(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】アンカーステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20240528BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240528BHJP
【FI】
A61F2/04
A61F2/82
(21)【出願番号】P 2018234244
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 偉師
(72)【発明者】
【氏名】大塚 渉
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-545453(JP,A)
【文献】特表2017-513652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0143713(US,A1)
【文献】国際公開第2017/154025(WO,A2)
【文献】特開2010-188117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0193175(US,A1)
【文献】特開2003-325674(JP,A)
【文献】特表2004-531356(JP,A)
【文献】国際公開第2018/170064(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/093112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の筒状体と、
該筒状体の長尺方向において間隔を空けて設けられた2つのフランジ部と、
少なくとも前記筒状体を構成する樹脂膜と、を備えて、
近接する生体器官のそれぞれに設けられた挿通穴に前記筒状体が通されて、前記2つのフランジ部が係合することにより、前記生体器官を連結するアンカーステントであって、
前記2つのフランジ部のそれぞれには、前記筒状体の内部空間と連通する
フランジ部内開孔が形成されており、
前記2つのフランジ部のうち少なくとも一方のフランジ部には、前記筒状体の周回方向の少なくとも一部に連続して前記筒状体の長尺方向に延出する延出部が設けられており、
前記アンカーステントの少なくとも一方の端部は、前記延出部で終端しており、
前記筒状体及び前記延出部は、ワイヤが絡み合って形成されたメッシュ構造によって構成されており、
前記延出部
には、前記
フランジ部内開孔と外部とを連通する
延出部内開孔が形成されており
、
前記延出部は、前記一方のフランジ部のみに設けられているか、
又は、前記一方と他方の両方のフランジ部に設けられており、
前記一方と前記他方の両方のフランジ部に前記延出部が設けられている場合に
は、前記筒状体の長尺方向において、前記一方のフランジ部に設けられている一方の延出
部は、前記他方のフランジ部に設けられている他方の延出
部よりも
長い長さで外側
に延出しており、
前記一方のフランジ部は、前記延出部よりも径方向に大きく形成されており、
前記延出部の前記ワイヤの本数は、前記筒状体を構成する前記ワイヤの本数よりも少なく、
前記延出部は、前記筒状体よりも曲げ剛性が低
く、
前記延出部は、前記フランジ部内開孔の半径寸法よりも長い寸法で延在していることを特徴とするアンカーステント。
【請求項2】
前記筒状体及び前記延出部は、隣接する前記ワイヤが絡み合う絡み部を有し、
前記延出部における前記ワイヤの前記絡み部は、前記筒状体における前記ワイヤの前記絡み部よりも疎に配置されている請求項1に記載のアンカーステント。
【請求項3】
長尺の筒状体と、
該筒状体の長尺方向において間隔を空けて設けられた2つのフランジ部と、
少なくとも前記筒状体を構成する樹脂膜と、を備えて、
近接する生体器官のそれぞれに設けられた挿通穴に前記筒状体が通されて、前記2つのフランジ部が係合することにより、前記生体器官を連結するアンカーステントであって、
前記2つのフランジ部のそれぞれには、前記筒状体の内部空間と連通する
フランジ部内開孔が形成されており、
前記2つのフランジ部のうち少なくとも一方のフランジ部には、前記筒状体の周回方向の少なくとも一部に連続して前記筒状体の長尺方向に延出する延出部が設けられており、
前記アンカーステントの少なくとも一方の端部は、前記延出部で終端しており、
前記筒状体及び前記延出部は、ワイヤが絡み合って形成されたメッシュ構造によって構成されており、隣接する前記ワイヤが絡み合う絡み部を有し、
前記延出部
には、前記
フランジ部内開孔と外部とを連通する
