(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】振動流路装置
(51)【国際特許分類】
B01F 31/80 20220101AFI20240528BHJP
B01J 19/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B01F31/80
B01J19/10
(21)【出願番号】P 2023573297
(86)(22)【出願日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2023026268
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022114692
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593069521
【氏名又は名称】株式会社大興製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】開田 弘明
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-171928(JP,A)
【文献】特開平08-266891(JP,A)
【文献】実公昭44-022386(JP,Y1)
【文献】特開2011-050937(JP,A)
【文献】特開2010-012443(JP,A)
【文献】特表2018-538526(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10310442(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/10
B01F 31/80
B01F 25/40
F16L 55/00
C02F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動管部と、流路方向に沿って前記振動管部に隣接する制動管部とを含む、流体を流すための管部と、
前記振動管部を振動させる圧電素子とを備え、
前記圧電素子は前記振動管部上に固定されており、
前記制動管部は、前記振動管部から前記制動管部に向かう振動波の少なくとも一部を前記振動管部に向かって反射させるように構成されており、
前記振動管部の管路内に収容される撹拌子をさらに備え、
前記振動管部は、第1の内径を有する少なくとも2つの第1の部分と、2つの前記第1の部分の間に配置されて第2の内径を有する第2の部分とを含み、
前記第1の内径の少なくとも一部は前記第2の内径よりも小さく、
前記撹拌子の外径は前記第1の内径の最小値より大きく、前記撹拌子は前記第2の部分において前記振動管部の管路内に収容されている、振動流路装置。
【請求項2】
前記振動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZ
Vであり、
前記制動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZ
Bであり、
Z
B>Z
Vである、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項3】
前記制動管部の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法は、前記振動管部の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きい、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項4】
前記制動管部の管路軸に沿った単位長さあたりの質量は、前記振動管部の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きい、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項5】
前記振動管部は、第1の振動管部と、前記第1の振動管部とは異なる材質によって形成されて流路方向に沿って前記第1の振動管部に隣接する第2の振動管部とを含み、
前記第1の振動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZ
V1であり、
前記第2の振動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZ
V2であり、
前記第2の振動管部は流路方向に沿って前記制動管部に隣接し、
前記制動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZ
Bであり、
Z
V1>Z
V2、かつ、Z
B>Z
V2である、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項6】
前記第2の振動管部を構成する材質は高分子材料である、請求項5に記載の振動流路装置。
【請求項7】
前記制動管部は、流路方向に沿って前記振動管部の一方の端部に隣接する第1の制動管部と、流路方向に沿って前記振動管部の他方の端部に隣接する第2の制動管部とを含む、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項8】
第1の圧電素子と第2の圧電素子を備え、
前記第1の圧電素子は、前記振動管部の管路軸に対して垂直な第1の方向に屈曲振動を励起させるように配置され、
前記第2の圧電素子は、前記振動管部の管路軸に対して垂直な、前記第1の方向とは異なる第2の方向に屈曲運動を励起させるように配置されている、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動流路装置。
【請求項9】
前記振動管部を構成する材質は石英ガラスである、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項10】
前記振動管部は、連続的または断続的な凹凸形状が形成された内壁面を有する、請求項1に記載の振動流路装置。
【請求項11】
前記第1の方向と前記第2の方向は略直交しており、
前記第1の圧電素子に印加される交流電圧の周波数と前記第2の圧電素子に印加される交流電圧の周波数は異なっている、請求項8に記載の振動流路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路を振動させる振動流路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の混合や化学反応の促進には、流体の乱流化が重要である。しかし流体混合装置の小型にともない流路径が小さくなると、流路内の流れは層流になりやすく、乱流化が困難となる。例えば、マイクロ流路に供給する前の管路に機械的振動を加えることで、流体混合反応を著しく促進させたという報告(日本機械学会論文集(B編)71巻703号(2005-3)「マイクロ流路内の流体混合反応に与える振動の効果」)(非特許文献1)がされており、流体攪拌に機械的振動が有効であることが確認されている。
【0003】
非特許文献1の報告でも図示されているが、機械的振動の発生源として、一般には電磁モータが用いられる。しかし、電磁方式は小型化にともなって巻き線損失が大きく、エネルギー効率が極度に低下するという問題がある。一方で圧電体は、巻き線が存在せず構造が単純で発生力が大きいことから、小型化に適している。また、振動を用いる場合、その振動を伝達させたくない領域において、振動をいかに抑圧するかが問題になる。通常のダンパーは、振動エネルギーを熱エネルギーとして吸収するが、化学反応においてはその熱エネルギーの発生が問題になる場合がある。
【0004】
圧電体による振動で流体に作用させる装置として、特開2008-272694号公報(特許文献1)に示すような「超音波流体移動装置およびこれを使用した攪拌器並びにポンプ」が提案されている。これは、流体の容器の外壁に複数の超音波発生素子を接合し、流体を移動する力を生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本機械学会論文集(B編)71巻703号(2005-3)「マイクロ流路内の流体混合反応に与える振動の効果」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたような超音波流体移動装置およびこれを使用した攪拌器並びにポンプは、圧電体によって機械的振動が発生することが明示されているものの、その振動の漏洩をどのように対策するか不明である。振動漏洩の対策を講じない場合、管路の保持が困難となり、保持状態によっては、振動性能が低下し不安定になる恐れがある。
【0008】
