(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法および三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240528BHJP
B22F 10/18 20210101ALI20240528BHJP
B22F 10/366 20210101ALI20240528BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20240528BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240528BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240528BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240528BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240528BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240528BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240528BHJP
【FI】
B29C64/386
B22F10/18
B22F10/366
B22F10/85
B28B1/30
B29C64/118
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019099944
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-04-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094791(WO,A1)
【文献】特開2019-025759(JP,A)
【文献】特開2017-114114(JP,A)
【文献】特開2019-025761(JP,A)
【文献】特開2018-176597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B23K 9/00-10/02
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を複数の部分経路によって表した経路データを有するとともに、各前記部分経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報、および、各前記部分経路における前記吐出部の移動速度を表す移動速度情報の少なくとも一方を含む吐出制御データを有する中間データを生成する第1工程と、
前記中間データを解析して、第1部分経路と、前記第1部分経路よりも後に前記吐出部から前記造形材料が吐出される第2部分経路との間に挟まれた隙間部分を特定する第2工程と、
前記第2部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記中間データから造形データを生成する第3工程と、
前記造形データに従って前記吐出部を制御して前記三次元造形物を造形する第4工程と、
を備え、
前記第3工程では、前記第2部分経路を複数の部分経路に分割し、分割されたそれぞれの前記部分経路における前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が、前記隙間部分の幅の変化に基づいて、それぞれ異なる幅になるように、前記造形データを生成
し、
前記第3工程では、分割されたそれぞれの前記部分経路が、前記第1部分経路と、前記隙間部分及び変更前の前記第2部分経路を挟んで前記第1部分経路の反対側の部分経路と、の間の中心を通る経路になるように、前記造形データを生成する、
三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1部分経路は、前記三次元造形物の外殻に沿った外殻領域を造形するための経路の一部であり、
前記第2部分経路は、前記三次元造形物のうちの前記外殻領域以外の領域である内部領域を造形するための経路の一部である、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程では、前記外殻領域を造形するための経路と前記内部領域を造形するための経路とが連続する経路となるように前記造形データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程では、前記隙間部分の形状に応じて、前記経路データに含まれる前記第2部分経路を変更して、前記造形データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
各前記部分経路において前記ステージ又は前記層に堆積させる前記造形材料の基準幅Ssと、各前記部分経路において前記ステージに堆積させることが可能な前記造形材料の最大幅Smaxと、前記隙間部分の幅Wと、が、
W≦Smax-Ss
の関係を満たす場合、前記第3工程では、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データのみを変更する、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
各前記部分経路において前記ステージ又は前記層に堆積させる前記造形材料の基準幅Ssと、各前記部分経路において前記ステージに堆積させることが可能な前記造形材料の最大幅Smaxと、前記隙間部分の幅Wと、が、
W>Smax-Ss
の関係を満たす場合、前記第3工程では、前記第2部分経路に加えて、前記第1部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第1部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記造形データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
ステージと、
前記ステージに向けて造形材料を吐出する吐出部と、
前記ステージに対して前記吐出部を移動させる移動機構と、
造形データを生成するデータ生成部と、
前記造形データに従って前記吐出部と前記移動機構とを制御して前記ステージ上に三次元造形物を造形する制御部と、
を備え、
前記データ生成部は、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を複数の部分経路によって表した経路データを有するとともに、各前記部分経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報、および、各前記部分経路における前記吐出部の移動速度を表す移動速度情報の少なくとも一方を含む吐出制御データを有する中間データを生成し、
前記中間データを解析して、第1部分経路と、前記第1部分経路よりも後に前記吐出部から前記造形材料が吐出される第2部分経路との間に挟まれた隙間部分を特定し、
前記第2部分経路において前記ステージ又は先に形成された層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記中間データから前記造形データを生成し、
前記データ生成部は、前記中間データから前記造形データを生成するにあたり、前記第2部分経路を複数の部分経路に分割し、分割されたそれぞれの前記部分経路における前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が、前記隙間部分の幅の変化に基づいて、それぞれ異なる幅になるように、前記造形データを生成
し、
