(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】レーザ加工設備の加工ヘッドを位置決めする方法及び関連するレーザ加工設備及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20240527BHJP
【FI】
B23K26/04
(21)【出願番号】P 2022515779
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071175
(87)【国際公開番号】W WO2021047813
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】102019213685.0
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブラオホレ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター デメル
(72)【発明者】
【氏名】ディートリヒ ザウター
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ハーゲンロッハー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ コールレッフェル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キーヴェラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ライアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァール
(72)【発明者】
【氏名】ローガー ボイアレ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-180475(JP,A)
【文献】米国特許第04205216(US,A)
【文献】特開2001-353584(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049637(WO,A1)
【文献】特開昭57-081984(JP,A)
【文献】特開平11-254188(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210066(JP,U)
【文献】特開2001-340986(JP,A)
【文献】登録実用新案第3209473(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312862(US,A1)
【文献】特開2011-011226(JP,A)
【文献】特表2004-510588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B23K 9/00 - 9/32、
10/00 - 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なワーク交換装置(3)によって、加工位置(5)に順次に移動させる、ワーク(2a~2d)の加工中にレーザ加工設備(1)の加工ヘッド(6)を位置決めし、加工済みのワーク(2a)を前記加工位置(5)から離れる方向に移動させて加工すべき次のワーク(2b)を前記加工位置(5)に移動させる効果を有する前記ワーク交換装置(3)を移動させる方法(100)であって、前記加工ヘッド(6)の前記位置決めは、以下のステップ、すなわち、
a)前記加工済みのワーク(2a)から離れる方向に前記加工ヘッド(6)を移動させるステップ、
b)加工すべき前記次のワーク(2b)とレーザビームを位置合わせするために、前記加工ヘッド(6)を移動させるステップ、
c)加工すべき前記次のワーク(2b)に向けて前記加工ヘッド(6)を移動させるステップ
を含み、
ステップa)~
c)の
全ては、加工済みのワーク(2a)から加工すべき次のワーク(2b)に移るときに、前記ワーク交換装置(3)の前記移動と同期し
て行われる、方法(100)。
【請求項2】
前記ワーク交換装置(3)と前記加工ヘッド(6)との前記同期移動は、前記ワーク(2a~2d)、前記ワーク交換装置(3)及び前記加工ヘッド(6)の寸法に基づいて制御される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワーク交換装置(3)と前記加工ヘッド(6)との前記同期移動は、前記レーザ加工設備(1)の機械制御装置(7)によって制御される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ワーク(2a~2d)を加工するためのレーザビームが出射する、移動可能な加工ヘッド(6)と、ワーク(2a~2d)を加工位置(5)に移動させるための
回転可能なワーク交換装置(3)と、前記ワーク交換装置(3)及び前記加工ヘッド(6)の前記移動を制御するための機械制御装置(7)とを備えたレーザ加工設備(1)であって、
前記機械制御装置(7)は、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされる、レーザ加工設備(1)。
