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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H04R1/10 104A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019205408
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021078071
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】美和 康弘
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328118(JP,A)
【文献】特開2012-244515(JP,A)
【文献】中国実用新案第2627772(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピ―カユニットを収容した概ね円筒状の本体部と、
円環状に形成された係合基部を有し、前記係合基部を前記本体部に嵌めつけることで前記本体部に取り付けられるサポータと、
前記本体部に対し、前記サポータを、前記本体部の軸線延びる方向の複数の位置で選択的に係合可能とする凹凸係合部と、を備えたイヤホン。
【請求項2】
前記サポータは、前記本体部に対し、前記軸線まわりに回動可能であることを特徴とする請求項1記載のイヤホン。
【請求項3】
前記凹凸係合部は、
前記本体部及び前記サポータの一方において、周方向の所定の角度範囲で前記軸線の延びる方向に離隔して形成された複数の凹部と、
前記本体部及び前記サポータの他方において、前記複数の凹部それぞれに対し選択的に係合可能に形成された凸部と、を含み構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のイヤホン。
【請求項4】
前記複数の凹部の組及び前記凸部は、周方向の対向する位置にそれぞれ一対が形成されており、
前記一対の凸部それぞれは、前記一対の複数の凹部の組の一方と他方とに対し、前記軸線の延びる方向において異なる位置の凹部に係合可能であることを特徴とする請求項3記載のイヤホン。
【請求項5】
前記サポータは、耳介の外側に掛けるフックであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
本体部と、本体部から延び出て耳介の外側に掛ける、或いは耳介の内側に係合させることでイヤホンの本体の耳介への装着を安定化させるサポータとを備えたイヤホンが知られている。
特許文献1には、サポータとして、ハンガー或いはフックと称される掛け部を備えたイヤホンが記載されている。特許文献1に記載されたイヤホンは、使用時に外耳道に挿入されるイヤピースが取り付けられる音筒部を有する本体部と、使用時に耳介の外側に掛けるよう本体部に取り付けられた耳掛け部とを備えている。以下、耳掛け部をフックと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5527282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イヤホン使用者の耳介の形状、並びに、耳介に対する外耳道の孔の位置及び方向には個人差がある。
サポータとして特許文献1に記載されたようなフックを備えた従来のイヤホンは、本体部に対しフックの延出する位置或いは角度が固定されている。そのため、使用者によっては、イヤホンを耳介に装着した際に好みの装着感を得にくい場合があり、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、使用者それぞれにおいて好みの装着感を得やすいイヤホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1)スピ―カユニットを収容した概ね円筒状の本体部と、
円環状に形成された係合基部を有し、前記係合基部を前記本体部に嵌めつけることで前記本体部に取り付けられるサポータと、
前記本体部に対し、前記サポータを、前記本体部の軸線延びる方向の複数の位置で選択的に係合可能とする凹凸係合部と、を備えたイヤホンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用者それぞれにおいて好みの装着感を得やすい、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るイヤホンの実施例であるイヤホン91を、使用者92の左の耳介Eに装着した状態を示す図である。
