(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】蓋付き飲料用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/06 20060101AFI20240528BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20240528BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65D43/06 200
B65D47/06 110
B65D81/38 L
(21)【出願番号】P 2020072478
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593215829
【氏名又は名称】アテナ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【氏名又は名称】加藤 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】奥村 教全
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05820016(US,A)
【文献】特開2007-269396(JP,A)
【文献】特開2003-192045(JP,A)
【文献】特表2007-522045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり上部開口を有する逆円錐台のコップ形状を有し、前記上部開口の縁部近傍の内周壁部に前記上部開口と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記上部開口内周内に入り込む垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周部に
は凸条嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲み口部が形成されている蓋体
とを備え
、
前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着する
ことを特徴とする蓋付き飲料用容器。
【請求項2】
前記飲み口部が前記垂下部近傍に形成されている請求項
1に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項3】
前記容器本体外側に断熱部が形成されている請求項1
又は2に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項4】
前記断熱部が断熱紙スリーブの巻着によって形成されている請求項
3に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項5】
前記断熱紙スリーブがエンボス加工紙である請求項
4に記載の蓋付き飲料用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓋付き飲料用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンビニエンスストア、ファストフード店、コーヒーショップ、屋台、その他の飲料販売店におけるテイクアウト形式の飲料販売では、PET樹脂等の合成樹脂製の使い捨て飲料用容器に適宜の飲料が充填されて提供される。テイクアウト形式の飲料用容器は、購入者が商品を持ち歩くことから、内容物がこぼれないようにするために、容器本体の上部開口にPET樹脂等の合成樹脂製の蓋体が着脱可能に嵌着される。
【0003】
近年、海洋プラスチックごみ等のプラスチック廃棄物の問題が注目されており、環境負荷低減の観点から合成樹脂製品の製造や使用を控える傾向にある。そこで、飲料用容器の分野において、飲料が充填される容器本体を紙で構成することが注目されている。この種の飲料用容器では、容器本体が上部開口に外巻状縁部を有し、合成樹脂製の蓋体の外周縁部から下方に延設した周壁部を容器本体の外巻状縁部に外側から被着させて、蓋体の周壁部を容器本体の外巻状縁部の下側に係止させる外嵌合によって閉蓋される。
【0004】
蓋付き飲料用容器では、紙製の容器本体と樹脂製の蓋体との嵌合部分には隙間が生じやすく、持ち運びや喫飲する際に容器が傾けられると、嵌合部分の隙間から液体である内容物が漏出することがある。特に、喫飲時に嵌合部分の隙間から内容物が漏出した場合、喫飲中の使用者は漏出に気付かない可能性が高く、不意の漏出に服等を汚してしまうおそれがある。そこで、蓋体の外周縁部における嵌合部を容器本体の外巻状縁部に対応する湾曲形状に形成した蓋付き飲料用容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図6に示す従来の飲料用容器100では、蓋体140の嵌合部が容器本体120の外巻状縁部120の形状に対応した湾曲形状の外周縁部142であることにより、容器本体120の外巻状縁部122と蓋体140の嵌合部(外周縁部142)との接触部分が多くなって密着性が高められ、内容物の漏出が抑制される。なお、
