(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】溶接ロボットおよびティーチングハンドル
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20240527BHJP
B23K 9/28 20060101ALI20240527BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20240527BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B23K9/12 331J
B23K9/28 C
B23K9/32 Z
B25J9/22 A
(21)【出願番号】P 2023197253
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 勇太
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0027368(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0729441(KR,B1)
【文献】中国実用新案第214640914(CN,U)
【文献】国際公開第2022/138596(WO,A1)
【文献】特開2002-263843(JP,A)
【文献】実開昭58-160666(JP,U)
【文献】実開昭58-143065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 9/28
B23K 9/32
B23K 26/00
B25J 9/22
B25J 13/02
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節のロボット本体と、前記ロボット本体の先端に取り付けられた溶接トーチと、を備えた溶接ロボットであって、
前記溶接トーチは、トーチ本体と、前記トーチ本体を前記ロボット本体の先端に連結する連結部と、を備えており、
前記トーチ本体は、前記トーチ本体のトーチ基端から前記トーチ本体のトーチ先端までの間において、前記トーチ本体を屈曲させた屈曲部を有しており、
前記溶接ロボットは、操作者により把持された状態で、操作者から前記ロボット本体の先端に付与される外力により、前記トーチ先端の移動する位置に応じた前記ロボット本体の動作を教示するティーチングハンドルをさらに備えており、
前記ティーチングハンドルは、前記屈曲部と対向する位置に、ハンドル先端が配置されるように、前記溶接トーチに取り付けられており、
前記ティーチングハンドルは、前記トーチ本体および前記ティーチングハンドルを側面視した状態で、前記トーチ本体のうち、前記トーチ基端から前記屈曲部までの第1部分に沿った第1トーチ仮想線を挟んで、前記屈曲部から前記トーチ先端までの第2部分から離れる方向に延在しており、
前記トーチ本体のうち、前記屈曲部から前記トーチ先端までの第2部分に沿った第2トーチ仮想線と、前記ティーチングハンドルが前記ハンドル先端から延在する方向に沿った第1ハンドル仮想線とが成すハンドル取付角度が、鈍角であ
り、
前記ティーチングハンドルは、
前記屈曲部と対向する対向位置から延在したハンドル本体と、
前記ハンドル本体の下部から隆起し、操作者が前記ティーチングハンドルを把持した状態で、操作者の指を掛ける指掛け用の隆起部分と、を有しており、
前記隆起部分は、ハンドル先端側からハンドル基端側に進むに従って、前記ハンドル本体からの高さが減少しており、
前記ティーチングハンドルには、可動が制限された前記ロボット本体に対して、前記外力により前記ロボット本体の可動を許可する操作スイッチが設けられており、
前記操作スイッチは、前記隆起部分の表面のうち、前記ハンドル先端側の端面に配置されていることを特徴とする、溶接ロボット。
【請求項2】
前記ハンドル取付角度は、110°~140°の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の溶接ロボット。
【請求項3】
前記ティーチングハンドルを側面視した状態で、前記ティーチングハンドルは、下方に湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載の溶接ロボット。
【請求項4】
請求項1に記載の溶接ロボットに用いられる前記ティーチングハンドルであり、
前記ティーチングハンドルは、前記溶接トーチに、着脱自在に取り付けられていることを特徴とするティーチングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットおよびティーチングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業者の近くで動作するように構成された人協調型ロボットが開発されている。たとえば、特許文献1には、ロボット本体の先端に、部品を把持するハンドを備えたロボットが提案されている。このロボットには、ロボット本体の先端に、ロボットの動作を教示するティーチングハンドルが取り付けられている。ティーチングハンドルは、操作者により把持された状態で、操作者からロボット本体の先端に付与される外力(操作力)により、ハンドの移動する位置に応じたロボット本体の動作を教示する際に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなティーチングハンドルを取り付けたロボットを、溶接ロボットとして用いた場合、ティーチングハンドルは、ロボットの先端に取り付けられているため、ティーチングハンドルの位置が、溶接トーチのトーチ本体から離れている。これにより、ティーチングハンドルを用いたとしても、溶接を行う作業者の動作に近い動作をロボット本体に教示させ、溶接ロボットに溶接を精度良く行わせることは難しい。