(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】クラッチレリーズ軸受アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20240527BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240527BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20240527BHJP
【FI】
F16C33/78 D
F16C19/16
F16J15/3232 201
(21)【出願番号】P 2022557123
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 DE2021100169
(87)【国際公開番号】W WO2021190685
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】102020108360.2
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マレク ヴォイテク
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼフ マチェイコ
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/054528(WO,A1)
【文献】特開2009-162318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66,
33/72-33/82
F16J 15/3204-15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側リング(6)および内側リング(7)を有するクラッチレリーズ軸受(5)を含む
、クラッチレリーズ軸受アセンブリ(1)であって、前記内側リング(7)は、内側リング軌道(8)を有し、前記外側リング(6)は、外側リング軌道(9)を有し、前記外側リング(6)と前記内側リング(7)との間で、複数の転動体(10)は、前記内側リング軌道(8)および前記外側リング軌道(9)の上を転動し、前記外側リング(6)には、径方向に延びる外側リングフランジ(11)が一体に形成され、前記内側リング(7)には、径方向に延びる内側リングフランジ(12)が形成され、前記転動体(10)の両側に密封部が設けられ、第1のシーリング(13)は、前記内側リング(7)と前記外側リング(6)との間の、軸方向に延びる環状間隙(14)を封止し、第2のシーリング(15)は、径方向に延びる環状間隙(16)を封止する、クラッチレリーズ軸受アセンブリ(1)において、
前記第2のシーリング(15)は、径方向に延びる前記外側リングフランジ(11)の遠位自由端部に固定されている補強材(17)を有し、前記第2のシーリング(15)は、径方向に互いに離間された第1のシールリップ(18)および第2のシールリップ(19)を有し、前記第1のシールリップ(18)は、径方向に延びる前記環状間隙(16)へと突出して、径方向に延びる前記内側リングフランジ(12)に接触しているか、または接触せずに隣接しており、前記第2のシールリップ(19)は、保持リング(21)の径方向に延びるフランジ(20)に接触しているか、または接触して
おらず、
前記補強材(17)は、実質的にU字形の断面形状を有し、実質的に全面が、径方向に延びる前記外側リングフランジ(11)の前記遠位自由端部に隣接していることを特徴とする、クラッチレリーズ軸受アセンブリ(1)。
【請求項2】
皿ばね(22)は、一方では前記保持リング(21)の前記径方向に延びるフランジ(20)に当接し、他方では前記内側リングフランジ(12)に当接し、前記第1のシールリップ(18)は、径方向において前記皿ばね(22)の上方で前記内側リングフランジ(12)に隣接していることを特徴とする、請求項
1に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項3】
前記第2のシールリップ(19)は、径方向に延びる前記外側リングフランジ(11)の前記遠位自由端部から径方向に内側へと延在していることを特徴とする、請求項1
または2に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項4】
前記第1のシールリップ(18)は、前記内側リングフランジ(12)に面する角度(23)で
軸方向