延出部内開孔が形成されており
、
前記延出部は、前記一方のフランジ部のみに設けられているか、
又は、前記一方と他方の両方のフランジ部に設けられており、
前記一方と前記他方の両方のフランジ部に前記延出部が設けられている場合に
は、前記筒状体の長尺方向において、前記一方のフランジ部に設けられている一方の延出
部は、前記他方のフランジ部に設けられている他方の延出
部よりも
長い長さで外側
に延出しており、
前記一方のフランジ部は、前記延出部よりも径方向に大きく形成されており、
前記延出部は、前記筒状体を構成するワイヤの編み方とは異なる編み方で形成されており、
前記延出部における前記ワイヤの前記絡み部は、前記筒状体における前記ワイヤの前記絡み部よりも疎に配置されており、
前記延出部は、前記筒状体よりも曲げ剛性が低
く、
前記延出部は、前記フランジ部内開孔の半径寸法よりも長い寸法で延在していることを特徴とするアンカーステント。
【請求項4】
当該アンカーステントの長尺方向において、前記一方の延出部は、前記一方のフランジ部よりも長い寸法で延在している請求項1から3のいずれか一項に記載のアンカーステント。
【請求項5】
前記延出部内開孔の内径寸法は、前記内部空間の内径寸法及び前記フランジ部内開孔の内径寸法と同一である請求項1から4のいずれか一項に記載のアンカーステント。
【請求項6】
前記延出部は、前記筒状体の長尺方向において、前記外部に向かうにつれて拡径している形状のフレア部を少なくとも一部に有する請求項1から
5のいずれか一項に記載のアンカーステント。
【請求項7】
前記延出部は、前記筒状体の長尺方向において、前記外部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部を少なくとも一部に有する請求項1から
6のいずれか一項に記載のアンカーステント。
【請求項8】
前記延出部は、前記筒状体の長尺方向に延在する直筒部を少なくとも一部に有する請求項
6又は
7に記載のアンカーステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体器官同士を連結するアンカーステントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、胆石、腫瘍、炎症等により胆管や膵管等が閉塞した場合に、胆汁や膵液を体外に排出する胆管ドレナージや膵管ドレナージが行われている。さらに、腫瘍による狭窄等によって、内視鏡を用いたカテーテルによるファーター乳頭へのアクセスが困難である場合に、複数の生体器官(臓器間)を連結して胆汁や膵液を通すバイパスを形成するために、アンカーステントが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、臓器間を連結しながら、その移動(マイグレーション)を抑制可能なアンカーステント(同文献には、バイパス用ステントと記載。)の開示がある。
具体的には、特許文献1に開示されたアンカーステントは、細長い筒状の本体部と、本体部の両端部に設けられ、弾性を有する線状の部材により形成されたフッキング部と、備える。そして、フッキング部の先端部が管腔臓器の内壁に当接することによって、アンカーステントの移動を抑制できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたアンカーステントは、フッキング部が線状に形成されているため、食べ物等の流動物がフッキング部をすり抜けることが可能であり、本体部への逆流(ドレナージ方向に対して逆方向の流れ)を好適に抑制することができなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、流動物の逆流を抑制することが可能なアンカーステントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンカーステントは、長尺の筒状体と、該筒状体の長尺方向において間隔を空けて設けられた2つのフランジ部と、少なくとも前記筒状体を構成する樹脂膜と、を備えて、近接する生体器官のそれぞれに設けられた挿通穴に前記筒状体が通されて、前記2つのフランジ部が係合することにより、前記生体器官を連結するアンカーステントであって、前記2つのフランジ部のそれぞれには、前記筒状体の内部空間と連通するフランジ部内開孔が形成されており、前記2つのフランジ部のうち少なくとも一方のフランジ部には、前記筒状体の周回方向の少なくとも一部に連続して前記筒状体の長尺方向に延出する延出部が設けられており、前記アンカーステントの少なくとも一方の端部は、前記延出部で終端しており、前記筒状体及び前記延出部は、ワイヤが絡み合って形成されたメッシュ構造によって構成されており、前記延出部は、前記一方のフランジ部のみに設けられているか、又は、前記一方と他方の両方のフランジ部に設けられており、前記一方と前記他方の両方のフランジ部に前記延出部が設けられている場合には、前記筒状体の長尺方向において、前記一方のフランジ部に設けられている一方の延出部は、前記他方のフランジ部に設けられている他方の前記延出部よりも長い長さで外側に延出しており、前記一方のフランジ部は、前記延出部よりも径方向に大きく形成されており、前記延出部の前記ワイヤの本数は、前記筒状体を構成する前記ワイヤの本数よりも少なく、前記延出部は、前記筒状体よりも曲げ剛性が低く、前記延出部は、前記フランジ部内開孔の半径寸法よりも長い寸法で延在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を備える本発明のアンカーステントは、外部から他方のフランジ部を通過して一方のフランジ部側に向かう流動物の流れを許容しつつ、外部から一方のフランジ部の開孔に流入しようとする流動物の流れ(逆流)を延出部により抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【
図2】アンカーステントが連結する生体器官を示す説明図である。
【
図3】第2実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【
図4】第3実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【
図5】第4実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【
図6】第5実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【
図7】第6実施形態に係るアンカーステントを示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るアンカーステントについて、図面を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0010】
<第1実施形態>
<概要>
まず本発明のアンカーステントの概要について、第1実施形態に係るアンカーステント1を例に、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るアンカーステント1を示す模式的な側面図、
図2は、アンカーステント1が連結する生体器官(臓器)を示す説明図である。なお、
図2は、アンカーステント1によって連結可能な生体器官の例を示すものであり、複数のアンカーステント1が同時に使用されることを説明するものではない。また、
図2においては、アンカーステント1のフランジ部1b、1baを省略して示している。
【0011】
本実施形態に係るアンカーステント1は、長尺の筒状体1aと、筒状体1aの長尺方向において間隔を空けて設けられた2つのフランジ部1b、1baと、少なくとも筒状体1aを構成する樹脂膜1cと、を備える。近接する生体器官(例えば胆嚢5と十二指腸7)のそれぞれに設けられた挿通穴5a、7aに筒状体1aが通される。アンカーステント1は、挿通穴5a、7aに筒状体1aが通された状態で、2つのフランジ部1b、1baが生体器官(例えば胆嚢5の内壁と十二指腸7の内壁)に係合することにより、生体器官(例えば胆嚢5と十二指腸7)を連結するものである。
2つのフランジ部1b、1baのそれぞれには、筒状体1aの内部空間と連通する開孔1fが形成されており、本実施形態においては、2つのフランジ部1b、1baのうち、一方のフランジ部1bに延出部1dが設けられている。
延出部1dは、筒状体1aの周回方向の少なくとも一部に連続して筒状体1aの長尺方向に延出しており、開孔1fと外部とを連通するように(延出部1dの開孔1gが)形成されている。本実施形態に係る延出部1dは、一方のフランジ部1bのみに設けられているが、他方のフランジ部1baに延出部1dが設けられている場合には、他方のフランジ部1baに設けられている他方の延出部よりも筒状体1aの長尺方向の外側に長く延出していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、外部から他方のフランジ部1baを通過して一方のフランジ部1b側に向かう流動物の流れを許容しつつ、外部から一方のフランジ部1bの開孔1fに流入しようとする流動物の流れ(逆流)を、延出部1dにより抑制することができる。
【0013】
