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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】内視鏡、および、内視鏡の修理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20240528BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61B1/005
G02B23/24 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020070153
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021166572
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳美
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-166859(JP,A)
【文献】特許第4236305(JP,B2)
【文献】特開2008-55052(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052303(WO,A1)
【文献】特開平4-371129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、
前記第1の樹脂の弾性率が、0.5GPa以上5GPa以下であり、
前記第2の樹脂の弾性率が、0.3MPa以上100MPa以下であることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、
前記第2の樹脂の厚さは、20μm以上500μm以下であることを特徴とする内視鏡。
【請求項3】
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、
前記第1の樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記第2の樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または、アルキド樹脂であることを特徴とする内視鏡。
【請求項4】
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、
前記第1の樹脂が、熱硬化樹脂であり、
前記第2の樹脂が、常温硬化樹脂であることを特徴とする内視鏡。
【請求項5】
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から延設されており、前記第2の樹脂に覆われている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さく、前記第2の樹脂よりも弾性率が大きい、第3の樹脂を更に具備することを特徴とする内視鏡。
【請求項6】
前記挿入部が、先端部と、前記先端部の基端に結合されている湾曲管と、前記湾曲管の基端に結合されている可撓管と、を有し、
前記第1部材が、前記湾曲管であり、
前記第2部材が、前記先端部または前記可撓管であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項7】
内視鏡の修理方法であって、
前記内視鏡の挿入部は、
第1の表皮に覆われている第1部材と、
第2の表皮に覆われている第2部材と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、
前記糸を覆っている第1の樹脂と、
前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を具備しており、
片刃のナイフの刃の平面側を前記第1の表皮に当接しながら、前記第1の表皮と前記第2の樹脂との界面に切り込む工程と、
前記ナイフを用いて、前記第1の表皮から前記第2の樹脂を剥離する工程と、
前記片刃のナイフの刃の平面側を前記第2の表皮に当接しながら、前記第2の表皮と前記第2の樹脂との界面に切り込む工程と、
前記ナイフを用いて、前記第2の表皮から前記第2の樹脂を剥離する工程と、
前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部を屈曲することによって、前記第1の樹脂を前記第1の表皮から剥離する工程と、を有することを特徴とする内視鏡の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材の結合部に糸が巻回された挿入部を具備する内視鏡、および、2つの部材の結合部に糸が巻回された挿入部を具備する内視鏡の修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許5197885号公報には、先端部と湾曲管との結合部に糸を巻回し接着剤を塗布した内視鏡が開示されている。
【0003】
