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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電磁歪み検出及び補償
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240527BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20240527BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240527BHJP
【FI】
A61B1/00 552
A61B1/045 623
A61B34/20
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022514205
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2020058141
(87)【国際公開番号】W WO2021044297
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】62/895,272
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】グレッツェル・チョーンシー・エフ
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン・スバシニ
(72)【発明者】
【氏名】マリニン・ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】コンドゥリ・シャイヤムプラサド
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0000560(US,A1)
【文献】特表2020-526251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0000559(US,A1)
【文献】特表2020-526253(JP,A)
【文献】特開2008-302221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 34/20 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
1つ又は2つ以上の電磁(EM)センサのセットを備える医療用器具である器具であって、前記EMセンサが、前記器具の遠位端の位置を示すEM場所データを生成するように構成されている、器具と、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
少なくとも1つのコンピュータ可読メモリであって、前記1つ又は2つ以上のプロセッサと通信し、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記EM場所データに基づいて第1の時間における前記器具の前記遠位端の基準位置を判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データによって示される前記器具の前記遠位端の前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリと、を備える、システム。
【請求項2】
前記現在のオフセットが、EM歪みの源の移動、又は前記EM歪みの前記源内の電流の流れの変化によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を更に行わせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをゼロにリセットすることと、を更に行わせる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定することと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することと、を更に行わせ、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EM場所データから歪みパターンをフィルタリングすること、を更に行わせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記歪みパターンが、複数のEM歪みケース及び複数の標準器具駆動ケースの分析に基づいて識別される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
EM歪みの源の移動の前に、ナビゲーションを停止するためのユーザ命令を受信することと、
ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信することに応答して、前記EM場所データに基づく前記器具の前記遠位端の前記判定された場所の移動を停止することと、
ナビゲーションの停止を解除するためのユーザ命令を受信することと、を更に行わせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記現在のオフセットを判定することが、ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信する前と、ナビゲーションの停止を解除するための前記ユーザ命令を受信した後との間の、前記器具の前記遠位端の前記判定された位置の差に更に基づく、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
1つ又は2つ以上のプロセッサを有するシステムの、電磁(EM)歪みを補償する作動方法であって、
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、
EM場所データに基づいて、第1の時間における医療用器具である器具の遠位端の基準位置を判定することであって、前記器具が、前記器具の前記遠位端の位置を示す前記EM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサを備える、判定するステップと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定するステップと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定するステップと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データによって示される前記器具の前記遠位端の前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定するステップと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定するステップと、を実行することを含む、作動方法。
【請求項11】
前記現在のオフセットが、EM歪みの源の移動によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを含む、請求項10に記載の作動方法。
【請求項12】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定するステップと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定するステップと、
前記第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成するステップと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定するステップと、を更に実行することを含む、請求項10に記載の作動方法。
【請求項13】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定するステップと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをゼロにリセットするステップと、を更に実行することを含む、請求項12に記載の作動方法。
【請求項14】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、実行されるときに、少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
EM場所データに基づいて、第1の時間における医療用器具である器具の遠位端の基準位置を判定することであって、前記器具が、前記器具の前記遠位端の位置を示す前記EM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサを備える、判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記第2の時間に対応する前記EM場所データによって示される前記器具の前記遠位端の前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせる命令を更に記憶した、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをゼロにリセットすることと、を行わせる命令を更に記憶した、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、
予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定するステップと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定するステップと、を更に実行することを含み、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、請求項10に記載の作動方法。
【請求項18】
前記1つ又は2つ以上のプロセッサが、
カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EM場所データから歪みパターンをフィルタリングするステップと、を更に実行することを含む、請求項10に記載の作動方法。
【請求項19】
実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定することと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することと、を行わせる命令を更に記憶しており、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EM場所データから歪みパターンをフィルタリングすること、を行わせる命令を更に記憶した、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年9月3日に出願の米国仮出願第62/895,272号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、ロボット制御可能な医療用システムにおける電磁(electromagnetic、EM)歪みの検出のためのシステム及び方法に関し、より具体的には、患者内の医療用器具のナビゲーション及び位置特定に使用されるEMベースのナビゲーションシステムに影響を及ぼし得る検出されたEM歪みを補償することに関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡検査(例えば、気管支鏡検査)などの医療処置では、診断及び/又は治療目的で患者の管腔ネットワーク(例えば、気道)の内部にアクセスしそれの視覚化を行う場合がある。外科用ロボットシステムは、例えば、内視鏡処置中の内視鏡など、外科用ツールの挿入及び/又は操作を制御するために使用される場合がある。外科用ロボットシステムは、処置中に外科用ツールの位置決めを制御するために使用されるマニピュレータアセンブリを含む少なくとも1つのロボットアームを備え得る。外科用ツールは、検出された電磁(EM)場に基づいて、患者の管腔ネットワークを通してナビゲートされ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のシステム、方法及びデバイスはそれぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、そのうちの1つとして本明細書に開示される望ましい属性を単独で司るものではない。
【0005】
一態様では、システムが提供され、このシステムは、1つ又は2つ以上の電磁(EM)センサのセットを備える器具であって、EMセンサが、器具の遠位端の1つ又は2つ以上の位置を示すEM場所データを生成するように構成されている、器具、又はより多くのプロセッサと、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリであって、1つ又は2つ以上のプロセッサと通信し、1つ又は2つ以上のプロセッサに、EM場所データに基づいて第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することと、第2の時間における器具の遠位端が静的であると判定することであって、第2の時間が、第1の時間に続く、判定することと、第2の時間におけるEM場所データが、基準位置から閾値距離より大きく変化した第2の時間における器具の遠位端の位置を示すことを判定することと、第2の時間における位置と第1の時間における基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、EM場所データ及び現在のオフセットに基づいて、器具の遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリと、を備える。
【0006】
別の態様では、電磁(EM)歪みを補償する方法が提供され、この方法は、EM場所データに基づいて、第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することであって、器具が、器具の遠位端の位置を示すEM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサのセットを備える、判定することと、第2の時間における器具の遠位端が静的であると判定することであって、第2の時間が、第1の時間に続く、判定することと、第2の時間におけるEM場所データが、基準位置から閾値距離より大きく変化した第2の時間における器具の遠位端の位置を示すことを判定することと、第2の時間における位置と第1の時間における基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、EM場所データ及び現在のオフセットに基づいて、器具の遠位端の補償された位置を判定することと、を含む。
【0007】
更に別の態様では、命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供され、これらの命令は、実行されるときに、少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、EM場所データに基づいて、第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することであって、器具が、器具の遠位端の位置を示すEM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサのセットを備える、判定することと、第2の時間における器具の遠位端が静的であると判定することであって、第2の時間が、第1の時間に続く、判定することと、第2の時間におけるEM場所データが、基準位置から閾値距離より大きく変化した第2の時間における器具の遠位端の位置を示すことを判定することと、第2の時間における位置と第1の時間における基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、EM場所データ及び現在のオフセットに基づいて、器具の遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせる。
【0008】
更にまた別の態様では、システムが提供され、このシステムは、1つ又は2つ以上の場所センサのセットを備える器具であって、場所センサが、器具の遠位端の位置を示す場所データを生成するように構成されている、器具と、1つ又は2つ以上のプロセッサのセットと、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリであって、1つ又は2つ以上のプロセッサのセットと通信し、1つ又は2つ以上のプロセッサに、場所データに基づいて第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することと、第2の時間における器具の遠位端が静的であると判定することであって、第2の時間が、第1の時間に続く、判定することと、第2の時間におけるEM場所データが、基準位置から閾値距離より大きく変化した第2の時間における器具の遠位端の位置を示すことを判定することと、場所データと、第2の時間における器具の遠位端の位置が基準位置から閾値距離より大きく変化したという判定とに基づいて、器具の遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示される態様は、以下、添付の図面と併せて説明され、開示された態様を例示するが、限定するものではなく、同様の称号は同様の要素を示す。
図1】診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置のために配置されたカートベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図2図1のロボットシステムの更なる態様を示す。
図3】尿管鏡検査のために配置された図1のロボットシステムの実施形態を示す。
図4】血管処置のために配置された図1のロボットシステムの実施形態を示す。
図5】気管支鏡検査処置のために配置されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図6図5のロボットシステムの代替的な図を提供する。
図7】ロボットアームを収容するように構成された例示的なシステムを示す。
図8】尿管鏡検査処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図9】腹腔鏡処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図10】ピッチ又は傾斜調整を備えた図5図9のテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図11図5図10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインターフェースの詳細な図示を提供する。
図12】例示的な器具ドライバを示す。
図13】ペアの器具ドライバを備えた例示的な医療用器具を示す。
図14】駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。
図15】例示的な実施形態による、図13図14の器具の場所などの、図1図10のロボットシステムの1つ又は2つ以上の要素の場所を推定する位置特定システムを示すブロック図を示す。
図16】開示されたナビゲーションシステム及び技法の1つ又は2つ以上の態様を実装する例示的な手術環境を示す。
図17図16の手術環境内でナビゲートすることができる例示的な管腔ネットワーク140を示す。
図18】本明細書に記載される撮像及びEM感知能力を有する例示的な内視鏡の遠位端を示す。
図19A】局所的EM歪みを示し得るメトリックの変化を示すメトリックのグラフを提供する。
図19B】局所的EM歪みを示し得るメトリックの変化を示すメトリックのグラフを提供する。
図19C】局所的EM歪みを示し得るメトリックの変化を示すメトリックのグラフを提供する。
図20】局所的EM歪みが発生したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。
図21】本開示の態様による、大域的EM歪みを検出するために使用され得るシステムの実施形態を示す。
図22】大域的EM歪みが発生したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。
図23】患者及びEM場生成器のうちの1つが移動したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。
図24】EMパッチセンサ105がEM場生成器の作業ボリューム内に置かれる例を提供する。
図25】本開示の様々な態様を実行することができるEM追跡システムの例を示すブロック図を示す。
図26】本開示の態様による、EM歪みを検出するための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な例示的な方法を示すフローチャートである。
図27】本開示の態様による、EM歪みを検出するための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図28】本開示の態様による、場生成器によって生成されたEM場内のEMセンサの位置決めを容易にするための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な更に別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図29】本開示の態様による、患者又はEM場生成器のうちの少なくとも1つの移動を検出するための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な更に別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図30A】本開示の態様による、EM歪みを補償するための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な例示的な方法を示すフローチャートである。
図30B】本開示の態様による、EM歪みを補償するための、EM追跡システム又はその構成要素によって実施可能な例示的な方法を示すフローチャートである。
