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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240528BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20240528BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240528BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240528BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/44
A61K8/64
A61K8/898
A61Q1/12
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018137095
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020011938
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】力丸 あゆみ
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】赤澤 高之
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215614(JP,A)
【文献】特開2011-162516(JP,A)
【文献】特開2011-144119(JP,A)
【文献】特開2003-238342(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029769(WO,A1)
【文献】特開平11-116433(JP,A)
【文献】特開2014-040512(JP,A)
【文献】COSTUME SKIN EX FOUNDATION,MINTEL GNPD[ONLINE],2015.11,[検索日2022.07.07],インターネット:<URL:HTTPS://WWW.GNPD.COM/SINATRA>(DATABASEACCESSIONNO.3575649)
【文献】Face Protect UV SPF 50+ PA++++, MINTEL GNPD [ONLINE], 2018.06,[検索日 2022.07.07],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.5786371)
【文献】UV Essence,MINTEL GNPD[ONLINE],2013.09,[検索日 2023.01.17],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.2224790)
【文献】ドクターシーラボ BBリップグロス 多機能 10g SPF15 PA+、ドクターシーラボ、Amazon.co.jp[online],[検索日2023年1月17日],インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/ドクターシーラボ-B-リップグロス-多機能-10g-SPF15/dp/B007KIXANY>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)~(C)を含む油中水型乳化化粧料。
(A)(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー
(B)乳化系の外相の油剤をゲル化するための、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、及び(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルから選ばれる1種以上である油溶性ゲル化剤を0.1~3質量%
(C)該(B)を溶解できるエステル油を化粧料あたり1~9.5質量%
(但し、ステアリン酸イヌリンを含有する化粧料を除く)
【請求項2】
(D)トリメチルグリシンを含む請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に塗布するとリッチ感や厚み感が感じられる油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の使用感は、当該化粧料の作用効果に加えて、化粧料の商品価値を決定する重要な要因である。特に化粧料を肌に塗布したときの感触は重要であり、商品価値を決定するといっても過言ではない。化粧料に求められる感触の中でも、皮膚塗布時の延びがよく、厚みがあってべたつきがないことが外用剤として極めて好ましい特性とされている(特許文献1)。
化粧料の厚み感とは、製剤を指又は手で皮膚に塗布する際に、指又は手と皮膚の間に製剤の厚みが感じられ、製剤が滑らかに流動することによって、皮膚が摩擦を感じない感触として定義付けられる(特許文献2)。
【0003】
油中水型乳化化粧料では、厚み感を付与するためにデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの油性ゲル化剤で外油相を増粘する技術が知られている。しかしこのような油性ゲル化剤を配合すると、塗布時のべたつき、塗り伸ばす際のひっかかり感などの使用感の悪さが問題となる。
【0004】
一方、ペプチド/シリコーンハイブリッドポリマーであるシリル化ペプチド/シラン共重合体は、乳化能をもつことが知られている(特許文献4)。
またこのシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体を含む油中水型乳化化粧料が知られている(特許文献5)。この化粧料は、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンと、シリル化ペプチド/シラン化合物共重合体を含有し、20℃における粘度範囲が10~20,000mPa・sの油中水型乳化化粧料である。のびがよく、べたつきがない良好な使用感と、経時安定性にすぐれている。しかし、低粘度のため、厚み感のある使用感は得られていない。
