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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20240528BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60C1/00 A
B60C11/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020040084
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021138343
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松井 僚児
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177113(JP,A)
【文献】特開2018-053179(JP,A)
【文献】特開2015-124370(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/001942(JP,A1)
【文献】特開2018-053177(JP,A)
【文献】特開2013-177632(JP,A)
【文献】特開2008-303330(JP,A)
【文献】特開2011-140613(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/182152(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上のトレッド中のタイヤ半径方向に隣接する2層のうち、
タイヤ半径方向外側の外側ゴム層は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムをそれぞれ25質量%以上含有するゴム成分、窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカ、硫黄及び亜鉛含有化合物を含む外側ゴム層用ゴム組成物からなり、
タイヤ半径方向内側の内側ゴム層は、ゴム成分及び亜鉛含有化合物を含む内側ゴム層用ゴム組成物からなり、
下記式(1)を満たすタイヤであって、
【数1】
外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量/内側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量≧0.50を満たすタイヤ。
【請求項2】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
【数2】
【請求項3】
下記式(2)を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
【数3】
【請求項4】
内側ゴム層用ゴム組成物が不飽和結合を有する樹脂を含む請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
外側ゴム層用ゴム組成物がメルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカの含有量が5~170質量部である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
下記式(3)を満たす請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【数4】
【請求項8】
乗用車用空気入りタイヤである請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
タイヤ外径Dt及びタイヤ断面幅Wtが下記式(I)の関係式を満たす請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ。
【数5】
【請求項10】
前記内側ゴム層用ゴム組成物は、亜鉛元素含有量が、ゴム成分100質量部に対して、3.5質量部以下である請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
低燃費性、グリップ性能等のタイヤの要求特性を付与する目的で、多層トレッドを有するタイヤが提案され、例えば、転がり抵抗を低減するタイヤとして、その特性の寄与率が高いトレッド部をエネルギー損失の小さいベーストレッド(内側)と耐摩耗性に優れるキャップトレッド(外側)の2層構造にしたもの等が提案されている。
【0003】
特許文献1には、天然ゴム、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム及び補強剤を所定量含むベーストレッド用ゴム組成物等が開示されているが、従来の多層トレッドを有するタイヤには経年劣化の抑制が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-111795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、低燃費性、劣化抑制性及び耐チッピング性の総合性能を改善できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2層以上のトレッド中のタイヤ半径方向に隣接する2層のうち、タイヤ半径方向外側の外側ゴム層は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムをそれぞれ25質量%以上含有するゴム成分、窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカ、硫黄及び亜鉛含有化合物を含む外側ゴム層用ゴム組成物からなり、タイヤ半径方向内側の内側ゴム層は、ゴム成分及び亜鉛含有化合物を含む内側ゴム層用ゴム組成物からなり、下記式(1)を満たすタイヤに関する。
【数1】
【0007】
前記タイヤは、下記式を満たすことが好ましい。
【数2】
【0008】
前記タイヤは、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【数3】
【0009】
前記タイヤは、内側ゴム層用ゴム組成物が不飽和結合を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
前記タイヤは、外側ゴム層用ゴム組成物がメルカプト系シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0011】
外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカの含有量が5~170質量部であることが好ましい。
【0012】
前記タイヤは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
【数4】
【0013】
前記タイヤは、乗用車用空気入りタイヤであることが好ましい。
【0014】
前記タイヤは、タイヤ外径Dt及びタイヤ断面幅Wtが下記式(I)の関係式を満たすことが好ましい。
【数5】
【発明の効果】
【0015】
本発明は、2層以上のトレッド中のタイヤ半径方向に隣接する2層のうち、タイヤ半径方向外側の外側ゴム層は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムをそれぞれ25質量%以上含有するゴム成分、窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカ、硫黄及び亜鉛含有化合物を含む外側ゴム層用ゴム組成物からなり、タイヤ半径方向内側の内側ゴム層は、ゴム成分及び亜鉛含有化合物を含む内側ゴム層用ゴム組成物からなり、前記式(1)を満たすタイヤであるので、低燃費性、劣化抑制性及び耐チッピング性の総合性能を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、2層以上のトレッド中のタイヤ半径方向に隣接する2層のうち、タイヤ半径方向外側の外側ゴム層がイソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムをそれぞれ25質量%以上含有するゴム成分、窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカ、硫黄及び亜鉛含有化合物を含む外側ゴム層用ゴム組成物からなり、タイヤ半径方向内側の内側ゴム層がゴム成分及び亜鉛含有化合物を含む内側ゴム層用ゴム組成物からなり、かつ前記式(1)を満たすタイヤである。これにより、低燃費性、劣化抑制性及び耐チッピング性の総合性能を改善できる。
【0017】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