図31A】経時的なEM位置特定に関連するいくつかの追跡された値を示す例示的なプロットである。
図31B】EM歪み補償を伴わないEMデータに基づいて判定された、医療用器具の遠位端の位置の視覚化を提供する。
図31C】EM歪み補償を伴うEMデータに基づいて判定された、医療用器具の遠位端の位置の視覚化を提供する。
図32A】経時的なEM位置特定に関連するいくつかの追跡された値を示す別の例示的なプロットを示す。
図32B】EM歪み補償を伴わない、及びEM歪み補償を伴うEMデータに基づいて判定された、医療用器具の遠位端の位置の視覚化を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態は、EMデータに依存する位置特定及び/又はナビゲーションシステムに誤差を引き起こし得る電磁(EM)歪みの検出及び/又は緩和のためのシステム及び技術に関する。いくつかの可能なEM歪み源があり、これは、歪みの極端な場合には、EMデータを信頼できなくさせる場合がある。本開示の追加の実施形態は、患者及び/あるいは患者に置かれた1つ又は2つ以上のEMパッチセンサに対してEM生成器を位置合わせするための技術に関する。
【0011】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、長さ、厚さ、量、期間、又は他の測定可能な値の測定範囲を指す。このような測定範囲は、開示されるデバイス、システム、及び技術において機能するために係る変形が適切である限り、指定された値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含する。
【0012】
以下、説明を目的として、図面と併せて、様々な実施形態が説明される。開示される概念の多くの他の実装態様が可能であり、開示される実装態様で様々な利点が達成され得ることを理解されたい。見出しが、参照のために本明細書に含まれ、様々なセクションの位置を特定する支援となる。これらの見出しは、それに関して説明される概念の範囲を限定することを意図するものではない。そのような概念は、本明細書全体にわたって適用可能性を有し得る。
【0013】
1.概論。
本開示の態様は、腹腔鏡などの低侵襲性、及び内視鏡などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を行うことができるロボット制御可能な医療用システムに統合され得る。内視鏡処置のうち、システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃鏡検査などを行うことができる。
【0014】
幅広い処置を行うことに加えて、システムは、医師を支援するための強調された撮像及び誘導などの追加の利益を提供することができる。追加的に、システムは、厄介な腕の動作及び姿勢を必要とせずに、人間工学的位置から処置を行う能力を医師に提供することができる。また更に、システムは、システムの器具のうちの1つ又は2つ以上が単一のユーザによって制御され得るように、改善された使いやすさで処置を行う能力を医師に提供することができる。
【0015】
以下、説明を目的として、図面と併せて、様々な実施形態が説明される。開示される概念の多くの他の実装態様が可能であり、開示される実装態様で様々な利点が達成され得ることを理解されたい。見出しが、参照のために本明細書に含まれ、様々なセクションの位置を特定する支援となる。これらの見出しは、それに関して説明される概念の範囲を限定することを意図するものではない。そのような概念は、本明細書全体にわたって適用可能性を有し得る。
【0016】
A.ロボットシステム-カート。
ロボット制御可能な医療用システムは、特定の処置に応じて様々な方法で構成され得る。図1は、診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置のために配置されたカートベースのロボット制御可能なシステム10の実施形態を示す。気管支鏡検査の間、システム10は、気管支鏡検査のための処置専用気管支鏡であり得る操縦可能な内視鏡13などの医療用器具を、診断及び/又は治療用具を送達するための自然開口部アクセスポイント(すなわち、本実施例ではテーブル上に位置決めされている患者の口)に送達するための1つ又は2つ以上のロボットアーム12を有するカート11を含むことができる。示されるように、カート11は、アクセスポイントへのアクセスを提供するために、患者の上部胴体に近接して位置決めすることができる。同様に、ロボットアーム12は、アクセスポイントに対して気管支鏡を位置決めするために作動させることができる。図1の配置はまた、胃腸管(gastro-intestinal、GI)処置を、GI処置のための特殊な内視鏡である胃鏡を用いて行うときに利用することができる。図2は、カートの例示的な実施形態をより詳細に示す。
【0017】
図1を引き続き参照し、カート11が適切に位置決めされると、ロボットアーム12は、操縦可能な内視鏡13をロボットで、手動で、又はそれらの組み合わせで患者内に挿入することができる。示されるように、操縦可能な内視鏡13は、内側リーダー部分及び外側シース部分などの少なくとも2つの入れ子式部品を含んでもよく、各部分は、器具ドライバの組28から別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは、個々のロボットアームの遠位端に結合されている。リーダー部分をシース部分と同軸上に位置合わせするのを容易にする、器具ドライバ28のこの直線配置は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12を異なる角度及び/又は位置に操作することによって空間内に再位置決めされ得る「仮想レール」29を作成する。本明細書に記載される仮想レールは、破線を使用して図に示されており、したがって破線は、システムの物理的構造を示さない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の並進は、外側シース部分に対して内側リーダー部分を入れ子にするか、又は内視鏡13を患者から前進若しくは後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途又は医師の好みに基づいて調整、並進、及び枢動させられてもよい。例えば、気管支鏡検査では、図示されるような仮想レール29の角度及び位置は、内視鏡13を患者の口内に曲げ入れることによる摩擦を最小限に抑えながら内視鏡13への医師のアクセスを提供する妥協を表す。
【0018】
内視鏡13は、標的の目的地又は手術部位に到達するまで、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して挿入後に患者の気管及び肺の下方に向けられてもよい。患者の肺網を通したナビゲーションを高め、及び/又は所望の標的に到達するために、内視鏡13を操縦して、内側リーダー部分を外側シース部分から入れ子状に延在させ、高められた関節運動及びより大きい曲げ半径を得てもよい。別個の器具ドライバ28の使用により、リーダー部分及びシース部分が互いに独立して駆動することも可能になる。
【0019】
例えば、内視鏡13は、例えば、患者の肺内の病変又は小結節などの標的に生検針を送達するように方向付けられてもよい。針は、内視鏡の長さにわたる作業チャネルの下方に展開されて、病理医によって分析される組織サンプルを得てもよい。病理の結果に応じて、追加の生検のために追加のツールが内視鏡の作業チャネルの下方に展開されてもよい。小結節を悪性と識別した後、内視鏡13は、潜在的な癌組織を切除するために器具を内視鏡的に送達してもよい。場合によっては、診断及び治療的処置は、別個の処置で送達される必要があってもよい。これらの状況において、内視鏡13はまた、標的小結節の場所を「マーク」するために基準を送達するのに使用されてもよい。他の例では、診断及び治療的処置は、同じ処置中に送達されてもよい。
【0020】
システム10はまた、カート11に支持ケーブルを介して接続されて、カート11への制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、及び/又は電力のためのサポートを提供し得る移動可能なタワー30を含んでもよい。タワー30内にこのような機能を置くことにより、動作を行う医師及びそのスタッフがより容易に調整及び/又は再位置決めすることができるより小さいフォームファクタのカート11が可能となる。追加的に、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は、手術室の乱雑さを低減し、臨床ワークフローの改善を促進する。カート11は患者に近接して位置決めされてもよいが、タワー30は、処置中に邪魔にならないように離れた場所に収容されてもよい。
【0021】
上述のロボットシステムのサポートにおいて、タワー30は、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内にコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素を含んでもよい。これらの命令の実行は、実行がタワー30内で行われるのか又はカート11で行われるのかにかかわらず、システム全体又はそのサブシステムを制御してもよい。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行されるとき、命令は、ロボットシステムの構成要素に、関連するキャリッジ及びアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療用器具を制御させてもよい。例えば、制御信号を受信したことに応答して、ロボットアームの関節内のモータは、アームをある特定の姿勢に位置決めしてもよい。
【0022】
タワー30は、内視鏡13を通して展開され得るシステムに制御された灌注及び吸引能力を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、及び/又は流体アクセスも含んでもよい。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムも使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、灌注及び吸引能力は、別個のケーブルを通して内視鏡13に直接送達されてもよい。
【0023】
タワー30は、フィルタリングされ、保護された電力をカート11に提供するように設計された電圧及びサージ保護具を含んでもよく、それによって、カート11内に電力変圧器及び他の補助電力構成要素を配置することが回避され、カート11はより小さく、より移動可能になる。
【0024】
タワー30は、ロボットシステム10全体に配備されたセンサのための支持機器も含んでもよい。例えば、タワー30は、ロボットシステム10を通して光センサ又はカメラから受信したデータを検出、受信、及び処理するためのオプトエレクトロニクス機器を含んでもよい。制御システムと組み合わせて、そのようなオプトエレクトロニクス機器は、タワー30内を含むシステム全体に配置された任意の数のコンソール内に表示するためのリアルタイム画像を生成するように使用されてもよい。同様に、タワー30はまた、展開されたEMセンサから信号を受信し、受信した信号を処理するための電子サブシステムも含んでもよい。タワー30はまた、医療用器具内又は医療用器具上のEMセンサによる検出のためにEM場生成器を収容し、位置決めするためにも使用されてもよい。
【0025】
タワー30はまた、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えば、カートの上部上に装着されたコンソールに追加して、コンソール31を含んでもよい。コンソール31は、オペレータである医師のためのユーザインターフェース及びタッチスクリーンなどの表示画面を含んでもよい。システム10内のコンソールは、一般に、ロボット制御、並びに内視鏡13のナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置の術前及びリアルタイム情報の両方を提供するように設計される。コンソール31が医師に利用可能な唯一のコンソールではない場合、コンソール31は、看護師などの第2のオペレータによって使用されて、患者の健康又は生命及びシステムの動作を監視し、並びにナビゲーション及び位置特定情報などの処置固有のデータを提供することができる。
【0026】
タワー30は、1つ又は2つ以上のケーブル又は接続部(図示せず)を介してカート11及び内視鏡13に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、タワー30からのサポート機能は、単一ケーブルを通してカート11に提供されることにより、手術室を簡略化し、整理整頓することができる。他の実施形態では、特定の機能は、別個の配線及び接続部で結合されてもよい。例えば、単一の電力ケーブルを通してカートに電力が供給されてもよい一方、制御、光学、流体工学、及び/又はナビゲーションのためのサポートは、別個のケーブルを通して提供されてもよい。
【0027】
図2は、図1に示されるカートベースのロボット制御可能なシステムからのカートの実施形態の詳細な図を提供する。カート11は、概して、細長い支持構造14(「カラム」と称されることが多い)、カート基部15、及びカラム14の頂部にあるコンソール16を含む。カラム14は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12(図2には3つ示されている)の展開を支持するためのキャリッジ17(代替的に「アーム支持体」)などの1つ又は2つ以上のキャリッジを含んでもよい。キャリッジ17は、患者に対してより良好に位置決めするために垂直軸に沿って回転してロボットアーム12の基部を調整する、個別に構成可能なアームマウントを含んでもよい。キャリッジ17はまた、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直方向に並進することを可能にするキャリッジインターフェース19を含む。
【0028】
キャリッジインターフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の並進を案内するためにカラム14の両側に位置決めされているスロット20などのスロットを通してカラム14に接続されている。スロット20は、カート基部15に対して様々な垂直方向の高さでキャリッジを位置決め及び保持するための垂直方向の並進インターフェースを含む。キャリッジ17の垂直方向の並進により、カート11は、様々なテーブルの高さ、患者のサイズ、及び医師の好みを満たすようにロボットアーム12のリーチを調整することが可能となる。同様に、キャリッジ17上の個別に構成可能なアームマウントにより、ロボットアーム12のロボットアーム基部21を様々な構成で角度付けすることが可能となる。
【0029】
いくつかの実施形態では、キャリッジ17が垂直方向に並進するときにカラム14の内部チャンバ及び垂直方向の並進インターフェース内に汚れ及び流体が侵入するのを防止するために、スロット20には、スロット表面と同一平面及び平行であるスロットカバーが追加されてもよい。スロットカバーは、スロット20の垂直方向の頂部及び底部付近に位置決めされているばねスプールの対を通じて展開されてもよい。カバーは、キャリッジ17が上下に垂直方向に並進するにつれてコイル状から伸縮するように展開されるまで、スプール内でコイル巻きにされている。スプールのばね荷重は、キャリッジ17がスプールに向かって並進するときにカバーをスプール内に後退させるための力を提供する一方で、キャリッジ17がスプールから離れるように並進するときに密封も維持する。カバーは、キャリッジ17が並進するときにカバーが適切に伸縮するのを確実にするために、例えば、キャリッジインターフェース19内のブラケットを使用してキャリッジ17に接続されてもよい。
【0030】
カラム14は、例えば、コンソール16からの入力などのユーザ入力に応答して生成された制御信号に応答してキャリッジ17を機械的に並進させるために垂直方向に位置合わせされた主ねじを使用するように設計された、ギア及びモータなどの機構を内部に含んでもよい。
【0031】
ロボットアーム12は、一般に、一連の関節24によって接続されている一連のリンク23によって分離されたロボットアーム基部21及びエンドエフェクタ22を含んでもよく、各関節は独立したアクチュエータを含み、各アクチュエータは、独立して制御可能なモータを含む。それぞれ独立して制御可能な関節は、ロボットアームが利用可能な独立した自由度を表す。アーム12の各々は、7つの関節を有し、したがって、7つの自由度を提供する。多数の関節は、多数の自由度をもたらし、「冗長」自由度を可能にする。冗長自由度は、ロボットアーム12が、異なる結合位置及び関節角度を使用して空間内の特定の位置、配向、及び軌道で、それらのそれぞれのエンドエフェクタ22を位置決めすることを可能にする。これにより、システムが空間内の所望のポイントから医療用器具を位置決めし、方向付けることが可能になると同時に、医師がアーム関節を患者から離れる臨床的に有利な位置へと移動させて、アームの衝突を回避しながらよりよいアクセスを生み出すことを可能にする。
【0032】
カート基部15は、床の上のカラム14、キャリッジ17、及びアーム12の重量の釣り合いをとる。したがって、カート基部15は、電子機器、モータ、電源、並びにカートの移動及び/又は固定化のいずれかを可能にする構成要素などの、より重い部品を収容する。例えば、カート基部15は、処置前にカートが部屋中をあちこちに容易に移動することを可能にする、転動可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、処置中にカート11を所定の場所に保持するためのホイールロックを使用して静止させられてもよい。
【0033】
カラム14の垂直方向の端部に位置決めされたコンソール16は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース及び表示画面(又は、例えば、タッチスクリーン26などの二重目的デバイス)の両方を可能にして、術前データ及び術中データの両方を医師であるユーザに提供する。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(CT)スキャンから導出されたナビゲーション及びマッピングデータ、及び/又は術前の患者への問診からのメモを含んでもよい。ディスプレイ上の術中データは、ツールから提供される光学情報、センサからのセンサ及び座標情報、及び呼吸、心拍数、及び/又はパルスなどの不可欠な患者統計を含んでもよい。コンソール16は、医師が、キャリッジ17の反対側のカラム14側からコンソールにアクセスすることを可能にするように位置決めされ、傾斜が付けられてもよい。この位置から、医師は、コンソール16をカート11の背後から操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、及び患者を見ることができる。図示のように、コンソール16はまた、カート11の操作及び安定化を支援するハンドル27を含む。
【0034】
図3は、尿管鏡検査のために配置された、ロボット制御可能なシステム10の実施形態を示す。尿管鏡検査処置では、カート11は、患者の尿道及び尿管を横断するように設計された処置専用内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するように位置決めされてもよい。尿管鏡検査では、尿管鏡32が患者の尿道と直接位置合わせされ、領域内の敏感な解剖学的構造に対する摩擦及び力を低減することが望ましいことがある。示されるように、カート11は、ロボットアーム12が尿管鏡32を、患者の尿道に直線状に直接アクセスするために位置決めすることを可能にするように、テーブルの脚部に位置合わせされてもよい。テーブルの脚部から、ロボットアーム12は、尿道を通して患者の下腹部に直接、仮想レール33に沿って尿管鏡32を挿入してもよい。
【0035】
気管支鏡検査におけるのと同様の制御技法を使用して尿道に挿入した後、尿管鏡32は、診断及び/又は治療用途のために、膀胱、尿管、及び/又は腎臓にナビゲートされてもよい。例えば、尿管鏡32は、尿管及び腎臓に指向され、尿管鏡32の作業チャネルの下方に展開されたレーザ又は超音波砕石デバイスを使用して、形成された腎臓結石を破壊することができる。砕石術が完了した後、結果として得られた結石片は、尿管鏡32の下方に配備されたバスケットを使用して除去されてもよい。
【0036】
図4は、血管処置のために同様に配置されたロボット制御可能なシステムの実施形態を示す。血管処置において、システム10は、カート11が、操縦可能なカテーテルなどの医療用器具34を、患者の脚内の大腿動脈内のアクセスポイントに送達することができるように構成することができる。大腿動脈は、ナビゲーションのためのより大きい直径と、患者の心臓への比較的迂回性及び蛇行性でない経路との両方を呈し、これによりナビゲーションが単純化する。尿管鏡検査処置のように、カート11は、患者の脚及び下腹部に向かって位置決めされて、ロボットアーム12が患者の大腿/腰領域内の大腿動脈アクセスポイントへの真っ直ぐな直線アクセスで仮想レール35を提供することを可能にしてもよい。動脈内への挿入後、器具ドライバ28を並進させることによって医療用器具34が方向付けられ、挿入されてもよい。代替的に、カートは、例えば、肩及び手首付近の頸動脈及び腕動脈などの代替的な血管アクセスポイントに到達するために、患者の上腹部の周囲に位置決めされてもよい。
【0037】
B.ロボットシステム-テーブル。
ロボット制御可能な医療用システムの実施形態は、患者テーブルも組み込んでもよい。テーブルの組み込みは、カートをなくすことによって手術室内の資本設備の量を低減し、患者へのより大きいアクセスを可能にする。図5は、気管支鏡検査処置のために配置されたこうしたロボット制御可能なシステムの実施形態を示す。システム36は、床の上にプラットフォーム38(「テーブル」又は「ベッド」として図示)を支持するための支持構造体又はカラム37を含む。カートベースのシステムと同様に、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタは、器具ドライバ42の直線状位置合わせから形成された仮想レール41を通して、又はそれに沿って、図5の気管支鏡40などの細長い医療用器具を操作するように設計された器具ドライバ42を含む。実際には、蛍光透視撮像を提供するためのCアームは、放射器及び検出器をテーブル38の周囲に置くことによって、患者の上部腹部領域の上方に位置決めされてもよい。
