(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ねじり振動減衰装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/131 20060101AFI20240527BHJP
F16F 15/14 20060101ALI20240527BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16F15/131
F16F15/14 Z
F16D7/02 A
(21)【出願番号】P 2022506207
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071524
(87)【国際公開番号】W WO2021019022
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-25
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、マレー
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、クラン
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017109439(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/181471(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015211321(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012200966(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/066680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16D 1/00- 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-第1入力要素(31)と、第1出力要素(10)と、前記第1入力要素と前記第1出力要素との間に配置された少なくとも1つの機械的エネルギー貯蔵部材(9)と、を備えるねじり振動減衰器(3)であって、前記第1入力要素(31)は、少なくとも1つの第1ウィンドウ(32)を有するとともに、駆動シャフトに、少なくとも1つの前記第1ウィンドウを通過する少なくとも1つの第1接続部材により、回転軸(X)を中心とした回転において固定され得る、ねじり振動減衰器(3)と、
-前記ねじり振動減衰器(3)に回転
において固定された摩擦部材と、弾性要素(18)と、2つのカバー(15)と、2つの前記カバーを固定するのに適した少なくとも1つの第2接続部材(43)と、を備えるトルクリミッタ(4)と、
-前記ねじり振動減衰器(3)に固定された接続部品(40)と、
を備えるねじり振動を減衰するための装置(1)において、
少なくとも1つの前記第2接続部材(43)は、前記弾性要素(18)が圧縮応力を生じる状態とされて所定の軸方向圧力を前記摩擦部材に及ぼすロック位置と、前記弾性要素が静止して前記摩擦部材が前記カバー(15)に対して回転移動可能であるロック解除位置との間で移動可能であり、
少なくとも1つの前記第2接続部材(43)は、前記トルクリミッタ(4)を、少なくとも1つの第2ウィンドウ(42)を有する第2出力要素(41)であって、駆動シャフトに回転において固定され得る第2出力要素(41)に回転
において固定するのに適する、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記第2接続部材(43)は、前記トルクリミッタ(4)の前記カバー(15)のうちの一方に作製されたネジ山(45)に係合するネジであり、
前記ネジは、ねじ切りされた軸部を有し、
前記ねじ切りされた軸部のネジ山は、前記弾性要素(18)の軸方向圧潰距離よりも大きい軸方向距離(D43)を有する、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記接続部品は、前記トルクリミッタ(4)の前記カバー(15)のうちの一方を形成する、
請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記第2出力要素(41)は、前記トルクリミッタ(4)の前記カバー(15)のうちの一方を形成する、
請求項1~3のいずれか一行に記載の装置(1)。
【請求項5】
トルク伝達方向において、前記ねじり減衰器(3)および前記トルクリミッタ(4)の後方に配置された追加のねじり振動減衰器をさらに備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記追加のねじり振動減衰器と前記第2出力要素(41)とを、直接的に
固定し、且つ回転において固定するのに適した少なくとも1つの第3接続部材(44)をさらに備え、
少なくとも1つの前記第3接続部材(44)は、ネジである、
請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記追加のねじり振動減衰器は、振り子減衰器(2)である、
