(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】非硬化性熱伝導性粘液性シリコーン材料
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20240527BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2023521576
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2020124316
(87)【国際公開番号】W WO2022087878
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル、キャシー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】グォ、チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャンジー
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519344(JP,A)
【文献】特開2008-274036(JP,A)
【文献】特表2016-512567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/105582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/269084(US,A1)
【文献】国際公開第2019/067340(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/124367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非硬化性熱伝導性材料であって、
(a)マトリックス材料であって、
(i)50~350センチストークスの範囲の動的粘度を有する、マトリックス材料重量に基づいて90重量パーセント超かつ同時に98重量パーセント以下の非官能性非架橋オルガノシロキサン流体、及び
(ii)300超の重合度を有するアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、1分子当たり平均2個以上のSiH基を含むオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤との、マトリックス材料重量に基づいて2~10重量パーセント未満の架橋ヒドロシリル化反応生成物であって、前記アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサン
架橋剤との比は、アルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5~2.0の範囲であるようなものである、架橋ヒドロシリル化反応生成物、を含む、マトリックス材料と、
(b)前記マトリックス材料全体にわたって分散された、非硬化性熱伝導性材料の重量に基づいて80重量パーセント超かつ同時に95重量%未満の熱伝導性充填剤と、
(c)アルキルが、1~14個の炭素原子を含有するアルキルトリアルコキシシラン及び20~110の範囲の重合度を有するモノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサンから選択され、アルコキシ基が、各々、前記マトリックス材料中に分散された1~12個の炭素原子を含有する処理剤と、を含む、非硬化性熱伝導性材料。
【請求項2】
前記非官能性非架橋オルガノシロキサン流体が、フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーである、請求項1に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項3】
前記アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンが、以下の化学構造(I):
ViR
2SiO-[R
2SiO]
x-SiR
2Vi (I)
(式中、Viは、ビニル基であり、下付き文字xは、400~900の平均値を有し、Rは、各出現において、1~8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基から独立して選択される)を有する、請求項1又は2に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項4】
前記オルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤が、以下の化学構造(II):
R
3SiO-[R
2SiO]
a-[HRSiO]
b-SiR
3 (II)
(式中、Rは、各出現において、1~8個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から独立して選択され、aは、3~100の範囲の平均値を有し、bは、2~30の範囲の平均値を有する)を有する、請求項1に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項5】
前記熱伝導性充填剤が、以下:平均サイズが8~10マイクロメートルを有する球状アルミニウム粒子、平均粒径が1~3マイクロメートルを有する球状アルミニウム粒子、平均粒径が0.10~0.15マイクロメートルを有する酸化亜鉛粒子、平均粒径が10~20マイクロメートルを有するアルミナ粒子、平均粒径が1~5マイクロメートルを有する球状アルミナ粒子のうちのいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせである、請求項1に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項6】
前記非硬化性熱伝導性材料が、アルキルトリメトキシシラン処理剤及びモノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサン処理剤の両方を含む、請求項1に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項7】
前記アルキルトリ