図6において、符号130は容器本体120に巻着されるスリーブ、141は蓋体140の蓋面部、142eは外周縁部142の端部である。
【0006】
ところで、紙製の容器本体は、扇状又は帯状の板紙を筒状に形成してなるため、合成樹脂のように精密な成形が困難である。また、板紙を筒状に形成する際、板紙は両端部が重ねられて接着されるため、板紙の接着部分にはわずかに段差が形成される。そして、容器本体と蓋体との嵌合部分の形状を対応させた嵌合の場合は、成形精度が嵌合部分の密着性能に影響する。そのため、精密な成形が困難な紙製容器本体に蓋体を嵌合させた場合に、容器本体と蓋体との密着性が不十分な飲料用容器が発生しやすくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、容器本体に対する蓋体の閉蓋に際して、容器本体の成形精度の影響を抑制して容器本体と蓋体との密着性を高めることができる蓋付き飲料用容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり上部開口を有する逆円錐台のコップ形状を有し、前記上部開口の縁部近傍の内周壁部に前記上部開口と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された容器本体と、前記容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記上部開口内周内に入り込む垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周部には凸条嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲み口部が形成されている蓋体とを備え、前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着することを特徴とする蓋付き飲料用容器に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記飲み口部が前記垂下部近傍に形成されている請求項1に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0011】
請求項3の発明は、前記容器本体外側に断熱部が形成されている請求項1又は2に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0012】
請求項4の発明は、前記断熱部が断熱紙スリーブの巻着によって形成されている請求項3に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記断熱紙スリーブがエンボス加工紙である請求項4に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり上部開口を有する逆円錐台のコップ形状を有し、前記上部開口の縁部近傍の内周壁部に前記上部開口と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された容器本体と、前記容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記上部開口内周内に入り込む垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周部には凸条嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲み口部が形成されている蓋体とを備え、前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着するため、環境負荷低減に貢献できて、容器本体の成形精度の影響を抑制して容器本体と蓋体との密着性が高められて内嵌合のみで蓋体を適切に閉蓋することができ、内容物の漏出を効果的に抑制することができる。
【0015】
請求項2の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項1の発明において、前記飲み口部が前記垂下部近傍に形成されているため、利用者が喫飲しやすくなる。
【0016】
請求項3の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項1又は2の発明において、前記容器本体外側に断熱部が形成されているため、際の熱の影響を緩和することができて容易に把持することができる。
【0017】
請求項4の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項3の発明において、前記断熱部が断熱紙スリーブの巻着によって形成されているため、安価かつ容易に製造することができて使い捨て容器での使用に好適である。
【0018】
