(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電子機器及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240528BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240528BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H04N1/00 885
H04N1/00 127Z
B41J29/38 401
B41J29/00 E
(21)【出願番号】P 2020055383
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】小泉 純平
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036110(JP,A)
【文献】特開2016-163186(JP,A)
【文献】特開2017-108199(JP,A)
【文献】特開2009-239464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00- 29/70
H04B 7/24- 7/26
H04L 12/28- 12/46
H04L 13/00- 13/18
H04L 61/00- 65/80
H04L 69/00-101/695
H04N 1/00
H04W 4/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のアクセスポイントを経由した無線通信を行う無線通信部と、
第1動作モードと、前記第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、前記無線通信部を制御する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第1動作モードである場合に、前記アクセスポイントのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行
し、
前記第2スキャン処理は、前記第1スキャン処理に対して、スキャン対象SSID(Service Set Identifier)を接続履歴のあるSSIDに制限する第1制限、スキャン対象チャンネルを所与のチャンネルに制限する第2制限、及び、スキャン対象SSID数を所与の閾値以下に制限する第3制限、のうちの少なくとも1つの制限が行われた処理であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1
において、
複数の前記動作モードは、前記第1動作モードよりも消費電力が少なく、且つ、前記第2動作モードよりも消費電力が多い第3動作モードを含み、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第3動作モードである場合に、前記第1スキャン処理及び前記第2スキャン処理のいずれとも前記スキャン対象の制限内容が異なる第3スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項
1において、
複数の前記動作モードは、前記第1動作モードよりも消費電力が少なく、且つ、前記第2動作モードよりも消費電力が多い第3動作モードを含み、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第3動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に対して前記第1制限が行われ、且つ、前記第2制限及び前記第3制限が行われない第3スキャン処理を実行し、
前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に対して、前記第1制限、前記第2制限及び前記第3制限のうちの2以上の制限が行われた前記第2スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項において、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第2動作モードであり、
接続していた前記アクセスポイントからのビーコン信号の受信強度が所与の閾値以下である場合、又は、前記ビーコン信号が非受信である場合に、前記第2スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項において、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第2動作モードであり、ユーザー指示による通信設定変更が行われた場合に、前記第1動作モードに移行し、前記第1スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
外部のアクセスポイントを経由した無線通信を行う無線通信部と、
第1動作モードと、前記第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、前記無線通信部を制御する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記動作モードが前記第1動作モードである場合に、前記アクセスポイントのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行
し、前記動作モードが前記第2動作モードであり、ユーザー指示による通信設定変更が行われた場合に、前記第1動作モードに移行し、前記第1スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記処理部は、
