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特許7494435未分化リンパ腫キナーゼの多環状阻害剤の結晶形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】未分化リンパ腫キナーゼの多環状阻害剤の結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20240528BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
A61P35/00
A61K31/506
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022543598
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2021072088
(87)【国際公開番号】W WO2021143819
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】202010051060.1
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520281446
【氏名又は名称】シュエンジュウ バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、グオフイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハイボ
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530139(JP,A)
【文献】特表2013-545812(JP,A)
【文献】Organic Process Research & Development,2009, Vol.13, No.6,p.1241-1253
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,丸善株式会社,2008年,pp. 17-23,37-40,45-51,57-65,ISBN 978-4-621-07991-1
【文献】社団法人日本化学会編,第4版実験化学講座1基本操作I,第184-189頁,丸善株式会社発行,1996年04月05日
【文献】芦澤 一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol. 18, No. 10,pp. 81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 405/14
A61P 35/00
A61K 31/506
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、11.9±0.2°、14.0±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°に特徴ピークを有することを特徴とする、式(1)で表される化合物の結晶B。
【化1】
【請求項2】
結晶Bが、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、さらに、12.3±0.2°、15.8±0.2°、18.5±0.2°、19.0±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°に特徴ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶B。
【請求項3】
結晶Bが、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、さらに、8.6±0.2°、10.2±0.2°、20.7±0.2°、21.9±0.2°、24.0±0.2°、24.3±0.2°に特徴ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の結晶B。
【請求項4】
示差走査熱量計分析図が190℃~205℃の範囲内で吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の結晶B。
【請求項5】
熱重量分析により測定したところ、250℃以下では重量減少がないことを特徴とする請求項1に記載の結晶B。
【請求項6】
式(1)で表される化合物を有機溶媒と混合し、撹拌し、第1の温度に加熱して、水を添加し、引き続き撹拌しながら第2の温度に加熱し、10℃~30℃に勾配降温し、ろ過、乾燥して結晶Bを得る工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶Bの製造方法。
【請求項7】
前記第1の温度は、40℃~80℃から選ばれ、前記第2の温度は、40℃~80℃から選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記勾配は、1~15℃/hから選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒は、下記溶媒のうちの1種又は2種以上の溶媒の間の何れかの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
(1)脂肪族アルコール、脂環式アルコール系溶媒及び芳香族アルコール系溶媒から選ばれるアルコール系溶媒
前記脂肪族アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、s-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールから選ばれ、前記脂環式アルコール系溶媒が、シクロペンタノール、シクロペンタンメタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール又はシクロヘキサンエタノールから選ばれ、前記芳香族アルコール系溶媒が、フェニルメタノール、フェニルエタノール又はフェニルプロパノールから選ばれる。
(2)アセトニトリル又はプロピオニトリルから選ばれるニトリル系溶媒
(3)脂肪族ケトン系溶媒及び環状ケトン系溶媒から選ばれるケトン系溶媒
前記脂肪族ケトン系溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、アセトン、ブタノン、ペンタノン、アセチルアセトン、メチルブチルケトン又はメチルイソブチルケトンから選ばれ、前記環状ケトン系溶媒が、シクロプロパノン、シクロヘキサノン、イソホロン又はN-メチルピロリドンから選ばれる。
【請求項10】
有機溶媒と水との体積比は、1:6~6:1から選ばれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載の結晶B、任意の1種又は2種以上の第2の治療活性剤と、を含有し、1種又は2種以上の薬学的担体及び/又は希釈剤をさらに含有し、前記第2の治療活性剤が、代謝拮抗剤、成長因子阻害剤、抗体、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン、アルキル化剤、金属白金類、免疫抑制類、プリンアナログ、抗生物質類、副腎皮質阻害剤類又は酵素阻害剤から選ばれる、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれかに記載の結晶形態Bあるいは請求項11に記載の医薬組成物を含む、ALK介在性疾患の治療及び/又は予防剤であって、前記ALK介在性疾患は、癌である、剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物分野に属し、未分化リンパ腫キナーゼの多環状阻害剤の結晶形態、前記結晶形態の製造方法、前記結晶形態を含む医薬組成物、ならびに前記結晶形態又は医薬組成物の、ALK介在性疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)で表される化合物である5-クロロ-N-(2-(イソプロピルスルホニル)フェニル)-N-(7-メチル-8-(ピペリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン-5-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン(本明細書では式(1)で表される化合物と略称し、特許出願PCT/CN2015/090712に記載されている)は、未分化リンパ腫キナーゼ阻害剤であり、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic lymphoma kinase,ALK)は、受容体型チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、自己リン酸化によって下流側のタンパク質を動員することができ、さらに特定の遺伝子を発現させることで細胞の代謝及び成長を調節する。未分化リンパ腫キナーゼは、最初に未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymphoma,ALCL)の中で見い出され、その後、非小細胞性肺癌(NSCLC)の中でも高いレベルで発現することが見い出された。
【0003】
【化1】
【0004】