請求項5または6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記振り子減衰器(2)は、前記
回転軸(X)を中心として回転する振り子支持体(25)と、前記振り子支持体(25)に対して自由に移動可能であるとともにこれにガイドされる少なくとも1つの振り子質量体(26)と、を備え、
少なくとも1つの前記第3接続部材(44)は、前記振り子支持体(25)と前記第2出力要素(41)とを、直接的に
固定し、且つ回転において固定する、
請求項6に従属する請求項
7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記トルクリミッタ(4)は乾式である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記接続部品(40)は、前記ねじり振動減衰器(3)と別体である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の装置(1)を備える車両ドライブトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のドライブトレインに組み込まれるのに適した、ねじり振動を減衰するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願FR 3 039 613は、ねじり減衰装置と、入力部において前記ねじり減衰装置の径方向上方に配置されたトルクリミッタと、軸方向において前記トルクリミッタの隣に配置された振り子減衰装置と、を備えたねじり振動減衰装置を開示している。この設計によれば、装置によるねじり振動の十分な減衰が得られるが、トルクリミッタの下流に大きな慣性を有するため、ドライブトレインに強いオーバートルクが生じる。また、このような設計は、組み立てやメンテナンスが困難である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、この種の装置を改良することを目的とする。
【0004】
したがって、本発明は、具体的には、特に車両のドライブトレイン用であって、
第1入力要素と、第1出力要素と、前記第1入力要素と前記第1出力要素との間に配置された少なくとも1つの機械的エネルギー貯蔵部材と、を備えるねじり振動減衰器であって、前記第1入力要素は、少なくとも1つの第1ウィンドウを有するとともに、駆動シャフトに、少なくとも1つの前記第1ウィンドウを通過する少なくとも1つの第1接続部材により、回転軸を中心とした回転において固定され得る、ねじり振動減衰器と、
前記ねじり振動減衰器に回転的に固定された摩擦部材と、弾性要素と、2つのカバーと、2つの前記カバーを固定するのに適した少なくとも1つの第2接続部材と、を備えるトルクリミッタと、
前記ねじり振動減衰器に固定された接続部品と、
を備えるねじり振動を減衰するための装置において、
少なくとも1つの前記第2接続部材は、前記弾性要素が圧縮応力を生じる状態とされて所定の軸方向圧力を前記摩擦部材に及ぼすロック位置と、前記弾性要素が静止して前記摩擦部材が前記カバーに対して回転移動可能であるロック解除位置との間で移動可能であり、
少なくとも1つの前記第2接続部材は、前記トルクリミッタを、少なくとも1つの第2ウィンドウを有する第2出力要素であって、駆動シャフトに回転において固定され得る第2出力要素に回転的に固定するのに適する、
ことを特徴とする装置、に関する。
【0005】
したがって、トルクリミッタは、可能な限りギアボックスの近傍に配置されるため、トルクリミッタ前の慣性が制限され得る。これにより、前記トルクリミッタに作用するオーバートルクが制限され得る。
【0006】
また、この設計により、装置によるねじり振動の特に十分な減衰を得ることができる。
【0007】
また、本発明により、例えば、製造時、メンテナンス時、および/またはテスト時に、装置を簡単に組み立てる/分解することができる。少なくとも1つの第1ウィンドウを少なくとも1つの第2ウィンドウに対して角度的に再び整列させることを可能とするように、少なくとも1つの第2接続要素は、軸方向において、ロック位置とロック解除位置との間で移動可能である。より具体的には、ロック解除位置において、弾性要素は静止位置にある。すなわち、弾性要素は、軸方向圧力を摩擦部材に及ぼさない。したがって、カバーは、回転軸を中心として第2出力要素に対して回転移動可能であるため、第2出力要素は、第1入力要素に対して回転移動可能である。これにより、第1入力要素の前記ウィンドウと第2出力要素の前記ウィンドウとを、軸方向において再び完璧に整列させることができるため少なくとも1つの第1接続部材は、前記ウィンドウを容易に通過することができる。この目的は、第1入力要素を、クランクシャフトとも称され得る駆動シャフトに固定することである。このように組み立てる/分解することが容易であるため、破損のリスクが制限され得るとともに、例えばガレージでのメンテナンス時に、部品に対する労力の介入時間が短縮され得る。
【0008】
また、ねじり振動減衰器をトルクリミッタに固定することで、すなわち中間部品の有無にかかわらわず、これら2つの間で効果的にトルクを通過させることができる。
【0009】
トルクリミッタとねじり振動減衰器とを接続することにより、独立したトルクリミッタサブアセンブリを得ることができ、全ての組み立て作業(スリップトルクの制御、慣らし運転、バランス調整等)が容易になる。