図2図2は、イヤホン91を前斜め左下方向から見た斜視図である。
図3図3は、イヤホン91の本体部1とフック2とを分離した状態を示す分解斜視図である。
図4図4は、イヤホン91の図2におけるS4-S4位置での横断面図である。
図5図5は、イヤホン91の本体部1に対するフック2の回動を説明するための左面図である。
図6図6は、本体部1に対するフック2の第1角度での取り付け状態を示す図2のS5-S5位置での模式的縦断面図である。
図7図7は、イヤホン91の本体部1に対するフック2の左右方向位置を説明するための前面図である。
図8図8は、本体部1に対するフック2の第2角度での取り付け状態を示すS5-S5位置での模式的縦断面図である。
図9図9は、第2角度での取り付け状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るイヤホンを、実施例のフック2を備えたイヤホン91により説明する。
【0010】
(実施例)
図1は、使用者92の左の耳介Eにイヤホン91を装着した状態を示す左側頭部の図である。イヤホン91は、カナル型のワイヤレスイヤホンであり、サポータとして耳介Eの外側に掛けるフック2を有する。
イヤホン91は左の耳介Eに装着されて使用される左耳用である。右耳用のイヤホン91は、左右対称に形成され同じ構成を有するので、以下、左耳用のイヤホン91を説明する。
なお、上下前後の各方向を、便宜的に図1に矢印で示される方向に規定する。左方向は紙面奥側から手前側へ向かう方向であり、右方向は紙面手前側から奥側へ向かう方向である。
【0011】
図2は、イヤホン91の前斜め左下方向から見た斜視図であり、図3は分解斜視図である。
図2及び図3に示されるように、イヤホン91は、概ね円筒状の本体部1と、本体部1の取り付け部11に取り付けられたフック2とを有する。
【0012】
本体部1の内部には、図3に示されるスピーカユニットSP及び不図示の信号処理部が収容されている。
信号処理部は、外部の音声再生装置から出力された音声信号を無線で受信し、スピーカユニットSPから音として出力させる。
本体部1の右端部には、右斜め前上方に突出する音筒部14を有する。音筒部14には、イヤピース3が着脱自在に取り付けられている。
スピーカユニットSPから出力された音は、音筒部14の内部を通りイヤピース3の先端から外部に放出される。
【0013】
図3に示されるように、本体部1は、音筒部14側から、基部15,取り付け部11,及びフランジ部13を有する。
基部15は、概ね円筒状に形成されている。基部15の軸線を軸線CL1とする。軸線CL1は本体部1の軸線と一致する。
取り付け部11は、基部15よりも小径に形成されフック2が装着される部分である。
フランジ部13は、基部15と概ね同じ外径で形成されている。
取り付け部11の横断面形状及び縦断面形状は、それぞれ図4及び図5に示されている。
本体部1は硬質樹脂又は金属で形成されている。樹脂の例はABSであり、金属の例はアルミニウムである。
【0014】
図3図5に示されるように、取り付け部11は、本体部1の軸線CL1方向(概ね左右方向)に離隔して周方向に延在するよう形成された複数の凸部12aを有する。複数はこの例において2つである。
詳しくは、凸部12aは、周方向に180°離隔して対向する角度θcの範囲に一対となる2ヶ所に形成されている。
取り付け部11において凸部12aが形成されていない角度θdの範囲は、基部15よりも小径の小径周部12cとされている。
小径周部12cは、この例において、離隔対向して一対となる2ヶ所に形成されている。
【0015】
取り付け部11は、軸線CL1の方向において、2つの凸部12aの間の位置と右側の凸部12aの右隣りとなる位置に、横断面形状において円弧状に抉れた2つの凹部12bを組として有する。これにより、取り付け部11には、一対となる2つの凹部12bの組が、周方向に180°対向して一対となる2組が形成されている。
図6に示されるように、2つの凹部12bの最底部12b1の軸線CL1方向の距離をピッチPaとする。また、図3及び図4に示されるように、凹部12bの最底部12b1と軸線CL1との距離である半径Raは、小径周部12cの半径Rbと同じである。
【0016】
図2図4に示されるように、フック2は、係合基部21とフック部23とを有する。
係合基部21は、貫通孔22を有して円環状に形成されている。フック2は、貫通孔22を本体部1の取り付け部11に嵌め付けることで本体部1に取り付けられる。
