(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240528BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 305
B41J2/165 503
(21)【出願番号】P 2020056299
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 信哉
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223771(JP,A)
【文献】特開2004-106359(JP,A)
【文献】特開2010-125740(JP,A)
【文献】特開2014-024249(JP,A)
【文献】特開2015-150719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有し、画像データに基づく前記インクの吐出によって記録媒体に画像を形成するとともに、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを実行する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを制御する制御部と、
前記記録媒体を副走査方向に搬送して前記記録ヘッドと対向する位置に導くとともに、前記フラッシングのときに前記記録ヘッドの各ノズルから吐出される前記インクを通過させる開口部を前記副走査方向と垂直な主走査方向に並べた開口部群を、前記副走査方向の複数箇所に有する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに前記記録媒体を供給する記録媒体供給部と、
前記記録媒体供給部によって供給された前記記録媒体の前記搬送ベルト上での前記主走査方向および前記副走査方向の載置位置を検知する第1検知センサーと、
前記搬送ベルトの前記開口部を検知する第2検知センサーと、を備え、
前記制御部は、
前記第1検知センサーおよび前記第2検知センサーの検知結果に基づいて、前記搬送ベルト上に載置された前記記録媒体と搬送方向下流側にずれて位置する前記開口部を認識するとともに、
前記開口部が前記搬送ベルトの走行によって前記記録ヘッドと対向するタイミングで前記フラッシングを実行させる対象となる前記記録ヘッドの対象ノズルを、前記記録媒体の前記主走査方向の前記載置位置と、前記記録媒体に形成する前記画像の前記画像データと、予め定められた、前記インクの吐出性能を維持するために必要な前記副走査方向のフラッシング間隔とに基づいて判断し、
前記対象ノズルについては、前記タイミングで前記フラッシングを実行させる一方、前記対象ノズル以外の非対象ノズルについては、前記タイミングでの前記フラッシングの実行を停止させ
、
前記記録媒体の前記主走査方向の前記載置位置と、前記記録媒体に形成する前記画像の前記画像データとに基づいて、前記搬送ベルトを基準とする前記記録媒体上の画像形成領域を認識し、前記画像形成領域に対して前記搬送方向下流側に位置する開口部と前記搬送ベルトの走行時に対向する前記記録ヘッドのノズルを、前記対象ノズルとして判断することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記記録媒体と前記搬送方向下流側にずれて位置する前記開口部が前記搬送ベルトの走行によって前記記録ヘッドと対向するタイミングが、前記フラッシング間隔で行う前記フラッシングのタイミングと一致するときに、前記記録ヘッドの全ノズルを前記対象ノズルとして判断することを特徴とする請求項
1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記吐出性能を維持するために必要な前記フラッシング間隔ごとの第1インク吐出量と、前記フラッシングを行う前後の各記録媒体に対する画像形成時の第2インク吐出量およびインク吐出タイミングとに基づいて、前記対象ノズルのフラッシング量を決定し、決定した前記フラッシング量のインクを前記対象ノズルから吐出させて前記フラッシングを実行させることを特徴とする請求項1
または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1検知センサーは、前記第2検知センサーを兼ねていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを低減または予防するため、定期的にノズルからインクを吐き出すフラッシング(空吐出)が行われている。例えば特許文献1のインクジェット記録装置では、記録媒体を搬送する搬送ベルトに開口部を設け、搬送ベルトの走行によって開口部が記録ヘッドと対向する位置にきたときに、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して開口部を通過させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インク吐出により記録媒体に対して画像を確実に形成するためには、画像形成前にノズルの目詰まりが解消されていることが必要である。そのためには、画像形成前にフラッシングを行っておくことが望ましい。一方、例えば、搬送ベルトに記録媒体を載置したものの、上記記録媒体に形成する画像が存在しない場合には(例えば白紙印字の場合)、搬送ベルトの走行により上記記録媒体が記録ヘッドと対向する直前でフラッシングを行って、ノズルのインク吐出性能を保証しておく必要はない。ただし、後続の記録媒体に対する画像形成に備えて、最低限のインクの吐出性能を維持しておく必要はある。この場合において、必要以上にフラッシングを行うことは、フラッシングによる無駄なインクの消費につながる。
【0005】
