(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】測量システム、丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
E02D17/20
(21)【出願番号】P 2020127162
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】一里山 海洋
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 基広
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭佑
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-030789(JP,A)
【文献】特開2000-074664(JP,A)
【文献】特開2004-037385(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0106727(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量装置と、
被測量装置と、端末装置を備えた杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する測量システムであって、
設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得部と、
前記測量装置による測量
結果または前記測量結果に基づいて算出した前記被測量装置の位置を前記端末装置に送信する測量情報取得部と、
前記端末装置が
前記測量装置より前記測量結果を受信し前記測量結果に基づいて算出した前記被測量装置の位置、または前記測量装置より受信した前記被測量装置の位置に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定部と、
前記現況地面の推定標高と前記設計法面を含む設計情報とを用いて
、横断面における、前記現況地面
の仮想の地面線と前記設計法面
または前記設計法面の延長線との交点の座標を算出する交点算出部と、
前記横断面における前記設計法面の傾斜方向と、前記被測量装置の位置と
、前記交点の座標
に対する前記被測量装置の位置の水平方向における位置関係を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定部と、
前記丁張形状決定部が決定した丁張の形状について前記端末装置により伝達する丁張形状伝達部、を備える測量システム。
【請求項2】
前記丁張形状伝達部は、前記丁張の形状に対応する画像を前記端末装置に表示する、請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記丁張形状伝達部は、前記丁張の形状を前記端末装置の音声出力部より出力する、請求項1に記載の測量システム。
【請求項4】
前記丁張形状伝達部は、前記丁張の形状に対応する前記丁張装置を構成する杭、横貫、法貫の設置順序について前記端末装置により伝達する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の測量システム。
【請求項5】
測量装置と、
被測量装置と、端末装置を備えた測量システムを用いて、杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する丁張設置支援方法であって、
設計情報取得部が設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得工程と、
前記測量装置が測量する測量工程と、
前記測量装置が前記測量工程における測量
結果または
前記測量結果に基づいて算出された前記被測量装置の位置を前記端末装置に送信する測量情報取得工程と、
現況推定部が前記測量情報取得工程において
、前記測量装置より前記測量結果を受信し前記測量結果に基づいて算出された前記被測量装置の位置、または前記測量装置より受信した前記
被測量装置の位置に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定工程と、
交点算出部が前記現況地面の推定標高と前記設計法面を含む設計情報とを用いて
、横断面における、前記現況地面
の仮想の地面線と前記設計法面
または前記設計法面の延長線との交点の座標を算出する交点算出工程と、
丁張形状決定部が
前記横断面における前記設計法面の傾斜方向と、前記被測量装置の位置と
、前記交点の座標
に対する前記被測量装置の位置の水平方向における位置関係を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定工程と、
丁張形状伝達部が、前記丁張形状決定工程において決定された丁張の形状について前記端末装置により伝達する丁張形状伝達工程と、
を含む丁張設置支援方法。