請求項5の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項4の発明において、前記断熱紙スリーブがエンボス加工紙であるため、断熱効果とともに強度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係る蓋付き飲料用容器の概略断面図である。
【
図2】蓋付き飲料用容器の開蓋時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
【
図4】蓋付き飲料用容器の閉蓋時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
【
図5】蓋付き飲料用容器への蓋体圧入時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
【
図6】従来の飲料用容器の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す本発明の一実施例に係る蓋付き飲料用容器10は、各種の飲料を充填するための容器であって、容器本体20と蓋体40とを備え、販売に際して容器本体20に飲料が充填され蓋体40が被せられて、顧客に提供される。飲料用容器10に充填される飲料の種類は特段制約されない。例えば、水、ジュースや炭酸飲料等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶、各種のお茶、乳飲料、ココア、アルコール飲料、カクテル、その他地域ごとの特産の飲料等のコールド飲料又はホット飲料である。
【0021】
この飲料用容器10は、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、デパート、飲食店、屋台等における飲料の販売時、さらにはビュッフェ形式等の提供、ケータリング、仕出し、宅配サービス等に用いられる。主に想定される用途は、ワンウェイ(one-way)やディスポーザブル(disposable)等と称される1回のみの使用に用いられる使い切り容器(使い捨て容器)である。使い切り容器とすることにより、飲料の衛生管理に都合よい。
【0022】
容器本体20は、上部開口を有する逆円錐台のコップ形状の容器であり、各種の飲料が充填される。この容器本体20は、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなる。紙製の材料は、環境負荷低減の観点から好ましく、耐熱性にも優れているため、飲料用容器の材料として好適に使用することができる。また、容器本体20では、耐水性、耐熱性、耐油性等を付与するために、容器内部又は内外両方にポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂フィルムを積層させてもよい。積層される樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、15~40μm程度である。実施例では、厚さ33μmの耐熱PET樹脂フィルムが積層される。
【0023】
この容器本体20は、
図1に示すように、上部開口21に外巻状縁部22を備え、上部開口21から容器底部23へ逆テーパ状に容器胴部24が連設されて略逆円錐台形状をなしている。容器本体20は、公知の紙製容器の製造方法により製造される。例えば、扇状又は帯状の胴板紙24sが筒状に形成されて容器胴部24として構成され、胴板紙24sの上部が外側に巻き付けられて外巻状縁部22を有する上部開口21が形成されるとともに、胴板紙24sの下部の折曲部29に円形の底板紙23sの折曲部28と合着結合した容器底部23を形成して、容器本体20が得られる。この容器本体20は、例えば、上部開口21と容器底部23とを略同径とすることにより容器胴部24が略垂直となる円筒形状に形成されるほか、実施例のように上部開口21を容器底部23より大径とすることにより容器胴部24がテーパ状となる逆円錐台形状に形成される。逆円錐台形状の容器本体20は、積み重ね収容に便利である。
【0024】
容器本体20には、図示のように、上部開口21の外巻状縁部22近傍の容器胴部24の内周壁部24aに、上部開口21の外巻状縁部22と平行に周回する凹溝状嵌合部50が形成される。凹溝状嵌合部50は、後述の蓋体40を内嵌合可能とする部位である。凹溝状嵌合部50は、容器本体20の成形後に公知の溝付用装置や治具等の適宜の押圧装置等を用いて、容器本体20内部側から容器胴部24の所定位置を押圧して形成されるので、図示のように、容器胴部24の一部を内側から外側に向かって押し出した形状となる。そのため、容器胴部24の外周壁部24bの凹溝状嵌合部50に対応する位置には、外周凸条部25が全周にわたって形成される。
【0025】
容器本体20では、外側に断熱部30を形成することが好ましい。断熱部30は、利用者が容器本体20を把持した際に容器本体20内の飲料の温度が利用者の手に伝わりにくくするための部位である。例えば、内容物がホット飲料の場合は熱くて容器が持ちにくくなることがあるが、断熱部30により熱の伝導が緩和されて容易に把持することが可能となる。また、内容物が氷入り飲料等のコールド飲料の場合は、容器胴部24に結露が生じることがあるが、断熱部30により結露を抑制することができ、利用者は結露の水滴により手を濡らすことなく容器を把持することが可能となる。
