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特許7494320液体スチレン-ブタジエン重合体、その製造方法及び使用、並びに、組成物、重合体コーティング、粘着剤及び架橋剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】液体スチレン-ブタジエン重合体、その製造方法及び使用、並びに、組成物、重合体コーティング、粘着剤及び架橋剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/10 20060101AFI20240527BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240527BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20240527BHJP
   C09D 125/10 20060101ALI20240527BHJP
   C09J 125/10 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08F236/10
C08L9/06
C08F2/06
C09D125/10
C09J125/10
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022571239
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2020124453
(87)【国際公開番号】W WO2021232679
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】202010437131.1
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李建成
(72)【発明者】
【氏名】徐林
(72)【発明者】
【氏名】王雪
(72)【発明者】
【氏名】邵明波
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518065(JP,A)
【文献】米国特許第03966691(US,A)
【文献】特開2008-195789(JP,A)
【文献】特表2005-513172(JP,A)
【文献】特表2009-517613(JP,A)
【文献】QUACK G et al.,The Nuclear Magnetic Resonance Characterization of a Cyclic Structure in Anionically Prepared Polybutadiene,Macromolecules,米国,1978 Vol.11 No.2,p.369-373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量を基準に、スチレン構造単位の含有量が15~30重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量が70~85重量%であり、1,2-構造単位の含有量が60~80重量%であり、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%であり、25℃かつ1標準大気圧で流動性を有する液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項2】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体中の1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が30~55重量%であり
化1,2-構造単位と1,2-構造単位との重量比が0.4~0.9:1である請求項1に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項3】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体中の1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が40~50重量%であり、
環化1,2-構造単位と1,2-構造単位との重量比が0.5~0.7:1である請求項1に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項4】
数平均分子量が2000~7000であり、分子量分布指数が1~1.15である請求項1~3のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項5】
分子量分布指数が1~1.09である請求項4に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項6】
45℃における動粘度が230~700Pである請求項1~のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項7】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造の含有量が65~80重量%である請求項1~のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項8】
ランダム共重合体であり
記液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、スチレンブロックの含有量が0.1重量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項9】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体のガラス転移温度が-40℃~-10℃である請求項1~7のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項10】
全量を基準に、スチレン構造単位の含有量が15~30重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量が70~85重量%であり、1,2-構造単位の含有量が60~80重量%であり、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%であり、線形熱膨張係数が45~80×10-6m/m/℃であり、25℃かつ1標準大気圧で流動性を有する液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項11】
記液体スチレン-ブタジエン重合体中の1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が30~55重量%であり
化1,2-構造単位と1,2-構造単位との重量比が0.4~0.9:1である請求項10に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項12】
数平均分子量が2000~7000であり、分子量分布指数が1~1.15であり、
45℃における動粘度が230~700Pである請求項10に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項13】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造の含有量が65~80重量%である請求項10に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項14】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体はランダム共重合体であり、
前記液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、スチレンブロックの含有量が0.1重量%以下であり、
前記液体スチレン-ブタジエン重合体のガラス転移温度が-40℃~-10℃である請求項10に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項15】
前記液体スチレン-ブタジエン重合体の線形熱膨張係数が45~75×10 -6 m/m/℃である請求項10に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体。
【請求項16】
アニオン重合反応の条件下で、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤及びアニオン重合開始剤と重合溶剤で接触させ、スチレン-ブタジエン重合体を含有する重合反応溶液を得るステップを含み、前記接触は85~130℃の温度で行われ、前記構造調整剤は成分Aと成分Bを含有し、前記成分Aは三級アミンであり、前記成分Bはアルカリ金属アルコキシドであり、前記成分Bと前記成分Aとのモル比は0.1~0.5:1であり、前記重合溶剤は脂肪族複素環溶剤を含有する請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の製造方法。
