(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240527BHJP
【FI】
H01L33/00 K
(21)【出願番号】P 2022508932
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020072648
(87)【国際公開番号】W WO2021028484
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】102019121672.9
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス マイアー
(72)【発明者】
【氏名】コアビニアン ペアツルマイアー
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/44023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/301433(US,A1)
【文献】特表2016-503958(JP,A)
【文献】特開2016-76576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子半導体チップ(11)をピックアップおよびプレースするための方法であって、
電子-正孔対を光電子半導体チップ(11)内で生成し、これにより、それぞれの前記光電子半導体チップ(11)の周囲に電気双極子場を生成し、
ピックアップツール(13)が電界を発生させ、
前記光電子半導体チップ(11)を、前記電子-正孔対の生成中または生成後に、前記ピックアップツール(13)によってピックアップし、所定の場所にプレースする、
方法。
【請求項2】
前記光電子半導体チップがLEDである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電子-正孔対を生成するために、所定の波長または波長範囲を有する光(16)を前記光電子半導体チップ(11)に照射する、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記電子-正孔対を生成するための前記光(16)が、前記ピックアップツール(13)を介して前記光電子半導体チップ(11)に入射する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記光電子半導体チップ(11)がキャリア(12)上に配置されており、前記電子-正孔対を生成するための光(16)が前記キャリア(12)を介して前記光電子半導体チップ(11)に入射する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
複数の光電子半導体チップ(11)を準備し、前記電気双極子場を、前記複数の光電子半導体チップ(11)のうち選択された光電子半導体チップ(11)内でのみ生成する、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
前記ピックアップツール(13)が所定の領域内でのみ電界を発生させる、請求項
1記載の方法。
【請求項8】
前記ピックアップツール(13)が、前記光電子半導体チップ(11)に面している表面上に複数の凸部(17)を有しており、前記光電子半導体チップ(11)を前記ピックアップツール(13)の前記凸部(17)によってピックアップする、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
前記光電子半導体チップ(11)に面している前記ピックアップツール(13)の表面(21)の少なくとも一部の領域が平坦であり、前記光電子半導体チップ(11)を前記ピックアップツール(13)の平坦な領域でピックアップする、請求項
1記載の方法。
【請求項10】
前記ピックアップツール(13)が、前記光電子半導体チップ(11)の上を転がって前記光電子半導体チップ(11)をピックアップする円筒体の形状を有している、請求項
1記載の方法。
【請求項11】
前記ピックアップツール(13)によって発生させた電界を変化させて、前記光電子半導体チップ(11)をプレースする、請求項
1記載の方法。
【請求項12】
前記光電子半導体チップ(11)をピックアップするための前記ピックアップツール(13)が、前記光電子半導体チップ(11)に直接接触して、ファンデルワールス力によってこれを保持する、請求項
1記載の方法。
【請求項13】
光電子半導体チップ(11)をピックアップおよびプレースするためのデバイス(10,20)であって、
光電子半導体チップ(11)内に電子-正孔対を生成して、それぞれの前記光電子半導体チップ(11)の周囲に電気双極子場を生成するための励起素子(14)と、
前記光電子半導体チップ(11)をピックアップおよびプレースするためのピックアップツール(13)であって、電界を発生させ、続けて前記励起素子(14)によって生成された電子-正孔対を有する光電子半導体チップ(11)をピックアップし、所定の場所にプレースするように構成されているピックアップツール(13)と
を含む、デバイス(10,20)。
【請求項14】