アルコキシシランが、n-デシルトリメトキシシランであり、前記モノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサンが、以下の化学構造:(CH
3)
3Si[(CH
3)
2SiO]
mSi(OCH
3)
3(式中、mは、30~110の範囲の値を有する)を有する、請求項1に記載の非硬化性熱伝導性材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の非硬化性熱伝導性材料を作製するためのプロセスであって、(a)前記架橋ヒドロシリル化反
応生成物を作製するため
の前記アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及び
前記オルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤を、ヒドロシリル化触媒と、前記非官能性非架橋オルガノシロキサン流体と、前記処理剤と、任意選択的に、前記熱伝導性充填剤のいずれか又は全てと一緒に合わせるステップと、(b)
前記アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及び前記オルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤を架橋して、前記架橋ヒドロシリル化反応生成物を、前記処理剤及び任意選択的に前記熱伝導性充填剤の存在下で作製するステップと、(c)前記熱伝導性充填剤を、まだその濃度でない場合、合わせた材料の重量に基づいて80重量パーセント超かつ同時に95重量%未満の濃度まで混合するステップと、を含む、プロセス。
【請求項9】
少なくとも2つの物体と熱接触している、請求項1~7のいずれか一項に記載の非硬化性熱伝導性材料を含む物品。
【請求項10】
物体の一方がベアダイであり、物体の他方がヒートシンクである、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非硬化性熱伝導性粘液性シリコーン材料である熱界面材料(thermal interface material、TIM)に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
熱界面材料(TIM)は、電子デバイスなどのデバイス中の2つの構成要素間の熱結合を強化するのに有用な熱伝導性材料である。例えば、熱源とヒートシンクとの間にTIMを含むことは、それらの間にTIMを有さずに熱源とヒートシンクとを接触させることと比較して、熱源からヒートシンクへ熱を伝達する効率を高めることができる。
【0003】
TIMは、非硬化性グリース又は硬化性組成物であり得る。非硬化性グリースは、特別な貯蔵条件を必要とせず、適用後に硬化させる必要がないので、実施がより容易である。典型的には、非硬化性グリースが、ステンシル又はスクリーン印刷などの方法によって、一方の構成要素に適用され、次いで、他方の構成要素が、TIMグリースを通して2つの構成要素を熱的に結合するように、サーマルグリースに対して押し付けられる。非硬化性グリースは、適用するのに好都合であるが、デバイス中で流動性のままであり、特に、TIMグリースによって結合された2つの構成要素が異なる熱膨張係数を有し、熱サイクル中にそれらを異なる程度に移動させる場合、望ましくないポンプアウトをもたらす可能性がある。TIMグリースによって結合された構成要素が、例えば、電力サイクル中に繰り返し移動し、異なる程度に移動する場合、可動TIMグリースは、2つの構成要素の間から搾り出される可能性があり、これはポンプアウトとして知られている。追加的、又は代替的に、マトリックス材料は、熱伝導性充填剤に対して優先的に搾り出され、相分離をもたらす可能性がある。いずれの場合も、TIMグリースの熱結合は、望ましくないことに減少する。結果として、TIMグリースは、典型的には熱源の周りの何らかの種類のハウジング(又は「一体型ヒートスプレッダ」)を介して、熱源をヒートシンクと間接的に熱的に結合する用途で使用されることが多い。次に、温度差をある程度緩和することができ、パッケージを強化することができ、結合された構成要素間で熱膨張係数をより厳密に一致させることができる。
【0004】
硬化性TIMは、ベアダイ結合(bare die coupling)、すなわち、ハウジング中間物を経由せずに熱源をヒートシンクに直接結合するのに望ましい。硬化性TIMは、2つの構成要素間に挟まれて、それらを熱的に結合し、次いで、硬化されて、TIMの移動性を低減し、典型的には、構成要素への接着を高める。一旦硬化されると、TIMは、非硬化性TIMよりもポンプアウト又は相分離を受ける可能性が低い。しかしながら、硬化性TIMは、デバイス製造-TIMの硬化において余分なステップを必要とする。また、硬化性TIMは、早期硬化を防止するために、使用前の貯蔵中に注意を必要とする。結果として、それらは、使用直前に混合される必要がある2成分系として供給されることが多い。1成分硬化性系は、早期硬化を抑制するために、冷凍庫での貯蔵などの特別な貯蔵条件を必要とする。更に、硬化性TIMを使用して熱的に結合された部品の組み立ては、TIMが硬化すると、特に0.2~0.3ミリメートルの典型的なTIM結合線の厚さでは、更なる取り扱い及びTIMへの嵌合が実現可能ではないので、直ちにかつ完全に同じ場所で行わなければならない。これは、サプライチェーン及び製造の観点からの柔軟性を抑制する。非硬化性TIMグリースは、これらの課題の全てを回避する。
【0005】
貯蔵及びデバイス製造を容易にするために非硬化性グリースであり、更に、ポンプアウト又は相分離の懸念なしにベアダイ用途に適用することができるTIMを特定することが望ましい。特に、1ワット/メートル*ケルビン(W/m*K)超、好ましくは2W/m*K以上、更により好ましくは5W/m*K以上の熱伝導率を有すると同時に、望ましい印刷適性を有するために150パスカル*秒(Pa*s)未満の粘度を有し、同時に、ポンプアウト耐性試験(本明細書において以下に定義される)において5000回の熱サイクル後にダイ表面上の5%未満の空隙空間の発生によって決定される優れたポンプアウト耐性を有する非硬化性TIMグリースを特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、デバイス製造を容易にするための非硬化性グリースであるが、ポンプアウト又は相分離の懸念なしにベアダイ用途に適用することができるTIMを提供する。特に、本発明は、1ワット/メートル*ケルビン(W/m*K)超、好ましくは2w/m*K以上、更により好ましくは5W/m*K以上の熱伝導率を有すると同時に、望ましい印刷適性を有するために150パスカル*秒(Pa*s)未満の粘度を有し、同時に、ポンプアウト耐性試験(本明細書において以下に定義される)において5000回の熱サイクル後にダイ表面上の5%未満の空隙空間の発生によって決定される優れたポンプアウト耐性を有する非硬化性TIMグリースを提供する。