【0038】
図6は、考察を目的として、患者及び医療用器具なしのシステム36の代替的な図を提供する。示されるように、カラム37は、1つ又は2つ以上のロボットアーム39の基部となり得る、システム36内でリング形状として図示される1つ又は2つ以上のキャリッジ43を含んでもよい。キャリッジ43は、カラム37の長さにわたる垂直方向のカラムインターフェース44に沿って並進して、ロボットアーム39が患者に到達するように位置決めされ得る異なるバンテージポイントを提供してもよい。キャリッジ43は、カラム37内に位置決めされている機械的モータを使用してカラム37の周りを回転して、ロボットアーム39が、例えば、患者の両側などのテーブル38の多数の側部へのアクセスを有することを可能にしてもよい。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジはカラム上に個別に位置決めされてもよく、他のキャリッジとは独立して並進及び/又は回転してもよい。キャリッジ43はカラム37を取り囲む必要はなく、又は更には円形である必要はないが、図示されるようなリング形状は、構造的バランスを維持しながらカラム37の周りでキャリッジ43が回転するのを容易にする。キャリッジ43の回転及び並進により、システムは、内視鏡及び腹腔鏡などの医療用器具を患者の異なるアクセスポイントに位置合わせさせることができる。
【0039】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成可能性を提供するために個別に回転及び/又は入れ子式に延び得る一連の関節を備えるアームマウント45のセットを介してキャリッジに装着されてもよい。更に、アームマウント45は、キャリッジ43が適切に回転されると、アームマウント45がテーブル38の同じ側(図6に示すように)、テーブル38の両側(図9に示すように)、又はテーブル38の隣接する側部(図示せず)のいずれかに位置決めすることができるように、キャリッジ43上に位置決めしてもよい。
【0040】
カラム37は、テーブル38の支持及びキャリッジの垂直方向の並進のための経路を構造的に提供する。内部に、カラム37は、キャリッジ43の垂直方向の並進を案内するための主ねじ、及び主ねじに基づく当該キャリッジの並進を機械化するためのモータが備えられていてもよい。カラム37は、キャリッジ43及びその上に装着されたロボットアーム39に電力及び制御信号も伝達してもよい。
【0041】
テーブル基部46は、図2に示すカート11のカート基部15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43し及びロボットアーム39の釣り合いをとるためにより重い構成要素を収容する。テーブル基部46はまた、処置中に安定性を提供するために剛性キャスタを組み込んでもよい。テーブル基部46の底部から展開されるキャスタは、基部46の両側で反対方向に延在し、システム36を移動させる必要があるときに引き込んでもよい。
【0042】
引き続き図6によれば、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割して、テーブルのフォームファクタ及びバルクを低減するタワー(図示せず)も含んでもよい。先に開示された実施形態と同様に、タワーは、処理、計算、及び制御能力、電力、流体工学、並びに/又は光学及びセンサ処理などの様々な支持機能をテーブルに提供してもよい。タワーはまた、医師のアクセスを改善し、手術室を整理整頓するために、患者から離れて位置決めされるように移動可能であってもよい。更に、タワー内に構成要素を位置付けすることにより、ロボットアームの潜在的な収容のために、テーブル基部内により多くの格納空間を可能にする。タワーはまた、キーボード及び/又はペンダントなどのユーザ入力のためのユーザインターフェース、並びにリアルタイム撮像、ナビゲーション、及び追跡情報などの術前及び術中情報のための表示画面(又はタッチスクリーン)の両方を提供するコンソールを含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、テーブル基部は、使用されていないときにロボットアームを収容して格納してもよい。図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態におけるロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、キャリッジ48は、ロボットアーム50、アームマウント51、及びキャリッジ48を基部49内に収容するために、基部49内へと垂直方向に並進させられてもよい。基部カバー52は、並進及び後退して、キャリッジ48、アームマウント51、及びアーム50をカラム53の周りに配置させるように開き、使用されていないときにそれらを収容して保護するように閉じられてもよい。基部カバー52は、閉じたときに汚れ及び流体の侵入を防止するために、その開口部の縁部に沿って膜54で封止されてもよい。
【0044】
図8は、尿管鏡検査処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38は、患者をカラム37及びテーブル基部46からオフアングルに位置決めするためのスイベル部分55を含んでもよい。スイベル部分55は、スイベル部分55の底部をカラム37から離すように位置決めするために、(例えば、患者の頭部の下方に配置された)枢動点を中心に回転又は枢動してもよい。例えば、スイベル部分55の旋回により、Cアーム(図示せず)が、テーブル38の下のカラム(図示せず)と空間を奪い合うことなく、患者の下部腹部の上方に位置決めされることを可能にする。カラム37の周りにキャリッジ(図示せず)を回転させることにより、ロボットアーム39は、尿道に到達するように、仮想レール57に沿って、患者の鼠径部領域に尿管鏡56を直接挿入してもよい。尿管鏡検査では、処置中に患者の脚の位置を支持し、患者の鼠径部領域への明確なアクセスを可能にするために、テーブル38のスイベル部分55にあぶみ58が固定されてもよい。
【0045】
腹腔鏡処置では、患者の腹壁内の小さい切開部を通して、低侵襲性器具(1つ又は2つ以上の切開部のサイズに適応するように形状が細長い)を患者の解剖学的構造に挿入してもよい。患者の腹腔の膨張後、腹腔鏡と称されることが多い器具は、把持、切断、アブレーション、縫合などの外科的タスクを行うように指向されてもよい。図9は、腹腔鏡処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。図9に示されるように、システム36のキャリッジ43は回転し、垂直方向に調整されて、腹腔鏡59が患者の両側の最小切開部を通過して患者の腹腔に到達するようにアームマウント45を使用して位置決めされ得るように、ロボットアーム39の対をテーブル38の両側に位置決めしてもよい。
【0046】
腹腔鏡処置に対応するために、ロボット制御可能なテーブルシステムはまた、プラットフォームを所望の角度に傾斜させてもよい。図10は、ピッチ又は傾斜調整を有するロボット制御可能な医療用システムの実施形態を示す。図10に示されるように、システム36は、テーブル38の傾斜に適応して、テーブルの一方の部分を他方の部分より床から離れた距離に位置決めすることができる。加えて、アームマウント45は、アーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するように、傾斜に一致するように回転させてもよい。急角度に適応するために、カラム37は、テーブル38が床に接触するか又は基部46と衝突するのを防ぐためにカラム37が垂直方向に延びるのを可能にする入れ子部分60も含んでもよい。
【0047】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインターフェースの詳細な図を提供する。ピッチ回転機構61は、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を多数の自由度で変更するように構成されてもよい。ピッチ回転機構61は、カラム-テーブルインターフェースでの直交軸1、2の位置決めによって可能にされてもよく、各軸は、電気ピッチ角コマンドに応答して別個のモータ3、4によって作動させられる。一方のねじ5に沿った回転は、一方の軸1における傾斜調整を可能にし、他方のねじ6に沿った回転は、他方の軸2に沿った傾斜調整を可能にする。
【0048】
例えば、ピッチ調節は、テーブルをトレンデレンブルグ体位に位置決めしようとするときに、すなわち下腹部手術のために患者の下腹部よりも床からより高い位置に患者の下腹部を位置決めしようとするときに、特に有用である。トレンデレンブルグ体位は、患者の内臓を重力によって自分の上腹部に向かってスライドさせ、低侵襲性ツールが入って腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部外科処置を実施行するために、腹腔を空にする。
【0049】
C.器具ドライバ及びインターフェース。
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(i)医療用器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(代替的に、「器具駆動機構」又は「器具デバイスマニピュレータ」と称される)と、(ii)モータなどの任意の電気機械的構成要素を欠いていてもよい除去可能な又は取り外し可能な医療用器具と、を含む。この二分は、医療処置において使用される医療用器具を滅菌する必要性と、それらの複雑な機械的アセンブリ及び敏感な電子機器のために高価な資本機器を適切に滅菌することができないこととによって推進され得る。したがって、医療用器具は、医師又は医師のスタッフによる個々の滅菌又は廃棄のために、器具ドライバ(したがってそのシステム)から取り外され、除去され、及び交換されるように設計することができる。対照的に、器具ドライバは交換又は滅菌される必要がなく、保護のために掛け布をすることができる。
【0050】
図12は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に位置決めされた器具ドライバ62は、駆動シャフト64を介して医療用器具に制御トルクを提供するために平行軸を伴って配置された1つ又は2つ以上の駆動ユニット63を備える。各駆動ユニット63は、器具と相互作用するための個々の駆動シャフト64と、モータシャフトの回転を所望のトルクに変換するためのギアヘッド65と、駆動トルクを生成するためのモータ66と、モータシャフトの速度を測定し、制御回路にフィードバックを提供するエンコーダ67と、制御信号を受信し、駆動ユニットを作動させるための制御回路68と、を備える。各駆動ユニット63は独立して制御され電動化され、器具ドライバ62は、複数(図12に示すように4つ)の独立した駆動出力を医療用器具に提供することができる。動作中、制御回路68は、制御信号を受信し、モータ66にモータ信号を送信し、エンコーダ67によって測定された結果として得られたモータ速度を所望の速度と比較し、モータ信号を変調して所望のトルクを生成する。
【0051】
無菌環境を必要とする処置のために、ロボットシステムは、器具ドライバと医療用器具との間に位置する、滅菌ドレープに接続された滅菌アダプタなどの駆動インターフェースを組み込んでもよい。滅菌アダプタの主な目的は、器具ドライバの駆動シャフトから器具の駆動入力部に角度運動を伝達する一方で、駆動シャフトと駆動入力部との間の物理的分離、したがって無菌性を維持することである。したがって、例示的な無菌アダプタは、器具ドライバの駆動シャフトと嵌合されることが意図された一連の回転入力部及び出力部と、器具に対する駆動入力部とで構成することができる。滅菌アダプタに接続される滅菌ドレープは、透明又は半透明プラスチックなどの薄い可撓性材料で構成され、器具ドライバ、ロボットアーム、及び(カートベースのシステムにおける)カート又は(テーブルベースのシステムにおける)テーブルなどの資本設備を覆うように設計される。ドレープの使用により、滅菌を必要としない領域(すなわち、非滅菌野)に依然として配置されている間に、資本設備を患者に近接して位置決めすることが可能となる。滅菌ドレープの反対側では、医療用器具は、滅菌を必要とする領域(すなわち、滅菌野)において患者とインターフェースしてもよい。
【0052】
D.医療用器具。
図13は、ペアの器具ドライバを備えた例示的な医療用器具を示す。ロボットシステムとともに使用するために設計された他の器具と同様に、医療用器具70は、細長いシャフト71(又は細長い本体)及び器具基部72を含む。医師による手動相互作用が意図されているその設計により「器具ハンドル」とも称される器具基部72は、一般に、ロボットアーム76の遠位端において器具ドライバ75上の駆動インターフェースを通って延びる駆動出力部74と嵌合するように設計された、回転可能な駆動入力部73、例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプールを含んでもよい。物理的に接続、ラッチ、及び/又は結合されるときに、器具基部72の嵌合された駆動入力部73は、器具ドライバ75における駆動出力部74と回転軸線を共有して、駆動出力部74から駆動入力部73へのトルクの伝達を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、駆動出力部74は、駆動入力部73上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを含んでもよい。
【0053】
細長いシャフト71は、例えば、内視鏡におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通して送達されるように設計される。細長いシャフト66は、可撓性(例えば、内視鏡と同様の特性を有する)若しくは剛性(例えば、腹腔鏡と同様の特性を有する)のいずれかであってもよく、又は可撓性部分及び剛性部分の両方のカスタマイズされた組み合わせを含んでもよい。腹腔鏡検査のために設計される場合、剛性の細長いシャフトの遠位端は、回転軸を有するクレビスから形成される接合された手首と、例えば、駆動入力部が器具ドライバ75の駆動出力部74から受け取ったトルクに応答して回転する際に、腱からの力に基づいて作動され得る把持具又ははさみである外科用ツールとを含むエンドエフェクタに接続され得る。内視鏡検査のために設計される場合、可撓性の細長いシャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力部74から受信したトルクに基づいて関節運動及び屈曲され得る操縦可能又は制御可能な屈曲部を含んでもよい。
【0054】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71内の腱を使用して細長シャフト71の下方に伝達される。プルワイヤなどのこれらの個々の腱は、器具ハンドル72内の個々の駆動入力部73に個別に固定されてもよい。ハンドル72から、腱は、細長いシャフト71内の1つ又は2つ以上のプルルーメン(pull lumen)の下方に指向され、細長いシャフト71の遠位部分に固設される。腹腔鏡検査では、これらの腱は、手首、把持具、又ははさみなどの、遠位に装着されたエンドエフェクタに結合されてもよい。このような構成の下で、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱に張力を伝達し、それによってエンドエフェクタを何らかの方法で作動させる。腹腔鏡検査では、腱は、関節を軸周りに回転させることができ、それによってエンドエフェクタをいずれかの方向に移動させる。代替的に、腱は、細長いシャフト71の遠位端で把持具の1つ又は2つ以上のジョーに接続されてもよく、腱からの張力によって把持具が閉鎖される。
【0055】
内視鏡検査では、腱は、接着剤、制御リング、又は他の機械的固定を介して、細長いシャフト71に沿って(例えば、遠位端に)位置決めされている屈曲部又は関節運動部に結合されてもよい。屈曲部の遠位端に固定的に取り付けられる場合、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱の下流に伝達され、より軟質の屈曲部(関節運動可能部又は領域と称されることがある)を屈曲又は関節運動させる。非屈曲部分に沿って、個々の腱を内視鏡シャフトの壁に沿って(又は内側に)向く個々のプルルーメンを螺旋状又は渦巻状にして、プルワイヤにおける張力からもたらされる半径方向の力の釣り合いをとることが有利であり得る。これらの間の螺旋及び/又は間隔の角度は、特定の目的のために変更又は設計されてもよく、より狭い螺旋は負荷力下でより小さいシャフト圧縮を呈する一方で、より少ない量の螺旋は負荷力下でより大きいシャフト圧縮をもたらすが、屈曲制限も示す。スペクトルのもう一方の端部では、プルルーメンは、細長いシャフト71の長手方向軸に平行に方向付けられて、所望の屈曲部又は関節運動可能部における制御された関節運動を可能にしてもよい。
【0056】
内視鏡検査では、細長いシャフト71は、ロボット処置を支援するいくつかの構成要素を収容する。シャフトは、シャフト71の遠位端における手術領域への外科用ツール、灌注、及び/又は吸引を展開するための作業チャネルを含んでもよい。シャフト71は、光学カメラを含んでもよい遠位先端部の光学アセンブリとの間で信号の授受を行うために、ワイヤ及び/又は光ファイバも収容してもよい。シャフト71は、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を搬送するための光ファイバも収容してもよい。
【0057】
器具70の遠位端では、遠位先端部は、診断及び/又は治療、灌注、及び吸引のためにツールを手術部位に送達するための作業チャネルの開口部を含んでもよい。遠位先端部はまた、内部解剖学的空間の画像をキャプチャするために、ファイバスコープ又はデジタルカメラなどのカメラのためのポートを含んでもよい。関連して、遠位先端部はまた、カメラを使用する場合に解剖学的空間を照明するための光源用のポートを含んでもよい。
【0058】
図13の実施例では、駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は、細長いシャフトの軸に直交する。しかしながら、この配置は、細長いシャフト71のロール能力を複雑にする。駆動入力部73を静止させながら、細長いシャフト71をその軸に沿ってロールさせることにより、駆動入力部73から延出し、細長いシャフト71内のプルルーメンに入る際に、腱の望ましくない絡まりをもたらす。そのような腱の得られたもつれは、内視鏡処置中の可撓性の細長いシャフトの移動を予測することを意図した任意の制御アルゴリズムを破壊することがある。
【0059】
図14は、駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。示されるように、円形の器具ドライバ80は、ロボットアーム82の端部において平行に位置合わせされた駆動出力部81を備える4つの駆動ユニットを含む。駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81は、アセンブリ83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転アセンブリ83内に収容される。回転駆動ユニットによって提供されるトルクに応答して、回転アセンブリ83は、回転アセンブリ83を器具ドライバの非回転部分84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電力及び制御信号は、電気接点を通して器具ドライバ80の非回転部分84から回転アセンブリ83に伝達されてもよく、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)による回転を通して維持されてもよい。他の実施形態では、回転アセンブリ83は、非回転可能部分84に一体化され、したがって他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答してもよい。回転機構83は、器具ドライバ80が、器具ドライバ軸85周りの単一ユニットとして、駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81を回転させることを可能にする。
【0060】
先に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長いシャフト88と、器具ドライバ80内の駆動出力部81を受けるように構成された複数の駆動入力部89(レセプタクル、プーリ、及びスプールなど)を含む器具基部87(考察目的で透明な外部スキンで示される)とを含んでもよい。先の開示した実施形態とは異なり、器具シャフト88は、器具基部87の中心から延び、軸は、図13の設計にあるように直交するのではなく、駆動入力部89の軸に実質的に平行である。
【0061】
器具ドライバ80の回転アセンブリ83に結合されると、器具基部87及び器具シャフト88を含む医療用器具86は、器具ドライバ軸85を中心にして回転アセンブリ83と一緒に回転する。器具シャフト88は器具基部87の中心に位置決めされているため、器具シャフト88は、取り付けられたときに器具ドライバ軸85と同軸である。したがって、回転アセンブリ83の回転により、器具シャフト88は、それ自体の長手方向軸を中心に回転する。更に、器具基部87が器具シャフト88とともに回転すると、器具基部87内の駆動入力部89に接続された任意の腱は、回転中に絡まらない。したがって、駆動出力部81、駆動入力部89、及び器具シャフト88の軸の平行性は、制御腱を絡めることなくシャフト回転を可能にする。
【0062】
E.ナビゲーション及び制御。