前記励起素子(14)が、前記光電子半導体チップ(11)内に電子-正孔対を生成するための所定の波長または波長範囲を有する光(16)を生成するように形成されている、請求項13記載のデバイス(10,20)。
【請求項15】
前記励起素子(14)が、前記電子-正孔対を生成するための光(16)が、前記ピックアップツール(13)を介して、または前記光電子半導体チップ(11)が配置されたキャリア(12)を介して、前記光電子半導体チップ(11)に入射するように配置されている、請求項14記載のデバイス(10,20)。
【請求項16】
前記ピックアップツール(13)が、前記光電子半導体チップ(11)に面している表面上に複数の凸部(17)を有しており、前記光電子半導体チップ(11)が、前記ピックアップツール(13)の前記凸部(17)によってピックアップされる、請求項
13記載のデバイス(10,20)。
【請求項17】
前記光電子半導体チップ(11)に面している前記ピックアップツール(13)の表面(21)の少なくとも一部の領域が平坦であり、前記光電子半導体チップ(11)が前記ピックアップツール(13)の平坦な領域でピックアップされる、請求項
13記載のデバイス(10,20)。
【請求項18】
前記ピックアップツール(13)が、前記光電子半導体チップ(11)の上を転がって前記光電子半導体チップ(11)をピックアップする円筒体の形状を有している、請求項
13記載のデバイス(10,20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月12日付けにてドイツ特許商標庁に出願された独国特許出願第102019121672.9号明細書の優先権を主張するものである。独国特許出願第102019121672.9号明細書の開示内容は、参照により本出願の開示内容に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイスに関するものである。
【0003】
光電子半導体チップ、特にLED(英語:light emitting diode)は、ボードに実装される前に、従来のいくつかの組立て工程でテストされ、必要に応じて選別される。しかしながら、これには非常に時間がかかり、高額な追加コストを伴うことが少なくない。
【0004】
本発明は、中でも、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースし、同時に特定の欠陥を有する光電子半導体チップを選別することができる方法の規定を課題としている。さらに、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための対応する装置を作ることを目的としている。
【0005】
本発明の1つの課題は、請求項1の特徴を有する光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法によって解決される。本発明の更なる課題は、独立請求項13の特徴を有する光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするためのデバイスによって解決される。本発明の好ましい構成形態および更なる発展形態は、従属請求項に示されている。
【0006】
光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための本発明による方法は、電子-正孔対を光電子半導体チップ内に生成することを含んでいる。
【0007】
光電子半導体チップは、それぞれの場合において、光学活性領域とも呼ばれる感光性領域を有する半導体層を有していてよい。この領域は、例えば、発光ダイオードの活性ゾーンであってもよい。感光性領域では、電荷キャリアもしくは電子-正孔対が、対応する励起、特に入射光によって生成されることができる。
【0008】
電子-正孔対は、欠陥電子と、エネルギーを吸収して結晶内の基底状態から励起状態に移行した電子とから構成されている。
【0009】
半導体材料の適切な特性、例えばpn接合のようにドーパントの濃度が異なる2つの領域があると、電子-正孔対を互いに分離することができる。これにより、それぞれの半導体チップに電荷が発生し、半導体チップの外側に双極子場が発生する。このプロセスは、光起電力効果としても知られている。
【0010】
それぞれの半導体チップで発生する双極子場の強さは、半導体チップの特性に依存している。半導体チップは、短絡、シャントまたは低効率などの欠陥を有している場合があり、これにより、励起で発生した電荷の流出が加速され、双極子場が弱まる。
【0011】
さらに、本発明による方法によれば、光電子半導体チップをピックアップし、これらを所定の位置もしくは場所、例えば光電子半導体チップが実装されるボード上に配置するために用いられるピックアップツールが準備される。このプロセスは、英語の技術文献では「ピックアンドプレース」とも呼ばれている。
【0012】
本発明によれば、ピックアップツールは、少なくとも特定の位置で電界を発生させ、例えば、これらの場所で帯電する。電子-正孔対の生成中または生成後に、ピックアップツールによって光電子半導体チップがピックアップされる。
【0013】