低燃費化を達成するためには、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムをメイン(50質量%以上)に含むゴム成分と、シリカとを配合したゴム組成物をトレッドに用いることが考えられる。そして、更なる低燃費化を実現するために、シリカを微粒子化することが考えられるが、シリカはスチレンブタジエンゴム中に取り込まれやすく、かつ、微粒子化すると分散しにくいため、スチレンブタジエンゴム中に、シリカやシリカとともに配合するシランカップリング剤が局在化するおそれがある。このような局在が生じると、ゴム組成物全体としての補強性が得られにくいだけでなく、硫黄ラジカルが発生した場合に作用しやすくなり、補強性が更に低下するおそれがあり、補強性が下がると、チッピングの発生起点となるおそれがある。前記タイヤでは、タイヤ半径方向に隣接する2層のうち、タイヤ半径方向内側の内側ゴム層において、タイヤ半径方向外側の外側ゴム層に比べて、ラジカルをトラップする機能を持つ酸化亜鉛などの亜鉛含有化合物を多量に配合しているため、内側ゴム層の方にラジカルを誘導しやすくなる。内側ゴム層は、直接路面とは接触しないため、多少の硫黄ラジカルが発生しても、チッピングには影響しにくい。以上の作用機能の結果、前記タイヤを用いることにより、低燃費性、劣化抑制性及び耐チッピング性の総合性能を改善できると推察される。
【0018】
前記タイヤは、2層以上のトレッドを有するもので、2層構造のトレッド、3層以上の構造のトレッドのいずれにも適用できる。2層以上のトレッドを構成する層としては、キャップトレッド(タイヤ半径方向の最も外側に配され、直接路面と接触するゴム層)、ベーストレッド(キャップトレッドよりタイヤ半径方向内側に配されるゴム層)、これら以外のゴム層(アンダートレッド(ベーストレッドよりタイヤ半径方向内側に配されるゴム層)等)が挙げられる。
【0019】
前記タイヤは、下記式(1)を満たす。
【数6】
経年劣化の抑制の観点から、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量/内側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量≦0.90が好ましく、≦0.80がより好ましく、≦0.70が更に好ましい。上限は特に限定されないが、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量/内側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する亜鉛元素含有量≧0.30が好ましく、≧0.40がより好ましく、≧0.50が更に好ましい。
【0020】
なお、前記式(1)は、外側ゴム層用ゴム組成物及び内側ゴム層用ゴム組成物に共に亜鉛含有化合物を配合し、それぞれの含有量の調整により亜鉛元素含有量を調整することで実現できる。
【0021】
前記タイヤは、2層以上のトレッド中のタイヤ半径方向に隣接する2層(タイヤ半径方向外側の外側ゴム層及びタイヤ半径方向内側の内側ゴム層)のうち、該外側ゴム層が所定配合の外側ゴム層用ゴム組成物から得られるものである。
【0022】
(外側ゴム層用ゴム組成物)
外側ゴム層用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含む。
外側ゴム層用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、25質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0023】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
外側ゴム層用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、25質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0025】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは20万以上、更に好ましくは25万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは100万以下、更に好ましくは70万以下、特に好ましくは50万以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0027】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは37質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0028】
SBRのビニル含量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは62質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0029】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0031】
例えば、変性SBRとして、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたBR等を好適に使用できる。
【0032】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
【0033】
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0034】
前記式で表される化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0036】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0037】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0038】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0039】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性BRが好ましい。
【0040】
なお、上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、例えば、溶液重合のスチレンブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR等が好適に用いられる。上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0041】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0042】
外側ゴム層用ゴム組成物に使用可能な他のゴム成分としては特に限定されず、タイヤ分野で使用されているゴム等を使用できる。例えば、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴム等が挙げられる。なかでも、BRが好ましい。
【0043】
外側ゴム層用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0044】
BRのシス含量は、氷上性能の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0045】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよい。
変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
【0047】
なお、本明細書において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。スチレン量は、H-NMR測定によって測定でき、ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0048】
外側ゴム層用ゴム組成物は、窒素吸着比表面積(NSA)が200m/g以上であるシリカを含む。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは220m/g以上、より好ましくは225m/g以上、更に好ましくは230m/g以上である。シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下、特に好ましくは280m/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0049】
外側ゴム層用ゴム組成物において、NSA200m/g以上のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは170質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0050】
外側ゴム層用ゴム組成物に使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