従来の内視鏡検査は、オペレータである医師に腔内誘導を提供するために、蛍光透視法(例えば、Cアームを通して送達され得るような)、及び他の形態の放射線ベースの撮像モダリティの使用を伴うことがある。対照的に、本開示によって企図されるロボットシステムは、放射線への医師の曝露を低減し、手術室内の機器の量を低減するために、非放射線ベースのナビゲーション及び位置特定手段を提供することができる。本明細書で使用するとき、「位置特定」という用語は、基準座標系内の物体の位置を判定及び/又は監視することを指すことがある。術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータなどの技術は、放射線を含まない手術環境を達成するために個別に又は組み合わせて使用されてもよい。放射線ベースの撮像モダリティが依然として使用されるその他の場合、術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータは、放射線ベースの撮像モダリティによってのみ取得される情報を改善するために、個別に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0063】
図15は、例示的な実施形態による、器具の場所など、ロボットシステムの1つ又は2つ以上の要素の場所を推定する位置特定システム90を示すブロック図である。位置特定システム90は、1つ又は2つ以上の命令を実行するように構成されている1つ又は2つ以上のコンピュータデバイスのセットであってもよい。コンピュータデバイスは、上で考察された1つ又は2つ以上の構成要素内のプロセッサ(又は複数のプロセッサ)及びコンピュータ可読メモリによって具現化されてもよい。例として、限定するものではないが、コンピュータデバイスは、図1に示すタワー30、図1図4に示すカート、図5図10に示すベッド、などの中にあってよい。
【0064】
図15に示されるように、位置特定システム90は、入力データ91~94を処理して医療用器具の遠位先端部の場所データ96を生成する位置特定モジュール95を含んでもよい。場所データ96は、基準系に対する器具の遠位端の場所及び/又は配向を表すデータ又は論理であってもよい。基準系は、患者の解剖学的構造、又はEM場生成器(EM場生成器についての以下の考察を参照)などの既知の物体に対する基準系とすることができる。
【0065】
ここで、様々な入力データ91~94についてより詳細に説明する。術前マッピングは、位置特定モジュール95によって使用されて、モデルデータ91を生成することができる。術前マッピングは、低用量CTスキャンの収集を利用して達成することができる。術前CTスキャンは、例えば、患者の内部解剖学的構造の切欠き図の「スライス」をそれぞれ表す2次元画像を生成する。全体として分析される場合、患者の肺網などの患者の解剖学的構造の解剖学的空腔、空間、及び構造のための画像ベースのモデルが生成され得る。中心線幾何学形状などの技法を判定し、CT画像から概算して、術前モデルデータ91と称される患者の解剖学的構造の3次元ボリュームを生成することができる。中心線形状の使用は、米国特許出願第14/523,760号で考察されており、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。ネットワーク位相モデルもまた、CT画像から導出されてもよく、気管支鏡検査に特に適している。
【0066】
いくつかの実施形態では、器具はカメラを装備して、位置特定モジュール95に視覚データ(又は画像データ)92を提供してもよい。位置特定モジュール95は、視覚データを処理して、1つ又は2つ以上の視覚ベースの場所追跡を可能にしてもよい。例えば、術前モデルデータは、医療用器具(例えば、内視鏡、又は内視鏡の作業チャネルを通って前進する器具)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にするために、視覚データ92とともに使用されてもよい。例えば、術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは、内視鏡の予想される移動経路に基づいて、モデルから、予測される内視鏡画像のライブラリを生成することができ、各画像はモデル内の場所にリンクされる。手術中に、このライブラリは、カメラ(例えば、内視鏡の遠位端でのカメラ)でキャプチャされたリアルタイム画像を画像ライブラリ内のものと比較して、位置特定を支援するために、ロボットシステムによって参照することができる。
【0067】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技術は、追跡機能を使用して、カメラ、したがって内視鏡の動作を判定する。位置特定モジュール95のいくつかの特徴は、解剖学的管腔に対応する術前モデルデータ91内の円形幾何学形状を特定し、どの解剖学的管腔が選択されたかと、カメラの相対的な回転及び/又は並進運動とを判定するためにそれらの幾何学的形状の変化を追跡してもよい。位相マップの使用は、視覚ベースのアルゴリズム又は技術を更に向上させることがある。
【0068】
光学フロー、別のコンピュータビジョンベースの技術は、カメラの移動を推測するために、視覚データ92内のビデオシーケンス内の画像ピクセルの変位及び並進を分析してもよい。光学フロー技術の例としては、動き検出、物体セグメンテーション計算、輝度、動き補償符号化、立体視差測定などを挙げることができる。複数の反復にわたり複数のフレームを比較することにより、カメラ(及びしたがって内視鏡)の動き及び場所を判定することができる。
【0069】
位置特定モジュール95は、リアルタイムEM追跡及びEMデータ93を使用して、術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に登録され得るグローバル座標系内に、内視鏡のリアルタイムの場所を生成することができる。EM追跡では、医療用器具(例えば、内視鏡器具)内に1つ又は2つ以上の場所及び配向で埋め込まれた1つ又は2つ以上のセンサコイルを構成するEMセンサ(又はトラッカ)は、既知の場所に位置決めされた1つ又は2つ以上の静的EM場生成器によって生成されるEM場の変動を測定する。EMセンサによって検出された場所情報は、EMデータ93として記憶される。EM場生成器(又は送信機)は、埋め込まれたセンサが検出し得る低強度磁場を生成するために、患者に近接して配置することができる。磁場はEMセンサのセンサコイル内に小さい電流を誘導し、EMセンサとEM場生成器との間の距離及び角度を判定するためにこの電流が分析され得る。これらの距離及び配向は、患者の解剖学的構造の術前モデル内の位置と座標系内の単一の場所を位置合わせする幾何学的変換を判定するために、患者の解剖学的構造(例えば、術前モデル)に術中「位置合わせ」することができる。一旦登録されると、医療用器具の1つ又は2つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端部)に埋め込まれたEMトラッカは、患者の解剖学的構造を通る医療用器具の進行のリアルタイム表示を提供することができる。
【0070】
ロボットコマンド及び運動学データ94はまた、ロボットシステムのための場所データ96を提供するために、位置特定モジュール95によって使用されてもよい。関節運動コマンドから生じるデバイスピッチ及びヨーは、術前較正中に判定することができる。術中に、これらの較正測定は、既知の挿入深度情報と組み合わせて使用されて、器具の位置を推定することができる。代替的に、これらの計算は、EM、視覚、及び/又は位相モデリングと組み合わせて分析して、ネットワーク内の医療用器具の位置を推定し得る。
【0071】
図15が示すように、いくつかの他の入力データは、位置特定モジュール95によって使用することができる。例えば、図15には示していないが、形状感知ファイバを利用する器具は、位置特定モジュール95が器具の場所及び形状を判定するために使用し得る形状データを提供することができる。
【0072】
位置特定モジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用することができる。場合によっては、このような組み合わせは、位置特定モジュール95が入力データ91~94の各々から判定された場所に信頼重み(confidence weight)を割り当てる確率的アプローチを使用し得る。したがって、EMデータが信頼でき得ない場合(EM干渉が存在する場合など)、EMデータ93によって判定された場所の信頼性を低下させることになり、位置特定モジュール95は、視覚データ92並びに/又はロボットコマンド及び運動学データ94により重く依存してもよい。
【0073】
上で考察されるように、本明細書で考察されるロボットシステムは、上述の技術のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを組み込むように設計することができる。タワー、ベッド、及び/又はカートに基づいているロボットシステムのコンピュータベースの制御システムは、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に、コンピュータプログラム命令を記憶してもよく、コンピュータプログラム命令は、実行されると、システムに、センサデータ及びユーザコマンドを受信及び分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーション及び位置特定データを表示させる。
【0074】
2.電磁(EM)歪み-ナビゲーション及び位置特定
上で考察されるように、EMデータは、外科用器具(例えば、操縦可能な器具)のナビゲーション及び位置特定のために本明細書で考察される実施形態によって使用され得る。EMデータは、医療用器具内に位置する1つ又は2つ以上のEMセンサ及び/あるいは患者に置かれた1つ又は2つ以上のEMパッチセンサによって生成され得る。図16は、開示されたナビゲーションシステム及び技法の1つ又は2つ以上の態様を実装する例示的な手術環境100を示す。手術環境100は、患者を支持するテーブル38、EMセンサ105(以下で考察されるように、医療用器具に位置するEM器具センサと区別されるように、「EMパッチセンサ」とも称される)、及びEM場生成器110を含む。特定の追加のデバイス/要素も含まれ得るが、図16には示されていない。例えば、環境100はまた、医療用器具の移動を誘導するように構成されたロボットシステム、外科用ロボットシステムの動作を制御するためのコマンドセンター、及びEMコントローラを含み得る。EMコントローラは、EMパッチセンサ105に電気的に接続されて、それからEMセンサ信号を受信することができる。EMコントローラは、EM場生成器110に更に接続されて、EM場を生成するための制御信号をそれに提供することができる。しかしながら、特定の実施形態では、EMコントローラは、EM場生成器110、カート11(図1参照)、及び/又はタワー30(参照図1)を含む、システムの他の処理デバイスのうちの1つ又は2つ以上に部分的又は完全に組み込まれ得る。
【0075】
含まれる場合、EMコントローラは、EM場生成器110を制御して、様々なEM場を生成することができる。EM場は、実施形態によって、時間的に変動し得、及び/又は空間的に変動し得る。EM場生成器110は、図2に示されるカート11に類似するカートに配置してもよいか、あるいは、1つ又は2つ以上の支持柱を介してテーブル38のレールに取り付けることができる。他の実施形態では、EM場生成器110は、例えば、図1の外科用ロボットシステム10に示されるものに類似する、ロボットアームに装着することができ、これにより、患者の周りに柔軟な設定オプションを提供することができる。
【0076】
EM場生成器110は、使用時にEMパッチセンサ105が置かれ得る関連する作業ボリュームを有し得る。例えば、EMパッチセンサ105によって生成されたEMセンサ信号は、EMパッチセンサ105が作業ボリューム内に位置決めされたときにEM場検出(例えば、EM歪み検出)で使用するのに十分に信頼できる。
【0077】
EM空間測定システムは、EMセンサコイルが埋め込まれたか又はEMセンサコイルが設けられた、EM場内の物体、例えば(図18に示され以下で考察されるような)EMパッチセンサ105又はEM器具センサ305の場所を判定することができる。EMセンサが、本明細書に記載されるように、制御された様々なEM場内に置かれるとき、電圧は、EMセンサに含まれるセンサコイル内に誘導される。これらの誘導電圧は、EM空間測定システムによって使用して、EMセンサ、したがって、EMセンサを有する物体の位置及び配向を計算することができる。EM場が低い場強度であり、人間の組織を安全に通過することができるため、光学空間測定システムの視線制約を伴わずに物体の場所測定が可能である。
【0078】
EM場は、EM場生成器110の座標フレームに対して定義され得、管腔ネットワークの3Dモデルの座標フレームは、EM場の座標フレームにマッピングされ得る。しかしながら、EM場は、環境100内のEM歪みの1つ又は2つ以上の源によって影響を受ける可能性がある。例えば、EM場生成器110の作業ボリューム内の、又は環境100内の強磁性材料の存在は、EM場を歪ませる可能性がある。この効果は、強磁性材料とEM場の作業ボリュームとの間の距離、並びに強磁性材料の特性に依存し得る。しかしながら、常磁性材料など、他の材料も、EM場に影響を及ぼし得る。環境100に存在し得るEM歪みの一般的な源としては、蛍光鏡、ツール、器具、ベッド、及びテーブルが挙げられる。
【0079】
EM場歪み源が静止している場合、EM場歪み源の効果は、特定の用途にとって許容可能であり得る。すなわち、静止しているEM歪み源が存在する場合、EM場は実質的に静的であり得る。しかしながら、EM歪み源の移動は、通常ならばEMセンサの移動として解釈されるであろう、EMセンサ信号の変化を引き起こし得る。他の状況では、EM歪み源内の電流の流れの変化もまた、通常ならばEMセンサの移動として解釈されるであろう、EM歪みを引き起こす可能性がある。したがって、EM場歪みがEMセンサの移動としてEM空間測定システムによって誤って解釈されることを防ぐために、そのような歪みを検出することが望ましい。
【0080】
図16に示されるように、いくつかのEMパッチセンサ105を患者の身体に(例えば、管腔ネットワーク140の領域に)置くことができる。これらのEMパッチセンサ105は、呼吸によって引き起こされる患者の身体の変位を追跡するために、並びにEM場歪みを追跡するために使用され得る。いくつかの異なるEMパッチセンサ105を身体表面上で離間させて、これらの場所で異なる変位を追跡することができる。例えば、肺の周辺は、呼吸に起因して中央気道より大きい動きを示し、示されるようないくつかのEMパッチセンサ105を提供することにより、これらの動き効果のより正確な分析を可能にすることができる。例示するために、内視鏡の遠位端は、管腔ネットワーク140の異なる領域を通って移動することができ、したがって、これらの異なる領域を通って移動する際に患者の呼吸に起因する変位の様々なレベルを経験する。
【0081】
更に、EMパッチセンサ105の数が増加するにつれて、EMパッチセンサ105の移動のより複雑な分析が、生成された追加のEMセンサ信号を使用して実行され得るため、EM場歪み検出の堅牢性を増加させることができる。以下でより詳細に説明するように、EMパッチセンサ105から受信されたEMセンサ信号を使用して、EM場生成器110に対するEMパッチセンサ105の位置及び配向を判定することができる。特定の実施形態では、EMパッチセンサ105は、移動データの5つの自由度(degrees-of-freedom、DoF)(例えば、3つの位置DoF及び2つの角度DoF)又は6つのDoFデータ(例えば、3つの位置DoF及び3つの角度DoF)を提供し得る。単一のEMパッチセンサ105のみが存在する場合、EMの歪みをEMパッチセンサ105の移動から区別することは困難であり得る。しかしながら、追加のEMパッチセンサ105があれば、EMパッチセンサ105間の相対距離など、追加のメトリックを計算することができる。EMパッチセンサ105間の相対距離は実質的に固定されている(例えば、EMパッチセンサ105は、患者の身体上の場所に固定され、相対距離は、呼吸又は患者からの除去によりのみ変化する)ため、患者の呼吸と矛盾する相対距離の変化は、EM歪みに起因すると識別され得る。
【0082】
図17は、図16の手術環境100内でナビゲートすることができる例示的な管腔ネットワーク140を示す。管腔ネットワーク140は、患者の気道150の分岐構造と、診断及び/又は治療のために本明細書に記載されるようにアクセスすることができる小結節155とを含む。例示されるように、小結節155は、気道150の末端部に位置する。内視鏡115は第1の直径を有し、したがって、その遠位端は、小結節155周辺のより小さい直径の気道を通して位置決めできない。したがって、操縦可能なカテーテル145は、内視鏡115の作業チャネルから、小結節155までの残りの距離だけ延在する。操縦可能なカテーテル145は、器具、例えば、生検針、細胞ブラシ、及び/又は組織サンプリング鉗子を小結節155の標的の組織部位まで通すことができる管腔を有することができる。そのような実装態様では、内視鏡115の遠位端と、操縦可能なカテーテル145の遠位端のどちらにも、気道150内のそれらの位置を追跡するためのEM器具センサが設けられ得る。他の実施形態では、内視鏡115の全体の直径は、操縦可能なカテーテル145なしでも末端部に到達できる程度に十分に小さくてもよいか、又は、(例えば、2.5~3cm以内など)末端部に接近して、操縦不可能なカテーテルを通して医療用器具を展開できる程度に十分に小さくてもよい。内視鏡115を通して展開された医療用器具は、EM器具センサを備え得、以下に記載される位置フィルタリング及び安全モードナビゲーション技術は、そのような医療用器具に適用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される3D管腔ネットワークモデルの2D表示、又は3Dモデルの断面は、図17に類似し得る。ナビゲーション安全ゾーン及び/又はナビゲーションパス情報は、そのような表現上にオーバーレイされ得る。
【0084】
図18は、例えば図1の内視鏡13など、本明細書に記載される撮像及びEM感知能力を有する例示的な内視鏡の遠位端300を示す。しかしながら、本開示の態様は、図3の尿管鏡32、図9の腹腔鏡59などの、他の操縦可能な器具の使用に関し得る。図18では、内視鏡の遠位端300は、撮像デバイス315、照明源310、及びEM計器センサを形成するEMセンサコイル305の端部を含む。遠位端300は、内視鏡の作業チャネル320への開口部を更に含み、この開口部を通して、生検針、細胞学的ブラシ、及び鉗子などの外科用器具が内視鏡シャフトに沿って挿入され得、内視鏡先端付近の領域へのアクセスを可能にする。
【0085】
遠位端300上に位置するEMコイル305は、EM追跡システムとともに使用されて、解剖学的システム内に配置されている間に内視鏡の遠位端300の位置及び配向を検出することができる。いくつかの実施形態では、コイル305は、異なる軸に沿ったEM場に対する感度を提供するように角度を付けられ、開示されたナビゲーションシステムに、6つのDoF、すなわち3つの位置DoF及び3つの角度DoFのすべてを測定する能力を与えることができる。他の実施形態では、単一のコイルのみが遠位端300上又は内部に配置されてもよく、その軸は内視鏡の内視鏡シャフトに沿って配向されてもよい。そのようなシステムの回転対称性に起因して、その軸を中心にロールすることは非感受性であり、そのような実装態様においては5つの自由度だけが検出され得る。
【0086】
A.局所的歪み。
局所的EM歪みの検出の例について、内視鏡のナビゲーション及び位置特定を含む本開示の実施形態を参照しながら説明される。しかしながら、本開示の態様はまた、任意のタイプの外科用器具、例えば、胃鏡、腹腔鏡などのナビゲーション及び位置特定に関するEM歪みの検出に関する。本明細書で使用される場合、局所的EM歪みは、一般に、器具に隣接して又は器具内に位置する歪み源によって引き起こされるEM歪みを指す。
【0087】
局所的EM歪み源の一例は、放射状気管支内超音波(radial endobronchial ultrasound、REBUS)プローブである。REBUSプローブを使用して、傍気管支構造の360°画像を提供し、プローブからの構造の視覚化を可能にし得る。REBUSプローブは、器具上に提供されるEMセンサに影響を及ぼし得る局所的EM歪みを引き起こす可能性のある構成要素を含み得る。例えば、REBUSプローブは、導電性ヘッド内にトランスデューサを含み得、トランスデューサは、トルクコイルに接合されている。REBUSプローブはまた、流体充填閉鎖カテーテルを含み得る。これらの構成要素の各々は、REBUSプローブの近くのEM場に歪みを引き起こす可能性があり、これは、REBUSプローブが器具内の作業チャネルを通って移動されるときに、器具上のEMセンサとともに局所的EM歪みを引き起こし得る。
【0088】
上で考察されるように、生検針、細胞ブラシ、及び鉗子などの外科用器具を挿入し、内視鏡の作業チャネル320を通過させて、外科用器具が内視鏡の先端近くの領域にアクセスできるようにすることができる。これらの外科用器具は、外科用器具が移動されるときにEM場を歪ませる材料から形成されてもよく、又は構成要素を含んでもよい。典型的には、内視鏡は、外科用器具が作業チャネルを通過するか、又は内視鏡先端に隣接する領域内でナビゲートされる間に実質的に静止している(例えば、医師ユーザは、内視鏡をナビゲートしながら同時に外科用器具を移動させることをしない)。
【0089】
EM器具センサは、EM場生成器110によって生成されたEM場の検出に応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号を生成するように構成され得る。EM場の歪みは、EMセンサ信号に基づいて、内視鏡の遠位端300上に位置するEM器具センサによって(例えば、EMセンサコイル305によって)検出可能であり得る。EM器具センサは、内視鏡先端のナビゲーション及び位置特定に使用されるため、EM器具センサによって検出されたEM場の変化は、内視鏡先端の移動としてEM空間測定システムによって解釈される。しかしながら、内視鏡は、典型的には、外科用器具の移動中に静止しているため、EM器具センサによって検出されるEM場の変化は、内視鏡が静止していることが知られているときに、内視鏡の移動ではなく、EM場の歪みを示すと判定され得る。
【0090】
