(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 13/02 20060101AFI20240528BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240528BHJP
B65H 29/20 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B41J13/02
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B65H29/20
(21)【出願番号】P 2019169450
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆俊
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-113265(JP,A)
【文献】登録実用新案第3060361(JP,U)
【文献】実開平03-087246(JP,U)
【文献】特開平10-279130(JP,A)
【文献】特開2007-118440(JP,A)
【文献】特開2010-023373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 13/00- 13/32
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12- 29/24
B65H 29/32
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が前記画像を形成する画像形成領域を通過するようにシートを搬送する搬送部と、
前記画像形成領域よりも前記シートの搬送方向下流側に設けられ、互いに当接する2つのローラーでニップ領域を形成し、前記シートを挟持搬送する搬送ローラー対と、
前記2つのローラーを互いに離間させる離間機構と、
前記離間機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送部により搬送されている前記シートの先端部が前記ニップ領域に到達する前に前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させ
、
前記搬送部により搬送されている前記シートへの前記画像形成部による画像形成が終了した場合に、前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクを吐出して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が前記画像を形成する画像形成領域を通過するようにシートを搬送する搬送部と、
前記画像形成領域よりも前記シートの搬送方向下流側に設けられ、互いに当接する2つのローラーでニップ領域を形成し、前記シートを挟持搬送する搬送ローラー対と、
前記2つのローラーを互いに離間させる離間機構と、
前記離間機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送部により搬送されている前記シートの先端部が前記ニップ領域に到達する前に前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させ、
前記シートの先端部が前記ニップ領域を通過した後に前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除し、
前記シートが厚紙又はコート紙である場合に、前記シートが厚紙又はコート紙でない場合よりも早いタイミングで、前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクを吐出して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が前記画像を形成する画像形成領域を通過するようにシートを搬送する搬送部と、
前記画像形成領域よりも前記シートの搬送方向下流側に設けられ、互いに当接する2つのローラーでニップ領域を形成し、前記シートを挟持搬送する搬送ローラー対と、
前記2つのローラーを互いに離間させる離間機構と、
前記離間機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送部により搬送されている前記シートの先端部が前記ニップ領域に到達する前に前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させ、
前記シートの先端部が前記ニップ領域を通過した後に前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除し、
前記搬送方向の前記シートの長さが前記画像形成領域と前記ニップ領域との距離よりも長い場合にのみ、前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、搬送されるシートに記録ヘッドからインクを吐出することで画像を形成する。記録ヘッドよりも搬送方向下流側には搬送ローラー対が設けられている。搬送ローラー対は、駆動ローラーと従動ローラーとが当接するニップ領域にシートを挟持して搬送する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニップ領域は、例えば従動ローラーがばねで駆動ローラーに押し当てられることで形成される。そのため、ニップ領域にシートが突入する際に、ばねの付勢力がシートに対する抵抗となって搬送速度が一時的に低下することが考えられる。画像の形成中に搬送速度が変化すると、インクの着弾位置がずれて画像の形状が乱れるおそれがある。