以上の点を考慮すると、インクの吐出性能を維持しながら、インク吐出による画像形成を確実に行うことができるとともに、フラッシングによるインク消費量を低減することができるように、各ノズルのフラッシングを制御することが望ましい。しかし、このようなフラッシングの制御については、特許文献1を含めて従来一切検討されていない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、各ノズルについてフラッシングの実行および停止を適切に制御することにより、インクの吐出性能を維持しながら、インク吐出による画像形成を確実に行うことができるとともに、フラッシングによるインク消費量を低減することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出する複数のノズルを有し、画像データに基づく前記インクの吐出によって記録媒体に画像を形成するとともに、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを実行する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを制御する制御部と、前記記録媒体を副走査方向に搬送して前記記録ヘッドと対向する位置に導くとともに、前記フラッシングのときに前記記録ヘッドの各ノズルから吐出される前記インクを通過させる開口部を前記副走査方向と垂直な主走査方向に並べた開口部群を、前記副走査方向の複数箇所に有する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトに前記記録媒体を供給する記録媒体供給部と、前記記録媒体供給部によって供給された前記記録媒体の前記搬送ベルト上での前記主走査方向および前記副走査方向の載置位置を検知する第1検知センサーと、前記搬送ベルトの前記開口部を検知する第2検知センサーと、を備える。前記制御部は、前記第1検知センサーおよび前記第2検知センサーの検知結果に基づいて、前記搬送ベルト上に載置された前記記録媒体と搬送方向下流側にずれて位置する前記開口部を認識するとともに、前記開口部が前記搬送ベルトの走行によって前記記録ヘッドと対向するタイミングで前記フラッシングを実行させる対象となる前記記録ヘッドの対象ノズルを、前記記録媒体の前記主走査方向の前記載置位置と、前記記録媒体に形成する前記画像の前記画像データと、予め定められた、前記インクの吐出性能を維持するために必要な前記副走査方向のフラッシング間隔とに基づいて判断し、前記対象ノズルについては、前記タイミングで前記フラッシングを実行させる一方、前記対象ノズル以外の非対象ノズルについては、前記タイミングでの前記フラッシングの実行を停止させる。
【発明の効果】
【0008】
制御部は、記録媒体の主走査方向の載置位置と、記録媒体に形成する画像の画像データと、インクの吐出性能を維持するために必要なフラッシング間隔とに基づいて、フラッシングの対象となる対象ノズルを判断する。対象ノズルについてフラッシングを実行させることにより、インクの吐出性能を維持しながら、インク吐出による画像形成を確実に行うことができる。一方、対象ノズル以外の非対象ノズルについてフラッシングの実行を停止させることにより、フラッシングによるインク消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンターの概略の構成を示す説明図である。
【
図2】上記プリンターが備える記録部の平面図である。
【
図3】上記プリンターの給紙カセットから第1搬送ユニットを介して第2搬送ユニットに至る用紙の搬送経路の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】上記プリンターの主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】上記第1搬送ユニットが有する第1搬送ベルト上に載置された用紙の画像形成領域を、上記用紙の主走査方向の載置位置のずれがある場合とない場合とで模式的に示す説明図である。
【
図6】上記第1搬送ベルトの一構成例を示す平面図である。
【
図7】上記プリンターにおけるフラッシング制御による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】上記第1搬送ベルトに複数枚の用紙が等間隔で順次供給されて載置された状態を模式的に示す説明図である。
【
図9】上記第1搬送ベルト上に載置される複数枚の用紙と、各用紙の画像形成領域とを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0011】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち
図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは
図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0012】
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0013】
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5に向かって用紙Pを送り出す。
【0014】
第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8(
図2参照)によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御部110によって制御される。制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。
【0015】
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(
図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
【0016】