【0007】
本発明は、キャリアマトリックス重量に対する重量%で、2~10重量パーセント(重量%)未満の架橋ポリシロキサンと、90重量%超~98重量%の異なる非官能性非架橋性ポリシロキサンとを含むキャリアマトリックス中に熱伝導性充填剤を分散させることによって、粘液性を有する非硬化性サーマルグリースを作製することができるという発見の結果である。少量の架橋ポリシロキサンは、粘液性を生じさせ、ベアダイ用途においてTIMとして使用される場合に、マトリックスがポンプアウト又は相分離を受けるのを抑制する。キャリアマトリックス中の架橋成分は、組成物をポンプアウトから安定化させ、分配された熱伝導性充填剤を支持するのに十分であるが、驚くべきことに、構成要素上への組成物のステンシル印刷又は印刷を抑制するほど高くない。更に、得られる組成物は、硬化に対して安定であり、特別な貯蔵又は取り扱いを必要とせず、構成要素への適用後に硬化も必要としない。
【0008】
第1の態様では、本発明は、(a)マトリックス材料であって、(i)50~350センチストークスの範囲の動的粘度を有する、マトリックス材料重量に基づいて90重量パーセント超かつ同時に98重量パーセント以下の非官能性非架橋オルガノシロキサン流体、及び(ii)300超の重合度を有するアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、1分子当たり平均2個以上のSiH基を含むオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤との、マトリックス材料重量に基づいて2~10重量パーセント未満の架橋ヒドロシリル化反応生成物であって、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンとオルガノ水素シロキサンとの比が、アルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5~2.0の範囲であるようなものである、架橋ヒドロシリル化反応生成物、を含む、マトリックス材料と、(b)マトリックス材料全体にわたって分散された、非硬化性熱伝導性材料の重量に基づいて80重量パーセント超かつ同時に95重量%未満の熱伝導性充填剤と、(c)アルキルが、1~14個の炭素原子を含有するアルキルトリアルコキシシラン及び20~110の範囲の重合度を有するモノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサンから選択され、アルコキシ基が、各々マトリックス材料中に分散された1~12個の炭素原子を含有する処理剤と、を含む、非硬化性熱伝導性材料である。
【0009】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の非硬化性熱伝導性材料をベアダイ又はヒートシンクなどの物体に適用することを含むプロセスである。
【0010】
第3の態様では、本発明は、ベアダイ及びヒートシンクなどの少なくとも2つの物体と熱接触している第1の態様の非硬化性熱伝導性材料を含む物品である。
【0011】
本発明の非硬化性熱伝導性材料は、電子用途において、特にベアダイをヒートシンクに直接熱的に結合するための非硬化性TIMグリースとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0013】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0014】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0015】
「ベアダイ」は、ヒートスプレッダが組み込まれていない、シリコン上の露出した集積回路を指す。
【0016】
個々のポリシロキサンの「動粘度」は、特に明記しない限り、摂氏25度(℃)でガラスキャピラリのキャノン・フェンスケ型粘度計を使用して、ASTM D445により測定する。
【0017】
「膨張時の粘度」は、ASTM D4440-15及び25ミリメートル平行板(鋸歯状鋼)を装備するTA InstrumentsによるモデルARES-G2デバイスを使用して動的粘度として測定される、ダイラタント歪み(ダイラタント点)における材料の粘度を指す。試験条件は、歪み:0.01~300%及び10ラジアン/秒の周波数を用いて摂氏25度(℃)で行われる歪み掃引に基づく。ダイラタント歪み(ダイラタント点)における動的粘度を、膨張時の粘度として記録する。
【0018】
標準1H、13C、及び29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析により、ポリシロキサンの化学構造を決定する。操作ソフトウェアに従ってレーザ回折粒径分析器(CILAS920粒径分布測定装置又はベックマン・コールタLS 13 320 SW)を使用し、充填剤粒子の平均粒径をメジアン粒径(D50)として決定する。
【0019】
一態様では、本発明は、マトリックス材料と、熱伝導性充填剤と、処理剤と、を含む非硬化性熱伝導性材料である。
【0020】
「非硬化性」とは、組成物のマトリックス材料が、ヒドロシリル化又は縮合による化学架橋を受けるのに必要な官能基の組み合わせを含まないこと、好ましくは、組成物が、熱的又は化学的に誘導される任意の化学反応によって架橋を受ける官能基を含まないことを意味する。その点に関して、マトリックス材料は、望ましくは、アルケニルとシリル-ヒドリド(silyl-hydride、SiH)官能基との組み合わせを含まず、アルコキシ官能基も含まない。望ましくは、マトリックス材料であるオルガノシロキサン材料は、アルキル及び/又はアリール基末端及びそのペンダントのみを含有する。