前記第2スキャン処理によって接続対象の前記アクセスポイントが探索されなかった場合に、前記第1動作モードに移行し、前記第1スキャン処理を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
第1動作モードと、前記第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、外部のアクセスポイントとの無線通信を行う電子機器における通信制御方法であって、
前記動作モードが前記第1動作モードである場合に、前記アクセスポイントのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、
前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理
として、前記第1スキャン処理に対して、スキャン対象SSID(Service Set Identifier)を接続履歴のあるSSIDに制限する第1制限、スキャン対象チャンネルを所与のチャンネルに制限する第2制限、及び、スキャン対象SSID数を所与の閾値以下に制限する第3制限、のうちの少なくとも1つの制限が行われた処理を実行する、
ことを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び通信制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の接続対象となる機器を探索するスキャン処理を行う機器が広く知られている。例えば、Wi-Fi方式に準拠した無線通信におけるスキャン処理は、SSID(Service Set Identifier)のスキャンである。
【0003】
特許文献1には、制限付きスキャンによって、子機が受信モードとなる時間を短くする手法が開示されている。特許文献2には、接続履歴に基づくSSID検索優先度リストに従って、基地局をスキャンする手法が開示されている。特許文献2には、記憶するSSIDの数をユーザーが設定する手法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-265823号公報
【文献】特開2004-343458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2等の従来手法では、電子機器の動作モードが考慮されていない。具体的には、消費電力の多い動作モードと少ない動作モードを含む電子機器においては、動作モードに応じて望ましいスキャン処理が異なる。そのため従来手法では、例えば省電力状態を維持しつつ、接続先を適切にスキャンすることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、外部のアクセスポイントを経由した無線通信を行う無線通信部と、第1動作モードと、前記第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、前記無線通信部を制御する処理部と、を含み、前記処理部は、前記動作モードが前記第1動作モードである場合に、前記アクセスポイントのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行する電子機器に関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、第1動作モードと、前記第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、外部のアクセスポイントとの無線通信を行う電子機器における通信制御方法であって、前記動作モードが前記第1動作モードである場合に、前記アクセスポイントのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、前記動作モードが前記第2動作モードである場合に、前記第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行する通信制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電子機器とアクセスポイントの接続を説明する図。
【
図5】フルスキャンにおける処理負荷と、処理部の処理能力の関係図。
【
図6】フルスキャンにおける処理負荷と制限スキャンにおける処理負荷の関係図。
【
図7】スキャン処理を含む処理の流れを説明するフローチャート。
【
図9】スキャン処理を含む処理の流れを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.システム構成
図1は、本実施形態のシステム構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器200は、アクセスポイントAPと接続される。アクセスポイントAPは、例えばルーター機能を有する無線ルーターである。
【0011】
電子機器200は、例えばプリンターである。或いは電子機器200は、スキャナー、ファクシミリ装置又はコピー機であってもよい。電子機器200は、複数の機能を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であってもよく、印刷機能を有する複合機もプリンターの一例である。或いは電子機器200は、プロジェクター、頭部装着型表示装置、ウェアラブル機器、生体情報測定機器、ロボット、映像機器、携帯情報端末又は物理量計測機器等であってもよい。生体情報測定機器とは、脈拍計、歩数計、活動量計等である。映像機器とは、カメラ等である。携帯情報端末とは、スマートフォン、携帯ゲーム機等である。
【0012】
電子機器200は、アクセスポイントAPと無線による通信を行う。ここでの無線通信は、Wi-Fi方式を用いた通信である。Wi-Fi方式は、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の802.11の規格、及び、それに準ずる規格に基づく無線通信方式である。