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶接を行う作業者の動作に近い教示を多関節ロボットにさせることができる溶接ロボットおよびティーチングハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る溶接ロボットは、多関節のロボット本体と、前記ロボット本体の先端に取り付けられた溶接トーチと、を備えた溶接ロボットであって、前記溶接トーチは、トーチ本体と、前記トーチ本体を前記ロボット本体の先端に連結する連結部と、を備えており、前記トーチ本体は、前記トーチ本体のトーチ基端から前記トーチ本体のトーチ先端までの間において、前記トーチ本体を屈曲させた屈曲部を有しており、前記溶接ロボットは、操作者により把持された状態で、操作者から前記ロボット本体の先端に付与される外力により、前記トーチ先端の移動する位置に応じた前記ロボット本体の動作を教示するティーチングハンドルをさらに備えており、前記ティーチングハンドルは、前記屈曲部と対向する位置に、ハンドル先端が配置されるように、前記溶接トーチに取り付けられており、前記ティーチングハンドルは、前記トーチ本体および前記ティーチングハンドルを側面視した状態で、前記トーチ本体のうち、前記トーチ基端から前記屈曲部までの第1部分に沿った第1トーチ仮想線を挟んで、前記屈曲部から前記トーチ先端までの第2部分から離れる方向に延在しており、前記トーチ本体のうち、前記屈曲部から前記トーチ先端までの第2部分に沿った第2トーチ仮想線と、前記ティーチングハンドルが前記ハンドル先端から延在する方向に沿った第1ハンドル仮想線とが成すハンドル取付角度が、鈍角であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、操作者は、ティーチングハンドルを把持した状態で、ティーチングハンドルから、ロボット本体の先端に外力を付与し、トーチ先端の移動する位置に応じたロボット本体の動作を教示することができる。本発明では、ティーチングハンドルは、屈曲部と対向する位置に、ハンドル先端が配置されるように、溶接トーチに取り付けられ、トーチ本体が第1トーチ仮想線を挟んで、屈曲部からトーチ先端までの第2部分から離れる方向に延在している。これにより、教示作業の際には、操作者の前方にハンドル先端が位置するようにティーチングハンドルを把持し、把持したティーチングハンドルのハンドル先端を移動させることにより、トーチ本体のトーチ先端を正確かつスムーズに移動させることができる。
【0008】
第2トーチ仮想線と第1ハンドル仮想線とが成すハンドル取付角度が、鈍角であるので、ハンドルタイプの溶接トーチとハンドルとの配置状態に近いため、溶接を行う作業者の動作に近い教示をロボット本体に教示させることができる。特に、前記ハンドル取付角度が、110°~140°の範囲にあれば、このような効果をより一層期待することができる。
【0009】
より好ましい態様としては、前記ティーチングハンドルを側面視した状態で、前記ティーチングハンドルは、下方に湾曲している。
【0010】
この態様によれば、前記ティーチングハンドルは、下方に湾曲しているので、操作者は、ティーチングハンドルを把持し易く、ティーチングハンドルの操作性を向上させることができる。
【0011】
より好ましい態様としては、前記ティーチングハンドルは、前記屈曲部と対向する対向位置から延在したハンドル本体と、前記ハンドル本体の下部から隆起し、操作者が前記ティーチングハンドルを把持した状態で、操作者の指を掛ける指掛け用の隆起部分と、を有しており、前記隆起部分は、ハンドル先端側からハンドル基端側に進むに従って、前記ハンドル本体からの高さが減少している。
【0012】
この態様によれば、隆起部分に、操作者の中指から小指までの指を掛けることにより、ティーチングハンドルの把持性を高めることができるため、ティーチングハンドルの操作性をさらに向上させることができる。
【0013】
より好ましい態様としては、前記ティーチングハンドルには、可動が制限された前記ロボット本体に対して、前記外力による前記ロボット本体の可動を許可する操作スイッチが設けられており、前記操作スイッチは、前記隆起部分の表面のうち、前記ハンドル先端側の端面に配置されている。
【0014】
この態様によれば、操作スイッチは、隆起部分の表面のうち、ハンドル先端側の端面に配置されているので、隆起部分に、操作者の中指から小指までの指を掛けた状態で、操作者の人差し指で、操作スイッチを押圧することができる。
【0015】
より好ましい態様としては、上述した溶接ロボットに用いられる前記ティーチングハンドルであり、前記ティーチングハンドルは、前記溶接トーチに、着脱自在に取り付けられている。
【0016】
この態様によれば、ティーチングハンドルは、溶接トーチに、着脱自在に取り付けられているため、ティーチングハンドルを取り外して、教示における操作者の動作に応じて、ロボット本体を作動させて、精度の高い溶接を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶接を行う作業者の動作に近い教示を多関節ロボットにさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る溶接ロボットを前方から視た模式的斜視図である。
【
図2】
図1に示す溶接ロボットを後方から視た斜視図である。
【
図3】
図1に示す溶接ロボットのティーチングハンドルの取り付け状態を説明する模式的斜視図である。
【
図5】
図4に示す溶接ロボットの一部断面図である。
【
図6】
図2に示す溶接ロボットの分解斜視図である。
【
図8】(a)は、
図4に示す溶接ロボットによる教示作業を説明するための側面図であり、(b)は、ハンドルタイプの溶接トーチによる溶接作業を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に
図1~8を参照しながら、本発明の本実施形態に係る溶接ロボット1を説明する。
【0020】