【0010】
また、この設計により、ハイブリッドエンジンのドライブトレインに特に適したコンパクトな装置を得ることができる。
【0011】
また、この設計により、装置によるねじり振動の特に十分な減衰を得ることができる。
【0012】
ねじり振動減衰器は、任意の減衰器であり得る。
【0013】
ねじり振動減衰器は、デュアル-マスフライホールであり得る。デュアル-マスフライホールは、
-車両の熱エンジンまたはハイブリッドエンジンのクランクシャフトに接続され得る第1入力要素を形成する一次フライホイールと、
-トルクリミッタの第2入力要素に直接的または間接的に接続され得る二次フライホイールと、
-一次フライホイールと二次フライホールとの間において並列的に装着された複数の弾性復帰部材と、
を含む。
【0014】
トルクリミッタの摩擦部材は、第1出力要素に固定されたディスクを備える。トルクリミッタのカバーのうちの少なくとも一方に固定された部品をディスク上で圧縮するように、弾性要素は所定の軸方向圧力を及ぼすのに適している。
【0015】
変形例として、トルクリミッタの摩擦部材は、少なくとも1つの部品と、第2出力要素に固定されたディスクと、を備えている。弾性要素が、ディスク上の部品を圧縮するように、所定の軸方向圧力を及ぼし得る。
【0016】
トルクリミッタの摩擦部材の部品は、ディスクに取り付けられた摩擦ライニングである。
【0017】
変形例として、トルクリミッタの摩擦部材の部品は、前記トルクリミッタのカバーのうちの少なくとも一方、および駆動プレートに取り付けられた摩擦ライニングである。
【0018】
少なくとも1つの第2接続部材は、トルクリミッタのカバーのうちの一方に作製されたネジ山に係合するネジであり、前記ネジは、ねじ切りされた軸部を有し、前記ねじ切りされた軸部のネジ山は、弾性要素の軸方向圧潰距離よりも大きい軸方向距離を有する。
【0019】
静止状態の弾性要素は、第1最大軸方向距離を有する。圧縮応力を生じさせた弾性要素は、第2最大軸方向距離を有する。軸方向圧潰圧潰距離は、第1最大軸方向距離と第2最大軸方向距離との差である。ネジの軸部のネジ山の軸方向長さは、軸方向圧潰距離よりも大きい。したがって、トルクリミッタの2つのカバーを回転において固定させた状態で、弾性要素を静止位置に向けて解放するように、少なくとも1つの第2接続部材は、トルクリミッタのカバーのネジ山と係合可能である。このため、弾性部材から負荷を解放するために、少なくとも第2接続部材を完全に緩める必要はない。したがって、第2出力要素の少なくとも1つの第2ウィンドウと、ねじり振動減衰器の少なくとも1つの第1ウィンドウと、ねじり振動減衰器の少なくとも1つの第1接続部材とを角度的に再び整列させることが、トルクリミッタを完全に分解することなく、容易に実施され得る。
【0020】
接続部品は、ねじり振動減衰器と別体である。より具体的には、接続部品は、ねじり振動減衰器の第1出力要素と別体である。したがって、ねじり振動減衰器は別個のサブアセンブリを形成するため、組み立てが容易である。
【0021】
接続部品は、ねじり振動減衰器の第1出力要素に、直接的に、すなわち中間部品を用いずに固定される。これにより、軸方向にコンパクトな装置が得られるとともに、コスト(製造すべき部品の点数が少ない)および組み立て時間を節約できる。
【0022】
接続部品は、トルクリミッタのカバーのうちの一方を形成する。したがって、ねじり振動減衰器は、トルクリミッタに、直接的に、すなわち中間部品を用いずに固定される。これにより、軸方向にコンパクトな装置が得られるとともに、コスト(製造すべき部品の点数が少ない)および組み立て時間を節約できる。また、接続部品は、ねじり振動減衰器のシールにも関与し得る。
【0023】
第2出力要素は、トルクリミッタのカバーのうちの一方を形成する。したがって、トルクリミッタは、可能な限りギアボックスの近傍に配置される。また、この設計により、軸方向にコンパクトな装置が得られるとともに、コスト(製造すべき部品の点数が少ない)および組み立て時間を節約できる。
【0024】
装置は、トルク伝達方向において、ねじり減衰器およびトルクリミッタの後方に配置された追加のねじり振動減衰器をさらに備える。したがって、追加のねじり振動減衰器は、トルク伝達方向において、装置の経路の端部に配置されているため、振り子減衰器の発散(飽和)が回避され得る。なぜならば、非周期的なトルクが、ねじり振動減衰器により、かつ追加のねじり振動減衰器の上流のトルクリミッタにより減衰されるからである。したがって、追加のねじり振動減衰器をより良好に作動させることができる。これにより、装置の径方向サイズを大きくすることなく軸方向サイズを微増することで、ねじり振動は非常に良好に減衰される。
【0025】
装置は、追加のねじり振動減衰器と第2出力要素とを、直接的に、回転的に固定するのに適した少なくとも1つの第3接続部材をさらに備える。少なくとも1つの第3接続部材は、ネジである。ネジ留めによる接続により、追加の独立したねじり振動減衰器サブアセンブリを得ることができ、全ての組み立て作業(減衰制御、慣らし運転等)が容易になる。
【0026】
追加のねじり振動減衰器は、振り子減衰器である。振り子減衰器は、フィルタリング・ワン・オーダーに特に良好に適している。