より具体的には、延出部1dが延出していることにより、フランジ部1bの開孔1fに繋がる延出部1dの開孔1gを、生体器官の内壁及び内壁に係合するフランジ部1bから離間させることができる。このため、生体器官の内壁及び内壁に係合するフランジ部1bに沿って流れる流動物が、開孔1gを介して開孔1fに流入することを防止することがきる。
特に、延出部1dを流動物の下流側に向けるように配設することで、延出部1dの側面に当接する流動物を開孔1gから離れる方向に受け流すことができるため、より好適に逆流を防ぐことができる。
【0014】
アンカーステント1は、
図2に示すように、腫瘍T等により、不図示のファーター乳頭への内視鏡を介した不図示のカテーテルのアクセスが困難である場合に、複数の生体器官(臓器間)を連結して胆汁や膵液を通すバイパスを形成するためのものである。
具体的には、アンカーステント1は、近接する生体器官である、胃2と肝臓3、胃2と膵管6、胆管4と十二指腸7、又は胆嚢5と十二指腸7のそれぞれに設けられた挿通穴2a、3a、4a、5a、6a、7aに筒状体1aが通されて、これらの生体器官を連結するものである。上記の流動物の逆流とは、胃2や十二指腸7から肝臓3、胆管4、胆嚢5又は膵管6に食べ物等の消化物(流動物)が流れ込むことである。
【0015】
アンカーステント1は、フランジ部1baから延出部1dへと胆汁又は膵液を流すように、各生体器官を連結するものである。
延出部1dは、逆流防止機能を有すればよく、全周回に亘って形成されているものに限定されず、例えば、スリットが形成されていることにより、複数の短冊状に形成されているものであってもよい。
【0016】
なお、フランジ部及び延出部に形成された「開孔」は、筒状体の内腔が延出して形成されるものに限定されない。
つまり、「開孔」は、流動物の流通を可能とするように筒状体の内腔に連通していればよい。具体的には、フランジ部や延出部が筒状体の内腔を塞ぐように設けられていても、塞ぐ部分がメッシュ状のワイヤによって構成されていることにより、流動物を流通させることを可能とするワイヤの目開き部分も「開孔」に含まれるものとする。
また、上記の「挿通穴」は、貫通孔であっても、有底の穴であってもよい。挿通穴が有底の穴である場合には、アンカーステントは、生体器官の組織の有底の穴に端部を挿し込まれて、例えば、当該組織から滲み出す組織液を近接する生体器官に通すものとして機能する。
【0017】
<構成>
次に、
図1を参照して、アンカーステント1の構成の詳細について説明する。アンカーステント1は、筒状体1aと、筒状体1aの両端部にある2つのフランジ部1b、1baと、一方のフランジ部1bから筒状体1aの長尺方向の外側に向けて延出する延出部1dと、を有する。
例えば、アンカーステント1は、レーザカットされた円筒状のメッシュを、フランジ部1b、1baを形成するように変形させた上で、熱処理を施して形状を維持させるようにして形成されるものである。
【0018】
その他、アンカーステント1は、ニチノール等の形状記憶特性を有する金属ワイヤを編み込み、熱処理を施して形状を保持させるようにして形成されるものであってもよい。
このような金属ワイヤの編み込みによるものであれば、筒状体1aと、フランジ部1b、1baと、を一体的、かつ連続的に形成することも可能であり、より形状保持性の優れたアンカーステント1を形成することが可能となる。
【0019】
本実施形態に係るアンカーステント1の筒状体1a、2つのフランジ部1b、1ba及び延出部1dは、一例としてシリコン製の樹脂膜1cを含んで構成されている。そして、胆汁又は膵液が、内部空間1eと開孔1f、1gとをスムーズに流れるように、内部空間1eと開孔1f、1gの内径は同一の内径(略同一を含むものであり、半径r)で形成されている。
【0020】
例えば、メッシュ(ワイヤ)を溶融樹脂に浸して、樹脂膜1cを形成した場合には、メッシュ(ワイヤ)を覆う部分とこれを覆わない部分とで、筒状体1aの厚み、及びフランジ部1b、1baの厚みが均一ではなくなることがある。このような場合において、上記の「内部空間1eと開孔1f、1gの内径は同一の内径」とは、メッシュ(ワイヤ)を覆う部分同士又はこれを覆わない部分同士で比較した場合に同一であることを意味する。
換言すると、アンカーステント1の軸線を含む任意の断面で、筒状体1aと、フランジ部1b、1baと、の間において、メッシュ(ワイヤ)を覆う複数部位の軸線側を結んだ仮想線分又はこれを覆わない部分を結んだ仮想線分が連続するように形成されている。
【0021】
延出部1dは、開孔1fの半径寸法よりも長く延在していると好適である。具体的には、延出部1dは、
図1において、開孔1fの半径rよりも長い長さL1で延在していると好適である。この長さL1は、本実施形態においては