【0026】
断熱部30としては、容器本体20の容器胴部24のエンボス加工、容器本体20外周面への断熱インク等による凹凸加工、スリーブの巻着等の公知の容器断熱構造を形成することができる。例えば、断熱部30は、断熱紙スリーブ31の巻着によって形成することが、使い捨て容器での使用に好適である。断熱紙スリーブ31は安価かつ容易に製造することができ、特に断熱紙スリーブ31をエンボス加工紙とすれば、断熱効果とともに強度も向上させることができる。また、断熱紙スリーブ31は、容器本体20の外側に直に接着させてもよいが、
図1,2に示すように、上部側を容器胴部24の外周凸条部25に接着させることにより、容器本体20との間に空気層35を形成することができ、断熱効果を向上させることができる。
【0027】
蓋体40は、容器本体20の上部開口21を被覆する部材であって、
図1に示すように、蓋面部41と、蓋鍔部42と、垂下部43とを有する。蓋体40は合成樹脂製が蓋体の形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるので好ましく、例えば合成樹脂シートの成形品は量産性、経済性等の点からも好ましい。蓋体40を構成する合成樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂のシート、さらにはポリ乳酸等の生分解性樹脂の熱可塑性樹脂のシート等が挙げられる。前記の合成樹脂シートは真空成形により図示をはじめとする各種形状に成形される。
【0028】
蓋面部41は、容器本体20の上部開口21を覆うとともに飲み口部45が形成されている。飲み口部45は、利用者が飲料を喫飲可能とする開口部であり、喫飲しやすさの観点から蓋面部41の外縁側である垂下部43近傍に形成されることが好ましい。また、飲み口部45は、内容物の漏出を抑制するために、使用前に閉鎖状態で使用時(喫飲時)に開放状態となる構造からなる。例えば、蓋面部41の一部を引き上げて開口させるプルタブやステイオンタブ等のプルトップ式、蓋面部41の一部を内部側へ押し込んで開口させるプッシュダウン式、ストロー等の吸引部材の差し込みにより開口させる差込口等、内容物の種類等に応じて適宜の構造とすることができる。
図1,3に示す飲み口部45は、蓋面部41に突設された指掛部46と、指掛部46の周囲に形成された破断部47とを有し、指掛部46の引き上げにより破断部47が破断されて開口するプルトップ式の飲み口である。なお、図中の符号48は引き上げ後の指掛部46を保持する保持凹部である。
【0029】
蓋鍔部42は、
図1,3に示すように、容器本体20の上部開口21の縁部に全周にわたって当接される部位であり、閉蓋時に蓋体40が過剰に容器本体20内へ入り込んだり落ち込んだりすることを抑制する。蓋鍔部42の形状は、容器本体20の上部開口21の縁部に当接可能であれば特に限定されない。例えば、上部開口21に外巻状縁部22が形成されて縁部上側が湾曲していることから、
図2,4に示すように、外巻状縁部22に対応する湾曲形状の蓋鍔部42aとすることが好ましい。湾曲形状の蓋鍔部42aにより、蓋体40の閉蓋時の節度感が向上する。なお、蓋鍔部42には、必要に応じてローレット加工を施してもよい。
【0030】
垂下部43は、
図2,4に示すように、蓋面部41と蓋鍔部42との間に介在された部位であり、蓋鍔部42から容器本体20の上部開口21内周内に入り込むように周設されている。この垂下部43は、閉蓋時に上部開口21近傍の内周壁部24aに近接又は当接される。垂下部43の形状は、蓋面部41に対して垂直方向や、容器本体20の内周壁部24aに沿って傾斜させる等、適宜である。なお、図示の例では、垂下部43の下端において蓋面部41と連設されているが、垂下部43の下端から蓋面部41をかさ上げして形成する等、適宜である。
【0031】
垂下部43には、外周部43aに閉蓋時に容器本体20の凹溝状嵌合部50に嵌着する凸条嵌着部55が形成されている。凸条嵌着部55は、閉蓋時に容器本体20の凹溝状嵌合部50と嵌着することにより、蓋体40の内嵌合を保持可能とする部位である。
【0032】
従来、紙製の容器本体に内嵌合のみで蓋体を閉蓋させることは困難であった。これは、容器本体が紙製の場合には、通常の制作によれば上部開口近傍の内周壁部は略平坦な面部にならざるを得ず、この平坦な内周面に対して蓋体を内嵌合させることが構造上困難であったからである。つまり、紙製の容器本体に内嵌合のみで蓋体を閉蓋させるには蓋体の垂下部を容器本体の略平坦な内周壁部へ圧接させた状態で保持する必要があるのであるが、しかしながら、内周壁部が平坦な面部であると、圧接部が滑りやすくわずかな振動や衝撃等によって圧接状態が容易に解除されて蓋体が外れてしまう。また、紙製の容器本体の製造に際しては、合成樹脂のような精密な成形ができず、また、紙特有の変形性を有することから、合成樹脂のような蓋体の内嵌合を保持することができない。そのため、あえて蓋体の垂下部を容器本体内へ入り込ませる内嵌合によって閉蓋する場合には、粘着テープ等の他の補助的な固定手段を用いて容器本体と蓋体とを固定する等、内嵌合以外の特別な構成を付加する必要があった。