フック部23は、係合基部21の外周面からその軸線CL2に対し直交して離れる方向に延出形成されている。フック部23は、係合基部21から先端側に向けて使用者92の耳介Eの外側に掛ける部分として湾曲形成されている。
フック2は、柔軟な材料で形成され可撓性を有する。柔軟な材料の例はシリコーンゴム、熱可塑性エラストマである。
【0017】
図3図4,及び図6に示されるように、フック2は、係合基部21における貫通孔22の内周面に、係合周部22a,フック凸部22b,及び逃げ周部22cを有する。
係合周部22aは、図4に示されるように、貫通孔22の内周面における対向する角度θeの範囲に一対となる2ヶ所に形成されている。係合周部22aは、本体部1の取り付け部11における小径周部12cとほぼ同じ内径(半径Rb)を有する。
逃げ周部22cは、内径が取り付け部11の凸部12aの外径よりも大きく形成された範囲であり、周方向に対向する位置に離隔して所定の角度範囲に形成されている。
詳しくは、逃げ周部22cは、本体部1の取り付け部11における凸部12aよりも周方向に大きい角度範囲で形成されている。図4に示される例では(角度θa+角度θb)だけ大きい角度範囲である。
【0018】
図6に示されるように、逃げ周部22cにおける係合基部21の軸線CL2方向の中央位置には、先端となる頂部の外径が逃げ周部22cの内径よりも小さくなるように突出したフック凸部22bが形成されている。フック凸部22bは、横断面形状が本体部1の取り付け部11における凹部12bに対応した形状とされ、凹部12bに係合可能である。この例では、フック凸部22bは、横断面形状が凹部12bと同じ半径の円弧状に形成されている。
【0019】
フック2は、柔軟性を有する材料で形成されており、本体部1の取り付け部11に対し、貫通孔22を指によって拡径するよう弾性変形させ、フランジ部13を乗り越えさせて嵌め込むことができる。
貫通孔22を取り付け部11に嵌め込むときには、フック凸部22bを取り付け部11の複数の凹部12bのいずれかに係合させる。図6には、フック凸部22bをフランジ部13に近い方の凹部12bに係合させた例が示されている。
この状態で、図4に示されるように、取り付け部11の2つの凸部12aは、フック2における2つの逃げ周部22cそれぞれの周方向中央に位置するように形成されている。
【0020】
図4に示されるように、凸部12aの周方向の形成角度である角度θcは、逃げ周部22cの周方向の形成角度(角度θa+角度θb+角度θc)よりも小さく設定されているので、フック2は、本体部1に対して時計まわり方向に角度θa、反時計まわり方向に角度θbだけ相対回動が可能となっている。
フック2の貫通孔22の係合周部22aは、本体部1の小径周部に対し摺動して回動する、又は微小な隙間をもって回動する。そのため、本体部1に対し、フック2は、径方向の動きが実質的にない状態の良好な感触で軸線CL1まわりに回動する。この例において軸線CL2は係合基部21の軸線CL1に合致している。
【0021】
図5は、フック2の本体部1に対する軸線CL1(軸線CL2と一致)まわりの回動を示した図である。上述のように、フック2は、本体部1に対し、角度(θa+θb)の範囲で回動可能である。フック2の回動抵抗は、自然状態では回動せず、使用者92の指による意図的な作業によって回動可能な程度に設定される。
【0022】
フック2の本体部1に対する軸線CL1の延びる方向の取り付け位置は、図6に示されるように、フック2のフック凸部22bを、本体部1の複数の凹部12bのいずれに係合させるかにより、ピッチPa毎の好みの位置に選択的に設定できる。
この例では、凹部12bが2つ形成されているので、図6に示されるように、フック2を、実線で示されるフランジ部13に近い側の位置と、鎖線で示されるフランジ部13から遠い側の位置との2つの位置に選択的に取り付けることができる。
【0023】
図7は、フック2の本体部1に対する軸線CL1(軸線CL2と一致)方向の異なる2つの取り付け状態を示した図であり、図7(a)は、フック2をフランジ部13から遠い側、図7(b)は、フック2をフランジ部13から近い側に取り付けた状態を示している。
【0024】
イヤホン91は、フック2が柔軟性を有し、凹部12b及びフック凸部22bが周方向で離隔対向する2ヶ所に形成されている。そのため、図8に示されるように、フック2の2つのフック凸部22bを、それぞれ軸線CL1の延びる方向の異なる位置に形成された凹部12bに係合させることができる。