【0027】
振り子減衰器は、軸を中心として回転する振り子支持体と、前記振り子支持体に対して自由に移動可能であるとともにこれにガイドされる少なくとも1つの振り子質量体と、を備えている。少なくとも1つの第3接続部材は、振り子支持体と第2出力要素とを、直接的に、回転的に固定する。径方向サイズは維持される。また、振り子減衰器は、特に簡単かつ迅速に装置に装着される。さらに、振り子減衰器を設置しないことを選択すれば、装置の軸方向スペースが確保される。さらにまた、振り子支持体を第2出力要素に固定することにより、十分な厚さを有した振り子質量体を使用することができる。振り子減衰器のフィルタリング性能は、特に振り子質量体の質量とリンクしているため、装置は、効果的に非周期的挙動をフィルタリングすることができる。
【0028】
トルクリミッタは乾式である。トルクリミッタは、少なくとも1つの機械的エネルギー貯蔵部材を収容するスペースの外側に配置される。トルクリミッタを、グリース等の潤滑剤で充填されたこのスペースの外側に配置することにより、有機材ライニングとベルビルバネワッシャ(皿ばねワッシャ)との乾式摩擦が可能となり、最小の軸方向サイズでスリップトルクを完璧に動作制御することができる。
【0029】
ねじり振動減衰器とトルクリミッタとは、少なくとも部分的に軸方向に整列している。すなわち、ねじり振動減衰器とトルクリミッタとは、少なくとも部分的に軸方向に並んでいる。ねじり振動減衰器の少なくとも一部とトルクリミッタとが少なくとも部分的に軸方向に整列していることにより、トルクリミッタを可能な限り出力の近傍に、すなわち第2出力要素に収容することができる。この目的は、トルクリミッタの下流側の慣性を制限することであり、これによりオーバートルクが大幅に制限される。さらに、この整列配置により、トルクリミッタと少なくとも部分的に径方向に整列した追加のねじり振動減衰器を追加することができる。ねじり振動減衰器とトルクリミッタとは、トルク伝達方向において軸方向に整列している。
【0030】
装置は、ねじり振動減衰器の第1入力要素とトルクリミッタの第2出力要素との間に、転がり軸受を含んでいない。このように軸受がないことにより、製造コストが制限され得るとともに、静的不確定性のリスクが制限され得る。
【0031】
振り子減衰器は、トルクリミッタから軸方向にオフセットし得る。
【0032】
トルクリミッタにオーバートルクがかかった場合、(単数または複数)ライニングは、カバーに対して摺動し得る。
【0033】
2つのカバーの各々の少なくとも一部は、トルクリミッタの(単数または複数の)ライニングおよびディスクを取り囲むように、軸方向に離間している。これら2つのカバーは、接触可能であり、回転軸から離れる方向に移動するときには互いに離間可能である。この接触ゾーンの高さで、少なくとも1つの第2接続部材は、2つのカバーを固定させることができる。したがって、これら2つのカバーは、(単数または複数の)ライニングの側面において径方向に固定され得る。
【0034】
トルクリミッタは、回転軸を中心として回転するとともに軸方向に移動可能である駆動プレートも含み得る。駆動プレートは、2つのカバーの間に配置され得る。駆動プレートは、2つのカバーに対して回転的に固定され得る。
【0035】
(単数または複数の)ライニングは、駆動プレートとカバーのうちの一方との間に配置され得る。
【0036】
トルクリミッタがディスクの両側に配置されたライニングを備える場合、各々のライニングは、前記ディスクの面の一方の上に、および、カバーのうちの一方の面の上および駆動プレートの一面の上それぞれに載置され得る。
【0037】
トルクリミッタにオーバートルクがかかった場合、ライニングは、それらが当接するカバーおよび駆動プレートに対して、摺動可能、特に回転摺動可能であるように配置される。
【0038】
好適にはベルビルワッシャである弾性部材も、カバーのうちの一方と駆動プレートとの間に配置され得る。
【0039】
弾性部材は、ライニングの一方または両方が当接する駆動プレートの面の反対側の当該駆動プレートの面に当接し得る。
【0040】
弾性部材により、単数または複数のライニングの摩耗状態にかかわらず、駆動プレートを(単数または複数の)ライニングに接触させ続けることができる。弾性部材が圧縮応力を生じさせていることにより、較正された圧力の力を駆動プレートに常時及ぼすことができ、(単数または複数の)ライニングは、この駆動プレートとカバーとの間でつぶされ得る。
【0041】
また、本発明は、上述の装置を備える車両ドライブトレインに関する。
【0042】
ドライブトレインは、ハイブリッドエンジンまたは電気モータ、好適にはハイブリッドエンジンを含み得る車両のパワートレインの一部を形成し得る。
【0043】
さらに、本発明は、上述の装置を装着および/またはメンテナンスする方法に関する。前記方法は、以下のステップを備える。
少なくとも1つの第2接続部材をロック位置からロック解除位置に移動させるステップ。
少なくとも1つの第2ウィンドウが第1入力要素の少なくとも1つの第1ウィンドウと整列するまで、第2出力要素を角度的に移動させるステップ。
少なくとも1つの第2接続部材を、ロック解除位置からロック位置に移動させるステップ。
【0044】
「車両」とは、乗用車のみならず、特に大型貨物車を含む産業用車両、公共輸送車両、農業用車両等を含む自動車、ならびに生物および/または物体をある地点から別の地点に運ぶことを可能にするあらゆる輸送ユニットを意味するものとする。