外側ゴム層用ゴム組成物において、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるスチレンブタジエンゴム中の総ビニル含量(外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部中のスチレンブタジエンゴムにおけるビニル含量の総量)、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカの含有量は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
【数7】
外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるスチレンブタジエンゴム中の総ビニル含量/外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカの含有量≦0.45が好ましく、≦0.40がより好ましく、≦0.35が更に好ましく、≦0.30が特に好ましい。下限は特に限定されないが、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分中の総ビニル含量/外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する窒素吸着比表面積200m/g以上のシリカの含有量≧0.10が好ましく、≧0.15がより好ましく、≧0.20が更に好ましい。
【0052】
なお、スチレンブタジエンゴム中の総ビニル量(スチレンブタジエンゴム全量中に含まれるビニル部の合計含有量)は、Σ(各スチレンブタジエンゴムの含有量×各スチレンブタジエンゴムのビニル量/100)である。例えば、ゴム成分が、SBR(A)(ビニル量20質量%)90質量%、SBR(B)(ビニル量10質量%)5質量%、BR5質量%(ビニル量2質量%)からなる場合、ゴム成分中の総ビニル量は、18.6質量%(=(90×20/100+5×10/100+5×2/100))である。
【0053】
外側ゴム層用ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
シランカップリング剤のなかでも、メルカプト系シランカップリング剤が好適である。なお、メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も使用可能である。
【0055】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
【化2】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003は-[O(R1009O)]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化3】
【化4】
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R11とR12とで環構造を形成してもよい。)
【0056】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0057】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0058】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0059】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0060】
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
【0061】
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
【0062】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
【0063】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましい。下限以上であると、良好な破壊強度等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0064】
外側ゴム層用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
外側ゴム層用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0065】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、150m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましく、120m/g以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0066】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
外側ゴム層用ゴム組成物は、亜鉛含有化合物を含む。亜鉛含有化合物としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、ジチオリン酸亜鉛化合物、脂肪酸亜鉛、水酸化亜鉛、カルボン酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛等)等が挙げられる。また、珪酸塩粒子の表面に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させた微粒子亜鉛担持体等も使用可能である。なかでも、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛を好適に使用できる。
【0068】
外側ゴム層用ゴム組成物において、亜鉛元素含有量(亜鉛含有化合物に含まれる亜鉛換算の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上、特に好ましくは1.4質量部以上である。該含有量の上限、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.8質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0069】
なお、亜鉛含有化合物としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の酸化亜鉛製品等を使用できる。
【0070】
外側ゴム層用ゴム組成物は、液体可塑剤(20℃で液体状態の可塑剤)、樹脂等を含むことが好ましい。樹脂とは、常温(25℃)で固体状態の樹脂を指す。特に、SBRとBRとイソプレン系ゴムとを含むゴム成分に樹脂を配合したゴム組成物であることが好ましい。
【0071】
外側ゴム層用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0072】
液体可塑剤としては特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
【0074】
液状樹脂としては、20℃で液体状態のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0075】
液状ジエン系ポリマーとしては、20℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0076】
外側ゴム層用ゴム組成物において、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0077】
樹脂の軟化点は、10℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、80℃以上が特に好ましい。また、上記軟化点は、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0078】
樹脂としては、例えば、不飽和結合(鎖状化合物の中の二重結合、三重結合、環状化合物中の不飽和結合等)を有する樹脂を好適に使用できる。具体的には、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)ストラクトール社、performance additive社、三井化学(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
芳香族ビニル重合体としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。また、芳香族ビニル重合体としては、エチレンプロピレンスチレン共重合体等が好ましい。エチレンプロピレンスチレン共重合体100質量%中のエチレンプロピレンの含有量(EP含有量)は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。なかでも、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましい。
【0080】
クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0081】
クマロン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0082】
インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0083】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるものなどが挙げられる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0084】
ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0085】
石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。
【0086】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
【0087】
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0088】
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0089】
芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0090】
アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0091】
無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0092】
アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0093】
アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0094】
また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0095】
外側ゴム層用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0096】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0097】
外側ゴム層用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
【0098】
外側ゴム層用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0099】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0100】
外側ゴム層用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは0.5~3.0質量部である。
【0101】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
【0102】
外側ゴム層用ゴム組成物は、硫黄を含む。
外側ゴム層用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは0.9質量部以上である。該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.8質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0103】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
外側ゴム層用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
外側ゴム層用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上、特に好ましくは3.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下、特に好ましくは5.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0105】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0106】
外側ゴム層用ゴム組成物において、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する硫黄、加硫促進剤の含有量は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【数8】
外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量/外側ゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量≦0.9が好ましく、≦0.7がより好ましく、≦0.5が更に好ましい。下限は特に限定されないが、≧0.1が好ましく、≧0.2がより好ましく、≧0.3が更に好ましい。
【0107】
外側ゴム層用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0108】
外側ゴム層用ゴム組成物は、2層以上のトレッドにおける直接路面と接触するゴム層(キャップトレッド等)に適用することが好ましい。
【0109】
(内側ゴム層用ゴム組成物)
内側ゴム層用ゴム組成物は、ゴム成分及び亜鉛含有化合物を含む。
ゴム成分としては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたゴム成分を使用できる。なかでも、イソプレン系ゴム、BRを好適に使用できる。
【0110】
内側ゴム層用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0111】
内側ゴム層用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、低燃費性及び経年劣化抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0112】
亜鉛含有化合物としては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたものを使用できる。なかでも、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛を好適に使用できる。
【0113】
内側ゴム層用ゴム組成物において、亜鉛元素含有量(亜鉛含有化合物に含まれる亜鉛換算の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、特に好ましくは2.2質量部以上である。該含有量の上限、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、特に好ましくは2.8質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0114】
内側ゴム層用ゴム組成物には、シリカを配合することが好ましい。シリカとしては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたものの他、NSA200m/g未満のものも使用できる。
【0115】
内側ゴム層用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上が更に好ましい。また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
【0116】
内側ゴム層用ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたものを使用でき、同様の含有量が好適である。
【0117】
内側ゴム層用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたものを使用できる。
【0118】
内側ゴム層用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0119】
内側ゴム層用ゴム組成物は、液体可塑剤(20℃で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等を含むことが好ましい。液体可塑剤、樹脂としては、例えば、外側ゴム層用ゴム組成物で述べたものを好適に使用できる。特に樹脂としては、不飽和結合を有する樹脂が好ましく、芳香族ビニル重合体がより好ましく、エチレンプロピレンスチレン共重合体が更に好ましい。
【0120】
内側ゴム層用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0121】
内側ゴム層用ゴム組成物において、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を得つつ、経年劣化の低下を抑制できる傾向がある。