流体の混合ないしは化学反応の効率を上げるには、その流体を攪拌し、乱流化させることが望ましい。しかし、流路装置の小型化が進み、管路径が小さくなると、そこを通る流体は層流になりやすく、乱流化が困難となる。管路に機械的振動を与えることが乱流化に効果的であることが知られているが、通常の電磁モータ方式の振動装置は大型になりやすい。また、仮に振動を与える構成ができたとしても、振動が漏洩し、振動させたくない領域にも振動が伝わり、管路の保持が困難となるなどの問題がある。
【0009】
したがって、小型の振動発生源を備え、振動漏洩の生じにくい、流路構造体の実現が理想である。
【0010】
そこでこの発明の目的は、簡単な構成で、管路を効果的に振動させ、かつ、管路を安定に支持することが可能な振動流路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従った振動流路装置は、振動管部と、流路方向に沿って振動管部に隣接する制動管部とを含む、流体を流すための管部と、振動管部を振動させる圧電素子とを備え、制動管部は、振動管部から制動管部に向かう振動波の少なくとも一部を振動管部に向かって反射させるように構成されている。
【0012】
本発明において、流体は、液体、気体に加え、粉体を含むものとする。また、圧電素子は、圧電セラミックス、圧電単結晶、圧電薄膜などを含むものとする。
【0013】
このようにすることにより、簡単な構成で、振動流路装置内において、振動管部に振動する領域を設け、制動管部に振動しない領域を設けることができるので、振動管部内で効果的に流体を撹拌させたり流体の輸送を促進させたりし、かつ、制動管部または制動管部よりも外側において、複雑な構造を用いることなく、振動流路装置を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の振動流路装置の全体を模式的に示す図である。
【
図2】第1実施形態の振動流路装置が備える圧電素子の駆動方式を模式的に示す図である。
【
図3】第2実施形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)副振動管部を半透明にして部分的に示す図である。
【
図4】第3実施形態の振動流路装置の全体を模式的に示す図である。
【
図5】第4実施形態の振動流路装置の全体を模式的に示す図である。
【
図6】第4実施形態の振動流路装置が備える圧電素子の駆動方式を模式的に示す図である。
【
図7】第5実施形態の振動流路装置の全体を模式的に示す図である。
【
図8】第6実施形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)主振動管部を半透明にして部分的に示す図である。
【
図9】第7実施形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)管部を半透明にして部分的に示す図である。
【
図10】第7実施形態の圧電素子と接合部材を流路に垂直な方向からみた図(A)と、流路に沿った方向から見た図(B)である。
【
図11】第8実施形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)管部を半透明にして部分的に示す図と、(C)内蔵棒を拡大して示す図である。
【
図12】第8実施形態の内蔵棒の構造のみが異なる形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)管部を半透明にして部分的に示す図と、(C)内蔵棒を拡大して示す図である。
【
図13】第8実施形態の振動管部の管路の構造のみが異なる別の形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)管部を半透明にして部分的に示す図と、(C)内蔵棒を拡大して示す図である。
【
図14】第9実施形態の(A)振動流路装置の全体を模式的に示す図と、(B)分解斜視図と、(C)管路の内表面の拡大図である。
【
図15】実施例1の振動流路装置の振動による変位を有限要素法FEM解析によって示した振動変位図である。
【
図16】実施例2の振動流路装置の振動による変位を有限要素法FEM解析によって示した振動変位図である。
【
図17】実施例3の振動流路装置の振動による変位を有限要素法FEM解析によって示した振動変位図である。
【
図18】実施例5の振動流路装置の振動による変位を有限要素FEM解析によって示した振動変位図である。
【
図19】実施例7の振動流路装置の振動による変位を有限要素FEM解析によって示した振動変位図である。
【
図20】比較例の振動流路装置の全体を模式的に示す図である。
【
図21】比較例の振動流路装置の振動による変位を有限要素法FEM解析によって示した振動変位図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の振動流路装置について具体例を交えながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示すように、振動流路装置1は、振動管部11と、流路方向に沿って振動管部11に隣接する制動管部21a,21bと、制動管部21a,21bの外側に突出した端部管部41a,41bを含む、流体を流すための円筒型の管部101と、振動管部11を振動させる第1の圧電素子31aと第2の圧電素子31bとを備える。
【0017】
管部101の管路は、1本の管101aによって形成されている。この実施形態では、限定ではなく一例として、管101aは石英ガラス製の筒である。管部101の中央部分に位置する振動管部11は、管101aをそのまま用いており、材質は石英ガラスである。振動管部11の両外側には制動管部21a,21bが配置されている。制動管部21a,21bは、管101aの管の外周面上に制動部材が被覆または巻き付けられて構成されている。この実施形態では、制動部材としてステンレス鋼製の筒が石英ガラスの管101aの外周面上に取り付けられて制動管部21a,21bを構成している。制動管部21a,21bは、
図1に示すように管部101の両端から端部管部41a,41bを残して内側に入った位置に配置されてもよく、別の形態として、管部101の両端に配置されて管部101が端部管部41a,41bを備えないようにしてもよい。
【0018】
また、別の形態として、管部101の管路が1本の管101aによって形成されているのではなく、振動管部11の管路が石英ガラス製の筒によって形成され、制動管部21a,21bの管路がステンレス鋼製の筒によって形成され、振動管部11が制動管部21a,21bに差し込まれて管部101が形成されてもよい。また、管101aは複数の材質によって構成されていてもよい。
【0019】
振動流路装置1は、端部管部41a,41bにおいて支持部材(図示しない)によって支持される。端部管部41a,41bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。
【0020】
図2に示すように、第1の圧電素子31aと第2の圧電素子31bは、一般にブザー用として普及しているものなど、公知の圧電素子を用いることができ、限定ではなく一例として、第1の圧電素子31aの場合、両主面に電極301a,301bが形成された圧電セラミックスを黄銅製の円板301cに接着したしたものを用いることができる。第2の圧電素子31bも第1の圧電素子31aと同様に構成されている。圧電素子31a,31bは振動管部11上の所定の位置に固定されている。圧電素子31a,31bの固定は、接着、溶着、溶接など、振動管部11と圧電素子31a,31bの材質によって公知の適切な方法でなされる。
【0021】
図2に示すように、振動流路装置1の第1の圧電素子31aは、振動管部11の管路軸に対して垂直な第1の方向に屈曲振動を励起させるように配置され、第2の圧電素子31bは、振動管部11の管路軸に対して垂直な、第1の方向とは異なる第2の方向に屈曲運動を励起させるように配置されている。
図2では、振動流路装置1においては、第1の圧電素子31aが励起させる屈曲運動の第1の方向と第2の圧電素子31bが励起させる屈曲運動の第2の方向は略直交している。
【0022】
振動管部11を構成する材質、すなわち、管101aの材質の音響インピーダンスの平均はZvであり、制動管部21a,21bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZBであり、ZB>ZVである。例えば、振動管部11が石英ガラスのみで形成されている場合、ZVは石英ガラスの音響インピーダンスであり、制動管部21a,21bが石英ガラスの筒の外周面上にステンレス鋼の筒を巻き付けて構成されている場合、ZBは石英ガラスの音響インピーダンスとステンレス鋼の音響インピーダンスの平均である。また例えば、振動管部11が複数の材質によって形成されており、制動管部21a,21bが単一の材質で形成されている場合、ZVは振動管部11を構成する複数の材質のそれぞれの音響インピーダンスの平均であり、ZBは制動管部21a,21bを構成する材質の音響インピーダンスである。
【0023】