【請求項6】
測量装置と、
被測量装置と、端末装置を備えた測量システムを用いて、杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する丁張設置支援プログラムであって、
設計情報取得部が設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得ステップと、
前記測量装置に測量させる測量ステップと、
前記測量装置が前記測量ステップにおける測量
結果または
前記測量結果に基づいて算出された前記被測量装置の位置を前記端末装置に送信させる測量情報取得ステップと、
現況推定部が前記測量情報取得ステップにおいて
、前記測量装置より前記測量結果を受信し前記測量結果に基づいて算出された前記被測量装置の位置、または前記測量装置より受信した前記
被測量装置の位置に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定ステップと、
交点算出部が前記現況地面の推定標高と前記設計法面を含む設計情報とを用いて
、横断面における、前記現況地面
の仮想の地面線と前記設計法面
または前記設計法面の延長線との交点の座標を算出する交点算出ステップと、
丁張形状決定部が
前記横断面における前記設計法面の傾斜方向と、前記被測量装置の位置と
、前記交点の座標
に対する前記被測量装置の位置の水平方向における位置関係を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定ステップと、
丁張形状伝達部が、前記丁張形状決定ステップにおいて決定された丁張の形状について前記端末装置により伝達させる丁張形状伝達ステップと、
を実行させる丁張設置支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測量システム、丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事では、切土や盛土によって仕上がる法面(以下、計画法面という。)の傾斜を示すために、切土を始める位置(切土肩)や盛土を始める位置(盛土尻)に法型丁張装置が設置される。
【0003】
法型丁張装置は、例えば特許文献1に示されるように、地面に2本の杭を立設させ、当該杭に水平方向に延びる横貫を架設して、当該横貫に設計法面に沿って延びる法貫が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、法型丁張装置は設置する位置や、法面との位置関係により、設置すべき法貫の位置や向きが異なる。熟練の作業者ともなれば、これらを容易に判断できるが、近年は建築業界における人手不足や高齢化により、熟練の作業者が不足している。そのため、未経験者や若手でも容易に現場作業をこなすことができる測量システムが求められている。
【0006】
以上により、本発明の目的は、法型丁張装置を設置する位置や、法面との位置関係が様々である現場においても、容易に設置すべき法丁張の法貫の位置や向きを判断できる、測量システム、丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量システムは、測量装置と、端末装置を備えた杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する測量システムであって、設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得部と、測量装置による測量情報を端末装置に送信する測量情報取得部と、端末装置が受信した測量情報に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定部と、現況地面の推定標高と設計法面を含む設計情報とを用いて現況地面と設計法面の交点の座標を算出する交点算出部と、測量情報と交点の座標を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定部と、丁張形状決定部が決定した丁張の形状について端末装置により伝達する丁張形状伝達部、を備える。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、本開示に係る丁張設置方法は、測量装置と、端末装置を備えた測量システムを用いて、杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する丁張設置支援方法であって、設計情報取得部が設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得工程と、測量装置が測量する測量工程と、測量装置が測量工程における測量情報を端末装置に送信する測量情報取得工程と、現況推定部が測量情報取得工程において受信した測量情報に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定工程と、交点算出部が現況地面の推定標高と設計法面を含む設計情報とを用いて現況地面と設計法面の交点の座標を算出する交点算出工程と、丁張形状決定部が測量情報と交点の座標を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定工程と、丁張形状伝達部が、丁張形状決定工程において決定された丁張の形状について端末装置により伝達する丁張形状伝達工程と、を含む。