ピックアップツールで発生した電界は、光電子半導体チップの双極子場と相互作用することで、ピックアップツールと光電子半導体チップとの間に吸引力さらには反発力も発生する。電子-正孔対による電気双極子場がない場合でも、静電的な相互作用もしくは力が、ピックアップツールと光電子半導体チップとの間に存在する相互作用もしくは力に重なり合うことがある。例えば、励起で発生した双極子電荷がない場合でも、ピックアップツールとそれぞれの光電子半導体チップとの間にファンデルワールス引力または静電引力が存在することがある。追加の静電引力により、光電子半導体チップが配置されたキャリアから光電子半導体チップが切り離され、ピックアップツールによってピックアップされる閾値を超えることができる。
【0014】
キャリアから光電子半導体チップを取り外すのに必要な力は、取り外された光電子半導体チップをピックアップツールで保持するのに必要な力より大きくてもよい。したがって、状況次第では、静電力は光電子半導体チップを取り外すためにのみ必要であり、保持するためには必要ない場合もある。その結果、双極子電界の存在は、光電子半導体チップを取り外すためにのみ必要であり、その後の光電子半導体チップの保持には必ずしも必要ではない。
【0015】
特定の欠陥、例えば短絡、シャント、低効率などの欠陥を有する光電子半導体チップは、このような欠陥を有しない光電子半導体チップよりも励起時の双極子電界が低くなる。それに従って、ピックアップツールと欠陥のある光電子半導体チップとの間の静電相互作用は非常に小さいため、ピックアップツールによってピックアップされ得ず、キャリア上に残ることになる。本発明により、欠陥のある光電子半導体チップをピックアップせず、したがって実装しないことも可能になり、欠陥のある光電子半導体チップの組立てに起因した修理作業を大幅に減らすことができる。しかしながら、機能的な、すなわち「良好な」光電子半導体チップを、ピックアップツールでピックアップし、例えば新しいキャリアに移すことができる。
【0016】
適切な構成により、代替的に、双極子場を弱める特定の欠陥を有する光電子半導体チップがピックアップツールによってピックアップされ、より強い双極子場を有する「良好な」光電子半導体チップがピックアップツールによって弾かれてキャリア上に残るようにすることもできる。また、本構成も、光電子半導体チップの良品と欠陥品とを分離する。
【0017】
ピックアップツールは、電界を発生させるのに適した材料で作られていてもよい。例えば、ピックアップツールは、金属コンタクトが埋め込まれているポリジメチルシロキサン(略してPDMS)を有していてもよい。金属コンタクトは、電界を発生させるためにPDMS材料を適切に帯電させるために電圧源に接続されていてもよい。
【0018】
さらに、ピックアップツールは、それ自体で電界を生成する適切な帯電材料で作られていてもよい。
【0019】
電界を発生させるための別のオプションは、例えば、ピックアップツール内またはその表面上のコンタクトと電圧を介して電界を発生させることである。
【0020】
また、電界はピックアップツールと電気的コンタクトとの間にも広がっていてよく、ピックアップツールと電気コンタクトとの間には光電子半導体チップが配置されている。電気的コンタクトは、例えば、光電子半導体チップがプレースされたキャリアであってよく、これに組み込まれたりしていてもよい。
【0021】
光電子半導体チップは、半導体ウェハ上で製造した後、例えばソーイングによって個片化することができる。個片化後の光電子半導体チップは、本明細書に記載されている方法でボードまたは他のキャリアに実装することができる。
【0022】
光電子半導体チップが放出する電磁放射は、例えば、可視域の光、紫外(UV)光および/または赤外光であってもよい。
【0023】
光電子半導体チップは、例えば、発光ダイオード(英語:light emitting diode;略してLED)、有機発光ダイオード(英語:organic light emitting diode;略してOLED)、発光トランジスタまたは有機発光トランジスタとして構成されていてもよい。さまざまな構成形態において、光電子半導体チップは集積回路の一部であってもよい。
【0024】
このようなLEDは、例えば、ビデオウォール、建物および乗り物における照明器具、またはアンビエント照明もしくはインテリア照明に使用することができる。このようなLEDは、個々のLEDが設置されている大面積のマトリクスにも使用される。
【0025】
光電子半導体チップは、例えば、太陽電池であってもよい。
【0026】
一構成形態によれば、光電子半導体チップは、100μm超の範囲のエッジ長さを有するLEDとして構成されている。例えば、LEDは、250μm~600μmの範囲のエッジ長さを有している。このようなLEDは、例えば、上述の用途例に特に適している。
【0027】
電子-正孔対を生成するための光電子半導体チップの励起は、光電子半導体チップに光、特にUV光を照射することで行うことができる。光スペクトルは、励起、特にフォトルミネッセンス励起を可能にする層システムを有していなければならない。特に、励起光は光電子半導体チップから放出される光線よりも高いエネルギーを有していなければならない。その結果、励起光の波長は、光半導体チップが発する光線の波長よりも短くなくてはならない。例えば、青色のLEDは約460nmの光を発する。この場合、励起光は440nm以下の波長を有することが望ましく、例えば約420nmの波長を有することが望ましい。