外科用ロボットシステムが、内視鏡が静止していることを判定することができ得るいくつの方法が存在する。例えば、内視鏡の位置及び移動は、ユーザによって制御されてもよく、したがって、システムが内視鏡を再位置決めし、制御し、又は他の方法でナビゲートするためのコマンドデータを能動的に受信していない場合、システムは、内視鏡が静止していると判定することができる。システムは、追加のナビゲーション及び制御データを使用して、内視鏡が静止しているかどうかを確認することができる。例えば、視覚データ92並びにロボットコマンド及び運動学データ94を分析して、内視鏡が静止していることを判定することができる。
【0091】
システムは、EM器具センサによって生成されたEMセンサ信号に基づいて、局所的EM歪みを検出することができ得る。例えば、システムは、位置及び/又は移動器具の遠位端に関連する1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上のベースライン値を計算することができる。ベースライン値は、EM器具センサによって生成された第1の時間に対応するEMセンサ信号に基づいて、第1の時間に計算され得る。一実施形態では、第1の時間は、内視鏡を患者に挿入する前であり得る(例えば、ベースラインメトリックは術前測定値であり得る)。一例では、ベースライン測定値が計算される第1の時間は、環境100が外科処置のために設定された後である。例えば、カート11、タワー30、ロボットアーム12、EM場生成器110、及びCアームのうちの1つ又は2つ以上は、最初に外科手術のための準備において位置決めされ得る。カート11、タワー30、ロボットアーム12、EM場生成器110、及びCアームのうちの1つ又は2つ以上の移動は、EM場生成器110によって生成されたEM場に影響を及ぼし得るため、ベースラインメトリックは、デバイスの更なる移動が最小化され得、それによってこれらのデバイスの移動により導入され得るEM場への歪みを最小限に抑えることができるように、環境100内の様々なデバイスの位置決め後に測定され得る。
【0092】
しかしながら、ベースラインメトリックは、他の実施形態では、外科手術前以外の様々な時間に計算及び/又は更新され得る。例えば、Cアームの移動後にベースライン測定値を計算及び/又は更新して、測定されたEM場に対するCアームの移動及び/又は再位置決めの影響を低減することが望ましい場合がある。別の実施形態では、ベースラインメトリックは、外科処置の開始に応答して自動的に計算され得る。ベースライン測定値は、比較的短時間期間(例えば、数秒)で計算され得るため、内視鏡が患者導入器を介して患者に挿入されるときに計算されると、ベースラインメトリックは十分に正確であり得る。
【0093】
EMセンサ信号に基づいてシステムによって計算され得るいくつかの異なるメトリックが存在し、それらの各々は、局所的EM歪みを検出するために使用され得る。計算され得る例示的なメトリックは、器具の遠位端300の直線速度、器具の遠位端300の角速度、及びインジケータ値の変化を含む。図19A図19Cは、局所的EM歪みを示し得るメトリックの変化を示すこれらのメトリックのグラフを提供する。特に、図19Aは、インジケータ値メトリックの変化を示し、図19Bは、直線速度メトリックを示し、図19Cは、角速度メトリックを示す。
【0094】
特定の実装態様では、システムは、インジケータ値Ind、器具の遠位端300の位置
【0095】
【数1】
及び器具の遠位端300の角度配向
【0096】
【数2】
のうちの1つ又は2つ以上を計算することができる。これらの値は、器具のナビゲーション及び位置特定においてシステムによって使用され得る。特定の実装態様では、インジケータ値Ind、位置
【0097】
【数3】
及び角度位置
【0098】
【数4】
値は、コイル305から受信されたEMセンサ信号に基づいて生成された5DoF測定値(例えば、3つの位置DoF及び2つの角度DoF)に基づいて計算され得る。インジケータ値Indは、位置
【0099】
【数5】
及び角度配向
【0100】
【数6】
測定値の質を表す値であり得る。したがって、インジケータ値Indは、システムによって閾値と比較されて、位置
【0101】
【数7】
及び角度配向
【0102】
【数8】
測定値が、ナビゲーション及び位置特定において使用されるのに十分に正確であるかどうかが判定され得る。特定の実施形態では、インジケータ値Indは、コイル305から受信された5DoF測定値と、剛体としての内視鏡先端のモデルとの間の適合度(goodness of fit、GOF)アルゴリズムを使用して計算され得る。
【0103】
図19A図19Cに示されているグラフの各々は、外科用器具(例えば、鉗子)が内視鏡を通過するときに判定され得る特定のメトリックを示す。これらのグラフは、同じイベントに基づいて生成され、ここでは、内視鏡が静止したままである間、鉗子を内視鏡に5回通過させた。
【0104】
具体的には、図19Aは、インジケータ値メトリックの変化ΔIndを示し、これは、Hz(例えば、1/秒)で測定される。鉗子が内視鏡を通過した5つのイベントは視認可能であり、ここで、インジケータ値メトリックの変化ΔIndは、インジケータ値メトリックの変化ΔIndにおけるノイズより大幅に高いレベルまで増加する。インジケータ値メトリックの変化は、以下の式を使用して、インジケータ値の時間変化として計算され得る。
【0105】
【数9】
式中、ΔIndは、インジケータ値メトリックの変化であり、Indは、インジケータ値であり、tは、現在の時間(例えば、インジケータ値がサンプリング及び/又は判定される時間)であり、ti-1は、前の時間である。
【0106】
同様に、図19Bは、直線速度メトリックvを示し、これは、mm/秒で測定される。ここで、鉗子移動イベントの各々は、ベースライン直線速度値のノイズより大きい直線速度値として見える。直線速度メトリックは、以下の式を使用して、内視鏡の位置の時間変化として計算され得る。
【0107】
【数10】
式中、vは、直線速度メトリックであり、
【0108】
【数11】
は、器具の遠位端300の位置である。
【0109】
最後に、図19Cは、角速度メトリックωを示し、これは、rad/秒で測定される。角速度メトリックは、以下の式を使用して、内視鏡の配向の時間変化として計算され得る。
【0110】
【数12】
式中、ωは、角速度メトリックであり、
【0111】
【数13】
は、器具の遠位端300の角度配向である。
【0112】
図19A図19Cに示されるように、計算されたメトリックの各々は、5つの個々の内視鏡移動イベントの各々について、ベースライン値からの偏差を示す(例えば、ベースライン値が0に設定される)。適切な閾値又は限界を選択することにより、ベースラインからのこれらの偏差を検出することができる。
【0113】
メトリックのベースライン値が計算された後、システムは、第1の時間後の期間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号からのEMセンサ信号に基づいて、第1の時間後の期間中に1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上の更新された値を定期的に計算することができる。例えば、システムは、局所的EM歪みが発生しているかどうかを判定するために、メトリックの更新値を定期的に計算することができる。システムが、器具が静止していると判定した場合、メトリックのうちの1つ又は2つ以上の変化は、局所的EM歪みを示し得る。
【0114】
したがって、システムは、1つ又は2つ以上の更新値と1つ又は2つ以上のベースライン値との間の差が閾値より大きいかどうかを判定することができる。計算されているメトリックの各々に対して、異なる閾値を設定することができる。差が閾値より大きい場合、システムは、EM場が歪んでいると判定することができる。
【0115】
図20は、局所的EM歪みが発生したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。方法2000は、ブロック2001において開始する。ブロック2005において、システムは、デバウンス期間がアクティブであるかどうかを判定する。本明細書で使用される場合、デバウンス期間は、一般に、EM歪みが発生したと判定され得る頻度を制限する所定の期間を指し得る。例えば、特定の実装態様では、デバウンス期間がアクティブである間、システムは、新しいメトリックを計算せず、及び/又はEM歪みが発生したかどうかを判定するためにメトリックを評価しない。システムは、EM歪みがデバウンス期間全体に対して効果的に発生したと判定し、デバウンス期間が満了すると、EM歪みが発生したかどうかを判定することを再開することができる。システム内のデータとして記憶されたデバウンスフラグを使用して、デバウンス期間がアクティブであることを示すことができる。デバウンス期間は、EM歪みがどのくらいの頻度でフラグ付けされ得るかを定義する間隔として設定され得る。例えば、EM歪みの新しい発生は、デバウンス期間がアクティブである間に設定されない場合がある。
【0116】
デバウンス期間がアクティブである場合、方法2000はブロック2030に続き、局所的EM歪みが発生したと判定される。デバウンス期間がアクティブでない場合、方法2000はブロック2010に続き、システムは、いくつかのメトリックを計算する。一例では、システムは、直線速度メトリック、角速度メトリック、及びインジケータ値メトリックの変化を計算する。ブロック2015において、システムは、メトリックの各々の標準偏差を判定することを含む、時間の窓にわたって記憶された、計算されたメトリックを分析する。ブロック2020において、システムは、分析されたメトリックが局所的EM歪みを示すかどうかを判定する。これは、メトリックの各々を対応する閾値と比較することと、標準偏差を対応する閾値と比較することとを含み得る。場合によっては、システムは、局所的歪みイベントの発生を経時的ないくつかの基準と比較することによって、偽陽性の発生を制限しようと試みることができる。例えば、一実施形態では、所与の時間窓における定数又はある数の比較が局所的EM歪みを示す場合、システムは、メトリックが局所的EM歪みを示すことを判定し得る。そのようなアプローチは単なる1つのアプローチであり、他の実施形態は、メトリックがいくつかの数の連続的比較を示すときに、局所的EM歪みが発生したと判定することなど、任意の好適なアプローチを使用し得ることを理解されたい。
【0117】
ブロック2025において、メトリックが局所的EM歪みを示すと判定することに応答して、システムは、デバウンス期間をアクティブ化し、これは、デバウンスフラグをアクティブ化することを含み得る。ブロック2030において、システムは、局所的EM歪みが発生したと判定し、これは、EM歪みフラグ及び/又は局所的EM歪みフラグを設定することを含み得る。方法は、ブロック2035において終了する。システムは、局所的EM歪みを検出することに応答して、いくつかのアクションを実行し得ることを理解されたい。いくつかの例示的な応答を以下に説明する。
【0118】
B.大域的歪み。
EM歪みの別の起こり得る源は、大域的EM歪みである。本明細書で使用される場合、大域的EM歪みは、一般に、環境100内に位置するが、器具の遠位端に直接隣接していない源によって引き起こされるEM歪みを指す。例えば、特定の外科処置は、患者の隣のCアームの配置を含み得る蛍光透視撮像を使用して実行され得る。蛍光透視処置のための例示的なセットアップが図5に示されており、図5において、Cアームは、放射器及び検出器が患者の両側に位置決めされるように置かれるように、位置決めされている。Cアームは、外科処置の初期位置として腹背(anteroposterior、AP)位置に位置決めされ得る。
【0119】
蛍光透視法の技術的要件により、Cアームは典型的には、EM場生成器110によって生成されたEM場に歪みを引き起こす可能性のあるいくつかの構成要素を含む。例えば、放射器によるX線の生成は、X線を生成することの副産物としてEM場を生成し及び/又はEM場に影響を与える構成要素を必要とし得る。しかしながら、Cアームが同じ位置に留まっている間は、Cアームによって引き起こされるEM場歪みは、比較的静的であり得る。すなわち、Cアームによって引き起こされるEM場歪みは、EMセンサ(例えば、EMパッチセンサ105及びEM器具センサ305)によって測定されるEM場を歪ませ得るが、EM場が安定している場合、EM空間測定システムは、依然として器具を効果的にナビゲートし、器具の位置特定することができる可能性がある。しかしながら、ナビゲーション及び/又は位置特定中にCアームの位置が移動すると、EM場は動的に歪む場合があり、EM空間測定システムによって計算された器具の位置及び/又は配向が、器具の実際の位置及び配向からシフトさせられる場合がある。したがって、EM空間測定システムが大域的EM歪みイベントに作用することを可能にするために、そのような大域的EM歪みイベントの検出が望ましい。大域的EM歪み源の例としてCアームが提供されているが、他の大域的EM歪み源も検出され得る。大域的EM歪みの源になり得る他の材料には、導電性材料及び磁性材料、並びに任意のEM場源が含まれる。
【0120】
図21は、本開示の態様による、大域的EM歪みを検出するために使用され得るシステムの実施形態を示す。図21の実施形態は、EM場生成器110と、EM場生成器110の作業ボリューム内に位置決めされた3つのEMパッチセンサ105と、を含む。上で考察されるように、EMパッチセンサ110は、患者の呼吸を検出するために使用され得、これは、EMパッチセンサ110上に位置するEM器具センサを介して器具のナビゲーション及び位置特定を補正するために使用され得る。更に、パッチセンサ105を使用して、大域的EM歪みを検出することができ、これは以下でより詳細に説明される。
【0121】
図21の実施形態では、パッチセンサ105は、3つのパッチセンサP0、P1、及びP2を含む。しかしながら、他の実装態様は、より多くの又はより少ないパッチセンサ105を含み得る。EM空間測定システムがより多くの数のパッチセンサ105を含む場合、システムは、大域的EM歪みを追跡するために使用され得るより多くの数のメトリックを計算することができ、歪み追跡の堅牢性を改善することができる。
【0122】
患者の上に置かれると、EMパッチセンサ105の各々は、EM場の検出に応答して1つ又は2つ以上のEMセンサ信号を生成するように構成され得る。コイル305と同様に、EM空間測定システムは、EMパッチセンサ105から受信されたEMセンサ信号に基づいて5DoF測定値を生成することができ得る。少なくとも2つのEMパッチセンサ105が利用可能であるとき、システムは、相対位置メトリック及び相対角度メトリックを計算することができ得る。更に、少なくとも3つのEMパッチセンサ105が利用可能である場合、システムは、パッチ面積メトリック及びパッチ空間6DoFメトリックを計算することができ得る。
【0123】
EMパッチセンサは、患者の身体上の様々な場所に取り付けられる。したがって、相対距離、相対角度、パッチ空間、及びパッチ面積メトリックは、比較的安定であり、ユーザの呼吸のみに基づいて変化し得る。ユーザの呼吸を追跡することにより、システムは、呼吸に引き起こされる計算されたメトリックの変化をフィルタリング除去することができる。したがって、呼吸変動がメトリックからフィルタリングされると、残りの変化は、大域的EM歪みに起因し得る。
【0124】
相対位置メトリックは、EMパッチセンサのうちの2つ(例えば、P1及びP2)の間の相対位置を表し得る。EMパッチセンサP1及びP2の相対位置メトリックは、以下の式を使用して計算され得る。
【0125】
【数14】
式中、dP1P2relは、相対位置メトリックであり、P1及びP2は、EMパッチセンサP1及びP2のそれぞれのX座標であり、P1及びP2は、EMパッチセンサP1及びP2のそれぞれのY座標であり、P1及びP2は、EMパッチセンサP1及びP2のそれぞれのZ座標である。
【0126】
相対角度メトリックは、EMパッチセンサのうちの2つ(例えば、P1及びP2)のZ軸間の相対角度であり得る。相対角度メトリックは、以下の式を使用して計算することができる。
【0127】
【数15】
式中、θrelは、相対角度メトリックであり、P1Rzは、EMパッチセンサP1のZ軸であり、P2Rzは、EMパッチセンサP2のZ軸である。
【0128】
パッチ面積メトリックは、EMパッチセンサによって作成された面積であり得、以下の式を使用して計算され得る。
【0129】
【数16】
面積がパッチ面積メトリックである場合、相対位置は、式(4)に従って計算され、sは、以下の式を使用して計算され得る。
【0130】
【数17】
【0131】
パッチ空間6DoFメトリックは、EMパッチセンサによって作成された空間の6DoF位置及び配向であり得、以下の式を使用して計算され得る。
【0132】
【数18】
式中、P0は、EM場生成器110空間におけるEMパッチセンサP0の位置であり、原点として使用され、P1は、EM場生成器110空間におけるEMパッチセンサP1の位置であり、P2は、EM場生成器110空間におけるEMパッチセンサP2の位置である。式(8)~(10)によって計算されたパッチ空間メトリックのX、Y、及びZの例を図21に示す。
【0133】
メトリックのベースライン値が計算された後、システムは、第1の時間後の期間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号からのEMセンサ信号に基づいて、第1の時間後の期間中に1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上の更新された値を定期的に計算することができる。例えば、システムは、大域的EM歪みが発生しているかどうかを判定するために、メトリックの更新値を定期的に計算することができる。メトリックの値の変化は、患者の呼吸によってのみ影響を受けるため、更新されたメトリックのうちの1つ又は2つ以上と、1つ又は2つ以上のメトリックのベースライン値との間の差が閾値より大きい場合、システムは、大域的EM歪みが発生したと判定することができる。更に、特定の実施形態では、呼吸は、計算されたメトリックからフィルタリング除去され得、したがって、メトリックの残りの変化は、EM場の歪みによって引き起こされると判定され得る。
【0134】
したがって、システムは、1つ又は2つ以上の更新値と1つ又は2つ以上のベースライン値との間の差が閾値より大きいかどうかを判定することができる。計算されているメトリックの各々に対して、異なる閾値を設定することができる。差が閾値より大きい場合、システムは、EM場が歪んでいると判定することができる。
【0135】
図22は、大域的EM歪みが発生したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。方法2200は、ブロック2201において開始する。ブロック2205において、システムは、計算されたメトリックの各々についてベースラインメトリックを判定する。これは、メモリからメトリックのベースライン値を取得すること、又はEMパッチセンサ105から受信されたEMセンサ信号に基づいてベースラインメトリックを計算することを含み得る。ブロック2210において、システムは、ベースラインメトリックの質が閾値質より大きいかどうかを判定する。ベースラインメトリックの質が閾値質以下である場合、方法2200は終了し、方法2200は、より良い質のベースラインメトリックを収集しようと試みることによって繰り返すことができる。
【0136】
ベースラインメトリックの質が閾値質より大きい場合、方法2200はブロック2215に続き、システムは、いくつかのメトリックを計算する。一例では、システムは、相対距離メトリック、相対角度、メトリック、6DoFパッチ空間メトリック、及びパッチ面積メトリックを計算する。ブロック2220において、システムは、メトリックの各々の標準偏差を判定することを含む、時間の窓にわたって記憶された、計算されたメトリックを分析する。ブロック2225において、システムは、分析されたメトリックが大域的EM歪みを示すかどうかを判定する。これは、メトリックの各々を対応する閾値と比較することと、標準偏差を対応する閾値と比較することとを含み得る。定数の比較が大域的EM歪みを示す場合、システムは、メトリックが大域的EM歪みを示すことを判定し得る。
【0137】
ブロック2230において、メトリックが大域的EM歪みを示すと判定することに応答して、システムは、大域的EM歪みが発生したと判定し、これは、EM歪みフラグ及び/又は大域的EM歪みフラグを設定することを含み得る。方法は、ブロック2235において終了する。システムは、大域的EM歪みを検出することに応答して、いくつかのアクションを実行し得ることを理解されたい。いくつかの例示的な応答を以下に説明する。
【0138】
C.動き検出。
EMデータに基づく器具のナビゲーション及び位置特定はまた、患者及びEM場生成器110のうちの1つ又は2つ以上が動かされるときに悪影響を受ける可能性がある。一般に、EM場生成器110又は患者の移動には2つのシナリオがある。第一に、EM場生成器110又は患者を移動させ、新しい位置に落ち着かせ得る。第二に、EM場生成器110又は患者は、衝撃力を受け(例えば、ぶつけられ)、衝撃力を受ける前とほぼ同じ位置に戻る前に所定の位置に一時的な振動を経験し得る。患者又はEM場検出器110のいずれかの移動は、器具の移動、局所的EM歪み、及び/又は大域的EM歪みとして誤って解釈され得るため、EM場生成器110又は患者の移動を検出することが望ましい場合がある。
【0139】
患者のEMパッチセンサ105間の相対距離は比較的安定であるため、EM場生成器110又は患者の移動は、EMパッチセンサ105の各々とEM場生成器110との間の計算された絶対距離の変化をもたらす。そのような動きはまた、EMパッチセンサ105とEM場生成器110との間の計算された絶対角度の変化をもたらし得る。
【0140】
少なくとも1つのEMパッチセンサ105が利用可能であるとき、システムは、絶対位置メトリック及び絶対角度メトリックを計算することができ得る。更に、少なくとも3つのEMパッチセンサ105が利用可能である場合、システムは、式(8)~式(10)に関連して説明されるように、パッチ空間6DoFメトリックを使用することができる。少なくとも1つのメトリックの追加の例としては、場生成器に対するEMセンサの各々の絶対位置、場生成器に対するEMセンサの絶対位置の2乗の合計のベキ根、場生成器に対するEMセンサの各々の絶対角度、場生成器に対するEMセンサの絶対角度の2乗の合計のベキ根、並びにEMセンサによって作成された空間の位置及び配向、が挙げられる。