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0017】
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(
図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0018】
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
【0019】
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に介して用紙排出トレイ15に排出される。
【0020】
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0021】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6bおよび他のローラー7を含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。
【0022】
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(A方向)と直交する用紙幅方向(BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
【0023】
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。また、
図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、位置検知センサー23と、ベルトセンサー24および25と、をさらに備えている。
【0024】
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御することができる。例えば、制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御することができる。
【0025】
位置検知センサー23は、記録媒体供給部としてのレジストローラー対13によって供給された用紙Pの第1搬送ベルト8上での主走査方向の載置位置および幅と、副走査方向の位置とを検知する第1検知センサーである。このような位置検知センサー23は、例えば主走査方向に長尺状のCISセンサー(Contact Image Sensor、密着型イメージセンサー)で構成されている。なお、上記の主走査方向とは、第1搬送ベルト8による用紙Pの搬送方向を副走査方向(
図3のA方向)としたとき、第1搬送ベルト8のベルト平面内で上記副走査方向と垂直な方向を指し、上記のベルト幅方向(
図3のBB’方向)と一致する。位置検知センサー23は、用紙搬送方向において記録部9の上流側に位置している。制御部110は、位置検知センサー23での用紙Pの検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)と対向する位置に到達する用紙Pに対するインクの吐出タイミングを制御することができる。
【0026】
また、位置検知センサー23は、第1搬送ベルト8の後述する開口部80(
図6参照)を検知する第2検知センサーとしても機能している。制御部110は、位置検知センサー23での開口部80の検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)と対向する位置に到達する開口部80に対するインクの吐出タイミングを制御することができる。
【0027】
なお、開口部80に対するインクの吐出は、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングで行われる。このようなインクの吐出は、「フラッシング」とも呼ばれる。記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングの実行は、制御部110によって制御される。
【0028】
また、位置検知センサー23が用紙Pの第1搬送ベルト8上での主走査方向の位置を検知することにより、制御部110は、第1搬送ベルト8上での用紙Pの主走査方向の位置と、用紙Pに記録する画像の画像データとに基づいて、第1搬送ベルト8を基準とする画像形成領域IMの主走査方向の位置を認識することができる。
【0029】
例えば、
図5は、第1搬送ベルト8上に載置された用紙Pの画像形成領域IMを、用紙Pの主走査方向の載置位置のずれがある場合とない場合とで模式的に示している。なお、画像形成領域IMとは、用紙Pに形成される画像の領域であり、その領域の位置、大きさおよび形状は、上記画像の画像データに基づいて一義的に決まる。また、第1搬送ベルト8に対する用紙Pの主走査方向の載置位置のずれは、例えばレジストローラー対13によるスキュー補正によって生じ得る。
【0030】
同図に示すように、第1搬送ベルト8を基準に考えると、用紙Pの画像形成領域IMは、第1搬送ベルト8に対する用紙Pの主走査方向の位置ずれ量D(mm)だけ主走査方向にずれる。制御部110は、第1搬送ベルト8を基準とする画像形成領域IMの主走査方向の位置を認識することにより、画像形成領域IMに対してインク吐出を行う記録ヘッド17a~17cのインク吐出領域(インク吐出口18)を後述の手法で認識することができる。したがって、用紙Pの載置位置が主走査方向にずれている場合でも、認識したインク吐出口18、つまり、画像形成に利用されるノズルに対してフラッシングを実行させることが可能となる。
【0031】
なお、用紙Pに形成する画像の1画素は、少なくとも1つのインク吐出口18と対応している。このため、上記画像の画素ごとの画像データを用いて画像形成領域IMを認識することにより、画像形成領域IMの各画素に対応するインク吐出口18についてフラッシングを実行させることができる。したがって、画像形成時には、各画素に対応するインク吐出口18からインクを適切に吐出させて、上記画像の各画素ひいては画像全体を確実に形成することができる。
