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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】飲食品用抗菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3472 20060101AFI20240528BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A23L3/3472
A23L3/3508
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020067068
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021145660
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】峰 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒瀧 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0251700(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105613709(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103478236(CN,A)
【文献】国際公開第2016/104238(WO,A1)
【文献】特開2001-346559(JP,A)
【文献】特開平10-136955(JP,A)
【文献】特開2013-153670(JP,A)
【文献】特開2005-154323(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0048302(KR,A)
【文献】特開2005-237324(JP,A)
【文献】特表2018-505679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109907106(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/3472
A23L 3/3508
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロエキスおよび酢酸塩からなる飲食品用抗菌剤組成物であって、
該ザクロエキスのポリフェノール量が0.5(w/w)%~85(w/w)%であり、
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)からなる群から選択される少なくとも1種の微生物に対して抗菌性を示す、飲食品用抗菌剤組成物。
【請求項4】
飲食品の日持ちを向上させる方法であって、
該飲食品またはその原材料に対して請求項1からのいずれかに記載の飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項5】
前記飲食品またはその原材料の総重量100重量部に対して、前記飲食品用抗菌剤組成物が0.01重量部~10重量部である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品用抗菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品の製造時や保存中における、腐敗、劣化に関与する微生物の発生やその増殖を抑制するために、種々の抗菌剤が提案されている。抗菌剤の有効成分については、安全性が高く食経験の豊富なものが求められ、例えば、エタノール、グリシン、有機酸およびその塩(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸、乳酸)などが用いられている。
【0003】
例えば、酢酸および酢酸ナトリウムには食品へのカビ抑制効果があることが知られている。しかし、カビ抑制効果をより高いものとするために配合量を増量すると、製剤自体の酸臭が強まり、最終飲食品に強い酸味や酸臭が付与されてしまう。
【0004】
したがって、抗菌剤の有効成分の使用に当たっては、使用する飲食品本来の風味、香り、粘度等に対する影響を与えにくい成分を選択するか、有効成分使用量を可能な限り減らして使用することが行われている。
【0005】
さらに、飲食品の腐敗、劣化に関与する微生物としては、細菌やカビに加え、酵母も挙げられる。よって、このような広範な範囲の微生物に対して抗菌効果を発揮する抗菌剤が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低濃度であっても、広範な範囲の微生物に対して有効な飲食品用抗菌剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ザクロエキスおよび酢酸塩を有効成分として含有する飲食品用抗菌剤組成物を提供し、上記ザクロエキスのポリフェノール量は、0.5(w/w)%~85(w/w)%である。