ALCL/NSCLCにおけるALKの発現異常には、様々な染色体転座に起因するものがある。このような染色体転座に対応した融合タンパク質が生成されることもある。これらの融合タンパク質の遺伝子の分析より、いずれも細胞内キナーゼドメインをコードするALK遺伝子の3’末端遺伝子配列を含み、また、ALKに融合される遺伝子フラグメントはいずれもプロモーターエレメントを含み、自己二量体化を介在する配列をコードすることから、ALKキナーゼ活性を有する融合タンパク質の発現量が高まり、また過活性化を生じ、細胞の悪性形質転換を引き起こすことがわかっている。従って、ALKの細胞内キナーゼドメインの活性及びそれに対応するシグナル変換経路は、ALCLの発達に関与する重要な分子機構である。ALKに加えて、ROS1は、肺腺癌において研究されているもう1つのホットスポットの標的遺伝子である。ROS1は受容体型チロシンキナーゼファミリーのメンバーである。ROS1はNSCLCの発症率の約1.7%に関与する。ROS1及び未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、キナーゼドメインにおいて49%の相同性を有し、ATP結合部位において77%の同一性を有しており、これらのことからALKキナーゼ阻害剤を用いて、ROS1が再配列した陽性患者のNSCLCを治療することができる。
【0005】
そのため、ALK/ROS1に対する小分子阻害剤の開発によって、下流側のタンパク質におけるALK/ROS1遺伝子の突然変異の作用を効果的に減少させ、それにより腫瘍細胞の浸潤及び増殖等に影響を与え、最終的には、腫瘍細胞の成長に影響を与え、抗腫瘍作用が発揮され得る。
【0006】
結晶形態の研究は、薬物の研究開発過程において重要な作用を発揮しており、同一薬物の異なる結晶形態が、溶解度、安定性、バイオアベイラビリティ等の点で顕著な差異があり、薬物の品質をより良く制御して、調製、生産、運送などの場面での要求を満足するために、本発明者は、式(1)で表される化合物の結晶形態を研究し、良好な性質を有する結晶形態の発見を期待している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、式(1)で示される未分化リンパ腫キナーゼの多環状阻害剤である5-クロロ-N-(2-(イソプロピルスルホニル)フェニル)-N-(7-メチル-8-(ピペリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン-5-イル)ピリミジン-2,4-ジアミンの結晶形態に関する。本発明は、さらに、前記結晶形態の製造方法、前記結晶形態を含む医薬組成物、ならびに前記結晶形態又は医薬組成物の、ALK介在性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造への使用に関する。
【0008】
本発明は、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、11.9±0.2°、14.0±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°に特徴ピークを有する式(1)で表される化合物の結晶形態Bを提供する。
【0009】
【化2】
【0010】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、上記の特徴ピークを含む上、さらに、12.3±0.2°、15.8±0.2°、18.5±0.2°、19.0±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°に特徴ピークを有する。
【0011】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、上記の特徴ピークを含む上、さらに、8.6±0.2°、10.2±0.2°、20.7±0.2°、21.9±0.2°、24.0±0.2°、24.3±0.2°に特徴ピークを有する。
【0012】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、11.9±0.2°、14.0±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、12.3±0.2°、15.8±0.2°、18.5±0.2°、19.0±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、8.6±0.2°、10.2±0.2°、20.7±0.2°、21.9±0.2°、24.0±0.2°、24.3±0.2°に特徴ピークを有する。
【0013】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、(ほぼ)図1に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0014】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bの示差走査熱量計分析図は、約190℃~205℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bの示差走査熱量計分析図は、197℃±2℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bの示差走査熱量計分析図は、ほぼ図2に示す通りである。
【0015】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、熱重量分析により測定したところ、250℃以下では重量減少がない。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、ほぼ図3に示す熱重量分析図を有する。
【0016】
本発明は、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、4.8±0.2°、9.6±0.2°、12.1±0.2°、12.9±0.2°、14.0±0.2°、15.0±0.2°に特徴ピークを有する式(1)で表される化合物の結晶形態Aを提供する。
【0017】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、上記の特徴ピークを含む上、さらに、7.3±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.7±0.2°、18.0±0.2°、19.0±0.2°、19.5±0.2°に特徴ピークを有する。
【0018】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、上記の特徴ピークを含む上、さらに、9.9±0.2°、13.5±0.2°、18.3±0.2°、19.9±0.2°、20.6±0.2°、21.2±0.2°に特徴ピークを有する。
【0019】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、4.8±0.2°、9.6±0.2°、12.1±0.2°、12.9±0.2°、14.0±0.2°、15.0±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、7.3±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.7±0.2°、18.0±0.2°、19.0±0.2°、19.5±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、9.9±0.2°、13.5±0.2°、18.3±0.2°、19.9±0.2°、20.6±0.2°、21.2±0.2°に特徴ピークを有する。
【0020】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、ほぼ図4に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0021】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aの示差走査熱量計分析図は、約172℃~182℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aの示差走査熱量計分析図は、179℃±2℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aの示差走査熱量計分析図は、ほぼ図5に示す通りである。
【0022】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、熱重量分析により測定したところ、250℃以下では重量減少がない。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、ほぼ図6に示す熱重量分析図を有する。
【0023】
本発明は、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、4.7±0.2°、9.4±0.2°、13.7±0.2°、16.4±0.2°、17.5±0.2°、20.2±0.2°に特徴ピークを有する式(1)で表される化合物の結晶形態Xを提供する。
【0024】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、上記の特徴ピークを含む上、さらに、6.4±0.2°、8.7±0.2°、10.4±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°に特徴ピークを有する。