【0021】
「熱伝導性」とは、非硬化性熱伝導性材料が、1ワット/メートル*ケルビン(W/m*K超、好ましくは2W/m*K以上、更により好ましくは5W/m*K以上の熱伝導率を有することを意味する。非硬化性熱伝導性材料の熱伝導率を、本明細書の以下の実施例の節に記載されるように決定する。
【0022】
マトリックス材料は、非官能性非架橋オルガノシロキサン流体(「キャリア流体」)及び架橋ヒドロシリル化反応生成物を含み、これらからなることができる。
【0023】
非官能性非架橋オルガノシロキサン流体(「キャリア流体」)は、流体であり、これは、50センチストーク(centiStoke、cSt)以上、75cSt以上、100cSt、125cSt以上、150cSt以上、175cSt以上、200cSt以上、250cSt以上、更には300cSt以上の動粘度を有し、同時に、望ましくは350cSt以下、300cSt以下、250cSt以下、200cSt以下、150cSt以下、更には100cSt以下の動粘度を有することを意味する。「非官能性」とは、オルガノシロキサン流体がアルケニル基、シリルヒドリド基、シラノール基及びアルコキシ基を含まないことを意味する。望ましくは、キャリア流体は、アルキル及び/又はアリール末端基及びペンダント基のみを有する流体ポリオルガノシロキサンである。「非架橋」は、オルガノシロキサン流体が、任意の2つのポリマー鎖を連結する複数の化学結合を含まないことを意味する。
【0024】
キャリア流体は、望ましくは線状オルガノポリシロキサンである。線状オルガノポリシロキサンは、主に、好ましくは完全に、R3SiO1/2シロキサン単位及びR2SiO1/2シロキサン単位を含み、式中、各Rは、アルキル基及び/又はアリール基から独立して選択される。線状オルガノポリシロキサンは、線状オルガノポリシロキサン中の全てのシロキサン単位に対して、最大3モルパーセント(mol%)、好ましくは2mol%以下、1mol%以下を構成することができ、RSiO3/2及びSiO4/2シロキサン単位を含まなくてもよい。キャリア流体は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)であり得るか、又は好ましくは、フェニル基で置換されたR2SiO1/2シロキサン単位のいくつかにメチルを有するPDMSである(それによって、フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーを形成する)。フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーは、コポリマー中の全てのシロキサン単位に対して、5mol%以上、7mol%以上、更には9mol%以上のフェニルメチルシロキサン単位を含有することができ、同時に、典型的には15mol%以下、14mol%以下、13mol%以下、更には12mol%のフェニルメチルシロキサン単位を含有する。
【0025】
好適なキャリア流体の一例は、100センチストークスの動粘度を有し、9~12mol%のフェニルメチルシロキサン単位を含むフェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーであり、GelestからPMM-1021として入手可能である。
【0026】
キャリア流体は、マトリックス材料の大部分を構成し、マトリックス材料重量の90重量パーセント(重量%)以上、91重量%以上、92重量%以上、94重量%以上、更には96重量%以上の濃度で存在し、同時に、98重量%以下、更には96重量%以下、又は94重量%以下の濃度で存在する。
【0027】
架橋ヒドロシリル化反応生成物は、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンとオルガノ水素シロキサン架橋剤との架橋ヒドロシリル化反応生成物である。
【0028】
アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン(polydiorganosiloxane、PDOS)は、アルケニル末端を有する単一のPDOSであってもよく、又はアルケニル末端である複数のPDOS鎖の鎖延長ポリマーであってもよい。したがって、アルケニル末端PD PDOS MSは、以下の一般化学構造(I)を有する:
ViR2SiO-[R2SiO]x-{R’-[R2SiO]y-R2Si-R’-[R2SiO]z-}α-SiR2Vi (I)
【0029】
「{}」中の成分は、ヒドロシリル化鎖延長によって複数のPDOS鎖を連結することによって生じる。鎖延長は、アルケニル末端基を有するPDOSとシリルヒドリド末端基を有するPDOSとの間のヒドロシリル化反応によって生じる。アルケニル末端PDOSが、鎖延長されていない単一のPDOS鎖である場合、下付き文字αは、ゼロである。
【0030】
化学構造(I)では、
Viは、ビニル基であり、
Rは、各出現において、アルキル基及びアリール基、好ましくは1~8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基から独立して選択され、最も好ましくは各出現において、メチルであり、
R’は、2個以上の炭素原子を有する二価アルキレン基であり、3個以上、4個以上、更には6個以上の炭素原子を有することができ、一般に10個以下、8個以下、6個以下、更には4個以下の炭素原子を有し、
下付き文字αは、望ましくはゼロの平均値を有するが、ゼロ以上の値を有することができ、1以上、更には2以上であってもよく、同時に、一般に10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下であってもよく、2以下、更には1以下であってもよく、
下付き文字x、y及びzは、各々独立して、10以上、20若しくはm以上、又は30以上、40以上、50以上、75以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上、550以上、600以上、650以上、700以上、750以上、800以上、850以上の値を有し、同時に、900以下、850以下、800以下、750以下、700以下、650以下、600以下、550以下、500以下、450以下であることが望ましく、式中、(x+y+z)の値は、アルケニル末端PDMSの重合度(degree of polymerization、DP)に対応し、300以上、好ましくは350以上、400以上、450以上、500以上、550以上、600以上、650以上、700以上、750以上、800以上、更には850以上の値を有し、同時に望ましくは900以下、850以下、800以下、750以下、700以下、650以下、600以下、550以下、500以下、更には450以下である。