【0045】
本発明は、非限定的な例としてなされる以下の説明を読み、添付図面を参照することで、より良く理解されるとともに、本発明のさらなる詳細、特徴および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明によるねじり振動減衰装置の一例の断面図であって、少なくとも1つの第2接続部材がロック位置にある図である。
【
図2】
図2は、
図1の断面図であって、少なくとも1つの第2接続部材がロック解除位置にある図である。
【
図3】
図3は、
図1のねじり振動減衰装置の斜視断面図である。
【
図4】
図4は、ねじり振動減衰装置の第2例の第1断面図である。
【
図5】
図5は、ねじり振動減衰装置の第2例の第2断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1~
図3は、ねじり振動減衰器3およびトルクリミッタ4を備える車両ドライブトレインのねじり振動減衰装置1を示す。
【0048】
ねじり振動減衰器3は、第1入力要素と、第1出力要素と、少なくとも1つの第1接続部材(図示せず)と、少なくとも1つの機械的エネルギー貯蔵部材と、を備え得る。第1入力要素および第1出力要素の両方は、回転軸Xを中心として回転可能である。第1入力要素は、一次フライホイール31であり得る。第1入力要素は、クランクシャフトとも呼ばれる駆動シャフトに接続可能である。第1入力要素は、少なくとも1つのウィンドウ32、好適には複数の第1ウィンドウ32を備えている。少なくとも1つの第1接続部材は、一次フライホイール31を駆動シャフトに回転的に固定するのに適している。ねじり振動減衰器3は、好適には、複数の第1接続部材を備えている。ねじり振動減衰器3は、第1ウィンドウ32と同数の第1接続部材を含み得る。ねじり振動減衰器3は、好適には、入力要素と出力要素との間に配置された複数の機械的エネルギー貯蔵部材を備えている。当該例において、機械的エネルギー貯蔵部材は、第1出力要素に対する第1入力要素の旋回に対抗する湾曲バネ9である。
【0049】
当該例において、ねじり振動減衰器3は、ねじり振動減衰器3の第1出力要素を形成する環状ウェブ10を備えている。ウェブ10は、前記ウェブ10の環状本体から径方向に延びる少なくとも2つのアームを備え得る。バネ9は、ウェブ10の2つのアームの間に受容され得る。バネ9は、それらが外れないように、一次フライホイール31およびカバーにより軸方向に保持され得るとともに、一次フライホイール31およびウェブ10により径方向に保持され得る。
【0050】
あるいは、ねじり振動減衰器3は、ねじり振動減衰器3の第1出力要素を形成する環状ウェブ10と、2つのガイドワッシャと、を備えている。これら2つのガイドワッシャは、ウェブ10の両側に装着され得る。そして、ウィンドウが、バネ9を受容するように、ウェブ10およびガイドワッシャに設けられる。また、ガイドワッシャは、これらのバネ9を、それらが外れないように、軸方向に保持する。
【0051】
バネ9は、第1入力要素とトルクリミッタ4との間に規定されたスペースに収容され得る。このスペースは、操作を容易とするとともにバネ9の寿命を延ばすようにグリースで充填され得る。このスペースはシール可能である。ねじり振動減衰器3は、シールワッシャ11をさらに含み得る。シールワッシャ11は、バネ9を包含するスペースのシールを形成するのに適合され得る。シールワッシャ11は、ねじり振動減衰器3およびトルクリミッタ4に接触し得る。シールワッシャ11により、ねじり振動減衰器3とトルクリミッタ4との間に支持部が形成されることで、ねじり振動減衰器3とトルクリミッタ4との軸方向センタリングが可能となる。対抗支持部が、ウェブ10と一次フライホイール31により支持された摩擦ワッシャとの間に作製され得る。
【0052】
トルクリミッタ4は、摩擦部材を含んでいる。トルクリミッタ4の摩擦部材は、少なくとも1つの部品と、ねじり振動減衰器3の第1出力要素に回転的に固定されたディスク6とを備え得る。トルクリミッタ4の摩擦部材の部品は、ディスク6に取り付けられた摩擦ライニング5であり得る。あるいは、トルクリミッタ4の摩擦部材の部品は、前記トルクリミッタ4のカバー15のうちの少なくとも一方、および駆動プレート16に取り付けられた摩擦ライニング5であり得る。
【0053】
第2出力要素は、ハブ41であり得る。ハブ41は、装置1をギアボックスに接続することができる従動シャフト(図示せず)に接続可能である。軸Xを中心として回転するハブ41は、トルクを従動シャフトに伝達することができる。ハブ41は、少なくとも1つの第2ウィンドウ42、好適には一次フライホイール31が備える第1ウィンドウ32と同数の第2ウィンドウ42を備え得る。各第2ウィンドウ42は、装置のドライブトレインへの装着を容易にするように、第1接続部材のうちの1つの通過を許容するように適合されている。
【0054】
当該例において、トルクリミッタ4は、特にトルク伝達方向において、ねじり振動減衰器3を軸方向に超えている。また、トルクリミッタ4の平面状のディスク6は、複数のリベットによりウェブ10に固定されている。
【0055】