に垂直な平面(24)から突出していることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項5】
前記第1のシールリップ(18)は、前記クラッチレリーズ軸受(5)の無負荷状態では、径方向に延びる前記内側リングフランジ(12)に接触せずに隣接し、前記クラッチレリーズ軸受(5)の最大負荷状態では、径方向に延びる前記内側リングフランジ(12)に接触して隣接していることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項6】
前記第2のシールリップ(19)は、前記クラッチレリーズ軸受(5)の無負荷状態では、前記保持リング(21)の径方向に延びる前記フランジ(20)に接触せずに隣接し、前記クラッチレリーズ軸受(5)の最大負荷状態では、前記保持リング(21)の径方向に延びる前記フランジ(20)に接触して隣接していることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項7】
前記環状間隙(16)へと突入する周囲溝(25)は、径方向に延びる前記外側リングフランジ(11)の前記遠位自由端部に形成され、前
記補強材(17)の自由脚部に隣接していることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項8】
径方向に延びる前記外側リングフランジ(11)の前記遠位自由端部において、周囲溝(26)は、前記環状間隙(16)に面する前記外側リングフランジ(11)の内側端面とは反対側の、前記外側リングフランジ(11)の軸方向外側端面に形成され、前
記補強材(17)の自由脚部に隣接していることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【請求項9】
前
記補強材(17)の自由脚部および前記周囲溝(26)は、前
記補強材(17)が前記外側リングフランジ(11)の前記軸方向外側端面に面合わせして隣接しているように形成されていることを特徴とする、請求項
8に記載のクラッチレリーズ軸受アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側リングおよび内側リングを有するクラッチレリーズ軸受を含む、特に自動車のドライブトレイン内部のクラッチアセンブリの操作装置用のクラッチレリーズ軸受アセンブリであって、内側リングは、内側リング軌道を有し、外側リングは、外側リング軌道を有し、外側リングと内側リングとの間で、複数の転動体は、内側リング軌道および外側リング軌道の上を転動し、外側リングには、径方向に延びる外側リングフランジが一体に形成され、内側リングには、径方向に延びる内側リングフランジが形成され、転動体の両側に密封部が設けられ、第1のシーリングは、内側リングと外側リングとの間の、軸方向に延びる環状間隙を封止し、第2のシーリングは、径方向に延びる環状間隙を封止する、クラッチレリーズ軸受アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチレリーズ軸受アセンブリは、基本的には、従来技術、例えば、欧州特許第1 948 951(B1)号に由来する。この公知のクラッチレリーズ軸受は、一般的な様式では、アンギュラコンタクト玉軸受として形成されている。軸受リングフランジ、すなわち、内側リングフランジまたは外側リングフランジは、それぞれ軸受リングと一体に接続されており、軸受リングフランジは、レリーズ軸受の長手方向軸に対して直角に配向されている。軸受フランジ間で作用するシーリングは、外側軸受リングに保持されたシールフランジと堅固に接続され、プリテンションリングのスラスト面と接触しており、プリテンションリングは、内側軸受リングと相対回転不能に連結されている。
【0003】
クラッチレリーズ軸受アセンブリのクラッチレリーズ軸受を密封し、それによりクラッチレリーズ軸受への汚れまたは湿気の侵入およびクラッチレリーズ軸受からの潤滑剤漏れを回避するための措置として、様々な解決策が公知である。独国特許第195 03 217(A1)号は、滑動して周囲軸受リングに隣接しているか、または当接する2つのシーリングを含む。ねじり剛性に配置された外側軸受リングに固定された第1のシーリングは、周囲内側軸受リングの円筒形部分に当接している、幅広に形成された2つのシールリップを含む。加えて、レリーズ軸受には、ハウジングまたはガイドスリーブに固定されたシーリングが設けられ、シーリングのシールリップは、周囲内側軸受リングに隣接している。同時に滑動して内側軸受リングに当接する、シーリングのシールリップでは、摩擦が増加し、それによりレリーズ軸受の発熱が増加する。それは潤滑剤のより高い負荷を伴い、それによりレリーズ軸受の早期の故障または耐用期間の短縮のリスクを伴う。