【0031】
オルガノ水素シロキサン架橋剤は、1分子当たり平均2個以上のSiH基を含有する。オルガノ水素シロキサン架橋剤は、化学構造(II):
R3SiO-[R2SiO]a-[HRSiO]b-SiR3 (II)
(式中、各Rは、各出現において、アルキル基及びアリール基、好ましくは1~8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基から独立して選択され、下付き文字aは、3以上、5以上、10以上、14以上、20以上、25以上、50以上、更には75以上の平均値を有し、同時に、100以下、75以下、50以下、25以下、20以下、更には15以下の平均値を有し、下付き文字bは、2以上、5以上、10以上、15以上、更には20以上の平均値を有し、同時に、30以下、25以下、20以下、更には15以下の平均値を有する)を有することができる。望ましくは、Rは、各出現において、メチル(-CH3)である。
【0032】
架橋ヒドロシリル化反応生成物は、アルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5以上、1.0以上、更には1.5以上であり、同時に2.0以下であり、1.5以下であり得るような濃度で、ヒドロシリル化触媒の存在下で、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤とを一緒に反応させた結果である。一般に、ヒドロシリル化触媒は、Karstedt触媒及び/又はSpeier触媒(H2PtCl6)などの白金系触媒である。Karstedt触媒は、ジビニル含有ジシロキサン(1,1,3,3,-テトラメチル,1,3-ジビニルジシロキサン)に由来する有機白金化合物である。ヒドロシリル化触媒は、本発明の非硬化性熱伝導性材料のマトリックス材料中に残存することができる(及び典型的には残存する)か、又は触媒は、架橋ヒドロシリル化反応生成物を形成した後に除去することができ、マトリックス材料中に存在しない。触媒は、典型的には、マトリックス重量に基づいて、0.5重量百万分率(parts per million、ppm)以上、1.0ppm以上、2.0ppm以上、3.0ppm以上、4.0ppm以上、5.0ppm以上、10ppm以上、15ppm以上、20ppm以上、30ppm以上、更には40ppm以上の白金金属濃度でマトリックス材料中に存在し、同時に、典型的には、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、更には1ppm以下の濃度で存在する。
【0033】
架橋ヒドロシリル化反応生成物は、典型的には、マトリックス材料重量に対して2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、更には9重量%以上であり、同時に、10重量%以下の濃度でマトリックス材料中に存在し、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、更には3重量%以下であってもよい。
【0034】
架橋ヒドロシリル化反応生成物及びキャリア流体は、望ましくは、非硬化性熱伝導性材料の他の成分が分散されているマトリックスを形成する単一組成物、好ましくは均質組成物を形成するように混合される。実際、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及びオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤は、キャリア流体中でヒドロシリル化架橋を受けるように、反応前に非官能性非架橋オルガノシロキサンと混合することができる。このように、ヒドロシリル化架橋反応が完了すると、架橋ヒドロシリル化反応生成物は、既にキャリア流体と混合されて、架橋材料を別の流体にブレンドする必要なくマトリックス材料を形成する。
【0035】
非硬化性熱伝導性材料は、マトリックス材料全体に分散された熱伝導性充填剤を更に含む。熱伝導性充填剤は、TIM材料において有用な任意のものであり得る。例えば、熱伝導性充填剤は、アルミナ、アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウム三水和物から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の熱伝導性充填剤の任意の組み合わせであり得る。望ましくは、熱伝導性充填剤は、アルミナ、アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせである。更により望ましくは、熱伝導性充填剤は、平均サイズが8~10マイクロメートルを有する球状アルミニウム粒子、平均粒径が1~3マイクロメートルを有する球状アルミニウム粒子、平均粒径が0.10~0.15マイクロメートルを有する酸化亜鉛粒子、平均粒径が10~20マイクロメートルを有するアルミナ粒子、平均粒径が1~5マイクロメートルを有する球状アルミナ粒子から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の充填剤の任意の組み合わせである。操作ソフトウェアに従ってレーザ回折粒径分析器(CILAS920粒径分布測定装置又はベックマン・コールタLS 13 320 SW)を使用して、充填剤粒子の平均粒径をメジアン粒径(D50)として決定する。
【0036】
熱伝導性充填剤の量は、非硬化性熱伝導性材料の重量に対する重量%で80重量%超、好ましくは85重量%以上、90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、更には93重量%以上であり、同時に典型的には、95重量%以下、94重量%以下、更には93重量%以下、92重量%以下、91重量%以下、又は90重量%以下である。
【0037】