【0013】
図2は、電子機器200の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図2は、印刷機能を有する電子機器200を示しており、以下の説明においても、適宜、電子機器200がプリンターである例について説明する。ただし、電子機器200をプリンター以外に拡張可能な点は上述したとおりである。電子機器200は、処理部210、無線通信部220、表示部230、操作部240、印刷部250、記憶部260を含む。
【0014】
処理部210は、電子機器200の各部の制御を行う。電子機器200の各部とは、例えば無線通信部220、記憶部260、印刷部250等である。処理部210は、具体的にはプロセッサー又はコントローラーである。例えば処理部210は、メインCPU、サブCPUなどの複数のCPUを含むことができる。メインCPUは、電子機器200の各部の制御や全体的な制御を行う。サブCPUは、例えば無線通信部220の通信制御を行うCPUである。或いは、電子機器200がプリンターである場合、印刷についての各種の処理を行うCPUが更に設けられてもよい。
【0015】
本実施形態の処理部210は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0016】
また処理部210は、下記のプロセッサーによって実現されてもよい。本実施形態の電子機器200は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、ハードウェアを含む。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサーが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。さらに、処理部210の全部または一部はクラウドコンピューティングで実現されてもよい。
【0017】
無線通信部220は、少なくとも1つの無線通信デバイスにより実現される。無線通信デバイスは、無線通信チップと言い換えてもよい。ここでの無線通信デバイスは、Wi-Fi規格に準拠した無線通信を実行する無線通信デバイスを含む。ただし、無線通信部220は、Wi-Fi規格以外の規格に準拠した無線通信を実行する無線通信デバイスを含んでもよい。Wi-Fi規格以外の規格とは、例えばBluetooth(登録商標)であってもよく、狭義にはBLE(Bluetooth Low Energy)である。
【0018】
表示部230は、各種情報をユーザーに表示するディスプレイ等で構成される。操作部240は、ユーザーからの入力操作を受け付けるボタン等で構成される。なお、表示部230及び操作部240は、例えばタッチパネルにより一体的に構成してもよい。
【0019】
印刷部250は、印刷エンジンを含む。印刷エンジンとは、印刷媒体への画像の印刷を実行する機械的構成である。印刷エンジンは、例えば搬送機構やインクジェット方式の吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含むキャリッジの駆動機構等を含む。印刷エンジンは、搬送機構により搬送される印刷媒体に対して、吐出ヘッドからインクを吐出することで、印刷媒体に画像を印刷する。印刷媒体は、紙であってもよいし、布であってもよいし、他の媒体であってもよい。なお、印刷エンジンの具体的構成はここで例示したものに限られず、電子写真方式でトナーにより印刷するものでもよい。
【0020】
記憶部260は、データやプログラムなどの各種の情報を記憶する。処理部210や無線通信部220は例えば記憶部260をワーク領域として動作する。記憶部260は、SRAM、DRAMなどの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。記憶部260は、アクセスポイントAPに接続される情報処理装置から、無線通信によって送信されるデータを記憶してもよい。ここでのデータは、例えば印刷部250での印刷に用いられるデータである。
【0021】
図3は、電子機器200における処理部210及び無線通信部220の具体的な構成例を示す図である。上述したように、無線通信部220は、無線通信チップによって実現されてもよく、具体的にはWi-Fi方式の無線通信を行うWi-Fiチップ221である。また処理部210は、プロセッサーであり、例えばCPU211である。
【0022】
CPU211は、例えばWi-Fiチップ221の駆動制御を行うドライバー212と、アプリケーション213を含む。例えば記憶部260は、Wi-Fiチップ221を制御するためのドライバーソフトウェアと、無線通信に関する処理を行うためのアプリケーションソフトウェアを記憶している。
【0023】
CPU211は、記憶部260からドライバーソフトウェアをロードし、当該ドライバーソフトウェアに従って動作することによってWi-Fiチップ221を制御する。またCPU211は、記憶部260からアプリケーションソフトウェアをロードし、当該アプリケーションソフトウェアに従って動作することによって無線通信に関する処理を行う。
図3におけるドライバー212とは、例えばCPU211の一部がドライバーソフトウェアに従って動作することによって、Wi-Fiチップ221の制御を行うことを表す。同様に
図3におけるアプリケーション213とは、例えばCPU211の一部がアプリケーションソフトウェアに従って動作することによって、ドライバー212との入出力、及びドライバー212からの情報に対する処理を行うことを表す。
【0024】
なお電子機器200の処理部210は、