トルクリミッタ4を、グリースを含むとともにバネ9を収容しているスペースの外側に配置することにより、乾式トルクリミッタ4を有することが可能となる。乾式トルクリミッタ4により、有機摩擦ライニング5との乾式摩擦が可能となるため、トルクリミッタ4の軸方向嵩を最小としつつ、スリップトルクの完全な動作制御を得ることができる。
【0056】
回転軸Xを有する環状ディスクの形状にある2つのライニング5が、リミッタのディスク6の両側に配置されている(各側に1つ-ライニング5およびディスク6は、平面状であって軸Xに対して垂直な対面する面を有している)。ライニング5は、ディスク6に、例えば複数のリベットにより固定され得る。あるいは、ライニング5は、カバー15のうちの少なくとも一方、および駆動プレート16に、好適には、各々がカバー15のうちの一方に、例えば複数のリベットによりそれぞれ固定され得る。
【0057】
当該例において、環状ディスクの形状にあるライニングに代えて、ディスク部の形状にあるライニング5が、ディスク6の両側に配置され得ることに留意されたい。
【0058】
トルクリミッタ4は、軸Xの2つの同心円状の駆動カバー15をさらに備えている。2つのカバー15は、互いに固定され得る。軸Xを中心として回転するとともに軸方向に移行可能な駆動プレート16は、2つの駆動カバー15の間に配置され得るとともに、これら2つのカバー15に回転的に固定され得る。
【0059】
ライニング5は、駆動プレート16と駆動カバー15のうちの一方との間に配置されることにより、ライニング5は、駆動カバー15のうちの一方の一面と駆動プレート16の一面とに常時当接している。
【0060】
トルクリミッタ4にオーバートルクがかかった場合、ライニング5は、それらが当接する駆動カバー15および駆動プレート16に対して回転摺動可能であるように配置されている。あるいは、ライニング5がカバー15および駆動プレート16に回転的に固定されている構成では、トルクリミッタ4にオーバートルクがかかった場合、ライニング5は、それらが当接するディスク6に対して摺動可能であるように配置される。
【0061】
当該例において、本例においてベルビルワッシャ18である弾性部材が、2つのカバー15のうちの他方と駆動プレート16との間に軸方向に配置されている。ベルビルワッシャ18は、ライニング5が当接する駆動プレート16の面の反対側の当該駆動プレート16の面に当接し得る。このベルビルワッシャ18は、これらのライニング5が摩耗したとしても、駆動プレート16をライニング5に当接し続けるようにする役割を果たす。ベルビルワッシャ18は、所定の軸方向圧力を駆動プレート16に常時及ぼすように、圧縮応力を受けている。これにより、ライニング5は、この駆動プレート16とカバー15との間で挟まれ得る。ベルビルワッシャ18が静止しているとき、ベルビルワッシャ18は、駆動プレート16に不十分な軸方向圧力しか及ぼさないため、ライニング5は、この駆動プレート16とカバー15との間で挟まれ得ない。こうして、ライニング5は、オーバートルクがなくても、カバー15に対して自由に回転摺動する。
【0062】
当該例において、ライニング5とこれらがリベット留めされたディスク6とにより形成されるアセンブリは、トルクリミッタ4にオーバートルクがかかった場合、カバー15に対して、および駆動プレート16に対して摺動可能であるように配置される。
【0063】
したがって、2つのカバー15は、ライニング5およびディスク6の枠となり、軸Xに向かって接近するにつれて、これら2つのカバー15は、接触するまで互いに近づく。この接触領域において、複数の第2接触部材により、2つのカバー15は固定され得る。複数の第2接続部材の各部材は、ネジ43であり得る。各ネジ43は、軸部および頭部を含み得る。各ネジ43は、ロック位置とロック解除位置との間で軸方向に可動である。ロック位置において、各ネジ43は、ベルビルワッシャ18に圧縮応力を生じさせていることにより、所定の軸方向圧力を摩擦部材に、より具体的には少なくとも1つのライニングおよびディスクに及ぼし得る。ロック解除位置において、各ネジ43は、ベルビルワッシャ18を静止させ得るため、ディスク6およびライニングは、カバー15に対して、またはディスク6に対して、オーバートルクを伝達することなく回転移動することができる。このように負荷がないことにより、複数の第1ウィンドウ32を複数の第2ウィンドウ42に対して角度的に再び整列させることができる。
【0064】
2つのカバー15は、少なくとも1つのネジ山45を含む。好適には、2つのカバーは、複数のネジ山45を備え、より具体的には、ネジ43毎に1つのネジ山45を備えている。各ネジ43は、2つのカバーを回転的に固定するようにネジ山45に係合することができる。2つのカバー15のうちの一方は、軸方向距離D45を有し得るネジ山45を備えている。
【0065】
静止しているとき、ベルビルワッシャ18は、第1最大軸方向距離D18を有し得る。圧縮応力を生じさせたベルビルワッシャ18は、第2最大軸方向距離D19を有し得る。ベルビルワッシャ18は、軸方向圧潰距離を有し得る。軸方向圧潰距離は、第1最大軸方向距離D18と第2最大軸方向距離D19との差である。ネジ43の軸部は、ベルビルワッシャ18の軸方向圧潰距離よりも大きいネジ山軸方向長さD43を含み得る。
【0066】