管部101内に流体を流し、第1の圧電素子31aと第2の圧電素子31bに交流電圧が印加されると、振動管部11は管路軸を中心に回転運動する。振動管部11の振動波は、流路方向に沿って振動管部11の両端に隣接する制動管部21a,21bに向かうが、振動管部11を構成する部材の材質の音響インピーダンスの平均ZVよりも制動管部21a,21bを構成する部材の材質の音響インピーダンスの平均ZBの方が大きいので、振動波の少なくとも一部は振動管部11と制動管部21a,21bとの境界で反射され、振動管部11内に戻る。好ましくは、例えばZVとZBの差を大きくして、振動管部11から制動管部21a,21bに向かう振動波のすべてを振動管部11に向かって反射させることが好ましい。
【0024】
このようにすることにより、簡単な構成で、振動流路装置内において、振動管部に振動する領域を設け、制動管部に振動しない領域を設けることができるので、振動管部内で効果的に流体を撹拌させたり流体の輸送を促進させたりし、かつ、制動管部または制動管部よりも外側において、複雑な構造を用いることなく、振動流路装置を支持することができる。
【0025】
また、安定した性能を有し、単純で小型サイズの振動流路装置1を実現することができる。
【0026】
さらに、振動管部11の内壁に螺旋形状やジグザグ形状など、連続的あるいは断続的な凹凸形状を形成することで、流体を攪拌するとともに、管路の軸方向へ動きも作用させ、流体を管路内で輸送することができる。
【0027】
さらに、制動管部21a,21bの管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法は、振動管部11の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きく形成されている。
【0028】
さらにまた、振動管部11は石英ガラスのみによって構成され、制動管部21a,21bは石英ガラスとその外周面上のステンレス鋼とによって構成される場合、制動管部21a,21bの管路軸に沿った単位長さあたりの質量は、振動管部11の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きい。この実施形態では、振動管部11を構成する石英ガラスよりも制動管部21a,21bを構成するステンレス鋼の方が密度が大きい。
【0029】
このようにすることにより、制動管部21a,21bが、振動管部11から制動管部21a,21bに向かう振動波のより多くを振動管部11に向かって反射させることができる。
【0030】
なお、振動管部11の材質と制動管部21a,21bの材質を、例えばどちらも石英ガラス製であるなど同一にして、制動管部21a,21bの管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法を、振動管部11の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きく形成してもよい。あるいは、振動管部11の材質と制動管部21a,21bの材質を同一にして、制動管部21a,21bの管路軸に沿った単位長さあたりの質量を、振動管部11の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きくしてもよい。このようにすることにより、振動管部11を構成する材質の音響インピーダンスの平均ZVと制動管部21a,21bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZBが同一であっても、振動管部11から制動管部21a,21bに向かう振動波の少なくとも一部を振動管部11に向かって反射させることができる。
【0031】
上述のように、
図2に示すように、振動流路装置1においては、第1の圧電素子31aが励起させる屈曲運動の第1の方向と第2の圧電素子31bが励起させる屈曲運動の第2の方向は略直交している。第1の圧電素子31aに印加される交流電圧の周波数と第2の圧電素子31bに印加される交流電圧の周波数は、略同一であってもよく、異なっていてもよい。また、第1の圧電素子31aに印加される交流電圧の位相と第2の圧電素子31aに印加される交流電圧の位相は、略同一であってもよく、異なっていてもよく、略90°異なっていてもよい。
【0032】
流体を回転させて攪拌の効率を高めるには、流体の回転方向が正逆交互に繰り返されることが望ましい。第1の圧電素子31aに印加される交流電圧と第2の圧電素子31bに印加される交流電圧に周波数差を持たせることで、それが実現できる。流体の回転方向は、二つの圧電素子31a,31bの振動方向の相対的関係によって決まるが、両振動の周波数に差異があることで、両振動の相対的方向関係が時間とともに変わる。回転方向が正逆交互に繰り返されるのはこのためである。
【0033】
さらに理解に供するために説明を加える。たとえば、上下振動を発生させる圧電素子31aと、左右振動を発生させる圧電振動子31bがある場合、管路内の流体が、圧電素子31aによって上方向に変位し、その次の瞬間に圧電素子31bによって右方向に変位、そして次の瞬間に圧電素子31aによって下方向に変位、次の瞬間に圧電素子31bによって左方向に変位するとき、これは連続的に見ると右回転(時計回り=正回転)が生じていることになる。一方、管路内の流体が、圧電素子31aによって上方向に変位し、その次の瞬間に圧電素子31bによって左方向に変位、そして次の瞬間に圧電素子31aによって下方向に変位、次の瞬間に圧電素子31bによって右方向に変位するとき、これは連続的に見ると左回転(反時計回り=逆回転)が生じていることになる。このように、右回転と左回転のちがいは、両振動の相対的方向関係が異なることによる。上下振動と左右振動の周波数に差があれば、その振動方向の相対的関係が時間とともに変わることになるので、時間の経過にともない右回転・左回転が交互に繰り返されることになる。
【0034】
このように、振動流路装置においては、第1の方向と第2の方向は略直交しており、第1の圧電素子に印加される交流電圧の周波数と第2の圧電素子に印加される交流電圧の周波数は異なっていることが好ましい。
【0035】
<第2実施形態>
図3に示すように、第2実施形態の振動流路装置2は、第1の振動管部として主振動管部121と、第2の振動管部として主振動管部121とは異なる材質によって形成されている副振動管部122a,122bとからなる振動管部12と、流路方向に沿って振動管部12の副振動管部122a,122bに隣接する制動管部22a,22bとを含む、流体を流すための管部102と、振動管部12を振動させる圧電素子32a,32bとを備える。圧電素子32a,32bは第1実施形態の圧電素子31a,31bと同様に構成され得る。
図3(B)に示すように、副振動管部122a,122bの端部の一方に主振動管部121が差し込まれ、他方の端部に制動管部22a,22bが差し込まれている。主振動管部121と制動管部22a,22bは離間されており、接していない。振動流路装置2は、制動管部22a,22bにおいて支持部材(図示しない)によって支持される。制動管部22a,22bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。
【0036】
主振動管部11を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV1であり、流路方向に沿って主振動管部11に隣接する副振動管部122a,122bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV2である。制動管部22a,22bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZBである。
【0037】
この実施形態では、音響インピーダンスの大きさの関係は、ZV1>ZV2、かつ、ZB>ZV2である。限定ではなく、一例として、主振動管部11は石英ガラス製であり、副振動管部122a,122bはシリコーンなどの有機ケイ素化合物やPTFEなどのフッ素樹脂などの高分子材料によって構成されており、制動管部22a,22bは石英ガラス製である。
【0038】
管部102内に流体を流し、第1の圧電素子32aと第2の圧電素子32bに交流電圧が印加されると、主振動管部121と副振動管部122a,122bを含む振動管部12は管路軸を中心に回転運動する。主振動管部121の振動波は、流路方向に沿って主振動管部121の両端に隣接する副振動管部122a,122bに向かう。副振動管部122a,122bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV2は主振動管部121を構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV1より小さいので、振動波は主振動管部121から副振動管部122a,122bに伝わり、さらに、制動管部22a,22bに向かう。副振動管部122a,122bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV2よりも制動管部22a,22bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZBの方が大きいので、振動波の少なくとも一部は副振動管部122a,122bと制動管部22a,22bとの境界、すなわち、振動管部12と制動管部22a,22bとの境界で反射され、振動管部12内に戻る。好ましくは、例えばZV2とZBの差を大きくして、振動管部12から制動管部22a,22bに向かう振動波のすべてを振動管部12に向かって反射させることが好ましい。