1.溶接ロボット1について
図1および
図2に示すように、溶接ロボット1は、多関節のロボット本体10と、ロボット本体10の先端の支持アーム14に取り付けれた溶接トーチ20と、ブラケット30を介して溶接トーチ20に取り付けられたティーチングハンドル40と、を備えている。溶接トーチ20は、ロボット本体10のエンドエフェクタに相当する。
【0021】
本実施形態では、溶接ロボット1は、作業者の近くで動作するように構成された人協調型ロボットである。具体的には、溶接ロボット1は、作業者である操作者が溶接操作を教示するダイレクトティーチ機能を有している。具体的には、ダイレクトティーチ機能は、操作者がティーチングハンドル40を把持した状態で、ティーチングハンドル40を介して操作者からの外力(操作力)をロボット本体10の先端に直接付与することにより、ロボット本体10の姿勢を変更しながら、ロボット本体10に溶接動作を教示する機能である。この他にも、溶接ロボット1は、溶接ロボット1により本溶接を行う前に、作業者がティーチングハンドル40を用いて、手溶接を行う機能も有している。
【0022】
2.ロボット本体10について
図1および
図2に示すように、ロボット本体10は、基台11を備えており、基台11は、設置面に設置されている。基台11は、設置面に固定された固定台11aと、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する旋回台11bと、を備えている。
【0023】
旋回台11bには、固定台11aに固定された第1モータ(図示せず)の出力軸が接続されている。これにより、第1モータの駆動で、旋回台11bを固定台11aに対して第1軸J1の周りに旋回させることができる。第1モータの出力軸には、第1減速機(図示せず)が取り付けられており、第1減速機の出力軸には、第1軸J1周りのトルクを検出する第1トルクセンサ(図示せず)が取り付けられている。なお、第1モータ、第1減速機、およびトルクセンサは、基台11の内部に収容されている。
【0024】
ロボット本体10は、旋回台11bに基端が枢着されたロアアーム12と、ロアアーム12の先端に枢着されるアッパアーム13と、アッパアーム13の先端に枢着された支持アーム14と、を有している。これらのアームは、金属製であり、たとえば、鋳鉄、またはアルニウム合金鋳物等の鋳物からなる。
【0025】
ロアアーム12の基端は、基台11の旋回台11bに軸支されており、第2モータ(図示せず)を介して、旋回台11bに第2軸J2の周りに回動自在に枢着されている。ここで、第2軸J2は、第1軸J1と直交する方向に平行となる軸である。第2モータの動力により、ロアアーム12は、旋回台11bに対して第2軸J2の周りに回動する。第2モータの出力軸には、第2減速機(図示せず)が取り付けられている。第2減速機の出力軸には、第2軸J2周りのトルクを検出する第2トルクセンサ(図示せず)が取り付けられており、第2トルクセンサは、ロアアーム12に固定されている。ロアアーム12は、筒状の形状であり、内部に各種ケーブル(図示せず)が挿通されている。
【0026】
ロアアーム12の先端は、アッパアーム13に軸支されており、アッパアーム13は、第3モータ(図示せず)を介して、第2軸J2に平行な第3軸J3に、回動自在に枢着されている。アッパアーム13内において、第3モータがアッパアーム13に固定されている。第3モータの出力軸には、第3減速機が取り付けられている。さらに、第3減速機の出力軸には、第3軸J3周りのトルクを検出する第3トルクセンサが取り付けられており、第3トルクセンサは、ロアアーム12に固定されている。
【0027】
アッパアーム13は、ロボット本体10の腕部に相当し、その内部には、第3モータおよび第4モータ(図示せず)が収容されている。第4モータの出力軸と、アッパアーム13のアーム本体とは、動力伝達ベルト等を介して接続されており、アーム本体には、第4軸J4周りのトルクを検出する第4トルクセンサが取り付けられている。第4トルクセンサは、アーム本体に固定されている。第4モータの駆動により、アーム本体の長手方向に沿った第4軸J4の周りに回動する。
【0028】
アッパアーム13の先端は、ロボット本体10の手首部に相当する部分であり、溶接トーチ20(図示せず)を支持する支持アーム14が取り付けられている。具体的には、支持アーム14は、アッパアーム13の先端部において、第4軸J4と直交する第5軸J5の周りに回動自在に枢着され、長手方向に沿った第6軸J6の周りに回動自在となっている。
【0029】
アッパアーム13には、支持アーム14をアッパアーム13に対して枢動させる第5モータ(図示せず)が内蔵されている。第5モータは、アッパアーム13に内蔵された動力伝達ベルト等を介して、支持アーム14に接続されている。なお、第5モータと後述する第6モータは、アッパアーム13に内蔵されている。これにより、第5モータの動力が、アッパアーム13に内蔵された動力伝達ベルトに伝達されることで、支持アーム14は、アッパアーム13に対して第5軸J5で回動(揺動)する。
【0030】
さらに、アッパアーム13には、第6モータ(図示せず)が内蔵されており、第6モータは、動力伝達ベルトと傘歯車(図示せず)を介して、支持アーム14に接続されている。これにより、第6モータの駆動により、軸心(具体的には第6軸J6)の周りに、支持アーム14の先端部(本体部)を回動させることができる。
【0031】
このように、本実施形態では、ロボット本体10は、第1軸J1から第6軸J6までのそれぞれの軸に、軸周りの駆動を行う第1~第6モータを備えている。ロボット本体10は、第1軸J1から第4軸J4までのそれぞれの軸のみに、各軸に作用するトルクを測定する第1~4トルクセンサをさらに備えている。第1~4トルクセンサは、ひずみゲージ式のトルクセンサである。
【0032】
ここで、溶接ロボット1は、第5軸J5および第6軸J6周りのトルクを、トルクセンサにより測定してもよいが、たとえば、第5モータおよび第6モータに流れる電流から、制御装置(図示せず)で、トルクを推定してもよい。