【0025】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、4.7±0.2°、9.4±0.2°、13.7±0.2°、16.4±0.2°、17.5±0.2°、20.2±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、6.4±0.2°、8.7±0.2°、10.4±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°に特徴ピークを有する。
【0026】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、ほぼ図7に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0027】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xの示差走査熱量計分析図は、約130℃~140℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xの示差走査熱量計分析図は、136℃±2℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xの示差走査熱量計分析図は、ほぼ図8に示す通りである。
【0028】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、熱重量分析により測定したところ、250℃以下では重量減少がない。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、ほぼ図9に示す熱重量分析図を有する。
【0029】
本発明は、Cu-Kα線を使用して角度2θで表される粉末X線回折において、5.4±0.2°、7.4±0.2°、8.4±0.2°、9.8±0.2°、10.8±0.2°、16.7±0.2°に特徴ピークを有する式(1)で表される化合物の結晶形態4を提供する。
【0030】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4は、上記の特徴ピークを含む上、さらに、6.4±0.2°、12.0±0.2°、12.8±0.2°、13.9±0.2°、17.7±0.2°、19.7±0.2°、23.1±0.2°に特徴ピークを有する。
【0031】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4は、5.4±0.2°、7.4±0.2°、8.4±0.2°、9.8±0.2°、10.8±0.2°、16.7±0.2°に特徴ピークを有し、さらに、6.4±0.2°、12.0±0.2°、12.8±0.2°、13.9±0.2°、17.7±0.2°、19.7±0.2°、23.1±0.2°に特徴ピークを有する。
【0032】
幾つかの実施態様において、Cu-Kα線を使用して角度2θ(°)で表される粉末X線回折において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4は、ほぼ図10に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0033】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4の示差走査熱量計分析図は、約125℃~135℃の範囲内で1つの吸熱ピークが現れる。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4の示差走査熱量計分析図は、129℃±2℃の範囲内で吸熱ピークを有する。幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4の示差走査熱量計分析図は、ほぼ図11に示す通りである。例えば、前記式(1)で表される化合物の結晶形態4は、ほぼ図12に示す熱重量分析図を有する。
【0034】
本発明は、下記の工程を含む、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの製造方法をさらに提供する。
式(1)で表される化合物を有機溶媒(溶媒として)と混合し、撹拌し、第1の温度に加熱して、水を添加し、引き続き撹拌しながら第2の温度に加熱し、10℃~30℃に勾配降温し、ろ過、乾燥して前記式(1)で表される化合物の結晶形態Bを得る。幾つかの実施態様において、前記第1の温度は、40℃~80℃から選ばれ、例えば、50℃~70℃、50℃~80℃、60℃~70℃、60℃~80℃、70℃~80℃、65℃~75℃、65℃~70℃、70℃~75℃である。幾つかの実施態様において、前記第1の温度とは、溶液が清澄となるまで加熱する時の温度を指す。幾つかの実施態様において、前記第2の温度は、40℃~80℃から選ばれ、例えば、50℃~70℃、50℃~80℃、60℃~70℃、60℃~80℃、70℃~80℃、65℃~75℃、65℃~70℃、70℃~75℃である。幾つかの実施態様において、前記第2の温度とは、溶液が清澄となるまで加熱する時の温度を指す。
【0035】
幾つかの実施態様において、前記第1の温度と前記第2の温度とが同じである。幾つかの実施態様において、前記第1の温度と前記第2の温度とが異なる。
【0036】
幾つかの実施態様において、前記水は、加熱した水であり、その温度が40℃~80℃から選ばれ、例えば、50℃~70℃、50℃~80℃、60℃~70℃、60℃~80℃、70℃~80℃、65℃~75℃、65℃~70℃、70℃~75℃である。幾つかの実施態様において、前記水の温度を、添加すべき溶液の温度と一致させる。
【0037】
幾つかの実施態様において、前記水は、常温で放置した水であり、その温度が5℃~30℃から選ばれ、例えば、10℃~30℃、15℃~30℃、20℃~30℃、25℃~30℃である。
【0038】
幾つかの実施態様において、降温の勾配が1~15℃/hであり、例えば、2~10℃/h、3~10℃/h、3~9℃/h、3~8℃/h、3~7℃/h、3~6℃/h、3~5℃/h、3~4℃/h、4~10℃/h、4~9℃/h、4~8℃/h、4~7℃/h、4~6℃/h、4~5℃/h、5~10℃/h、5~9℃/h、5~8℃/h、5~7℃/h、5~6℃/h、6~10℃/h、6~9℃/h、6~8℃/h、6~7℃/h、7~10℃/h、7~9℃/h、7~8℃/h、8~10℃/h、8~9℃/h、9~10℃/h、8~13℃/h、7~12℃/h、3~13℃/hである。幾つかの実施態様において、勾配降温について、サンプルの析出状況に応じて異なる温度を選択して降温を行ってもよく、例えば、それぞれ2℃/h、5℃/h、7℃/h、10℃/h、12℃/hを選択して降温を行う。
【0039】
幾つかの実施態様において、例えば15~30℃まで勾配降温し、例えば、15~25℃、20~30℃、25~30℃等である。
【0040】
幾つかの実施態様において、前記方法における撹拌は、機械撹拌又は人工撹拌である。幾つかの実施態様において、撹拌は、機械撹拌である。
【0041】
幾つかの実施態様において、撹拌速度が80~180r/hであり、例えば、100~150r/h、100r/h、110r/h、120r/h、130r/h、140r/h、150r/hである。
【0042】
幾つかの実施態様において、上記製造方法に記載の乾燥は、減圧又は通風により行われてもよく、乾燥温度が60℃以下であり、例えば、30℃~55℃、35℃~50℃である。
【0043】
幾つかの実施態様において、前記方法は、第2の温度に昇温した後に当該結晶形態Bの種結晶を添加して温度を維持しながら撹拌する工程をさらに含み、これにより、結晶形態Bの形成及び析出に有利であり、前記結晶形態Bの種結晶は、本願明細書に記載の種結晶を添加せずに結晶形態Bを製造する方法により製造される。
【0044】
幾つかの実施態様において、前記有機溶媒とは、下記の溶媒のうちの1種又は2種以上(2種を含む)の溶媒の任意の組み合わせを指す。
(1)脂肪族アルコール、脂環式アルコール系溶媒及び芳香族アルコール系溶媒から選ばれるアルコール系溶媒
前記脂肪族アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、s-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールから選ばれ、前記脂環式アルコール系溶媒が、シクロペンタノール、シクロペンタンメタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール又はシクロヘキサンエタノールから選ばれ、前記芳香族アルコール系溶媒が、フェニルメタノール、フェニルエタノール又はフェニルプロパノールから選ばれる。
(2)アセトニトリル又はプロピオニトリルから選ばれるニトリル系溶媒
(3)脂肪族ケトン系溶媒及び環状ケトン系溶媒から選ばれるケトン系溶媒
前記脂肪族ケトン系溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、アセトン、ブタノン、ペンタノン、アセチルアセトン、メチルブチルケトン又はメチルイソブチルケトンから選ばれ、前記環状ケトン系溶媒が、シクロプロパノン、シクロヘキサノン、イソホロン又はN-メチルピロリドンから選ばれる。
【0045】
前記「2種以上の溶媒の任意の組み合わせを指す」とは、上記有機溶媒のうちの2種以上(2種を含む)を一定の割合で混合してなる溶媒を指す。メタノール/エタノール、メタノール/イソプロパノール、メタノール/エタノール/イソプロパノール、メタノール/t-ブタノール、メタノール/シクロペンタノール、メタノール/フェニルメタノール、エタノール/イソプロパノール、エタノール/t-ブタノール等を含むが、これらに限られない。