【0032】
ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8に設けられた、後述する複数の開口部群82(
図6参照)の位置を検知する。つまり、ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8の走行による開口部群82の少なくともいずれかの通過を検知する。ベルトセンサー24は、用紙搬送方向(第1搬送ベルト8の走行方向)において記録部9の下流側に位置している。ベルトセンサー25は、第1搬送ベルト8を張架する従動ローラー6bと他のローラー7との間に位置している。従動ローラー6bは、記録部9に対して第1搬送ベルト8の走行方向の上流側に位置している。なお、ベルトセンサー24は、位置検知センサー23と同等の機能を兼ね備えていてもよい。制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8に対して所定のタイミングで用紙Pを供給するように、レジストローラー対13を制御することができる。
【0033】
また、用紙の位置を複数のセンサー(例えば位置検知センサー23、ベルトセンサー24)で検知し、第1搬送ベルト8の開口部群82の位置を複数のセンサー(例えばベルトセンサー24および25)で検知することにより、検知した位置の誤差修正や異常の検知も可能となる。
【0034】
上述したベルトセンサー24および25は、透過型または反射型の光学センサー、CISセンサーなどで構成されてもよい。また、第1搬送ベルト8の幅方向の端部に、開口部群82の位置に対応するマークを形成しておき、ベルトセンサー24および25が上記マークを検知することにより、開口部群82の位置を検知してもよい。
【0035】
その他、プリンター100は、第1搬送ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサーを備え、その検知結果に基づいて第1搬送ベルト8の蛇行を修正する構成であってもよい。
【0036】
また、プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、をさらに備えている。操作パネル27は、ユーザーによる各種の設定入力を受け付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズ、つまり、第1搬送ベルト8によって搬送する用紙Pのサイズの情報を入力することができる。記憶部28は、制御部110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成されている。操作パネル27によって設定された情報(例えば用紙Pのサイズの情報)は、記憶部28に記憶される。通信部29は、外部(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、制御部110が上記画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録することができる。
【0037】
また、
図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y~31Kは、フラッシングを記録ヘッド17a~17cに実行させたときに、記録ヘッド17a~17cから吐出されて第1搬送ベルト8の後述する開口部群82の開口部80を通過したインクを受けて回収する。したがって、インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。なお、インク受け部31Y~31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄されるが、廃棄せずに再利用されてもよい。
【0038】
上述した第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12aと、乾燥器12bとを有して構成されている。第2搬送ベルト12aは、2つの駆動ローラー12cおよび従動ローラー12dによって張架されている。第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ベルト12aによって搬送され、搬送中に乾燥器12bによって乾燥されて上述したデカーラー部14に搬送される。
【0039】
〔2.第1搬送ベルトの構成〕
次に、上述した第1搬送ベルト8の構成について説明する。
図6は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。第1搬送ベルト8は、開口部群82を有している。開口部群82は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cの各ノズル(インク吐出口18)から吐出されるインクを通過させる開口部80の集合である。第1搬送ベルト8は、開口部群82を、A方向(副走査方向)の複数箇所に有している。
【0040】
より詳しくは、開口部群82は、開口部列81を有している。開口部列81は、A方向と直交するBB’方向(主走査方向)に複数の開口部80を並べて構成されている。1つの開口部群82は、開口部列81をA方向に少なくとも1列有しており、本実施形態では、開口部列81を2列有している。なお、2列の開口部列81を互いに区別するときは、一方を開口部列81aとし、他方を開口部列81bとする。各開口部列81は、A方向に等間隔で位置している。
【0041】
1つの開口部群82において、いずれかの開口部列81(例えば開口部列81a)の開口部80は、他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80とBB’方向にずれて位置し、かつ、A方向に見て他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80の一部と重畳するように位置する。また、各開口部列81において、複数の開口部80は、BB’方向に等間隔で位置する。