前記データ生成部は、分割されたそれぞれの前記部分経路が、前記第1部分経路と、前記隙間部分及び変更前の前記第2部分経路を挟んで前記第1部分経路の反対側の部分経路と、の間の中心を通る経路になるように、前記造形データを生成する、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法および三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の製造方法に関し、例えば、特許文献1には、三次元造形物の各層を構築するためのビルド経路に従って、造形材料の押し出しを行うノズルを移動させることが記載されている。ビルド経路には、周囲経路と、バルクラスター経路と、残存経路とが含まれる。周囲経路は、三次元造形物と外部との境界を形成するための経路であり、バルクラスター経路は、周囲経路によって囲まれた領域を埋める経路である。残存経路は、周囲経路およびバルクラスター経路では埋められない空隙領域を埋める経路である。特許文献1では、残存経路において、空隙領域の幅に応じて造形材料の押出量を変化させることで、空隙領域に隙間が生じることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、バルクラスター経路の終点と残存経路の始点とが離れた位置にある場合、バルクラスター経路の終点から残存経路の始点までノズルが移動する際に、造形材料が糸を引くようにノズルから垂れ下がり、三次元造形物に付着して、造形精度が低下する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を複数の部分経路によって表した経路データを有するとともに、各前記部分経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報、および、各前記部分経路における前記吐出部の移動速度を表す移動速度情報の少なくとも一方を含む吐出制御データを有する中間データを生成する第1工程と、前記中間データを解析して、第1部分経路と、前記第1部分経路よりも後に前記吐出部から前記造形材料が吐出される第2部分経路との間に挟まれた隙間部分を特定する第2工程と、前記第2部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記中間データから造形データを生成する第3工程と、前記造形データに従って前記吐出部を制御して前記三次元造形物を造形する第4工程と、を備え、前記第3工程では、前記第2部分経路を複数の部分経路に分割し、分割されたそれぞれの前記部分経路における前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が、前記隙間部分の幅の変化に基づいて、それぞれ異なる幅になるように、前記造形データを生成し、前記第3工程では、分割されたそれぞれの前記部分経路が、前記第1部分経路と、前記隙間部分及び変更前の前記第2部分経路を挟んで前記第1部分経路の反対側の部分経路と、の間の中心を通る経路になるように、前記造形データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】フラットスクリューの下面側の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】スクリュー対面部の上面側を示す概略平面図である。
【
図4】三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す概略図である。
【
図5】造形データ生成処理のフローチャートである。
【
図6】三次元造形物の1つの層の平面形状の例を示す図である。
【
図7】三次元造形物の1つの層の平面形状の例を示す図である。
【
図8】三次元造形物の1つの層の平面形状の他の例を示す図である。
【
図9】三次元造形物の1つの層の平面形状の他の例を示す図である。
【
図11】第2実施形態におけるデータ変更処理のフローチャートである。
【
図15】変更対象決定処理のフローチャートである。
【
図16】第3実施形態におけるデータ変更処理を説明するための図である。
【
図17】第3実施形態におけるデータ変更処理を説明するための図である。
【
図18】第3実施形態におけるデータ変更処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0008】
三次元造形装置100は、三次元造形装置100を制御する制御部101と、造形材料を生成して吐出する造形部110と、三次元造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230と、を備える。
【0009】
造形部110は、制御部101の制御下において、固体状態の材料を溶融させてペースト状にした造形材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料を造形材料へと転化させる造形材料生成部30と、造形材料を吐出する吐出部60と、を備える。
【0010】
材料供給部20は、造形材料生成部30に、造形材料を生成するための原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、下方に排出口を有している。当該排出口は、連通路22を介して、造形材料生成部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。本実施形態では、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。
【0011】
造形材料生成部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを溶融させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。造形材料生成部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、スクリュー対面部50と、を有する。
【0012】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。
図2に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするため、
図1に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。
図3は、スクリュー対面部50の上面52側を示す概略平面図である。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0013】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47側は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部101の制御下において駆動する。
【0014】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。
図2に示すように、本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。
【0015】
フラットスクリュー40の下面48は、スクリュー対面部50の上面52に面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、スクリュー対面部50の上面52との間には空間が形成される。造形部110では、フラットスクリュー40とスクリュー対面部50との間のこの空間に、材料供給部20から
図3に示した材料流入口44へと原材料MRが供給される。
【0016】
スクリュー対面部50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。スクリュー対向面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において溶融されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、