滑動シールリップのみを有するレリーズ軸受用の密封部は、多数の用途事例には不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、そのようなクラッチレリーズ軸受アセンブリを、その耐摩耗性、密封性、および耐久性に関して最適化するという要求が絶え間なく続いている。したがって、本発明の課題は、そのように最適化されたクラッチレリーズ軸受アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、外側リングおよび内側リングを有するクラッチレリーズ軸受を含む、特に自動車のドライブトレイン内部のクラッチアセンブリの操作装置用のクラッチレリーズ軸受アセンブリであって、内側リングは、内側リング軌道を有し、外側リングは、外側リング軌道を有し、外側リングと内側リングとの間で、複数の転動体は、内側リング軌道および外側リング軌道の上を転動し、外側リングには、径方向に延びる外側リングフランジが一体に形成され、内側リングには、径方向に延びる内側リングフランジが形成され、転動体の両側に密封部が設けられ、第1のシーリングは、内側リングと外側リングとの間の、軸方向に延びる環状間隙を封止し、第2のシーリングは、径方向に延びる環状間隙を封止し、第2のシーリングは、径方向に延びる外側リングフランジの遠位自由端部に固定されている補強材を有し、第2のシーリングは、径方向に互いに離間された第1のシールリップおよび第2のシールリップを有し、第1のシールリップは、径方向に延びる環状間隙へと突出して、径方向に延びる内側リングフランジに接触しているか、または接触せずに隣接しており、第2のシールリップは、保持リングの径方向に延びるフランジに接触しているか、または接触していない、クラッチレリーズ軸受アセンブリによって解決される。
【0006】
クラッチレリーズ軸受アセンブリを本発明に従って形成することによって、クラッチレリーズ軸受アセンブリは、その密封性、耐久性、および耐摩耗性に関して最適化されている。
【0007】
最初に、クラッチレリーズ軸受アセンブリの個々の構成要素を特許請求の範囲におけるその言及の順番に説明し、それに続いて、本発明の好ましい形態に言及する。
【0008】
クラッチレリーズ軸受アセンブリとは、本発明の意味において、その主要構成要素がクラッチレリーズ軸受を含むが、それに加えてさらに別の要素を含むことができるアセンブリを意味する。
【0009】
自動車用のクラッチアセンブリは、駆動エンジン側を切替可能に、車両のドライブトレインに連結する機能、または変速機側から連結解除する機能、そのようにして走行中に変速機のギアチェンジを可能にする機能、およびそれにより駆動エンジンを好ましい回転数/トルク範囲で動作させることができる機能を有する。基本的に、手動クラッチアセンブリと自動クラッチアセンブリとは区別される。手動クラッチアセンブリでは、クラッチ連結工程またはクラッチ連結解除工程は、運転者によって手動で、例えば、クラッチペダルを人力で操作することによって開始され、かつ制御される。自動クラッチアセンブリでは、この制御および操作は、電子制御およびアクチュエータによって行われ、その結果、走行中の運転者のギアチェンジへの介入は、もはや不要である。したがって、自動クラッチアセンブリには通常、クラッチペダルも存在しない。自動クラッチアセンブリの場合であっても、運転者にギア選択における特定の手動介入を可能とするために、自動クラッチアセンブリにも、例えば、手動ギア選択用の既知のステアリングボタンが公知であるが、連結工程および切替工程は、同様に自動的にクラッチシステムによって制御される。
【0010】
本出願の意味において自動車と見なされるのは、鉄道線路に拘束されることなく、機械出力によって移動する陸上走行車両である。
【0011】
本出願の意味において、自動車のドライブトレインとは、自動車において自動車を駆動するための出力を発生させ、車両の車輪を介して路面まで伝達する、すべての構成要素であると理解される。
【0012】
クラッチレリーズ軸受は通常、径方向フランジを有する2つの軸受リングを有するアンギュラコンタクト玉軸受であり、径方向フランジは、軸受の回転軸の方向に、または回転軸から離れるように延在する。その場合、回転側軸受リングのフランジは、クラッチのばねと作動接続しており、その結果、軸方向力が他方のフランジにかかると、そのときに生じる軸受の軸方向変位により、クラッチを外すもしくは切るか、またはクラッチを入れるもしくはつなぐかのいずれかとなる。必要な軸方向力は、固定側軸受リングにピストンが接続されている流体システムの形態のダイレクトレリーズシリンダによって、またはレバーレリーズ軸受もしくはいわゆるレリーズレバーによってのいずれかで生成される。