【0046】
幾つかの実施態様において、前記有機溶媒は、少なくとも水に難溶性の有機溶媒であり、例えば、水と相溶する有機溶媒である。
【0047】
幾つかの実施態様において、有機溶媒と水との体積比が、1:6~6:1から選ばれ、例えば、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、4:5~5:4、1:2、1:1、3:2、3:4、3:5、4:3、4:5、2:3、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:5、6:7、6:10、6:11、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、7:10、7:11、7:12、7:13、8:5、8:7、8:9、8:11、8:13、8:14、8:15、9:5、9:7、9:8、9:10、9:11、9:13、9:14、9:16、9:17である。
【0048】
幾つかの実施態様において、前記アルコール類が、脂肪族アルコール類から選ばれ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールから選ばれ、さらに、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールから選ばれる。
【0049】
幾つかの実施態様において、前記ケトン類が、アセトン、ブタノン、ペンタノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンから選ばれ、さらに、例えば、アセトン、ブタノンから選ばれる。
【0050】
幾つかの実施態様において、前記ニトリル類がアセトニトリルから選ばれる。
【0051】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物と前記有機溶媒との重量比が1:2~1:6であり、例えば、1:2~1:5、1:2~1:4、1:2~1:3、1:3~1:5、1:3~1:4、1:4~1:5、1:2~1:6、1:3~1:6、1:4~1:6、1:5~1:6、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6等である。
【0052】
幾つかの実施態様において、前記式(1)で表される化合物と水との重量比が1:3~1:8であり、例えば、1:3~1:7、1:3~1:6、1:3~1:5、1:3~1:4、1:4~1:5、1:4~1:6、1:4~1:7、1:4~1:8、1:5~1:6、1:5~1:7、1:5~1:8、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8等である。
【0053】
幾つかの実施態様において、前記ろ過は、吸引濾過の方法により行われてもよい。
【0054】
幾つかの実施態様において、前記ろ過は、吸引濾過の方法により行われてもよく、かつ、吸引濾過して得られたろ過ケーキを溶媒で溶離してもよい。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒が有機溶媒(例えばアルコール類、ケトン類、ニトリル類等であってもよい)と水の混合溶媒である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒が有機溶媒(例えばアルコール類、ケトン類、ニトリル類等であってもよい)である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒が水である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がアルコールと水の混合溶媒、水又はアルコール類である。
【0055】
幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がメタノールと水の混合溶媒である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がエタノールと水の混合溶媒である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がプロパノールと水の混合溶媒である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がイソプロパノールと水の混合溶媒である。幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がメタノール、エタノール又はイソプロパノールである。
【0056】
幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がアルコールと水の混合溶媒であり、かつ、アルコールと水との体積比が1:5~5:1であり、例えば、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、4:5~5:4、1:2、1:1、3:2、3:4、3:5、4:3、4:5、2:3、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:5、6:7、6:10、6:11、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、7:10、7:11、7:12、7:13、8:5、8:7、8:9、8:11、8:13、8:14、8:15、9:5、9:7、9:8、9:10、9:11、9:13、9:14、9:16、9:17である。
【0057】
幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がアルコールと水の混合溶媒であり、かつ、アルコールと水との体積比が1:1以上であり、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、3:2、4:3、5:2、5:3、5:4、6:5、7:4、7:5、7:6、8:5、8:7、9:5、9:7、9:8等である。
【0058】
幾つかの実施態様において、溶離に用いられる溶媒がエタノールと水の混合溶媒であり、かつ、エタノールと水との体積比が1:1以上であり、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、3:2、4:3、5:2、5:3、5:4、6:5、7:4、7:5、7:6、8:5、8:7、9:5、9:7、9:8等である。
【0059】
幾つかの実施態様において、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの製造方法は、以下のように表現してもよい。
式(1)で表される化合物を脂肪族アルコール類と混合し、40℃~80℃に加熱し、水を添加し、引き続き40℃~80℃に加熱し、3~8℃/hの勾配で10℃~30℃に降温し、ろ過、乾燥して前記化合物の結晶形態Bを得る。
【0060】
幾つかの実施態様において、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの製造方法は、以下のように表現してもよい。
式(1)で表される化合物をエタノールと混合し、50℃~70℃に加熱し、水を添加し、引き続き50℃~80℃に加熱し、4~7℃/hの勾配で10℃~30℃に降温し、ろ過、乾燥して前記化合物の結晶形態Bを得る。
【0061】
幾つかの実施態様において、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの製造方法は、以下のように表現してもよい。
式(1)で表される化合物をエタノールと混合し、55℃~70℃に加熱し、水を添加し、引き続き60℃~80℃に加熱し、5~7℃/hの勾配で20℃~30℃に降温し、ろ過、乾燥して前記化合物の結晶形態Bを得る。
【0062】
本発明は、式(1)で表される化合物の結晶形態Aの製造方法をさらに提供し、前記方法は以下の工程を含む。
式(1)で表される化合物を有機溶媒と混合し、撹拌し、第1の温度に加熱して、ろ過し、水を添加し、引き続き撹拌しながら第2の温度に加熱し、種結晶Aのスラリーを添加し、勾配1で50℃~55℃に降温し、撹拌し、勾配2で常温に降温し、ろ過、乾燥して前記結晶形態Aを得る。
【0063】
幾つかの実施形態において、前記第1の温度が40℃~80℃、好ましくは60℃~80℃から選ばれ、前記第2の温度が、50℃~80℃、好ましくは60℃~80℃から選ばれる。
【0064】
幾つかの実施形態において、前記勾配1が1~6℃/h、例えば、2~6℃/h、3~6℃/h、4~6℃/h、5~6℃/h、1~5℃/h、2~5℃/h、3~5℃/h、4~5℃/h、3~4℃/hから選ばれる。
【0065】
幾つかの実施形態において、前記勾配2が、1~12℃/hから選ばれ、例えば、2~10℃/h、3~10℃/h、3~9℃/h、3~8℃/h、3~7℃/h、3~6℃/h、3~5℃/h、3~4℃/h、4~10℃/h、4~9℃/h、4~8℃/h、4~7℃/h、4~6℃/h、4~5℃/h、5~10℃/h、5~9℃/h、5~8℃/h、5~7℃/h、5~6℃/h、6~10℃/h、6~9℃/h、6~8℃/h、6~7℃/h、7~10℃/h、7~9℃/h、7~8℃/h、8~10℃/h、8~9℃/h、9~10℃/h、5~12℃/h、6~12℃/h、8~12℃/h、7~12℃/h、9~12℃/h、10~12℃/hである。幾つかの実施態様において、勾配降温については、サンプルの析出状況に応じて異なる温度を選択して降温を行ってもよく、例えば、それぞれ3℃/h、5℃/h、7℃/h、10℃/hを選択して降温を行う。