【請求項17】
前記成分Aは式Iに示される化合物から選択される1種又は2種以上である請求項16に記載の方法。
【化1】

(式I中、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、C~Cアルキルであり、Rは式IIに示される一価基である。)
【化2】

(式II中、mは1~5の整数であり、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC~Cアルキルであり、Rは-NR又はC~Cオキサシクロアルキルであり、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、C~Cアルキルである。)
【請求項18】
前記成分AはN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン及び/又はN,N-ジメチル-テトラヒドロフルフリルアミンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記成分Bは式IIIに示される化合物から選択される1種又は2種以上である請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【化3】

(式III中、RはC~C20アルキル、ヘテロ原子含有置換基を有するC~C20アルキル、又はC~C30アリールであり、
はアルカリ金属原子であり
記ヘテロ原子含有置換基はヘテロ原子含有シクロアルキルであり、前記ヘテロ原子は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子である。)
【請求項20】
前記成分Bはテトラヒドロフルフリルアルコールナトリウム、t-アミルオキシナトリウム、t-ブトキシナトリウム、ナトリウム-n-ヘキシロキシド及びメントールナトリウムのうちの1種又は2種以上である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記成分Bと前記成分Aとのモル比は0.15~0.45:1である請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
アニオン重合開始剤1モルに対して、前記成分Bの使用量は0.15~0.5モルである請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記接触は88℃~100℃の温度で行われる請求項16~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記アニオン重合開始剤の使用量は製造された液体スチレン-ブタジエン重合体の数平均分子量が2000~7000であるようにする請求項16~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記重合溶剤はテトラヒドロフランである請求項16~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
液体スチレン-ブタジエン重合体と、少なくとも1種の添加剤とを含有し、前記液体スチレン-ブタジエン重合体は請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体である組成物。
【請求項27】
前記添加剤は酸化防止剤を含有する請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は請求項26及び27のいずれか1項に記載の組成物を含有する重合体コーティング。
【請求項29】
請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は請求項26及び27のいずれか1項に記載の組成物を含有する粘着剤。
【請求項30】
請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は請求項26及び27のいずれか1項に記載の組成物を含有する架橋剤。
【請求項31】
請求項1~15のいずれか1項に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は請求項26及び27のいずれか1項に記載の組成物の、架橋剤、粘着剤又は電気絶縁材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2020年05月21日に提出された中国特許出願202010437131.1の利益を主張しており、該出願の内容は引用によりここに組み込まれている。
[技術分野]
本発明は液体スチレン-ブタジエン重合体、その製造方法及び使用に関し、本発明はまた、前記液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物に関し、本発明はさらに、前記液体スチレン-ブタジエン重合体と前記組成物を含有する重合体コーティング、粘着剤及び架橋剤に関する。
[背景技術]
液体スチレン-ブタジエン重合体は数平均分子量500~10000の粘稠状流動性重合体であり、樹脂変性剤、可塑剤、助剤、写真材料、粘着剤、水性塗料、電気泳動塗料、電気絶縁材料、焼結用バインダなどの分野に広く使用されている。
【0002】
微細構造によって分類されると、液体スチレン-ブタジエン重合体は液体スチレン-ブタジエンランダム重合体と液体スチレン-ブタジエンブロック重合体に分けられる。
【0003】
液体スチレン-ブタジエン重合体は一般にはアニオン溶液重合プロセスを採用したが、分子量の調整が触媒の使用量に大きく依存し、アニオン溶液重合プロセスによって低分子量液体スチレン-ブタジエン重合体を製造する場合、触媒の使用量が大きく、触媒の除去が困難であるという問題があり、さらに、アニオン重合中に使用される構造調整剤の重合体の微細構造への調整能力が温度に非常に高感度であり、アニオン溶液重合プロセスによって低分子量液体スチレン-ブタジエン重合体を製造する場合は、微細構造を安定的に制御することが非常に難しい。また、ブタジエンとスチレンの反応性比の差が大きいので、ブタジエンとスチレンを完全にランダムに共重合して液体スチレン-ブタジエンランダム重合体を得るのが技術的には困難である。ただし、1,2-構造単位含有量、スチレン構造単位含有量、分子量及びその分布は液体スチレン-ブタジエン重合体の特性に影響する。
【0004】
液体スチレン-ブタジエン重合体は誘電率が低く、誘電損失が小さいという特徴を有し、通信技術分野において応用の将来性が期待できるが、現代の通信技術の発展により要件がより高くなり、このため、液体スチレン-ブタジエン重合体の製造中に存在する技術的課題を解決し、通信技術の急速な発展に対応できるより優れた特性を有する液体スチレン-ブタジエン重合体を得ることは重要な意義がある。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
液体スチレン-ブタジエン重合体溶液の重合プロセスに存在する、液体スチレン-ブタジエン重合体の微細構造を安定的に制御することが困難であるという技術的課題に対して、本発明の発明者らは、液体スチレン-ブタジエン重合体のアニオン重合プロセスについて鋭意検討を行った結果、液体スチレン-ブタジエン重合体の微細構造を効果的に制御できる重合方法を開発し、液体スチレン-ブタジエン重合体の微細構造を最適化し、特性が改良された液体スチレン-ブタジエン重合体を得て、該液体スチレン-ブタジエン重合体で形成されるコーティングは改善した熱膨張特性を示す。これによって、本発明を完成させるに至った。
[課題を解決するための手段]
本発明の第1態様によれば、本発明は、全量を基準に、スチレン構造単位の含有量が15~30重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量が70~85重量%であり、1,2-構造単位の含有量が60~80重量%であり、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%である液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0005】
本発明の第2態様によれば、本発明は、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%であり、線形熱膨張係数が45~80×10-6m/m/℃である液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0006】