図3に示すCPU211とは異なるプロセッサーを含んでもよい。例えばCPU211は、通信用のサブCPUである。処理部210は、印刷制御や省電力制御等、電子機器200全体の制御を行うメインCPUをさらに含んでもよい。この場合、CPU211は、不図示のメインCPUの指示に基づいてドライバー212の制御を行う。またCPU211は、メインCPUによって決定された動作モードで動作する。
【0025】
Wi-Fiチップ221は、アクセスポイントAPからの情報を取得し、取得した情報をドライバー212に出力する。例えば、周辺に存在するアクセスポイントAPを探索するSSIDスキャンにおいては、Wi-Fiチップ221は、アクセスポイントAPからWi-Fi規格に従ったビーコン信号を受信し、受信したビーコン信号をドライバー212に出力する。
【0026】
ドライバー212は、Wi-Fiチップ221から受信した信号に基づいて、ビーコン信号に含まれる情報をアプリケーション213によって処理可能な形式に変換し、リスト情報として保持する。そしてドライバー212は、SSIDのスキャン処理が終了したときに、リスト情報をアプリケーション213に送信する。通常のスキャン処理では、例えば、Wi-Fiチップ221は、ドライバー212の制御に従って、順次チャンネルを変更しながら、全てのチャンネルについてビーコン信号を受信する処理を行う。以下、特に制限を設けないSSIDのスキャン処理を、フルスキャンと表記する。
【0027】
Wi-Fi方式の無線通信におけるチャンネルは、例えば2.4GHz帯のチャンネルと、5GHz帯のチャンネルを含む。2.4GHz帯のチャンネルは、1ch、2ch、…、14chを含む。5GHz帯のチャンネルは、5.2GHz帯の36ch、40ch、44ch、48chと、5.3GHz帯の52ch、56ch、60ch、64chと、5.6GHz帯の100ch、104ch、…、140chと、5.8GHz帯の149ch、153ch、…、165chと、を含む。
【0028】
フルスキャンでは、上記のチャンネルの全てについて順次スキャン処理が行われる。なお、国や地域によって所定のチャンネルの使用が法律で禁止されている。よって、使用が禁止されているチャンネルについては、スキャン処理を省略可能である。
【0029】
またフルスキャンでは、SSID等に制限もないため、Wi-Fiチップ221がビーコン信号を受信した場合、ドライバー212は、当該ビーコン信号に対する形式変換等の処理を行い、処理結果をリスト情報に追加する。
【0030】
Wi-Fi方式に従ったビーコン信号には、アクセスポイントAPのSSIDの他、セキュリティー規格に関する情報や、種々のサポート情報が含まれる。セキュリティー規格とは、例えばWEP(Wired Equivalent Privacy)、WPA(Wi-Fi Protected Access)、WPA2(Wi-Fi Protected Access2)、WPA3(Wi-Fi Protected Access3)等である。また、セキュリティー規格には暗号化方式に関する情報が含まれてもよい。暗号化方式は、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)、AES(Advanced Encryption Standard)等を含む。サポート情報は、例えばIEEE802.11の規格のいずれをサポートしているかの情報を含む。IEEE802.11の規格には、802.11a、802.11b、802.11n、802.11ac等が含まれる。またビーコン信号には、ビーコン送信間隔を表す情報や、チャンネル情報等も含まれる。
【0031】
全てのチャンネルのスキャンが完了すると、ドライバー212は、作成したリスト情報をアプリケーション213に送信する。アプリケーション213は、リスト情報に基づく処理を行う。例えばアプリケーション213は、
図4に示すSSID一覧画面を、表示部230に表示する処理を行う。
図4に示すように、SSID一覧画面は、スキャン処理によって探索されたSSIDを表示する画面である。SSID一覧画面は、例えば電波強度等の他の情報を含んでもよい。なおSSID一覧画面は、電子機器200とは異なる機器において表示されてもよい。
【0032】
アプリケーション213は、ユーザーによるSSIDの選択操作を受け付け、選択されたSSIDに対応するアクセスポイントAPに接続するための処理を行う。具体的には、アプリケーション213は、選択されたアクセスポイントAPへの接続をドライバー212に指示する。ドライバー212は、Wi-Fiチップ221を制御することによって、Authenticationの送受信、Association Requestの送信、Association Responseの受信等、接続確立に必要なシーケンスを実行する。
【0033】
図5は、フルスキャンを行った場合の処理負荷と、電子機器200の処理能力の関係を示す図である。
図5の横軸は時間であり、縦軸は処理負荷又は処理能力を表す。フルスキャンにおいては、所与のチャンネルを用いて受信されたビーコン信号は全て処理対象となる上、多数のチャンネルについて順次スキャンを行う必要がある。上述したように、Wi-Fiのビーコン信号は種々の情報を含んでいる。またオフィス等では電子機器200の周辺に多数のアクセスポイントAPが存在する可能性がある。フルスキャンを行う場合、ドライバー212は、多数のビーコン信号を処理対象とする必要があるため処理負荷が大きい。
【0034】
電子機器200の処理部210が消費電力の多い動作モードである通常動作モードで動作している場合、
図5に示すように、ドライバー212を含む処理部210の処理能力が高い。そのため、フルスキャンを実行することが可能である。これに対して、処理部210が消費電力の少ない動作モードである省電力モードで動作している場合、