【0039】
また、音響インピーダンスの大きさの関係は、ZB>ZV1>ZV2であることがさらに好ましい。この場合、限定ではなく、一例として、主振動管部121を構成する材質は石英ガラスであり、副振動管部122a,122bを構成する材質はシリコーンなどの有機ケイ素化合物やPTFEなどのフッ素樹脂などの高分子材料であり、制動管部22a,22bを構成する材質はステンレス鋼である。このようにすることにより、ZV2とZBの差が大きくなり、振動管部12から制動管部22a,22bに向かう振動波のより多くの部分を振動管部12に向かって反射させることができる。
【0040】
第2実施形態の振動流路装置2のその他の構成と作用効果は第1実施形態と同様である。
【0041】
<第3実施形態>
図4に示すように、振動流路装置3は、振動管部13と、流路方向に沿って振動管部13に隣接する制動管部23a,23bとを含む、流体を流すための管部103と、振動管部13を振動させる単一の圧電素子33を備える。圧電素子33は第1実施形態の圧電素子31a,31bと同様に構成され得る。制動管部23aの外側には管部103の一方の端部管部43aが突き出しており、制動管部23bの外側には管部103の他方の端部管部43bが付き出している。振動流路装置3は、端部管部43a,43bにおいて支持部材(図示しない)によって支持される。端部管部43a,43bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。圧電素子33は、振動管部13の管路軸に対して垂直な1つの方向に屈曲振動を励起させるように、振動管部13上に固定されている。
【0042】
管部103の管路は、1本の管103aによって形成されている。この実施形態では、限定ではなく一例として、管103aは石英ガラス製の筒である。管部103の中央部分に位置する振動管部13は、管103aをそのまま用いており、管103aを構成する材質(例えば石英ガラス)の音響インピーダンスの平均はZVである。振動管部13の両外側には制動管部23a,23bが配置されている。制動管部23a,23bは、管103aの管の外周面上に制動部材が被覆または巻き付けられて構成されている。制動管部23a,23bにおいては、管103aの材質(例えば石英ガラス)の音響インピーダンスと、管103aの外周面上に被覆または巻き付けられた制動部材の材質(例えばステンレス鋼)の音響インピーダンスの平均が音響インピーダンスZBであり、ZB>ZVである。
【0043】
また、別の形態として、振動管部13が石英ガラス製の筒によって形成され、制動管部23a,23bがステンレス鋼製の筒によって形成され、振動管部13が制動管部23a,23bに差し込まれて管部103が形成されてもよい。また、管103aは複数の材質によって構成されていてもよい。
【0044】
管部103内に流体を流し、圧電素子33に交流電圧が印加されると、振動管部13は管路軸を中心に振動する。振動管部13の振動波は、流路方向に沿って振動管部13の両端に隣接する制動管部23a,23bに向かうが、振動管部13を構成する材質の音響インピーダンスの平均ZVよりも制動管部23a,23bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZBの方が大きいので、振動波の少なくとも一部は振動管部13と制動管部23a,23bとの境界で反射され、振動管部13内に戻る。好ましくは、例えばZVとZBの差を大きくして、振動管部13から制動管部23a,23bに向かう振動波のすべてを振動管部13に向かって反射させることが好ましい。
【0045】
さらに、制動管部23a,23bの管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法は、振動管部10の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きく形成されている。
【0046】
さらにまた、制動管部23a,23bの管路軸に沿った単位長さあたりの質量は、振動管部13の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きい。この実施形態では、振動管部13を構成するガラスよりも制動管部23a,23bを構成するステンレス鋼の方が密度が大きい。
【0047】
このようにすることにより、制動管部23a,23bが、振動管部13から制動管部23a,23bに向かう振動波のより多くを振動管部13に向かって反射させることができる。
【0048】
なお、振動管部13を構成する材質と制動管部23a,23bを構成する材質を、例えばどちらも石英ガラス製のように同一にして、制動管部23a,23bの管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法を、振動管部13の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きく形成してもよい。あるいは、振動管部13を構成する材質と制動管部23a,23bを構成する材質を同一にして、制動管部23a,23bの管路軸に沿った単位長さあたりの質量を、振動管部13の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きくしてもよい。このようにすることにより、振動管部13を構成する材質の音響インピーダンスの平均と制動管部23a,23bを構成する材質の音響インピーダンスの平均が同一であっても、振動管部13から制動管部23a,23bに向かう振動波の少なくとも一部を振動管部13に向かって反射させることができる。
【0049】
第3実施形態の振動流路装置3のその他の構成と作用効果は第1実施形態と同様である。
【0050】
<第4実施形態>
図5に示すように、振動流路装置4は、振動管部14と、流路方向に沿って振動管部14に隣接する制動管部24a,24bとを含む、流体を流すための管部104と、振動管部14を振動させる第1の圧電素子34aと第2の圧電素子34bとを備える。管部104の管路は1本の管104aによって形成されている。制動管部24aの外側には管部104の一方の端部管部44aが突き出しており、制動管部24bの外側には管部104の他方の端部管部44bが付き出している。振動流路装置1は、端部管部44a,44bにおいて支持部材(図示しない)によって支持される。端部管部44a,44bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。
【0051】
図6に示すように、第4実施形態の振動流路装置4が第1実施形態の振動流路装置1と異なる点は、圧電素子34a,34bが、一般にブザー用として普及しているものではなく、一般的なブザー用の圧電素子が備える黄銅板をなくし、第1の圧電素子34aの場合、両主面に電極304a,304bを形成した角板状の圧電セラミックスを直接、振動管部14上に接着固定した点である。第2の圧電素子34bも第1の圧電素子34aと同様に構成されている。
【0052】
第4実施形態の振動流路装置4のその他の構成と作用効果は第1実施形態と同様である。
【0053】
<第5実施形態>
図7に示すように、振動流路装置5は、振動管部15と、流路方向に沿って振動管部15に隣接する制動管部25a,25bとを含む、流体を流すための管部105と、振動管部15を振動させる第1の圧電素子35aと第2の圧電素子35bとを備える。管部105の管路は1本の管105aによって形成されている。制動管部25a,25bは、管105aの外周面上に制動部材が被覆されることによって構成されている。管105aを構成する材質(例えば石英ガラス)の音響インピーダンスの平均はZ
Vであり、制動管部25a,25bを構成する材質の音響インピーダンスの平均、すなわち、管105aを構成する材質(例えば石英ガラス)の音響インピーダンスと管105a上を被覆する制動部材を構成する物質(例えばステンレス鋼)の音響インピーダンスの平均はZ
Bであり、Z
B>Z
Vである。制動管部25a,25bの外側には管部105の端部は突き出していない。制動管部25a,25bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。
【0054】