また、適度な粘性を有し、べたつかず、のびが良く、コクのある油中水型乳化化粧料が知られている(特許文献6)。この化粧料は、グリセリンと脂肪酸および二塩基カルボン酸とのエステル化合物である油溶性ゲル化剤を配合し、油相をゲル化することで使用感に優れた油中水型乳化皮膚外用剤を実現している。しかし、この技術だけでは、処方のバリエーション化は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-143632号公報
【文献】特開2017-057189号公報
【文献】特開2015-098452号公報
【文献】特開2003-137720号公報
【文献】特開2017-132740号公報
【文献】特開2011-079753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗布時に好ましい厚み感が感じられ、塗布時ののびが良好であり、べたつき感がなく、さらに保存時や流通時に離油が発生せず、経時による粘度変化が少ない、安定性に優れた油中水型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)次の(A)~(C)を含む油中水型乳化化粧料。
(A)(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー
(B)油溶性ゲル化剤
(C)エステル油
(2)(B)成分の油溶性ゲル化剤がトリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、デキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である(1)に記載の油中水型乳化化粧料。
(3)(C)成分のエステル油の含有量が、化粧料あたり1~10質量%である(1)又は(2)に記載の油中水型乳化化粧料。
(4)(D)成分としてトリメチルグリシンを含む(1)~(3)のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成の油中水型乳化化粧料は、塗布時に好ましい厚み感と、のびの良さを示し、塗布後のべたつき感のない化粧料となる。また本発明の化粧料は、保存時や流通時の離油や粘度変化のない安定な油中水型乳化化粧料となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、油溶性ゲル化剤、エステル油を含有する油中水型化粧料に関する。
【0010】
本願明細書でいう化粧料の「厚み感」とは、化粧料の製剤を指又は手で皮膚に塗布する際に、指又は手と皮膚の間に製剤の厚みを感じる感触をいう。また本願明細書でいう化粧料の「リッチ感」とは、化粧料の製剤を指又は手で皮膚に塗布する際に、感じる濃厚感ををいう。
【0011】
本発明の構成成分(配合成分)について説明する。
(A)成分:(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー
本発明に用いる(A)成分(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーは、シリル化加水分解シルクとシラン化合物の共重合物で、親水部としてペプチド鎖、親油部としてアルキル基とシリコーン骨格をもつ。(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーは、市販品を用いることができる。また、本発明においては、(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーを含む混合原料を用いても良い。市販品としては、(株)成和化成製Protesil WO、Protesil FN、Protesil FN-2が挙げられる。成分名は全て(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーである。本発明においてはいずれも使用可能である。
(A)成分(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーの配合量は、特に限定されないが、油中水型乳化化粧料における配合量として0.5~3質量%、好ましくは0.5~2質量%、さらに好ましくは1~1.8質量%である。
【0012】
(B)成分:油溶性ゲル化剤
本発明の油中水型乳化化粧料に厚み感を付与するため、乳化系の外相の油剤をゲル化する油溶性ゲル化剤を配合する。「油溶性」とは油性成分に溶解性があることを意味し、油性成分に対して室温にて混合または加熱混合によって均一に溶解できることを指す。
本発明に使用可能な油溶性ゲル化剤としては、市販品であれば、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル(ノムコートSG:日清オイリオ(株)製)、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル(ノムコートHK-G:日清オイリオ(株)製)、デキストリン脂肪酸エステル、特に、パルミチン酸デキストリン(レオパールKL2:千葉製粉(株)製)、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン(レオパールTT2:千葉製粉(株)製)、ミリスチン酸デキストリン(レオパールMKL2:千葉製粉(株)製)、ステアリン酸イヌリン(レオパールISL2:千葉製粉(株)製)、ジブチルラウロイルグルタミド(GP-1:味の素(株)製)、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(EB-21:味の素(株)製)が挙げられる。これらの油溶性ゲル化剤を1種か、又は2種以上を混合して配合することができる。特に好ましくは、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、パルミチン酸デキストリンから選択される1以上である。