本発明の第3態様によれば、本発明は、アニオン重合反応の条件下で、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤及びアニオン重合開始剤と重合溶剤で接触させ、スチレン-ブタジエン重合体を含有する重合反応溶液を得るステップを含み、前記接触は85~130℃の温度で行われ、前記構造調整剤は成分Aと成分Bを含有し、前記成分Aは三級アミンであり、前記成分Bはアルカリ金属アルコキシドであり、前記成分Bと前記成分Aとのモル比は0.1~0.5:1であり、前記重合溶剤は脂肪族複素環溶剤を含有する液体スチレン-ブタジエン重合体の製造方法を提供する。
【0007】
本発明の第4態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法によって製造される液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0008】
本発明の第5態様によれば、本発明は、液体スチレン-ブタジエン重合体と、少なくとも1種の添加剤とを含有し、前記液体スチレン-ブタジエン重合体は本発明の第1態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体である組成物を提供する。
【0009】
本発明の第6態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する重合体コーティングを提供する。
【0010】
本発明の第7態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する粘着剤を提供する。
【0011】
本発明の第8態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する架橋剤を提供する。
【0012】
本発明の第9態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物の、架橋剤、粘着剤又は電気絶縁材料としての使用を提供する。
【0013】
本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体は、優れた特性を有し、本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体で形成されるコーティングは、基材に対して高い剥離強度を有するだけではなく、改善した熱膨張特性を有し、通信技術分野において応用の将来性が期待できる。
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示された範囲の端点及び任意の値はこの正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点の値同士、各範囲の端点値と個別の点値、及び個別の点値同士は組み合わせられて1つ又は複数の新たな数値範囲を構成してもよく、これらの数値の範囲は本明細書において具体的に開示されたものとみなされるべきである。
【0014】
本発明では、「液体スチレン-ブタジエン重合体」という用語は、25℃かつ1標準大気圧で流動性を有するスチレン-ブタジエン重合体である。
【0015】
本発明では、「スチレン構造単位」という用語は、スチレン単量体重合で形成される構造単位であり、「ブタジエン構造単位」という用語は、ブタジエン単量体が重合して形成した構造単位である。本発明では、重合体中のスチレン構造単位及びブタジエン構造単位の含有量は核磁気共鳴スペクトル法により測定される。
【0016】
本発明では、「1,2-構造単位」という用語は、1,3-ブタジエンが1,2-重合の方式で形成した構造単位であり、1,2-構造単位の含有量はビニル含有量としてもよい。本発明では、重合体中の1,2-構造単位の含有量は核磁気共鳴スペクトル法により測定される。
【0017】
本発明では、「環化1,2-構造単位」という用語は、隣接する2つの1,2-構造単位のビニルが結合されて5員環になることを意味し、具体的な構造は以下に示される。
【0018】
【化1】
【0019】
本発明では、重合体中の環化1,2-構造単位の含有量は核磁気共鳴スペクトル法により測定される。
【0020】
本発明では、「スチレンブロック」という用語は、当該ブロックの構造単位が全てスチレンに由来し、且つ当該ブロックの構造単位の数が5以上であることを意味する。本発明では、重合体中のスチレンブロックの含有量は核磁気共鳴スペクトル法により測定される。
【0021】
本発明では、核磁気共鳴スペクトル法によるテスト方法は、具体的には以下の通りである。Bruker AVANCE400型超伝導核磁気共鳴装置(H-NMR)を用いてテストし、H核の共鳴周波数は300.13MHz、スペクトル幅は2747.253Hz、パルス幅は5.0μs、データポイントは16K、サンプルチューブ径は5mm、溶剤は重水素化クロロホルム(CDCl)、サンプル濃度は15%(mg/mL)、テスト温度は常温(25℃)、走査回数は16回とし、テトラメチルシラン化学シフトは0ppmとして校正される。
【0022】
本発明では、分子量及び分子量分布指数(M/M)はゲル浸透クロマトグラフィー分析により測定され、テスト方法は、具体的には以下の通りである。東ソー社製のHLC-8320型ゲル浸透クロマトグラフが使用され、カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ-N、標準カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ、溶剤はクロマトグラフィー純粋なテトラヒドロフラン(THF)、標準サンプルは分布の狭いポリスチレンとし、重合体サンプルは濃度1mg/mLのテトラヒドロフラン溶液として調製され、サンプル注入量は10.00μL、流速は0.35mL/min、テスト温度は40.0℃である。
【0023】
本発明では、重合体の動粘度はGBT10247-2008に規定される毛細管法を参照して測定され、ここで、寸法番号が5のウベローデ粘度計を用いて45℃の温度で測定される。
【0024】
本発明では、重合体中の金属元素の含有量はプラズマ法により測定され、テスト方法は具体的には以下の通りである。米国パーキンエルマー(PE)社製のOptima 8300型直読全スペクトルICP分光計を用いて、エシェル回折格子、固体検出器、紫外線ゾーン・可視光ゾーン二重光路二重固体検出器を装備し、平板プラズマ技術を採用し、器具の操作パラメータを以下に示す。高周波電力1300W、プラズマガス流量15L/min、霧化ガス流量0.55L/min、補助ガス流量0.2L/min、蠕動ポンプ速度1.50mL/min、積分時間10sとし、プラズマは軸方向に観察される。サンプルの製造方法は以下の通りである。サンプル2.000gを磁器るつぼに正確に取り、高温抵抗炉に入れて500℃に段階的に昇温し、完全に灰化した後取り出し、10体積%希硝酸5mLを加え、電熱板でゆっくりと加熱して完全に溶解し、溶液を乾固まで蒸発し、濃硝酸1mLを加え、50mLメスフラスコに移し、水で定容し、これと同時に試薬空白溶液を製造する。
【0025】
本発明では、ガラス転移温度は示差走査熱量法により測定され、テスト方は具体的には以下の通りである。TA-2980 DSC示差走査熱量計を用いて、GB/T 29611~2013に規定される方法により測定し、昇温速度を20℃/minとする。
【0026】
本発明では、線形熱膨張係数はGB/T 36800.2-2018に規定される方法に従って、熱機械分析法(TMA)を用いて測定される。
【0027】
本発明の第1態様によれば、本発明は、全量を基準に、スチレン構造単位の含有量が15~30重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量が70~85重量%であり、1,2-構造単位の含有量が60~80重量%であり、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%である液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0028】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中のスチレン構造単位の含有量は15~30重量%であり、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30重量%であってもよい。本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体によれば、液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中のスチレン構造単位の含有量は好ましくは18~28重量%、より好ましくは20~26重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量は好ましくは72~82重量%、より好ましくは74~80重量%である。