図3に示したスクリュー対面部50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が溶融していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が溶融することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0017】
吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル61との間に設けられた造形材料の流路65と、流路65を開閉する開閉機構70と、を有する。ノズル61は、流路65を通じて、スクリュー対面部50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、造形材料生成部30において生成された造形材料を、先端の吐出口62からステージ210に向かって吐出する。
【0018】
開閉機構70は、流路65を開閉して、ノズル61からの造形材料の流出を制御する。第1実施形態では、開閉機構70は、バタフライバルブによって構成されている。開閉機構70は、一方向に延びる軸状部材である駆動軸72と、駆動軸72の回転により回動する弁体73と、駆動軸72の回転駆動力を発生するバルブ駆動部74と、を備える。
【0019】
駆動軸72は、造形材料の流れ方向に交差するように流路65の途中に取り付けられている。より具体的には、駆動軸72は、流路65内の造形材料の流通方向に対して垂直な向きであるY方向に平行になるように取り付けられている。駆動軸72は、Y方向に沿った中心軸を中心に回転可能である。
【0020】
弁体73は、流路65内において回転する板状部材である。第1実施形態では、弁体73は、駆動軸72の流路65内に配置されている部位を板状に加工することによって形成されている。弁体73を、その板面に垂直な方向に見たときの形状は、弁体73が配置されている部位における流路65の開口形状とほぼ一致する。
【0021】
バルブ駆動部74は、制御部101の制御下において、駆動軸72を回転させる。バルブ駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。駆動軸72の回転によって弁体73が流路65内において回転する。
【0022】
弁体73の板面を、流路65における造形材料の流通方向に対して垂直にされた状態が、流路65が閉じられた状態である。この状態では、流路65からノズル61への造形材料の流入が遮断され、吐出口62からの造形材料の流出が停止される。弁体73の板面が、駆動軸72の回転によって、この垂直にされた状態から回転されると、流路65からノズル61への造形材料の流入が許容され、弁体73の回転角度に応じた吐出量の造形材料が吐出口62から流出する。
図1に示されているように、流路65における造形材料の流通方向に沿った状態が、流路65が全開となる状態である。この状態は、吐出口62からの単位時間あたりの造形材料の吐出量が最大となる。このように、開閉機構70は、造形材料の流出のON/OFFとともに、造形材料の吐出量の調整を実現できる。
【0023】
ステージ210は、ノズル61の吐出口62に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、ノズル61の吐出口62に対向するステージ210の面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。後述するように、三次元造形装置100は、造形処理において、吐出部60からステージ210の面211に向けて造形材料を吐出させて層を積層することによって三次元造形物を造形する。
【0024】
移動機構230は、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。第1実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターMの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。移動機構230は、制御部101の制御下において、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係を変更する。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0025】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0026】
制御部101は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部101は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成される。制御部101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、データ生成部102としての機能のほか、種々の機能を発揮する。制御部101は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0027】
データ生成部102は、移動機構230によって吐出部60を移動させるための複数の部分経路を有する造形データを生成する。制御部101は、データ生成部102によって生成された造形データに従って、開閉機構70および吐出部60を含む造形部110と、移動機構230とを制御してステージ210上に三次元造形物を造形する。
【0028】
データ生成部102は、三次元造形物の形状を表す3次元CADデータなどの形状データを用いて、造形データの生成を行う。造形データには、造形材料の吐出経路と、吐出部60による造形材料の吐出量を含む吐出制御データが含まれる。造形材料の吐出経路とは、ノズル61が、造形材料を吐出しながら、ステージ210の面211に沿って相対的に移動する経路である。
【0029】
吐出経路は、複数の部分経路から構成される。各部分経路は、直線状の経路である。吐出制御データは、各部分経路に対して個別に対応付けられる。本実施形態において、吐出制御データによって表される吐出量は、その部分経路において単位時間あたりに吐出される造形材料の量である。なお、他の実施形態では、各部分経路に対して、その部分経路全体において吐出される造形材料の総量が、吐出制御データとして対応付けられてもよい。
【0030】
図4は、三次元造形装置100において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す概略図である。三次元造形装置100では、上述したように、造形材料生成部30において、回転しているフラットスクリュー40の溝部42に供給された固体状態の原材料MRが溶融されて造形材料MMが生成される。制御部101は、ステージ210の面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。こうしたノズル61による走査によって、ノズル61の走査経路に沿って線状に延びる造形部位である線状部位LPが造形される。
【0031】
制御部101は、上記のノズル61による走査を繰り返して層MLを形成する。制御部101は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。
【0032】