【0013】
クラッチレリーズ軸受の内側リングは、金属素材および/またはセラミック素材から形成することができる。基本的に、内側リングをシングルピースまたはマルチピースで、特にツーピースで形成することが考えられる。
【0014】
クラッチレリーズ軸受の外側リングは、金属素材および/またはセラミック素材から形成することができる。基本的に、外側リングをシングルピースまたはマルチピースで、特にツーピースで形成することが考えられる。
【0015】
転動体は、クラッチレリーズ軸受の内部、特に内側リングの内側リング軌道上を転動することができる。このために有利な様式で、内側リング軌道の表面は、例えば、適切な表面加工法によって、かつ/または適切な追加の材料層で被覆することによってもまた、適切に耐摩耗性に形成することができる。
【0016】
内側リング軌道は、平滑に、または溝入りに形成され得る。内側リング軌道の溝入り形状は、例えば、転動体を内側リング軌道上で案内するのに用いることができる。これに対して、内側リング軌道を平滑に成形すると、例えば、内側リング軌道上での転動体の若干の軸方向変位性を可能にすることができる。
【0017】
内側リング軌道は、転動体の収容および/または案内のために、溝入れ加工を有してもよい。これにより、転動体は、例えば、定義された手法で内側リング軌道内で、または内側リング軌道上で案内される。さらに、溝入り内側リング軌道の幾何学的形状によって、クラッチレリーズ軸受の軸方向および径方向の力吸収に影響を与えることができる。
【0018】
転動体は、クラッチレリーズ軸受の内部、特に外側リングの外側リング軌道上を転動することができる。このために有利な様式で、外側リング軌道の表面は、例えば、適切な表面加工法によって、かつ/または適切な追加の材料層で被覆することによってもまた、適切に耐摩耗性に形成することができる。
【0019】
外側リング軌道は、平滑に、または溝入りに形成され得る。外側リング軌道の溝入り形状は、例えば、転動体を外側リング軌道上で案内するのに用いることができる。これに対して、外側リング軌道を平滑に成形すると、例えば、外側リング軌道上での転動体の若干の軸方向変位性を可能にすることができる。
【0020】
外側リング軌道は、転動体の収容および/または案内のために、溝入れ加工を有してもよい。これにより、転動体は、例えば、定義された手法で外側リング軌道内で、または外側リング軌道上で案内される。さらに、溝入り外側リング軌道の幾何学的形状によって、クラッチレリーズ軸受の軸方向および径方向の力吸収にもまた影響を与えることができる。
【0021】
転動体は、転がり軸受の形式に応じて、玉またはころの形状を有する。転動体は、クラッチレリーズ軸受の軌道上を転動し、クラッチレリーズ軸受に作用する力を外側リングから内側リングに伝達し、またその逆に伝達する役割を有する。ころ形状の転動体は、ころ転動体とも称し、玉形状の転動体は、軸受玉とも称する。
【0022】
転動体を保持器内で、または転動体スペーサによって案内し、互いに離間させることができる。基本的に、保持器がないクラッチレリーズ軸受を形成することもまた考えられ、そのクラッチレリーズ軸受は、総ころ転がり軸受とも称する。総ころ転がり軸受では、隣り合う転動体どうしが接触し得る。
【0023】
クラッチレリーズ軸受は、保持器を有してもよく、保持器は、転動体を案内する。保持器は、転動体玉および/または転動体ころを互いに離間させるように形成され、それにより、例えば、転動体の摩擦および発熱を極力低く抑える。さらに、保持器は、転動体玉および/または転動体ころを、転動時に固定した距離に互いに保持し、これにより、均等な負荷配分を達成することができる。保持器は、シングルピースまたはマルチピースで形成することができる。
【0024】
クラッチレリーズ軸受は、シーリングを有して、クラッチレリーズ軸受からの潤滑剤の漏れ、またはクラッチレリーズ軸受への汚れもしくは湿気の侵入を防止することができる。これに加えて、1つ以上のシールリップを有する組み込まれたシーリングを設けてもよく、シールリップは、転がり軸受の構成要素に隣接してもよい。シールリップは、一方では、耐用期間全体にわたって軸受を極力封止するように、他方では、隣接するシーリングによる摩擦が大きくなりすぎないように設計されている。シーリングを少なくとも部分的に弾性材料から形成することが特に好ましく、特に、ゴム弾性材料から形成することが好ましい。弾性材料は、好ましくは全体または一部がエラストマーからなっていてもよく、さらに好ましくは、エラストマーは、天然ゴムの加硫物およびシリコーンゴムの群から選択される。