【0042】
上記のように複数の開口部列81をA方向に並べて1つの開口部群82を形成していることにより、開口部群82のBB’方向の幅は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向の幅よりも大きくなっている。したがって、開口部群82は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向のインク吐出領域を全てカバーしており、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクは、開口部群82のいずれかの開口部80を通過することができる。
【0043】
本実施形態では、第1搬送ベルト8は、負圧吸引方式で用紙Pを搬送する。なお、負圧吸引方式とは、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する方式である。上記した開口部80は、負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔を兼ねている。
【0044】
〔3.フラッシング制御〕
次に、本実施形態におけるフラッシング制御について説明する。
図7は、本実施形態のフラッシング制御による処理の流れを示すフローチャートである。操作パネル27(
図4参照)の操作または外部端末(例えばPC)からの印刷コマンドの受信によって印刷ジョブの開始が指示されると(S1)、給紙装置3によって用紙Pが給紙カセット2(
図1参照)からレジストローラー対13に向けて順次搬送される(S2)。そして、レジストローラー対13が、第1搬送ベルト8に向けて所定のタイミングで用紙Pを順に供給すると(S3)、制御部110は、位置検知センサー23の検知結果、すなわち、レジストローラー対13から供給された用紙Pの第1搬送ベルト8上での主走査方向(BB’方向)および副走査方向(A方向)の載置位置の検知結果と、第1搬送ベルト8の開口部80の検知結果とに基づいて、第1搬送ベルト8上に載置された用紙Pと搬送方向下流側にずれて位置する開口部80を認識する(S4)。
【0045】
ここで、
図8は、第1搬送ベルト8に例えばA4サイズ(縦置き)の複数枚の用紙Pがレジストローラー対13から等間隔で順次供給されて載置された状態を示している。なお、第1搬送ベルト8上に順に載置された複数枚の用紙Pのうち、1~4枚目の用紙Pを、それぞれ用紙P1~P4とも称する。S4では、制御部110は、位置検知センサー23の検知結果に基づいて、まず、第1搬送ベルト8上に載置された1枚目の用紙P1とA方向の下流側にずれて位置する開口部群82の開口部80aを認識する。なお、開口部80aは、後述する開口部80a
1、80a
2、80a
nの総称である。
【0046】
次に、制御部110は、用紙PのBB’方向の載置位置と、用紙Pに形成する画像の画像データと、予め定められた、インクの吐出性能を維持するために必要なA方向のフラッシング間隔Tref(sec)とに基づいて、記録ヘッド17a~17cの対象ノズルおよび非対象ノズルを判断する(S5)。
【0047】
ここで、上記の対象ノズルとは、記録ヘッド17a~17cの複数のインク吐出口18のうち、開口部80が第1搬送ベルト8の走行によって記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングでフラッシングを実行させる対象となるインク吐出口18を指す。この対象ノズルは、用紙Pに対する画像形成時にインクを吐出するインク吐出口18を含んで構成される。例えば、
図8では、開口部群82の開口部80aのうち、用紙P1上の画像形成領域IM1(第1搬送ベルト8を基準)とA方向に見て少しでも重なる開口部80a
1、80a
2と、第1搬送ベルト8の走行によって対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を対象ノズルとしている。なお、第1搬送ベルト8を基準とする画像形成領域IM1のBB’方向の位置は、上述したように、第1搬送ベルト8に対する用紙P1のBB’方向の載置位置と、用紙P1に形成する画像の画像データに基づいて認識することができる。
【0048】
なお、
図8に示すように、用紙P1の下流側に位置する開口部80aが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致していない。このため、対象ノズルは、第1搬送ベルト8の走行によって上記の開口部80a
1、80a
2と対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18のみとなる。
【0049】
一方、上記の非対象ノズルとは、記録ヘッド17a~17cの複数のインク吐出口18において、対象ノズル以外の残りのインク吐出口18を指す。すなわち、開口部群82の開口部80aのうち、開口部80a1、80a2以外の開口部80anと、第1搬送ベルト8の走行によって対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18が非対象ノズルとなる。
【0050】
次に、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの上記した対象ノズルについて、第1搬送ベルト8の走行によって上記の開口部80a1、80a2と対向するタイミングでフラッシングを実行させる一方、対象ノズル以外の非対象ノズルについて、上記のタイミングでのフラッシングの実行を停止させる(S6)。なお、上記非対象ノズルについてフラッシングを行うか否かの判断は、後続の用紙P2に対する画像形成前に、上記と同様の手法で再度判断されることになる。