【0029】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は60~80重量%であり、例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79又は80重量%であってもよい。好ましくは、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は65~80重量%である。より好ましくは、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は68~75重量%である。
【0030】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体中の1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は20~60重量%であり、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である。好ましくは、本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は25~58重量%である。より好ましくは、本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は30~55重量%である。さらに好ましくは、本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は40~50重量%である。本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、環化1,2-構造単位と1,2-構造単位とのモル比は好ましくは0.4~0.9:1、より好ましくは0.5~0.7:1である。
【0031】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体は1,3-ブタジエンとスチレンのランダム共重合体である。本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、スチレンブロックの含有量は低い。一般には、本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、スチレン-ブタジエン重合体の全重量を基準に、スチレンブロックの含有量は0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下であってもよい。
【0032】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の数平均分子量(M)は2000~7000であってもよく、好ましくは2500~6500、より好ましくは3500~4500である。本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体は、成形に適している分子量を有するだけではなく、分子量分布が狭い。一般には、本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の分子量分布指数(M/M)は1~1.15であってもよく、好ましくは1~1.1、より好ましくは1~1.09である。
【0033】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の45℃における動粘度は230~700ポアズ(P)であってもよく、好ましくは300~600P、より好ましくは400~500Pである。
【0034】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中の金属元素の重量含有量は200ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0035】
本発明に係る第1態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体のガラス転移温度(T)は-40℃~-10℃、好ましくは-30℃~-15℃である。
【0036】
本発明の第2態様によれば、本発明は、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量が20~60重量%であり、線形熱膨張係数は45~80×10-6m/m/℃、好ましくは45~75×10-6m/m/℃、より好ましくは50~70×10-6m/m/℃、さらに好ましくは55~65×10-6m/m/℃である、液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0037】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中のスチレン構造単位の含有量は15~30重量%であり、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30重量%であってもよい。本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体においては、液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中のスチレン構造単位の含有量は好ましくは18~28重量%、より好ましくは20~26重量%であり、ブタジエン構造単位の含有量は好ましくは72~82重量%、より好ましくは74~80重量%である。
【0038】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は60~80重量%であり、例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79又は80重量%であってもよい。好ましくは、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は65~80重量%である。より好ましくは、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、1,2-構造単位の含有量は68~75重量%である。
【0039】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体中、1,2-構造単位の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は20~60重量%であり、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である。好ましくは、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は25~58重量%である。より好ましくは、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は30~55重量%である。さらに好ましくは、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、環化1,2-構造単位の含有量は40~50重量%である。本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、環化1,2-構造単位と1,2-構造単位とのモル比は好ましくは0.4~0.9:1、より好ましくは0.5~0.7:1である。
【0040】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体は1,3-ブタジエンとスチレンのランダム共重合体である。本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、スチレンブロックの含有量は低い。一般には、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、スチレン-ブタジエン重合体の全重量を基準に、スチレンブロックの含有量は0.1重量%以下であってもよく、好ましくは0.05重量%以下である。
【0041】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の数平均分子量(M)は2000~7000であってもよく、好ましくは2500~6500、より好ましくは3500~4500である。本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体は、成形に適している分子量を有するだけではなく、分子量分布が狭い。一般には、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体の分子量分布指数(M/M)は1~1.15であってもよく、好ましくは1~1.1、より好ましくは1~1.09である。