【0028】
電子-正孔対を生成するために使用される光は、ピックアップツールを通って光電子半導体チップに当たることができる。これを可能にするために、ピックアップツールは、少なくとも部分的に、光に対して透明もしくは透過性のある材料からなっていてよい。さらに、ピックアップツールには、光が光電子半導体チップに到達するための開口部または導光体が組み込まれていてもよい。
【0029】
光電子半導体チップは、ピックアップツールでピックアップされる前に、キャリアもしくは基板上に配置されていてもよい。電子-正孔対を生成するための光は、キャリアもしくは基板を透過して光電子半導体チップに当たることができる。このためにキャリアもしくは基板の少なくとも一部は、光に対して少なくとも部分的に透明もしくは透過性のある材料から作製されていてもよいし、キャリアもしくは基板に開口部または導光体が組み込まれたりしていてもよい。
【0030】
あるいは光電子半導体チップに対して、光を横方向または斜め方向から照射してもよい。
【0031】
電子-正孔対は、光電子半導体チップのすべてで生成されるのではなく、一部の光電子半導体チップでのみ選択的に生成されることが規定されていてもよい。例えば、多数の光電子半導体チップが準備され、電子-正孔対は、多数の光電子半導体チップのうち選択された光電子半導体チップにおいてのみ生成されるようにしてもよい。次いでまた、欠陥のある光電子半導体チップを除いて、これらの光電子半導体チップのみがピックアップツールでピックアップされる。光電子半導体チップの選択的な励起は、例えば、電子-正孔対を生成するための光をマスクに通すことで行うことができる。
【0032】
光電子半導体チップの選択したものだけをピックアップするための別の可能性は、ピックアップツールが所定の領域のみに電界を発生させることにある。これは、例えば、ピックアップツールに埋め込まれた金属コンタクトが少なくとも部分的に個別に駆動制御可能であることによって可能になり得る。
【0033】
一構成によれば、ピックアップツールは、光電子半導体チップに面している表面に多数の凸部もしくはスタンプを有している。ピックアップツールを下ろすと、凸部のみが半導体光電子チップと接触するため、これらの凸部のみが光電子半導体チップをピックアップすることができる。凸部の間にある領域と、凸部の外側にある領域とはいずれも、光電子半導体チップをピックアップしない。
【0034】
あるいはピックアップツールは、少なくとも1つの領域において、光電子半導体チップをピックアップするために指定された連続した平坦面を有していてもよい。これにより、異なるパターンおよび/または間隔で配置された光電子半導体チップをピックアップすることができるため、自由度がより高まる。
【0035】
ピックアップツールは、例えば、光電子半導体チップが製造され、引き続き、例えばソーイングによって個片化される半導体ウェハとほぼ同じ大きさにすることができる。
【0036】
さらに、ピックアップツールは、光電子半導体チップの上を転がって光電子半導体チップをピックアップする円筒体の形状を有していてよい。例えば、ピックアップツールは、レーザープリンターのドラムのような形状をしていてよい。円筒状のピックアップツールを光電子半導体チップの上に移動させて、光電子半導体チップをピックアップすることができる。あるいは円筒状のピックアップツールの回転軸を固定し、光電子半導体チップを有するキャリアをピックアップツールの下にスライドさせることも可能である。
【0037】
光電子半導体チップをプレースするために、金属コンタクトを介してピックアップツールの電荷を変化させることができる。例えば、金属コンタクトの極性を逆にすることも可能である。これにより、ピックアップツールと電子-正孔対によって分極された光電子半導体チップとの間に反発的な電気的相互作用が生じる。
【0038】
さらに、ピックアップツールの特定の場所だけ、または特定の領域だけ電荷を変化させて、選択的に特定の光電子半導体チップをプレースすることも可能である。
【0039】
光電子半導体チップをプレースするための別の可能性は、ピックアップツールと光電子半導体チップとの間の吸引力よりも大きい付着力を、光電子半導体チップが適用されるキャリアもしくは基板が発生させることにある。例えば、キャリアもしくは基板の表面に、接着剤、ワニス、はんだ材料などの適切な材料がコーティングされていてよい。
【0040】
さらに、光電子半導体チップは、例えば剪断力または加速力などの機械的な力によってピックアップツールから切り離すことができる。
【0041】
一構成によれば、ピックアップツールは、光電子半導体チップに直接接触してこれらをピックアップする。光電子半導体チップを転写する際、ピックアップツールはファンデルワールス力でチップを保持する。
【0042】
本発明によるデバイスは、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするためのものである。このデバイスは、例えば、自動組立機であってもよいし、自動組立機に組み込まれていてもよい。
【0043】