また、カラー画像の形成中に搬送速度が変化すると、色ずれが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、画像形成中のシートが搬送ローラー対のニップ領域に突入することによる画質の低下を抑制することのできるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部が前記画像を形成する画像形成領域を通過するようにシートを搬送する搬送部と、前記画像形成領域よりも前記シートの搬送方向下流側に設けられ、互いに当接する2つのローラーでニップ領域を形成し、前記シートを挟持搬送する搬送ローラー対と、前記2つのローラーを互いに離間させる離間機構と、前記離間機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記搬送部により搬送されている前記シートの先端部が前記ニップ領域に到達する前に前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させ、前記シートの先端部が前記ニップ領域を通過した後に前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るインクジェット記録装置において、前記画像形成領域と前記搬送ローラー対との間の位置で前記シートを検知する検知部を備え、前記制御部は、前記シートの先端部が前記検知部を通過した場合に、前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させるように構成されてもよい。
【0008】
本発明に係るインクジェット記録装置において、前記制御部は、前記シートの前記搬送方向上流側の端部が前記検知部を通過した場合に、前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除するように構成されてもよい。
【0009】
本発明に係るインクジェット記録装置において、前記制御部は、前記搬送部により搬送されている前記シートへの前記画像形成部による画像形成が終了した場合に、前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除するように構成されてもよい。
【0010】
本発明に係るインクジェット記録装置において、前記制御部は、前記シートが厚紙又はコート紙である場合に、前記シートが厚紙又はコート紙でない場合よりも早いタイミングで、前記離間機構による前記2つのローラーの離間を解除するように構成されてもよい。
【0011】
本発明に係るインクジェット記録装置において、前記制御部は、前記搬送方向の前記シートの長さが前記画像形成領域と前記ニップ領域との距離よりも長い場合にのみ、前記離間機構により前記2つのローラーを互いに離間させるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像形成中のシートが搬送ローラー対のニップ領域に突入することによる画質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る搬送ローラー対の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る搬送ローラー対の右側面図である。
【
図4】従動ローラーが駆動ローラーから離間した様子を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプリンターの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。
【
図7】本発明の一実施形態の変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。
【
図9】本発明の一実施形態の変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。
【
図10】本発明の一実施形態の変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るプリンター1(インクジェット記録装置)について説明する。
【0015】
まず、
図1を参照して、プリンター1の全体の構成について説明する。
図1は、プリンター1の内部構成を模式的に示す図である。以下、
図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。以下の説明において、上流側、下流側とは、それぞれシートSの搬送方向上流側、搬送方向下流側を意味する。
【0016】
図1に示されるように、プリンター1は、インクを吐出してシートSに画像を形成するインクジェット式の画像形成装置であり、シートSに対して片面印刷及び両面印刷が実行可能である。プリンター1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング10を備えている。ハウジング10内の下部にはシートSが収容される給紙カセット15が収容され、ハウジング10の右側面11にはシートSが手差しで積載される手差しトレイ16が設けられている。ハウジング10の左側面12の上部には、画像形成済みのシートSが積載される排紙トレイ17が設けられ、排紙トレイ17の上方には、シートSが排出される排紙口56が形成されている。シートSは、枚葉シートである。
【0017】
ハウジング10内の中央部には、シートSに画像を形成する画像形成部41が設けられ、画像形成部41の下方には、画像が形成されるシートSを搬送する第1搬送ユニット44(搬送部の一例)が設けられ、第1搬送ユニット44の左方には、画像形成済みのシートSを搬送する第2搬送ユニット50が設けられている。
【0018】
ハウジング10内の右側部には、給紙カセット15から第1搬送ユニット44に至る第1搬送路21と、手差しトレイ16から第1搬送路21に合流する手差し搬送路24が形成されている。ハウジング10内の左側部には、第2搬送ユニット50から排紙トレイ17に至る第2搬送路22が形成されている。ハウジング10内の上部には、第2搬送路22から分岐して第1搬送路21に合流する第3搬送路23が形成されている。