制御部101は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形エリアがある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、開閉機構70の弁体73によって流路65を閉塞させて、吐出口62からの造形材料MMの吐出を停止させる。制御部101は、ノズル61の位置を変更した後、開閉機構70の弁体73によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。三次元造形装置100によれば、開閉機構70によって、ノズル61による造形材料MMの堆積位置を簡易に制御することができる。
【0033】
図5は、制御部101によって実行される造形データ生成処理のフローチャートである。この処理は、三次元造形物を造形するのに先立って、三次元造形物の造形に用いられる造形データを生成するための処理である。
図6および
図7は、三次元造形物の1つの層の平面形状の例を示す図である。
【0034】
図5に示すように、ステップS100において、データ生成部102は、外部から入力された三次元造形物の造形データである3次元CADデータを解析し、三次元造形物を、XY平面に沿って複数の層にスライスした層データを生成する。層データは、そのXY平面における三次元造形物の外殻を表すデータである。
図6には、層データLD1によって矩形状の外殻が表されている例を太線によって示している。
【0035】
ステップS110において、データ生成部102は、第1造形データを生成する。第1造形データとは、層データが表す外殻の内側に接する外殻領域を形成するためのデータである。外殻領域とは、三次元造形物の外観に影響を与える領域である。第1造形データには、三次元造形物の外殻に沿った最外周を造形するための経路が含まれる。第1造形データは、三次元造形物の最外周を造形するための吐出経路だけではなく、最外周の内側1周分を含む吐出経路を含んでもよい。外殻領域を形成するための吐出経路の周回数は、任意に設定可能であってもよい。
【0036】
図6には、第1造形データZD1が、最も外側の吐出経路とその内側1周分の吐出経路によって構成されている例を示している。これらの吐出経路は、外殻領域を造形するための複数の部分経路PP1を含む。上記のとおり、各部分経路PP1は、直線状の経路である。従って、
図6では、「S1」と示した始点から、内側の吐出経路の「E1」と示した位置までの、破線で示した連続した8つの部分経路PP1によって、第1造形データZD1が表されている。それぞれの部分経路PP1には、ステージ210に堆積される造形材料が予め定められた基準幅Ssとなる量の吐出量が吐出制御データとして対応付けられる。
図6では、最も外側の吐出経路とその内側の吐出経路とは、連続した経路となっているが、これらは別々の経路として構成されてもよい。つまり、最も外側の吐出経路の終点と、内側の吐出経路の始点とは異なる位置であってもよい。
【0037】
ステップS120において、データ生成部102は、第2造形データを生成する。第2データとは、層データが表す外殻の内側において外殻領域以外の領域である内部領域を造形するためのデータである。内部領域は、三次元造形物の外観よりも、三次元造形物の強度に与える影響が大きい領域である。
【0038】
図6には、第2造形データZD2が、S字状に蛇行した吐出経路によって表されている例を示している。データ生成部102は、XY平面において、予め定められた基準方向に沿って吐出部60を往復移動させながらその基準方向に直交する方向に徐々に吐出部60を移動させることによって内部領域を埋める吐出経路を第2造形データZD2として生成する。内部領域を埋める吐出経路は、複数の部分経路PP2を含む。上記のとおり、各部分経路PP2は、直線状の経路である。従って、
図6では、「S2」と示した始点から、「E2」と示した終点までの、5つの部分経路PP2によって、第2造形データZD2が表されている。それぞれの部分経路PP2には、ステージ210に堆積される造形材料が予め定められた基準幅Ssとなる量の吐出量が吐出制御データとして対応付けられる。なお、本実施形態では、第1造形データZD1において造形される経路の幅と、第2造形データZD2よって造形される経路の幅とが、いずれも基準幅Ssであるものとしたが、これらは、異なる幅であってもよい。
【0039】
図6では、第1造形データZD1が表す吐出経路の終点「E1」と、第2造形データZD2が表す吐出経路の始点「S2」とは、異なる位置に示されているが、これは図示の都合であり、実際は、これらの位置は同じ位置である。従って、第1造形データZD1が表す吐出経路と第2造形データZD2が表す吐出経路とは連続して接続されている。しかし、他の実施形態では、これらの吐出経路は、不連続の経路であってもよい。つまり、第1造形データZD1が表す吐出経路の終点「E1」と第2造形データZD2が表す吐出経路の始点「S2」とは、異なる位置であってもよい。
【0040】
以下では、ステップS110において生成される第1造形データと、ステップS120において生成される第2造形データとを、まとめて、「中間データ」という。中間データは、吐出部60が造形材料を吐出しつつ移動する経路を複数の部分経路によって表した経路データと、各部分経路における造形材料の吐出量を表す吐出量情報を含む吐出制御データと、を有する。
【0041】
ステップS130において、データ生成部102は、中間データを解析して、第1部分経路と第2部分経路との間に挟まれた隙間部分を特定する。第2部分経路は、第1部分経路よりも後に吐出部60から造形材料が吐出される経路である。
図6には、第1造形データZD1に含まれる第1部分経路R1と、第2造形データZD2に含まれる第2部分経路R2との間に、これらの部分経路に沿って幅W1の隙間部分G1が特定された例を示している。隙間部分G1の幅W1は、上述した基準幅Ss未満の幅である。つまり、第1部分経路および第2部分経路とは、それらの間に、基準幅Ss未満の隙間が生じている経路である。
【0042】
ステップS140において、データ生成部102は、ステップS130において隙間部分が特定されたか否かを判断する。隙間部分が特定されれば、データ生成部102は、ステップS150において、その隙間部分を埋めるためのデータ変更処理を実行する。隙間部分が特定されなければ、データ生成部102は、当該データ変更処理をスキップする。データ変更処理が実行されると、前述した中間データが変更されて造形データが生成される。これに対して、データ変更処理が実行されない場合、前述した中間データはそのまま造形データとなる。
【0043】
ステップS150におけるデータ変更処理において、データ生成部102は、隙間部分を挟む第1部分経路および第2部分経路のうち、後から造形材料が吐出される第2部分経路において、ステージ210又は先に形成された層に堆積される造形材料の幅が増加するように、第2部分経路に対応する吐出制御データのみを変更して、中間データから造形データを生成する。本実施形態では、データ生成部102は、第2部分経路に対応付けられている吐出制御データが表す吐出量を増加させることにより、第2部分経路において堆積される造形材料の幅を増加させる。
図6に示した例では、データ生成部102は、隙間部分G1を挟む部分経路R1および部分経路R2のうち、後から造形材料が吐出されることになる第2部分経路R2の造形材料の幅を、
図7に示すように、基準幅Ssから、基準幅Ssに隙間部分の幅W1を加算した幅まで増加するように、吐出量を増加させる。また、本実施形態では、データ生成部102は、当該ステップS150において、外殻領域を造形するための第1造形データZD1が表す吐出経路と内部領域を造形するための第2造形データZD2が表す吐出経路とが連続する経路となるように造形データを生成する。
【0044】