【0008】
1つの実施形態では、上記酢酸塩1重量部に対して、上記ザクロエキスが0.01重量部~30重量部である。
【0009】
1つの実施形態では、上記酢酸塩は、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムまたはこれらの組み合わせである。
【0010】
1つの実施形態では、上記飲食品用抗菌剤組成物は有機酸またはその塩をさらに含む。
【0011】
本発明は、飲食品の日持ちを向上させる方法を提供し、この方法は、該飲食品またはその原材料に対して上記飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む。
【0012】
1つの実施形態では、上記飲食品またはその原材料の総重量100重量部に対して、上記飲食品用抗菌剤組成物が0.01重量部~10重量部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低濃度であっても、かつ広範な範囲の微生物に対して抗菌効果を発揮することができる。よって、本発明の飲食品用抗菌剤組成物は、飲食品本来の風味、香り、粘度等に有害な影響を及ぼすことなく、飲食品に対して用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中において「抗菌」とは、微生物の増殖または生育を制御する作用効果をいう。本発明の飲食品用抗菌剤組成物(本明細書中において「抗菌剤組成物」ともいう)の抗菌効果が発揮され得る微生物は特に限定されず、本発明の抗菌剤組成物は、細菌類(耐熱菌、大腸菌群など)および真菌類(酵母、カビなど)に対して抗菌性を示し得る。抗菌効果が発揮され得る微生物として、例えば、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などの細菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などの不完全酵母、ウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)などの酵母が挙げられる。
【0015】
ザクロ(セキリュウ、石榴とも呼ばれ、学名Punica granatu mL.、英名Pomegranate)は、ザクロ科の植物であり、原産地の中近東だけでなく亜熱帯地方で広く栽培されている。本明細書における用語「ザクロエキス」は、ザクロ生果(未乾燥果実)または果実乾燥物をそのまま、あるいは破砕または粉砕して、溶媒で抽出して得られる抽出物およびザクロ生果(未乾燥果実)または果実乾燥物を圧搾して得られる果汁を包含して言う。ザクロエキスの調製に使用されるザクロの部位としては、果実全体またはその一部(例えば、果皮、果肉、種皮及び種子)のいずれであってもよい。抽出に用いる溶媒としては、例えば、水またはエタノール、あるいはこれらの混合物である。
【0016】
ザクロエキスは次のようにして製造することができる。ザクロ果実1重量部に対して上記溶媒を例えば1重量部~50重量部、好ましくは5重量部~25重量部にて常温で撹拌しながら、必要に応じて加温して成分を溶出させ、濾過して不溶物を除去して濾液を回収し、液状のザクロエキスを得ることができる。必要に応じて濾液を常圧または減圧濃縮して溶媒を留去してもよい。あるいは、濾液を例えば凍結乾燥することにより、固形状のザクロエキス(粉末)を得ることもできる。本発明においては、液状のザクロエキスまたはザクロエキス粉末、あるいはこれらの混合物であってもよい。必要に応じて本抽出物をシリカゲルおよび逆相カラムクロマトグラフにより精製してもよい。
【0017】
本発明に用いられるザクロエキスは、そのポリフェノール量が例えば、0.5(w/w)%~85(w/w)%、好ましくは5(w/w)%~70(w/w)%である。本明細書におけるザクロエキスの「ポリフェノール量」はフォーリンチオカルト法にて算出された没食子酸換算としてのポリフェノール量をいう。フォーリンチオカルト法では、フェノール性水酸基の還元作用により、試薬の色調を変化させ吸光度で測定する。例えば、液状のザクロエキスの濃縮または凍結乾燥によって、より高いポリフェノール量のザクロエキスを得ることができる。ポリフェノール量が上記範囲内にあることにより、ザクロエキスの抗菌性がより良好に発揮され得る。
【0018】
酢酸塩は、食品添加物として使用可能なものを用いることができる。酢酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウムまたは酢酸カルシウム、あるいはこれらの組み合わせが挙げられるが、飲食品に添加できるものであればこれらに限定されない。
【0019】
ザクロエキスと酢酸塩との配合比は、酢酸塩の種類およびザクロエキスのポリフェノール量を考慮して決定することができる。ザクロエキスと酢酸塩との配合比は、酢酸塩の種類およびザクロエキスのポリフェノール量に依存するが、酢酸塩1重量部に対して、ザクロエキスが、例えば、0.01重量部~30重量部、好ましくは0.05重量部~20重量部である。