非硬化性熱伝導性材料は、処理剤を更に含む。処理剤は、マトリックス材料中での充填剤粒子の分散、及び分散の安定化を助けるのに有用である。望ましくは、伝導性材料は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサンから選択される1つ以上の材料である。好ましくは、アルキルトリアルコキシシランのアルキルは、もう1つの炭素原子を含有し、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、更には12個以上の炭素原子を含有することができ、同時に、典型的には、14個以下、更には12個以下、10個以下の炭素原子を含有することができる。アルキルトリアルコキシシランの各アルコキシは、望ましくは、1個以上、かつ同時に6個以下、4個以下、更には2個以下の炭素原子を含有する。1つの望ましいアルキルトリアルコキシシランは、n-デシルトリメトキシシランである。モノトリアルコキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、望ましくは、化学構造(III):
R’3SiO[R’2SiO]mSi(OR’)3 (III)
(式中、各R’は、各出現において、1~12個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され、下付き文字mは材料の重合度に対応し、20以上、30以上、40以上、60以上、80以上、更には100以上、望ましくは110以下の値を有する)を有する。望ましくは、各出現において、R’は、メチル(-CH3)であり、より望ましくは、aの平均値もまた30~110の範囲である。望ましくは、処理剤は、n-デシルトリメトキシシランと、110の平均重合度を有するモノトリメトキシ末端ジメチルポリシロキサンとの組み合わせである。
【0038】
非硬化性熱伝導性材料中の処理剤の量は、望ましくは、非硬化性熱伝導性材料の重量に基づいて0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上、更には2.0重量%以上であり、同時に、典型的には3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、更には1.0重量%以下である。
【0039】
望ましくは、非硬化性熱伝導性材料は、望ましい印刷適性を有するために、150パスカル*秒(Pa*s)未満の粘度膨張を有する。非硬化性熱伝導性材料(on-curable thermally conductive material)の粘度膨張は、典型的には150Pa*s以下であり、125Pa*s以下、120Pa*s以下、110Pa*s以下、100Pa*s以下、75Pa*s以下、50Pa*s以下、更には40Pa*s以下であってもよく、同時に典型的には30Pa*s以上、40Pa*s以上であり、50Pa*s以上、75Pa*s以上、更には100Pa*s以上であってもよい。
【0040】
驚くべきことに、かつ有益なことに、非硬化性熱伝導性材料は、1ワット毎メートル*ケルビン(W/m*K)超、好ましくは2w/m*K以上、更により好ましくは5W/m*Kの熱伝導率を有する。同時に、非硬化性熱伝導性材料は、150Pa*s未満の膨張時粘度を有し、本明細書において以下に記載される印刷適性試験において「良好な」印刷適性を実証する。非硬化性熱伝導性材料は、ポンプアウト試験(以下に定義される)において5000回の熱サイクル後にダイ表面上に5%未満の空隙空間を発生させることによって、優れたポンプアウト耐性を実証する。
【0041】
理論に束縛されるものではないが、本発明の非硬化性熱伝導性材料に関する1つの仮説は、キャリア流体が、架橋ヒドロシリル化反応生成物を膨潤させて粘液性流体を形成し、粘液性流体が、非硬化性材料から相分離しないように熱伝導性充填剤粒子の分散体を安定化させ、マトリックス材料のポンプアウト挙動も抑制するものである。それにもかかわらず、非硬化性熱伝導性材料は、依然として、基材への容易な適用のために印刷可能であるほど十分に低い粘度である。
【0042】
(a)架橋ヒドロシリル化反応生成物を作製するための反応物(すなわち、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及び有機水素シロキサン架橋剤)を、ヒドロシリル化触媒と、非官能性非架橋オルガノシロキサン流体と、処理剤と、任意選択的に熱伝導性充填剤のいずれか又は全てと一緒に合わせることと、(b)反応物を架橋して、架橋ヒドロシリル化反応生成物を、処理剤及び任意選択的に熱伝導性充填剤の存在下で作製することと、(c)熱伝導性充填剤を、まだその濃度でない場合、合わせた材料の重量に基づいて80重量パーセント超かつ同時に95重量%未満の濃度まで混合することと、によって、非硬化性熱伝導性材料を調製する。熱伝導性充填剤は、ステップ(a)~(c)のいずれか1つ又は任意の組み合わせの間に添加することができる。しかしながら、マトリックス材料の架橋ヒドロシリル化反応生成物を形成するヒドロシリル化反応中に非官能性非架橋オルガノシロキサン流体及び処理剤を存在させて、架橋ヒドロシリル化反応生成物を非官能性非架橋オルガノシロキサン流体で膨潤させることが重要である。
【0043】
非硬化性熱伝導性材料は、それが2つの物体の間に存在し、それらを熱的に結合するデバイスの一部であり得る。非硬化性熱伝導性材料は、特に物体の一方がベアダイであり、他方の構成要素がヒートシンクである場合に、2つの物体を熱的に結合するための熱界面材料(TIM)として特に有用である。これは、ベアダイが使用中に大きな温度及び寸法範囲にわたって循環する傾向があり、TIMのポンプアウトをもたらし得るので、維持するのが特に困難な結合である。更に、本発明の非硬化性熱伝導性材料は、そのような用途に好適である。
【0044】
本発明は、ベアダイ又はヒートシンクなどの物体に非硬化性熱伝導性材料を適用するステップを含むプロセスを含む。プロセスは、非硬化性熱伝導性材料に対して第2の構成要素を適用し、圧力を加えることによって、物体と第2の物体との間に非硬化性熱伝導性材料を挟むことを更に含むことができる。例えば、非硬化性熱伝導性材料は、ベアダイ又はヒートシンクである物体に適用することができ、ベアダイ又はヒートシンクの他方は、ベアダイ及びヒートシンクの両方が非硬化性熱伝導性材料に熱的に結合されるように、非硬化性熱伝導性材料に適用される。