【0033】
溶接ロボット1は、制御装置と溶接機(図示せず)を備えている。制御装置は、第1~第6モータの駆動を制御することにより、溶接ロボット1の動作を制御する。制御装置は、(1)ロボット本体10の溶接動作の制御、(2)溶接機本体(図示せず)を構成する溶接用ワイヤを溶接トーチ20に送給する送給装置の送給速度の制御、(3)溶接トーチ20に印加される溶接用の印加電圧の制御、(4)溶接トーチ20に供給されるシールドガスの供給タイミングの制御、等を行うことにより、溶接ロボット1の制御を行っている。より具体的には、制御装置は、溶接ロボット1の制御として、操作者によるティーチングハンドル40を用いた仮溶接などの溶接を実行するための溶接ロボット1の手溶接の制御、ティーチングハンドル40による外的操作(外力による操作)による教示を行うための溶接ロボット1の教示の制御、教示された動作に応じた溶接ロボット1の自動溶接の制御、等を行う。
【0034】
3.溶接トーチ20について
溶接トーチ20は、トーチ本体21と、トーチ本体21をロボット本体10の先端の支持アーム14に連結する連結部22と、を備えている。トーチ本体21は、トーチ本体21のトーチ基端21pからトーチ本体21のトーチ先端21tまでの間において、トーチ本体21を屈曲させた屈曲部21kを有している。
【0035】
具体的には、トーチ本体21のうち、トーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aは、直線状の第1トーチ仮想線T1に沿って形成されている。トーチ本体21のうち、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bは、直線状の第2トーチ仮想線T2に沿って形成されている。第1トーチ仮想線T1と第2トーチ仮想線T2とのそれぞれは、トーチ本体21の第1部分21aおよび第2部分21bの軸心を通過するものであり、これらの成す角は、本実施形態では、135°であり、120°~150°の範囲にある。
【0036】
トーチ本体21には、溶接用のワイヤが通過する経路、シールドガスが供給されるガス流路等が形成されており、トーチ本体21の第2部分21bには、ノズルが取り付けられている。トーチ本体21の構造は、一般的な構造であるため詳細な説明は省略する。さらに、トーチ本体21の第1部分21aは、トーチ本体21のトーチ基端21pにおいて、接続プラグ21cに接続されている。接続プラグ21cには、トーチ本体21に溶接用の電圧を印加する配線(図示せず)、溶接用のシールドガスを供給する配管(図示せず)等が、接続されている。
【0037】
図5に示すように、連結部22は、トーチ先端21tが連結部22に対して揺動自在となるように、接続プラグ21cを介してトーチ基端21pを保持する保持機構25を有している。さらに、接続プラグ21cには、後述する保持機構25を構成する保持ロッド25aが、取り付けられており、保持ロッド25aは、第1トーチ仮想線T1に沿って延在している。
【0038】
保持ロッド25aの端部は、皿状の頭部25fを有しており、頭部25fは、保持ロッド25aが揺動自在となるように、保持機構25を構成するケーシング25hに収容されている。保持ロッド25a軸部分と接続プラグ21cの一部は、ケーシング25hの下端部とともに、可撓性を有したゴムカバー25cに覆われている。これにより、トーチ先端21tが、保持ロッド25aとともに、ケーシング25hに対して揺動自在となる。
【0039】
ケーシング25hには、保持ロッド25aの頭部25fの凸曲面に当接する可動子25dが収容されている。可動子25dは、ケーシング25h内において、ケーシング25hの長手方向(第1トーチ仮想線T1に沿った方向)に、移動自在に配置されている。ケーシング25hには、可動子25dを、保持ロッド25aの頭部25fに向かって付勢する付勢バネ25sが配置されている。
【0040】
このように構成することにより、保持ロッド25aとともにトーチ本体21は、
図5に示す姿勢に保持される。トーチ本体21のトーチ先端21tに外力が作用すると、保持ロッド25aが揺動し、頭部25fの凸曲面に当接する可動子25dが押し上げられ、付勢バネ25sが圧縮される。トーチ先端21tに外力が解除された時点で、付勢バネ25sの復元力により、可動子25dが押し下げられ、保持ロッド25aとともにトーチ本体21を、
図5に示す姿勢に戻すことができる。なお、可動子25dが最上限まで押し上げられると、リミットスイッチ25pが作動し、溶接が中断される。
【0041】
このようにして、トーチ先端21tに作用する外力に起因したトーチ本体21の破損を防止することができる。なお、本実施形態では、保持機構25は、付勢バネ25sを利用して、トーチ本体21の姿勢を保持したが、たとえば、保持ロッド25aに相当する部分に磁石を取り付け、可動子25dに相当する部分に磁石を取り付け、両者の磁石の磁気力により、揺動自在にトーチ本体21の姿勢を保持してもよい。
【0042】
なお、ケーシング25hの上部から付勢バネ25s、可動子25d、および保持ロッド25aの軸心は、第1トーチ仮想線T1に沿って、貫通した貫通部が形成されており、溶接時には、この貫通部に沿って、溶接用のワイヤが送給される。さらに、本実施形態では、保持機構25のケーシング25hは、締結具71、72等により、L字状の補強アングルおよび接続体27を介して、ロボット本体10の支持アーム14に固定されている。具体的には、支持アーム14の第6軸J6と、第1トーチ仮想線T1とが平行となるように、溶接トーチ20は、支持アーム14に取り付けられている。
【0043】
4.ティーチングハンドル40とその取り付け状態について
ティーチングハンドル40は、溶接ロボット1は、操作者により把持された状態で、操作者からロボット本体10の先端に付与される外力により、トーチ先端21tの移動する位置に応じたロボット本体10の動作を教示する部材である。