【0019】
第1搬送路21の搬送方向上流側の端部には、給紙部18が設けられ、給紙部18よりも下流側には、レジストローラー対30が設けられている。給紙部18は、給紙カセット15に収容されたシートSを1枚ずつ第1搬送路21に送り出すローラーを備える。レジストローラー対30は、上下に対向する従動ローラーと駆動ローラーとを備える。
【0020】
手差し搬送路24は、給紙部18とレジストローラー対30との間で第1搬送路21に合流する。手差し搬送路24の搬送方向上流側の端部には、手差し給紙部19が設けられている。手差し給紙部19は、手差しトレイ16に積載されたシートSを1枚ずつ手差し搬送路24に送り出すローラーを備える。
【0021】
[画像形成部]
画像形成部41には、インクを吐出する複数のラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yが設けられている。ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを吐出する。以下、画像形成部41が画像を形成する領域、すなわち、ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yと第1搬送ベルト45との間の領域を、画像形成領域Aという。
【0022】
[搬送部]
第1搬送ユニット44(搬送部の一例)は、複数のプーリー46a乃至46eに巻き掛けられた第1搬送ベルト45を備える。プーリー46aがモーター等の駆動源(図示省略)で駆動されることで、第1搬送ベルト45がY2方向に駆動される。第1搬送ベルト45には多数の貫通穴が形成されている。第1搬送ベルト45の内側の画像形成部41に対向する位置には、第1搬送ベルト45の貫通穴に負圧を生じさせる第1吸引部47が設けられている。第1搬送ユニット44は、画像形成領域Aを通過するようにシートSを搬送する。
【0023】
第2搬送ユニット50は、複数のプーリー52a、52bに巻き掛けられた第2搬送ベルト51を備える。プーリー52aがモーター等の駆動源(図示省略)で駆動されることで、第2搬送ベルト51がY3方向に駆動される。第2搬送ベルト51には多数の貫通穴が形成されている。第2搬送ベルト51の内側の上部には、第2搬送ベルト51の貫通穴に負圧を生じさせる第2吸引部53が設けられている。
【0024】
第2搬送路22の搬送方向上流側の端部には、搬送ローラー対60が設けられ、第2搬送路22の下流側端部には、排紙部55が設けられている。排紙部55は、第2搬送路22から排紙トレイ17にシートSを排出するローラーを備える。第2搬送路22の搬送方向上流側の端部と下流側の端部との間には案内部材25が設けられている。案内部材25は、揺動可能な楔状の部材であり、モーター等(図示省略)により駆動される。案内部材25は、シートSを排紙トレイ17と第3搬送路23とのいずれかに案内する。
【0025】
第3搬送路23は、シート反転部26を備える。シート反転部26は、正回転と逆回転が可能なローラーと、揺動可能な案内部材とを備え、シートSをスイッチバックすることで、表裏反転されたシートSをレジストローラー対30に搬送する。
【0026】
次に、プリンター1の画像形成動作について説明する。プリンター1に画像形成指示が入力されると、シートSが、給紙カセット15又は手差しトレイ16から送り出され、第1搬送路21に沿ってY1方向に搬送される。シートSがレジストローラー対30に到達すると、回転を停止したレジストローラー対30にシートSの先端部(下流側端部)が突き当てられることでシートSのスキューが矯正され、画像形成部41によるインクの吐出タイミングに同期させてレジストローラー対30から第1搬送ユニット44にシートSが搬送される。シートSは、第1搬送ベルト45の貫通穴の負圧によって第1搬送ベルト45に吸着され、Y2方向に搬送される。そして、各ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yから第1搬送ベルト45に吸着されたシートSに向けてインクが吐出されることでシートSの第1面に画像が形成される。
【0027】
第1面に画像が形成されたシートSは、第1搬送ユニット44によって第2搬送ユニット50に搬送される。シートSは、第2搬送ベルト51の貫通穴の負圧によって第2搬送ベルト51に吸着され、Y3方向に搬送される。片面印刷時には、シートSは、搬送ローラー対60によって第2搬送路22に沿ってY4方向に搬送され、排紙部55によって排紙トレイ17に排出される。一方、両面印刷時には、シートSは、案内部材25によって第2搬送路22から第3搬送路23に案内され、Y5方向に搬送された後、シート反転部26によりY6方向にスイッチバックされ、表裏反転された状態でレジストローラー対30に搬送される。シートSは、レジストローラー対30によってスキューが矯正された後、第1搬送ユニット44に搬送され、シートSの第2面に画像が形成される。第2面に画像が形成されたシートSは、第2搬送ユニット50によりY3方向に搬送され、搬送ローラー対60によって第2搬送路22に沿ってY4方向に搬送され、排紙部55によって排紙口56から排紙トレイ17に排出される。
【0028】
次に、
図2乃至4を参照して、搬送ローラー対60の構成について説明する。
図2は、搬送ローラー対60の正面図である。
図3は、搬送ローラー対60の右側面図である。
図4は、従動ローラー62が駆動ローラー61から離間した様子を示す正面図である。なお、
図2及び4では、
図3に示されるモーター63Mとギア列63Gが省略されている。
【0029】
[搬送ローラー対]