【0009】
また、上記した目的を達成するために、本開示に係る丁張設置プログラムは、測量装置と、端末装置を備えた測量システムを用いて、杭、横貫、法貫を有する丁張装置の設置を支援する丁張設置支援プログラムであって、設計情報取得部が設計法面を含む設計情報を取得する設計情報取得ステップと、測量装置に測量させる測量ステップと、測量装置が測量ステップにおける測量情報を端末装置に送信させる測量情報取得ステップと、現況推定部が測量情報取得ステップにおいて受信した測量情報に応じて現況地面の推定標高を算出する現況推定ステップと、交点算出部が現況地面の推定標高と設計法面を含む設計情報とを用いて現況地面と設計法面の交点の座標を算出する交点算出ステップと、丁張形状決定部が測量情報と交点の座標を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定ステップと、丁張形状伝達部が、丁張形状決定ステップにおいて決定された丁張の形状について端末装置により伝達させる丁張形状伝達ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者による測量情報と設計情報とを用いて、法型丁張装置を設置する位置や、法面との位置関係が様々である現場においても、設置すべき法貫の位置や向きなど、どの法型丁張装置を設置すべきかを容易に判断できるように支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】丁張を設置する作業の概要について説明するための図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る測量システムの構成を示す図である。
【
図3】丁張の形状の決定プロセスについて示す図である。
【
図4】本実施形態にかかる測量システムを用いた丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】端末装置の画像部に表示する画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<丁張について>
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は丁張について説明する図である。
図2は本開示の実施形態に係る測量システムの構成を示す図である。
【0013】
はじめに、
図1を用いて丁張を設置する作業の概要について説明する。
図1には丁張を設置すべき法面を含む横断面が模式的に示されており、この図に記載の文字を読める向きに配置した状態での紙面上下方向は高さ方向を、紙面左右方向は法面を含む横断面における水平方向である。この図において、実際の地面の線を示す実地面Gと、これから実施される土木建築工事の設計線DLおよび設計法面SLが示されている。設計線DLのうち特に設計法面を示す斜線の線分を設計法面SLとする。設計法面SLを、設計線DLを超えて延長した線を延長線ESLという。現況地面GLは、測量により実地面Gの標高であると推定された標高を示す仮想の地面線である。この現況地面GLと設計法面SLとの交点Cを示している。本開示において、現況地面GLと設計法面SLとの交点Cというとき、現況地面GLと延長線ESLの交点Cを含むものである。なお、実地面Gは設計線DLと区別してわかりやすくするために誇張していびつに描いている。土木建築工事では、丁張装置3を設置し、設計線DL及びSLに沿って、不要な土の切土、及び不足している土の盛土を行う。
【0014】
測量システム1は、作業者2が使用する端末装置100と、測量装置200と、被測量装置300とを備えている。作業者2はこれらの構成を備えた測量システム1を用いて、丁張装置3を設置する。
【0015】
丁張装置3は、法丁張、法型丁張であり、主に第1の杭10、第2の杭11、第1の横貫12、第2の横貫13、法貫14を備えている。横貫は必ずしも2本必要ではない場合もある。第1の横貫12、第2の横貫13は、それぞれ第1の杭10及び第2の杭11に対して交差して、且つ第1の杭10及び第2の杭11に亘って設けられた板状又は柱状の木材である。例えば、上側に設置されるのが第1の横貫12であり、下側に設置されるのが第2の横貫13である。なお、これら第1の杭10、第2の杭11、第1の横貫12、第2の横貫13、法貫14の寸法は統一されている必要はない。
【0016】
丁張装置3の法貫14は、設計された法面の向きと傾斜を表し、現場における切土又は盛土の目安となるものである。そのため、丁張装置3は、測量システム1を用いて精密に測量を行い、適切な位置に設置される。