したがって、トルクリミッタ4の2つのカバー15を回転的に固定させた状態で、ベルビルワッシャ18が静止位置に向かって移動し得るように、各ネジ43はネジ山45と係合し得る。したがって、ベルビルワッシャ18から負荷を解放するために、ネジ43を完全に緩める必要はない。このため、ハブ41の各第2ウィンドウ42と、ねじり振動減衰器3の各第1ウィンドウ32と、ねじり振動減衰器3の第1接続部材とを角度的に再び整列させることが、トルクリミッタ4を完全に分解することなく、容易に実施され得る。
【0067】
ネジ山45の軸方向距離D45は、ネジ43の軸部のネジ山の軸方向長さD43よりも大きくてもよい。あるいは、ネジ山45の軸方向距離D45は、ネジ43の軸部のネジ山の軸方向長さD43と等しくてもよい。
【0068】
したがって、2つのカバー15は、ライニング5の上方において径方向に、かつ軸方向に同一高さで固定されている。これらの2つのカバー15は、ねじり振動減衰器3の第1出力要素、すなわちウェブ10に対して回転的に固定されている。より具体的には、接続部品40が、トルクリミッタ4をねじり振動減衰器3に回転的に固定することができる。接続部品40は、トルクリミッタ4のカバー15のうちの一方を形成し得る。したがって、カバー15のうちの一方、すなわち接続部品40は、ねじり振動減衰器3のウェブ10に、直接的に、すなわち中間部品を用いずに回転的に固定されている。したがって、接続部品40により、軸方向にコンパクトな装置1が得られるとともに、コスト(製造すべき部品の点数が少ない)および組み立て時間を節約できる。
【0069】
したがって、当該例において、トルクは、フライホイール31からねじり振動減衰器3に、そして第1出力要素を形成するウェブ10を経由して、トルクリミッタ4に伝達される。トルクリミッタ4は、それ自体が出力ハブ41に固定されている。
【0070】
より具体的には、ハブ41は、トルクリミッタ4のカバー15のうちの一方を形成し得る。したがって、カバー15のうちの一方、すなわちハブ41は、接続部品40に、直接的に、すなわち中間部品を用いずに回転的に固定されている。これにより、軸方向にコンパクトな装置1を得ることができるとともに、コスト(製造すべき部品の点数が少ない)および組み立て時間を節約できる。
【0071】
当該例において、トルクリミッタ4は、ディスク6を介してハブ41上でセンタリングされて配置されている。
【0072】
装置1は、追加のねじり振動減衰器をさらに含み得る。
【0073】
追加のねじり振動減衰器は、単数または複数の直列のバネであり得る。
【0074】
あるいは、追加のねじり振動減衰器は、振り子減衰器2であり得る。振り子減衰器2は、ねじり振動を減衰するのに適している。振り子減衰器2は、軸Xを中心として回転可能な振り子支持体25と、複数の振り子質量体26と、を含み得る。この振り子減衰器2は、振り子支持体25を介してハブ41に固定され得る。この固定は、少なくとも1つの第3接続部材44により、好適には複数の第3接続部材44により達成され得る。各第3接続部材44は、ネジであり得る。ネジ留めによる接続により、独立した振り子減衰器サブアセンブリ2を得ることができ、組み立て作業が容易になる。このネジ留めによる接続により、振り子減衰器2の組み立て作業の時間的構成を柔軟にすることができる。したがって、オペレータは、最終組み立て作業において、振り子減衰器2を取り付けることができる。これにより、ねじり振動減衰器3のカバーの組み立て作業が、例えば溶接により容易となり得るとともに、この組み立て作業中に振り子減衰器2が劣化するリスクが排除され得る。
【0075】
ねじり振動減衰装置1は、少なくとも1つの位置決めピン、例えば3つの位置決めピンをさらに備え得る。少なくとも1つの位置決めピンにより、振り子減衰器サブアセンブリ2を、装置1の残りの部分に対して径方向にセンタリングすることができる。この振り子減衰器2は、トルクリミッタ4から少なくとも部分的に径方向にオフセットし得る。
【0076】
当該例において、振り子減衰器2は、トルクの取る経路上のバイパスにある。
【0077】
あるいは、振り子減衰器2は、トルクの取る経路上にあり得る。
【0078】
当該例において、振り子減衰器2は、トルク伝達方向において、ねじり振動減衰器3およびトルクリミッタ4の後方に配置されている。したがって、振り子減衰器2は、トルク伝達方向において、経路の端部に配置されているため、振り子減衰器2の発散(飽和)が回避され得るとともに、例えば障害物にブレーキをかけた場合に不意に生じ得る多大な衝撃を振り子質量体26が受けないよう保護され得る。これは、非周期的なトルクがねじり振動減衰器3およびトルクリミッタ4により減衰されるためである。このように振り子減衰器2を下流に配置することにより、振り子減衰器2の機能を向上させることができる。
【0079】
当該例において、振り子減衰器2は、ねじり振動減衰器3およびトルクリミッタ4から軸方向にオフセットしている。
【0080】
振り子支持体25の外周に装着された振り子質量体26は、この支持体に対して自由に移動可能でありつつ、これにガイドされる。
【0081】
振り子質量体26は、作動中の振り子運動により各々駆動されるとともに、2つの部品27を備えている。2つの部品27は、振り子支持体25の両側に軸方向に装着されるとともに、それぞれが振り子支持体25の開口を通過する2つのスペーサ28により互いに接続されている。ローラ29が、2つの転動軌道および第3転動軌道と協働する。2つの転動軌道は、振り子質量体26の部品27の開口に各々形成されている。第3転動軌道は、振り子支持体25の開口の縁部により形成されている。この開口は、振り子支持体にあるスペーサ専用の開口とは異なる。