【請求項5】
前記ワーク交換装置(3)は、回転割出テーブル及び/又は回転交換装置を含む、請求項
4に記載のレーザ加工設備。
【請求項6】
プログラムがレーザ加工設備(1)の機械制御装置(7)上で起動したときに請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法のステップの全てを実行するように適合されたコード手段を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工中にレーザ加工設備の加工ヘッドを位置決めする方法に関する。本発明はまた、本方法を実行するのに好適なレーザ加工設備と、関連するコンピュータプログラム製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
本方法は、ワークを加工位置に順次に移動させる、移動可能な、特に回転可能なワーク交換装置によって行われ、加工済みのワークを加工位置から離れる方向に移動させて加工すべき次のワークを加工位置に移動させる効果を有するワーク交換装置を移動させる。加工ヘッドの位置決めは、以下のステップ、すなわち、
a)加工済みのワークから離れる方向に加工ヘッドを移動させるステップ
b)加工すべきワークと加工ヘッドを位置合わせするステップ
c)加工すべきワークに向けて加工ヘッドを移動させるステップの少なくとも1つを含む。
【0003】
そのような方法及び関連するレーザ加工設備は、十分に周知であり、レーザ加工設備は、ワークを加工するためのレーザビームが出射する、移動可能な加工ヘッドと、ワークを加工位置に移動させるための移動可能な、特に回転可能なワーク交換装置と、ワーク交換装置及び加工ヘッドの移動を制御するための機械制御装置とを備える。加工ヘッド及びワーク交換装置の移動は、ここでは、連続して順次に行われ、更に大きな動力が機械に要求される。これは、機構(歯付きラック、ピニオン、歯車機構)及び構造の耐用年数(エネルギーチェーンホルダの破損)に大きな影響を及ぼす。
【0004】
約5.2秒(回転交換装置)及び約5.5秒(回転割出しテーブル)の交換時間(1つのワークの加工後にレーザビームのスイッチをオフにして加工すべき次のワークへのレーザビームのスイッチをオンにするまでの時間として定義される)が、例えば40秒の絶対加工時間又はワーク走行時間に加算される。1つのワークから次のワークに切り替わるときの交換移動自体は、回転交換装置の場合には、例えば、2.1秒である。残りの時間の3.1秒で、一連のステップチェーン(軸同期、ワークから離れる方向への加工ヘッドの移動、加工ヘッドの枢動、ワークに向けての加工ヘッドの移動など)が行われ、ステップチェーンは、回転割出テーブル/回転交換装置の回転移動と少なくとも一部を同時に行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ワーク加工中にレーザ加工設備の加工ヘッドを位置決めする方法であって、ワーク加工間の時間が短縮され且つレーザ加工設備の機械的構成要素が追加の荷重を受けない方法を提供することである。また、本発明の目的は、かかる方法を実行するのに好適であるレーザ加工設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、a)~c)の少なくとも1つがワーク交換装置の移動と同期して又は一部を同期して行われる方法によって達成される。特に好ましくは、ステップa)~c)の全ては、ワーク交換装置の移動と同期して実行される。
【0007】
加工ヘッド及びワーク交換装置の移動は、連続して順次に行われず、その結果、2つのワークの加工間の交換時間を最小限に抑えることができる。レーザ加工設備の生産性が高められる。ワーク交換装置の回転と同時の加工ヘッドの位置決めによって、先行技術から知られている方法と比較して1.5秒~2秒の時間を節約することが可能となる。
【0008】
ワーク交換装置と加工ヘッドとの同期移動は、好ましくは、加工ヘッドとワーク交換装置又はワークとの衝突を防止するために、ワーク、ワーク交換装置及び加工ヘッドの寸法に基づいて制御される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、ワーク交換装置及び加工ヘッドの同期移動は、レーザ加工設備の機械制御装置によって制御される。機械制御装置は、ワーク交換装置及び加工ヘッドの移動順序が自動化されることを可能にする。特に、ワーク交換装置、又はワーク交換装置の回転若しくは変位移動を規定する軸線は、機械制御装置用のプログラムにおける軸線(NC軸線)として含めることができる。結果として、ワーク、ワーク交換装置及び加工ヘッドが衝突し得る衝突領域を機械制御装置によって監視することができる。ワーク交換装置及び加工ヘッドの移動は、(時計回りに回転することと、反時計回りに回転することを含む)ワーク交換装置の設定に適合され且つ最適化される。この目的のために、典型的には、ワーク交換装置の設定に応じてレーザ加工設備によって選択される、ワークの加工用の2つの数値制御プログラム(NCプログラム)がある。ワーク用のクランプ装置及び更にはワーク交換装置の設定と共にワーク、加工ヘッド及びワーク交換装置の寸法をパラメータとして数値制御プログラムに引き継ぐことができる。