【0017】
測量装置200の一実施例は、例えば、既知である位置座標上に設けられているトータルステーション(TS)等光波方式による測量機器である。「TS等光波方式」とは、TSに加え、自動追尾機能を有するTSと同等の測定ができるもので、かつ望遠鏡を搭載しない光波方式を用いる測定機器等を含むものである。測量装置200は、ターゲットである被測量装置300を自動追尾して、ターゲットが設けられた所定位置を測量することが可能である。被測量装置300は、測量装置200より放射された光を再び測量装置200へ反射する光学素子を備えたものであり、光学素子はいわゆる再帰反射プリズムである。また、被測量装置300は、再帰反射プリズムを備えた既知の長さの測量用ポールであってよい。
【0018】
なお、測量装置200と、被測量装置300は物理的に別体の構成であるが、協働して測量という機能をなしえるものであり、被測量装置300も一体として測量装置200に含まれるものとして解釈しても構わない。
【0019】
<システムの構成>
図2を用いて、測量装置200と端末装置100について説明する。測量装置200は、三脚に支持された水平方向に回転駆動可能な水平回転駆動部と、水平回転駆動部上にて鉛直方向に回転可能な鉛直回転駆動部を介して望遠鏡部が設けられている。図示しないが、測量装置200には、測角部212として、水平方向の回転角を検出する水平角検出部と、には鉛直方向の回転角を検出する鉛直角検出部が設けられている。これら水平角検出部及び鉛直角検出部により、視準している方向の鉛直角及び水平角を測角可能である。
【0020】
さらに、測量装置200には、測距部211として被測量装置300までの斜距離を測定する構成として、例えば光波距離計が設けられている。便宜上、これら測角部212と測距部211をあわせて測量部210と呼ぶ。
【0021】
また、測量装置200は、測量記憶部220、測量通信部230、測量制御部240、追尾制御部250を有している。
【0022】
測量記憶部220は、上記の測量制御や追尾制御等を行うための各種プログラムや、建築現場において使用する土地の情報(標高等)や設計情報等が予め記憶されている。
【0023】
測量通信部230は、端末装置100等の外部機器と通信可能な部分であり、例えば無線通信手段である。
【0024】
測量制御部240は、測量装置200による測量を制御する機能を有している。具体的には、自動又は手動で被測量装置300を視準し、上記した測角部212(水平角検出部、鉛直角検出部)、測距部211により、測量装置200と被測量装置300との水平角、鉛直角、斜距離を検出する。ここで、被測量装置300の一例である再帰反射プリズムは棒状のポールに取り付けられ、プリズムからポールの末端までの距離は既知であることから、測量制御部240は測角部212、測距部211により検出された水平角、鉛直角、斜距離を補正して、ポールの末端位置(上端位置、又は下端位置)を測量結果として算出する。
【0025】
追尾制御部250は、追尾光を照射し、被測量装置300により反射された追尾光を受光し続けるよう水平回転駆動部及び鉛直回転駆動部の駆動を制御することで被測量装置300を追尾する。
【0026】
また、測量装置200の他の実施例はGNSS測量装置である。この場合、被測量装置300としてGNSS受信装置を用いて測量を行う。
【0027】
端末装置100は、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ハンドヘルドコンピュータデバイス(例として、PDA(Personal Digital Assistant)等)、ウェアラブル端末(メガネ型デバイス、時計型デバイスなど)、等を含む。汎用の端末にアプリケーションソフトウェアをインストールすることで本実施形態にかかる携帯表示端末として用いることができる。これらの端末装置100は、画面部150を備え、作業現場に携帯して容易に持ち運びできる。また、ハンズフリーや、片手での保持により画面部150を視認することができる。また、電池等の内部電源を備え、外部電源を必要とすることなく一定時間動作することができる。
【0028】
端末装置100は、端末通信部130、端末記憶部120、端末処理部110、入力部140、画面部150、音声出力部160を有している。
【0029】
端末処理部110は、図示しないが端末記憶部120に記憶されるプログラムに含まれるコード又は命令によって実現する機能、及び/又は方法を実行する。端末処理部110は、例として、中央処理装置(CPU)、MPU、GPU、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等を含み、集積回路等に形成された論理回路や専用回路によって各実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。また、図示しないが、端末記憶部120から読み出したプログラムを一時的に記憶し、端末処理部110に対して作業領域を提供する主記憶部を備えてもよい。