【0141】
絶対位置メトリックは、EMパッチセンサ105のうちの所与の1つとEM場生成器110との間の絶対距離を表すことができる。絶対位置メトリックは、以下の式を使用して計算することができる。
【0142】
【数19】
式中、Dabsは、絶対位置メトリックであり、Pは、X軸におけるEM場生成器110に対するEMパッチセンサ105の位置であり、Pは、Y軸におけるEM場生成器110に対するEMパッチセンサ105の位置であり、Pは、Z軸におけるEM場生成器110に対するEMパッチセンサ105の位置である。
【0143】
絶対角度メトリックは、EMパッチセンサ105のうちの所与の1つとEM場生成器110との間の絶対角度を表すことができる。絶対角度メトリックは、以下の式を使用して計算することができる。
【0144】
【数20】
式中、θabsは、絶対角度メトリックであり、PRzは、EMパッチセンサP1のZ軸であり、FGRzは、EM場生成器110のZ軸である。
【0145】
EM場生成器110及び/又は患者の移動は一時的であるため、EM空間測定システムは、患者及び/又はEM場生成器110が移動している期間を判定するように構成され得る。
【0146】
したがって、EM追跡システムは、EMパッチセンサによって生成されたEMセンサ信号に基づいて、患者及び/又はEM場生成器110の移動を検出することができ得る。例えば、システムは、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて少なくとも1つのメトリックのベースライン値を計算することができる。少なくとも1つのメトリックのベースライン値は、第1の時間に対応し得る。一実施形態では、第1の時間は、内視鏡を患者に挿入する前であり得る(例えば、ベースラインメトリックは術前測定値であり得る)。しかしながら、移動検出のために、ベースライン値は、メトリックの最新の安定値であり得る(例えば、メトリックの変化は、期間の閾値未満である)。
【0147】
EM追跡システムは、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて少なくとも1つのメトリックの更新値を計算することができる。少なくとも1つのメトリックの更新値は、第1の時間の後の第2の時間に対応し得る。次いで、システムは、メトリックの更新値をメトリックのベースライン値と比較することができる。メトリックの更新値とベースライン値との間の差が閾値より大きい場合、システムは、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つが、第1の時間及び第2の時間を含む期間中に移動したと判定することができる。
【0148】
システムが、患者及びEM場生成器110のうちの1つが移動したと判定すると、システムは、患者又はEM場生成器110のうちの1つがその姿勢を変化させた(例えば、新しい位置に移動した)かどうかを判定することができる。例えば、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つが移動したと判定することに応答して、システムは、第2の時間に続く第3の時間におけるEMセンサの位置決めの変化の頻度に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて、少なくとも1つのメトリックの頻度値を計算することができる。次いで、システムは、頻度値を閾値頻度値と比較することができる。頻度値が閾値頻度値より大きい場合、システムは、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つがその姿勢を変化させたと判定することができる。
【0149】
EM追跡システムはまた、患者及びEM場生成器110のうちの1つが衝撃力を受け、初期状態に戻るかどうかを判定し得る。例えば、システムは、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つが移動したと判定することに応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて、少なくとも1つのメトリックの後続の値を計算することができる。少なくとも1つのメトリックの後続の値は、第2の時間に続く第3の時間におけるEMセンサの位置決めに対応し得る。次いで、システムは、後続の値がベースライン値の誤差閾値内にあることに応答して、場生成器が衝撃力を受け、衝撃力を受けた後に初期状態に戻ったと判定し得る。
【0150】
後続の値を計算するための第3の時間を選択する前に、システムは、少なくとも1つのメトリックの間隔値が、第3の時間の前の時間間隔にわたって安定化したと判定し、少なくとも1つのメトリックの間隔値が安定化したことを判定することに応答して、第3の時間を選択することができる。したがって、システムは、患者又はEM場生成器110が新しい姿勢に移動したか、又はその初期姿勢に落ち着いたかどうかを判定する前に、患者又はEM場生成器110が最終姿勢で落ち着いたと判定し得る。
【0151】
一実装態様では、システムは、時間間隔中の少なくとも1つのメトリックの最大値及び最小値に基づいて、患者又はEM場生成器110の姿勢が安定化したと判定することができる。例えば、システムは、時間間隔中に少なくとも1つのメトリックの最大値及び最小値を計算し、少なくとも1つのメトリックの最大値と最小値との間の差を計算し、少なくとも1つのメトリックの最大値と最小値との間の差が閾値差値未満であることに応答して、少なくとも1つのメトリックの間隔値が時間間隔にわたって安定化したと判定することができる。少なくとも1つのメトリックへの変化が閾値差値未満であると判定されるとき、システムは、メトリックの変化がノイズに起因し、患者又はEM場生成器110の振動ではないことを判定し得る。
【0152】
別の例では、システムは、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つが移動したことを判定することに応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて、少なくとも1つのメトリックの後続の値を計算することができる。少なくとも1つのメトリックの後続の値は、第2の時間に続く第3の時間におけるEMセンサの位置決めに対応し得る。次いで、システムは、後続の値がベースライン値の誤差閾値の外側にあることに応答して、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つがその姿勢を変化させたと判定し得る。例えば、上で考察されるように、メトリックは、EMパッチセンサ105のうちの1つ又は2つ以上の絶対位置又は絶対角度であり得る。絶対差又は絶対角度のベースライン値が変化し、新しい値において安定している場合、これは、患者及びEM場生成器110のうちの少なくとも1つが移動し、新しい位置に落ち着いていることを示す。
【0153】
図23は、患者及びEM場生成器のうちの1つが移動したことを判定する例示的な方法論を示すフローチャートを提供する。方法2300は、ブロック2301において開始する。ブロック2305において、システムは、計算されたメトリックの各々についてベースラインメトリックを判定する。これは、メモリからメトリックのベースライン値を取得すること、又はEMパッチセンサ105から受信されたEMセンサ信号に基づいてベースラインメトリックを計算することを含み得る。ブロック2310において、システムは、ベースラインメトリックの質が閾値質より大きいかどうかを判定する。ベースラインメトリックの質が閾値質以下である場合、方法2300は終了し、方法2300は、より良い質のベースラインメトリックを収集しようと試みることによって繰り返すことができる。
【0154】
ベースラインメトリックの質が閾値質より大きい場合、方法2230はブロック2315に続き、そこで、システムは、いくつかのメトリックを計算する。一例では、システムは、絶対差メトリック、絶対角度メトリック、及び6DoFパッチ空間メトリックを計算する。ブロック2320において、システムは、メトリックの各々の標準偏差を判定することを含む、時間の窓にわたって記憶された、計算されたメトリックを分析する。ブロック2325において、システムは、分析されたメトリックが、患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが移動されていること、又は患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが衝撃力を受けていることを示すかどうかを判定する。これは、メトリックの各々を対応する閾値と比較することと、標準偏差を対応する閾値と比較することとを含み得る。定数又はある閾値数の比較が、患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが移動されていることを示す場合、方法はブロック2330に続く。定数又はある閾値数の比較が、患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが衝撃力を受けていることを示す場合、方法2300はブロック2335に続く。
【0155】
ブロック2330において、メトリックが、患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが移動されていることを示すと判定することに応答して、システムは、EM歪みフラグ及び/又は移動フラグを設定することができる。ブロック2330において、メトリックが、患者及びEM場生成器のうちの少なくとも1つが衝撃力を受けていることを示すと判定することに応答して、システムは、EM歪みフラグ及び/又は衝撃力フラグを設定することができる。方法は、ブロック2235において終了する。システムは、EM場生成器の移動を検出することに応答して、いくつかのアクションを実行し得ることを理解されたい。いくつかの例示的な応答を以下に説明する。
【0156】
D.EM歪みの検出に対する応答
EM追跡システムは、EM歪みの検出に応答して、いくつかの技術のうちの1つ又は2つ以上を実行することができる。実行される特定の技術は、検出されたEM歪みのタイプ(例えば、局所的又は大域的EM歪み、移動に起因する歪みなど)、EM歪みの大きさ、EM歪みの場所など、のちの1つ又は2つ以上に依存し得る。
【0157】
一実装態様では、システムは、器具のナビゲーション及び/又は位置特定において、EMデータに与えられる重みを使用するか、又はそうでなければ制限することを控えることができる。EMデータを使用することを控えると、システムによって実行されるナビゲーション及び/又は位置特定は、EM歪み中の他のタイプのデータに依存し得る。具体的には、一実施形態では、システムは、EM歪みフラグが設定されたことを検出し、次いで、EM歪みフラグが設定されていることの結果として、EM場所ベースのアルゴリズムに対応する信頼値(又は任意の他の好適な重み付け)を低下させることによって、EMセンサ信号に基づいて器具の遠位端の位置を判定することのために与えられる重みを控えるか又はそうでなければ制限することができる。信頼値の使用及び異なる場所特定アルゴリズムへの重み付けは、2016年9月16日に出願の米国特許出願第15/268,238号で考察されており、その内容は全体が本明細書に組み込まれる。
【0158】
いくつかの実装態様では、EM場が歪んでいると判定することに応答して、システムは、歪みの量を計算することができる。EM場歪みの量は、計算されたメトリックのうちの1つ又は2つ以上の変化に比例し得る。この実装態様では、システムは、第2の時間において計算された1つ又は2つ以上の更新値と、第2の時間の前の第1の時間に計算された1つ又は2つ以上のベースライン値とに基づいて、EM場の歪みの量を計算し得る。システムは、歪みの量のインジケーションを符号化し、符号化データをレンダリングするように構成されたディスプレイに歪みの量の符号化されたインジケーションを提供することができる。したがって、ユーザにEM場歪みの量を通知することができる。次いで、ユーザは、外科処置中にEMデータに基づいてナビゲーションを使用すべきかどうかを判定することができる。
【0159】
特定の実施形態では、システムは、ナビゲーション及び/又は位置特定技術において使用されるEMデータの重みを変更するための歪みの量を使用し得る。EM歪みが増加するにつれて、システムは、医療用器具の遠位先端の場所データ96を生成するときに、EMデータにより低い重みを割り当てることができる。
【0160】
システムはまた、EM場の歪みが閾値歪み値より大きい領域を判定することができる場合がある。例えば、相対距離メトリックを使用して、EMパッチセンサのうちの1つを取り囲む領域がEM歪みを経験していると判定することができる。すなわち、EMパッチセンサP1とEMパッチセンサP0及びP2の各々との間の相対距離は閾値より大きく変化したが、EMパッチセンサP0とEMパッチセンサP2との間の相対距離は実質的に変化していない場合、システムは、EMパッチセンサP1の近くの領域内のEM場が歪んでいると判定し得る。
【0161】
EMパッチセンサ105のうちの1つの近くのEM場が歪んでいると判定することに応答して、システムは、識別されたEMパッチセンサ105から受信されたEMデータに印加される重みを調整(例えば、低減)することができる。システムはまた、EM場歪みが発生している領域をユーザに示すことができる。次いで、ユーザは、標的部位が歪んだ領域内にあるかどうかに基づいて、EMデータを使用してナビゲーションを継続すべきかどうかを判定することができる。代替的に、システムは、EMの歪んだ領域に対する器具の現在の場所に基づいて、ナビゲーションのためにEMデータを使用し続けるべきかどうかを自動的に判定することができる。
【0162】
特定の実施形態では、システムはまた、患者の管腔ネットワークを表すモデルにアクセスし、(i)1つ又は2つ以上のベースライン値、及び(ii)1つ又は2つ以上の更新値のうちの少なくとも1つに基づいて、EM場の座標フレームとモデルの座標フレームとの間のマッピングを計算することができる。システムは、EM場が歪んでいると判定することに応答して、マッピングを計算する際に、1つ又は2つ以上の更新された値を使用することを更に控えることができる。
【0163】
E.位置合わせ。
ナビゲーション及び/又は位置特定のためにEMデータを使用する外科処置を実行する前に、患者をEM場生成器110と位置合わせすることが望ましい。より正確には、EM場生成器110を、外科処置が行われる患者の解剖学的特徴と位置合わせすることが望ましい。そのようない位置合わせ処置を実行する1つの利点は、EM場生成器110が、EMセンサがEM場をより正確に測定することができる作業ボリュームを有し得ることである。すなわち、EMセンサのうちの1つ又は2つ以上が作業ボリュームの外側にあるとき、EMセンサによって生成されたEMセンサ信号は、ナビゲーション及び/又は位置特定、呼吸追跡、及び/又はEM歪み検出のために十分に信頼できない場合がある。
【0164】
上で考察されるように、いくつかのEMパッチセンサ105は、関心領域を取り囲むか、又はそれに少なくとも部分的に重複する所定の場所で患者に置かれ得る。関心領域は、外科処置が行われる患者の解剖学的特徴であり得る。解剖学的特徴の一例は、管腔ネットワーク140などの管腔ネットワークである。EM追跡システムは、EMパッチセンサ105を患者に位置決めする場所、及びEMパッチセンサ105がEM場生成器110の作業ボリューム内にあるようにEM場生成器110を位置決めする場所に関して、ユーザにガイダンスを提供することができる。EMパッチセンサ105が適切に位置決めされると、作業ボリューム内のEMパッチセンサの位置決めは、患者の関心領域がEM場生成器110と位置合わせされることを保証し得る。
【0165】
EM場生成器110を患者と位置合わせするための例示的な処置は、気管支鏡検査処置に関連して説明される。しかしながら、この処置は、EMデータがナビゲーション及び/又は位置特定に使用される任意のタイプのロボット支援外科処置に対して修正され得る。
【0166】
最初に、ユーザは、患者上で1つ又は2つ以上のEMパッチセンサ105を位置決めすることができる。気管支鏡検査のために、ユーザは、EMパッチセンサ105を置いて、関心領域(例えば、患者の肺)を取り囲むか、又はそれに少なくとも部分的に重複させる。システムが3つのEMパッチセンサ105を含む場合、ユーザは、第1のEMパッチセンサを患者の中央胸骨に置き、第2のEMパッチセンサを患者の左側の第8肋骨に置き、第3のEMパッチセンサを患者の右側の第8肋骨に置くことができる。EMパッチセンサ105の上記の配置は単なる例示であり、EMパッチセンサ105は、関心領域と重複する他の場所に置かれ得る。
【0167】
図24は、EMパッチセンサ105がEM場生成器の作業ボリューム内に置かれる例を提供する。EMパッチセンサ105が置かれた後、ユーザは、EMパッチセンサ105がEM場生成器110の作業ボリューム400内に位置するようにEM場生成器110を位置決めすることができる。図24は上から見たときの作業ボリューム400を示しているが、作業ボリューム400は、EMパッチセンサ105が位置合わせ中にその中に置かれる3次元ボリュームを画定し得る。
【0168】
ユーザは、EM場生成器110を、ベッドレールに取り付けられ得るホルダーに取り付けることができる。EM追跡システムによって提供されるガイダンスを使用すると、ユーザは、EM場生成器110を回転させて、EMパッチセンサ105のすべてが作業ボリューム400内に位置するようにすることができる。ディスプレイを介して(例えば、タッチスクリーン26を介して)フィードバックを提供するために、EM追跡システムは、EMパッチセンサ105によって生成された1つ又は2つ以上のEMパッチセンサ信号に基づいて、EM場生成器110に対するEMパッチセンサ105の位置を判定することができる。システムは、EM場の作業ボリュームに対するEMパッチセンサ105の位置の表現を符号化することができる。EMパッチセンサ105の位置の表現の符号化は、EMパッチセンサ105の相対位置が作業ボリュームの表現に対して表示される画像(又はビデオを形成するための一連の画像)生成することを含み得る。符号化は、画像を復号化し、ディスプレイによってレンダリングすることができるように、画像コーデック又はビデオコーデックを使用して画像(又はビデオ)を符号化することを更に含み得る。次いで、システムは、符号化データをレンダリングするように構成されたディスプレイに、位置の符号化表現を提供することができる。
【0169】
ユーザは、EMパッチセンサ105が作業ボリューム内に位置決めされるように、EM場生成器110を回転させる際にディスプレイによって提供される視覚的フィードバックを使用し得る。EMパッチセンサ105がEM場生成器110と回転可能に位置合わせされると、ユーザは、視覚的に表示される作業ボリュームによって定義されるようにEMパッチセンサ105がEM場生成器110から事前定義された距離内にあるように、場生成器をEMパッチセンサ105のより近くに位置決めすることができる。図24を参照すると、作業ボリュームは、複数のサブボリュームを含むことができ、これらは、好ましい405、許容可能410、及び危険415のサブボリュームを定義することができる。EM場の強度は、EM場生成器110からより離れると減衰する可能性があるため、EMパッチセンサ105を、危険415のサブボリュームの上方にある、好ましい405又は許容可能410のサブボリューム内に位置決めすることが望ましい場合がある。
【0170】
少なくとも1つの実装態様では、システムは、場生成器の第1及び第2のサブボリュームの各々に対するEMパッチセンサ105の位置の表現を符号化することができる。第1のサブボリュームより大きく、第1のサブボリュームを包囲し、したがって、少なくとも1つの実装態様では、第2のサブボリュームを包囲する第2のサブボリュームは、危険415のサブボリュームであり得る。システムは、ユーザがEM場生成器110を移動させることによってEMパッチセンサ105を第1のサブボリューム内に再位置決めすることができるように、第1及び第2のサブボリュームの各々に対するEMパッチセンサ105の位置の符号化表現をディスプレイに提供することができる。
【0171】
他の実装態様では、第1及び第2のサブボリュームは、好ましい405及び許容可能410のサブボリュームに対応し得る。これらの実装態様では、システムは、EMパッチセンサ105が第1及び第2のサブボリュームのうちの少なくとも1つ内に位置決めされるように、EM場生成器110を位置決めするためのユーザに対するユーザ命令を符号化し、符号化されたユーザ命令をディスプレイに提供することができる。
【0172】
ユーザは、EM場生成器110の回転を繰り返し、EMパッチセンサ105のすべてが作業ボリューム内にあるまでEM場生成器110の距離を調整することができる。その後、ユーザは、外科処置の準備においてEM場生成器110の位置をロックすることができる。
【0173】
特定の実装態様では、EMパッチセンサ105のすべてを作業ボリューム内に置くことが可能ではない場合がある。例えば、EM場生成器110は、大きい関心領域を有する患者のためのEMパッチセンサ105のすべてを包含するのに十分な大きい作業ボリュームを生成しない場合がある。これらの実装態様では、システムは、定義された数のEMセンサが第1の作業ボリューム内に位置決めされるように、場生成器を位置決めするためのユーザ命令を符号化し、符号化されたユーザ命令をディスプレイに提供することができる。例えば、3つのEMパッチセンサ105が使用される場合、システムは、EMパッチセンサ105のうちの少なくとも2つが作業ボリューム内に位置決めされるように、ユーザに対する命令を符号化することができる。
【0174】
一実装態様では、システムは、(i)EMセンサのうちの第1のものを患者の中間胸骨に置き、(ii)EMセンサのうちの第2のものを患者の左側の第8肋骨に置き、(iii)EMセンサのうちの第3のものを患者の左側の第8肋骨に置くためのユーザ命令を符号化することができる。したがって、EM場生成110の位置決めの前に、システムは、EMパッチセンサ105の配置のための命令をユーザに提供することができる。システムは、ディスプレイに、患者上で第1及び第3のEMセンサを位置決めするための、符号化されたユーザ命令を提供することができる。