本発明に配合する油溶性ゲル化剤配合量として0.1~3質量%、好ましくは0.3~1質量%である。
【0013】
(C)成分:エステル油
本発明に用いるエステル油は、化粧料に使用するエステル油であれば使用可能であるが、(B)成分として配合する油溶性ゲル化剤を溶解できるエステル油であることが望ましい。市販されているエステル油としては、トリエチルヘキサノイン(T.I.O:日清オイリオ(株)製)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(エステモールN-01:日清オイリオ(株)製)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(サラコス 5418V:日清オイリオ(株)製)、ネオペンタン酸イソステアリル(ネオライト180P:高級アルコール工業(株)製)、エチルヘキサン酸セチル(セチオールSN-1:BASFジャパン(株)製)を例示することができる。
本発明の油中水型乳化化粧料に配合するエステル油は、化粧料全量に対し1~30質量%、好ましくは1~20質量%配合すると好ましい。エステル油の配合量は10質量%を超えないことが特に好ましい。1~10質量%が好ましく、1~9.5質量%が最も好ましい。
【0014】
(D)成分:トリメチルグリシン(ベタイン)
トリメチルグリシンは、別名ベタインとも呼ばれるアミノ酸である。皮膚化粧料には保湿成分としてしばしば配合されている。
一般的に、化粧料に配合する保湿成分は、配合することによって当該化粧料にぬるつきやべたつき感を感じさせる。油中水型乳化化粧料に保湿成分を配合した場合も同様であるが、本発明においてはトリメチルグリシンを配合した場合、ぬるつきやべたつきを感じなかった。
すなわち、(A)(加水分解シルク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、(B)油溶性ゲル化剤、(C)エステル油を含有する油中水型乳化化粧料に配合する保湿成分としては、トリメチルグリシンが最適であった。
したがって、トリメチルグリシンを配合することによって本発明の油中水型乳化化粧料にぬるつきやべたつきを感じさせず、好ましい保湿効果を付与することができる。
トリメチルグリシンは、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、アミノコート(商品名、旭化成ファインケム(株)製)などを例示することができる。また、本発明においては、トリメチルグリシンを含む混合原料を用いても良く、その市販品としては、例えば、プロデュウ400(商品名、味の素(株)製)などを例示することができる。
(D)成分としてトリメチルグリシンを配合する場合の配合量として0.1~5質量%、好ましくは0.3~1質量%である。
【0015】
さらに、本発明にあっては、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の任意成分を配合することができる。
このような任意成分としては、高級アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ステロール類、ステロール脂肪酸エステル類、炭化水素類、油脂類、シリコーンオイル、保湿剤、水溶性高分子、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料、色素、酸化チタン・水酸化アルミニウム・酸化鉄・タルク・酸化亜鉛・シリカなどの粉末成分、着色成分等を配合することが可能である。
【0016】
本発明の油中水型乳化化粧料を調製する場合は、水相成分及び油相成分をそれぞれ調製する。これを25℃の室温に冷却した後、水相及び油相をホモミキサーやホモディスパーなどの撹拌混合装置を用いて室温で撹拌混合することで、油中水型の乳化組成物となる。 なお撹拌混合によって発生した気泡は、遠心分離や減圧脱気などの常法で脱気する。
得られた油中水型乳化化粧料は、使用目的に応じた容器に充填し、化粧料とする。
【実施例
【0017】
以下にファンデーション用の油中水型乳化化粧料の実施例、比較例を示し本発明について具体的に説明する。
下記表1に本発明の実施例1~6、表2に比較例1~8の油中水型乳化化粧料の組成を示す。
(1)油中水型乳化化粧料の調製
化粧料の調製方法は次のとおりである。
1)(B)成分の油溶性ゲル化剤と(C)成分の一部または全てのエステル油を60℃以上で加熱し均一に溶解する。これを(a)液とする。
2)別の容器に(B)(C)以外の油性成分と残りのエステル油と粉体成分を室温で均一に混合した後、(a)液中に投入し、混合しこれを(b)液とする。
3)さらに別の容器で水性成分を均一に溶解させた後、(b)液に添加し、ホモミキサーを用いて乳化混合し油中水型乳化化粧料とする。
【0018】
(2)油中水型乳化化粧料の評価
1)粘度の測定
油中水型乳化化粧料について、調製翌日24時間経過後に粘度を測定した。装置はB型粘度計を用い、ローターはNo.4、回転数は12rpm、保持時間30秒、25℃で測定した。本発明においては調整翌日の粘度が16,000mPa・s以上の場合、厚みを感じられる好ましい状態であった。
【0019】
2)安定性
安定性は、離油の発生の有無、1週間保存後の粘度変化の程度、の2項目で評価した。
外観評価(離油の発生の有無)
得られた化粧料をガラス容器に充填し25℃で1週間保管した後、その外観を目視観察し、離油(油成分の分離)の発生状況から安定性を評価した。離油が発生した場合を×、発生していない場合を○と評価した。
【0020】
経時粘度測定