【0025】
本発明の有利な実施形態によれば、補強材が実質的にU字形の断面形状を有し、特に実質的に全面が、径方向に延びる外側リングフランジの遠位自由端部に隣接するように設けることができる。外側リングフランジにおける第2のシーリングの簡単かつ確実な固定を実現することができることが、この実施形態の利点である。また、シーリングの容易な組み込みも可能であり、これについては実施例でさらに詳細に説明する。
【0026】
本発明のさらに好ましい発展形態によればまた、皿ばねが、一方では保持リングの径方向に延びるフランジに当接し、他方では内側リングフランジに当接し、第1のシールリップが、径方向において皿ばねの上方で内側リングフランジに隣接するように設けることができる。これにより、クラッチレリーズ軸受のさらに最適化された密封部を設けることが可能であるように、達成することができる。
【0027】
さらに、本発明の同様に有利な実施形態によれば、第2のシールリップが、径方向に延びる外側リングフランジの遠位自由端部から径方向に内側へと延在するように設けることができ、それにより、保持リングの径方向に延びるフランジと協働して、特に動作が確実なシーリングを実現することができる。
【0028】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、第1のシールリップが、内側リングフランジに面する角度で径方向平面から突出するように設けることができ、それにより、シールリップの封止作用および摩擦は、一方では、十分に調整可能であり、その傾斜度によってシールリップの自動的な整合もまたもたらされる。
【0029】
さらに、本発明はまた、第1のシールリップが、クラッチレリーズ軸受の無負荷状態では、径方向に延びる内側リングフランジに接触せずに隣接し、クラッチレリーズ軸受の最大負荷状態では、径方向に延びる内側リングフランジに接触して隣接するまで、さらに発展させることができる。クラッチレリーズ軸受の動作時のみ、シールリップと内側リングフランジとの間の封止する接触が起こり、それにより、摩擦および発熱を、最小レベルまで低減することができることが、この実施形態の利点である。本出願の意味において最大負荷の状態とは、クラッチレリーズ軸受の動作状態がその最大に動作した位置にあることを意味する。
【0030】
さらに、第2のシールリップが、クラッチレリーズ軸受の無負荷状態では、保持リングの径方向に延びるフランジに接触せずに隣接し、クラッチレリーズ軸受の最大負荷状態では、保持リングの径方向に延びるフランジに接触して隣接することが有利であり得る。また、これにより、クラッチレリーズ軸受アセンブリ内部の摩擦および発熱をさらに低減することができる。
【0031】
本発明の同様に好ましい実施形態ではまた、環状間隙へと突入する周囲溝が、径方向に延びる外側リングフランジの遠位自由端部に形成され、U字形補強材の自由脚部に隣接するように設けることができる。これにより、軸方向において特にコンパクトな構造形状を形成することができる。
【0032】
さらに、径方向に延びる外側リングフランジの遠位自由端部において、周囲溝が、環状間隙に面する外側リングフランジの内側端面とは反対側の、外側リングフランジの軸方向外側端面に形成され、U字形補強材の自由脚部に隣接していることがさらに好ましい。これにより、レリーズ軸受アセンブリの軸方向に必要な設置空間をさらに最適化することができる。
【0033】
最後に、U字形補強材が外側リングフランジの軸方向外側端面に面合わせして隣接しているように、U字形補強材の自由脚部および周囲溝が形成されていることもまた特に好ましい。これにより、シーリングの取付時に負傷するおそれがある、外側リングフランジにおいて鋭利であり得る補強材の突出部もまた回避することができる。
【0034】
以下に図面を参照して、一般的発明概念を制限することなく本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明によるクラッチレリーズ軸受アセンブリの第1の実施形態の断面図である。
【
図2】本発明によるクラッチレリーズ軸受アセンブリの第2の実施形態の断面図である。
【
図3】クラッチレリーズ軸受アセンブリを備える自動車の概略的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、特に、
