、第1の歯車106a及び第2の歯車106bの各々の歯部の数をNTとし、曲率の極大値の数をNMすると、NP=NT+NMの関係にある。第1の軸を入力軸とする場合、一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNM/NTであり、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNM/NPである。また、第2の軸を入力軸とする場合、一対のガイドプレートが伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNT/NMであり、一対の歯車が伝達機構101のハウジングに固定されると、変速比はNP/NMである。
【0034】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0035】
101 伝達機構
102 カム
103 側面
104 第1の回転軸線
105 ピン
105a 内軸部
105b 外輪部
106a 第1の歯車
106b 第2の歯車
107a 第1のガイドプレート
107b 第2のガイドプレート
108 第2の回転軸線
109a 第1のガイド孔
109b 第2のガイド孔
110 チェーン
111 ピン止め