【0066】
幾つかの実施形態において、前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒から選ばれ、好ましくはメタノール、無水エタノール、アセトンである。
【0067】
幾つかの実施態様において、有機溶媒と水との体積比が、1:6~6:1から選ばれ、例えば、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、4:5~5:4、1:2、1:1、3:2、3:4、3:5、4:3、4:5、2:3、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:5、6:7、6:10、6:11、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、7:10、7:11、7:12、7:13、8:5、8:7、8:9、8:11、8:13、8:14、8:15、9:5、9:7、9:8、9:10、9:11、9:13、9:14、9:16、9:17から選ばれる。
【0068】
本発明は、式(1)で表される化合物の結晶形態Xの製造方法をさらに提供し、前記方法は以下の工程を含む。
式(1)で表される化合物を有機溶媒と混合し、溶解となるまで加熱し、常温に降温し、ろ過、乾燥して前記結晶形態Xを得る。
【0069】
幾つかの実施形態において、例えば40℃~80℃、例えば、60℃~80℃に加熱する。
【0070】
幾つかの実施形態において、前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒から選ばれ、好ましくはメタノール、無水エタノール、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、好ましくはアセトニトリル、プロピオニトリルである。
【0071】
幾つかの実施態様において、有機溶媒と水との体積比が、1:6~6:1から選ばれ、例えば、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、4:5~5:4、1:2、1:1、3:2、3:4、3:5、4:3、4:5、2:3、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:5、6:7、6:10、6:11、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、7:10、7:11、7:12、7:13、8:5、8:7、8:9、8:11、8:13、8:14、8:15、9:5、9:7、9:8、9:10、9:11、9:13、9:14、9:16、9:17である。得られた結晶を分析するために、通常、X線回折結晶分析方法、示差走査熱量法(DSC)、熱重量分析法(TGA)等を用いることができる。
【0072】
粉末X線回折で本発明の結晶形態を測定する時に、測定用機器又は測定条件により、得られたピークに測定誤差が発生する場合があり、誤差範囲内にあるスペクトルピークの結晶も本発明の結晶に含まれる。従って、結晶構造を特定する際に、この誤差を考慮に入れるべきであるため、本願の出願人は、角度2θを特定する際に考慮した誤差範囲が±0.2°内である。また、特定の結晶形態式の異なるサンプルの粉末X線回折(XRPD)のメインピークが同じであるが、サブピークが変化し得る。
【0073】
示差走査熱量(DSC)は、プログラムにより制御され、加熱又は降温し続けることにより、サンプルと不活性参照物(α-Alが常用される)との間のエネルギーの差の温度に従う変化を測定する技術である。DSC曲線の溶融ピークの高さ/吸熱ピークの高さが、サンプル製造及び機器の幾何形状に関連する複数の要素に依存し、また、ピークの位置に対して、試験のディテールによる影響が比較的に小さい。従って、幾つかの実施態様において、本発明に記載の結晶形態は、特徴ピーク位置を有するDSCスペクトルがほぼ本発明の図面において提供するDSCスペクトルに示す通りであることを特徴とする。同時に、DSCスペクトルは、試験誤差を有してもよく、異なる機器及び異なるサンプル同士は、DSCスペクトルのピーク位置及びピーク値が少しの差がある可能性があるので、前記DSC吸熱ピークのピーク位置又はピーク値の数値は、絶対的なものではない。この試験に用いられる機器の状況に応じて、幾つかの実施態様において、溶融ピークに±2℃の誤差許容範囲がある。
【0074】
本発明は、前述した式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4、及び1種又は2種以上の第2の治療剤を含有する医薬組成物をさらに提供し、前記医薬組成物は、1種又は2種以上の薬学的担体及び/又は希釈剤をさらに含んでもよい。
【0075】
前記第2の治療剤は、代謝拮抗剤、成長因子阻害剤、抗体、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン、アルキル化剤、金属白金類、免疫抑制類、プリンアナログ、抗生物質類、副腎皮質阻害剤類又は酵素阻害剤を含むが、これらに限られない。
【0076】
本発明は、前述した式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4、及び1種又は2種以上の薬学的担体及び/又は希釈剤を含有する薬物製剤をさらに提供する。前記薬物製剤は、臨床又は薬学的に許容される任意の形態である。
【0077】
本発明の幾つかの実施形態において、上記薬物製剤は、経口、非経口、経腸、又は肺内投与により治療を必要とする患者又は被験者に投与することができる。経口で投与するとき、医薬組成物を従来の固形製剤、例えば錠剤、カプセル、ピル、及び顆粒に調製することができ、又は経口液体製剤、例えば経口溶液、経口懸濁液、及びシロップに調製することができる。医薬組成物を経口製剤に調製するとき、好適な充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤等を添加することができる。非経口で投与するとき、医薬組成物を注射液、注射用の滅菌粉末及び注射用の濃縮溶液を含む注射剤に調製することができる。医薬組成物を注射剤に調製するとき、薬学分野における従来の方法を使用することができる。注射剤を調製するとき、添加剤を添加しなくてもよく、又は好適な添加剤を薬物の特性に応じて添加する。経腸投与するとき、医薬組成物を坐剤等に調製することができる。肺内投与するとき、医薬組成物を吸入剤又は噴霧剤等に調製することができる。
【0078】
本発明は、ALK介在性疾患を治療及び/又は予防する方法をさらに提供し、当該方法は、被験者に有効量の5-クロロ-N-(2-(イソプロピルスルホニル)フェニル)-N-(7-メチル-8-(ピペリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン-5-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン(式(1)で表される化合物)の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4を投与するステップを含む。
【0079】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患が癌であり、例えば、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、卵巣癌、腹膜癌、膵癌、乳癌、頭頚部癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、肝癌、腎癌、食道腺癌、食道扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、卵管癌、上皮内癌、リンパ腫、神経線維腫症、骨癌、皮膚癌、結腸癌、精巣癌、非小細胞性肺癌、消化管間質腫瘍、肥満細胞腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、グリオーマ、星細胞腫、神経芽細胞腫、及び肉腫からなる群から選択される。
【0080】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患は、非癌関連疾患であり、例えば、良性の皮膚過形成及び前立腺過形成から選択される。
【0081】
本発明は、式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4の、被験者のALK介在性疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造への使用をさらに提供する。
【0082】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患が癌であり、例えば、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、卵巣癌、腹膜癌、膵癌、乳癌、頭頚部癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、肝癌、腎癌、食道腺癌、食道扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、卵管癌、上皮内癌、リンパ腫、神経線維腫症、骨癌、皮膚癌、結腸癌、精巣癌、非小細胞性肺癌、消化管間質腫瘍、肥満細胞腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、グリオーマ、星細胞腫、神経芽細胞腫、及び肉腫からなる群から選択される。