図7に示すように、第5実施形態の振動流路装置5が第4実施形態の振動流路装置4と異なる点は、管105aが円筒型ではなく、角型に形成されている点である。
【0055】
第5実施形態の振動流路装置5のその他の構成と作用効果は第4実施形態と同様である。
【0056】
<第6実施形態>
図8に示すように、振動流路装置6は、第1の振動管部として主振動管部161と、第2の振動管部として主振動管部161とは異なる材質によって形成されている副振動管部162a,162bとからなる振動管部16と、流路方向に沿って振動管部16の副振動管部162a,162bに隣接する制動管部26a,26bとを含む、流体を流すための管部106と、振動管部16を振動させる圧電素子36a,36bとを備える。圧電素子36a,36bは第1実施形態の圧電素子31a,31bと同様に構成され得る。
【0057】
図8(B)に示すように、主振動管部161を円筒型ではなく、らせん形状にすることによって、主振動管部161の内壁上に連続的に凹凸が形成されている。
【0058】
副振動管部162a,162bの端部の一方に主振動管部161が差し込まれ、他方の端部に制動管部26a,26bが差し込まれている。主振動管部161と制動管部26a,26bは離間されており、接していない。振動流路装置6は、制動管部26a,26bにおいて支持部材(図示しない)によって支持される。制動管部26a,26bの外側には、さらに別の管路が接続されてもよい。
【0059】
主振動管部161を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV1であり、流路方向に沿って主振動管部161に隣接する副振動管部162a,162bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV2である。制動管部26a,26bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZBである。
【0060】
この実施形態では、音響インピーダンスの大きさの関係は、ZV1>ZV2、かつ、ZB>ZV2である。限定ではなく、一例として、主振動管部161は石英ガラス製であり、副振動管部162a,162bはシリコーンなどの有機ケイ素化合物やPTFEなどのフッ素樹脂などの高分子材料によって構成されており、制動管部26a,26bは石英ガラス製である。
【0061】
管部106内に流体を流し、第1の圧電素子36aと第2の圧電素子36bに交流電圧が印加されると、主振動管部161と副振動管部162a,162bを含む振動管部16は管路軸を中心に回転運動する。主振動管部161の振動波は、流路方向に沿って主振動管部161の両端に隣接する副振動管部162a,162bに向かう。副振動管部162a,162bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV2は主振動管部161を構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV1より小さいので、振動波は主振動管部161から副振動管部162a,162bに伝わり、さらに、制動管部26a,26bに向かう。副振動管部162a,162bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZV2よりも制動管部26a,26bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZBの方が大きいので、振動波の少なくとも一部は副振動管部162a,162bと制動管部26a,26bとの境界、すなわち、振動管部16と制動管部26a,26bとの境界で反射され、振動管部16内に戻る。好ましくは、例えばZV2とZBの差を大きくして、振動管部16から制動管部26a,26bに向かう振動波のすべてを振動管部16に向かって反射させることが好ましい。
【0062】
また、音響インピーダンスの大きさの関係は、ZB>ZV1>ZV2であることがさらに好ましい。この場合、限定ではなく、一例として、主振動管部161を構成する材質は石英ガラスであり、副振動管部162a,162bを構成する材質はシリコーンなどの有機ケイ素化合物やPTFEなどのフッ素樹脂などの高分子材料であり、制動管部26a,26bを構成する材質はステンレス鋼である。このようにすることにより、ZV2とZBの差が大きくなり、振動管部16から制動管部26a,26bに向かう振動波のより多くの部分を振動管部16に向かって反射させることができる。
【0063】
第6実施形態の振動流路装置6のその他の構成と作用効果は第2実施形態と同様である。
【0064】
<第7実施形態>
図9に示すように、振動流路装置7は、流体を流すための円筒型の管部107と、管部107上に配置された圧電素子37a,37bとを備える。圧電素子37a,37bは第1実施形態の圧電素子31a,31bと同様に構成され得る。圧電素子37a,37bは接合部材371a,371bによって管部107上に接合されている。管部107において、接合部材371a,371bが取り付けられた部分の間の管部107は振動管部17を構成し、接合部材371a,371bが取り付けられた部分の管部107は制動管部27a,27bを構成し、接合部材371a,371bの外側の管部107は端部管部47a,47bを構成している。管部107の管路は1本の管107aによって形成されている。
【0065】
この実施形態では、接合部材371a,371bは、
図10に示すU字形状の部材であり、管部107を挟んで保持することができる。管部107の固定方法の一例としては、接着剤をU字形状の接合部材371a,371bの内側に塗布して、管107aを接合部材371a,371bに挟み、加圧接着する。
【0066】
振動管部17を構成する材質、すなわち、管部107を構成する管107aの材質の音響インピーダンスの平均はZVであり、制動管部27a,27bを構成する材質の音響インピーダンスの平均、すなわち、管107aと接合部材371a,371bを構成する材質の音響インピーダンスの平均はZBである。
【0067】
この実施形態では、音響インピーダンスの大きさの関係は、ZB>ZVである。限定ではなく、一例として、管107aはフッ素系樹脂PTFEのような高分子で形成され、接合部材371a,371bは黄銅のような金属によって形成される。
【0068】
管部107内に流体を流し、第1の圧電素子37aと第2の圧電素子37bに交流電圧が印加されると、接合部材371a,371bを通して、接合部材371a,371bの間の管107aが振動され、振動管部17は管路軸を中心に回転運動する。
【0069】
図9のように、第1の圧電素子37aと第2の圧電素子37bの間隔を適切な距離にすることで、振動管部17の振動が大きく、それに比べて制動管部47a,47bの振動が小さい、という状態をつくりだすことができる。この実施形態の場合、振動管部17は、圧電素子37a,37bと管部107とを連結させるパーツ(接合部材371a,371b)よりも音響インピーダンスが著しく小さいので、その連結パーツ(接合部材371a,371b)と振動管部17の境界で音響的な反射効率が高く、振動管部17の振動が大きく、それに比べて制動管部47a,47bの振動が小さい、という状態が顕著になる。すなわち、この連結パーツ(接合部材371a,371b)が制動部材としても作用することになるので、
図9においては連結パーツ(接合部材371a,371b)が取り付けられた部分を制動管部27a,27bとして示している。
【0070】
振動管部17の振動波は、流路方向に沿って制動管部27a,27bに向かう。振動管部17を構成する材質の音響インピーダンスの平均ZVよりも制動管部27a,27bを構成する材質の音響インピーダンスの平均ZBの方が大きいので、振動波の少なくとも一部は振動管部17と制動管部27a,27bとの境界、すなわち、圧電素子37a,37bの接合部材371a,371bが取り付けられた位置で反射され、振動管部17内に戻る。好ましくは、例えばZVとZBの差を大きくして、振動管部17から制動管部27a,27bに向かう振動波のすべてを振動管部17に向かって反射させることが好ましい。
【0071】
第7実施形態の振動流路装置7のその他の構成と作用効果は第1実施形態と同様である。
【0072】
<第8実施形態>
図11に示す第8実施形態の振動流路装置8aは、振動管部18aの構成のみが第1実施形態の振動流路装置1(
図1)と異なる。制動管部28a,28b、圧電素子33a,33b、端部管部48a,48bは、それぞれ、第1実施形態の制動管部21a,21b、圧電素子31a,31b、端部管部41a,41bと同様に構成され得る。
【0073】
図11に示すように、振動流路装置8aは、第1の実施形態の振動流路装置1の振動管部11に代えて振動管部18aを備える。
【0074】