このデバイスは、光電子半導体チップに電子-正孔対を生成するための励起素子と、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするためのピックアップツールとを含んでいる。電子-正孔対は、光電子半導体チップの近傍で電気双極子場を発生させる。ピックアップツールは、光電子半導体チップの電気双極子場と相互作用する電界を発生させて、これらをピックアップすることができるように構成されている。ピックアップされた光電子半導体チップは、所定の場所に移動され、その箇所でプレースされる。
【0044】
一構成によれば、励起素子は、光電子半導体チップに電子-正孔対を生成するための所定の層システムを有する光を生成するように構成されている。例えば、励起素子は、光源および/または導光体を含んでいてもよい。
【0045】
励起素子は、電子-正孔対を生成するための光が、ピックアップツールを通って、または光電子半導体チップが配置されたキャリアを通って、光電子半導体チップに入射するように配置されていてもよい。
【0046】
ピックアップツールは、半導体光電子チップに面している表面に多数の凸部を有していてもよい。光電子半導体チップは、ピックアップツールの凸部でピックアップすることができる。
【0047】
あるいは光電子半導体チップに面しているピックアップツールの表面の少なくとも一部は、全体的に平面であり、光電子半導体チップをピックアップするように構成されていてもよい。
【0048】
さらに、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするデバイスは、上述した光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法の構成を有していてもよい。
【0049】
さらに、半導体チップの製造プロセスでは、個々のバッチ内で小さなばらつきがあり、ひいては個々の半導体チップ間で小さな差異が生じる可能性がある。色温度(ケルビン)もしくは色と、光束(ルーメン)、必要な順方向電圧とは、製造バッチ内で異なる場合がある。そのため、例えば個々の照明器具に搭載される半導体チップは、僅かに異なる場合がある。
【0050】
所望の品質に応じて測度が広くなったり狭くなったりする半導体チップを、異なるビン(領域)に分類することができる。このプロセスは「ビニング」と呼ばれる。
【0051】
引き続き、これらの個々のビンから、半導体チップを、例えば個々の照明器具またはビデオウォールにおいて、照明器具またはビデオウォールの均一で所望の色温度もしくは色が画像全体で実現されるように選択し、互いに配置することができる。
【0052】
したがって、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法もしくはデバイスは、例えば、色温度もしくは色と光束とに応じて半導体チップをピックアップし、対応するビンにプレースするか、あるいは所望の組み合わせに応じて異なる色温度を有する半導体チップをピックアップして、新しいキャリアまたはケーシング部品に移すことに適したものであり得る。
【0053】
さらに、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法もしくはデバイスは、光電子半導体チップ、あるいは半導体チップの中間段階を、例えば半導体チップの個片化前に、所定のケーシング部品ひいては最終製品もしくはパッケージに移すのにも適したものであり得る。同時に、例えば、構造素子の品質および/または機能を確認することができる。したがって、半導体チップの品質および/または機能をウェハレベルで個別に確認するという追加のステップは省略することができる。これにより、例えば、半導体チップが所定のケーシング部品ひいては最終製品もしくはパッケージに既に挿入された状態でのみ、半導体チップのビニングが行われることが可能となり得る。この場合も、半導体チップの品質および/または機能をウェハレベルで個別に確認するという追加のステップを省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
以下では、本発明の構成例について、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。これらは概略的に示されている。
【
図1A】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイスを示す図である。
【
図1B】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイスを示す図である。
【
図1C】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイスを示す図である。
【
図1D】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法およびデバイスを示す図である。
【
図2】光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための更なるデバイスを示す図である。
【
図3A】円筒形のピックアップツールを用いて光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法を示す図である。
【