【0030】
端末通信部130は、測量装置200の測量通信部230と通信可能であり、測量装置200により被測量装置300を測量した測量結果又は測量制御部240によって算出された位置情報(ポール先端までの水平角、鉛直角、斜距離)等を受信可能である。測量結果に基づく位置情報の演算は、測量装置200側で行ってもよく、端末装置100側で行ってもよい。通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。
【0031】
入力部140は、ユーザすなわち作業者2からの入力を受け付けて、その入力に係る情報を端末処理部110に伝達できる全ての種類の装置のいずれか、又は、その組み合わせにより実現される。例えば、ボタン等によるハードウェア入力手段に加え、タッチパネル等の表示部上に表示されたソフトウェア入力手段、リモートコントローラ、マイク等の音声入力手段を含む。
【0032】
画面部150は、画面を表示することができる全ての種類の装置のいずれか又はその組み合わせにより実現される。例えば、液晶やOLED等の平面ディスプレイ、曲面ディスプレイ、折畳可能なフォルダブル端末に設けられた折畳画面、ヘッドマウントディスプレイ、又は小型プロジェクタを用いた物質への投影により表示可能な装置を含む。
【0033】
音声出力部160は、端末記憶部120に記憶されている音声データ、又は通信により受信した音声データを音に変換して発することができる機能を有する、いわゆるスピーカである。
【0034】
端末記憶部120は、必要とする各種プログラムや各種データを記憶する機能を有する。その他、端末通信部130にて受信した測量情報、及びその測量情報に基づき算出された位置情報を記憶可能である。例えば、端末記憶部120には、建築現場において使用する土地の情報(標高等)や法面の設計情報を含む設計情報等が記憶されている。端末記憶部120は、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
【0035】
設計情報は、建築工事において必要な設計図を含む情報である。建築工事とは、例えば建築物、道路、線路、トンネル、橋梁、溝、水路、河川等の構造物の工事である。設計図には、平面図、縦断面図、横断面図、及びこれらに含まれる線形データ、点のデータ、各点や線分の位置、座標等、標高等が含まれている。
【0036】
端末記憶部120には、アプリケーションソフトウェアのプログラムとして、各種機能を実現する設計情報取得部121、測量情報取得部122、現況推定部123、交点算出部124、丁張形状決定部125、丁張形状伝達部126が記憶されている。
【0037】
設計情報取得部121は、主に、端末記憶部120、又は測量記憶部220に記憶されている設計情報から、設計法面を含む設計情報を取得する機能を有している。例えば、端末記憶部120に記憶されている線形データ、点のデータ、各点や線分の位置、座標等、標高等を読み込むことができる。また、入力部140により作業者2により入力された情報を設計情報として取得してもよい。あるいは、測量装置200の測量記憶部220に記憶されている設計情報を、測量通信部230と端末通信部130の通信により送受信して取得することもできる。
【0038】
測量情報取得部122は、測量装置200により測量し、測量通信部230により端末装置100に送信された測量情報を取得する機能を有している。例えば、測量装置200の測量による測量結果や位置情報を測量通信部230と端末通信部130の通信により送受信して取得することができる。また、また、入力部140により作業者2により入力された情報を設計情報として取得してもよい。
【0039】
現況推定部123は、端末装置100が受信した測量情報に応じて現況地面の推定標高を算出する機能を有している。これらの算出処理は端末装置100の内部で行われ、画面部150に表示せずともよい。例えば、実地面Gに設置した被測量装置300である再帰反射プリズムポールの末端の位置を、現況地面GLとして、その標高を示す位置を現況地面GLとして算出することができる。また、算出処理された結果である現況地面GLは画面部150に描画して表示してもよい。
【0040】
交点算出部124は、現況地面GLの推定標高と設計法面SLを含む設計情報とを用いて現況地面GLと設計法面SLの交点Cの座標を算出する機能を有している。これらの算出処理は端末装置100の内部で行われ、画面部150に表示せずともよい。例えば、設計情報取得部121により取得した設計法面SL又はその延長線ESLと、推定された現況地面GLとの交点Cの座標、位置を算出する。また、算出された結果である交点Cは画面部150に描画して表示してもよい。
【0041】
丁張形状決定部125は、測量情報と交点Cの座標を用いて、設置すべき丁張の形状を決定する機能を有している。これらの決定処理は端末装置100の内部で行われ、画面部150に表示せずともよい。丁張の形状の決定については後述する。
【0042】