【0083】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患は、非癌関連疾患であり、例えば、良性の皮膚過形成及び前立腺過形成から選択される。
【0084】
本発明は、被験者のALK介在性疾患を治療及び/又は予防するための式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4をさらに提供する。
【0085】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患が癌であり、例えば、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、卵巣癌、腹膜癌、膵癌、乳癌、頭頚部癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、肝癌、腎癌、食道腺癌、食道扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、卵管癌、上皮内癌、リンパ腫、神経線維腫症、骨癌、皮膚癌、結腸癌、精巣癌、非小細胞性肺癌、消化管間質腫瘍、肥満細胞腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、グリオーマ、星細胞腫、神経芽細胞腫、及び肉腫からなる群から選択される。
【0086】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患は、非癌関連疾患であり、例えば、良性の皮膚過形成及び前立腺過形成から選択される。
【0087】
本発明は、式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4と1種又は2種以上のその他の薬物との組成物をさらに提供し、これらのその他の薬物を式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、結晶形態X又は結晶形態4と同時又は相次いで投与して、被験者のALK介在性疾患を治療及び/又は予防することができる。
【0088】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患が癌であり、例えば、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、卵巣癌、腹膜癌、膵癌、乳癌、頭頚部癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、肝癌、腎癌、食道腺癌、食道扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系腫瘍、前立腺癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、卵管癌、上皮内癌、リンパ腫、神経線維腫症、骨癌、皮膚癌、結腸癌、精巣癌、非小細胞性肺癌、消化管間質腫瘍、肥満細胞腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、グリオーマ、星細胞腫、神経芽細胞腫、及び肉腫からなる群から選択される。
【0089】
1つの実施態様において、前記ALK介在性疾患は、非癌関連疾患であり、例えば、良性の皮膚過形成及び前立腺過形成から選択される。
【0090】
本発明において、被験者は、任意の動物であってもよく、好ましくは哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類、霊長類である。中でも、被験者は人であることが特に好ましい。
【0091】
本発明が提供する結晶形態に溶媒を含有してもよく、幾つかの場合、化合物の結晶形態に含まれる溶媒は、結晶形態式の内部安定性に有利であり、一般的な溶媒は、水及び有機溶媒を含み、例えば、前述したアルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒である。一定量の水又はその他の溶媒を含有する結晶形態は、本発明に記載の結晶形態のいずれかの特徴を有すれば、本発明の範囲内に含まれると見なされるべきである。
【0092】
本公開において、別途説明がない限り、本明細書で使用される科学及び技術用語は、当業者により通常に理解される意味を有する。また、本発明をより良く理解するために、以下、一部の用語の定義及び解釈を提供する。
【0093】
本明細書に記載の「有効量」とは、所望の治療又は予防効果を実現するのに十分な量、例えば、治療すべき疾患に関連する症状の軽減を実現する量を指す。
【0094】
本明細書に記載の「治療」とは、対象となる疾患状態又は病症を軽減又は解消することを指す。もし被験者に対して本明細書に記載の方法に従って治療量の前記結晶形態又はその医薬組成物が投与され、当該被験者の1種又は2種以上の適応症及び症状に対して、低下又は改善が観察可能及び/又は検出可能であれば、被験者が成功に「治療」されたこととする。さらに、前記疾患状態又は病症の治療は、完治の場合だけではなく、完治ではないが幾つかの生物学又は薬学的に関連する結果が見られた場合をも含むと理解されるべきである。
【0095】
本明細書に記載の「約」は、一般的な意味を有する。幾つかの実施態様において、数値に関連する場合、数値±10%、又は±5%、又は±2%、又は±1%、又は±0.5%、又は±0.1%と理解され得る。他の実施態様では、精確な値を示すために「約」という語を省略している。
【0096】
本明細書に記載の「ほぼ図に示す通りである」ことは、「図と実質的に同じである」と読み替えられてもよく、粉末X線回折パターン、示差走査熱量計分析図又は熱重量分析図における少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%のピークが、当該図に示されていることを指す。
【0097】
本発明の式(1)で表される化合物の結晶形態A及び結晶形態Bの主な利点は、以下の通りである。
(1)本発明が提供する化合物である5-クロロ-N-(2-(イソプロピルスルホニル)フェニル)-N-(7-メチル-8-(ピペリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン-5-イル)ピリミジン-2,4-ジアミンの結晶形態A及び結晶形態Bの製造方法は、操作が簡単であり、工業化生産に適する。
(2)本発明が提供する結晶形態A及び結晶形態Bは、良好な性状を有し、検出、調製、運送及び貯蔵しやすい。
(3)本発明が提供する結晶形態A及び結晶形態Bは、純度が高く、残存溶媒が少なく、溶解度が高く、安定性が良く、品質を制御しやすく、流動性が良く、調製しやすい。
(4)本発明が提供する結晶形態A及び結晶形態Bは、優れたバイオアベイラビリティを有する。
(5)本発明が提供する結晶形態A及び結晶形態Bは、ALK、ROS1キナーゼのいずれに対しても良好な阻害作用を有し、ALK介在性疾患の治療及び/又は予防に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1図1は、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの粉末X線回折パターンであり、縦座標が回折強度(intensity)を表し、横座標が回折角度(2θ)を表す。
図2図2は、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの示差走査熱量(DSC)サーモグラムであり、縦座標が熱流(heat flow)(単位:W/g)を表し、横座標が温度(temperature)(単位:℃)を表す。
図3図3は、式(1)で表される化合物の結晶形態Bの熱重量分析(TG)曲線及び微分熱重量分析(DTG)曲線であり、横座標が温度(℃)であり、左側の縦座標が重量(%)を表し、右側の縦座標が重量減少速度(%)と温度の関係を表す。
図4図4は、式(1)で表される化合物の結晶形態Aの粉末X線回折パターンであり、縦座標が回折強度(intensity)を表し、横座標が回折角度(2θ)を表す。
図5図5は、式(1)で表される化合物の結晶形態Aの示差走査熱量(DSC)サーモグラムであり、縦座標が熱流(heat flow)(単位:W/g)を表し、横座標が温度(temperature)(単位:℃)を表す。
図6図6は、式(1)で表される化合物の結晶形態Aの熱重量分析(TG)曲線及び微分熱重量分析(DTG)曲線であり、横座標が温度(℃)であり、左側の縦座標が重量(%)を表し、右側の縦座標が重量減少速度(%)と温度の関係を表す。
図7図7は、式(1)で表される化合物の結晶形態Xの粉末X線回折パターンであり、縦座標が回折強度(intensity)を表し、横座標が回折角度(2θ)を表す。
図8図8は、式(1)で表される化合物の結晶形態Xの示差走査熱量(DSC)サーモグラムであり、縦座標が熱流(heat flow)(単位:W/g)を表し、横座標が温度(temperature)(単位:℃)を表す。
図9図9は、式(1)で表される化合物の結晶形態Xの熱重量分析(TG)曲線及び微分熱重量分析(DTG)曲線であり、横座標が温度(℃)を表し、左側の縦座標が重量(%)を表し、右側の縦座標が重量減少速度(%)と温度の関係を表す。
図10図10は、式(1)で表される化合物の結晶形態4の粉末X線回折パターンであり、縦座標が回折強度(intensity)を表し、横座標が回折角度(2θ)を表す。
図11図11は、式(1)で表される化合物の結晶形態4の示差走査熱量(DSC)サーモグラムであり、縦座標が熱流(heat flow)(単位:W/g)を表し、横座標が温度(temperature)(単位:℃)を表す。