ステップS160において、データ生成部102は、以上の処理をすべての層データについて完了したか否か判断する。全ての層データについて終了していなければ、データ生成部102は、次の層データについて、ステップS110からステップS150までの処理を繰り返す。全ての層データについて造形データの生成を完了した場合、データ生成部102は、当該造形データ生成処理を終了する。なお、上述した造形データ生成処理におけるステップS110およびステップS120のことを、三次元造形物の製造方法における第1工程ともいい、ステップS130のことを、同方法における第2工程ともいい、ステップS150のことを、同方法における第3工程ともいう。
【0045】
図8および
図9は、三次元造形物の1つの層の平面形状の他の例を示す図である。
図8および
図9には、外側に向けて突出した部分を有する外殻が層データLD2によって表されている例を示している。
図8には、このような層データLD2において、第1造形データZD1にいずれも含まれる2つの部分経路R3,R4の間に隙間部分G2が特定された例を示している。この場合、上記ステップS150では、
図9に示すように、第1造形データZD1に含まれる2つの部分経路R3,R4のうち、後から造形材料が吐出される部分経路R4について、ステージ210に堆積される造形材料の幅が増加するよう、造形データが変更される。変更後の部分経路R4の幅は、部分経路R4の元の幅である基準幅Ssに、隙間部分G2の幅W2を加算した幅である。なお、上記ステップS150では、第2造形データZD2にいずれも含まれる2つの部分経路の間に隙間部分が特定された場合にも、それらのうち、後から造形材料が吐出される部分経路について、ステージ210に堆積される造形材料の幅が増加するよう、造形データが変更される。
【0046】
図10は、制御部101によって実行される三次元造形処理のフローチャートである。
図10に示した三次元造形処理は、
図5に示した造形データ生成処理において生成された造形データを用いて制御部101によって実行される処理である。
図5に示した造形データ生成処理と
図10に示した三次元造形処理とが実行されることによって、三次元造形装置100による三次元造形物の製造方法が実現される。
【0047】
ステップS200において、制御部101は、三次元造形物を構成する複数の層のうち、1つの層について、造形データを読み込む。造形データには、上述した第1造形データと第2造形データとが含まれる。本実施形態では、制御部101は、まず、三次元造形物を構成する複数の層のうち、重力方向において最も下側に位置する層の造形データを読み込む。
【0048】
ステップS210において、制御部101は、第1造形処理を実行する。第1造形処理では、制御部101は、第1造形データに含まれる部分経路および各部分経路に対応付けられた吐出制御データに従い、移動機構230および吐出部60を制御して、現在の層について外殻領域を形成する。
【0049】
ステップS220において、制御部101は、第2造形処理を実行する。第2造形処理では、制御部101は、第2造形データに含まれる部分経路および各部分経路に対応付けられた吐出制御データに従い、移動機構230および吐出部60を制御して、現時の層について内部領域を形成する。
【0050】
図6および
図7に示した造形データの例では、この第2造形処理において、隣り合って堆積される造形材料同士の間隔が第1間隔となるように吐出部60をステージ210上で移動させつつ、吐出部60から造形材料を吐出させて三次元造形物のうちの第1部分P1が造形される第1部分造形工程S221が行われる。
図6,7の例では、第1間隔は、基準幅Ssと同じである。そして、第1部分造形工程S221においてステージ210または先に形成された層に堆積される造形材料の幅Ssよりも、ステージ210または先に形成された層に堆積される造形材料の幅が、幅(Ss+W1)まで増加するように吐出部60から造形材料を吐出させて、
図7に示す第1部分P1に接するように三次元造形物のうちの第1部分P1を除く第2部分P2を造形する第2部分造形工程S222が行われる。
【0051】
ステップS230において、制御部101は、全ての層について造形を完了したか否かを判断する。全ての層について造形が完了していなければ、制御部101は、次の層、すなわち、現在の層の重力方向上側に隣接する層について、ステップS210およびステップS220の処理を繰り返す。上記ステップS210では、吐出部60からの造形材料の吐出に先立ち、制御部101は、移動機構230を制御して、ノズル61の位置を、ステージ210から1層分、上昇させる。全ての層について造形が完了した場合、制御部101は、当該三次元造形処理を完了する。なお、上述した三次元造形処理におけるステップS210およびステップS220のことを、三次元造形物の製造方法における第4工程ともいう。
【0052】
以上で説明した本実施形態における三次元造形装置100によれば、第1部分経路と第2部分経路とに挟まれた隙間部分があっても、第2部分経路において堆積される造形材料の幅が増加するように、造形データが生成されるので、三次元造形物の造形時に、隙間部分を埋めるために吐出部60を離れた位置から隙間部分に移動させる必要がない。従って、吐出部60からの造形材料の垂れ下がりによって三次元造形物の造形精度が低下することを抑制できる。特に、本実施形態では、第1部分経路および第2部分経路のうち、後から造形材料が吐出される第2部分経路において、ステージ210に堆積される造形材料の幅を増加させるため、それよりも前に形成された部分経路がある程度硬化した後に、隙間部分を造形材料によって埋めることができる。そのため、造形材料が意図せずに流れ出すことが抑制され、三次元造形物の造形精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、隙間部分を埋めるために、既存の部分経路の一部を太くするため、新たな部分経路を追加する必要がない。従って、造形データが増大することを抑制できる。また、細い隙間部分を埋めるために、細い線幅で造形を行う必要がないので、容易に隙間を埋めることができる。
【0054】
また、本実施形態で用いられる造形データには、部分経路毎に造形材料の吐出量を表す情報が含まれている。そのため、第2部分経路に対応付けられた造形材料の吐出量を増加させることによって、容易に、ステージ210に堆積される造形材料の幅を増加させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、造形データが、外殻領域を造形するための第1造形データと内部領域を造形するための第2造形データとに分かれており、内部領域よりも外殻領域が先に造形される。そのため、内部領域と外殻領域との間に
図6に示すように隙間部分が特定されたとしても、外観に対する影響の大きい外殻領域を形成してから、隙間部分を埋めることができる。そのため、三次元造形物の造形精度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、外殻領域を造形するための造形経路と内部領域を造形するための造形経路とが連続しているので、内部領域と外殻領域とを連続して造形することができる。そのため、それらの領域間を吐出部60が移動する際に、吐出部60から造形材料が垂れ下がることがない。従って、三次元造形物の造形精度が低下することを抑制できる。
【0057】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態におけるデータ変更処理のフローチャートである。このデータ変更処理は、
図5に示したステップS150におけるデータ変更処理に代えて実行される処理である。第2実施形態における三次元造形装置100の構成は第1実施形態と同じである。以下では、部分経路のことを、「パス」といい、空隙部分に隣接するパスのことを「隣接パス」という。また、以下では、XY方向に沿ってステージ210に堆積される造形材料の幅のことを、「線幅」という。以下、
図11に示したデータ変更処理について、
図12~
図14に示したデータ変更処理の結果を適宜参照して説明する。
【0058】