【0020】
本発明の抗菌剤組成物は、有機酸またはその塩をさらに含んでもよい。有機酸またはその塩は、飲食品として使用可能なものを用いることができる。有機酸またはその塩としては、酢酸、クエン酸、DL-リンゴ酸、フマル酸、フィチン酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、DL-酒石酸、L-酒石酸などまたはそれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)(但し、酢酸塩を除く)、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。例えば、有機酸塩として、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウムなど、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好ましくは、酢酸、クエン酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、コハク酸またはこれらの2つ以上の組み合わせである。有機酸またはその塩の添加により、抗菌剤組成物の製剤pHを調整することができる。
【0021】
製剤pHは、例えば製剤の10(w/w)%水溶液を作製して測定されたpHである。製剤pHは、例えば、4.5~7であり、好ましくは4.5~6.8である。有機酸またはその塩を製剤pHを上記範囲内とするような量で添加してもよい。製剤pHが上記範囲内にあることにより、抗菌剤組成物の抗菌性をより高めることができる。
【0022】
本発明の抗菌剤組成物は、ザクロエキスと酢酸塩と、有機酸またはその塩(含む場合)とを混合することにより製造することができる。抗菌剤組成物は、固形状(例えば、粉末または顆粒)、液状、ペースト状のいずれの形態の製剤であってもよい。ザクロエキスと酢酸塩と、有機酸またはその塩との混合は、液状で混合もしくは当該混合後に例えばスプレードライによって粉末状とする、一方が液状であり他方が固形状である場合に固形状物を液状のまたは各々粉末状にして混合するなど、混合の様式は問わない。この抗菌剤組成物は、食品添加物として使用することができる。抗菌剤組成物は、ザクロエキスおよび酢酸塩と、有機酸またはその塩(含む場合)とに加えて、例えば、pH調整剤、乳化剤または分散剤、賦形剤、糖類、保存料、日持向上剤、酸味料、調味料、アルコール、甘味料、増粘剤、酸化防止剤、着色料、香料、香辛料、食塩、アミノ酸などの飲食品または食品添加物に許容され得る他の成分を含んでもよい。抗菌剤組成物中の他の成分の含有量は、抗菌剤組成物の抗菌効果に有害な影響を与えない範囲において、当業者によって適宜設定され得る。本発明の抗菌剤組成物は、公知の抗菌性成分をさらに含むものであってもよく、このような抗菌性成分としては、エタノール、グリシン、グリセリン脂肪酸エステル、チアミンラウリル硫酸塩、リゾチーム、ポリリジン、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、有機酸およびその塩(例えば、クエン酸、乳酸、フマル酸一ナトリウム)など、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
上記のように得られた抗菌剤組成物は、飲食品の製造に際して添加され得る。本明細書中で「飲食品」とは、食品および飲料を包含していう。本発明の抗菌剤組成物は、例えば、飲食品の製造に際して、その食品の原材料または食品に添加して用いることができる。このような飲食品としては、特に限定されないが、例えば、惣菜類、カット野菜、野菜サラダ、ボイル後野菜、ボイル後魚介類(例えば、エビ、貝類)、ボイル後肉類、米飯類、麺類・餃子皮・パン等の穀粉(例えば小麦粉)加工品、穀粉、菓子・ケーキ類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子など)、飴類(例えばキャラメル)、冷菓(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、氷菓、ゼリーなど)、グミ、米飯、惣菜、汁物、スープ、めんつゆ(例えばうどんつゆ、そばつゆなど)、ソース、たれ、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ハム・ソーセージ類、畜産加工品、水産練り製品、水産加工品、農産・林産加工食品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、冷蔵食品、冷凍食品、調味料、酒類、清涼飲料(例えば、ジュース、コーヒー、茶、麦芽飲料、発泡飲料)などが挙げられる。食品の「原材料」として、食品の製造に通常用いられる食物(例えば、穀類(米、パン、麺等)、魚、肉、卵、乳製品、豆類、野菜、果物、きのこ等)、調味料(砂糖、塩、酢、醤油、味噌等)などが挙げられる。
【0024】