【0051】
なお、
図8において、フラッシングの実行によって記録ヘッド17a~17cから吐出されるインクが通過する開口部80を、便宜的に黒塗りで示す。また、
図8では、1列の開口部80aに対してフラッシングを行っているが、A方向に並ぶ複数列の開口部80aに対してフラッシングを行うようにしてもよい(他の開口部80b~80eについても同様)。
【0052】
その後、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行によって用紙P1が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、先にフラッシングを行った対象ノズル(用紙P1と対向するノズルのみ)から用紙P1にインクを吐出して、用紙P1の画像形成領域IM1に画像を形成する(S7)。
【0053】
次に、制御部110は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する(S8)。そして、印刷ジョブが終了していれば一連の処理を終了し、印刷ジョブが終了していなければ、S4に戻って以降の処理を繰り返す。
【0054】
図8のように、2枚目の用紙P2が第1搬送ベルト8上に載置されている場合、S4では、制御部110は、位置検知センサー23の検知結果に基づいて、第1搬送ベルト8上に載置された2枚目の用紙P1とA方向の下流側にずれて位置する開口部群82の開口部80、つまり、第1搬送ベルト8において用紙P1と用紙P2との間に位置する開口部80bを認識する。そして、S5では、用紙P2のBB’方向の載置位置と、用紙P2に形成する画像の画像データと、フラッシング間隔Tref(sec)とに基づいて、記録ヘッド17a~17cの対象ノズルおよび非対象ノズルを判断する。
【0055】
ここで、2枚目の用紙P2には画像形成領域がないため、画像形成に備えてフラッシングを行う必要はない。しかし、用紙P2の下流側に位置する開口部80bが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致している。このため、S5では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18を対象ノズルとして判断する。そして、S6では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの上記対象ノズルについて、第1搬送ベルト8の走行によって各開口部80bと対向するタイミングでフラッシングを実行させる。
【0056】
なお、仮に、2枚目の用紙P2に画像形成領域がある場合でも、開口部80bが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングが、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致する場合には、後者を優先し、制御部110は全てのインク吐出口18を対象ノズルとして判断する。
【0057】
S7では、本来であれば、用紙への画像形成が行われるが、2枚目の用紙P2には画像形成領域がないため、S7はスキップされる。そして、S8にて、印刷ジョブが終了していなければ、S4に戻って同様の処理を繰り返す。
【0058】
図8のように、3枚目の用紙P3が第1搬送ベルト8に載置されている場合、S4では、制御部110は、位置検知センサー23の検知結果に基づいて、第1搬送ベルト8上に載置された3枚目の用紙P3とA方向の下流側にずれて位置する開口部群82の開口部80、つまり、第1搬送ベルト8において用紙P2と用紙P3との間に位置する開口部80cを認識する。なお、開口部80cは、後述する80c
1、80c
2、80c
nの総称である。そして、S5では、用紙P3のBB’方向の載置位置と、用紙P3に形成する画像の画像データと、フラッシング間隔Tref(sec)とに基づいて、記録ヘッド17a~17cの対象ノズルおよび非対象ノズルを判断する。
【0059】
例えば、
図8では、開口部群82の開口部80cのうち、用紙P3上の画像形成領域IM3(第1搬送ベルト8を基準)とA方向に見て少しでも重なる開口部80c
1、80c
2と、第1搬送ベルト8の走行によって対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を対象ノズルとしている。なお、第1搬送ベルト8を基準とする画像形成領域IM3のBB’方向の位置は、第1搬送ベルト8に対する用紙P3のBB’方向の載置位置と、用紙P3に形成する画像の画像データに基づいて認識することができる。
【0060】
なお、
図8に示すように、用紙P3の下流側に位置する開口部80cが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致していない。このため、対象ノズルは、第1搬送ベルト8の走行によって上記の開口部80c
1、80c
2と対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18のみとなる。そして、第1搬送ベルト8の走行によって開口部80c
1、80c
2以外の残りの開口部80c
nと対向する記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18が非対象ノズルとなる。
【0061】
S6では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの上記した対象ノズルについて、第1搬送ベルト8の走行によって上記の開口部80c1、80c2と対向するタイミングでフラッシングを実行させる一方、対象ノズル以外の非対象ノズルについて、上記のタイミングでのフラッシングの実行を停止させる。
【0062】