振動管部18aには2か所のくぼみ181aが形成されており、くぼみ181aの位置では管108aの内径が他の部分よりも小さくなっている。くぼみ181aは管108aの周方向に沿って全周に形成されている。2か所のくぼみ181aの間の管路内には内蔵棒58aが収容されている。内蔵棒58aの外径は流路に沿って一定であり、くぼみ181aの位置の管路の内径よりも大きく形成されており、内蔵棒58aは2か所のくぼみ181aの間においてのみ動くことができる。なお、内蔵棒58aを管路内に固定して動かないようにしてもよい。また、2か所のくぼみ181aの間に複数の内蔵棒を備えてもよく、くぼみ181aが流路に沿って3か所以上に形成され、流路に沿って異なる位置に複数、備えられてもよい。この実施形態では、内蔵棒58aは石英ガラスで形成されているが、別の材質によって形成されていてもよい。
【0075】
図12に示す振動流路装置8bは第8実施形態の振動流路装置8の変形例である。振動管部18b内の内蔵棒58bの構成のみが
図11の内蔵棒58aと異なる。内蔵棒58bは表面に複数の凹凸が形成されている。内蔵棒58bの凸部または凹部における外径はくぼみ181bの位置の管路の内径よりも大きく形成されており、内蔵棒58bは2か所のくぼみ181bの間においてのみ動くことができる。
【0076】
以上の通り、振動流路装置8aは、振動管部18aの管路内に収容される撹拌子として内蔵棒58aを備え、振動管部18aは、第1の内径を有する少なくとも2つの第1の部分としてくぼみ181aと、第2の内径を有する第2の部分として2つのくぼみ181aの間に配置される部分を含み、第1の内径は第2の内径よりも小さく、内蔵棒58aの外径は第1の内径より大きく、内蔵棒58aは第2の部分において振動管部18aの管路内に収容されている。
【0077】
また、振動流路装置8bは、振動管部18bの管路内に収容される撹拌子として内蔵棒58bを備え、振動管部18bは、第1の内径を有する少なくとも2つの第1の部分としてくぼみ181bと、第2の内径を有する第2の部分として2つのくぼみ181bの間に配置される部分を含み、第1の内径は第2の内径よりも小さく、内蔵棒58bの外径は第1の内径より大きく、内蔵棒58bは第2の部分において振動管部18bの管路内に収容されている。
【0078】
このように、表面に凹凸が形成されていない内蔵棒58aや表面に凹凸のある内蔵棒58bを振動管部18a,18b内に備えることにより、より効果的に流体を攪拌するとともに、管路の軸方向へ動きも作用させ、流体を管路内で輸送することができる。特に、内蔵棒58a,58bが管路内に固定されていない場合、管路の振動や管路内部の流体の動きを受けて内蔵棒58a,58bも動くので、流体の撹拌混合や流体の輸送に効果的である。
【0079】
図13に示す振動流路装置8cは、
図11に示す第8実施形態の振動流路装置8aのさらに別の変形例である。
【0080】
振動流路装置8cは、振動管部18cの管路内に収容される撹拌子として内蔵棒58cを備え、振動管部18cは、第1の内径を有する少なくとも2つの第1の部分としてくぼみ181cと、第2の内径を有する第2の部分として2つのくぼみ181cの間に配置される部分を含み、第1の内径の少なくとも一部は第2の内径よりも小さく、内蔵棒58cの外径は第1の内径の最小値より大きく、内蔵棒58cは第2の部分において振動管部18cの管路内に収容されている。
【0081】
振動流路装置8cでは、振動管部18cのくぼみ181cの形状が
図11,12に示すくぼみ181a,181bと異なる。振動管路18cのくぼみ181cは、振動管部18cにおいて管108aの全周に形成されているのではなく、限定ではなく例えば半周分のみ、または1/4周のみのように、管108aの周方向の一部のみに形成されている。内蔵棒58cは
図11に示す振動流路装置8aの内蔵棒58aと同様の円柱状の形状である。
【0082】
このようにすることにより、振動流路装置8cの管108aが鉛直方向に沿うように振動流路装置8cを配置したときに、内蔵棒58cとくぼみ181cが管108aの流路を閉塞することを防ぐことができる。
【0083】
第8実施形態の振動流路装置8のその他の構成と作用効果は第1実施形態と同様である。
【0084】
<第9実施形態>
図14に示す第9実施形態の振動流路装置9は、
図7に示す第5実施形態の振動流路装置5とは振動管部19の管路内部と制動管部29a,29bの形状が異なる。圧電素子39a,39bは第5実施形態の圧電素子35a,35bと同様に構成され得る。
【0085】
第9実施形態の振動流路装置9では、管部109の端部が制動管部29a,29bの内部に埋め込まれておらず、制動管部29a,29bの上面に露出している。振動管部19は蓋部191aと底部191bの2つの部材から構成されており、管路内部において底部191bの表面には複数の凹凸が形成されている。さらに、振動管部19の内部には内蔵棒59が収容されている。
【0086】
このように、管流路の内表面上に凹凸を形成し、さらに、内蔵棒59を備えることにより、より効果的に流体を攪拌するとともに、管路の軸方向へ動きも作用させ、流体を管路内で輸送することができる。
【0087】
第9実施形態の振動流路装置9のその他の構成と作用効果は第5実施形態と同様である。
【0088】
本発明を要約すると以下の通りである。
【0089】
(1)振動管部と、流路方向に沿って振動管部に隣接する制動管部とを含む、流体を流すための管部と、振動管部を振動させる圧電素子とを備え、制動管部は、振動管部から制動管部に向かう振動波の少なくとも一部を振動管部に向かって反射させるように構成されている、振動流路装置。
【0090】
(2)振動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZVであり、制動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZBであり、ZB>ZVである、(1)に記載の振動流路装置。
【0091】
(3)制動管部の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法は、振動管部の管路軸に垂直な方向に沿った外径寸法より大きい、(1)または(2)に記載の振動流路装置。
【0092】
(4)制動管部の管路軸に沿った単位長さあたりの質量は、振動管部の管路軸に沿った単位長さあたりの質量より大きい、(1)から(3)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0093】
(5)振動管部は、第1の振動管部と、第1の振動管部とは異なる材質によって形成されて流路方向に沿って第1の振動管部に隣接する第2の振動管部とを含み、第1の振動部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV1であり、第2の振動部を構成する材質の音響インピーダンスの平均はZV2であり、第2の振動管部は流路方向に沿って制動管部に隣接し、制動管部を構成する材質の音響インピーダンスの平均は音響インピーダンスZBであり、ZV1>ZV2、かつ、ZB>ZV2である、(1)から(4)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0094】
(6)第2の振動管部を構成する材質は高分子材料である、(5)に記載の振動流路装置。
【0095】
(7)制動管部は、流路方向に沿って振動管部の一方の端部に隣接する第1の制動管部と、流路方向に沿って振動管部の他方の端部に隣接する第2の制動管部とを含む、(1)から(6)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0096】
(8)第1の圧電素子と第2の圧電素子を備え、第1の圧電素子は、振動管部の管路軸に対して垂直な第1の方向に屈曲振動を励起させるように配置され、第2の圧電素子は、振動管部の管路軸に対して垂直な、第1の方向とは異なる第2の方向に屈曲運動を励起させるように配置されている、(1)から(7)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0097】
(9)振動管部を構成する材質はガラスである、(1)から(8)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0098】
(10)振動管部は、連続的または断続的な凹凸形状が形成された内壁面を有する、(1)から(9)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【0099】
(11)第1の方向と第2の方向は略直交しており、第1の圧電素子に印加される交流電圧の周波数と第2の圧電素子に印加される交流電圧の周波数は異なっている、(8)に記載の振動流路装置。
【0100】
(12)振動管部の管路内に収容される撹拌子を備え、振動管部は、第1の内径を有する少なくとも2つの第1の部分と、2つの第1の部分の間に配置されて第2の内径を有する第2の部分とを含み、第1の内径の少なくとも一部は第2の内径よりも小さく、撹拌子の外径は第1の内径の最小値より大きく、撹拌子は第2の部分において振動管部の管路内に収容されている、(1)から(11)までのいずれか1つに記載の振動流路装置。