【0044】
ティーチングハンドル40は、
図4に示すように、トーチ本体21の屈曲部21kと対向する位置に、ハンドル先端(先端面)40tが配置されるように、溶接トーチ20に取り付けられている。具体的には、ティーチングハンドル40は、ブラケット30を介して、溶接トーチ20に着脱自在に取り付けられている。溶接ロボット1による自動溶接を行う際には、ブラケット30とともに、ティーチングハンドル40は、固定プレート36を除く溶接トーチ20から取り外される。
【0045】
ここで、
図4に示すように、ハンドル支持部35によりティーチングハンドル40が支持された状態で、トーチ本体21およびティーチングハンドル40を側面視する。この側面視において、ティーチングハンドル40は、トーチ本体21のうち、トーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aに沿った第1トーチ仮想線T1を挟んで、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bから離れる方向に延在している。
【0046】
具体的には、トーチ本体21のうち、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bに沿った第2トーチ仮想線T2と、ティーチングハンドル40がハンドル先端40tから延在する方向に沿った第1ハンドル仮想線H1とが成すハンドル取付角度θが、鈍角である。ハンドル取付角度θは、110°~140°の範囲にあることが好ましい。
図4からも明らかなように、ティーチングハンドル40を側面視した状態で、ティーチングハンドル40は、ハンドル先端40tからハンドル基端40pに向かって、下方に湾曲している。具体的には、ティーチングハンドル40は、ハンドル先端40tからハンドル基端40pに向かって、弧状の第2ハンドル仮想線H2に沿って湾曲しており、直線状の第1ハンドル仮想線H1は、ハンドル先端40tにおける第2ハンドル仮想線H2の接線に相当する。なお、第1ハンドル仮想線H1と第2ハンドル仮想線H2とは、
図7に示すように、上面から視て、ティーチングハンドル40の幅方向の中央を通過する線であり、第2トーチ仮想線T2と同一の仮想平面上に存在する。
【0047】
本実施形態では、ティーチングハンドル40は、ハンドル本体41と隆起部分45とを有している。ハンドル本体41は、トーチ本体21の屈曲部21kと対向する対向位置から、第2ハンドル仮想線H2に沿って延在している。ハンドル本体41は、側面視において、湾曲したブロック状(スティック状)の部分であり、ハンドル本体41の上面41fは、第2ハンドル仮想線H2に並んで湾曲した曲面である。ティーチングハンドル40は、下方に湾曲しているので、操作者は、ティーチングハンドル40を把持し易く、ティーチングハンドル40の操作性を向上させることができる。隆起部分45に、操作者の中指F3、薬指F4、小指F5までの指を掛けることにより、ティーチングハンドル40の把持性を高めることができるため、ティーチングハンドル40の操作性をさらに向上させることができる。
【0048】
図3に示すように、ハンドル本体41の上面41fには、ハンドル先端40t側から順に、表示パネル44、機能レバー43、および複数の機能ボタン42、等が配置されている。ハンドル先端40tの端面には、停止ボタン48が取り付けられている。
【0049】
機能ボタン42は、(a)操作者(作業者)による手溶接モード、(b)操作者(作業者)による外力によりロボット本体10の溶接動作を教示する第1教示モード、(c)操作者(作業者)による機能レバー43等の操作によりロボット本体10に操作信号を送り、ロボット本体10を操縦して、ロボット本体10に溶接動作を教示する第2教示モード等に切り替えるスイッチである。このようなモード等などを含むロボット本体10の状態は、表示パネル44に表示される。さらに、停止ボタン48は、緊急時等に、溶接ロボット1を強制的に停止させるボタンである。このような機能ボタン42および機能レバー43で、操作者が操作することにより出力された信号は、ティーチングハンドル40のハンドル基端40pに接続されたケーブル49を介して、上述した制御装置に送信される。
【0050】
さらに、ティーチングハンドル40は、ハンドル本体41の下部から隆起した隆起部分45を備えている。隆起部分45は、操作者がティーチングハンドル40を把持した状態で、操作者の指を掛ける指係り用の部分である。隆起部分45は、ハンドル先端40t側からハンドル基端40p側に進むに従って、ハンドル本体41からの高さが減少している。
【0051】
隆起部分45の表面45aのうち、ハンドル先端40t側の端面45bには、操作スイッチ46が配置されている。操作スイッチ46は、可動が制限されたロボット本体10に対して、外力によるロボット本体10の可動を許可するスイッチである。操作スイッチ46は、隆起部分45の表面のうち、ハンドル先端40t側の端面に配置されているので、隆起部分45に、操作者の中指F3から小指F5までの指を掛けた状態で、操作者の人差し指F2で、操作スイッチ46を簡単に押圧することができる。
【0052】
ここで、具体的には、ロボット本体10には、上述した第1~第6モータが取り付けられており、操作スイッチ46を押さない状態(OFFの状態)では、第1~第6モータが機械的または電気的にロックされている。操作スイッチ46を押した状態(ONの状態)では、第1~第6モータの機械的または電気的なロックは解除される。ここで、ロックの解除は、操作スイッチ46を押し続けることにより継続されるように、設定されていてもよく、操作スイッチ46を一度押すことにより、ロックとロックの解除を切り換えるように設定してもよい。このようにして、ロボット本体10の可動の制限(ロック)が解除され、ロボット本体10の可動が許可される。
【0053】
5.ブラケット30に関して
図3および