【0122】
内側ゴム層用ゴム組成物には、前述の老化防止剤、ステアリン酸、ワックス、硫黄、加硫促進剤、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。配合量は適宜調整すればよい。
【0123】
内側ゴム層用ゴム組成物は、2層以上のトレッドにおける直接路面と接触しないゴム層に適用でき、ベーストレッド等に用いることが好ましい。
【0124】
外側ゴム層用ゴム組成物、内側ゴム層用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0125】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0126】
前記タイヤは、前述の外側ゴム層用ゴム組成物、内側ゴム層用ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、各成分を配合した外側ゴム層用ゴム組成物、内側ゴム層用ゴム組成物を、未加硫の段階で、キャップトレッド、ベーストレッド等の各部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。
【0127】
前記タイヤは、タイヤ外径Dt及びタイヤ断面幅Wtが下記式(I)の関係式を満たすことが好ましい。
【数9】
なお、タイヤ外径(Dt)とは、タイヤを適用リムに装着して無負荷とした状態のタイヤの外径である。タイヤ断面幅(Wt)とは、タイヤを適用リムに装着して無負荷とした状態のタイヤ側面の模様又は文字など全てを含むサイドウォール間の直線距離、つまり総幅からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅である。
【0128】
前記式(I)を満たすタイヤサイズとしては、具体的には、145/60R18、145/60R19、155/55R18、155/55R19、155/70R17、155/70R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/55R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20等が挙げられる。
【0129】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、エアレス(ソリッド)タイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。また、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)としても使用できる。
【0130】
なかでも、乗用車用空気入りタイヤに適用することが特に好ましい。また、乗用車用空気入りタイヤは、前記式(I)を満たすことが好ましい。式(1)を満たす乗用車用空気入りタイヤは、低燃費性や耐チッピング性が課題となる傾向があるためである。
【実施例
【0131】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0132】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
SBR1:下記製造例1で合成した変性SBR(スチレン量25質量%、ビニル量60質量%、Mw30万)
SBR2:下記製造例2で合成した変性SBR(スチレン量35質量%、ビニル量50質量%、Mw60万)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス95質量%以上)
カーボンブラック:キャボットジャパン社製のショウブラックN220(NSA112m/g)
シリカ1:エボニック社製の9100GR(NSA235m/g)
シリカ2:ローディアジャパン(株)製のZeosil 1115MP(NSA115m/g)
シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
樹脂1:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点85℃)
樹脂2:ストラクトール社製40MS(エチレンプロピレンスチレン共重合体、軟化点78℃、EP含有量:82質量%)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルNH-70S(アロマ系オイル)
ワックス:日本精鑞社製のOzoace0355
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製の銀嶺R
塩基性炭酸亜鉛:正同化学工業のセドアエン
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
硫黄:細井化学工業社製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0133】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR1を得た。
【0134】
(製造例2)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR2を得た。
【0135】
(SBRの分析)
SBRの構造同定(スチレン量、ビニル量の測定)は、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行った。測定は、ポリマー0.1gを15mlのトルエンに溶解させ、30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで再沈殿させたものを、減圧乾燥後に測定した。
【0136】
<実施例及び比較例>
表1に記載のキャップトレッド用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物をバンバリーミキサーにて混練し、それぞれの混練物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物(キャップトレッド用ゴム組成物)を170℃で12分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、キャップトレッド用加硫ゴム組成物を得た。
【0137】
また、得られたそれぞれの未加硫ゴム組成物をキャップトレッド、ベーストレッド形状に成形し、タイヤ成形機上にて他のタイヤ部材と共に張り合わせ、150℃30分間プレス加硫し、試験用タイヤを得た(タイヤサイズ175/60R18)。
【0138】
得られたキャップトレッド用加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
<低燃費性>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(18×5JJ)、内圧(260kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、転がり抵抗を指数で表示した。指数が大きいほど低燃費性に優れている。なお、指数は、以下の式で示される。
(低燃費性)=(比較例1のタイヤの転がり抵抗)/(各配合のタイヤの転がり抵抗)×100
【0140】
<破壊特性>
キャップトレッド用加硫ゴム組成物(加硫ゴム組成物)から3号ダンベル型試験片を作製して、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、引張り速度500mm/分で引張試験を実施した。23℃±2℃における初期の破断時伸びEB(%)と、下記劣化条件後の破断時伸びEB(%)とを測定し、劣化後EB維持率(%)(=劣化後EB/劣化前EB×100)を算出した。
(劣化条件)
キャップトレッド用加硫ゴム組成物をオーブンにて熱劣化(80℃168時間)させた。
【0141】
比較例1の劣化後EB維持率を100とし、下記式により各配合について指数表示した。指数が大きいほど、劣化抑制性が良好であることを示す。
(劣化後EB維持率(指数))=(各配合の劣化後EB維持率/比較例1の劣化後EB維持率)×100
【0142】
<耐チッピング性>
試験用タイヤをリム(18×5JJ)に組み込み、空気圧を230kPaとして試験車両に装着し、未舗装路において5,000kmを走行した後、タイヤを目視で観察して外傷(トレッド表面に生じた1平方mm以上の欠損又は溝状の傷)の面積の総和を計測した。評価結果は、100×(比較例1の面積総和+1)/(各例の面積総和+1)の式により指数化した。指数が大きいほど耐チッピング性が高いことを示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1から、所定配合の外側ゴム層用ゴム組成物(キャップトレッド用ゴム組成物)、内側ゴム層用ゴム組成物を含むキャップ層及びベース層を有し、かつ前記式(1)を満たすタイヤは、低燃費性、劣化抑制性及び耐チッピング性の総合性能(低燃費性、劣化後EB維持率(劣化抑制性)、耐チッピング性の3つの指数の総和で表す)が顕著に改善された。