図3B】円筒形のピックアップツールを用いて光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするための方法を示す図である。
【
図4】光電子半導体チップをピックアップするための凸部を有するピックアップツールを示す図である。
【
図5】光電子半導体チップを選択的に照射するピックアップツールを示す図である。
【
図6】光電子半導体チップをピックアップするための平坦な表面を有するピックアップツールを示す図である。
【
図7A】光電子半導体チップをプレースするための方法を示す図である。
【
図7B】光電子半導体チップをプレースするための方法を示す図である。
【
図7C】光電子半導体チップをプレースするための方法を示す図である。
【
図8A】ピックアップツールによって電界を生成するための構成を示す図である。
【
図8B】ピックアップツールによって電界を生成するための構成を示す図である。
【
図8C】ピックアップツールによって電界を生成するための構成を示す図である。
【0055】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成し、本発明を実施することができる特定の構成例が例示目的で示されている添付の図面が参照される。構成例のコンポーネントはいくつかの異なる方向に配置される可能性があるため、方向性を示す用語は説明のためのものであり、決して限定的なものではない。自明のことながら、保護範囲を逸脱することなく、他の構成例を使用したり、構造的または論理的な変更を行ったりしてもよい。自明のことながら、本明細書に記載されているさまざまな構成例の特徴は、特に示されていない限り、互いに組み合わせることができる。したがって、以下の詳細な説明は、制限的な意味で理解されるものではない。図中、同一または類似の要素には、適切な範囲で同一の参照符号が付されている。
【0056】
図1Aは、本発明による一構成例として、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするためのデバイス10を概略的に示している。
【0057】
本構成例では、光電子半導体チップはLED11として形成され、キャリア12上に互いに離間して配置されている。
【0058】
デバイス10は、ピックアップツール13、励起素子14および電圧源15を有している。
【0059】
励起素子14は、LED11が照射される光16を発する。励起素子14が発する光16は、励起によってLED11の光学活性領域に電子-正孔対を生成する波長を含んでいる。電子-正孔対は、LED11内で静電分極を引き起こし、これにより、それぞれのLED11の近傍で電気双極子場を発生させる。
【0060】
本構成例では、ピックアップツール13は、励起素子14とLED11との間に配置されている。ピックアップツール13は、励起素子14が発する光16に対して少なくとも部分的に透過性であり、光16がLED11に達することができるようになっている。
【0061】
ピックアップツール13は、例えば、ポリジメチルシロキサン(略してPDMS)または他の適切な材料に埋め込まれた金属コンタクトを有している。金属コンタクトは電圧源15に接続されている。金属コンタクトに電圧をかけることで静電界を発生させることができる。
【0062】
さらに、ピックアップツール13は、ピックアップツール13の下側の表面からLED11に向かって延びる凸部17を有している。
【0063】
図1A~
図1Dを参照することで、本発明による一構成例として、デバイス10を用いてLED11をピックアップおよびプレースするための方法を以下に説明する。
【0064】
励起素子14が発する光16は、励起とそれに伴う静電分極とをLED11に引き起こす。同時に、ピックアップツール13は、ピックアップツール13とLED11との間で吸引的な相互作用が生じるように、電圧源15によって充電される。
【0065】
ピックアップツール13は、凸部17が、その下にあるLED11に接触するまで、LED11に向かって下降する。本構成例では、LED11が1つ置きに、凸部17の1つに接触している。
【0066】
引き続き、
図1Bが示すように、ピックアップツール13は、LED11が凸部17に付着した状態で一緒にリフトアップされる。
図1Cは、
図1Bの拡大図である。
図1Cは、ピックアップツール13の容量とLED11の分極とを示している。簡単化のために、励起素子14と電圧源15とは、
図1Bおよび後続のいずれの図にも示していない。
【0067】
凸部17の間に位置するLED11は、ピックアップツール13によってリフトアップされない。さらに、励起素子14が発する光16が、LED11の欠陥に基づき僅かしか分極を起こさないか、または全く分極を起こさない場合、LED11はリフトアップされない。これらのLED11は、
図1A~
図1Cでは暗色で強調されている。欠陥のないLED11と比較して分極が小さいため、LED11を事前にテストする必要なしに、対応する欠陥を有するLED11を選別することが可能である。
【0068】
引き続き、
図1Dが示すように、ピックアップツール13によってLED11を所望の位置に移動させ、そこに設置する。
【0069】