本発明の抗菌剤組成物は、飲食品の日持ち向上剤として使用することができる。「日持ち向上剤」とは、日持ち向上剤無添加の場合と比較して、微生物の増殖または生育を制御することにより、食品の品質の維持を一定期間(例えば、食品の種類に依存し得るが、例えば、25℃にて数日間、10~15℃保存にて数週間延長することができる。
【0025】
本発明の抗菌剤組成物の飲食品への適用量は、飲食品の原材料の種類、酢酸塩の種類およびザクロエキスのポリフェノール量などによって変動するため、必ずしも限定されない。本発明の抗菌剤組成物は、飲食品全量またはその原材料合計100重量部に対し、例えば、0.01重量部~10重量部、好ましくは0.05重量部~5重量部であるように添加され得る。ザクロエキスのポリフェノール量が多い場合は、ザクロエキスの飲食品への適用量を減らすことができる。
【0026】
飲食品への抗菌剤組成物の適用のために、種々の方法が採用され得る。例えば、抗菌剤組成物が適用時に液状形態(例えば、溶液(例えば、水溶液)または懸濁液)である場合、抗菌剤組成物を含む浴中に飲食品または飲食品の原材料を浸漬する、および/または抗菌剤組成物で飲食品または飲食品の原材料食物を塗布もしくは噴霧する方法が採用され得る。例えば、抗菌剤組成物が適用時に液状、ペースト状もしくは粉末状、これらの混合形態である場合、例えば、飲食品または飲食品の原材料食物に抗菌剤組成物を添加し、必要に応じて混合または練り込みを行う方法が採用され得る。
【0027】
本発明によれば、上記のような抗菌剤組成物を含む飲食品が提供される。本発明によれば、飲食品の日持ちを向上させる方法がさらに提供される。
【0028】
本発明の飲食品の日持ちを向上させる方法は、該飲食品またはその原材料に対して上記の飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む。この適用する工程は上述の通りである。
【0029】
本発明によれば、飲食品に酸味や酸臭などの有害な影響を与えることなく、抗菌性を示す飲食品用抗菌剤組成物を製造することができる。本発明の飲食品用抗菌剤組成物は、広範囲の微生物に対して抗菌性を示し、よって飲食品の日持ち向上効果を一層高めることができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0031】
(調製例1:ザクロ抽出物の調製方法)
ザクロの生果実(カリフォルニア産)をフードプロセッサーで粉砕し、ザクロ粉砕物の全量を1重量部とした場合に対して水10重量部を加えて80℃に加温し、抽出した。この抽出物を室温程度に冷却した後、吸引ろ過にて原材料および不溶性成分を除去してザクロ抽出液(ザクロエキス)を得た。得られたザクロ抽出液をハロゲン水分計に供して固形分含量を測定したところ抽出液中の固形分は5.0%であった。
【0032】
このザクロ抽出液の一部を、噴霧乾燥機に供して粉末化し、ザクロエキス粉末を得た。ザクロエキス粉末のポリフェノール量を測定例1に基づいて測定したところ、ポリフェノール量は68.5(w/w)%であった。
【0033】
残りの液体は適宜濃縮して使用した。ザクロ抽出液(ザクロエキス)のポリフェノール量を測定例1に基づいて測定したところ、ポリフェノール量は3.4(w/w)%であった。このザクロ抽出液(ザクロエキス)を段階的に減圧濃縮し、ポリフェノール量が12.5(w/w)%および30.3(w/w)%のエキスを調製した。
【0034】
(測定例1:ザクロエキスのポリフェノール測定)
ザクロエキスを段階希釈し、固形分として100ppmとなるように調整した。調整した液を試験管に2mLずつ分注し、フォーリンチオカルト試薬5mLを加え、撹拌後5分間静置した。次いで、7.5重量%炭酸ナトリウム水溶液を4mL加え、撹拌後60分間静置した後、765nmの吸光度を測定した。得られた吸光度を、没食子酸で作製した検量線を用いて、ポリフェノール量として算出した。
【0035】
(試験例1:かまぼこにおける抗菌性試験方法)
スケソウダラ陸上2級64.5g、馬鈴薯澱粉1.4g、砂糖3.2g、食塩1.9g、氷水29.0gおよび製剤4.0gを混合し、90℃にて60分間加熱し、かまぼこを作製した。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)(細菌)(100CFU/mL)をかまぼこに接種し、25℃にて24時間、48時間または72時間保存し、菌数を計測した。カンジダ・アルビカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(不完全酵母)(10CFU/mL)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)(酵母)(10CFU/mL)のいずれかをかまぼこに接種し、15℃にて48時間、96時間または120時間保存し、菌数を計測した。
【0036】
(実施例1-1~1-14および比較例1-1~1-4)