【0042】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の45℃における動粘度は230~700Pであってもよく、好ましくは300~600P、より好ましくは400~500Pである。
【0043】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体の全量を基準に、該液体スチレン-ブタジエン重合体中の金属元素の重量含有量は200ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0044】
本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体においては、該液体スチレン-ブタジエン重合体のガラス転移温度(T)は-40℃~-10℃、好ましくは-30℃~-15℃である。
【0045】
本発明の第3態様によれば、本発明は、アニオン重合反応の条件下で、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤及びアニオン重合開始剤と重合溶剤で接触させ、スチレン-ブタジエン重合体を含有する重合反応溶液を得るステップを含み、前記接触は85~130℃の温度で行われ、前記構造調整剤は成分Aと成分Bを含有し、前記成分Aは三級アミンから選択される1種又は2種以上であり、前記成分Bはアルカリ金属アルコキシドから選択される1種又は2種以上であり、前記成分Bと前記成分Aとのモル比は0.1~0.5:1であり、前記重合溶剤は脂肪族複素環溶剤を含有する液体スチレン-ブタジエン重合体の製造方法を提供する。
【0046】
1つの好ましい実施形態では、前記成分Aは式Iに示される化合物から選択される1種又は2種以上である。
【0047】
【化2】
【0048】
(式I中、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、C~Cアルキルである。
【0049】
式I中、Rは式IIに示される一価基であり、
【0050】
【化3】
【0051】
式II中、mは1~5の整数であり、例えば、1、2、3、4又は5であってもよい。
【0052】
式II中、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC~Cアルキル、好ましくは水素原子である。
【0053】
式II中、Rは-NR、又はC~Cオキサシクロアルキルであり、R及びRは同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、C~Cアルキルである。)
式I及び式II中、C~CアルキルはC~C直鎖状アルキル及びC~C分岐状アルキルを含み、その具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、t-ペンチル、ネオペンチル及びn-ヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、1つの好ましい実施形態では、前記成分AはN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン及び/又はN,N-ジメチルテトラヒドロフルフリルアミンである。本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、特に好ましい実施形態では、前記成分AはN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンである。
【0055】
1つの好ましい実施形態では、前記成分Bは式IIIに示される化合物から選択される1種又は2種以上である。
【0056】
【化4】
【0057】
(式III中、RはC~C20アルキル、ヘテロ原子含有置換基を有するC~C20アルキル又はC~C30アリールであり、
はアルカリ金属原子であり、例えばLi、Na又はKであってもよく、好ましくはNaである。)
式III中、C~C20アルキルはC~C20直鎖状アルキル及びC~C20分岐状アルキルを含み、その具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル及びその異性体、n-ヘキシル及びその異性体、n-ヘプチル及びその異性体、n-オクチル及びその異性体、n-ノニル及びその異性体、n-デシル及びその異性体、ウンデシル及びその異性体、ドデシル及びその異性体、トリデシル及びその異性体、テトラデシル及びその異性体、ペンタデシル及びその異性体、ヘキサデシル及びその異性体、ヘプタデシル及びその異性体、オクタデシル及びその異性体、ノナデシル及びその異性体、並びにエイコシル及びその異性体が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0058】
式III中、ヘテロ原子含有置換基を有するC~C20アルキルの置換基は、好ましくはヘテロ原子含有シクロアルキルであり、前記ヘテロ原子の具体例には、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が含まれるが、これらに限定されるものではない。1つの好ましい実施形態では、前記ヘテロ原子含有置換基のヘテロ原子は酸素原子であり、前記ヘテロ原子含有置換基は酸素原子含有シクロアルキル、例えば、エチレンオキシド置換基、プロピレンオキサイド置換基、プロピレンオキサイド置換基、テトラヒドロフラン置換基、又はプロパンオキサイド置換基である。
【0059】
式III中、C~C30アリールの具体例には、フェニル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、o-エチルフェニル、m-エチルフェニル、p-エチルフェニル、o-t-ブチルフェニル、m-t-ブチルフェニル、p-t-ブチルフェニル、p-ドデシルフェニル、2,4-ジ-n-ブチルフェニル、p-n-プロピルフェニル及び2,4-ジエチルフェニルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、前記成分Bは、好ましくはテトラヒドロフルフリルアルコールナトリウム、t-アミルオキシナトリウム、t-ブトキシナトリウム、ナトリウム-n-ヘキシロキシド及びメントールナトリウムのうちの1種又は2種以上である。
【0061】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、成分Bと成分Aとのモル比は0.1~0.5:1、好ましくは0.15~0.45:1、より好ましくは0.2~0.4:1である。
【0062】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、前記構造調整剤の使用量は単量体(即ち、1,3-ブタジエン及びスチレン)及び/又はアニオン重合開始剤の使用量に応じて調整されてもよい。アニオン重合開始剤1モルに対して、前記成分Aの使用量は0.5~2モルであってもよく、好ましくは0.7~1.5モルである。アニオン重合開始剤1モルに対して、前記成分Bの使用量は0.15~0.5モルであってもよく、好ましくは0.2~0.4モルである。
【0063】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、前記アニオン重合開始剤は、好ましくは有機リチウム開始剤、より好ましくは有機モノリチウム化合物、さらに好ましくは式IVに示される化合物である。
【0064】
10Li (式IV)
(式IV中、R10はC~Cアルキル、C~C12シクロアルキル、C~C14アリールアルキル又はC~C12アリールである。)
式IV中、C~CアルキルはC~C直鎖状アルキル及びC~C分岐状アルキルを含み、その具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、t-ペンチル、ネオペンチル及びn-ヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0065】
式IV中、C~C12シクロアルキルの具体例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4-エチルシクロヘキシル、4-n-プロピルシクロヘキシル及び4-n-ブチルシクロヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0066】
式IV中、C~C14アリールアルキルの具体例には、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルn-プロピル、フェニルn-ブチル、フェニルt-ブチル、フェニルイソプロピル、フェニルn-ペンチル及びフェニルn-ブチルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0067】