内視鏡を修理するときには、例えば、湾曲管と可撓管との結合部を覆っている接着剤(樹脂)を剥離する必要がある。しかし、接着剤の剥離が容易ではなかったり、接着剤の剥離時に湾曲管または可撓管を損傷したりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5197885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、信頼性が高く修理の容易な内視鏡、および、前記内視鏡の修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の内視鏡は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、前記第1の樹脂の弾性率が、0.5GPa以上5GPa以下であり、前記第2の樹脂の弾性率が、0.3MPa以上100MPa以下である。
別の実施形態の内視鏡は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、前記第2の樹脂の厚さは、20μm以上500μm以下である。
別の実施形態の内視鏡は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、前記第1の樹脂が、エポキシ樹脂であり、前記第2の樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または、アルキド樹脂である
別の実施形態の内視鏡は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、前記第1の樹脂が、熱硬化樹脂であり、前記第2の樹脂が、常温硬化樹脂である
別の実施形態の内視鏡は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を挿入部が具備し、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から延設されており、前記第2の樹脂に覆われている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さく、前記第2の樹脂よりも弾性率が大きい、第3の樹脂を更に具備する
【0007】
実施形態の内視鏡の修理方法であって、前記内視鏡の挿入部は、第1の表皮に覆われている第1部材と、第2の表皮に覆われている第2部材と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部に巻回された糸と、前記糸を覆っている第1の樹脂と、前記第1の樹脂を覆っており、前記第1の樹脂の両端から、それぞれ100μm以上延設されている、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい第2の樹脂と、を具備しており、片刃のナイフの刃の平面側を前記第1の表皮に当接しながら、前記第1の表皮と前記第2の樹脂との界面に切り込む工程と、前記ナイフを用いて、前記第1の表皮から前記第2の樹脂を剥離する工程と、前記片刃のナイフの刃の平面側を前記第2の表皮に当接しながら、前記第2の表皮と前記第2の樹脂との界面に切り込む工程と、前記ナイフを用いて、前記第2の表皮から前記第2の樹脂を剥離する工程と、前記第1の表皮と前記第2の表皮との結合部を屈曲することによって、前記第1の樹脂を前記第1の表皮から剥離する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、信頼性が高く修理の容易な内視鏡、および、前記内視鏡の修理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の内視鏡の構成を示す図である。
図2】実施形態の内視鏡の結合部の外観図である。
図3図2のIII-III線にそった部分断面図である。
図4図2のIV-IV線にそった部分断面図である。
図5】実施形態の内視鏡の分解方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡1は、長手方向に対して直交する断面が円形の挿入部9と、挿入部9の基端に配設された操作部8と、操作部8から延出するユニバーサルコード7と、を含む。挿入部9は、先端部9Aと、先端部9Aの基端に結合されている第1部材である湾曲管9Bと、湾曲管9Bの基端に結合されている第2部材である可撓管9Cと、を含む。内視鏡1の用途は、医療用でも工業用でもよい。
【0011】
なお、以下の説明において、各実施形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、一部の構成要素の図示、符号の付与は省略する場合がある。
【0012】
挿入部9の先端部9Aには、先端硬質部が配置されている。断面が円形の先端硬質部は、例えば、ステンレス鋼からなる略円筒状のハウジングである。先端硬質部には例えば撮像装置が配設されている。先端硬質部の外周は樹脂からなる先端表皮に覆われている。
【0013】
断面が円形の湾曲管9Bは、複数の湾曲駒と、複数の湾曲駒の外周を覆う網管と、網管の外周を被覆する第1の表皮11とを有する。複数の湾曲駒は、回動自在に連接されている。第1の表皮11は、網管を被覆する外皮チューブである。湾曲管9Bは、操作部8の操作に応じて、例えば上下左右方向に湾曲する。