丁張形状伝達部126は、丁張形状決定部125が決定した丁張の形状について端末装置100を介して伝達する機能を有している。丁張の形状については、端末装置100の画面部150に画像により表示してもよい。また、端末装置100の音声出力部160により、音声により出力してもよい。さらには、丁張の形状に対応する丁張装置を構成する杭、横貫、法貫の設置順序について、画像又は音声を用いて丁張を設置すべき順序について伝達してもよい。
【0043】
<丁張設置ガイド機能>
以下に、本開示の実施形態に係る測量システム、丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムの一側面である丁張設置ガイド機能の概要について説明する。
【0044】
図3は、丁張の形状の決定プロセスについて示す図である。この図において、どのような条件のもと、どの丁張の形状に決定されるかを示している。設置すべき法丁張の形状は、法面の向きと、測量位置によりタイプ1~4の4つの形状のいずれかに決定される。なお、タイプという名称は本開示を説明するために便宜上付けた呼称であり、その法丁張の正式名称として知られているものではない。
【0045】
この図において、主にタイプ1として左上に示されている条件を代表例に、丁張の形状の決定について説明する。タイプ1の法丁張を設置すべき条件として示されている左上の4つの図の状況について説明する。この図は、法面を含む横断面図を模式的に示したものであり、
図1に示した図と同様に、この図の文字を読める向きに配置した状態での紙面上下方向は高さ方向を、紙面左右方向は法面を含む横断面における水平方向を示している。これらの図において、これから実施される土木建築工事の設計法面SLと、被測量装置300により測量された測量情報に応じた現況地面GLが示されている。また、設計法面SLを超えて延長した線を延長線ESLとして示している。そして、設計法面SL又は延長線ESLと、現況地面GLとの交点Cを示している。また、現況地面GLを示している被測量装置300の位置、すなわち現在測量位置をマークM2として表している。これらの情報を用いて、設計法面が水平方向(左右方向)において左肩上がりであること、かつ、現在測量位置(マークM2)が、交点Cに対して水平方向(左右方向)のいずれ側に位置しているかに応じて、丁張の形状を決定する。タイプ1の場合、法面が左肩上がりであり、測量位置が設計法面の内側(交点に対して左側)に位置するので、画像IM1に示す形状の法丁張を提案することを決定する。例えばこの形状の丁張は基本的に法面における法尻よりも法肩側に設置され、法貫が設計法面と同様に左肩上がり(右肩下がり)となるように設置される。
【0046】
タイプ2においても同様に、法面が右肩上がりであり、測量位置が設計法面の外側(交点に対して左側)に位置するので、画像IM2に示す形状の法丁張を提案することを決定する。例えばこの形状の丁張は基本的に、土を削られる側、すなわち法面の外側に設置され、法貫が設計法面と同様に右肩上がり(左肩下がり)となるように設置される。
【0047】
タイプ3においても同様に、法面が左肩上がりであり、測量位置が設計法面の外側(交点に対して右側)に位置するので、画像IM3に示す形状の法丁張を提案することを決定する。例えばこの形状の丁張は基本的に、土を削られる側、すなわち法面の外側に設置され、法貫が設計法面と同様に左肩上がり(右肩下がり)となるように設置される。
【0048】
タイプ4においても同様に、法面が右肩上がりであり、測量位置が設計法面の内側(交点に対して右側)に位置するので、画像IM4に示す形状の法丁張を提案することを決定する。例えばこの形状の丁張は基本的に法面における法尻よりも法肩側に設置され、法貫が設計法面と同様に右肩上がり(左肩下がり)となるように設置される。
【0049】
このようにして、設計情報に含まれる設計法面SLと、現在測量位置を示す測量情報に応じて、丁張装置3として設置すべき法丁張の形状を決定することができる。以下ではその具体的な処理の流れについて説明する。
【0050】
<処理の流れ>
図4に本実施形態にかかる測量システムを用いた丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムの処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【0051】
まず、ステップS101では、設計情報取得部121が設計法面を含む設計情報を取得する。例えば、端末装置100に記憶されている所定の現場の所定の横断面図ファイルを読み込む。
【0052】
ステップS102では、測量装置200により測量されて取得した測量情報を端末装置100に送信し、測量情報を取得する。例えば、測量装置200を用いて測量し、被測量装置300の位置に関する情報を取得する。
【0053】
ステップS103では、現況推定部123が端末装置100で受信した測量情報に応じて現況地面の推定標高を算出する。例えば、被測量装置300の位置を、現況地面GLと推定する。
【0054】