式IV中、C~C12アリールの具体例には、フェニル、ナフチル、4-メチルフェニル及び4-エチルフェニルが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、前記アニオン重合開始剤の具体例には、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム及び4-ブチルシクロヘキシルリチウムのうちの1種又は2種以上が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。好ましくは、前記アニオン重合開始剤はn-ブチルリチウム及び/又はs-ブチルリチウム、より好ましくは、n-ブチルリチウムである。
【0069】
前記アニオン重合開始剤の使用量は期待される液体スチレン-ブタジエン重合体の分子量によって決定されてもよい。好ましくは、前記アニオン重合開始剤の使用量は製造された液体スチレン-ブタジエン重合体の数平均分子量が2000~7000、好ましくは2500~6500、より好ましくは3500~4500であるようにする。期待される重合体の分子量によってアニオン重合開始剤の使用量を決定する具体的な方法は当業者に公知のものであるので、本明細書では詳しく説明しない。
【0070】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、前記重合溶剤は脂肪族複素環溶剤を含有する。「脂肪族複素環」という用語は、脂肪族環上の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたシクロアルカンを意味する。前記脂肪族複素環のヘテロ原子は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であってもよく、好ましくは酸素原子である。前記重合溶剤は、テトラヒドロフラン、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド及び1,4-ジオキサンから選択される1種又は2種以上であってもよい。前記重合溶剤は単独で使用されてもよいし、混合して使用されてもよい。1つの好ましい実施形態では、前記重合溶剤は脂肪族複素環溶剤、より好ましくはオキサシクロアルカンである。特に好ましい実施形態では、前記重合溶剤はテトラヒドロフランである。
【0071】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、重合溶剤及び単量体(即ち、1,3-ブタジエン及びスチレン)の全量を基準に、単量体の含有量は1~20重量%であってもよく、好ましくは1.5~15重量%、より好ましくは2~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%である。本発明では、単量体の含有量は、重合反応を行う前に、重合溶剤、1,3-ブタジエン及びスチレンの全量を基準に決定された1,3-ブタジエンとスチレンの全重量百分率含有量である。
【0072】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤及びアニオン重合開始剤と85~130℃の温度で重合溶剤で接触させ、アニオン重合反応を行う。好ましくは、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤及びアニオン重合開始剤と85℃~110℃の温度で接触させ、アニオン重合反応を行う。より好ましくは、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤と88℃~100℃の温度で接触させる。さらに好ましくは、1,3-ブタジエン及びスチレンを構造調整剤と88℃~95℃の温度で接触させる。
【0073】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、アニオン重合反応は0.005~1.5MPaの圧力、より好ましくは0.1~1MPaの圧力、さらに好ましくは0.2~0.6MPaの圧力で行われてもよい。本発明では、圧力はゲージ圧を指す。重合反応の時間は重合反応の温度によって決定されてもよく、一般には10~60minであってもよく、好ましくは20~40minである。
【0074】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、アニオン重合反応は不活性ガスによる雰囲気で行われる。前記不活性ガスとは、重合条件下で反応物、反応生成物及び溶剤のいずれとも生化学的相互作用を起こさないガス、例えば、窒素ガス及び/又は第0族元素ガス(例えばアルゴンガス)である。
【0075】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法においては、該製造方法は、前記重合反応混合液中の金属イオンの少なくとも一部を除去し、精製重合反応混合液を得るステップをさらに含んでもよい。前記重合反応混合液を洗浄することにより、金属イオンの少なくとも一部を除去してもよい。
【0076】
1つの好ましい実施形態では、前記重合反応混合物中の金属イオンの少なくとも一部を除去する方法は、前記重合反応混合液を洗浄液と混合し、混合物から油相を分離するステップを含み、前記洗浄液は水又は酸を含有する水溶液である。この好ましい実施形態では、前記酸は好ましくは無機酸、より好ましくは硫酸、硝酸、塩酸及び炭酸のうちの1種又は2種以上である。前記酸が炭酸である場合、重合反応混合液と水の混合物に二酸化炭素ガスを導入する、及び/又は重合反応混合液にドライアイスを添加することで、炭酸を形成する。
【0077】
この好ましい実施形態のより好ましい例では、前記洗浄液は第1洗浄液と第2洗浄液を含み、前記第1洗浄液は酸Iを含有する水溶液であり、前記第2水溶液は酸IIを含有する水溶液であり、前記酸Iは硫酸、塩酸及び硝酸のうちの1種又は2種以上であり、前記酸IIは炭酸であり、前記重合反応混合液中の金属イオンの少なくとも一部を除去する方法は、重合反応混合液を第1洗浄液と混合し、第1混合物を得て、第1混合物から第1油相を分離し、前記第1油相中の重合溶剤の少なくとも一部を除去し、液体スチレン-ブタジエン重合体粗製品を得るステップと、二酸化炭素の存在下で、前記第1油相を水と混合し、第2混合物を得て、第2混合物から第2油相を分離し、前記第2油相中の揮発性成分の少なくとも一部を除去し、液体スチレン-ブタジエン重合体を得るステップと、を含む。このより好ましい例では、前記第1洗浄液と単量体(即ち、1,3-ブタジエン及びスチレン)との重量比は、好ましくは1~5:1、より好ましくは2~4:1であり、前記第1洗浄液中の酸Iとアニオン重合開始剤とのモル比は好ましくは0.1~1.5:1、より好ましくは0.2~1:1であり、前記酸IはH換算であり、前記第2洗浄液と単量体(即ち、1,3-ブタジエン及びスチレン)との重量比は1~2:1であり、前記第2洗浄液中の酸IIとアニオン重合開始剤とのモル比は好ましくは0.1~1.5:1であり、前記酸IIはH換算である。
【0078】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法に使用される各種の試薬は、好ましくは使用前に本分野の一般的な方法で精製されることで、この中の不純物(特に水分)を除去する。試薬の精製方法は本分野において公知のものであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0079】
本発明に係る第3態様に記載の製造方法は、断続重合方式で実施されてもよいし、連続重合方式で実施されてもよく、特に限定されない。
【0080】
本発明の第4態様によれば、本発明は、本発明の第3態様に記載の方法によって製造される液体スチレン-ブタジエン重合体を提供する。
【0081】
本発明の第3態様に記載の方法によって製造された液体スチレン-ブタジエン重合体は、1,2-構造単位含有量が高いだけではなく、1,2-構造単位の一部が環状構造になる。本発明の第3態様に記載の方法によって製造された液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する原料で形成されたコーティングは、より優れた熱膨張特性を示す。
【0082】
本発明の第5態様によれば、本発明は、液体スチレン-ブタジエン重合体と、少なくとも1種の添加剤とを含有し、前記液体スチレン-ブタジエン重合体は本発明の第1態様、第2態様又は第3態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体である組成物を提供する。
【0083】