図1に示すように、延出部1dのうち、フランジ部1bに接続される内縁から端面にある内縁までの内側面に沿った長さ(筒状体1aの軸線方向の長さ)である。
このように、延出部1dが、開孔1fの半径rよりも長く延在していることで、延出部1dが縮径方向に撓んだときに、開孔1fを封止することが可能となり、流動物の逆流を抑制することができる。
なお、本実施形態に係るフランジ部1b、1baは、角張った形状で模式的に示しているが、丸みを帯びて角を有しない面取り形状であると、生体内に留置する上で好適であることは言うまでもなく、他の実施形態についても同様である。
【0022】
<第2実施形態>
次に、
図3を参照して、第2実施形態に係るアンカーステント11の構成の詳細について説明する。
図3は、第2実施形態に係るアンカーステント11を示す模式的な側面図である。
アンカーステント11の特徴的な構成である延出部11dは、筒状体1aの長尺方向において、外部に向かうにつれて拡径している形状のフレア部11hを少なくとも一部に有する。フレア部11hは、筒状体1aと同じ厚さで形成されており、フレア部11hの内腔を形成する開孔11gと、フランジ部1bの開孔1fと、筒状体1aの内部空間1eと、は滑らかに連続している。
【0023】
このように、延出部11dがフレア部11hを有することで、フレア部11hに当接する流動物の流れを開孔11gから離れる方向に方向付けすることができ、開孔11gに流動物が流入することを抑制することができる。
また、フレア部11hにより延出部11d内側の空間が、延出部1dと比較して大きいことで、筒状体1aから、延出部11dを介して外部へと向かう流動物が延出部11dの内側において詰まることを抑制できる。
図3においては、延出部11d全体がフレア状に形成されて、フレア部11hを形成している例を示しているが、延出部11dの少なくとも一部にフレア部11hが形成されているものであってもよい。
【0024】
延出部11dは、開孔1fの半径寸法よりも長く延在していると好適である。具体的には、延出部11dは、
図3において、開孔1fの半径rよりも長い長さL2で延在していると、好適である。
この長さL2は、本実施形態においては
図3に示すように、フレア状の延出部11dのうち、フランジ部1bに接続される外縁から端面にある外縁までの外側面に沿った長さである。
換言すると、長さL2は、延出部11dのうち、フランジ部1bに接続される開孔11gの内縁から端面にある開孔11gの外縁までの内側面に沿った長さである。
このように、延出部11dが、開孔1fの半径rよりも長く延在していることで、延出部11dが縮径方向に撓んだときに、開孔1fを封止することが可能となり、流動物の逆流を抑制することができる。
上記の説明以外は、アンカーステント1とアンカーステント11とは、共通しているため、その説明を省略する。以下の実施形態においても同様である。
【0025】
<第3実施形態>
次に、
図4を参照して、第3実施形態に係るアンカーステント12の構成の詳細について説明する。
図4は、第3実施形態に係るアンカーステント12を示す模式的な側面図である。
アンカーステント12の特徴的な構成である延出部12dは、筒状体1aの長尺方向において、外部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部12hを少なくとも一部に有する。
【0026】
このように、延出部12dがテーパ部12hを有することで、流動物が外部からフランジ部1bの開孔1fに向かって流れ込むことを抑制する逆流防止機能を高めることができる。具体的には、流動物がテーパ部12hに当接してテーパ部12hを押し込むと、テーパ部12hには縮径方向に力が加わることとなり、テーパ部12hの開孔12gが狭まることになる。このため、開孔12gに流動物が流入することを抑制することができる。
図4においては、延出部12d全体がテーパ状に形成されて、テーパ部12hを形成している例を示しているが、延出部12dの少なくとも一部にテーパ部12hが形成されているものであってもよい。
【0027】
延出部12dは、開孔1fの半径寸法よりも長く延在している。具体的には、延出部12dは、
図4において、開孔1fの半径rよりも長い長さL3で延在している。
この長さL3は、本実施形態においては
図4に示すように、テーパ状の延出部12dのうち、フランジ部1bに接続される外縁から端面にある外縁までの外側面に沿った長さである。
換言すると、長さL3は、延出部12dのうち、フランジ部1bに接続される開孔12gの内縁から端面にある開孔12gの外縁までの内側面に沿った長さである。