図5に示すように、処理能力が低下する。そのため、スキャン処理の処理負荷が、処理部210の処理能力を超えてしまう。この状態では適切なスキャン処理を実行できないため、消費電力の多い動作モードに移行する必要がある。結果として、消費電力が多い期間が長くなるため、動作モードを変更することによる省電力効果が損なわれてしまう。なお、消費電力の多い動作モードとは、具体的には処理部210を駆動するクロック信号の周波数が高いモードであり、消費電力の少ない動作モードとは、クロック信号の周波数が低いモードである。
【0035】
例えば電子機器200はプリンターである。プリンターは、印刷をしている場合や、ユーザーによる操作が行われている場合等を除いて、高速で動作する必要性が低い。そのため、消費電力の異なる複数の動作モードを有し、所定の条件に基づいて消費電力の少ない省電力モードに移行するプリンターが広く用いられている。しかし、SSIDのスキャン処理は、省電力モードにおいて実行される場合があり得る。その場合、毎回通常動作モードに移行したのでは省電力モードを設定する意義が薄れる。一方、処理負荷の低い制限スキャン処理が実行可能であれば、省電力モードでもスキャン処理は可能になる。ただし、制限スキャンでは探索されるSSIDが制限されるため、状況に応じて実行しなければ接続対象となるアクセスポイントAPが見つからないおそれもある。特許文献1等の従来手法では、電子機器200の動作モードを考慮した上でスキャン処理を行う手法は開示されていない。
【0036】
本実施形態の電子機器200は、上述したように無線通信部220と処理部210を含む。無線通信部220は、外部のアクセスポイントAPを経由した無線通信を行う。処理部210は、第1動作モードと、第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作する。また処理部210は、無線通信部220を制御する。
【0037】
ここでの第1動作モードは、例えばクロック信号の周波数が高い通常動作モードである。第2動作モードは、クロック信号の周波数が低い省電力モードである。なお変形例として後述するように、動作モードは3以上であってもよい。例えば省電力モードは、第1省電力モードと、第2省電力モードを含んでもよい。
【0038】
処理部210は、動作モードが第1動作モードである場合に、アクセスポイントAPのスキャン処理として第1スキャン処理を実行する。また処理部210は、動作モードが第2動作モードである場合に、第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行する。第1スキャン処理とは、例えばフルスキャンである。第2スキャン処理とは、フルスキャンよりもスキャン対象が制限された制限スキャンである。ただし、本実施形態の手法は、第1スキャン処理と第2スキャン処理とでスキャン対象に差があればよく、第1スキャン処理はフルスキャンに限定されない。
【0039】
図6は制限スキャンを行った場合の処理負荷を示す図である。例えば、後述するように探索対象とするSSIDを制限したり、SSIDの上限数を制限することによって、1チャンネル当たりの処理負荷を軽減できる。結果として、処理部210の処理能力が低い省電力モードでも、適切なスキャン処理を実行することが可能になる。またスキャン対象の制限とは、後述するようにチャンネルの制限であってもよい。探索チャンネルを制限し、且つ、SSIDを制限しない場合、1チャンネル当たりの処理負荷は軽減されないため、一時的に処理部210の能力を超える負荷がかかる可能性がある。ただし、フルスキャンのように継続的に処理負荷が処理能力を超えるわけではないため、この場合も適切なスキャン処理を実行することが可能である。
【0040】
また、本実施形態の電子機器200が行う処理は、通信制御方法として実現されてもよい。本実施形態の通信制御方法は、第1動作モードと、第1動作モードよりも消費電力が少ない第2動作モードとを含む複数の動作モードのいずれかで動作し、外部のアクセスポイントAPとの無線通信を行う電子機器200における通信制御方法である。通信制御方法は、動作モードが第1動作モードである場合に、アクセスポイントAPのスキャン処理として第1スキャン処理を実行し、動作モードが第2動作モードである場合に、第1スキャン処理に比べてスキャン対象を制限した第2スキャン処理を実行する。
【0041】
2.処理の流れ
本実施形態の処理の流れについて説明する。以下、第1動作モードが通常動作モードであり、第2動作モードが省電力モードである例について説明する。また第1スキャン処理がフルスキャンである例について説明する。第2スキャン処理は、上述した通り、制限スキャンである。
【0042】
スキャン処理が発生するトリガーとしては2つ考えられる。第1トリガーは、それまで接続されていた電子機器200とアクセスポイントAPとのリンクが切れたことである。第2トリガーは、ユーザーが電子機器200の無線通信設定を変更し、アクセスポイントAPに接続する操作を行ったことである。
【0043】
第1トリガーが発生する要因として、一時的なリンク切れ、又はローミングが考えられる。一時的なリンク切れとは、例えばアクセスポイントAP又は電子機器200の無線通信部220の少なくとも一方が、何らかの要因によって一時的に動作が不安定になった場合、或いは、アクセスポイントAPや電子機器200周辺の電波状況が一時的に変化した場合等が考えられる。この場合、ユーザーは、それまで接続していたアクセスポイントAPとの接続を維持することを望んでいる蓋然性が高い。よって接続していたアクセスポイントAPの接続情報を用いて、当該アクセスポイントAPとの再接続を試行することが有効である。ここでの接続情報は、接続に用いられる情報であり、例えばSSID及びパスワードである。
【0044】