前記添加剤は、組成物に新しい性能を付与する及び/又は組成物の既存の性能を改善し得る物質である。1つの好ましい例として、前記添加剤は酸化防止剤を含む。前記酸化防止剤は一般的なものであってもよく、例えば、前記酸化防止剤は、フェノール系及び/又はアミン系酸化防止剤であってもよい。具体的には、前記酸化防止剤は、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(即ち、酸化防止剤264)、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(即ち、酸化防止剤168)、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシル(即ち、酸化防止剤1076)、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、t-ブチルカテコール及び2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)のうちの1種又は2種以上であってもよい。液体スチレン-ブタジエン重合体100重量部に対して、前記酸化防止剤の含有量は0.005~2重量部であってもよく、好ましくは0.01~1重量部である。
【0084】
本発明の第6態様によれば、本発明は、本発明の第1態様、第2態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する重合体コーティングを提供する。
【0085】
本発明に係る重合体コーティングは基材に対して高い付着力を持ち、しかも、本発明に係る重合体コーティングは、低下された熱膨張係数を有し、改善した熱膨張特性を示す。
【0086】
本発明の第7態様によれば、本発明は、本発明の第1態様、第2態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する粘着剤を提供する。
【0087】
本発明の第8態様によれば、本発明は、本発明の第1態様、第2態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物を含有する架橋剤を提供する。
【0088】
本発明の第9態様によれば、本発明は、本発明の第1態様、第2態様又は第4態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体、又は本発明の第5態様に記載の組成物の、架橋剤、粘着剤又は電気絶縁材料としての使用を提供する。
【0089】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれにより限定されるものではない。
【0090】
特に断らない限り、常温及び室温は全て25±3℃を表す。
【0091】
以下の実施例及び比較例では、重合体の微細構造はBruker AVANCE400型超伝導核磁気共鳴装置(H-NMR)を用いて測定され、H核の共鳴周波数は300.13MHz、スペクトル幅は2747.253Hz、パルス幅は5.0μs、データポイントは16K、サンプルチューブ径は5mm、溶剤は重水素化クロロホルム(CDCl)、サンプル濃度は15%(W/V)、テスト温度は常温、走査回数は16回とし、テトラメチルシラン化学シフトは0ppmとして校正される。
【0092】
以下の実施例及び比較例では、重合体の分子量及び分子量分布指数はゲル浸透クロマトグラフィー分析により測定され、ゲル浸透クロマトグラフィー分析には東ソー社製のHLC-8320型ゲル浸透クロマトグラフが使用され、カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ-N、標準カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ、溶剤はクロマトグラフィー純粋なテトラヒドロフラン(THF)、標準サンプルは分布の狭いポリスチレンとし、重合体サンプルは質量濃度1mg/mLのテトラヒドロフラン溶液として調製され、サンプル注入量は10.00μL、流速は0.35mL/min、テスト温度は40.0℃である。
【0093】
以下の実施例及び比較例では、重合体のガラス転移温度はTA-2980 DSC示差走査熱量計を用いてGB/T 29611~2013に規定される方法により測定され、昇温速度を20℃/minとする。
【0094】
以下の実施例及び比較例では、重合体の45℃における動粘度(粘度@45℃)はGBT10247-2008に規定される毛細管法を参照して測定され、ここで、寸法番号が5のウベローデ粘度計を用いて45℃の温度で測定される。
【0095】
以下の実施例及び比較例では、以下の化学試薬に関する。
【0096】
酸化防止剤264、酸化防止剤168及び酸化防止剤1076:国薬試薬公司より購入;
シクロヘキサン:国薬試薬公司より購入、純度>99.9%、分子量篩で15日間浸漬し、水含有量は5ppm(重量含有量)未満;
スチレン:重合グレード、燕山石化公司より購入;
1,3-ブタジエン:重合グレード、燕山石化公司より購入;
n-ブチルリチウム:百霊威試薬公司より購入、1.6mol/Lのヘキサン溶液;
2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン)(DTHFP):百霊威試薬公司より購入、分析的に純粋;
テトラヒドロフルフリルエチルエーテル(ETE):百霊威試薬公司より購入、分析的に純粋;
N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA):百霊威試薬公司より購入、分析的に純粋;
t-アミルオキシナトリウム(STA):百霊威試薬公司より購入、1.4mol/Lテトラヒドロフラン溶液;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS):百霊威試薬公司より購入、分析的に純粋、0.2mol/Lテトラヒドロフラン溶液として調製;
テトラヒドロフルフリルアルコールナトリウム(THFOA):Innochem試薬公司より購入、1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液;
メントールナトリウム(SMT):Innochem試薬公司より購入、1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液;
N,N-ジメチルテトラヒドロフルフリルアミン(THNN):百霊威試薬公司より購入、分析的に純粋;
硫酸:百霊威試薬公司より購入、濃度98重量%、水を用いて20重量%溶液として調製;
硝酸:国薬試薬公司より購入、濃度68重量%、水を用いて20重量%溶液として調製。
【0097】
実施例1
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0098】
(1)窒素ガス保護下、5L反応器にテトラヒドロフラン(THF)、構造調整剤1、構造調整剤2、1,3-ブタジエン及びスチレン(種類及び使用量を表1に示し、表1に記載の使用量は全て純粋な化合物で換算)を加え、反応器内の温度を表1に記載の重合反応温度にして、反応器に所定量のn-ブチルリチウム(具体的な使用量を表1に示し、表1に記載の使用量は全て純粋な化合物で換算)を加え、表1に記載の温度及び圧力でアニオン溶液重合反応を行い、スチレン-ブタジエン重合体を含有する重合反応混合液を得た。
【0099】
(2)ステップ(1)で得られた重合反応混合液に水及び酸(具体的な使用量及び酸の種類を表2に示し、表2に記載の使用量は全て純粋な化合物で換算)を添加し、15分間撹拌した後、静置して層化し、水相を分離し、得た油相を減圧蒸留し、液体ポリブタジエン粗品を得た。
【0100】
(3)ステップ(2)で得られた液体ポリブタジエン粗品に水を添加し、二酸化炭素ガス(水及び二酸化炭素の具体的な使用量を表2に示す)を撹拌しながら導入した後、静置して層化し、水相を分離し、得た油相を減圧蒸留し、蒸留残存物に酸化防止剤(具体的な使用量及び種類を表2に示す)を添加し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS1を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0101】
実施例2~13
実施例2~13は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0102】
実施例2~13では、ステップ(1)は表1に示される条件で行われた以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、ステップ(2)及びステップ(3)では、表2に示される条件で、ステップ(1)で得られたスチレン-ブタジエン重合体を含有する重合反応混合液を処理し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS2~BS13をそれぞれ得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0103】
実施例14
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0104】