その後、S7では、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行によって用紙P3が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、先にフラッシングを行った対象ノズル(用紙P3と対向するノズルのみ)から用紙P3にインクを吐出して、用紙P3の画像形成領域IM3に画像を形成する。S8にて、印刷ジョブが終了していなければ、S4に戻って同様の処理を繰り返す。
【0063】
図8のように、4枚目の用紙P4が第1搬送ベルト8上に載置されている場合、S4では、制御部110は、位置検知センサー23の検知結果に基づいて、第1搬送ベルト8上に載置された4枚目の用紙P4とA方向の下流側にずれて位置する開口部群82の開口部80、つまり、第1搬送ベルト8において用紙P3と用紙P4との間に位置する開口部80dを認識する。そして、S5では、用紙P4のBB’方向の載置位置と、用紙P4に形成する画像の画像データと、フラッシング間隔Tref(sec)とに基づいて、記録ヘッド17a~17cの対象ノズルおよび非対象ノズルを判断する。
【0064】
ここで、4枚目の用紙P4には画像形成領域がないため、画像形成に備えてフラッシングを行う必要はない。また、用紙P4の下流側に位置する開口部80dが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングとも一致していない。このため、S5では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18を非対象ノズルとして判断する。そして、S6では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの上記非対象ノズルについて、第1搬送ベルト8の走行によって各開口部80dと対向するタイミングでのフラッシングの実行を停止させる。
【0065】
その後、4枚目の用紙P4には画像形成領域がないため、S7はスキップされる。そして、S8にて、印刷ジョブが終了していなければ、S4に戻って同様の処理を繰り返す。
【0066】
なお、図示はしないが、5枚目の用紙が第1搬送ベルト8に載置されているとすると、5枚目の用紙の下流側に位置する開口部80eが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、インクの吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致している。このため、S5では、制御部110は、5枚目の用紙の画像形成領域の有無に関係なく、記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18を対象ノズルとして判断する。そして、S6では、制御部110は、記録ヘッド17a~17cの上記対象ノズルについて、第1搬送ベルト8の走行によって各開口部80eと対向するタイミングでフラッシングを実行させる。S7以降の処理は、上記と同様である。
【0067】
以上のように、本実施形態では、制御部110は、フラッシングが必要な対象ノズル(インク吐出口18)を、用紙PのBB’方向の載置位置と、用紙Pに形成する画像の画像データと、予め定められた、インクの吐出性能を維持するために必要なA方向のフラッシング間隔Trefとに基づいて判断する(S5)。これにより、用紙Pに対する画像形成に利用されるインク吐出口18、またはインクの吐出性能を維持するためにフラッシングすべきインク吐出口18を、対象ノズルとして判断することができる。対象ノズルについては、開口部80と対向するタイミングでフラッシングを実行させることにより、その後の用紙Pへの画像形成時(例えば
図8の用紙P1、P3に対する画像形成時)には、直前にフラッシングを行った対象ノズルからインクを確実に吐出して画像形成を確実に行うことができる(S6、S7)。
【0068】
また、直後に画像形成が行われない場合でも、インクの吐出性能を維持するために必要なタイミングでは、対象ノズルについてフラッシングを実行させて最低限のインク吐出性能を維持することができる(例えば開口部80bに対するフラッシング参照)。
【0069】
さらに、非対象ノズルについては、上記タイミングでのフラッシングの実行を停止させることにより、画像形成に利用されないノズル(例えば第1搬送ベルト8の走行によって開口部80an、80cnと対向するインク吐出口18)、またはインクの吐出性能の維持のためにフラッシングを行う必要のないノズル(例えば第1搬送ベルト8の走行によって開口部80dと対向するインク吐出口18)について、フラッシングによる無駄なインクの消費を抑えることができる。したがって、フラッシングによるインク消費量をトータルで低減することができる。
【0070】
つまり、記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18についてのフラッシングの実行および停止を適切に制御することにより、インクの吐出性能を維持しながら、インク吐出による画像形成を確実に行うことができるとともに、フラッシングによるインク消費量を低減することができる。
【0071】
また、S5では、制御部110は、用紙PのBB’方向の載置位置と、用紙Pに形成する画像の画像データとに基づいて、第1搬送ベルト8を基準とする用紙P上の画像形成領域(IM1、IM3)を認識し、上記画像形成領域に対してA方向の下流側に位置する開口部80(80a1、a2、c1、c2)と第1搬送ベルト8の走行時に対向する記録ヘッド17のインク吐出口18を、対象ノズルとして判断する。用紙Pに形成する画像(画像データ)が存在する場合には、上記開口部80と対向するインク吐出口18についてフラッシングを実行させることにより、フラッシング直後の用紙Pの画像形成領域への画像形成を確実に行うことができる。
【0072】