【0014】
断面が円形の細長い可撓管9Cは、螺旋管と、網管と、第2の表皮12とを有する。螺旋管は、金属の帯状の板を螺旋状に巻いくことによって作製される。螺旋管は網管に被覆されている。網管は、高分子材料または金属の素線を管状に編むことによって作製される。第2の表皮12は、網管を被覆する外皮チューブである。
【0015】
第1の表皮11および第2の表皮12は、例えば、フッ素ゴムからなる。第1の表皮11と第2の表皮12とは異なる材料でもよい。
【0016】
図2図4に示すように、湾曲管9Bと可撓管9Cとの結合部、言い替えれば、第1の表皮11と第2の表皮12との結合部に糸20が巻回されている。糸20は第1の樹脂30に覆われており、第1の樹脂30は、第2の樹脂40に覆われている。なお、以下の説明において、可撓管9Cが第1部材であり、湾曲管9Bが第2部材でもよい。また、先端部9Aと湾曲管9Bは、湾曲管9Bと可撓管9Cとの結合と略同じ方法で結合されている。なお、図3においては、第2の表皮12よりも内側の構成は図示していない。
【0017】
糸20は、内視鏡の滅菌に用いる蒸気によって、収縮および塑性変形することがなく、更に破断伸びが10%以内である。糸20は、径D20が200μmの絹糸である。糸20の径D20は、10μm以上500μm以下であることが好ましい。前記範囲以上であれば、湾曲管9Bと可撓管9Cとの水密を十分に保つことができ、前記範囲以下であれば、挿入部9の径が太くなることがない。なお、糸20は、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、および、炭素繊維、または、前記の繊維を束ねたり、編んだりすることによって作製されてもよい。
【0018】
糸20は第1の樹脂30に覆われている。すなわち、第1の樹脂30の厚さT30は、糸20の外径D20超の250μm厚である。第1の樹脂30は、弾性率E30が2GPaのエポキシ樹脂からなる接着剤である。厚さT30が外径D20超であれば、第1の樹脂30は、糸20を完全に覆うことができるために、巻回されている糸20を強固に固定できる。なお、例えば、糸20の断面が正方形の場合、外径D20は、辺の長さに相当する。
【0019】
第1の樹脂30は第2の樹脂40に覆われている。第2の樹脂40は、厚さT40が250μmで、弾性率E40が50MPaのウレタン樹脂からなる。
【0020】
弾性率Eは、粘弾性スペクトロメータ(レオメトリック社製、RSA-II)を用いて測定した貯蔵弾性率である。測定条件は、周波数1Hz、サンプル厚1mm、加重100g、温度25℃である。
【0021】
図2図4に示すように、第1の樹脂30の挿入部9の長手方向にそった長さL30は10mmであり、第2の樹脂40の長さL40は、16mmである。すなわち、第2の樹脂40の両端が、第1の表皮11または第2の表皮12と接している長さDL40は、それぞれ3mmである。言い方を変えれば、第2の樹脂40は第1の樹脂30の全表面を覆っており、さらに、第1の樹脂30の両端から、それぞれ3mm延設されている。
L40=L30+DL40×2
【0022】
上述の構成を有する内視鏡1は、耐衝撃性および屈曲耐久性に優れているため信頼性が高く、かつ、修理が容易である。
【0023】
耐衝撃性の評価は、結合部の第2の樹脂40の上から重さ1kgの鉄球を高さ10cmから繰り返し落とし、第2の樹脂40のクラックの有無を目視で確認した。100回落下してもクラックが生じない場合を「BEST」とした。50回以上100回未満の落下によってクラックが生じた場合を「GOOD」とした。50回未満の落下によってクラックが生じた場合を「BAD」とした。
【0024】
屈曲耐久性の評価は、湾曲管9Bと可撓管9Cの結合部を中心に、90度の角度で繰り返し屈曲させ、第2の樹脂40の端部の剥離の有無を目視で確認した。3万回屈曲しても剥離しない場合を「BEST」とした。1万回以上3万回未満屈曲しても剥離しない場合を「GOOD」とした。1万回以下の未満の屈曲によって剥離した場合を、「BAD」とした。
【0025】
内視鏡1は、耐衝撃性および屈曲耐久性は、いずれも「BEST」であった。
【0026】
<内視鏡の修理方法>
内視鏡1を修理するときには、第1の樹脂30および第2の樹脂40を剥離し、かつ、糸20を切断することによって、湾曲管9Bと可撓管9Cとが分離される。
【0027】
図5に示すように、片刃のナイフ50の刃の平面側を第1の表皮11に当接しながら、第1の表皮11と第2の樹脂40との界面に切り込む工程が行われる。次に、ナイフ50を用いて第1の表皮11と第1の樹脂30との界面まで、第1の表皮11から第2の樹脂40が剥離される。
【0028】
なお、結合部は断面が円形であるため、1回の上記作業では一部の第2の樹脂40しか剥離できない。結合部を少し回転してから第2の樹脂40の剥離作業を行うことを繰り返すことによって、結合部の全周にわたって第2の樹脂40を剥離する。
【0029】