【0010】
本発明によるレーザ加工設備は、ワークを加工するためのレーザビームが出射する、移動可能な加工ヘッドと、ワークを加工位置に移動させるための移動可能な、特に回転可能なワーク交換装置と、ワーク交換装置及び加工ヘッドの移動を制御するための機械制御装置とを含み、機械制御装置は、本発明による方法を実行するようにプログラムされる。
【0011】
レーザ加工設備の一実施形態では、ワーク交換装置は、回転割出テーブル及び/又は回転交換装置を含む。これにより、レーザ加工設備の比較的省スペースな構成が可能となる。
【0012】
本発明の主題の更なる利点及び有利な構成は、説明、図面、及び特許請求の範囲から得ることができる。同様に、上述した特徴及びなお更に提示すべき特徴は、いずれの場合にも、個別に又は任意の所望の組み合わせで併用することができる。図示し説明する実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ、本発明を概説するための例示的な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるレーザ加工設備の概略図である。
【
図2】ワーク加工中にレーザ加工設備の加工ヘッドを位置決めする本発明による方法の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ワーク交換装置3内にクランプされたワーク2a~2dを加工するためのレーザ加工設備1を概略的に示している。ワーク2a~2dは、ワーク交換装置3によって移動方向に沿って、ここでは回転軸線4aを中心とする回転方向4に沿って加工位置5に移動させる。この加工位置5では、ワーク2a~2dは、いずれの場合にも、特に切削作業において、加工ヘッド6から出射する、レーザビーム(図示せず)によって加工される。ワークの加工前に、レーザビームを加工位置5又は加工すべきワーク2aと位置合わせするために、加工ヘッド6を、加工すべきワーク2aに向けてX、Y、Z軸線に沿って移動させ、場合により、2つの水平枢軸線A、Bを中心に枢動させる。ワークの加工後に、ワーク交換装置3又はワーク2a~2dとの衝突の可能性を排除するために、加工ヘッド6を、加工すべきワーク2aから離れる方向にX、Y、及びZ軸線に沿って移動させる。
【0015】
ワーク交換装置3を回転方向4に90°回転させることによって、加工済みのワーク2aを加工位置5から離れる方向に取出位置まで移動させ、加工すべき次のワーク2bを加工位置5に移動させる。ワーク交換装置3の90°の回転と同時に(同期して)若しくはその主要時間と並行して又は一部を同時に若しくはその主要時間と一部を並行して、X、Y及びZ軸線に沿った、場合によりA軸線及びB軸線を中心とする加工ヘッド6の移動は、このように、2つのワークの加工間の時間を短縮してレーザ加工設備の生産性を向上させるために行われる。ワーク交換装置3の回転と同時の加工ヘッド6の移動によって、同時ではない移動と比較して各ワークに対して約1.5秒~2秒の時間を節約することが可能となる。
【0016】
ワーク交換装置3及び加工ヘッド6の移動を制御して同期させるために、レーザ加工設備1は、機械制御装置7を有する。制御は、それぞれのワーク2a~2d及びワーク交換装置3と加工ヘッド6との衝突が回避されるようにして行われる。この目的のために、ワーク2a~2dの周囲の潜在的衝突領域8内でのワーク交換装置3及び加工ヘッド6の移動は、互いに正確に調整される必要がある。
【0017】
図2には、加工済みのワーク2aから加工すべき次のワーク2bに移るときに加工ヘッド6を位置決めする方法100が概略的に示されている。加工ヘッド6の位置決めは、3つのステップ101~103を含み、その少なくとも1つは、但し好ましくは、
図2に示すように、3つのステップの全ては、加工済みのワーク2aから加工すべき次のワーク2bに移るときのワーク交換装置3の移動(ステップ104)と同期して又はその主要時間と並行して行われる。
【0018】
第1のステップ101では、加工ヘッド6を加工済みのワーク2aから離れる方向に移動させる。
【0019】
その次の第2のステップ102では、加工ヘッド6が、加工すべき次のワーク2bの加工位置と位置合わせされる。
【0020】
次の後続の第3のステップ103では、加工すべきワーク2bに向けて加工ヘッド6を移動させ、次いで、ワークの加工がレーザビームによって行われる。
【0021】
示していない方法の変形例では、
図2に示す状況とは異なり、加工ヘッド6を位置決めするときに3つのステップ101~103の全てが実施されるわけではなく、ステップ101~103の1つ又は2つのみが実施される。したがって、例えば、加工ヘッド6を位置決めするときに、第1のステップ101及び第2のステップ102のみが、すなわち、ステップ103を含めずに、実施され得る。
【符号の説明】
【0022】
1 レーザ加工設備
2a ワーク
2b ワーク
2c ワーク
2d ワーク
3 ワーク交換装置
4 回転方向
4a 回転軸線
5 加工位置
6 加工ヘッド
7 機械制御装置
100 方法
101 ステップ
102 ステップ
103 ステップ
104 ステップ
A 水平枢軸線
B 水平枢軸線
X 軸線
Y 軸線
Z 軸線