ステップS300において、データ生成部102は、空隙部分の幅が予め定められた第1閾値よりも大きく、かつ、空隙部分の長さが予め定められた第2閾値よりも大きいか否かを判断する。空隙部分の長さとは、空隙部分の長手方向に沿った寸法であり、空隙部分の幅は、空隙部分の長手方向に垂直な方向に沿った寸法である。空隙部分の幅が第1閾値よりも大きく、かつ、空隙部分の長さが第2閾値よりも大きい場合、ステップS302において、データ生成部102は、
図12に示すように、空隙部分の両側の隣接パスの線幅を大きくする。つまり、ステップS302では、第2部分経路に加えて、第1部分経路の線幅も大きくする。
【0059】
上述した第1閾値は、開閉機構70の制御によって各パスにおいてステージに堆積させることが可能な造形材料の最大幅Smaxと、各パスにおいてステージに堆積させる造形材料の基準幅Ssと、の差、すなわち、Smax-Ssである。つまり、隙間部分の幅をWとすると、
W>Smax-Ss
の関係を満たす場合に、空隙部分の幅が予め定められた第1閾値よりも大きいと判断される。なお、基準幅Ssは、最大幅Smaxよりも小さな線幅である。基準幅Ssは任意に設定可能であるが、例えば、最大幅Smaxの60~80%とすることができる。なお、基準幅Ssは、最大幅Smaxの2分の1よりも大きい幅であることが好ましい。
【0060】
空隙部分の幅Wが第1閾値よりも大きい場合には、開閉機構70による吐出量の調整によって線幅を最大幅Smaxまで大きくしても、隙間部分に隣接する片側のパスだけでは隙間部分を埋めることができない。そのため、上記ステップS302において、データ生成部102は、第2部分経路に加えて、第1部分経路においてステージ210又は先に形成された層に堆積される造形材料の幅が増加するように、第1部分経路および第2部分経路に対応する吐出制御データを変更し、隙間部分の両側の隣接パスの線幅を大きくすることによって隙間部分を埋め、当該データ変更処理を終了する。なお、第2閾値は、第1閾値と同じ、又は、それよりも大きな値である。
【0061】
ステップS300において、空隙部分の幅が第1閾値よりも大きく、かつ、空隙部分の長さが第2閾値よりも大きい、と判断されなかった場合、ステップS304において、データ生成部102は、空隙部分の幅が第1閾値以下であり、かつ、空隙部分の長さが、第2閾値よりも大きいか否かを判断する。空隙部分の幅が第1閾値以下とは、
W≦Smax-Ss
の関係を満たすことをいう。空隙部分の幅が第1閾値以下であり、かつ、空隙部分の長さが、第2閾値よりも大きい場合、データ生成部102は、ステップS306において、変更対象決定処理を実行する。この変更対象決定処理は、線幅を変更する対象の隣接パスを決定するための処理である。変更対象決定処理の詳細については後述する。
【0062】
ステップS308において、データ生成部102は、ステップS306において決定された隣接パスの線幅を大きくして隙間部分を埋め、当該データ変更処理を終了する。ステップS308では、ステップS302とは異なり、両側の隣接パスではなく、
図13に示すように、片側の隣接パスのみの線幅を変更する。空隙部分の幅が第1閾値よりも小さければ、開閉機構70による吐出量の調整によって線幅を最大幅Smaxまで調整することにより、空隙部分を埋めることができる。
【0063】
上記ステップS304において、空隙部分の幅が第1閾値以下であり、かつ、空隙部分の長さが、第2閾値よりも大きい、と判断されなかった場合、つまり、空隙部分の幅の大きさにかかわらず、空隙部分の長さが第2閾値以下の場合、データ生成部102は、ステップS310において、隙間部分が、一筆書きのパスで囲まれているか否かを判断する。一筆書きのパスとは、連続した複数のパスによって空隙部分を囲むパスである。隙間部分が、一筆書きのパスで囲まれている場合、
図14に示すように、データ生成部102は、隙間部分を囲む周囲の隣接パス、すなわち、一筆書きのパスを構成する全てのパスの線幅を大きくすることによって隙間部分を埋め、当該データ変更処理を終了する。
【0064】
上記ステップS310において、隙間部分が、一筆書きのパスで囲まれていないと判断された場合、データ生成部102は、隣接パスの線幅の変更は行わない。この場合、隙間部分は、極小の領域であると見なせるためである。
【0065】
なお、本実施形態において、上述したステップS310およびステップS312の処理は省略してもよい。この場合、ステップS304において、空隙部分の幅が第1閾値以下であり、かつ、空隙部分の長さが、第2閾値よりも大きい、と判断されなかった場合、データ生成部102は、隣接パスの線幅を変更することなく、当該データ変更処理を終了する。
【0066】
また、上記ステップS300では、隙間部分の長さと第2閾値とを対比しているが、このステップでは、隙間部分の長さと第2閾値との対比を省略してもよい。つまり、空隙部分の幅と第1閾値との対比のみに基づいて、ステップS300における条件分岐を判断してもよい。この場合、ステップS304およびステップS310およびステップS312の処理を省略し、ステップS300において、空隙部分の幅が第1閾値以下と判断された場合に、ステップS306の変更対象決定処理を実行するものとしてもよい。
【0067】
図15は、
図11のステップS306で実行される変更対象決定処理の詳細なフローチャートである。ステップS400において、データ生成部102は、隙間部分の両側の隣接パスの属性を取得する。属性とは、三次元造形物においてそのパスによって造形が行われる位置を表す情報であり、本実施形態では、
図5に示した造形データ生成処理の第1造形データ生成処理および第2造形データ生成処理において、各パスに、「内部領域」、「最上下面」、「最上下面の内側」、「最外殻」、「最外殻の内側」、のいずれかの属性が対応付けられるものとする。データ生成部102は、三次元CADデータを解析することで、各パスに、これらの属性を対応付けることが可能である。なお、「最上下面の内側」とは、Z方向において、最上面の下側に隣接する位置、または、最下面の上側に隣接する位置のことをいう。「最外殻の内側」とは、X方向またはY方向において、最外殻の内側に隣接する位置のことをいう。
【0068】
ステップS402において、データ生成部102は、ステップS400で取得された2つの隣接パスの属性が、どちらも同じ属性であるか否かを判断する。どちらも同じ属性であれば、ステップS404において、データ生成部102は、それらの隣接パスのうち、後に造形される隣接パスを、線幅を変更する対象のパスとして決定する。線幅を変更する対象のパスのことを、以下、「線幅変更パス」という。
【0069】
ステップS402において、ステップS400で取得された2つの属性がどちらも同じ属性であると判断されなかった場合、ステップS406において、データ生成部102は、どちらかの属性が内部領域であるか否かを判断する。どちらかの属性が内部領域であれば、データ生成部102は、ステップS408において、内部領域のパスを線幅変更パスとして決定する。
【0070】
ステップS406において、どちらかの属性が内部領域であると判断されなかった場合、ステップS410において、データ生成部102は、どちらかの属性が最上下面の内側であるか否かを判断する。どちらかの属性が最上下面の内側であれば、データ生成部102は、ステップS412において、最上下面の内側のパスを線幅変更パスとして決定する。
【0071】
ステップS410において、どちらかの属性が最上下面の内側であると判断されなかった場合、ステップS414において、データ生成部102は、どちらかの属性が最上下面であるか否かを判断する。どちらかの属性が最上下面であれば、データ生成部102は、ステップS416において、最上下面のパスを線幅変更パスとして決定する。
【0072】