搬送ローラー対60は、互いに当接する駆動ローラー61と従動ローラー62とでシートSを挟持搬送する。搬送ローラー対60は、下側に配置された駆動ローラー61と、上側に配置された従動ローラー62とを備える。駆動ローラー61は、ハウジング10に固定された固定フレーム61Fに支持され、ギア列61Gを介してモーター61Mにより駆動される。従動ローラー62は、可動フレーム62Fに支持される。可動フレーム62Fは、ヒンジ62Hを介してハウジング10に支持され、ヒンジ62Hを中心として上下方向に揺動可能であり、圧縮コイルばね62Sによって駆動ローラー61に向けて付勢されている。この構成により、従動ローラー62が駆動ローラー61に当接してニップ領域Nが形成され、駆動ローラー61の回転に追従して回転する。
【0030】
[離間機構]
離間機構63は、当接片63W、偏心カム63C、ギア列63G及びモーター63Mを備える。可動フレーム63Fの前端部、後端部には、それぞれ前方、後方に突き出た当接片63Wが形成され、当接片63Wの下面に偏心カム63Cが接触している。偏心カム63Cは、ハウジング10に支持され、ギア列63Gを介してモーター63Mにより駆動される。離間機構63は、偏心カム63Cを回転させて可動フレーム62Fを上方に移動させることで、従動ローラー62を駆動ローラー61から離間させる(
図4参照)。
【0031】
次に、
図1、5を参照して、プリンター1の電気的構成について説明する。
図5は、プリンター1の電気的構成を示すブロック図である。プリンター1は、制御部2を備え、第1搬送ユニット44、第2搬送ユニット50、駆動ローラー61、検知部70、画像形成部41が制御部2に接続されている。なお、第1搬送ユニット44、第2搬送ユニット50、駆動ローラー61、離間機構63、画像形成部41については前述のとおりであるから、説明を省略する。
【0032】
[制御部]
制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等の記憶装置と、を備える。記憶装置は、制御プログラムや制御用データを記憶する。演算装置は、制御プログラムを読み出して実行することでプリンター1の各部を制御する。なお、制御部2は、集積回路等に形成された論理回路によって実現されてもよい。
【0033】
[検知部]
検知部70は、
図1に示されるように、第1搬送ユニット44と第2搬送ユニット50の間の位置に設けられ、シートSを検知する。検知部70は、例えば、透過型の光電センサーであり、シートSによって光が遮られた場合に第1レベルの検知信号を制御部2に出力し、光が遮られていない場合に第2レベルの検知信号を制御部2に出力する。制御部2は、検知信号が第2レベルから第1レベルに変化した場合に、シートSの先端部が検知部70を通過したと判定し、検知信号が第1レベルから第2レベルに変化した場合に、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過したと判定する。
【0034】
次に、
図6を参照して、プリンター1の搬送ローラー対制御動作について説明する。
図6は、搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。プリンター1に画像形成指示が入力されると、制御部2は、1ページ分の画像形成を開始するたびに、
図6に示される搬送ローラー対制御動作を実行する。
【0035】
搬送ローラー対制御動作の概要を説明すると、制御部2は、第1搬送ユニット44により搬送されているシートSの先端部が搬送ローラー対60のニップ領域Nに到達する前に離間機構63により従動ローラー62を駆動ローラー61から離間させ、シートSの先端部がニップ領域Nを通過した後に離間機構63による従動ローラー62の離間を解除する。例えば、プリンター1は、画像形成領域Aと搬送ローラー対60との間の位置でシートSを検知する検知部70を備え、制御部2は、シートSの先端部が検知部70を通過した場合に、離間機構63により従動ローラー62を離間させ、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過した場合に、離間機構63による従動ローラー62の離間を解除する。
【0036】
搬送ローラー対制御動作の詳細は、以下のとおりである。なお、本実施形態では、一例として、プリンター1において画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離が250mmであり、A4サイズのシートSを長辺(長さ297mm)を搬送方向と平行にして搬送する場合を想定する。
【0037】
最初に、制御部2は、検知部70から出力された検知信号に基づいて、第1搬送ユニット44によりY2方向に搬送されているシートSの先端部が検知部70を通過したか否かを判定する(ステップS01)。シートSの先端部が検知部70を通過していないと判定した場合には(ステップS01:NO)、制御部2は、ステップS01の処理を繰り返す。一方、シートSの先端部が検知部70を通過したと判定した場合には(ステップS01:YES)、制御部2は、ステップS02の処理に移行し、離間機構63により搬送ローラー対60の従動ローラー62を駆動ローラー61から離間させる。
【0038】
次に、制御部2は、検知部70から出力された検知信号に基づいて、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過したか否かを判定する(ステップS03)。シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過していないと判定した場合には(ステップS03:NO)、制御部2は、ステップS03の処理を繰り返す。一方、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過したと判定した場合には(ステップS03:YES)、制御部2は、ステップS04の処理に移行し、離間機構63による従動ローラー62の離間を解除することで、従動ローラー62を駆動ローラー61に当接させてシートSを搬送する。