図2は、本発明による更なる構成例として、光電子半導体チップをピックアップおよびプレースするためのデバイス20を概略的に示している。
図2に示すデバイス20は、
図1Aのデバイス10とほぼ同じである。異なる点は、
図2の励起素子14が、LED11が配置されたキャリア12の下方に配置されていることである。この場合、LED11においてフォトルミネッセンス励起が起こり得るためには、励起素子14が発する光16に対してキャリア12が少なくとも部分的に透過性でなければならない。
【0070】
図3Aは、レーザープリンターのドラムのように構成されていてよい円筒状に形成されたピックアップツール13を概略的に示している。ピックアップツール13は、フォトルミネッセンス励起によって起こる分極に基づき、ピックアップツール13の表面と、その下にあるLED11との間で吸引的な相互作用が生じるように静電的に帯電されている。
【0071】
図3Bに示すように、円筒状のピックアップツール13をキャリア12上で転がし、その際、入射光16によって十分な分極が発生したLED11をピックアップする。
【0072】
図4は、ピックアップツール13の下に配置されたLED11の方向に向かって延びる凸部17をその下側に有するピックアップツール13を概略的に示している。
図4には示されていない励起素子14が発する光16は、ピックアップツール13を通過してLED11に入射する。
【0073】
光16の通過を可能にするために、ピックアップツール13は、光16に対して少なくとも部分的に透過性の材料で作られていてよく、あるいは対応する光路開口部または導光体がピックアップツール13に組み込まれていてもよい。
【0074】
図5は
図4のピックアップツール13を示しているが、
図5では特定のLED11のみが選択的に光16で照射され、例えばLED11は1つ置きに照射される。これを可能にするために、対応する光路開口部または導光体がピックアップツール13に組み込まれていてもよいし、または対応する遮光マスクを設けて、光16が特定のLED11のみに当たるようにすることもできる。その結果、光16が照射されたLED11のみがフォトルミネッセンス励起され、フォトルミネッセンス励起により十分な分極を形成していれば、これらのLED11のみをピックアップツール13でピックアップすることができる。
【0075】
図6は、下側に連続した平坦表面21を有するピックアップツール13を概略的に示している。平坦表面21は、異なるパターンおよび/または異なる間隔で配置されたLED11をピックアップすることを可能にする。
【0076】
さらに、遮光要素、例えばマスクを設けることで、特定のLED11のみを選択的にフォトルミネッセンス励起させることも可能である。
【0077】
図7A~
図7Cは、LED11のプレース中のデバイス10を示している。
図1A~
図1Dに示すようにLED11をピックアップした後、ピックアップツール13を、LED11のいくつかが実装される
図7Aに示すボードへと移動させる。
【0078】
図7Bに示す電圧源15によって、ピックアップツール13とLED11との間の吸引的な相互作用が減少するか、または反発的な相互作用へ変換されるように、ピックアップツール13の電荷が変更される。ピックアップツールの個別に駆動制御可能な金属コンタクトを用いて、ピックアップツールの特定の領域の電荷を所望の方法で変化させることで、所定の数のLED11のみをボード22上に置けるようになる。引き続き、
図7Cに示すように、ピックアップツール13がボード22から遠ざけられる。ピックアップツール13上に残ったLED11は、例えば清浄用の接着ストリップを使って、他の場所で除去するかまたは脱落させることができる。
【0079】
図8A~
図8Cは、ピックアップツール13によって電界を発生させることができるさまざまなオプションを概略的に示している。
図8A~
図8Cに示す力線23は、それぞれの位置における電界の方向と強さを示している。
【0080】
図8Aに示す構成では、ピックアップツール13の凸部17に電荷が存在している。ピックアップツール13の近傍には対向電荷が配される。これにより、各凸部17の近傍には、点電荷の電界に似た電界が発生する。
【0081】
図8Bでは、凸部17の先端の電界強度が特に高くなるように、ピックアップツール13に双極子電荷が配される。
【0082】
図8Cでは、ピックアップツール13の凸部17は帯電しており、キャリア12の下方に対向電荷が配されているため、ピックアップされるLED11は、ピックアップツール13と対向電荷との間、ひいては電界内に位置する。
【0083】
ピックアップツール13によって生成される電界は、LED11がキャリア12によってピックアップされるように、LED11の双極子に有効な力を及ぼすために、均一でないことが望ましい。
【0084】
さらに、
図8A~
図8Cは、励起により発生したLED11の電気力線24を示している。LED11の電気力線24とピックアップツール13の力線23との相互作用については、簡単化のために図示していない。
【符号の説明】
【0085】
10 デバイス
11 LED
12 キャリア
13 ピックアップツール
14 励起素子
15 電圧源
16 光
17 凸部
20 デバイス
21 表面
22 ボード
23 ピックアップツールの力線
24 半導体チップの力線