【0175】
別の実装態様では、システムは、例えば、タッチスクリーン26を介して、第2及び第3のEMセンサのうちの1つを作業ボリュームと位置決めすることができないというユーザからの入力を受信するように構成され得る。それに応答して、システムは、第2及び第3のEMセンサのうちの1つを、第2及び第3のEMセンサのうちの1つの現在の位置よりも、場生成器のより近くに再位置決めするためのユーザ命令を符号化することができる。例えば、命令は、第2のEMパッチセンサを患者の第6の左側肋骨に再位置決めするための命令を符号化することができる。システムは、ディスプレイに、第2及び第3のEMセンサのうちの1つを再位置決めするための、符号化されたユーザ命令を提供することができる。
【0176】
場生成器を患者の解剖学的構造と位置合わせするための技術的特徴に関する上記のシステムのいくつかの実施形態は、いくつかの利点を有し得ることを理解されたい。例えば、場生成器の配置及び位置合わせに関してユーザにフィードバックを提供することにより、システムのセットアップを簡略化することができる。そのような簡略化されたセットアップは、システムが適切に位置合わせされているかどうかにおけるユーザのフラストレーションを回避させることができる。また更に、位置合わせのフィードバックは、より正確な読み取りを生成し、結果として、ナビゲーション及び/又は位置特定システムへのより良好な入力を提供することができる。
【0177】
E.EM追跡システム及び例示的なフローチャート。
図25は、本開示の様々な態様を実行することができるEM追跡システムの例を示すブロック図を示す。EM追跡システム500は、1つ又は2つ以上のEMセンサ503、プロセッサ510、及びメモリ515を含み得る。1つ又は2つ以上のEMセンサ503は、EMパッチセンサ105及び/又はEM器具センサ305として具体化され得る。EM追跡システム500は、タワー30、コンソール16、EM場生成器110、及び/又は環境100内の任意の他の構成要素のうちの1つ又は2つ以上に組み込まれ得る。更に、EM追跡システム500は、図20図24に関して上記で説明されたか、あるいは図26及び図27に関連して以下で説明される方法及び/又は技法のうちの1つ又は2つ以上を実行するように構成され得る。
【0178】
図26は、本開示の態様による、EM歪みを検出するための、EM追跡システム500又はその構成要素によって実施可能な例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図26に示される方法2600のステップは、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行され得る。便宜上、方法2600は、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行されるものとして記載される。
【0179】
方法2600は、ブロック2601において開始する。ブロック2605において、プロセッサ510は、第1の時間における第1のEMセンサの位置を示す1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上のベースライン値を計算する。1つ又は2つ以上のベースライン値の計算は、第1の時間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号の第1のセットから受信されたEMセンサ信号に基づき得る。更に、第1のEMセンサは、EM場の検出に応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号の第1のセットを生成するように構成され得る。ブロック2610において、プロセッサ510は、第1の時間の後の期間中に1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上の更新値を計算する。1つ又は2つ以上の更新値の計算は、第1の時間の後の期間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号の第1のセットからのEMセンサ信号に基づき得る。
【0180】
ブロック2615において、プロセッサ510は、1つ又は2つ以上の更新値と1つ又は2つ以上のベースライン値との間の差が閾値より大きいと判定する。ブロック2620において、プロセッサ510は、差が閾値より大きいことに応答して、EM場が歪んでいると判定する。方法2600は、ブロック2625において終了する。
【0181】
図27は、本開示の態様による、EM歪みを検出するための、EM追跡システム500又はその構成要素によって実施可能な別の例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図27に示される方法2700のことは、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行され得る。便宜上、方法2700は、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行されるものとして記載される。
【0182】
方法2700は、ブロック2701において開始する。ブロック2705において、プロセッサ510は、第1の時間における器具の遠位端の速度を示す1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上のベースライン値を計算する。1つ又は2つ以上のベースライン値の計算は、第1の時間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号から受信されたEMセンサ信号に基づき得る。器具は、器具の遠位端に位置するEMセンサを含み得る。EMセンサは、EM場の検出に応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号を生成するように構成され得る。
【0183】
ブロック2710において、プロセッサ510は、第1の時間の後の期間中に1つ又は2つ以上のメトリックの1つ又は2つ以上の更新値を計算する。1つ又は2つ以上の更新値の計算は、第1の時間の後の期間に対応する1つ又は2つ以上のEMセンサ信号からのEMセンサ信号に基づき得る。ブロック2715において、プロセッサ510は、1つ又は2つ以上の更新値と1つ又は2つ以上のベースライン値との間の差が閾値より大きいと判定する。ブロック2720において、プロセッサ510は、差が閾値より大きいことに応答して、EM場が歪んでいると判定する。方法2700は、ブロック2725において終了する。
【0184】
図28は、本開示の態様による、場生成器によって生成されたEM場内のEMセンサの位置決めを容易にするための、EM追跡システム500又はその構成要素によって実施可能な更に別の例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図28に示される方法2800のステップは、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行され得る。便宜上、方法2800は、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行されるものとして記載される。
【0185】
方法2800は、ブロック2801において開始する。ブロック2805において、プロセッサ510は、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて、場生成器に対するEMセンサの位置を判定する。EMセンサは、EM場の作業ボリュームに位置決めされたときに、EM場の検出に基づいて1つ又は2つ以上のEMセンサ信号を生成するように構成され得る。更に、EMセンサは、使用中に患者に配置するように構成され得る。ブロック2810において、プロセッサ510は、EM場の作業ボリュームに対するEMセンサの位置の表現を符号化する。ブロック2815において、プロセッサ510は、符号化データをレンダリングするように構成されたディスプレイに、位置の符号化表現を提供する。方法2800は、ブロック2820において終了する。
【0186】
図29は、本開示の態様による、患者又はEM場生成器のうちの少なくとも1つの移動を検出するための、EM追跡システム500又はその構成要素によって実施可能な更に別の例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図29に示される方法2900のステップは、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行され得る。便宜上、方法2900は、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行されるものとして記載される。
【0187】
方法2900は、ブロック2901において開始する。ブロック2905において、プロセッサ510は、EMセンサによって生成された1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて少なくとも1つのメトリックのベースライン値を計算する。少なくとも1つのメトリックのベースライン値は、第1の時間におけるEMセンサの位置決めに対応し得る。EMセンサは、EM場の検出に応答して、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号を生成するように構成され得る。EMセンサは、使用中に患者に配置するように構成され得る。ブロック2910において、プロセッサ510は、1つ又は2つ以上のEMセンサ信号に基づいて、少なくとも1つのメトリックの更新値を計算する。少なくとも1つのメトリックの更新値は、第2の時間におけるEMセンサの位置決めに対応し得る。ブロック2915において、プロセッサ510は、ベースライン値及び更新値に基づいて、患者及び場生成器のうちの少なくとも1つが、第1の時間及び第2の時間を含む期間中に移動したことを判定する。方法2900は、ブロック2920において終了する。
【0188】
F.EM歪み補償への導入。
管腔ネットワークを通る医療用器具のナビゲーションの文脈では、ナビゲーションシステムは、(例えば、術前CTスキャンに基づいて)管腔ネットワークのモデルに対する医療用器具の遠位端の位置を定期的に推定することができる。推定は、(例えば、ユーザによって命令された挿入を含み得る)ロボットコマンド及び運動学データ、医療用器具の遠位端に位置決めされた1つ又は2つ以上のEMセンサから受信されたEM場所データ、並びに/あるいは医療用器具の遠位端に位置決めされたカメラから受信された画像データを使用して判定することができる。上述のように、システムは、医療用器具の遠位端に位置決めされたEMセンサ内に電流を誘導する振動EM場を作成する場生成器(例えば、図16のEM場生成器110)を含む。EMセンサは、場生成器の作業ボリュームの近くに置かれた金属物体に敏感であり得る。そのような金属物体は、場生成器によって生成されたEM場に干渉する可能性があり、これは、医療処置中に導入されたときにEM場の歪みにつながる可能性がある。これらの歪みは、医療処置中にこれらの歪みが発生する場合、EMセンサの移動としてシステムによって誤って解釈され得、これは、医療用器具の遠位端の位置の場所の誤った推定をもたらし得る。したがって、EM歪みが存在するときにEMデータを使用して医療用器具の位置を確実に推定できるように、EM場のEM歪みを補償することが望ましい。
【0189】
内視鏡検査などの医療処置を実行する場合、医師は、処置を支援するために蛍光透視法を使用することを望む場合がある。蛍光透視を実行するために、金属Cアームを手術室に巻き取り、周囲に移動させ得る。Cアームは、典型的には、EM生成器によって生成されたEM場の特定の距離内に位置決めされたときに、EM場を歪ませる可能性がある比較的大きい金属構成要素を含む。特定のシステムでは、Cアームによって引き起こされるEM歪みは、EMベースのナビゲーションをトラックから外れさせる場合があり(例えば、医療用器具の位置の推定値はナビゲーションのために十分に信頼性がない場合があり)、したがって、医師は、例えば、ナビゲーションを維持するか又は蛍光透視法を使用するかを選択する必要がある場合がある。したがって、手術室にCアームを導入することによるEM歪みの補償なしでは、ナビゲーション及び蛍光透視法の使用は相互排他的であり得る。
【0190】
G.EM歪み補償のための例示的な技術。
本開示の態様は、蛍光透視法に使用されるCアーム又は類似の金属構造によって引き起こされるものなどのEM歪みを動的に補償することができる歪み補償のためのシステム及び方法に関する。典型的な処置の間、ユーザは、蛍光透視法のためにCアームを持ってくる前に、医療用器具の遠位端を標的の近くに駆動することができる。医療用器具が標的に近い場合、ユーザは、医療用器具を駆動しないか、又は医療用器具を非常にゆっくりと駆動する可能性が高い。特定の実装態様では、システムは、医療用器具が閾値速度未満の速度で移動している間に発生するEM歪みを補償することによって、この典型的なワークフローを利用することができる。
【0191】
特定の実装態様では、システムは、「静的」として有意なユーザ移動コマンド(例えば、閾値移動量より大きい移動のためのユーザコマンド)が存在しない期間を識別することができる。静的期間中、システムは、EMセンサによって検出された医療用器具の遠位端の位置の大きい移動がEM歪みに起因すると判定することができる。システムは、EM歪みが識別されたときにEMセンサによって検出された移動量に基づいて、歪みベクトル(オフセットとも称される)を更新することができる。システムは、オフセットを使用してEMセンサデータを使用して推定された医療用器具の遠位端の位置を補償し、それによって、ナビゲーションアルゴリズムの他の態様がEM歪みによって影響を受けないことを可能にすることができる。
【0192】
EM歪みを補償するための1つの例示的な実装態様は、図30Aに関連して提供されている。図30Aは、本開示の態様による、EM歪みを補償するための、EM追跡システム500又はその構成要素によって動作可能な例示的な方法3000を示すフローチャートである。例えば、図30Aに示される方法3000のステップは、EM追跡システム500のプロセッサ510によって実行され得る。便宜上、方法3000は、EM追跡システムのプロセッサによって実行されるものとして記載される。
【0193】
方法3000は、ブロック3001において開始する。ブロック3002において、プロセッサは、EM場所データに基づいて第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定する。例えば、プロセッサは、第1の時間における第1のEMデータ点並びに第1のコマンドされた挿入及び関節運動データを基準値として選択することができる。第1のEMデータ点は、EM場所データに基づいて、器具の遠位端の基準位置を含み得る。
【0194】
処置の残りでは、プロセッサは、ブロック3004~3010に記載されているアクションを繰り返すことができる。ブロック3004において、プロセッサは、第2の時間における器具の遠位端が「静的」であると判定することができる。第2の時間は、第1の時間に続き得る。いくつかの実装態様では、プロセッサは、以下の2つの条件が満たされるかどうかを判定することができる:(i)基準のコマンドされた挿入に関する現在のコマンドされた挿入が、第1の閾値距離以下(例えば、<=0.5mm)であり、(ii)コマンドされた関節運動に関する現在のコマンドされた関節運動が、閾値関節運動以下(例えば、<=0.1ラジアン)である。これらの条件の両方が満たされることに応答して、プロセッサは、第2の時間における器具の遠位端が静的であると判定することができる。
【0195】
器具が静的であると判定することに応答して、ブロック3006において、プロセッサは、第2の時間におけるEM場所データが、基準位置から閾値距離より大きく変化した器具の遠位端の位置を示すことを判定する。例えば、プロセッサは、第2の時間における器具の位置と基準位置との間の距離が、任意の軸に沿って第2の閾値距離より大きい(例えば、>20mm)と判定することができる。
【0196】
第2の時間における位置と基準位置との間の距離が閾値距離より大きいと判定することに応答して、ブロック3006において、プロセッサは、第2の時間における位置と第1の時間における基準位置との間の距離に基づいてオフセットを判定する。前述のように、オフセットは、EMデータに印加されると、(例えば、EM場を歪ませることができる、Cアームなどの物体の導入による)EMデータの歪みを補償するベクトルであり得る。
【0197】
いくつかの実装態様では、第2の時間における位置と基準位置との間の距離が閾値距離以下であり、現在のオフセットが以前に計算された場合、プロセッサは、第2の時間における器具の位置に対する現在のオフセットを再計算し得る。
【0198】
ブロック3010において、プロセッサは、EM場所データ及び現在のオフセットに基づいて、器具の遠位端の補償された位置を判定することができる。例えば、プロセッサは、以下の計算に従って、現在の歪み補償されたEMデータを判定することができる:現在の歪み補償されたEMデータが、現在のEMデータ-現在のオフセット-基準オフセットに等しい。方法3000は、処置中に器具が管腔ネットワークを通して操作されるときに、各時点においてブロック3002~3010を繰り返すことができる。
【0199】
器具が静止していないと判定することに応答して、プロセッサは、図30Bに示される方法3050を実行することができる。図30Bは、本開示の態様による、EM歪みを補償するための、EM追跡システム500又はその構成要素によって動作可能な例示的な方法3050を示すフローチャートである。ブロック3052において、プロセッサは、現在のオフセットが第2の閾値距離より大きい場合、現在のオフセットを基準オフセットに加算することができる。ブロック3054において、プロセッサは、現在のオフセットをゼロにリセットすることができる。ブロック3056において、プロセッサは、第2の時間における器具の位置、並びに第2の時間におけるコマンドされた挿入及び関節運動データを基準値として選択し、以前の基準値を置き換えることができる。ブロック3058において、プロセッサは、以下の2つの条件が満たされるかどうかを判定することができる:(i)EMドロップアウトが検出され、(ii)補償されたEMデータが、補償されていないEMデータより信頼性が悪いか又は低い。ブロック3060において、プロセッサは、ブロック3058の2つの条件が満たされていることに応答して、基準オフセットをゼロにリセットすることができる。次いで、方法3050は、図30Aの方法3000のブロック3010に戻ることができる。
【0200】
図31Aは、例示的なプロット3100であって、経時的なEM位置特定に関連するいくつかの追跡された値を示し、図31Bは、EM歪み補償を伴わないEMデータに基づいて判定された医療用器具の遠位端の位置の視覚化3140を提供し、図31Cは、EM歪み補償を有するEMデータに基づいて判定された医療用器具の遠位端の位置の視覚化3140を提供する。
【0201】
図31Aを参照すると、歪みイベントは、ボックス3102内で発生する。ライン3104は、(a)とラベル付けされたプロット3100の部分内のナビゲーション処置中のコマンドされた挿入を示し、一方、ライン3106は、例えば、図30Aのブロック3004において判定されるように、器具の遠位端が静的であると判定されるかどうかを示す(例えば、ライン3016は、静的でないときは0の値を有し、静的なときは正の値を有する)。図31Aにおいて、歪みイベントを示すボックス3102内で示されるように、コマンドされた挿入は、実質的に一定である。
【0202】
第2のプロット(b)は、コマンドされたスコープのピッチ及びヨー関節運動をそれぞれ示すライン3108及び3110を含み、また、コマンドされたシースのピッチ及びヨー関節運動をそれぞれ示すライン3112及び3114を含む。第2のプロット(b)は、すべてのコマンドされた関節運動3108~3114(例えば、スコープのピッチ3108及びヨー3110、並びにシースのピッチ3112及びヨー3114)が、歪みイベントを示すボックス3102内でも実質的に一定であることを示す。したがって、ボックス3102内の領域は、例えば、図30の方法3000を使用して、静的であることが判定され得る。
【0203】
しかしながら、ボックス3102によって示される期間中に、EM歪みは、ライン3116、3118、及び3120のそれぞれによって示されるように、第3、第4、及び第5のプロット(c、d、e)のプロット中のEMx,y,zプロットの歪みをもたらす。EM歪みは、ライン3122によって示されるプロット(f)の3つのパッチデータからも見ることができる。歪み補償されたEMx,y,zは、プロット(c、d、e)のライン3124、3216、及び3218に示される。
【0204】
図31B及び図31Cの各々では、位置合わせされたEM位置3142及び融合位置3144は、セグメント化表面3146内にプロットされる。更に、歪んだEM位置3148は、図31Bに示され、これは、図31Cにおいて補償される。
【0205】
図32Aは、経時的なEM位置特定に関連するいくつかの追跡された値を含む別の例を示し、図32Bは、EM歪み補償を伴わない、及びEM歪み補償を伴うEMデータに基づいて判定された医療用器具の遠位端の位置の視覚化3240を提供する。具体的には、図32Aは、ボックス3202によって表される歪みイベントを補償するために、ユーザがゆっくりと駆動している間の歪み補償を示す別の例を提供する。図32Aに示されるライン3204~3230の各々は、図31Aのライン3104~3130によって示されるものと実質的に同じ追跡された値を示す。図32Bにおいて、ライン3242は、ライン3244において補償される歪みイベント3202による歪みを含む位置合わせされたEMトレースを示す。
【0206】