【0039】
前述のとおり、画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離が250mmであり、A4サイズのシートSを長辺(長さ297mm)を搬送方向と平行にして搬送する場合、従来は、画像形成領域Aを通過中のシートSの先端部がニップ領域Nに突入して搬送速度が変化し、色ずれ等が発生するおそれがあった。本実施形態に係るプリンター1によれば、第1搬送ユニット44により搬送されるシートSの先端部がニップ領域Nに到達する前に離間機構63により従動ローラー62を離間させることで、画像形成中のシートSがニップ領域Nに突入することが回避される。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るプリンター1によれば、画像形成中のシートSが搬送ローラー対60のニップ領域Nに突入することによる画質の低下を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るプリンター1によれば、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過した場合に、離間機構63による従動ローラー62の離間を解除するから、画像形成中のシートSが搬送ローラー対60に挟持されることによる画質の低下を抑制することができる。
【0042】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0043】
[変形例1]
上記実施形態では、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過した場合に、制御部2が離間機構63による従動ローラー62の離間を解除する例を示したが、第1搬送ユニット44により搬送されているシートSへの画像形成部41による画像形成が終了した場合に、制御部2が離間機構63による従動ローラー62の離間を解除するように構成されてもよい。
【0044】
図7は、本変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。本変形例では、上記実施形態(
図6参照)のステップS03の処理に代えてステップS13の処理が実行される。ステップS13においては、制御部2が、第1搬送ユニット44により搬送されているシートSへの画像形成部41による画像形成が終了したか否かを判定する。例えば、制御部2が、ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yへの駆動信号の出力が終了した場合に、当該シートSへの画像形成が終了したと判定してもよい。当該シートSへの画像形成が終了していないと判定した場合には(ステップS13:NO)、制御部2は、ステップS13の処理を繰り返す。一方、当該シートSへの画像形成が終了したと判定した場合には(ステップS13:YES)、制御部2は、ステップS04の処理に移行する。
【0045】
本変形例によれば、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過していなくても、画像形成が終了し次第、従動ローラー62の離間が解除されて搬送ローラー対60によりシートSが挟持搬送されるから、上記実施形態と比べて、シートSの搬送を安定させることができる。
【0046】
[変形例2]
上記実施形態では、シートSの種類を考慮していないが、シートSが厚紙又はコート紙である場合に、シートSが厚紙又はコート紙でない場合(普通紙の場合)よりも早いタイミングで、離間機構63による従動ローラー62の離間を解除するように構成されてもよい。
【0047】
図8は、本変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。本変形例では、上記実施形態(
図6参照)の各ステップに加えて、ステップS21、S22の処理が実行される。ステップS21においては、制御部2が、画像形成指示で指定されたシートSの種類が厚紙又はコート紙であるか否かを判定し、厚紙又はコート紙でないと判定した場合には(ステップS21:NO)、ステップS03の処理に移行する。一方、厚紙又はコート紙であると判定した場合には(ステップS21:YES)、制御部2は、ステップS22の処理に移行し、所定時間T1が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間T1とは、シートSの先端部が検知部70を通過してからシートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過するのに要する時間よりも短い時間である。所定時間T1が経過していないと判定した場合には(ステップS22:NO)、制御部2は、ステップS22の処理を繰り返す。一方、所定時間T1が経過したと判定した場合には(ステップS22:YES)、制御部2は、ステップS04の処理に移行する。
【0048】
厚紙は普通紙よりも坪量が大きく、コート紙は普通紙よりも表面が滑りやすいが、本変形例によれば、シートSが厚紙又はコート紙の場合には、シートSが厚紙又はコート紙でない場合よりも早いタイミングで搬送ローラー対60による挟持搬送が開始されるから、厚紙やコート紙の搬送を安定させることができる。
【0049】
[変形例3]
上記実施形態では、画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離が250mmであり、A4サイズのシートSを長辺(長さ297mm)を搬送方向と平行にして搬送する場合、すなわち、搬送方向のシートSの長さが画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離よりも長い場合を想定したが、搬送方向のシートSの長さが画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離よりも長い場合にのみ、制御部2が、離間機構63により従動ローラー62を離間させるように構成されてもよい。