製造方法のステップ(2)において、水の使用量を80gとした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS14を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0105】
実施例15
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0106】
ステップ(2)において、硫酸の使用量を8mmolとした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS15を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0107】
実施例16
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0108】
ステップ(3)を行わなかった以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS16を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0109】
実施例17
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0110】
ステップ(2)に使用される酸は硝酸であり、H換算で、硝酸のモル使用量を実施例1における硫酸のモル使用量と同じものとした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS17を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0111】
実施例18
本実施例は本発明の液体スチレン-ブタジエン重合体及びその製造方法を説明する。
【0112】
ステップ(1)において、重合反応の温度を85℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造した。本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物BS18を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0113】
比較例1
ステップ(1)において、重合温度を40℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS1を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0114】
比較例2
ステップ(1)において、TMEDAを加えなかった以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS2を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0115】
比較例3
ステップ(1)において、テトラヒドロフルフリルアルコールナトリウムを加えなかった以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS3を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0116】
比較例4
ステップ(1)において、テトラヒドロフランを等量のシクロヘキサンに変更した以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS4を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0117】
比較例5
ステップ(1)において、溶剤としてTHFを等量のシクロヘキサンに変更し、TMEDAを等量のDTHFPに変更した以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS5を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0118】
比較例6
ステップ(1)において、溶剤としてTHFを等量のシクロヘキサンに変更し、TMEDAを等量のDTHFPに変更し、THFOAを加えなかった以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS6を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0119】
比較例7
ステップ(1)において、溶剤としてTHFを等量のシクロヘキサンに変更し、TMEDAを等量のDTHFPに変更し、THFOAを加えず、重合温度を20℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS7を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0120】
比較例8
ステップ(1)において、溶剤としてTHFを等量のシクロヘキサンに変更し、TMEDAを等量のETEに変更し、THFOAを等量のSDBSに変更した以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS8を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0121】
比較例9
ステップ(1)において、TMEDAを加えず、重合温度を20℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS9を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0122】
比較例10
ステップ(1)において、THFOAの使用量を2mmolとした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS10を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0123】
比較例11
ステップ(1)において、THFを等量のシクロヘキサンに変更し、TMEDAを等量のETEに変更し、THFOAを加えず、重合温度を50℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造し、液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS11を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0124】
比較例12
ステップ(1)において、重合温度を70℃とした以外、実施例1と同様な方法によって液体スチレン-ブタジエン重合体を製造した。液体スチレン-ブタジエン重合体を含有する組成物DBS12を得て、ここで、液体スチレン-ブタジエン重合体の構造や性質のパラメータは表3に示される。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表3から分かるように、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体は、1,2-構造単位含有量が高いだけではなく、1,2-構造単位の一部が環状構造となる。また、本発明に係る液体スチレン-ブタジエン重合体は、適切な分子量及び動粘度を有し、しかも、分子量分布が狭い。
【0129】
テスト例
実施例1~18で製造された組成物BS1~BS18を銅箔の表面に均一に塗布し、コーティング厚さを0.8mmとし、120℃で2時間架橋硬化し、IPC-TM-650 2.4.08Cに規定される方法によって剥離強度を測定し、GB/T 36800.2-2018に規定される方法によって熱機械分析法(TMA)を使用し、線形熱膨張係数を測定し、実験結果を表4に示す。
【0130】
テスト比較例
テスト例と同様な方法によって、比較例1~12で製造された組成物DBS1~DBS12について剥離強度及び熱膨張係数を測定し、実験結果を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
表4の結果から分かるように、本発明に係る第2態様に記載の液体スチレン-ブタジエン重合体は、剥離強度を高く維持するとともに、より低い熱膨張係数を示す。
【0133】
以上は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の技術的構想を逸脱することなく、本発明の技術案について多くの簡単な変形を行ってもよく、このような変形には、各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることが含まれ、これらの簡単な変形や組み合わせも本発明の開示内容とみなすべきであり、全て本発明の特許範囲に属する。