ステップS414において、どちらかの属性が最上下面であると判断されなかった場合、ステップS418において、データ生成部102は、どちらかが最外殻の内側のパスであるか否かを判断する。どちらかが最外殻の内側のパスであれば、ステップS420において、データ生成部102は、最外殻の内側のパスを線幅変更パスとして決定する。
【0073】
ステップS418において、どちらかが最外殻の内側のパスであると判断されなかった場合、つまり、どちらかが最外殻のパスであると判断された場合、ステップS422において、データ生成部102は、あとに造形する隣接パスを線幅変更パスとして決定する。
【0074】
以上で説明した変更対象決定処理によれば、隣接パスの属性が、最外殻、最外殻の内側、最上下面、最上下面の内側、内部領域、の順に線幅が変更される優先順位が高くなっていく。つまり、より外観に影響を与えにくく、後から造形が行われるパスが優先的に線幅変更パスとして決定されやすくなる。従って、線幅の増加に伴って、外観形状が変化することを効果的に抑制できる。
【0075】
以上で説明した第2実施形態によれば、空隙部分の幅や長さに応じて線幅を変更するパスを特定することができ、更に、片側の隣接パスの線幅を大きくする場合においては、空隙部分に隣接するパスの属性に応じて、どちらの隣接パスの線幅を変更かを決定することができる。そのため、三次元造形装置100の造形精度を向上させることができる。なお、上述した
図11のステップS306における変更対象決定処理では、
図15に示した処理を実行することによって隣接パスの属性に応じて線幅変更パスの決定を行っているが、空隙部分に隣接する2つの隣接パスのうち、後から造形される隣接パスを一律に線幅変更パスとして決定してもよい。
【0076】
C.第3実施形態:
図16は、第3実施形態におけるデータ変更処理を説明するための図である。
図16の上側には、
図5に示した造形データ生成処理のステップS130において、円弧状の外周形状を有し、長さ方向において幅が変化する隙間部分G3が特定された例を示している。このように、幅が変化する隙間部分が特定された場合、データ生成部102は、第2部分経路においてステージ210又は先に形成された層に堆積される造形材料の幅が、隙間部分の幅の変化に従って変化するように、造形データを生成する。具体的には、本実施形態では、隙間部分に隣接する第2部分経路を複数の部分経路に分割し、分割されたそれぞれの部分経路の線幅を、隙間部分に幅の変化に従って変化するように増加させる。このように、造形データを変更することにより、隙間部分を効率的に埋めることが可能となり、造形精度を高めることが可能になる。
【0077】
本実施形態において、データ生成部102は、更に、
図17に示すように、第2部分経路を、隙間部分G3の形状に応じた形状の経路に変更して、造形データを生成することが好ましい。
図17では、分割された各部分経路が、破線によって示した直線状の経路から、隙間部分の円弧形状に沿う経路に変更されている。経路の変更は、例えば、隙間部分を挟む両側の経路の中心を通るように経路を変更することで実現される。このように、第2部分経路を、隙間部分の形状に応じた形状の経路に変更することにより、隙間部分を更に効率的に埋めることが可能となり、造形精度を高めることが可能になる。
【0078】
なお、隙間部分の形状に応じて経路の形状を変更することには、例えば、
図18に示すように、直線状の第2部分経路R2が、線幅変更後の造形材料の中心を通るように、第2部分経路R2につながる部分経路PP3の長さを変更することや、第2部分経路R2の位置を変更することも含む。
【0079】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態では、材料供給部20に供給される原材料として、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。これに対して、三次元造形装置100は、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0080】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、造形材料生成部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。
【0081】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック
【0082】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、造形材料生成部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0083】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル61からの射出時には約200℃であることが望ましい。このように高温の状態で造形材料を射出するために、ノズル61の周囲にはヒーターが設けられてもよい。
【0084】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、原材料として造形材料生成部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金
【0085】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ210に配置された造形材料はレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0086】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、造形材料生成部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0087】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等
【0088】
その他に、材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0089】
(D-2)上記実施形態において、造形部110は、フラットスクリュー40によって材料を可塑化している。これに対して造形部110は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、造形部110として、FDM(熱溶解積層法)に用いられるヘッドを採用してもよい。
【0090】
(D-3)上記実施形態において、開閉機構70は、ピストンが流路65内に突出して流路65を閉塞するプランジャーを用いた機構や、流路65に交差する方向に移動して流路65を閉塞するシャッターを用いた機構によって構成されてもよい。開閉機構70は、上記実施形態のバタフライバルブや、上述のシャッター機構、プランジャー機構のうちの2つ以上を組み合わせて構成されてもよい。また、開閉機構70ではなく、フラットスクリュー40の回転数を制御することによって、造形材料の吐出量を制御してもよい。
【0091】
(D-4)上記実施形態では、造形データに含まれる吐出制御データには、造形材料の吐出量を表す情報が含まれており、その吐出量を増加させることによって、ステージ210上に堆積される造形材料の幅を増加させている。これに対して、吐出制御データには、吐出部60の移動速度を表す移動速度情報が含まれてもよい。この場合、
図5のステップS150に示したデータ変更処理では、第2部分経路に対応付けられた移動速度を遅くすることによって、ステージ210に堆積される造形材料の幅を増加させることができる。この場合、各部分経路の造形にあたり、単位時間に吐出される造形材料の量は一定であることが好ましい。ただし、造形材料の吐出量と吐出部60の移動速度の両方を調整することによって、ステージ210に堆積される造形材料の幅を調整することも可能である。
【0092】