特定の実装態様では、医療用器具の遠位端の位置を位置特定するのを助けるために、EM歪み補償EMデータに加えて及び/又はその代わりに追加のデータソースが、融合アルゴリズムによって使用され得る。例えば、形状感知技術を使用して、器具の遠位端の位置を判定することができる。形状感知技術は、金属物体に対して敏感でないため、EM歪みの影響を軽減するために使用することができる。しかしながら、形状感知は、誤差の伝播、物品のコスト(cost of goods、COG)など、いくつかの課題を有する場合がある。
【0207】
本明細書に開示されるEM歪み補償技術の特定の態様の1つの利点は、形状感知技術に関連する課題を導入することなく、Cアームを移動させながら医療用器具を使用することを可能にすることを含む。
【0208】
EM歪み補償は、ユーザが速く(例えば、閾値速度より大きい速度で)駆動しており、同時に(例えば、Cアーム移動を介して)歪みを誘導しているときには、そうではないとき程正確ではない場合がある。いくつかの実装態様では、システムは、例えば、ユーザコマンドを所与として、カルマンフィルタなどの予測モデリングアプローチを使用して、器具の遠位端が移動したことが予想される場所を推定することができる。予測モデリングアプローチは、(例えば、予測位置とEMデータを使用して判定された位置との間の差を閾値距離と比較することによって)器具が予測位置から閾値距離より大きく偏位しているときを識別することができる。歪み(例えば、予測位置からの閾値距離より大きい偏差)の期間中に、システムは、モデル予測を融合アルゴリズムの入力として使用し、EMデータを補償するために使用される歪みオフセットを更新することができる。
【0209】
EM歪み補償のための1つの例示的な技術は、EM歪みの多数の事例を分析し、これらの事例を器具の標準的な駆動と比較することを含み得る。歪みパターンは、カスタムフィルタを構築することによって、又は機械学習アプローチに基づいて識別可能であり得る。そのような技術は、歪みイベントと、スコープが何らかの解剖学的支持を突然失い、かつ実質的に瞬時に真っ直ぐになる「フリック」とを区別する能力に限界があり得る。本明細書に記載される本開示の態様は、フリックが典型的には動的駆動(例えば、非静的事例)中に発生するため、これらのフリックを処理することができる。
【0210】
いくつかの実装態様では、システムは、Cアーム又は他の金属物体を移動させる前に、ユーザが手動コマンドを介してナビゲーションを能動的に「停止」することを可能にし得る。例えば、システムは、ユーザがナビゲーションを停止することを可能にするために、ペンダントコントローラ上に何らかのUIコンテキストメニュー又はボタンを含み得る。そのような手動停止の実装態様は、Cアームを移動させることなどの任意の可能な歪みアクションを実行する前に、ユーザがナビゲーションを停止することを覚えていることに依存し得る。ユーザは、器具を駆動するための動きコマンドを入力すると、ナビゲーションを再開することができる。しかしながら、各動きコマンドの後に、ユーザは、更にEM歪みを引き起こす可能性があるアクションを実行する前に、ナビゲーションの停止を再アクティブ化すべきことを覚えている必要があろう。いくつかの実装態様では、システムは、手動停止オプションを、本明細書に記載の「自動停止」アプローチのうちの1つ又は2つ以上(例えば、上記のEM歪みアルゴリズム)と組み合わせることができる。
【0211】
いくつかの実装態様では、(例えば、器具の遠位端にあるカメラからの)カメラフィードバックを使用して、身体における相対動きの不在を検出することができる。しかしながら、動きを検出するためにカメラフィードバックを使用する精度は、カメラによってキャプチャされるビュー内の気道の視認性によって制限され得る。視認性は、標的及び患者に応じて異なり得る。
【0212】
実装システム及び用語
本明細書に開示される実装態様は、EM歪みの検出のためのシステム、方法、及び装置を提供する。
【0213】
本明細書で使用するとき、「結合する」、「結合している」、「結合された」という用語、又は結合という単語の他の変形は、間接的接続又は直接的接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続される、又は第2の構成要素に直接的に接続される、のいずれかであってもよい。
【0214】
本明細書に記載のロボット動作作動機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体上に1つ又は2つ以上の命令として記憶することができる。「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ又はプロセッサによってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を指す。一例として、限定するものではないが、このような媒体は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶デバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、有形であり、非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用するとき、「コード」という用語は、コンピューティングデバイス又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード、又はデータを指してもよい。
【0215】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ又は2つ以上のステップ又は行為を含む。方法ステップ及び/又は行為は、特許請求の範囲から逸脱することなく交換されてもよい。換言すれば、記載されている方法の適切な動作のために特定の順序のステップ又は行為が必要とされない限り、特許請求の範囲から逸脱することなく、特定のステップ及び/又は行為の順序及び/又は使用を修正してもよい。
【0216】
本明細書で使用するとき、「複数」という用語は、2つ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ以上の構成要素を示す。「判定する」という用語は、多種多様な行為を包含し、したがって、「判定する」は、計算する、演算する、処理する、算出する、調査する、ルックアップする(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造を見ること)、確認することなどを含むことができる。また、「判定する」は、受け取る(例えば、情報を受信すること)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)などを含むことができる。また、「判定する」は、解決する、選択する、選出する、確立するなどを含むことができる。
【0217】
語句「に基づく」は、別段に明示的に指定されない限り、「のみに基づく」を意味しない。換言すれば、語句「基づく」は、「のみに基づく」及び「少なくとも基づく」の両方を記載する。
【0218】
開示される実装態様の前述の説明は、任意の当業者が本発明を製造すること、又は使用することを可能にするために提供される。これらの実装態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかになり、かつ、本明細書で規定される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実装態様に適用され得る。例えば、当業者であれば、締結、装着、結合、又は係合ツール構成要素の均等の方法、特定の作動運動を生み出すための均等の機構、及び電気エネルギーを送達するための均等の機構など、多くの対応する代替的かつ均等の構造的詳細を採用することができると理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示される実装態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原則及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0219】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
1つ又は2つ以上の電磁(EM)センサのセットを備える器具であって、前記EMセンサが、前記器具の遠位端の位置を示すEM場所データを生成するように構成されている、器具と、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
少なくとも1つのコンピュータ可読メモリであって、1つ又は2つ以上のプロセッサと通信し、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記EM場所データに基づいて第1の時間における前記器具の前記遠位端の基準位置を判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間における前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記第2の時間における前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリと、を備える、システム。
(2) 前記現在のオフセットが、EM歪みの源の移動、又は前記EM歪みの前記源内の電流の流れの変化によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の前記補償された位置を判定することと、を更に行わせる、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをリセットすることと、を更に行わせる、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定することと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することと、を更に行わせ、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、実施態様1に記載のシステム。
【0220】
(6) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EMデータから歪みパターンをフィルタリングすること、を更に行わせる、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記歪みパターンが、複数のEM歪みケース及び複数の標準器具駆動ケースの分析に基づいて識別される、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記EM歪みの源の移動の前に、ナビゲーションを停止するためのユーザ命令を受信することと、
ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信することに応答して、前記EM場所データに基づく前記器具の前記遠位端の前記判定された場所の移動を停止することと、
ナビゲーションの停止を解除するためのユーザ命令を受信することと、を更に行わせる、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記現在のオフセットを判定することが、ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信する前と、ナビゲーションの停止を解除するための前記ユーザ命令を受信した後との間の、前記器具の前記遠位端の前記判定された位置の差に更に基づく、実施態様1に記載のシステム。
(10) 電磁(EM)歪みを補償する方法であって、
EM場所データに基づいて、第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することであって、前記器具が、前記器具の前記遠位端の位置を示す前記EM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサを備える、判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間における前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記第2の時間における前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を含む、方法。
【0221】
(11) 前記現在のオフセットが、EM歪みの源の移動によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の前記補償された位置を判定することと、を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをリセットすることと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定することと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することと、を更に含み、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、実施態様10に記載の方法。
(15) カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EMデータから歪みパターンをフィルタリングすること、を更に含む、実施態様10に記載の方法。
【0222】
(16) 前記歪みパターンが、複数のEM歪みケース及び複数の標準器具駆動ケースの分析に基づいて識別される、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記EM歪みの源の移動の前に、ナビゲーションを停止するためのユーザ命令を受信することと、
ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信することに応答して、前記EM場所データに基づく前記器具の前記遠位端の前記判定された場所の移動を停止することと、
ナビゲーションの停止を解除するためのユーザ命令を受信することと、を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記現在のオフセットを判定することが、ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信する前と、ナビゲーションの停止を解除するための前記ユーザ命令を受信した後との間の、前記器具の前記遠位端の前記判定された位置の差に更に基づく、実施態様10に記載の方法。
(19) 命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、実行されるときに、少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
EM場所データに基づいて、第1の時間における器具の遠位端の基準位置を判定することであって、前記器具が、前記器具の前記遠位端の位置を示す前記EM場所データを生成するように構成された1つ又は2つ以上のEMセンサを備える、判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間における前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記第2の時間における前記位置と前記第1の時間における前記基準位置との間の距離に基づいて、現在のオフセットを判定することと、
前記EM場所データ及び前記現在のオフセットに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(20) 前記現在のオフセットが、EM歪みの源の移動によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを含む、実施態様19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0223】
(21) 実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記現在のオフセットが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記現在のオフセットに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の前記補償された位置を判定することと、を行わせる命令を更に記憶した、実施態様19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(22) 実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをリセットすることと、を行わせる命令を更に記憶した、実施態様21に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(23) 実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
予測モデリングを使用して、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を推定することと、
前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することと、を行わせる命令を更に記憶しており、
前記現在のオフセットの前記判定は、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置から閾値距離より大きく偏位していると判定することに応答して、前記器具の前記遠位端の前記推定された位置に更に基づく、実施態様19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(24) 実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
カスタムフィルタ又は機械学習を使用して、前記EMデータから歪みパターンをフィルタリングすること、を行わせる命令を更に記憶した、実施態様19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(25) 前記歪みパターンが、複数のEM歪みケース及び複数の標準器具駆動ケースの分析に基づいて識別される、実施態様24に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0224】
(26) 実行されるときに、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
前記EM歪みの源の移動の前に、ナビゲーションを停止するためのユーザ命令を受信することと、
ナビゲーションを停止するための前記ユーザ命令を受信することに応答して、前記EM場所データに基づく前記器具の前記遠位端の前記判定された場所の移動を停止することと、
ナビゲーションの停止を解除するためのユーザ命令を受信することと、を行わせる命令を更に記憶した、実施態様19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
(27) システムであって、
1つ又は2つ以上の場所センサのセットを備える器具であって、前記場所センサが、前記器具の遠位端の位置を示す場所データを生成するように構成されている、器具と、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
少なくとも1つのコンピュータ可読メモリであって、前記1つ又は2つ以上のプロセッサと通信し、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記場所データに基づいて第1の時間における前記器具の前記遠位端の基準位置を判定することと、
第2の時間における前記器具の前記遠位端が静的であると判定することであって、前記第2の時間が、前記第1の時間に続く、判定することと、
前記第2の時間における前記EM場所データが、前記基準位置から閾値距離より大きく変化した前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置を示すことを判定することと、
前記場所データと、前記第2の時間における前記器具の前記遠位端の前記位置が前記基準位置から閾値距離より大きく変化したという前記判定とに基づいて、前記器具の前記遠位端の補償された位置を判定することと、を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、少なくとも1つのコンピュータ可読メモリと、を備える、システム。
(28) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
EM歪みの源の移動によって引き起こされる前記EM歪みの量に比例する歪みベクトルを判定すること、を更に行わせ、
前記補償された位置の前記判定が、前記歪みベクトルに更に基づく、実施態様27に記載のシステム。
(29) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
第3の時間における前記器具の前記遠位端が非静的であると判定することであって、前記第3の時間が、前記第2の時間に続く、判定することと、
前記歪みベクトルが前記閾値距離より大きいと判定することと、
前記器具の前記遠位端が非静的であると判定すること、及び前記歪みベクトルが前記閾値距離より大きいと判定することに応答して、前記歪みベクトルに基づいて基準オフセットを生成することと、
前記EM場所データ及び前記基準オフセットに基づいて、前記第3の時間における前記器具の前記遠位端の前記補償された位置を判定することと、を更に行わせる、実施態様28に記載のシステム。
(30) 前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記第3の時間における前記補償された位置が、補償なしで前記EM場所データに基づいて判定された補償されていない位置より正確ではないと判定することと、
前記第3の時間における前記補償された位置が、前記補償されていない位置より正確ではないと判定することに応答して、前記基準オフセットをリセットすることと、を更に行わせる、実施態様29に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図31C
図32A
図32B