【0033】
そこで、本発明の飲料用容器10では、容器本体20の内周壁部24aに凹溝状嵌合部50を形成し、かつ、蓋体40の垂下部43外周部43aに凸条嵌着部55を形成することにより、従来の紙製容器で不可能であった内嵌合のみでの閉蓋を可能としたものである。ここで、凹溝状嵌合部50と、凸条嵌着部55の好ましい条件について、以下に詳述する。
【0034】
まず、凹溝状嵌合部50は、容器本体20に充填される飲料の液面位置より上側となる上部開口21近傍に形成されるのであれば位置は特に限定されないが、例えば、上部開口21から凹溝状嵌合部50上部の距離が3~10mm程度となる位置に形成される。凹溝状嵌合部50が上部開口21に近すぎると、蓋体40が適切に内嵌合できないおそれがあり、上部開口21から遠すぎると蓋体40が必要以上に容器本体20内に入り込む問題がある。
【0035】
また、蓋体40の垂下部43に設けられる凸条嵌着部55は、凹溝状嵌合部50の位置に応じて適宜に設定される。ここで、蓋体40を合成樹脂シート成形品よりなるものとすると、蓋体40の形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるほか、この発明の内嵌合構造とした場合には、精密な成形が困難な紙製の容器本体20に対しても、合成樹脂シート製の蓋体40の凸条嵌着部55の変形を容器本体20の凹溝状嵌合部50における部分変形性と容器本体20の全体剛性によって効果的な密着性を確保することができる。
【0036】
すなわち、前記したように、容器本体20は樹脂繊維の組織により部分的な変形が可能である一方、面全体として比較的剛性があり変形量が少ないという特性があり、他方の合成樹脂シート製蓋体40は部分的な変形よりも全体の変形が容易に生ずる、いわば柔軟性を有するという特性がある。これらの両者の特性の相違は、前述した従来の外嵌合の場合には、蓋体が容器本体から離間して嵌合が緩くなるという欠陥を生ずるのであるが、本発明の内嵌合にあっては、反対に、蓋体の凸条嵌着部55の変形を容器本体20の凹溝状嵌合部50における部分変形性と容器本体の全体剛性によって確りと受容して効果的な密着性を確保できるという利点となるのである。また、紙製の容器本体を筒状に形成する際には板紙の両端部を重ねた接着部分にわずかな段差が生じるが、このわずかな段差が容器本体の成形精度に影響することから、従来の外嵌合では密着性が不十分となりやすい箇所となる。本発明の内嵌合では、容器本体の成形精度の影響を緩和することができるため、わずかな段差を有する容器本体の接着部分においても、十分な密着性が得られる。したがって、喫飲等により容器を傾けた場合でも蓋体が容易に外れることがなく、通常の使用において適切に蓋体の閉蓋状態を保持することができる。
【0037】
容器本体20及び蓋体40では、
図1,2に示すように、蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1が、容器本体20の凹溝状嵌合部50位置の直径D2より大きく(D1>D2)構成される。蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1は、凸条嵌着部55の頂点(最も突出した位置)間の距離に相当する。また、容器本体20の凹溝状嵌合部50位置の直径D2は、凹溝状嵌合部50の上側の内周壁部24c(凹溝状嵌合部50と内周壁部24aとの境界部分)間の距離に相当する。
【0038】
蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1が容器本体20の凹溝状嵌合部50位置の直径D2より大きいことにより、凸条嵌着部55を凹溝状嵌合部50に対して適切に嵌着させることができる。また、凸条嵌着部55の頂点が凹溝状嵌合部50の頂点(最もくぼんだ位置)に当接(圧接)されると、凸条嵌着部55と凹溝状嵌合部50とにおいて良好な密着性が得られて、嵌着状態をより適切に保持することができる。蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1が容器本体20の凹溝状嵌合部50位置の直径D2以下である場合、凸条嵌着部55が凹溝状嵌合部50に対して嵌着できない問題が生じる。なお、蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1の上限は、容器本体20内へ圧入可能かつ凹溝状嵌合部50へ嵌着可能な程度の適宜の距離である。
【0039】
また、容器本体20及び蓋体40では、