このように、延出部12dが、開孔1fの半径rよりも長く延在していることで、延出部12dが縮径方向に撓んだときに、開孔1fを封止することが可能となり、流動物の逆流を抑制することができる。
【0028】
<第4実施形態>
次に、
図5を参照して、第4実施形態に係るアンカーステント13の構成の詳細について説明する。
図5は、第4実施形態に係るアンカーステント13を示す模式的な側面図である。
延出部13dは、筒状体1aの長尺方向に延在する直筒部13iを少なくとも一部に有する。特に本実施形態に係る延出部13dは、フランジ部1bに接続される側に連続して形成された直筒部13iと、直筒部13iにおけるフランジ部1b側に対して逆側の端部に連続して形成されたフレア部11hと、を備える。
【0029】
このように、延出部13dが直筒部13iを有することで、フレア部11hの径方向の変形量を抑制しつつ、延出長さを長くすることができるため、所望の位置に延出部13dの端部を配置しやすくなる。特に、フランジ部1bが生体器官の一部に埋もれた場合にも、直筒部13iを有することで、延出部13dの端部を生体器官の一部から離間させて、流動物の流通路を確保することができる。
図5においては、直筒部13iの端部にフレア部11hが接続されている構成を示しているが、本発明はこのような構成に限定されず、直筒部13iの端部にテーパ部12hが接続されている構成であってもよい。
【0030】
<第5実施形態>
次に、
図6を参照して、第5実施形態に係るアンカーステント14の構成の詳細について説明する。
図6は、第5実施形態に係るアンカーステント14を示す模式的な側面図である。
本実施形態に係る筒状体14a及び延出部14dは、一方向に延在する複数のワイヤ14jと一方向に交差する方向に延在する複数のワイヤ14kが絡み合って形成されたメッシュ構造によって構成されている。延出部14dは、筒状体14a及びフランジ部14b、14baを構成するワイヤ14j、14kの編み方とは異なる編み方で形成されている。
【0031】
一例として、本実施形態における延出部14dにおけるワイヤ14j、14kは、筒状体14aにおける14j、14kよりも少ない本数で編み込まれている。
このように、筒状体14aと延出部14dとで、ワイヤ14j、14kの編み方を異ならせることにより、延出部14dの曲げ剛性を調整する(低める)ことができる。
【0032】
例えば、延出部14dの曲げ剛性を低めることで、食べ物の消化物等が胃2から十二指腸7を通って小腸に向かう流れを、アンカーステント14の延出部14dが阻害することを回避できる。
また、曲げ剛性を低めることで、延出部14dから筒状体14aに向かう逆流側の流れが生じているときに延出部14dが曲げ変形して、その開孔14gを塞ぎやすくなるため、開孔14gを通って筒状体14aに流動物が流れ込むことを防止できる。
ここで、異なる編み方とは、ワイヤ14j、14kの本数が異なる他に、隣接するワイヤ14j、14kの交差部分の絡み目(絡み部14m)に係る緊締の荷重が異なるものも含む。
【0033】
また、筒状体14a及び延出部14dは、隣接するワイヤ14j、14kが絡み合う絡み部14mを有する。
特に、本実施形態に係る延出部14dにおけるワイヤ14j、14kの絡み部14mは、筒状体14aにおけるワイヤ14j、14kの絡み部14mよりも疎に配置されている。ここで、「疎に配置されている」とは、ワイヤ14j、14kによって構成されるメッシュの絡み目14mの間隔が大きい場合や、メッシュの各格子の辺の長さが長い場合をいう。
上記構成によれば、延出部14dのワイヤ14j、14kの絡み部14mが疎に配置されていることで、筒状体14aの曲げ剛性を確保しつつ、延出部14dの曲げ剛性を低めることができる。
絡み部14m(絡み目)におけるワイヤ14j、14k同士の移動許容範囲が広いことにより、曲げ剛性を低めることができる。ここで、絡み部14mとは、一方のワイヤ14j、14kの閉空間として締結させる縫い目の他、一方のワイヤ14j、14kが閉空間を形成せずに係合している絡み目を含むものとする。
【0034】
つまり、本実施形態に係る延出部14dは、筒状体14aよりも曲げ剛性が低い。
このように、延出部14dの曲げ剛性が筒状体14aの曲げ剛性よりも低いことで、挿通穴(2a、3a、4a、5a、6a、7a)を通る筒状体14aの形状を保持しつつ、延出部14dが撓むことによって、流動物の逆流を防止することができる。
【0035】
<第6実施形態>
次に、
図7を主に参照して、第6実施形態に係るアンカーステント15の構成の詳細について説明する。
図7は、第6実施形態に係るアンカーステント15を示す模式的な側面図である。