図12図12は、式(1)で表される化合物の結晶形態4の熱重量分析(TG)曲線及び微分熱重量分析(DTG)曲線であり、横座標が温度(℃)を表し、左側の縦座標が重量(%)を表し、右側の縦座標が重量減少速度(%)と温度の関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、実施例の形の具体的な実施形態により、本発明の上記内容をさらに詳しく説明する。しかし、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例のみに制限されると理解されるべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現する技術の全ても本発明の範囲に属する。
【0100】
下記の略記は、以下の定義を表す。
DMSO:ジメチルスルホシキド
NMP:N-メチルピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
IPAc:酢酸イソプロピル
【0101】
実施例1 式(1)で表される化合物の結晶形態Bの製造
方法1:250mlの三つ口フラスコに、式(1)で表される化合物 10.0gと、無水エタノール 40gとを添加し、回転速度150r/minで機械撹拌し、系が懸濁液となった。油浴で62℃に昇温し、系が清澄となった。引き続き内部温度が68℃(第1の温度)となるまで昇温した時に、精製水(50g)を滴下し、滴下終了後、系が混濁となり、内部温度が59℃となり、引き続き撹拌しながら加熱した。内部温度が65℃となったとき、系が再び清澄となった。内部温度が75℃(第2の温度)となったときに降温を開始し、その後、5~7℃/hで降温し、系が26℃に降温し、吸引濾過して、10mlの混合溶媒(無水エタノール 5ml、水 5ml)でろ過ケーキを溶離した。ろ過ケーキを紙箱に移送して自然乾燥し、結晶形態Bサンプルを得た。
【0102】
その他の方法:下記の表に従って反応条件を調整し、式(1)で表される化合物の結晶形態Bを得ることもできる。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例2 式(1)で表される化合物の結晶形態Aの製造
250mlの三つ口フラスコに、式(1)で表される化合物(15.00g)を添加し、無水エタノール 60.00gを添加して、撹拌しながら内部温度が66℃(第1の温度)となるまで昇温して原料が清澄となり、内部温度75℃で熱時ろ過し(0.45μmの有機フィルター)、70~75℃の温度を0.5h維持した後に精製水(57ml)を5min滴下し、滴下終了後、内部温度が62℃となり、撹拌しながら72℃(第2の温度)に昇温し、70~72℃の温度を0.5h維持し、種結晶Aのスラリーを添加し、内部温度が71℃となったときに、徐々に降温し始め、3h以内に55℃に降温し、55~57℃に維持しながら18h撹拌し、3hで24℃に降温し、20~25℃を維持しながら2h撹拌し、ろ過し、30mlの精製水でろ過ケーキを溶離し、50℃で18h真空乾燥し、結晶形態A製品 13.46gを得、収率が89.73%であった。
【0105】
種結晶Aのスラリー製造:結晶形態Aを取って、150mg秤取し、研磨し、3.0mlの精製水と、3.75mlの無水エタノールとを添加して、超音波で1min程度均一に振とうした。
【0106】
実施例3 式(1)で表される化合物の結晶形態Xの製造
式(I)で表される化合物 35gを取ってアセトニトリル(350mL)に溶解し、70℃に加熱し、溶解し、25℃に降温し、固体が析出し、ろ過、真空乾燥して、白色の固形の結晶形態Xを得た。
【0107】
実施例4 式(1)で表される化合物の結晶形態4の製造
100mlの三つ口フラスコに式(1)で表される化合物の結晶形態B 3gと、無水エタノール 15mlとを添加し、回転速度100r/minで清澄となるまで機械撹拌した。油浴で72℃に昇温し、温度を維持しながら撹拌し、系に水(7.5ml)を滴下し、滴下終了後、系が混濁となり、引き続き撹拌しながら加熱し、内部温度が69℃となり、清澄となった。5℃/2hで降温した。内部温度が64℃となったとき、混濁がない。内部温度が34℃となったとき、系が混濁となり、撹拌して結晶を析出した。吸引濾過し、ろ過ケーキを収集した。ろ過ケーキを紙箱に移送して自然乾燥させて結晶形態4のサンプルを得た。
【0108】
当該結晶形態のDSCより、当該結晶形態の融点が123℃にあり、その後の昇温過程において結晶形態が変換し、融点ピーク値が197.7℃の結晶形態Bへ変換したことがわかった。TGA特徴付け結果より、当該結晶形態は、100℃で約3%の重量減少があり、100℃乾燥した後、測定した当該サンプルの水分が2%に低減したことがわかり、HNMRより、CHCHOHの含有量が極めて低いため、重量減少が吸着水であると推定した。
【0109】
結晶形態4の結晶形態Bへの変換:
200mgの結晶形態4のサンプルを取って、25mlの一つ口フラスコに放置し、油浴に入れて直接に190℃(油浴温度)に昇温し、固体粉末が溶融し、塊状固体を形成した。冷却後に、固体を取ってXRPD検出を行い、その結果、結晶形態Bであった。実施例1~4で挙げられた方法により製造された結晶形態に対して、粉末X線回折測定、示差走査熱量法測定及び熱重量分析を行った。
【0110】
粉末X線回折測定
本発明の結晶構造は、本願に開示されている図面で描かれた粉末X線回折パターンと全く同じ粉末X線回折パターンの結晶構造に制限されず、図面に開示されているものとほぼ同じ粉末X線回折パターンの任意の結晶構造も本発明の範囲内に含まれる。
【0111】
粉末X線回折測定の条件:
X線反射パラメータ:Cu、Kα
入射スリット:0.6mm
発散スリット:8mm
走査モード:連続
走査範囲:3.0~45.0度
サンプリングステップ幅:0.02度
ステップ毎の走査時間:19.8s
検出器角度:2.0度
【0112】
実施例1で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Bの粉末X線回折パターンを図1に示し、当該結晶形態は、回折角度2θ(°)8.6±0.2°、10.2±0.2°、11.9±0.2°、12.3±0.2°、14.0±0.2°、15.2±0.2°、15.8±0.2°、17.2±0.2°、17.5±0.2°、18.5±0.2°、19.0±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°、20.7±0.2°、21.5±0.2°、21.9±0.2°、24.0±0.2°、24.3±0.2°ピークを有する。
【0113】
実施例2で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Aの粉末X線回折パターンを図4に示し、当該結晶形態は、回折角度2θ(°)4.8±0.2°、7.3±0.2°、9.6±0.2°、9.9±0.2°、12.1±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、14.0±0.2°、15.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.7±0.2°、18.0±0.2°、18.3±0.2°、19.0±0.2°、19.5±0.2°、19.9±0.2°、20.6±0.2°、21.2±0.2°にピークを有する。
【0114】
実施例3で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Xの粉末X線回折パターンを図7に示し、当該結晶形態は、回折角度2θ(°)4.7±0.2°、6.4±0.2°、8.7±0.2°、9.4±0.2°、10.4±0.2°、13.7±0.2°、16.4±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°、20.2±0.2°にピークを有する。
【0115】
実施例4で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態4の粉末X線回折パターンを図10に示し、当該結晶形態は、回折角度2θ(°)5.4±0.2°、6.4±0.2°、7.4±0.2°、8.4±0.2°、9.8±0.2°、10.8±0.2°、12.0±0.2°、12.8±0.2°、13.9±0.2°、16.7±0.2°、17.7±0.2°、19.7±0.2°、23.1±0.2°にピークを有する。
【0116】
示差走査熱量法
示差走査熱量法(DSC)によって、式(1)で表される化合物の結晶形態の固体熱挙動を研究した。
測定条件:窒素ガスを用いて50ml/minでパージし、25℃~230℃間で10℃/minの加熱速度でデータを収集し、吸熱ピークが下方へ向かう場合に作図した。
【0117】
実施例1で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、197℃±2℃の範囲内で吸熱ピークが現れ、その示差走査熱量計分析図が図2に示す通りである。
【0118】
実施例2で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、179℃±2℃の範囲内で吸熱ピークが現れ、その示差走査熱量計分析図が図5に示す通りである。
【0119】
実施例3で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、136℃±2℃の範囲内で吸熱ピークが現れ、その示差走査熱量計分析図が図8に示す通りである。