【0082】
あるいは、ローラ29は、スペーサ28に形成された転動軌道、および、振り子支持体25にあるスペーサ専用の開口の縁部により形成された第2転動トラックと協働する。
【0083】
これらの各場合において、複数のローラ29が、各振り子質量体26に対して設けられ得る。
【0084】
好適には、振り子質量体26およびトルクリミッタ4のライニング5は、軸方向にオフセットしている。
【0085】
ねじり振動や非周期的な回転挙動に応じて、各振り子質量体26が移動することにより、その重心が振り子状に振動する。
【0086】
当該例において、振り子質量体26とライニング5とは軸方向にオフセットしており、装置1を軸Xに沿って見た場合、これらは部分的に重なり得る。
【0087】
振り子質量体26またはライニング5の移動ゾーンは、これらの振り子質量体およびこれらのライニングが占める一連の位置である。
【0088】
振り子質量体26は、全て同一の移動ゾーンを描画する。この移動ゾーンは、ライニング5が描画する移動ゾーンと軸方向に部分的に重なる。装置1の特定の構成において、ライニング5および振り子質量体26の両方を通る軸Xに対して平行な少なくとも1つの軸が存在している。
【0089】
装置1は、ねじり振動減衰器3の一次フライホイール31とトルクリミッタ4のハブ41との間に転がり軸受を含んでいない。このように軸受がないことにより、製造コストが制限され得るとともに、静的不確定性のリスクが制限され得る。装置1は既にセンタリング手段を有しているので、転がり軸受は必要ない。トルクリミッタ4は、ハブ41によりセンタリングされている。また、ディスクが、ねじり振動減衰器3の一次フライホイールと接続部品40との径方向のセンタリングを提供する。
【0090】
ねじり振動減衰器3は、ワッシャ8をさらに含み得る。ワッシャ8は、第1接続部材の通過を許容するように適合された開口を含み得る。第1入力要素31と第2出力要素とのセンタリングは、ハブ41とワッシャ8との間で、互いに嵌合する前記2つの要素の相補的な形状を介して実施される。トルクリミッタ4の第2出力要素に対するセンタリングは、ウェブ10の内径と接続部品40の外径との間で実施される。
【0091】
オペレータが装置1を組み立てようとする場合、ねじり振動減衰器3およびトルクリミッタを手に取る。そして、ねじり振動減衰器3とトルクリミッタ4とを互いに接合する。そして、特に
図3に示すように、第1ウィンドウ32と第2ウィンドウ42とを軸方向に整列させるように、ネジ43をロック位置からロック解除位置に移動させる。そして、トルクリミッタを最適な動作位置に配置するように、ネジ43をロック解除位置からロック位置に移動させる。そして、オペレータは、ねじり振動減衰器3のカバーを一次フライホイール31に溶接し得る。この時、ねじり振動減衰器3とトルクリミッタ4とは、単一の第1サブアセンブリを形成する。そして、オペレータは、振り子減衰器2をトルクリミッタ4に組み付け得る。このために、振り子減衰器2を、トルクリミッタ4のカバー15のうちの一方を形成するハブ41に、第3接続部材44を介してネジ留めする。この時、ねじり振動減衰器3、トルクリミッタ4、および振り子減衰器2は、単一の第2サブアセンブリを形成する。最後に、組み立てラインにおいて、新たなオペレータが、第1ウィドウおよび第2ウィンドウを通過する第1接続部材を使用して、装置1を駆動シャフトに固定し得る。
【0092】
装置1のメンテナンス作業を実施する場合、第1ステップと第3接続部材44を締めること/緩めることを除き、ステップは同じである。
【0093】
図4および
図5に、車両ドライブトレイン用の第2ねじり振動減衰装置100を示す。第2ねじり振動減衰装置100は、以下に示す要素の点で、上述のねじり振動減衰装置1と異なる。
【0094】
2つのカバー15を固定するための少なくとも1つの第2接続部材は、リベット150である。したがって、2つのカバー15は、一度一体的に組み立てられると、最終的に回転的かつ並進的に互いに対して固定され、トルクリミッタ4を取り外すことはできない。
【0095】
第2ねじり振動減衰装置100は、中間部品140を備えている。中間部品140は、トルクリミッタ4のカバー15のうちの一方を形成し得る。接続部品40は、トルクリミッタ4のカバー15のうちの他方を形成し得る。
【0096】
少なくとも1つの第3接続部材44は、振り子減衰器2と中間部品140とを、直接的に、回転的に固定するように適合され得る。少なくとも1つの第3接続部材は、ネジである。より具体的には、少なくとも1つの第3接続部材44は、振り子支持体25とカバー15のうちの一方とを、直接的に、回転的に固定するように適合され得る。このネジ留めによる接続により、独立した振り子減衰器サブアセンブリ2を得ることができ、全ての組み立て作業が容易になる。また、この接続により、例えば、メンテナンス作業中に、少なくとも1つの第1接続部材にアクセスしてねじり振動減衰装置100を駆動シャフトから分離するために、振り子減衰器サブアセンブリ2を取り外すことができる。ハブ41は、第2ウィンドウ42を含まない場合もある。
【0097】
本発明は、上述の例に限定されない。