【実施例】
【0101】
本発明に係る振動流路装置の具体的な製造例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0102】
<実施例1>
図1に示す第1実施形態の振動流路装置1において、管部101の管路を形成する管101aとして全長200mm、外径φ3mm、内径φ1.5mmの石英ガラス製の円筒を用いた。制動管部21a,21bの制動部材としてはステンレス鋼SUS303製の外径φ15mm、長さ15mmの円筒を用いた。この制動部材の内腔に管101aを挿入し、接着固定して制動管部21a,21bを構成した。2つの制動管部21a,21bで挟まれた管101a、すなわち、振動管部11の長さは150mmであった。端部管部41a,41bの長さはそれぞれ10mmであった。端部管部41a,41bは管101aの両端によって形成されてるので、管101aと同じく石英ガラス製、外径φ3mm、内径φ1.5mmであった。圧電素子31a,31bとしては一般に圧電ブザー用と普及している圧電素子を用いた。圧電セラミックスの外径φ20mm、厚み0.24mm、金属(黄銅)板の外径φ27mm、厚み0.3mmとし、振動管部11上に接着固定した。
【0103】
振動管部11の材質、すなわち、管101aの材質である石英ガラスの音響インピーダンス(ZV)は12.7×106kg/(m2・s)であった。なお、振動部材11は単一の材質(石英ガラス)によって構成されているので、材質の音響インピーダンスの平均は材質の音響インピーダンスに等しい。制動管部21a,21bは、管路を構成する管部101aの材質(石英ガラス)の音響インピーダンスは12.7×106kg/(m2・s)であり、制動部材を構成する材質のステンレス鋼SUS303の音響インピーダンスは38.8×106kg/(m2・s)であり、これらの音響インピーダンスの平均(ZB)は25.75×106kg/(m2・s)であった。
【0104】
図15の振動変位図(有限要素法FEM解析による変位図)で示すように、振動管部11は管路軸を中心に回転運動する。これを受け、振動管部11内の流体も回転運動し攪拌される。振動管部11に比べると、制動管部21a,21bはほとんど動かず、ゆえに制動管部21a,21bから外側に突き出ている端部管部41a,41bもほとんど動かないことがわかった。従って、端部管部41a,41bを安定な保持部として利用することができる。
【0105】
このように振動が特定の領域に閉じ込められる理由は、振動管部11と制動管部21a,21bの間で振動波の反射が働いていることによる。このFEMにおいて、振動管部11、制動管部21a,21b、ともに機械的減衰の因子は入れていない。したがって、振動管部11と比較して制動管部21a,21bと端部管部41a,41bがほとんど動かないことは、振動エネルギーを熱エネルギーとして吸収する、一般のダンパーの効果によるものではない。異なる構成材の界面で振動波が反射し、伝達振動が小さくなる、という現象である。
【0106】
また、このFEM解析では、解析モデルの外周すべてを自由端条件としている。拘束条件は入れていない。したがって、振動が静止している部位は、拘束によるものでなく、このような適切な構成においては、自由振動状態であっても静止領域をつくりだせることを示している。
【0107】
<実施例2>
図3に示す第2実施形態の振動流路装置2において、管部102の全長は200mmとした。主振動管部121としては外径φ3mm、内径φ1.5mm、長さ150mmの石英ガラス製の円筒を用いた。副振動管部122a,122bとしては、それぞれ、有機ケイ素化合物(シリコーン樹脂)、外径φ4mm、内径φ3mm、長さ15mm(このうち、一方の端部から5mmは主振動管部121と重なり、他方の端部から5mmは制動管部23,24と重なる。)の管を用いた。制動管部22a,22bとしては石英ガラス製、外径φ3mm、内径φ1.5mm、長さ20mmの円筒を用いた。圧電素子31a,32bとしては一般に圧電ブザー用と普及している圧電素子を用いた。圧電セラミックスの外径φ20mm、厚み0.24mm、金属(黄銅)板の外径φ27mm、厚み0.3mmとし、主振動管部121上に接着固定した。
【0108】
音響あるいは振動波の反射現象は、素材の音響インピーダンスの異なる境界で生じ、音響インピーダンスの差が大きいほど反射しやすいことは知られている。これはそれを積極的に利用した例である。
【0109】
主振動管部121を構成する材質である石英ガラスの音響インピーダンス(ZV1)は12.7×106kg/(m2・s)であった。副振動管部122a,122bを構成する材質であるシリコーン樹脂の音響インピーダンス(ZV2)は0.05×106kg/(m2・s)であった。制動管部22a,22bを構成する材質である石英ガラスの音響インピーダンスは12.7×106kg/(m2・s)であった。なお、主振動部材121、副振動部材122a,122b、制動管部22a,22bはそれぞれ単一の材質によって構成されているので、材質の音響インピーダンスの平均は材質の音響インピーダンスに等しい。
【0110】
図16の振動変位図(有限要素法FEM解析による変位図)で示すように、副振動管122a,122bの素材の音響インピーダンスを小さくすることで、副振動管122a,122bと制動管部22a,22bとの間で反射を生じやすくさせた。副振動管122a,122bは、主振動管部121の振動を受けてともに振動(ここでは回転運動を)した。しかし、反射作用により、制動管部22a,22bはあまり動かなかった。ゆえに制動管部22a,22bを安定な保持部として用いることができる。
【0111】
副振動管部122a,122bを構成する材質としては、シリコーン樹脂の他に、限定ではなく、PTFE(音響インピーダンスは1.0×106kg/(m2・s))を用いることもできる。また、制動管部22a,22bを構成する材質として、石英ガラスの代わりにステンレス鋼SUS303(音響インピーダンスは38.8×106kg/(m2・s))を用いることができる。主振動管部121の材質として石英ガラス、副振動管部122a,122bの材質としてシリコーン樹脂、制動管部22a,22bの材質としてステンレス鋼SUS303を用いることによって、副振動管部122a,122bと制動管部22a,22bとの間でより効果的に振動波を反射させ、振動の漏洩を防ぐことができる。
【0112】
<実施例3>
図4に示す第3実施形態の振動流路装置3において、管部103の管路を形成する管103aとして全長210mm、外径φ3mm、内径φ1.5mmの石英ガラス製の円筒を用いた。制動管部23a,23bの制動部材としてはそれぞれステンレス鋼SUS303製の外径φ15mm、長さ20mmの円筒を用いた。この制動部材の内腔に管103aを挿入し、接着固定して制動管部23a,23bを構成した。2つの制動管部23a,23bで挟まれた管103a、すなわち、振動管部13の長さは150mmであった。端部管部43a,43bの長さはそれぞれ10mmであった。端部管部43a,43bは管103aの両端によって形成されてるので、管103aと同じく石英ガラス製、外径φ3mm、内径φ1.5mmであった。圧電素子33としては一般に圧電ブザー用と普及している圧電素子を用いた。圧電セラミックスの外径φ20mm、厚み0.24mm、金属(黄銅)板の外径φ27mm、厚み0.3mmとし、振動管部13上に接着固定した。各材質の音響インピーダンスは実施例1~2と同じであった。
【0113】
図17の振動変位図(有限要素法FEM解析による変位図)で示すように、単一の圧電素子33しか備えない場合でも、振動管部13は管路軸を中心に振動した。ただし、実施例1,2のように回転運動ではなく、圧電素子33の駆動方向の往復運動であった。これを受け、振動管部13内の流体も往復運動し攪拌される。振動管部13に比べると、制動管部23a,23bはほとんど動かず、ゆえに制動管部23a,23bから外側に突き出ている端部管部43a,43bもほとんど動かなかった。従って、端部管部43a,43bを安定な保持部として利用することができる。
【0114】
<実施例4>
図5,6に示す第4実施形態の振動流路装置4において、管部104の管路を形成する管104aとして全長210mm、外径φ3mm、内径φ1.5mmの石英ガラス製の円筒を用いた。制動管部24a,24bの制動部材としてはそれぞれステンレス鋼SUS303製の外径φ15mm、長さ20mmの円筒を用いた。この制動部材の内腔に管104aを挿入し、接着固定して制動管部24a,24bを構成した。制動管部24a,24bで挟まれた管104a、すなわち、振動管部14の長さは150mmであった。端部管部44a,44bの長さはそれぞれ10mmであった。端部管部44a,44bは管104aの両端によって形成されてるので、石英ガラス製、外径φ3mm、内径φ1.5mmであった。圧電素子34a,34bはそれぞれ、圧電セラミックスの長さ30mm、幅3mm、厚み0.4mmとし、振動管部14上に接着固定した。各材質の音響インピーダンスは実施例1~2と同じであった。