【0120】
実施例4で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態4は、125℃~135℃の範囲内で1つの吸熱ピークが現れ、約195℃~200℃の範囲内で1つの吸熱ピークが現れ、その示差走査熱量計分析図が図11に示す通りである。
【0121】
DSC測定において、測定パラメータ及び加熱速度に応じて、実際に測定した開始温度及び最高温度は、ある程度の可変性を有する。
【0122】
熱重量分析
測定条件:窒素ガスを用いて60ml/minでパージし、室温~400℃間で10℃/minの加熱速度でデータを収集した。
【0123】
実施例1で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、250℃未満の範囲内で重量減少がなく、そのTG曲線を図3に示す。
【0124】
実施例2で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、250℃未満の範囲内で重量減少がなく、そのTG曲線を図6に示す。
【0125】
実施例3で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態Xは、250℃未満の範囲内で重量減少がなく、そのTG曲線を図9に示す。
【0126】
実施例4で製造された式(1)で表される化合物の結晶形態4は、250℃未満の範囲内で重量減少が2.991%であり、そのTG曲線を図12に示す。
【0127】
実施例5 式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B及び式(1)で表される化合物のアモルファスの溶解度についての考察
【0128】
1.試料
式(1)で表される化合物のアモルファスは、CN201580052631.0の方法を参照して製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、実施例1における方法1に従って製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、実施例2の方法に従って製造された。
【0129】
2.試験方法
式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B、式(1)で表される化合物のアモルファスを、それぞれ適量に秤取し、それぞれpH1.0、4.5、6.8及び7.4の緩衝塩溶液(緩衝塩溶液の調製については「ヨーロッパ薬局方」参照)を添加し、25℃の条件で24h振とうし、液体高速クロマトグラフィー-外部標準法で定量し、溶解度を測定した。
【0130】
3.試験結果
式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B及びアモルファスの異なるpH条件下の溶解度(mg/mL)を表1に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
3.結果分析
低pHの環境下、結晶形態Bの溶解度がアモルファス及び結晶形態Aより大きい。
【0133】
実施例6 式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B及び式(1)で表される化合物のアモルファスの安定性についての考察
【0134】
1.試料
式(1)で表される化合物のアモルファスは、CN201580052631.0の方法を参照して製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、実施例1における方法1に従って製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、実施例2の方法に従って製造された。
【0135】
2.考察条件
2.1 式(1)で表される化合物の結晶形態Bの考察条件:
105℃の条件下、5日開口放置し、1日目及び5日目でサンプリングして検出した。
60℃の条件下、10日開口放置し、5日目及び10日目でサンプリングして検出した。
25℃RH92.5%の条件下、10日開口放置し、5日目及び10日目でサンプリングして検出した。
光照射条件下、開口及び閉口(ポリエチレン袋+複合膜袋)を用い、照度要求に達したときにサンプリングして検出した。
40℃RH75%の条件下、1ヵ月開口放置し、10日目及び1ヵ月でサンプリングして検出した。
【0136】
2.2 式(1)で表される化合物の結晶形態Aの考察条件:
105℃の条件下、5日開口放置し、1日目及び5日目でサンプリングして検出した。
60℃の条件下、10日開口放置し、5日目及び10日目でサンプリングして検出した。
25℃RH92.5%の条件下、10日開口放置し、5日目及び10日目でサンプリングして検出した。
光照射条件下、開口し、照度要求に達したときにサンプリングして検出した。
40℃RH75%の条件下、10日開口放置し、5日目及び10日目でサンプリングして検出した。
【0137】
2.3 式(1)で表される化合物のアモルファスの考察条件:
60℃の条件下、10日開口放置し、10日目でサンプリングして検出した。25℃RH92.5%の条件下、10日開口放置し、10日目でサンプリングして検出した。
光照射条件下、開口及び閉口(ポリエチレン袋+複合膜袋)を採用し、照度要求に達したときにサンプリングして検出した。
照度要求:ICH Q1B 安定性試験:新医薬品原薬、および製剤の光安定性試験。
【0138】
3.測定方法
関連物質の測定:「中国薬典」2015年版四部通則 0512 液体高速クロマトグラフィーに従って測定した。
水分測定:「中国薬典」2015年版四部通則 0832 水分測定法 第一法(フィッシャー法)2 電量滴定法に従って測定した。
XRD測定:「中国薬典」2015年版四部通則 0451 X線回折法-第二法 粉末X線回折法に従って測定した。
【0139】
4.試験結果
式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B及びアモルファスの安定性データを表2~表5に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
5.試験結論
式(1)で表される化合物の結晶形態A及び結晶形態Bを、105℃の条件下、5日放置し、60℃、25℃RH92.5%の条件下、10日放置し、光照射、閉口条件下で照度要求に達するまで放置し、及び、40℃RH75%の条件下、1ヵ月放置し、サンプル性状、水分、関連物質、XRDのいずれも明らかに変化しなかった。また、式(1)で表される化合物のアモルファスを、60℃で10日放置し、関連物質が1.78%に増加し、高湿条件下、水分が6.9%に増加し、光照射、開口条件下で、照度要求に達するまで放置し、関連物質が10.19%に増加した。式(1)で表される化合物のアモルファスは、高温、高湿及び光照射条件下で不安定であるのに対し、式(1)で表される化合物の結晶形態A及び結晶形態Bは、上記条件下で安定であり、薬品の製造、運送及び貯蔵に有利であり、さらに薬物使用の有効性及び安全性に有利であることがわかった。
【0145】
実施例7 式(1)で表される化合物の結晶形態A、結晶形態B及び式(1)で表される化合物のアモルファスの吸湿性についての考察
【0146】
1.試料
式(1)で表される化合物のアモルファスは、CN201580052631.0の方法を参照して製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Bは、実施例1における方法1に従って製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態Aは、実施例2の方法に従って製造された。
【0147】
2.測定方法
試料を取って、中国薬典2015年版四部通則 9103 薬物吸湿性試験指導原則に従って測定を行った。
【0148】
3.試験結果
【0149】
【表7】
【0150】
上記試験結果から、式(1)で表される化合物のアモルファスと比べて、式(1)で表される化合物の結晶形態A及び結晶形態Bは吸湿性がないか又はほとんどなく、明らかに優れていることがわかった。
【0151】
実施例8 式(1)で表される化合物の結晶形態Bの流動性試験考察
1.試料
式(1)で表される化合物のアモルファスは、CN201580052631.0の方法を参照して製造された。
式(1)で表される化合物の結晶形態A及び結晶形態Bは、それぞれ実施例2、実施例1における方法1に従って製造された。
【0152】
2.原料処理
ユニバーサル粉砕機を採用して式(1)で表される化合物のアモルファス、結晶形態A及び結晶形態Bを処理した。
【0153】
3.試験結果及び結論
【0154】
【表8】
【0155】
【表9】
【0156】
結晶形態の流動性は、安息角及びカール指数で特徴付けられてもよく、一般的に、安息角及びカール指数が小さいほど、流動性が良くなると考えられ、表7及び表8の試験結果から見れば、結晶形態Bの流動性が良く、かつ、粉砕後に静電気現象がなく、結晶形態Aも、粉砕後に明らかな静電気現象がなく、これに対し、式(1)で表される化合物のアモルファスは、粉砕後にひどい静電気現象が発生し、称取しにくく、式(1)で表される化合物の結晶形態Bがより良く製剤しやすいことがわかった。
【0157】
以上の説明は、本発明の保護範囲を制限するものではなく、本発明の例示的な実施形態であるに過ぎず、本発明の保護範囲は、添付する請求項により決められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12