【実施例】
【0045】
表1は、本実施例で使用するための成分を列挙する。SILASTIC、SYLOFF、及びDOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0046】
【0047】
マトリックス材料の調製
MM1~MM10:成分を重量部で特定する表2の配合に従って、マトリックス材料(Matrix Material、MM)1~10を以下のように調製する:アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン(AT PDOS)とキャリア流体1とを均質になるまでガラスバイアル中で混合する。3.3重量部の処理剤1、39重量部の処理剤2及び0.07重量部の白金触媒を添加し、混合する。オルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤1を撹拌しながらゆっくり添加する。添加が完了した後、25℃で1日間撹拌を続けて、架橋反応を完了させる。得られた組成物がマトリックス材料である。
【0048】
MM11:0.05gの白金触媒を使用し、いかなる処理剤も含まないことを除いて、MM1~MM12と同様にMM13を調製する。
【0049】
【0050】
非硬化性熱伝導性材料の調製
I.Al-1、Al-2及びZnO-1を有する試料
参照試料A-キャリア流体マトリックスのみを有する熱伝導性材。100ミリリットル(mL)の歯科用カップに、5.10グラム(g)のキャリア流体1、0.17gの処理剤1、1.99gの処理剤2、50.25gのAl-1、25.12gのAl-2、及び17.37gのZnO-1を添加する。歯科用ミキサーを用いて毎分1500回転(revolutions per minute、RPM)で2分間混合して、流動性混合物を得る。流動性混合物を容器に移し、真空下(2.2キロパスカル、22トル)で1時間、150℃で加熱して、参照試料Aを得る。
【0051】
試料1~10:熱伝導性材料.試料1~10を以下の方式で調製する:100mLの歯科用カップに、7.26gのマトリックス材料(表3参照)、50.25gのAl-1、25.12gのAl2及び17.37gのZnO1を添加する。歯科用ミキサーを用いて1500RPMで2分間混合して流動性混合物を得る。混合物を金属容器に移し、真空下(2.2キロパスカル、22トル)で1時間、150℃で加熱して、最終試料を得る。
【0052】
【0053】
試料11:13.00gのマトリックス材料MM2、47.13gのAl-1、23.56gのAl-2、及び16.29gのZnO-1を使用することを除いて、試料2と同様に調製する。
【0054】
試料12:15.00gのマトリックス材料MM2、46.06gのAl-1、23.02gのAl-2、及び15.92gのZnO-1を使用することを除いて、試料2と同様に調製する。
【0055】
II.アルミナ-1、アルミナ-2、及びZnO-1を有する試料
参照試料B-キャリア流体マトリックスのみを有する熱伝導性材料。100ミリリットル(mL)の歯科用カップに、4.25gのキャリア流体2、1.5gのキャリア流体3、0.2gの処理剤1、0.8gの処理剤3、53.5gのアルミナ-1、26.7gのアルミナ-2、及び12.8gのZnO-1、0.1gの安定剤、並びに0.15gのヒュームドシリカを添加する。歯科用ミキサーを用いて毎分1500回転(RPM)で2分間混合して、流動性混合物を得る。流動性混合物を容器に移し、真空下(2.2キロパスカル、22トル)で1時間、150℃で加熱して、参照試料Bを得る。
【0056】
試料13:アルミナ-1及びアルミナ-2を有する熱伝導性材料.以下の方式で試料13を調製する:100mLの歯科用カップに、5.9gのマトリックス材料11、0.2gの処理剤1、0.8gの処理剤3、53.5gのアルミナ-1、26.7gのアルミナ-2、12.8gのZnO-1、及び0.1gの安定剤を添加する。歯科用ミキサーを用いて1500RPMで2分間混合して流動性混合物を得る。混合物を金属容器に移し、真空下(2.2キロパスカル、22トル)で1時間、150℃で加熱して、最終試料を得る。
【0057】
試料14~17:アルミナ-3及びアルミナ-4を有する熱伝導性材料.これらの試料は、熱伝導性充填剤の充填量の範囲を調査する。各成分の重量を表4に示す。100mLの歯科用カップに、指定量のMM2、アルミナ-1、及びアルミナ-2を入れる。歯科用ミキサーを用いて1500RPMで2分間混合して流動性混合物を得る。混合物を金属容器に移し、真空下(2.2キロパスカル、22トル)で1時間、150℃で加熱して、最終試料を得る。
【0058】
【0059】
試料の評価
以下の方法を使用して、膨張時の粘度、熱伝導率及び印刷適性を特徴付けることによって試料を評価する:
ポンプアウト耐性。最終用途を模倣する試験においてポンプアウト耐性を評価し、ポンプアウトの量は、加速電力サイクル後に評価する。パワーサイクリングは、5000サイクルのパワーサイクリングで電子デバイスを加熱し、1日当たり約3サイクルで5年のデバイス寿命をシミュレートする。試験に使用されるデバイスは、AMD Radeon(商標)RX VeEGA 64 GPUによって電力供給されるGigabyteからのGPUカードである。(1)ヒートシンク側及びチップセット側の両方を露出させるためにGPUカードを分解すること、(2)必要に応じてスワブ又は洗浄剤を使用することによって、両側の残留TIMを注意深く洗浄すること、(3)チップセットの位置に対称的に整合するように、200マイクロメートルの厚さを有するスクリーンステンシルをヒートシンク上に貼り付けること、(4)ステンシルを通して、試料材料をチップセット上にステンシル印刷すること、(5)ステンシルを除去し、GPUを再組み立てすることによって、GPUに試料材料を適用する。
【0060】
以下のコンピュータ構成部品を試験に使用する:CPU:AMD Ryzen 7 2700X 8-Core、マザーボード:ASUS TUF X470-PLIS GAMING、メモリ:KINSTON DDR4 266 8 GB、グラフィックカード:Gigabyte Radeon Computer Graphics Card(GV-RXVEGA64GAMING OC-8GD)、ソリッドステートドライブ:Intel SSD 760P Series(256GB、M.2 80mm PCle 3.0x4、3D2、TLC、モニタ:Del U2417H、キーボード:Dell、マウス:Dell、PCケース:Antec P8 ATX、電源:Antec NEO750W、KVM:MT-viki HK05。