【0115】
<実施例5>
図7に示す第5実施形態の振動流路装置において、管部105の管路を形成する管105aとして全長130mm、□3×3mm、内穴□2×2mmの石英ガラス製の角筒を用いた。制動管部25a,25bの制動部材としてはそれぞれ□12×12mm、長さ25mmの石英ガラス製の角筒を用いた。この制動部材の内腔に管105aを挿入し、接着固定して制動管部25a,25bを構成した。2つの制動管部25a,25bで挟まれた管105a、すなわち、振動管部15の長さは80mmであった。圧電素子35a,35bはそれぞれ、圧電セラミックスの長さ30mm、幅3mm、厚み0.5mmとし、振動管部15上に接着固定した。各材質の音響インピーダンスは実施例1~2と同じであった。
【0116】
図18の振動変位図(有限要素法FEM解析による変位図)で示すように、管部105の管路を形成する管105aが円筒ではなく角筒であっても、振動管部15は管路軸を中心に振動した。これを受け、振動管部15内の流体も往復運動し攪拌される。振動管部15に比べると、制動管部25a,25bはほとんど動かない。従って、制動管部25a,25bを安定な保持部として利用することができる。
【0117】
<実施例6>
図8に示す第6実施形態の振動流路装置6において、管部106の全長は200mmとした。主振動管部161としては外径φ3.5mm、内径φ1.5mm、凹凸部(らせん部)長さ90mmの石英ガラス製の円筒を用いた。副振動管部162a,162bとしては、それぞれ、有機ケイ素化合物(シリコーン樹脂)、外径φ4mm、内径φ3mm、長さ15mm(このうち、一方の端部から5mmは主振動管部161と重なり、他方の端部から5mmは制動管部26a,26bと重なる。)の管を用いた。制動管部26a,26bとしては石英ガラス製、外径φ3mm、内径φ1.5mm、長さ20mmの円筒を用いた。圧電素子36a,36bとしては一般に圧電ブザー用と普及している圧電素子を用いた。圧電セラミックスの外径φ20mm、厚み0.24mm、金属(黄銅)板の外径φ27mm、厚み0.3mmとし、主振動管部161上に接着固定した。各材質の音響インピーダンスは実施例1~2と同じであった。
【0118】
主振動管部161は石英ガラス、副振動管部162a,162bは有機ケイ素化合物であるシリコーン樹脂、制動管部26a,26bは石英ガラスとした。主振動管部161はらせん形状に形成されている。これによって、流体に対して、攪拌とともに、管路の軸方向へ動きにも、送流あるいは反送流として作用させることができる。主振動管部161はこの実施例は螺旋形状であるが、内壁にジグザグ形状、連続的あるいは断続的な凹凸形状を形成させればよく、外側から窪み加工してもよい。
【0119】
<実施例7>
図9に示す第7実施形態の振動流路装置7において、管部107の管路を形成する管107aとして全長200mm、外径φ3mm、内径φ1.5mmのPTFE製の円筒を用いた。制動管部27a,27bの制動部材としては圧電素子37a,37bの接合部材371a,371bの黄銅製の外径φ15mm、長さ15mmのU字形状の部材を用いた。接着剤を塗布したこのU字形状の部分に管107aを挿入し、加圧接着して制動管部27a,27bを構成した。制動管部27a,27bで挟まれた管107a、すなわち、振動管部17の長さは150mmであった。端部管部47a,47bの長さはそれぞれ10mmであった。端部管部47a,47bは管107aの両端によって形成されてるので、管107aと同じくPTFE製、外径φ3mm、内径φ1.5mmであった。圧電素子37a,37bとしては一般に圧電ブザー用と普及している圧電素子を用いた。圧電セラミックスの外径φ20mm、厚み0.24mm、金属(黄銅)板の外径φ27mm、厚み0.3mmとし、接合部材371a,371b上に接着固定した。
【0120】
振動管部17の材質、すなわち、管107aの材質であるPTFEの音響インピーダンス(ZV)は1.0×106kg/(m2・s)であった。なお、振動管部17は単一の材質(PTFE)によって構成されているので、材質の音響インピーダンスの平均は材質の音響インピーダンスに等しい。制動管部27a,27bは、管路を構成する管部107aの材質(PTFE)の音響インピーダンスは1.0×106kg/(m2・s)であり、圧電素子37a,37bの接合部371a,371bを構成する材質の黄銅の音響インピーダンスは26.7×106kg/(m2・s)であり、これらの音響インピーダンスの平均(ZB)は13.85×106kg/(m2・s)であった。
【0121】
図19の振動変位図(有限要素法FEM解析による変位図)で示すように、振動管部17は管路軸を中心に回転運動する。これを受け、振動管部17内の流体も回転運動し攪拌される。振動管部17に比べると、制動管部27a,27bはほとんど動かず、ゆえに制動管部27a,27bから外側に突き出ている端部管部47a,47bもほとんど動かないことがわかった。従って、端部管部47a,47bを安定な保持部として利用することができる。
【0122】
このように振動が特定の領域に閉じ込められる理由は、振動管部と制動管部の間で振動波の反射が働いていることによる。このFEMにおいて、振動管部、制動管部ともに機械的減衰の因子は入れていない。したがって、振動管部と比較して制動管部と端部管部がほとんど動かないことは、振動エネルギーを熱エネルギーとして吸収する、一般のダンパーの効果によるものではない。異なる構成材の界面で振動波が反射し、伝達振動が小さくなる、という現象である。
【0123】
また、このFEM解析では、解析モデルの外周すべてを自由端条件としている。拘束条件は入れていない。したがって、振動が静止している部位は、拘束によるものでなく、このような適切な構成においては、自由振動状態であっても静止領域をつくりだせることを示している。
【0124】
<比較例>
図20に示すように、比較例の振動流路装置90は、管部91に第1の圧電素子93aと第2の圧電素子93bが配置されている。管部91には制動管部が備えられていない。
【0125】
図21に示すように、管部91は全体が管路軸を中心に回転運動し、大きく変位し、安定的に保持できる部位が存在しなかった。
【0126】
<実施例1と従来例(
図20)の実験比較>
実施例1で、管路端部を強固に保持した実験では、圧電素子に10Vp-p(3,930Hz)の印加で流体(φ150μmの石英ガラスビーズ)の移動を確認した。比較例、すなわち反射作用を考慮した制動管部を備えない
図20の構造で、管路端部を強固に保持した場合、20Vp-p(4,170Hz)の印加でも流体が移動することはなかった。
【0127】
<圧電素子に印加する交流電圧の周波数>
実施例1の第1実施形態の振動流路装置1において、一例として、第1の圧電素子31aに印加される交流電圧の周波数を3,500Hz、第2の圧電素子31bに印加される交流電圧の周波数を3,510Hzとした。周波数差は10Hz、すなわち、第1の圧電素子31aに印加される交流電圧の周波数の約0.3%の周波数差で第2の圧電素子31bに交流電圧を印加した。印加電圧は、両圧電素子とも15Vp-pにした。内部の流体には良好な正逆回転の繰り返し現象が得られ、効果的な攪拌を実現できた。また、周波数差を変化させて同様に実験し、0.01%~10%の周波数差で効果的な攪拌現象が得られることが確認された。
【0128】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。
【符号の説明】
【0129】
1,2,3,4,5,6,7,8a,8b,8c,9:振動流路装置
11,12,13,14,15,16,17,18a,18b,18c,19:振動管部
121,161:主振動管部
122a,122b,162a,162b:副振動管部
21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24b,25a,25b,26a,26b,27a,27b,28a,28b,29a,29b:制動管部
31a,31b,32a,32b,33,34a,34b,35a,35b,36a,36b,37a,37b,38a,38b,39a,39b:圧電素子
58a,58b,58c,59:内蔵棒
181a,181b,181c:くぼみ
【要約】
簡単な構成で、管路を効果的に振動させ、かつ、管路を安定に支持することが可能な振動流路装置を提供する。振動流路装置1は、振動管部10と、流路方向に沿って振動管部10に隣接する制動管部21,22とを含む、流体を流すための管部101と、振動管部10を振動させる圧電素子31,32とを備え、制動管部21,22は、振動管部10から制動管部21,22に向かう振動波の少なくとも一部を振動管部10に向かって反射させるように構成されている。