またローミングとは、複数のアクセスポイントAPの間での乗り換えである。例えばオフィス等において、異なる位置に配置される複数のアクセスポイントAPに、同じSSIDを付与しておく。第1アクセスポイントの近傍から、第2アクセスポイントの近傍へ、電子機器200を移動させた場合を考える。通常、電波強度が強いほど安定した通信が可能であるため、電子機器200にとって無線通信に適したアクセスポイントAPが、第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに変化すると考えられる。この際、上記のように複数のアクセスポイントAPで接続情報を共通化しておくことによって、接続情報の入力操作等を受け付けることなく、アクセスポイントAPの切替が可能になる。この場合も、接続していたアクセスポイントAPの接続情報を用いて、再接続を試行することが有効である。ローミングでは接続対象となるアクセスポイントAPが変化することになるが、既存の接続情報を再接続に流用可能という点は一時的なリンク切れと同様である。
【0045】
第2トリガーは、例えばユーザーが
図4に示すSSID一覧画面の表示操作を行った場合に対応する。この際、ユーザーがいずれのアクセスポイントAPとの接続を望んでいるかは、電子機器200にとって未知の情報である。そのため、事前にスキャン対象を制限することは難しく、電子機器200はフルスキャンを行う必要性が高い。例えば電子機器200は、フルスキャンの結果であるSSID一覧画面を表示し、ユーザーによる選択操作を受け付ける処理を行う。
【0046】
以上のように、第2トリガーが発生した場合、電子機器200はフルスキャンを行う必要性が高い。一方、第1トリガーが発生した場合、制限スキャンでも所望のアクセスポイントAPを探索できる可能性がある。よって電子機器200は、発生したトリガーの内容と、現在の動作モードとに基づいて処理を切り替える。
【0047】
まず処理部210の動作モードが第1動作モードである場合、
図5に示したようにフルスキャンを実行することが可能である。そのため、処理部210は、スキャン処理のトリガーが第1トリガーと第2トリガーのいずれであっても、フルスキャンを実行する。
【0048】
図7は、第2動作モードにおいて第1トリガーが発生した場合の処理を説明するフローチャートである。具体的には、処理部210は、接続していたアクセスポイントAPからのビーコン信号の受信強度が所与の閾値以下である場合、又は、ビーコン信号が非受信である場合に、第1トリガーが発生したと判定する(ステップS101)。
【0049】
ここでの電波強度は、具体的にはビーコン信号のRSSI(Received Signal Strength Indication)である。また、ビーコン信号はアクセスポイントAPから所定周期で送信されるが、接続状態が正常であっても、何らかの理由で無線通信部220が当該ビーコン信号の受信に失敗する可能性がある。よってここでのビーコン信号が非受信であるとは、具体的には所定期間の間、連続してビーコン信号が受信できない状態を表す。所定期間については種々の変形実施が可能であるが、例えば500msec程度の時間である。第1トリガーが発生したと判定された場合、処理部210は、第2動作モードのまま制限スキャンを実行する(ステップS102)。
【0050】
本実施形態における第2スキャン処理は、第1スキャン処理に対して、スキャン対象SSIDを接続履歴のあるSSIDに制限する第1制限、スキャン対象チャンネルを所与のチャンネルに制限する第2制限、及び、スキャン対象SSID数を所与の閾値以下に制限する第3制限、のうちの少なくとも1つの制限が行われた処理である。このような制限を設けることによって、制限スキャンである第2スキャン処理の負荷を、第1スキャンに比べて軽減することが可能になる。
【0051】
図8は、制限スキャンにおける処理を説明するフローチャートである。まず処理部210は、探索対象となるチャンネルを設定する(ステップS201)。例えば、処理部210は、直前に接続していたアクセスポイントAPとの無線通信に使用していたチャンネルを、探索対象チャンネルとして設定する。ステップS201の処理は、上記の第2制限に対応する。チャンネルを制限することによって、ステップS202以降の処理の実行回数を少なくできるため、処理負荷の軽減が可能である。なお、ここでの探索対象チャンネルは、直前のチャンネルに限定されず、過去の無線接続で使用したことのある2以上のチャンネルを含んでもよい。
【0052】
次に処理部210は、設定したチャンネルを用いてアクセスポイントAPからのビーコン信号を受信する処理を行う(ステップS202)。具体的には、Wi-Fiチップ221がビーコン信号を受信し、ドライバー212が当該ビーコン信号を取得する。なお、1チャンネルにおいて複数のビーコン信号が受信される場合には、各ビーコン信号に対して、順次、ステップS203~S205の処理が実行される。
【0053】
処理部210は、ステップS202で取得したビーコン信号のうちの、SSID部分を参照し、当該SSIDが探索対象のSSIDであるか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、処理部210は、ビーコン信号に含まれるSSIDが、直前に接続していたアクセスポイントAPのSSIDと一致するか否かを判定する。
【0054】
ビーコン信号のSSIDが探索対象のSSIDである場合(ステップS203でYes)、処理部210は、リスト情報に追加された情報の数が所与の閾値未満であるかを判定する(ステップS204)。ここでの閾値は、例えば10であるが、具体的な値については種々の変形実施が可能である。処理部210は、リスト情報に追加された情報の数が閾値に到達している場合に、ステップS204でNoと判定する。
【0055】