図6に示すように、ブラケット30は、溶接トーチ20の接続プラグ21cに着脱自在に固定されるブラケット本体31と、ブラケット本体31に連続し、ティーチングハンドル40を溶接トーチ20に支持するハンドル支持部35と、を有している。ブラケット本体31は、トーチ本体21のうちトーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分に間隔をあけて並設されている。
【0054】
本実施形態では、接続プラグ21cには、電気的な絶縁性を有した材料として、ポリオレフィン系樹脂などの絶縁性を有した樹脂製の固定プレート36が固定されている。
図6に示すように、固定プレート36には、一対の貫通孔36hが形成されており、一対の締結具78により、溶接トーチ20の接続プラグ21cに取り付けられている。固定プレート36の中央には、接続プラグ21cの凹部に係合される凸部36tが形成されており、固定プレート36の水平方向の両側には、着脱具39に係止される一対の係止ピン39pが立設している。
【0055】
ブラケット本体31は、たとえば、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属材料からなる金属製の部分である。ブラケット本体31は、接続プラグ21cに非接触の状態で、接続プラグ21cを囲うように、固定プレート36に固定されている。ブラケット本体31には、ティーチングハンドル40側から、第1トーチ仮想線T1に沿って、接続プラグ21cを囲うカバー部31cと、カバー部31cの両側に形成された一対の鍔部31t、31tとが形成されている。各鍔部31tには、着脱具39が挿入される貫通孔31gが設けられている。
【0056】
このような結果、
図7に示すように、ブラケット本体31(のカバー部31c)と接続プラグ21cとの間に、隙間Sを形成することができる。本実施形態では、接続プラグ21cを囲うように、ブラケット本体31は、接続プラグ21cに非接触の状態で、樹脂製の固定プレート36に固定されているので、接続プラグ21cとブラケット本体31との電気的な絶縁を確保することができる。これにより、操作者が、溶接トーチ20に直接触れることを回避するとともに、溶接トーチ20とティーチングハンドル40との電気的な絶縁を確保することができる。
【0057】
ブラケット本体31は、接続プラグ21cに固定された固定プレート36を介して、押込みボタン39b付きの着脱具39により、接続プラグ21cに着脱自在に固定されている。着脱具39は、押込みボタン39bの押込みにより、固定プレート36とブラケット本体31との係止が解除されるものである。押込みボタン39bの押込み方向が、固定プレート36に対して、ブラケット本体31側からの押込み方向となるように、着脱具39は、ブラケット本体31と固定プレート36とに取り付けられている。
【0058】
たとえば、このような着脱具39として、いわゆるワンウェイクランパーと称される着脱具を挙げることができる。具体的には、
図7に示すように、着脱具39は、筒状の収容体39aを備えており、収容体39a内には、収容体39aの軸方向に沿って可動する可動体39tと、押込みボタン39bを付勢する付勢バネ39sとが収容されている。可動体39tは、軸方向に中央が括れた形状である。押込みボタン39bは、可動体39tを摺動自在に覆っており、押込みボタン39bの端面には、可動体39tを引き込む引込みボール39kが、軸周りに複数配置されている。さらに、収容体39a内には、可動体39tの先端側に、係止ピン39pに係止する係止ボール39jが、軸周りに複数配置されている。
【0059】
ブラケット本体31を固定プレート36に取り付ける際には、各ブラケット本体31の鍔部31tを固定プレート36に当接させ、固定プレート36に立設した係止ピン39pを、着脱具39の収容体39a内に挿入し、係止ピン39pに係止ボール39jに係止させる。これにより、ブラケット本体31は、接続プラグ21cに固定された固定プレート36を介して、着脱具39により、接続プラグ21cに取り付けられる。
【0060】
一方、ブラケット本体31を固定プレート36から取り外す際には、押込みボタン39bを押し込むことにより、引込みボール39kが、可動体39tの括れに入り込む。この状態で、押込みボタン39bの押込みを解除すると、付勢バネ39sの復元力により、押込みボタン39bが元の位置に戻るとともに、引込みボール39kと可動体39tが、押込みボタン39bに引き込まれる。この際に、係止ピン39pと係止ボール39jの係止が解除される。これにより、ブラケット本体31を、接続プラグ21cに固定された固定プレート36から、取り外すことができる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、着脱具39の押込みボタン39bの押込み方向が、固定プレート36に対して、ブラケット本体31側からの押込み方向となるように、着脱具39は、ブラケット本体31と固定プレート36とに取り付けられている。これにより、
図3に示す状態から、操作者の前方において、操作者の一方の手Hで、ティーチングハンドル40を把持した状態で、操作者の他方の手の指で、押込みボタン39bをブラケット本体31側から固定プレート36に向かって押し込むと、着脱具39による係止が解除される。押込みボタン39bを押し込んだ状態で、ティーチングハンドル40を操作者の手前に引き寄せると、ブラケット本体31とともに、ティーチングハンドル40を、溶接トーチ20から簡単に取り外すことができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、ブラケット本体31には、一対のアーム31aが形成されている。具体的には、アーム31aは、トーチ本体21のうちトーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aに並設するように、カバー部31cの両側から延在している。これにより、ブラケット本体31には、ティーチングハンドル40側からトーチ本体21を視た状態で、トーチ本体21のうち、トーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aを露出させる開口部31wが形成される。これにより、手溶接の作業および教示作業の際に、トーチ本体21の第1部分21aおよび第2部分21bを視認することができる。このような結果、トーチ本体21を視認しながら、精度良く手溶接を行うことができるとともに、ロボット本体10に精度良く溶接動作を教示することができる。さらに、開口部31wに作業者の指を通して、停止ボタン48を押すことも可能になる。