【0050】
図9は、本変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。本変形例では、上記実施形態(
図6参照)の各ステップに加えて、ステップS41の処理が実行される。ステップS41においては、制御部2が、画像形成指示で指定されたシートSの搬送方向と平行な辺の長さが250mm以下であるか否かを判定し、搬送方向と平行な辺の長さが250mm以下でない場合には(ステップNO)、ステップS01の処理に移行する。一方、搬送方向と平行な辺の長さが250mm以下である場合には(ステップYES)、制御部2は、搬送ローラー対制御動作を終了する。
【0051】
搬送方向のシートSの長さが画像形成領域Aとニップ領域Nとの距離以下である場合、シートSの先端部が搬送ローラー対60のニップ領域Nに到達するときにはシートSに対する画像形成は終了しているため、シートSの先端部がニップ領域Nに突入しても画質は低下しない。従って、従動ローラー62を離間させることは不要である。本変形例によれば、不要な処理が省略されるから、消費電力を抑制することができる。
【0052】
[変形例4]
上記実施形態では、シートSの先端部が検知部70を通過した場合に、制御部2が離間機構63により従動ローラー62を離間させる例を示したが、シートSの先端部が検知部70を通過してから所定時間T2経過後に、制御部2が離間機構63により従動ローラー62を離間させるように構成されてもよい。
【0053】
図10は、本変形例に係る搬送ローラー対制御動作を示す流れ図である。本変形例では、上記実施形態(
図6参照)の各ステップに加えて、ステップS51の処理が実行される。ステップS51においては、制御部2が、所定時間T2が経過したか否かを判定する。所定時間T2とは、シートSの先端部が検知部70を通過してからニップ領域Nに到達するのに要する時間よりも若干短い時間である。
【0054】
本変形例によれば、上記実施形態と比べて、従動ローラー62の離間が解除されている時間が短くなるから、第1搬送ユニット44により搬送されているシートSの1枚前のシートSの搬送を安定させることができる。
【0055】
[変形例5]
上記実施形態では、検知部70を用いてシートSの先端部と搬送方向上流側の端部との通過を判定する例を示したが、レジストローラー対30が回転を開始するタイミングからシートSの先端部と搬送方向上流側の端部との通過を判定するように構成されてもよい。一例として、
図10を参照して、本変形例の動作を説明する。ここでは、上記実施形態で検知部70が設けられていた位置を基準位置と呼ぶ。レジストローラー対30が回転を開始してからシートSの先端部が基準位置を通過するのに要する時間を所定時間T3と呼ぶ。レジストローラー対30が回転を開始してからシートSの搬送方向上流側の端部が基準位置を通過するのに要する時間を所定時間T4と呼ぶ。
【0056】
最初に、制御部2は、第1搬送ユニット44によりY2方向に搬送されているシートSの先端部が基準位置を通過したか否かを判定する(ステップS01)。具体的には、制御部2は、レジストローラー対30が回転を開始してから所定時間T3が経過していない場合に、シートSの先端部が基準位置を通過していないと判定し(ステップS01:NO)、ステップS01の処理を繰り返す。一方、制御部2は、レジストローラー対30が回転を開始してから所定時間T3が経過した場合に、シートSの先端部が基準位置を通過したと判定し(ステップS01:YES)、ステップS02の処理に移行し、離間機構63により搬送ローラー対60の従動ローラー62を駆動ローラー61から離間させる。
【0057】
次に、制御部2は、シートSの搬送方向上流側の端部が検知部70を通過したか否かを判定する(ステップS03)。具体的には、制御部2は、レジストローラー対30が回転を開始してから所定時間T4が経過していない場合に、シートSの搬送方向上流側の端部が基準位置を通過していないと判定し(ステップS03:NO)、ステップS03の処理を繰り返す。一方、制御部2は、レジストローラー対30が回転を開始してから所定時間T4が経過した場合に、シートSの搬送方向上流側の端部が基準位置を通過したと判定し(ステップS03:YES)、ステップS04の処理に移行し、離間機構63による従動ローラー62の離間を解除することで、従動ローラー62を駆動ローラー61に当接させてシートSを搬送する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
上記実施形態では、偏心カム63Cを用いて可動フレーム62Fを揺動させる例を示したが、ソレノイドアクチュエーター等を用いて可動フレーム62Fを揺動させるように構成されてもよい。
【0059】
上記実施形態では、従動ローラー62を駆動ローラー61から離間させる例を示したが、駆動ローラー61を従動ローラー62から離間させるように構成されてもよい。
【0060】
上記実施形態では、駆動ローラー61が下側に配置され、従動ローラー62が上側に配置された例を示したが、駆動ローラー61が上側に配置され、従動ローラー62が下側に配置されたプリンター1に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
2 制御部
10 ハウジング
41 画像形成部
44 第1搬送ユニット(搬送部)
60 搬送ローラー対
61 駆動ローラー(ローラー)
62 従動ローラー(ローラー)
63 離間機構
70 検知部
A 画像形成領域
N ニップ領域