本実施形態に係るアンカーステント15の樹脂膜15cは、筒状体15aから一方のフランジ部15bを越えて延在している。そして、アンカーステント15の延出部15dの一部又は全部は、樹脂膜15cによって形成されている。一方で、本実施形態に係るワイヤ14j、14k(
図6参照)は、フランジ部15bにおいて終端しており、延出部15dには配設されていない。
なお、本発明に係るワイヤは、このような構成に限定されない。つまり、ワイヤ14j、14kは、フランジ部15bを越えて延在して延出部15dの一部に配設されていてもよい。
このように、延出部15dが樹脂膜15cのみによって形成されている部位を少なくとも一部に含むことで、延出部15dを、ワイヤ(14j、14k)と樹脂膜15cとで構成される筒状体15aよりも撓みやすくすることができる。
【0036】
つまり、延出部15dは、筒状体15aよりも曲げ剛性が低い。
このように、延出部15dの曲げ剛性が筒状体15aの曲げ剛性よりも低いことで、挿通穴(2a、3a、4a、5a、6a、7a)を通る筒状体15aの形状を保持しつつ、延出部15dが撓むことによって、流動物の逆流を防止することができる。
【0037】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)長尺の筒状体と、
該筒状体の長尺方向において間隔を空けて設けられた2つのフランジ部と、
少なくとも前記筒状体を構成する樹脂膜と、を備えて、
近接する生体器官のそれぞれに設けられた挿通穴に前記筒状体が通されて、前記2つのフランジ部が係合することにより、前記生体器官を連結するアンカーステントであって、
前記2つのフランジ部のそれぞれには、前記筒状体の内部空間と連通する開孔が形成されており、
前記2つのフランジ部のうち少なくとも一方のフランジ部には、前記筒状体の周回方向の少なくとも一部に連続して前記筒状体の長尺方向に延出する延出部が設けられており、
該延出部は、前記開孔と外部とを連通するように形成されており、前記一方のフランジ部のみに設けられているか、前記他方のフランジ部に前記延出部が設けられている場合に、前記筒状体の長尺方向において、前記他方のフランジ部に設けられている他方の前記延出部よりも外側に長く延出していることを特徴とするアンカーステント。
(2)前記延出部は、前記筒状体の長尺方向において、前記外部に向かうにつれて拡径している形状のフレア部を少なくとも一部に有する(1)に記載のアンカーステント。
(3)前記延出部は、前記筒状体の長尺方向において、前記外部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部を少なくとも一部に有する(1)又は(2)に記載のアンカーステント。
(4)前記延出部は、前記筒状体の長尺方向に延在する直筒部を少なくとも一部に有する(2)又は(3)に記載のアンカーステント。
(5)前記延出部は、前記開孔の半径寸法よりも長く延在している(1)から(4)のいずれか一項に記載のアンカーステント。
(6)前記延出部は、前記筒状体よりも曲げ剛性が低い(1)から(5)のいずれか一項に記載のアンカーステント。
(7)前記筒状体及び前記延出部は、ワイヤが絡み合って形成されたメッシュ構造によって構成されており、
前記延出部は、前記筒状体を構成するワイヤの編み方とは異なる編み方で形成されている(6)に記載のアンカーステント。
(8)前記筒状体及び前記延出部は、隣接する前記ワイヤが絡み合う絡み部を有し、
前記延出部における前記ワイヤの前記絡み部は、前記筒状体における前記ワイヤの前記絡み部よりも疎に配置されている(7)に記載のアンカーステント。
(9)前記樹脂膜は、前記筒状体から前記一方のフランジ部を越えて延在しており、
前記延出部は、前記樹脂膜によって形成されている(1)から(8)のいずれか一項に記載のアンカーステント。
【符号の説明】
【0038】
1 アンカーステント
1a 筒状体
1b、1ba フランジ部
1c 樹脂膜
1d 延出部
1e 内部空間
1f、1g 開孔
2 胃(生体器官)
2a 挿通穴
3 肝臓(生体器官)
3a 挿通穴
4 胆管(生体器官)
4a 挿通穴
5 胆嚢(生体器官)
5a 挿通穴
6 膵管(生体器官)
6a 挿通穴
7 十二指腸(生体器官)
7a 挿通穴
11 アンカーステント
11d 延出部
11g 開孔
11h フレア部
12 アンカーステント
12d 延出部
12g 開孔
12h テーパ部
13 アンカーステント
13d 延出部
13i 直筒部
14 アンカーステント
14a 筒状体
14b、14ba フランジ部
14d 延出部
14g 開孔
14j、14k ワイヤ
14m 絡み部
15 アンカーステント
15a 筒状体
15b フランジ部
15c 樹脂膜
15d 延出部
T 腫瘍