【0063】
ハンドル支持部35は、屈曲部21kと対向する位置に、ティーチングハンドル40のハンドル先端40tが配置されるように、ティーチングハンドル40を支持する、ポリオレフィン系樹脂などの絶縁性を有した樹脂製の部分である。本実施形態では、ハンドル支持部35は、ティーチングハンドル40の先端側の部分を挟み込む上部クランプ部材33と下部クランプ部材34(一対のクランプ部材33、34)からなる。
【0064】
本実施形態では、ブラケット本体31の各アーム31aの先端(下端)には、上部および下部クランプ部材33、34と当接する当接部31bが形成されている。当接部31bには、ティーチングハンドル40側に向かって、上部および下部クランプ部材33、34の端面33f、34fに当接する当接面31fが形成されている。当接部31bには、上部および下部クランプ部材33、34に締結されるボルトなどの締結具74を挿通する挿通孔31hが形成されている。上部クランプ部材33および下部クランプ部材34のそれぞれは、トーチ本体21側から、挿通孔31hに挿通された締結具72に締結されることにより、ブラケット本体31の当接部31bに取り付けられる。
【0065】
図4に示すように、側面視において、当接部31bの当接面31fと、これに当接する一対の上部および下部クランプ部材33、34のそれぞれの端面33f、34fとが、第1トーチ仮想線T1に対して傾斜している。これにより、ティーチングハンドル40から作用する操作者の上下方向の外力により、締結具72の軸方向と直交する方向に向かって、締結具72のネジ部分に剪断力が作用することを抑えることができる。
【0066】
上部クランプ部材33と下部クランプ部材34には、ティーチングハンドル40に応じた凹部33r、34rが形成されている。ティーチングハンドル40の取り付け時には、上部クランプ部材33と下部クランプ部材34を上下方向から挟み込み、ティーチングハンドル40の4つの貫通孔33hから締結具(図示せず)を挿入し、下部クランプ部材34に締結具を締め込む。これにより、ブラケット30を介して、ティーチングハンドル40を溶接トーチ20に保持することができる。上部および下部クランプ部材33、34を樹脂製にすることにより、接続プラグ21cとティーチングハンドル40との電気的な絶縁を確保することができる。さらに、上部クランプ部材33には、表示パネル44の形状に応じた開口窓33wが形成されている。操作者は、ティーチングハンドル40は、開口窓33wを介して表示パネル44を見ながら作業を行うことができる。
【0067】
6.手溶接および教示について
以下に、溶接ロボット1を利用した手溶接および自動溶接における溶接ロボットの教示について、その効果とともに説明する。たとえば、手溶接の場合には、機能ボタン42により、(a)操作者(作業者)が手溶接モードに設定する。操作者が、操作スイッチ46を一旦押すと、第1~第6モータの機械的または電気的なロックは解除される。これにより、操作者は、ティーチングハンドル40を把持し、溶接動作に合わせて、ティーチングハンドル40からの外力(操作力)により、ロボット本体10の姿勢を変更しながら、溶接ラインに沿って、トーチ本体21のトーチ先端21tを移動させることができる。具体的には、ティーチングハンドル40からの外力により、ロボット本体10に取り付けられた各軸の上述したトルクセンサ、または、ロボット本体10の先端に付与される3次元方向のそれぞれの力を測定する力センサ(図示せず)等から検出された信号に応じて、上述した制御装置が、ロボット本体10の第1~第6モータの駆動を制御する。
【0068】
このようにして、ロボット本体10を外力により操縦しながら、ロボット本体10の溶接動作時に、操作スイッチ46を再び人差し指F2で押すことにより、トーチ先端21tに位置する溶接用のワイヤ(図示せず)の先端からアーク放電を発生さてワイヤを溶融しつつ、ワイヤが送給される。これにより、操作者(作業者)により、溶接ロボット1を利用した手溶接を行うことができる。なお、本実施形態では、操作スイッチ46により、ロボット本体10のロック解除、溶接動作の実行(アーク放電による溶接)を行ったが、このような使用方法に限定されるものではなく、機能ボタン42と機能レバー43の少なくとも一方の使用方法を設定すればよい。たとえば、人差し指F2で、操作スイッチ46を押し続けることで、ロボット本体10の可動の制限(ロック)を解除し、溶接動作を実行する際には、機能ボタン42と機能レバー43の少なくとも一方をたとえば親指F1で操作してもよい。
【0069】
たとえば、教示の際、機能ボタン42により、(b)操作者(作業者)が第1教示モードに設定した場合、操作スイッチ46を押し続けると、第1~第6モータの機械的または電気的なロックの解除は継続される。これにより、操作者は、ティーチングハンドル40を把持しながら、溶接動作に合わせて、操作スイッチ46を押し続け、ティーチングハンドル40からの外力(操作力)により、ロボット本体10の姿勢を変更しながら、溶接ラインに沿って、溶接トーチ20のトーチ先端21tを移動させる。具体的には、上述した如く、ティーチングハンドル40からの外力により、上述したトルクセンサまたは力センサ等から検出された信号に応じて、上述した制御装置は、ロボット本体10の第1~第6モータの駆動を制御する。この際、第1~第6モータのエンコーダ(図示せず)の検出信号により、第1~第6モータまでの回転位置を算出する。これにより、操作者によるロボット本体10の溶接動作を教示することができる。