第2の樹脂40は、第1の表皮11からの剥離方法と同じような方法によって、第2の表皮12からも剥離される。第2の樹脂40は、第2の表皮12から剥離された後に、第1の表皮11から剥離されてもよい。
【0030】
ナイフ50の刄の平面側は、凹曲面であることが好ましく、挿入部9の外径と略同じ曲率半径の凹面であることが、より好ましい。
【0031】
第2の樹脂40が第1の表皮11および第2の表皮12から剥離されてから、湾曲管9Bと可撓管9Cとの結合部を、例えば、90度以上の角度で繰り返し屈曲することによって、第1の樹脂30は第1の表皮11および第2の表皮12から剥離される。すなわち、弾性率E30が大きい第1の樹脂30は、ほとんど弾性変形しないために結合部の変形に追従して変形できない。このため、接着力が強くはない第1の樹脂30は、クラックが生じ、結合部からバラバラに剥離する。
【0032】
なお、結合部に補強のための硬性部材、例えば、金属筒からなる口金が配設されていてもよい。すなわち、糸20が、第1の表皮11の一部および第2の表皮12の一部を覆う口金を巻回していてもよい。この場合には、第2の樹脂40に覆われている第1の樹脂30の端部にナイフ50を用いて切り込みを入れてから、屈曲することによって、口金の周囲の表皮が大きく弾性変形するために、ほとんど弾性変形しない第1の樹脂30が表皮から剥離する。
【0033】
第1の樹脂30を覆っている領域の第2の樹脂40は、第1の樹脂30とともに、剥離される。第1の表皮11または第2の表皮12に第2の樹脂40が残存していた場合には、残存樹脂は例えばナイフ50を用いて結合部から剥離される。
【0034】
上記修理方法は、樹脂の剥離が容易で、かつ、表皮を損傷しにくい。
【0035】
ただし、第1の表皮11と第2の樹脂40とが必要以上に強固に接着していると、第1の表皮11の表面に第2の樹脂40の残渣が多くあったり、第1の表皮11が損傷したりする。第1の表皮11に第2の樹脂40が多く残っていると、除去する必要があり作業に時間がかかる。また第1の表皮11が損傷すると、第1の表皮11を交換する必要がある。
【0036】
修理性の評価は、第2の樹脂40を剥離後に、第2の樹脂40の残渣の有無、および、第1の表皮11の損傷を目視にて確認した。第2の樹脂40の残渣が無い場合を「BEST」とした。第2の樹脂40の残渣があるが、第1の表皮11に交換が必要な損傷がない場合を「GOOD」とした。第1の表皮11に交換が必要な損傷がある場合を、「BAD」とした。
【0037】
内視鏡1の修理性は、「BEST」であった。修理のために分離された湾曲管9Bと可撓管9Cとは、損傷がなければ結合し糸20を巻回してから、第1の樹脂30および第2の樹脂がコーティングされ、再使用される。このため、内視鏡1の修理は低コストである。
【0038】
以上の説明のように、内視鏡1は、耐衝撃性および屈曲耐久性に優れているため信頼性が高い。また、内視鏡1の修理方法は、樹脂の剥離が容易で、かつ、表皮を損傷しにくいため、作業性がよい。
【0039】
<第1実施形態の変形例および比較例>
第1実施形態の変形例の内視鏡および比較例の内視鏡は、第1実施形態の内視鏡1と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。また、それぞれの内視鏡において、明記していない構成は、内視鏡1と同じである。例えば、第1の樹脂30の弾性率E30についてだけ明記している内視鏡の第2の樹脂40の弾性率E40等は、内視鏡1と同じである。
【0040】
<単層樹脂>
弾性率が3GPa、厚さ500μm、長さ10mmの単層のエポキシ樹脂によって糸20が覆われている比較例の内視鏡は、修理性は、「BEST」であったが、耐衝撃性および屈曲耐久性は、「BAD」であった。すなわち、弾性率の高い樹脂は、割れやすく、剥がれやすい。
【0041】
弾性率が50MPa、厚さ500μm、長さ10mmの単層のウレタン樹脂によって糸20が覆われている比較例の内視鏡は、耐衝撃性および屈曲耐久性は、「BEST」であったが、修理性は、「BAD」であった。すなわち、弾性率の低い樹脂は、修理時にきれいに剥離することは容易ではない。
【0042】
<積層された2種類の樹脂の弾性率>
第2の樹脂40の弾性率E40が、第1の樹脂30の弾性率E30以上の比較例の内視鏡は、耐衝撃性、屈曲耐久性および修理性は、いずれも、「BAD」であった。
【0043】
<第1の樹脂の弾性率:E30>
第1の樹脂30の弾性率E30が、0.5GPa未満の内視鏡は、第1の樹脂30と第1の表皮11との密着性が高く、第1の樹脂30の剥離が容易ではないおそれがある。また、弾性率E30が、0.5GPa未満だと、糸20の固定が十分ではないため、湾曲管9Bと可撓管9Cの水密が不十分となるおそれがある。弾性率E30は、1GPa以上が好ましく、1.5GPa以上が特に好ましい。一方、弾性率E30が、5GPa超の内視鏡は、第1の樹脂30が脆く割れやすい。
【0044】
<第2の樹脂の弾性率:E40>
第2の樹脂40の弾性率E40が100MPa以下の内視鏡では、耐衝撃性、屈曲耐久性および修理性が、いずれも「GOOD」であった。さらに、弾性率E40が30MPa以下の内視鏡では、耐衝撃性、屈曲耐久性および修理性が、いずれも「BEST」であった。