これにより、フック2を、本体部1に対し、軸線CL1と軸線CL2とが傾いた状態となる姿勢で本体部1に取り付けることができる。傾斜角度は角度θfである。
【0025】
図9は、フック2が本体部1に対し、傾いた姿勢で取り付けられた状態のイヤホン91の外観を示した上面図である。具体的には、フック2が本体部1に対し、軸線CL1に対して軸線CL2が右後方側に角度θf傾いた姿勢で取り付けられた態様が示されている。
もちろん、フック凸部22bの係合する凹部12bを逆にして、軸線CL1に対し軸線CL2が右前方側に角度θf傾いた姿勢で取り付けることも可能である。
【0026】
フック2が本体部1に対し角度θfで傾く方向は、2つの凹部12bを形成する周方向位置に応じて決まる。
この例において、2つの凹部12bは、概ね前後方向に対向形成されている。これに対応して、フック2は、フック凸部22bが前後方向に対向形成された2つの凹部12bに係合したときに、フック部23が上方に延びて耳介Eに掛けることができるように形成されている。
これに対し、例えば2つの凹部12bを上下方向に対向形成すれば、フック2を、本体部1に対し、フック2の軸線CL2が本体部1の軸線CL1に対して右上方又は右下方に傾く姿勢で取り付けることができる。
【0027】
上述のように、イヤホン91は、フック2を本体部1に対し、本体部1の軸線CL1のまわりに相対的に所定の角度(θa+θb)の範囲で回動可能である。
また、イヤホン91は、フック2を本体部1に対し、本体部1の軸線CL1の延びる方向に複数の位置で取り付け可能である。
また、イヤホン91は、フック2を本体部1に対し、本体部1の軸線CL1に対しフック2の軸線CL2が傾くように取り付け可能である。
【0028】
すなわち、イヤホン91の使用者92は、本体部1に対するフック2の取り付け位置について、フック2の回動位置の選択,軸方向位置の選択,及び傾きの選択を、それぞれ独立して設定することができる。また、回動位置と軸方向位置、及び回動位置と傾きについては、組み合わせて設定できる。
【0029】
これにより、イヤホン91は、本体部1に対するフック2の取り位置及び姿勢を調整できるので、使用者それぞれにおいて好みの装着感が得やすい。
【0030】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0031】
イヤホン91は、イヤピース3を外耳道内に挿入して使用するカナル型に限定されるものではない。イヤホン91は、音筒部14を有せず本体部1を耳介E内に装着して使用するいわゆるインイヤータイプであってもよい。
【0032】
図4図6,及び図8に示されるように、イヤホン91において、互いに係合した凹部12b及びフック凸部22bを、凹凸係合部KBと称する。
本体部1の凹部12bとフック2のフック凸部22bとの凹凸係合は、逆の関係であってもよい。すなわち、凹凸係合部KBにおいて、一方の例えば本体部1側を凸部とし、他方のフック2側を凹部としてもよい。
上述例において、凹凸係合部KBは周方向に離隔して対向形成された2ヶ所としたが、3ヶ所以上であってもよい。
凹部12b及びフック凸部22bの横断面形状は、上述の円弧状に限定されず、三角形状或いは四角形状などのように自由に設定してよい。
凹凸係合部KBの係合深さ、周方向の係合角度範囲、ピッチPa、回動可能角度範囲などは、自由に設定してよい。
【0033】
サポータは、上述の耳介の外側に掛けるフック2に限定されず、耳介の内側の例えば対耳輪の内壁に係合させる腕状のサポータであってもよい。
イヤホン91は、ワイヤレスタイプに限定されず、ワイヤードタイプであってもよい。イヤホン91がワイヤードタイプの場合、コードは、例えば、本体部1の基部15から外部に引き出されてフック2におけるフック部23の根元部においてフック部23の内部に引き込まれる。さらにフック部23の内部に引き込まれたコードは、フック部23の内部を通り先端から外部に引き出される。
【符号の説明】
【0034】
1 本体部
11 取り付け部
12a 凸部
12b 凹部
12b1 最底部
12c 小径周部
13 フランジ部
14 音筒部
15 基部
2 フック
21 係合基部
22 貫通孔
22a 係合周部
22b フック凸部
22c 逃げ周部
23 フック部
3 イヤピース
91 イヤホン
92 使用者
CL1,CL2 軸線
E 耳介
KB 凹凸係合部
Pa ピッチ
Ra,Rb 半径
SP スピーカユニット
θa,θb,θc,θd,θe,θf 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9