【0070】
たとえば、教示の際、機能ボタン42により、(c)操作者(作業者)が第2教示モードに設定した場合には、一般的に知られたティーチングペンダントによる教示と同様の教示を、操作者が機能レバー43等を操作することにより行えばよい。したがって、詳細な説明は省略する。
【0071】
なお、上述した操作スイッチ46を押した状態(ONの状態)では、第1~第6モータが機械的または電気的にロックされているが、たとえば、教示における多関節ロボットの姿勢にあわせて、第1モータなど、駆動する必要の無いモータは、ロックの状態を維持してもよい。
【0072】
本実施形態によれば、操作者は、ティーチングハンドル40を把持した状態で、ティーチングハンドル40から、ロボット本体10の先端に外力を付与し、トーチ先端21tの移動する位置に応じたロボット本体10の動作を教示することができる。さらに、ティーチングハンドル40は、屈曲部21kと対向する位置に、ハンドル先端40tが配置されるように、溶接トーチ20に取り付けられ、トーチ本体21が第1トーチ仮想線T1を挟んで、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bから離れる方向に延在している。これにより、教示作業の際には、操作者は、操作者の前方にハンドル先端40tが位置するようにティーチングハンドル40を把持し、把持したティーチングハンドル40のハンドル先端40tを移動させることにより、トーチ本体21のトーチ先端21tを正確かつスムーズに移動させることができる。
【0073】
特に、
図8(a)に示すように、第2トーチ仮想線T2と第1ハンドル仮想線H1とが成すハンドル取付角度θが、鈍角であるので、
図8(b)に示す手溶接用のハンドルタイプのトーチ本体21Aとハンドル41Aとの配置状態に近い。すなわち、トーチ本体21Aのトーチ仮想線T3とハンドル40A(ハンドル本体41)のハンドル仮想線H3との成す角度θAと、
図8(a)に示すハンドル取付角度θとは、近い角度になる。また、ティーチングハンドル40の操作スイッチ46の位置も、ハンドル41Aの操作スイッチ46Aの位置に近いため、作業者の人差し指で、操作スイッチ46を押すことができる。
【0074】
このため、手溶接の際には、溶接を行う作業者の動作に近い溶接を溶接ロボット1により行うことができるため、被溶接部材P1、P2に対して、精度のよい溶接部Wを手溶接により形成することができる。さらに、教示の際には、溶接を行う作業者の動作に近い動作を溶接ロボット1に教示させることができるため、被溶接部材P1、P2に対して、精度のよい溶接部Wを自動溶接により形成することができる。特に、ハンドル取付角度が、110°~140°の範囲にあれば、ハンドルタイプのトーチ本体21Aとハンドル40Aとの配置状態に近いため、このような効果をより一層期待することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、上述したブラケット30を用いることにより、手溶接作業および教示作業の際には、操作者(作業者)は、操作者の前方にハンドル先端40tが位置するようにティーチングハンドル40を把持する。さらに、操作者は、把持したティーチングハンドル40のハンドル先端40tを移動させることにより、トーチ本体21のトーチ先端21tを正確かつスムーズに移動させることができる。特に、第1ハンドル仮想線H1と第2トーチ仮想線T2とが同一の仮想平面上となるように、トーチ本体21とティーチングハンドル40とを配置することにより、このような効果をより一層発揮することができる。
【0076】
さらに、ブラケット本体31が接続プラグに着脱自在に固定され、ブラケット本体31が、トーチ本体21のうちトーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aに離間して並設されている。これにより、ティーチングハンドル40からブラケット本体31を介して接続プラグ21cに、操作者の力が作用する。このため、トーチ本体21の屈曲部21kの近傍にティーチングハンドル40を取り付けたとしても、トーチ先端21tの揺動を抑えつつ、手溶接を行うことができるとともに、ロボット本体10に精度良く溶接動作を教示することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1:溶接ロボット、10:ロボット本体、14:支持アーム、20:溶接トーチ、21:トーチ本体、21a:第1部分、21b:第2部分、21k:屈曲部、21p:トーチ基端、21t:トーチ先端、22:連結部、40:ティーチングハンドル、40p:ハンドル基端、40t:ハンドル先端、41:ハンドル本体、45:隆起部分、45a:表面、45b:端面、46:操作スイッチ、H1:第1ハンドル仮想線、T1:第1トーチ仮想線、T2:第2トーチ仮想線、θ:ハンドル取付角度
【要約】
【課題】溶接を行う作業者の動作に近い教示を多関節ロボットに教示させることは難しい。
【解決手段】ティーチングハンドル40は、屈曲部21kと対向する位置に、ハンドル先端40tが配置されるように、溶接トーチ20に取り付けられている。ティーチングハンドル40は、トーチ本体21のうち、トーチ基端21pから屈曲部21kまでの第1部分21aに沿った第1トーチ仮想線T1を挟んで、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bから離れる方向に延在している。トーチ本体21のうち、屈曲部21kからトーチ先端21tまでの第2部分21bに沿った第2トーチ仮想線T2と、ティーチングハンドル40がハンドル先端40tから延在する方向に沿った第1ハンドル仮想線H1とが成すハンドル取付角度θが、鈍角である。
【選択図】
図4