【0045】
なお、第2の樹脂40の弾性率E40が、0.3MPa未満では、修理時に表皮に損傷が発生するおそれがある。このため、弾性率E40は、1MPa以上が好ましく、2MPa以上であることが特に好ましい。
【0046】
第1の樹脂30は、例えば、エポキシ樹脂であることが好ましい。また、第2の樹脂40は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または、アルキド樹脂であることが好ましい。上述した弾性率を得るために、第1の樹脂30は熱硬化樹脂であり、第2の樹脂40は、例えば二液混合型の常温硬化樹脂であることが好ましい。なお、常温において十分に硬化する樹脂であっても、反応促進のために加熱処理してもよいことは言うまでも無い。ただし、第2の樹脂40の加熱処理温度は第1の樹脂30の硬化処理温度よりも低い。
【0047】
<厚さT30、T40>
すでに説明したように、第1の樹脂30は糸20を完全に覆っているために、その厚さT30は、糸20の外径D20超である。すなわち、厚さT30は、第1の表皮11または第2の表皮12から第1の樹脂30の上面までの距離である。一方、第2の樹脂40の厚さT40が20μm未満の内視鏡は、第2の樹脂40によって衝撃が吸収されないため、第1の樹脂30にクラックが発生するおそれがある。
【0048】
第2の樹脂40の厚さT40が50μm以上の変形例の内視鏡は、耐衝撃性が「GOOD」であった。厚さT40が150μm以上の内視鏡では、耐衝撃性が「BEST」であった。
【0049】
ただし、厚さT40が500μm超の内視鏡では、挿入部9の径が部分的に太くなってしまう。このため、厚さT40は、500μm以下が好ましく、350μm以下が特に好ましい。
【0050】
<長さL30、DL40>
糸20の巻回部(糸巻き部)の長さは、湾曲管9Bと可撓管9Cとの結合部を水密に封止するために、2mm以上が好ましく、5mm以上が特に好ましい。糸20を覆っている第1の樹脂30の長さL30は糸巻き部の長さよりも長い。なお、長さL30は製造および修理の作業性を考慮すると、20mm以下が好ましく、15mm以下が特に好ましい。
【0051】
すでに説明したように、第2の樹脂40の長さL40は、第1の樹脂30の長さL30と、第2の樹脂40の両端が、第1の表皮11または第2の表皮12と接している長さDL40との加算値である。
【0052】
長さDL40が、100μm未満の比較例の内視鏡では、屈曲耐久性が「BAD」であった。すなわち、硬い第1の樹脂30は、軟らかい第1の表皮11との接着強度が十分ではないため、長さDL40が短いと端部が剥がれやすい。
【0053】
長さDL40が、300μm以上の内視鏡は、屈曲耐久性が「GOOD」であった。すなわち、第1の樹脂30の剥離の起点となる端部が、軟らかく第1の表皮11との接着強度が高い第2の樹脂40によって、十分に覆われているためである。なお、長さDL40は、500μm以上が好ましく、1mm以上が特に好ましい。
【0054】
一方、長さDL40が長すぎる内視鏡では、修理の際に、第2の樹脂40の残渣が多く発生するおそれがある。このため、長さDL40は、20mm以下が好ましく、10mm以下が特に好ましい。
【0055】
なお、第1の樹脂30が第1の表皮11と接している長さと第2の樹脂40が第2の表皮12と接している長さとは異なっている場合には、両方の長さが上述の範囲であることが好ましいことは言うまでも無い。
【0056】
<粘度>
第2の樹脂40は、塗布するときの粘度η40は、0.01Pa・s以上300Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上200Pa・s以下であることが特に好ましい。粘度η40が前記範囲以上であれば、第2の樹脂40が第1の樹脂30の周囲に広がりすぎたり、第2の樹脂40の厚さが薄くなりすぎたりすることが無い。粘度η40が前記範囲以下であれば、第2の樹脂40を所望範囲に塗布でき、かつ、第2の樹脂40の厚さが厚くなりすぎることがない。塗布された第2の樹脂40は、溶剤の蒸発または硬化処理によって固体となる。
【0057】
すでに説明したように、先端部9Aと湾曲管9Bとの結合部が、上述した湾曲管9Bと可撓管9Cとの結合部と同じ構成であることが好ましいことは言うまでも無い。すなわち、先端部9Aが第1部材または第2部材であり、湾曲管9Bが第2部材または第1部材でもよい。
【0058】
また、糸20が、3層以上の樹脂によって覆われていてもよい。例えば、第1の樹脂30の両端から延設されており、第2の樹脂40に覆われている、第1の樹脂30よりも弾性率が小さく第2の樹脂40よりも弾性率が大きい第3の樹脂を更に具備していてもよい。
【0059】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・内視鏡
7・・・ユニバーサルコード
8・・・操作部
9・・・挿入部
9A・・・先端部
9B・・・湾曲管
9C・・・可撓管
11・・・第1の表皮
12・・・第2の表皮
20・・・糸
30・・・第1の樹脂
40・・・第2の樹脂
50・・・ナイフ
図1
図2
図3
図4
図5