ステップS203とステップS204の両方がYesの場合、ドライバー212は、受信したビーコン信号に対する形式変換等の処理を行い、処理結果をリスト情報に追加する(ステップS205)。一方、ステップS203とステップS204の少なくとも一方でNoの場合、ドライバー212は、ステップS205の処理を省略する。即ち、ドライバー212は、受信したビーコン信号に対するそれ以上の処理を省略し、当該ビーコン信号の情報を破棄する。
【0056】
ステップS203の処理が第1制限に対応する。第1制限を行った場合、リスト情報への追加対象となるビーコン信号が、特定のSSIDを含むビーコン信号に限定される。リスト情報への追加対象となるビーコン信号を大きく制限できるため、処理負荷の軽減が可能である。なお、ステップS203の判定はビーコン信号のうちのSSID部分のみを読み取ることによって実行可能であるため、この処理における負荷は大きな問題とならない。
【0057】
またステップS204の処理が第3制限に対応する。第3制限を行った場合、ある程度の数のビーコン信号の情報が追加された場合、それ以降のビーコン信号に対する処理を省略できる。そのため、スキャン処理の負荷軽減が可能である。
【0058】
なお、
図8では無線通信部220がパッシブスキャンを行うことを想定した処理を例示している(ステップS202~S204)。即ち、無線通信部220は、アクセスポイントAPからのビーコン信号を待ち受ける。ただし、無線通信部220は、アクティブスキャンを行ってもよい。アクティブスキャンとは、Probe Requestを送信し、アクセスポイントAPからProbe Responseを受信する処理である。この場合、第1制限は、所定のSSIDを指定してProbe Requestを送信することによって実現される。異なるSSIDを有するアクセスポイントAPからはProbe Responseが返信されないため、スキャン対象のSSIDが制限可能である。また、第3制限は、リスト情報に追加済の情報が所定数を超えた場合、Probe Requestの送信を行わないことによって実現できる。ただし、アクティブスキャンを行う場合、電子機器200から電波を送信する必要がある。国や地域に応じて、法律によって使用できないチャンネルが存在する場合があるため、そのようなチャンネルの電波送信を抑制するという観点からすれば、パッシブスキャンの方が有利である。
【0059】
次に処理部210は、探索対象となるチャンネルの全てにおけるスキャンが完了したか否かを判定する(ステップS206)。ステップS206でYesの場合、処理部210は、制限スキャン処理を終了する。具体的にはドライバー212は、この時点でのリスト情報をアプリケーション213に出力する。なお、第2制限によって探索対象のチャンネルを1つに限定する場合、ステップS206の判定は必ずYesとなるため、この処理が省略されてもよい。
【0060】
2以上のチャンネルが探索対象として設定されており、未探索のチャンネルが残っている場合(ステップS206でNo)、処理部210は、Wi-Fiチップ221のチャンネルを未探索のチャンネルのいずれかに変更する処理を行った後(ステップS207)、ステップS202に戻って処理を継続する。
【0061】
図7に戻って説明を続ける。制限スキャンの実行後、処理部210は、探索対象としていたSSIDが見つかったか否かを判定する(ステップS103)。探索対象のSSIDとは、ステップS203の判定に用いたSSIDである。例えばステップS103の処理は、リスト情報が空であるか否かの判定処理である。
【0062】
探索対象のSSIDが見つかった場合、処理部210は処理を終了する。
図7に示す処理の後、例えば処理部210は、探索されたSSIDに自動的に接続する処理を行う。探索対象のSSIDが見つからなかった場合、処理部210は通常動作モードに移行する(ステップS104)。そして通常動作モード移行後に、処理部210はフルスキャンを実行する(ステップS105)。
【0063】
図7に示したように、処理部210は、動作モードが第2動作モードであり、接続していたアクセスポイントAPからのビーコン信号の受信強度が所与の閾値以下である場合、又は、ビーコン信号が非受信である場合に、第2スキャン処理を実行する。換言すれば、処理部210は、第1トリガーに基づいて制限スキャンを実行する。上述したように、第1トリガーとは、それまでの接続に用いていた接続情報を流用できる可能性がある。制限スキャンでも所望のアクセスポイントAPに接続できる可能性があるため、制限スキャンを実行する意義が大きい。これにより、不要な場面で第1動作モードに移行することを抑制できるため、電子機器200の消費電力の低減が可能である。
【0064】
また処理部210は、ステップS104及びS105に示したように、第2スキャン処理によって接続対象のアクセスポイントAPが探索されなかった場合に、第1動作モードに移行し、第1スキャン処理を実行してもよい。電子機器200がいずれのアクセスポイントAPにも接続されない場合、ネットワークを経由した処理を実行できない。例えば、プリンターである電子機器200が、同じアクセスポイントAPに接続している端末装置からの印刷ジョブを受け付けることができなくなる。印刷ジョブとは、印刷対象となる画像情報や、印刷設定情報を含む情報である。印刷設定情報は、用紙サイズ、片面/両面、カラー/モノクロ等の設定項目についての設定値を特定する情報である。
【0065】
制限スキャンによって元のアクセスポイントAP又はローミングによる乗り換え先のアクセスポイントAPが見つからない場合、接続可能な他のアクセスポイントAPを探索することが有用である。例えば、フルスキャンによって探索されたSSIDの一覧を提示することによって、ユーザーの利便性向上が可能になる。
【0066】
図9は、第2動作モードにおいて第2トリガーが発生した場合の処理を説明するフローチャートである。具体的には、処理部210は、ユーザーによる通信設定変更操作を受け付けた場合に、第2トリガーが発生したと判定する(ステップS301)。ここでの通信設定とは、具体的には無線通信の設定であり、少なくとも接続先のアクセスポイントAPの設定を含む。また通信設定は、セキュリティー規格や暗号化規格等に関する設定等、アクセスポイントAPを特定する情報とは異なる情報を含んでもよい。