図3に例示的に示すような、自動車4のドライブトレイン3内部のクラッチアセンブリ2の操作装置用のクラッチレリーズ軸受アセンブリ1を示す。クラッチレリーズ軸受アセンブリ1は、外側リング6および内側リング7を有するクラッチレリーズ軸受5を含み、内側リング7は、内側リング軌道8を有し、外側リング6は、外側リング軌道9を有し、外側リング6と内側リング7との間で、複数の転動体10は、内側リング軌道8および外側リング軌道9の上を転動する。外側リング6には、径方向に延びる外側リングフランジ11が一体に形成され、内側リング7には、径方向に延びる内側リングフランジ12が形成され、内側リングフランジ12は、外側リングフランジ11よりも径方向にさらに内側へと延在している。
【0037】
転動体10の両側に密封部が設けられ、第1のシーリング13は、内側リング7と外側リング6との間の、軸方向に延びる環状間隙14を封止し、第2のシーリング15は、径方向に延びる環状間隙16を封止する。第2のシーリング15は、径方向に延びる外側リングフランジ11の遠位自由端部に固定されている補強材17を有する。補強材17は、実質的にU字形の断面形状を有し、実質的に全面が、径方向に延びる外側リングフランジ11の遠位自由端部に隣接している。径方向に延びる外側リングフランジ11の遠位自由端部には、環状間隙16へと突入する周囲溝25が形成され、周囲溝25に、U字形補強材17の自由脚部が隣接している。
【0038】
第2のシーリング15は、径方向に互いに離間している第1のシールリップ18および第2のシールリップ19を有する。第1のシールリップ18は、径方向に延びる環状間隙16へと突入し、径方向に延びる内側リングフランジ12に接触して隣接しているか、または接触せずに隣接している。
図1はさらに、第1のシールリップ18が、内側リングフランジ12に面する角度23で径方向平面24から突出していることを示す。第2のシールリップ19は、保持リング21の径方向に延びるフランジ20に接触せずに隣接し、径方向に延びる外側リングフランジ11の遠位自由端部から径方向に内側へと延在している。
【0039】
第1のシールリップ18は、クラッチレリーズ軸受5の無負荷状態では、径方向に延びる内側リングフランジ12に接触せずに隣接している。クラッチレリーズ軸受5の軸方向負荷状態では、第1のシールリップ18は、径方向に延びる内側リングフランジ12に接触して隣接している。これと同様に、第2のシールリップ19は、クラッチレリーズ軸受5の無負荷状態では、保持リング21の径方向に延びるフランジ20に接触せずに隣接し、クラッチレリーズ軸受5の最大負荷状態では、保持リング21の径方向に延びるフランジ20に接触して隣接している。
【0040】
クラッチレリーズ軸受5は、皿ばね22をさらに有し、皿ばね22は、一方では、保持リング21の径方向に延びるフランジ20に当接し、他方では、内側リングフランジ12に当接し、第1のシールリップ18は、径方向において皿ばね22の上方で内側リングフランジ12に隣接している。保持リング21は、クラッチを操作するために軸方向に変位することができる。
【0041】
図2は、本発明のさらなる実施形態を示し、この実施形態では、
図1に示した実施形態と比較して、補強材17および外側リングフランジ11は、以下のように適合されている。
【0042】
径方向に延びる外側リングフランジ11の遠位自由端部において、周囲溝26は、環状間隙16に面する外側リングフランジ11の内側端面とは反対側の、外側リングフランジ11の軸方向外側端面に形成され、周囲溝26に、U字形補強材17の自由脚部が隣接している。U字形補強材17の自由脚部および周囲溝26は、
図1の実施形態とは異なり、U字形補強材17が外側リングフランジ11の軸方向外側端面に面合わせして隣接しているように形成されている。
【0043】
本発明は、図に示された実施形態に制限されない。したがって、上述の記載は、制限するものではなく、説明するものと見なすべきである。以下の特許請求の範囲は、言及された特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在していることと理解されたい。これは、さらなる特徴の存在を排除しない。特許請求の範囲および上記説明が「第1の」特徴および「第2の」特徴を定義している場合、これらの表現は、順位を確定することなく、同種の2つの特徴の区別に用いられる。
【符号の説明】
【0044】
1 クラッチレリーズ軸受アセンブリ
2 クラッチアセンブリ
3 ドライブトレイン
4 自動車
5 クラッチレリーズ軸受
6 外側リング
7 内側リング
8 内側リング軌道
9 外側リング軌道
10 転動体
11 外側リングフランジ
12 内側リングフランジ
13 第1のシーリング
14 環状間隙
15 第2のシーリング
16 環状間隙
17 補強材
18 シールリップ
19 シールリップ
20 フランジ
21 保持リング
22 皿ばね
23 角度
24 径方向平面
25 溝
26 溝