調製翌日と、25℃、50℃に1週間保管した化粧料を25℃に戻したものの粘度を測定した。調製翌日の粘度(以下初期値)からの粘度変化を確認した。測定装置はB型粘度計を用い、No.4ローター、回転数12rpm、保持時間30秒、25℃で測定した。初期値からの粘度変化は計算して求め、以下に示す3段階で評価した。品質上は粘度変化が小さいことが望ましいが、粘度変化が250%を超えると、容器からの吐出時や皮膚への塗布時に明らかな使用感の変化が感じられるので、品質の低下とみなされる。
【0021】
○:初期値と比較して1週間25℃保管品と1週間50℃保管品の粘度変化が共に250%未満である。
△:初期値と比較して1週間25℃保管品の粘度変化が250%未満で、1週間50℃保管品の粘度変化が250%以上である。
×:初期値と比較して1週間25℃保管品の粘度変化が250%以上である。
【0022】
3)官能評価
専門の熟練した官能評価員により、油中水型乳化化粧料の「べたつきのなさ」と「のびの良さ」と「厚み」を以下の基準で評価した。
なお「べたつきのなさ」とは化粧料を皮膚に塗布中および塗布後に塗布部を触って、べたつきがないと感じるか否かの評価である。
「のびの良さ」の評価は、化粧料を皮膚へ塗り広げる際にのびが良いと感じるか否かの評価である。
「厚み」は、化粧料を指又は手で皮膚に塗布する際に、指又は手と皮膚の間に製剤の厚みを感じるか否かで評価した。
評価は次の3段階で決定した。
○:感じる。
△:やや感じる。
×:感じない。
【0023】
(3)結果
測定結果及び評価結果を表1、表2に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
1)(A)成分の乳化剤の比較
(A)成分に代替して架橋型ポリマー系乳化剤である(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーを配合した化粧料(比較例1)、シリコーン系乳化剤であるラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを含む化粧料(比較例2)をそれぞれ調製し評価した。実施例1、比較例1、2の評価結果のとおり、比較例1は使用感が劣り、比較例2は保管品で離油が認められたので安定性が劣ると判断した。また実施例のなかでも実施例1~3は特に使用感、安定性ともに評価が好ましかった。
【0027】
2)(B)成分の油溶性ゲル化剤の比較評価
(B)成分の油溶性ゲル化剤としてトリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル(実施例1)、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル(実施例2)、パルミチン酸デキストリン(実施例3)と、(B)成分の油溶性ゲル化剤を配合しない組成(比較例3)、及び(B)成分の油溶性ゲル化剤に替えて油剤に分散膨潤させて増粘させるタイプ(すなわち本発明の油溶性ゲル化剤ではない)のゲル化剤であるシリル化シリカ(比較例4)、をそれぞれ配合した化粧料について、その評価結果を対比すると、比較例3は翌日に離油が認められ、比較例4は、厚み感はあったが、べたつき感がやや感じられ、のびがよいと評価されず使用性が劣った。
(A)(B)共に含まず、シリコーン系乳化剤であるPEG-10ジメチコンと、油剤に分散膨潤させて増粘させるタイプ(すなわち本発明の油溶性ゲル化剤ではない)のゲル化剤であるジステアルジモニウムヘクトライトの混合物に替えた化粧料(比較例5)を対比すると、安定で厚み感があったが、べたつき感とのびの点で使用性が劣った。
(B)成分の油溶性ゲル化剤は、乳化安定性と使用感に重要であると考えられる。
【0028】
3)(C)成分:エステル油の評価
(C)成分のエステル油に替えて炭化水素油であるスクワラン(比較例6)、同じく炭化水素油であるミネラルオイル(比較例7)、シリコーン油であるシクロペンタシロキサン(比較例8)に替えた化粧料を実施例1と対比すると、比較例7、8は厚みが感じられる粘度が得られなかった。また、比較例6~8のいずれも1週間25℃保管品に250%以上の増粘が認められた。
(C)成分のエステル油の配合は、厚み感と安定性(経時による粘度上昇の抑制)に効果があるものと判断した。
【0029】
4)(C)成分:エステル油の配合量
実施例1は(C)成分の配合量が4.6質量%、実施例4は(C)成分の配合量が10質量%、実施例5は(C)成分の配合量が15質量%である。
実施例4は1週間50℃保管品の粘度が250%以上となり粘度変化が認められたが、使用感は良好だった。一方実施例5は1週間後25℃保管の粘度は250%以下だったものの1週間後50℃保管の粘度が250%以上と粘度変化が認められた。さらに使用感は、「べたつきのなさ」と「のびの良さ」はやや感じられる(△)評価となった。
より好ましい(C)成分のエステル油の配合量は10質量%以下であるものと予想された。
【0030】
5)(D)成分の配合についての評価
実施例1の組成において、(D)成分に替えて、保湿成分であるグリセリルグルコシドを配合した実施例6の油中水型乳化化粧料は、「のびの良さ」は感じられたものの、「べたつきのなさ」がやや感じられる程度だった。
(A)、(B)、(C)を含む油中水型乳化化粧料はべたつきがなくのびの良い使用感であるが、その効果がより発揮される最適の保湿成分は、トリメチルグリシンであるものと考えられた。
【0031】
以上のとおり、実施例、比較例の評価から、厚みの感じられる油中水型乳化化粧料の課題であったべたつきやのびの悪さといった使用感と、経時での粘度変化といった経時安定性の課題が解決できた。
すなわち、本発明の構成をとることで、塗布時に好ましい厚み感と、のびの良さを示し、塗布後のべたつき感のない油中水型乳化化粧料が得られる。そして、本発明の構成をとる油中水型乳化化粧料は、保存時や流通時に離油が発生せず、粘度変化の少ない安定な油中水型乳化化粧料となるため、ファンデーションをはじめとしたベースメイク化粧料や、日焼け止め剤、スキンケアクリームなどに有用である。