以下の表1~3に示す組成にて、各成分を撹拌混合して製剤(抗菌剤組成物)を調製した。ザクロエキス成分としては、ポリフェノール量が3.4(w/w)%、12.5(w/w)%および30.3(w/w)%のいずれかのザクロエキス(抽出液)、あるいはザクロエキス粉末(ポリフェノール量68.5(w/w)%)を用いた。製剤E1-1~E1-7については、酢酸ナトリウム、ザクロエキス成分および水またはデキストリンを撹拌混合し(実施例1-1~1-7)、製剤E1-8~E1-14については、酢酸カルシウム、ザクロエキス成分および水またはデキストリンを撹拌混合した(実施例1-8~1-14)。製剤E1-15~E1-19については、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ザクロエキス成分および水またはデキストリンを撹拌混合した(実施例1-15~1-19)。製剤C1-1については、酢酸ナトリウムおよび水を撹拌混合した(比較例1-1)。製剤C1-2については、酢酸カルシウムおよび水を撹拌混合した(比較例1-2)。製剤C1-3および1-4については、ザクロエキス成分および水を撹拌混合した(比較例1-3および1-4)。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
各製剤を試験例1の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表5~7に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
ザクロエキス成分と酢酸塩とを含む製剤E1-1~E1-19(実施例1-1~1-19)は、酢酸塩またはザクロエキス成分単独の製剤C1-1~C1-4(比較例1-1~1-4)に比べて、バチルス・スブチリス(細菌)(表5)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表6)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表7)のいずれの場合ともかまぼこにおける菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。
【0046】
(実施例2-1~2-5および比較例2-1)
酢酸ナトリウムとザクロエキス粉末とを使用して、以下の表8に示す組成にて製剤を調製した。製剤E2-1~E2-5について、酢酸ナトリウム、ザクロエキス粉末およびデキストリンを撹拌混合した(実施例2-1~2-5)。
【0047】
【表8】
【0048】
各製剤を試験例1の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表9~11に示す。
【0049】
【表9】
【0050】
【表10】
【0051】
【表11】
【0052】
ザクロエキスと酢酸ナトリウムとの配合割合がいずれの場合でも、バチルス・スブチリス(細菌)(表9)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表10)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表11)のいずれの場合ともかまぼこにおける菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。特に、試験した中では、酢酸ナトリウムとザクロエキスとが1:18(重量比)の製剤E2-5の場合に、最も良好な抗菌性が観察された。
【0053】
(実施例3-1~3-12)
酢酸ナトリウムとザクロエキス粉末に加えて、有機酸または有機酸塩をさらに使用して、以下の表12~13に示す組成にて製剤を調製した。製剤E3-1~3-3はクエン酸(実施例3-1~3-3)、製剤E3-4~3-6はフマル酸一ナトリウム(実施例3-4~3-6)、製剤E3-7~3-9はリンゴ酸(実施例3-7~3-9)、製剤E3-10~3-12はコハク酸(実施例3-10~3-12)を用いて製剤を作製した。pHは、製剤10(w/w)%水溶液を作製して測定した。
【0054】
【表12】
【0055】
【表13】
【0056】
各製剤を試験例1の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表14~16に示す。
【0057】
【表14】
【0058】
【表15】
【0059】
【表16】
【0060】
製剤pHについてpH4.5~6.8のいずれでも、バチルス・スブチリス(細菌)(表14)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表15)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表16)のいずれの場合ともかまぼこにおける菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。特に、試験した中では、製剤pHが4.5である製剤において、最も良好な抗菌性が観察された(実施例3-3、3-6、3-9および3-12)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、食品添加物および飲食品の製造分野、ならびに飲食品加工分野において有用である。