ステップS104では、交点算出部124が現況地面の推定標高と前記設計法面を含む設計情報とを用いて現況地面GLと設計法面SL、又は延長線ESLの交点の座標を算出する。例えば、ステップS101において取得した設計法面SL、又は延長線ESLと、ステップS103において推定した現況地面GLとを用いて、その交点Cの位置、座標を算出する。
【0055】
ステップS105では、丁張形状決定部125が測量情報と交点Cの座標を用いて、上記で説明したように、設置すべき法丁張の形状を決定する。例えば、ステップS102において取得した、現在測量位置の情報と、ステップS104において算出した、交点Cの位置、座標を用いて、上記で説明した方法により、設置すべき丁張の法丁張の形状を決定する。
【0056】
ステップS106では、丁張形状伝達部126が、決定された丁張の形状について前記端末装置により伝達する。例えば、ステップS105で決定した法丁張の形状について、端末装置100の画面部150に対応する画像を表示する。
【0057】
図5は、端末装置100の画面部150に表示する画像の一例である。この図に示すように、取得された設計情報が、端末装置100の画面部150に表示されていてもよい。作業者2が入力部140を用いて行った指示に応じて、選択された設計図、例えば平面図と、横断面図の2つの図面のデータを取得し、画面に表示されていてよい。
【0058】
この図において、画面の中央には、平面図データに基づく平面
図PVが示されており、画面の下方の小窓には、横断面図データに基づく横断面
図CSVが示されている。平面
図PVは、いわゆる地図表示のように、東西南北を示す方位表示、縮尺を示す縮尺表示とともに表示されているとともに、設計された路線や点のデータが示されている。また、画面内には、各測量作業を補助するための機能アイコンが表示されている。平面
図PV及び横断面
図CSVには、被測量装置300の位置情報に基づき、設計された画面上の位置を算出し、画面部150のそれぞれの図上に重ねて、マークM1、マークM2として表示としている。
【0059】
横断面
図CSV上には、現況地面GLが描画されている。また、設計法面SLと、この傾きに基づく延長線ESLが描画されている。さらに、被測量装置300の位置がマークM2として表示されている。
【0060】
そして、この場合における、設置すべき丁張の形状が、画面上部に画像IM3として表示されている。この場合は、
図3において示したタイプ3と同様の条件であり、法面が左肩上がりであり、測量位置が設計法面の外側(交点に対して右側)に位置するので、この画像が表示されている。
【0061】
このように、本開示の実施形態に係る測量システム、丁張設置支援方法、丁張設置支援プログラムによれば、測量装置200と、端末装置100を備え、設計法面SLを含む設計情報を取得する設計情報取得部121と、測量装置200による測量情報を端末装置100に送信する測量情報取得部122と、端末装置100が受信した測量情報に応じて現況地面GLの推定標高を算出する現況推定部123と、現況地面GLの推定標高と設計法面SLを含む設計情報とを用いて現況地面GLと設計法面SLの交点の座標を算出する交点算出部124と、測量情報と交点の座標を用いて設置すべき丁張の形状を決定する丁張形状決定部125と、丁張形状決定部125が決定した丁張の形状について端末装置100により伝達する丁張形状伝達部126、を備えることにより、作業者2による測量情報と設計情報とを用いて、法型丁張装置を設置する位置や、法面との位置関係が様々である現場においても、設置すべき法貫の位置や向きなど、どの法型丁張装置を設置すべきかを容易に判断できるように支援することができる。
【0062】
また、丁張形状伝達部126は、丁張の形状に対応する画像を端末装置100に表示することにより、作業者2が直感的に設置すべき丁張の形状を把握することができる。
【0063】
また、丁張形状伝達部126は、丁張の形状を端末装置の音声出力部より出力することにより、例えば視線を画面部150に移さずに他の作業をしながらでも、設置すべき丁張の形状を把握することができる。
【0064】
丁張形状伝達部126は、丁張の形状に対応する丁張装置3を構成する杭、横貫、法貫の設置順序について端末装置100により伝達することにより、作業に不慣れな者でも、丁張装置3を構成する部材を適切な順序で設置することができる。
【0065】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 測量システム
2 作業者
3 丁張装置
100 端末装置
110 端末処理部
120 端末記憶部
121 設計情報取得部
122 測量情報取得部
123 現況推定部
124 交点算出部
130 端末通信部
140 入力部
150 画面部
200 測量装置
210 測量部
211 測距部
212 測角部
220 測量記憶部
230 測量通信部
240 測量制御部
250 追尾制御部
300 被測量装置
GL 現況地面
SL 設計法面
C 交点