【0061】
熱サイクル試験は、https:/geeks3d.com/furmark/においてフリーダウンロードで入手可能なFurMark GPUストレステストソフトウェアを実行することで行う。(AutoItの)スクリプトには、Furmarkソフトウェアをオン及びオフする手順、並びにGPUカードの温度を制御するためにファンの速度を変化させるステップが含まれている。AutoItスクリプトには、(1)Furmarkプログラムを開く、(2)Furmarkストレステストルーチンを起動する、(3)加熱サイクルのため、200,000秒間、ファン速度を最大速度の30%にする、(4)ストレステストルーチンを停止する、(5)Furmarkプログラムをオフにする、(6)冷却サイクルのため、200,000秒間、ファン速度を最大速度の90%にする、(7)本シーケンスを繰り返す、が含まれている。本手順を使用して、GPUカード上の温度を35℃~85℃にまで循環させ、35℃の低さにまで戻す。5000サイクルを実行後、コンピュータを停止する。グラフィックカードを取り外す。グラフィックカードを開き、電子基板上のヒートシンク及びダイを、taキーエンスVHXデジタルマイクロスコープの高解像度カメラで記録する。ヒートシンク及びダイの両方で、サイクル試験中のポンプアウトが原因で試料材料がない面積(ベアスポット)を測定する。容易に入手可能な「sketchandcalc」ソフトウェア(又はデジタル画像で面積(are)を計算することができる任意の同等のソフトウェア)を使用して、ベアスポットの定量的な面積を計算する。グリースのポンプアウトによる総バースポット面積を、総CPUダイ面積(495平方ミリメートル)で除算して、ダイ上のベアスポットの%面積を決定する。結果を以下のように分類する:最良=ダイ上のベアスポットの面積が5%未満、適度=ダイ上のベアスポットの面積が5~10%、及び不良=ダイ上のベアスポットの面積が10%超。
【0062】
注:試料B及び13について、以下の修正されたポンプアウト耐性試験を使用してポンプアウト耐性を評価する。試料材料のいずれかの側に0.1ミリメートル厚のシムを用いて0.1ミリメートル離して配置されたガラス板とアルミニウム板との間に0.1グラムの試料材料を有するアセンブリを調製する。アセンブリをオーブンに入れ、30分の速度で-40℃~125℃を循環させて、一方の限界から他方の限界に動かし、次いで各限界で30分間保持する。168時間循環させ、次いで、ガラススライド下のアルミニウムプレート上の材料の被覆率を評価する:最良=5%未満のベアスポット面積、適度=>5%かつ<10%のベアスポット面積、不良=>10%のベアスポット面積。この修正試験における性能は、上述のポンプアウト耐性試験に対応すると予想される。
【0063】
膨張時の粘度。ASTM D4440-15及び25ミリメートルの平行板(鋸歯状鋼)を装備するTA InstrumentsによるモデルARES-G2デバイスを使用して、動的を測定する。試験条件は、歪み:0.01~300%及び10ラジアン/秒の周波数を用いて摂氏25度(℃)で行われる歪み掃引に基づく。ダイラタント歪み(ダイラタント点)における動的粘度を、膨張時の粘度として記録する。
【0064】
熱伝導率。Hot Disk AB(Gotenborg、Sweden)からのHot Disk Instrument TPS 2500 Sを使用して、ISO22007-2:2015に従って熱伝導率を測定する。センサC5501を使用する。カップ間に平面センサを保持した状態で、2つのカップを試料材料で満たす。分析条件:微調整した分析(fine tuned analysis)、温度ドリフト補償及び時間補正、ポイント50~150の間で選択したポイントでの計算。
【0065】
印刷適性試験。80メッシュの金属スクリーンを使用して試料をスクリーン印刷し、厚さ200マイクロメートルの25センチメートル×25センチメートルのパターンをヒートシンク上に印刷する。スクリーンをヒートシンク上に保持し、スクリーンの上部に5gの試料材料を位置付ける。一定の速度及び力で移動するスクリーン及びヒートシンクに対して45°の角度で保持されたスキージーを使用して、スクリーンを通してヒートシンク上にサーマルグリースを移す。以下の基準を使用して試料のスクリーン印刷適性を評価する:良好:試料をヒートシンク上に全表面被覆率で堆積させることができる。中程度:試料は、印刷表面積の約70~80%のみを覆うように堆積される。試料を表面上に堆積させるために、更なるスキージーの試みが必要とされる。一部の材料は、スクリーンメッシュ中に吊り下げられ得る。不良:印刷表面積の20%未満に試料が堆積している。試料は、良好なスクリーン印刷適性のためには濃すぎる。試料の大部分は、スクリーンメッシュ中に吊り下げられ得る。
【0066】
結果。表5に試料の評価結果を示す。これらの結果から、以下の結論が明らかである:
試料14~17は、1W/m*K超の所望の熱伝導率を達成するために、熱伝導性充填剤の添加量が80重量%超でなければならないことを明らかにする。
【0067】
試料A及び1~4は、以下を明らかにする:(1)架橋ヒドロシリル化反応生成物は、ポンプアウト耐性を達成するために存在しなければならず、(2)架橋ヒドロシリル化反応生成物に対するキャリア流体の重量比が、適切な印刷適性を達成するために90/10超でなければならず、(3)アルケニル末端PDOSの重合度が、良好な印刷適性を達成するために292超であることが必要である。
【0068】
試料B及び13は、ポンプアウト耐性を達成するために架橋ヒドロシリル化反応生成物が必要であることを更に明らかにする。
【0069】
【表5】
(a)流動性がないので、粘度又は熱伝導率を測定することができなかった。(b)印刷適性が不良なため、熱サイクルは行わなかった。(c)熱伝導率が低いため、熱サイクルは行わなかった。(d)-NM--=測定せず、試料は、熱伝導率値を調査するために行った。(e)-NM-ここでは、膨張時の粘度が測定されなかったことを示すが、印刷適性結果は、それが印刷適性に必要な範囲内であることを示す。