図2に示すように、蓋体40の凸条嵌着部55の突出長さL1が、容器本体20の凹溝状嵌合部50の深さL2以上に構成される。蓋体40の凸条嵌着部55の突出長さL1は、垂下部43の外周部43aから凸条嵌着部55の頂点間の距離に相当する。また、容器本体20の凹溝状嵌合部50の深さL2は、凹溝状嵌合部50の上側の内周壁部24cから凹溝状嵌合部50の頂点間の距離に相当する。
【0040】
蓋体40の凸条嵌着部55の突出長さL1が容器本体20の凹溝状嵌合部50の深さL2以上であることにより、凸条嵌着部55と凹溝状嵌合部50との嵌着時に凹溝状嵌合部50に対して凸条嵌着部55をより確実に圧接させることができ、凸条嵌着部55と凹溝状嵌合部50との密着性がより向上される。蓋体40の凸条嵌着部55の突出長さL1が容器本体20の凹溝状嵌合部50の深さL2未満である場合、凸条嵌着部55と凹溝状嵌合部50とにおいて十分な密着性が得られないおそれがある。特に、蓋体40の凸条嵌着部55位置の直径D1が小さすぎると、容器本体20の凹溝状嵌合部50との嵌着が解除され外れやすくなるおそれがある。
【0041】
凹溝状嵌合部50の幅や深さ及び凸条嵌着部55の幅や突出長さは、凸条嵌着部55の幅は凹溝状嵌合部50の幅以下、かつ凸条嵌着部55の突出長さは凹溝状嵌合部50の深さ以上を満たして両者が適切に嵌着可能であれば特に限定されない。例えば、凹溝状嵌合部50の幅は1.5~5mm程度、深さは0.2~1.0mm程度であり、凸条嵌着部55の幅は1~4mm程度、突出長さは0.2~1.0mm程度である。凹溝状嵌合部50の幅や深さ、凸条嵌着部55の幅や突出長さが適切でないと、嵌着が解除されやすくなったり、十分な密着性が得られなくなったりするおそれがある。
【0042】
当該飲料用容器10にあっては、容器本体20の上部開口21内へ蓋体40の垂下部43を入り込ませて閉蓋する場合において、
図5に示すように、容器本体20の上部開口21から凹溝状嵌合部50間の内周壁部24aの少なくとも下部側が蓋体40の凸条嵌着部55より内側に位置する。そして、閉蓋に際して、蓋体40は凸条嵌着部55が容器本体20の内周壁部24aに対して圧入され、
図4に示すように、凸条嵌着部55が凹溝状嵌合部50に到達することによって嵌着される。
【0043】
このように、本発明の飲料用容器10では、容器本体20の内周壁部24aに凹溝状嵌合部50を形成するとともに、蓋体40の垂下部43の外周部43aに凸条嵌着部55を形成し、閉蓋時に凹溝状嵌合部50に対して凸条嵌着部55を嵌着させることによって、容器本体20に対して蓋体40を内嵌合状態で保持することができる。そのため、従来の外嵌合と比較して紙製の容器本体20の成形性の誤差に対応しやすく、閉蓋時の成形精度の影響を抑制することが可能となる。したがって、容器本体20と蓋体40との嵌合部分の密着性が向上し、内容物の漏出を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、利用者がこの種の飲料用容器で喫飲する場合、容器の外縁部付近に口をつけて、容器が傾けられる。
図6に示す従来の外嵌合の飲料用容器の場合では、蓋体140の外周縁部142が容器本体120の外巻状縁部122の外側に被着されるため、蓋体140の外周縁部142の端部142eが容器本体120の外巻状縁部122よりも下方に延設された構造となる。この時、利用者は蓋体140の外周縁部142の上側に口をつけて容器を傾けるが、この喫飲時に内容物の漏出が発生したとすると、内容物は蓋体140の外周縁部142の端部142e側から漏出する。そのため、漏出した内容物は、容器から下方にこぼれて、利用者にかかってしまうおそれがある。
【0045】
これに対し本願発明の飲料用容器10は、
図2に示すように蓋体40が内嵌合であるため、蓋体40の蓋鍔部42の端部42eは容器本体20の上部開口21近傍に位置しかつ外巻状縁部22から側方に延設された構造となっている。そして喫飲時には、利用者は蓋体40の蓋鍔部42付近に端部42eを含めて口をつける。そのため、容器を傾けた際に内容物の漏出が発生したとしても、漏出した内容物は口から外れることがなく、容器からこぼれるおそれがない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上の通り、本発明の蓋付き飲料用容器は、容器本体の成形精度の影響を抑制して容器本体と蓋体との密着性が高められるため、内嵌合のみで蓋体を適切に閉蓋することができる。したがって、従来の飲料用容器の代替として有望である。
【符号の説明】
【0047】
10 蓋付き飲料用容器
20 容器本体
21 上部開口部
22 外巻状縁部
23 容器底部
23s 底板紙
24 容器胴部
24a 内周壁部
24b 外周壁部
24s 胴板紙
25 外周凸条部
28 底板紙の折曲部
29 胴板紙の折曲部
30 断熱部
35 空気層
40 蓋体
41 蓋面部
42,42a 蓋鍔部
42e 蓋鍔部の端部
43 垂下部
43a 垂下部の外周部
45 飲み口部
46 指掛部
47 破断部
48 保持凹部
50 凹溝状嵌合部
55 凸条嵌着部
D1 凸条嵌着部位置における直径
D2 凹溝状嵌合部位置における直径
L1 凸条嵌着部の突出長さ
L2 凹溝状嵌合部の深さ