【0067】
上述したように、第2トリガーの発生時には、ユーザーがいずれのアクセスポイントAPへの接続を望んでいるかを推定することは難しく、スキャン対象を制限できない。よって処理部210は、通常動作モードへ移行し(ステップS302)、通常動作モード移行後に、フルスキャンを実行する(ステップS303)。
【0068】
即ち、処理部210は、動作モードが第2動作モードであり、ユーザー指示による通信設定変更が行われた場合に、第1動作モードに移行し、第1スキャン処理を実行する。このようにすれば、幅広いアクセスポイントAPを探索する必要性が高い場面において、適切な動作モードの変更及び適切なスキャン処理を実行することが可能になる。
【0069】
なお、電子機器200の操作部240を用いて通信設定の変更操作が行われている場合、それ以前のユーザー操作に基づいて、処理部210の動作モードは第1動作モードに移行していることが想定される。通信設定の変更操作以前のユーザー操作とは、例えば省電力モードからの復帰操作、設定項目の選択操作等である。この場合、第2トリガーの発生時には第1動作モードであるため、動作モードを切り替えることなくフルスキャンを実行可能である。
【0070】
第2動作モードにおいて、ユーザー指示による通信設定変更が行われた場合とは、例えば電子機器200とは異なる端末装置を用いて、電子機器200の設定変更が行われる場合である。例えば、電子機器200と端末装置が同じアクセスポイントAPに接続している状態や、電子機器200と端末装置がダイレクト接続している状態において、ユーザーは端末装置を用いて、電子機器200を別のアクセスポイントAPへ接続させるための操作を実行する。この場合、電子機器200の操作部240は操作されないため、印刷動作等の他の動作が行われていなければ、処理部210の動作モードは第2動作モードに維持される。
【0071】
3.変形例
以上では動作モードが第1動作モードと第2動作モードの2つである例について説明した。第1動作モードは例えば通常動作モードであり、第2動作モードは省電力モードである。ただし動作モードは3つ以上であってもよい。
【0072】
例えば本実施形態の動作モードは、第1動作モードよりも消費電力が少なく、且つ、第2動作モードよりも消費電力が多い第3動作モードを含んでもよい。第3動作モードは、第1省電力モードであり、上記第2動作モードは、第2省電力モードである。処理部210は、動作モードが第3動作モードである場合に、第1スキャン処理と第2スキャン処理のいずれとも、スキャン対象の制限内容が異なる第3スキャン処理を実行する。例えばクロック信号の周波数を比較した場合、第1動作モードは第3動作モードより周波数が高く、第3動作モードは第2動作モードよりも周波数が高い。
【0073】
例えば処理部210は、動作モードが第3動作モードである場合に、第1スキャン処理に対して上記第1制限が行われ、且つ、第2制限及び第3制限が行われない第3スキャン処理を実行してもよい。即ち、処理部210は、探索対象のSSIDを接続履歴があるSSID、狭義には最後に接続したアクセスポイントAPのSSIDに制限する。一方、処理部210は、全てのチャンネルを探索対象とし、且つ、リスト情報に保持するSSIDの数に上限を設けない。
【0074】
上述したように、制限スキャンが有効な状況にはローミングが含まれる。そしてローミングを行う環境に設けられる複数のアクセスポイントAPは、SSIDは共通であるが使用するチャンネルが異なる場合がある。そのため、ローミングが行われる可能性がある状況であっても、第2制限を行っていると適切なSSIDが探索されないおそれがある。よって省電力モードであっても、比較的処理能力に余裕がある場合、チャンネルに関する第2制限を行わないことが望ましい。
【0075】
また多数のチャンネルをスキャン対象とする場合、電波強度の高いSSIDが早めに探索されるとは限らない。結果として、第3制限を行っていると、電波強度の弱いビーコン信号によってリスト情報が埋まってしまうおそれがある。よって省電力モードであっても、比較的処理能力に余裕がある場合、SSIDの数に関する第3制限を行わないことが望ましい。
【0076】
一方、処理部210は、動作モードが第2動作モードである場合に、第2スキャン処理として、第1スキャン処理に対して、第1制限、第2制限及び第3制限のうちの2以上の制限が行われたスキャン処理を実行する。
【0077】
図10は、動作モードとスキャン処理の関係例を示す図である。
図10に示すように、通常動作モードではフルスキャンが可能である。よって第1制限、第2制限、第3制限のいずれも適用されない。第1省電力モードでは、例えば上述したように、第1制限を適用し、且つ、第2制限及び第3制限を適用しない。また第2省電力モードでは、
図8を用いて上述したように、処理部210は、第1制限、第2制限及び第3制限の全てを適用する。ただし、
図10は各動作モードにおける制限の一例である。各動作モードにおけるスキャン処理の内容は
図10に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば、第2スキャン処理は、第1制限、第2制限及び第3制限のうちのいずれか1つが省略されてもよい。
【0078】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0079】
200…電子機器、210…処理部、211…CPU、212…ドライバー、213…アプリケーション、220…無線通信部、221…Wi-Fiチップ、230…表示部、240…操作部、250…印刷部、260…記憶部、AP…アクセスポイント