(D-5)上記実施形態において、データ生成部102は、XY平面において、予め定められた基準方向に沿って吐出部60を往復移動させながらその基準方向に直交する方向に徐々に吐出部60を移動させることによって内部領域を埋める吐出経路を第2造形データZD2として生成している。これに対して、データ生成部102は、内部領域を渦巻き状の吐出経路によって埋めるように第2造形データを生成してもよい。
【0093】
(D-6)上記実施形態では、第1造形データにより三次元造形物の外殻領域が造形され、第2造形データにより内部領域が造形されるものとしている。これに対して、造形データは、第1造形データと第2造形データとに区別されていなくてもよい。三次元造形物は、単一種類の造形データによって造形されてもよい。
【0094】
E.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0095】
(1)本開示の第1の形態によれば、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を複数の部分経路によって表した経路データを有するとともに、各前記部分経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報、および、各前記部分経路における前記吐出部の移動速度を表す移動速度情報の少なくとも一方を含む吐出制御データを有する中間データを生成する第1工程と、前記中間データを解析して、第1部分経路と、前記第1部分経路よりも後に前記吐出部から前記造形材料が吐出される第2部分経路との間に挟まれた隙間部分を特定する第2工程と、前記第2部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記中間データから造形データを生成する第3工程と、前記造形データに従って前記吐出部を制御して前記三次元造形物を造形する第4工程と、を備える。
このような形態によれば、第1部分経路と、第1部分経路よりも後に造形材料が吐出される第2部分経路とに挟まれた隙間部分があっても、後から造形材料が吐出される第2部分経路において、ステージ又は先に形成された層に堆積される造形材料の幅が増加するように、造形データが生成されるので、三次元造形物の造形時に、隙間部分を埋めるために吐出部を離れた位置から隙間部分に移動させる必要がない。従って、吐出部からの造形材料の垂れ下がりによって三次元造形物の造形精度が低下することを抑制できる。
【0096】
(2)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第1部分経路は、前記三次元造形物の外殻に沿った外殻領域を造形するための経路の一部であり、前記第2部分経路は、前記三次元造形物のうちの前記外殻領域以外の領域である内部領域を造形するための経路の一部であってもよい。
このような形態によれば、三次元造形物の外殻に沿った外殻領域と、外殻領域以外の領域である内部領域との間の隙間部分を、内部領域を造形するための第2部分経路においてステージ又は先に形成された層に堆積される造形材料の幅を増加させることで埋めることができる。
【0097】
(3)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程では、前記外殻領域を造形するための経路と前記内部領域を造形するための経路とが連続する経路となるように前記造形データを生成してもよい。
このような形態によれば、三次元造形物の外殻領域と内部領域とを連続して造形することができるので、吐出部からの造形材料の垂れ下がりによって三次元造形物の造形精度が低下することをより効果的に抑制できる。
【0098】
(4)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程では、前記第2部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が、前記隙間部分の幅の変化に従って変化するように、前記造形データを生成してもよい。
このような形態によれば、隙間部分を精度よく埋めることができる。
【0099】
(5)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程では、前記隙間部分の形状に応じて、前記経路データに含まれる前記第2部分経路を変更して、前記造形データを生成してもよい。
このような形態によれば、隙間部分を精度よく埋めることができる。
【0100】
(6)上記形態の三次元造形物の製造方法において、各前記部分経路において前記ステージ又は前記層に堆積させる前記造形材料の基準幅Ssと、各前記部分経路において前記ステージに堆積させることが可能な前記造形材料の最大幅Smaxと、前記隙間部分の幅Wと、が、W≦Smax-Ssの関係を満たす場合、前記第3工程では、前記第2部分経路に対応する前記吐出制御データのみを変更してもよい。
このような形態によれば、第2部分経路において堆積される造形材料の幅を増加させることによって効率的に隙間部分を埋めることができる。
【0101】
(7)上記形態の三次元造形物の製造方法において、各前記部分経路において前記ステージ又は前記層に堆積させる前記造形材料の基準幅Ssと、各前記部分経路において前記ステージに堆積させることが可能な前記造形材料の最大幅Smaxと、前記隙間部分の幅Wと、が、W>Smax-Ssの関係を満たす場合、前記第3工程では、前記第2部分経路に加えて、前記第1部分経路において前記ステージ又は先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように、前記第1部分経路に対応する前記吐出制御データを変更して、前記造形データを生成してもよい。
このような形態によれば、第2部分経路において堆積される造形材料の幅を増加させるだけではなく、第1部分経路において堆積される造形材料の幅も増加させることによって、隙間部分を埋めることができる。
【0102】
(8)本開示の第2の形態によれば、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、隣り合って堆積される前記造形材料同士の間隔が第1間隔となるように前記吐出部を前記ステージ上で移動させつつ、前記吐出部から前記造形材料を吐出させて前記三次元造形物のうちの第1部分を造形する第1部分造形工程と、前記第1部分造形工程で前記ステージまたは先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅よりも、前記ステージまたは先に形成された前記層に堆積される前記造形材料の幅が増加するように前記吐出部から前記造形材料を吐出させて、前記第1部分に接するように前記層のうちの前記第1部分を除く第2部分を造形する第2部分造形工程と、を備える。
このような形態によれば、第1部分と第2部分とに隙間が生じないように、三次元造形物を造形することができるので、隙間部分を埋めるために吐出部を離れた位置から隙間部分に移動させる必要がない。従って、吐出部からの造形材料の垂れ下がりによって三次元造形物の造形精度が低下することを抑制できる。
【0103】
本開示は、上述した三次元造形物の製造方法としての形態に限らず、三次元造形装置や三次元造形システム、三次元造形装置の制御方法などの種々の形態として実現可能である。
【符号の説明】
【0104】
20…材料供給部、22…連通路、30…造形材料生成部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…スクリュー対面部、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…吐出口、65…流路、70…開閉機構、72…駆動軸、73…弁体、74…バルブ駆動部、100…三次元造形装置、101…制御部、102…データ生成部、110…造形部、210…ステージ、211…面、230…移動機構