また、S5では、制御部110は、用紙PとA方向の下流側にずれて位置する開口部80(例えば開口部80b、80e)が第1搬送ベルト8の走行によって記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングが、吐出性能を維持するためにフラッシング間隔Trefで行うフラッシングのタイミングと一致するときに、記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18を対象ノズルとして判断する。開口部80b、80eが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングが上記のフラッシング間隔Trefでのフラッシングタイミングと一致する場合、用紙Pに形成する画像(画像データ)の有無に関係なく、全てのインク吐出口18についてフラッシングを実行させることにより、インクの吐出性能を維持することができる。
【0073】
また、上記した位置検知センサー23は、用紙Pの第1搬送ベルト8上でのA方向およびBB’方向の載置位置を検知する第1検知センサーと、第1搬送ベルト8の開口部80を検知する第2検知センサーとを兼ねている。第1検知センサーと第2検知センサーとを単一の位置検知センサー23で構成することにより、装置の構成を簡素化することができ、装置の小型化、薄型化などに寄与することができる。
【0074】
〔4.フラッシング量の制御〕
次に、フラッシングを実行するときの制御部110によるインク吐出量(フラッシング量)の制御について説明する。
図9は、第1搬送ベルト8上に3枚の用紙P11、P12、P13が載置されたときのフラッシングのタイミングを模式的に示している。同図では、1枚目の用紙P11と2枚目の用紙P12との間の開口部80(開口部群82)を利用してフラッシングを行い、2枚目の用紙P12と3枚目の用紙P13との間の開口部80(開口部群82)を利用してフラッシングを行う場合を示している。
【0075】
以下では、例として、2枚目の用紙P12と3枚目の用紙P13との間の開口部80を利用してフラッシングを行う場合のフラッシング量の計算方法について説明する。なお、前提条件として、A4サイズ(縦置き)の用紙P11~P13を第1搬送ベルト8で順次搬送する場合において、吐出性能を維持するために1ページ間隔でフラッシングを行うことが必要であり、そのときに、用紙P11~P13に対する白紙印字を行った場合で1.0mlのフラッシング量(第1インク吐出量)でフラッシングを行うことが必要なシステムを想定する。
【0076】
(a)直前画像の影響を考慮したフラッシング量の計算
2枚目の用紙P12に対して画像形成を行った場合、2枚目の用紙P12と3枚目の用紙P13との間の開口部80に対するフラッシングは、上記した前提条件のフラッシング量に対して、用紙P12への画像形成時のインク吐出量の足りない分を、インク吐出後の時間経過も考慮して、フラッシングによるインク吐出によって補うことを目的とする。このため、主走査方向の異なる位置(1)~(3)に対応するインク吐出口18について、例えば以下のようにしてフラッシング量(第2インク吐出量)を設定することができる。
【0077】
位置(1)では、画像形成領域IM2-1中の描画領域が少なく(インク吐出量:0.4ml)、画像の書き出し終了が早いため、必要なフラッシング量を0.8mlに設定する。
位置(2)では、画像形成領域IM2-1中の描画領域が多く(インク吐出量:1.5ml)、画像の書き出し終了が遅いため、必要なフラッシング量を0.1mlに設定する。
位置(3)では、描画領域がなく、インクを吐出していないため(インク吐出量:0.0ml)、必要なフラッシング量を1.0mlに設定する。
【0078】
(b)直後画像の影響を考慮したフラッシング量の計算
3枚目の用紙P13に対して画像形成を行う場合、2枚目の用紙P12と3枚目の用紙P13との間の開口部80に対するフラッシングは、3枚目の用紙P13に対して正常にインクを吐出できる準備をすることを目的とする。このため、主走査方向の異なる位置(1)~(3)に対応するインク吐出口18について、例えば以下のようにしてフラッシング量(第2インク吐出量)を設定することができる。
【0079】
位置(1)では、描画領域がないため、フラッシングは不要である。したがって、必要なフラッシング量を0.0mlに設定する。
位置(2)では、画像形成領域IM3-2の描画領域があり、画像の書き出し開始が遅いため、必要なフラッシング量を0.7mlに設定する。
位置(3)では、画像形成領域IM3-1の描画領域があり、画像の書き出し開始が早いため、必要なフラッシング量を0.3mlに設定する。
【0080】
(c)直前画像および直後画像の各影響を総合したフラッシング量の設定
上記(a)で設定したフラッシング量が上記(b)で設定したフラッシング量に対して必要十分である場合には、上記(a)で設定したフラッシング量を最終的なフラッシング量とする。逆に、上記(a)で設定したフラッシング量が上記(b)で設定したフラッシング量よりも足りない場合は、上記(b)で設定したフラッシングを最終的なフラッシング量とする。つまり、結果として、主走査方向の異なる位置(1)~(3)に対応するインク吐出口18については、以下のようにフラッシング量を設定することができる。
位置(1):0.8ml((a)のフラッシング量を採用)
位置(2):0.7ml((b)のフラッシング量を採用)
位置(3):1.0ml((a)のフラッシング量を採用)
【0081】
位置(1)~(3)に対応するインク吐出口18について、上記のフラッシング量でそれぞれフラッシングを行うことにより、毎回1.0mlの固定したフラッシング量でインクを吐出する場合に比べて、フラッシングによるインク消費量を低減することができる。
【0082】
以上のように、制御部110は、吐出性能を維持するために必要なフラッシング間隔ごとの第1インク吐出量(上記の例では、1.0mlに相当)と、フラッシングを行う前後の各用紙(上記の例では用紙P12、P13に相当)に対する画像形成時の第2インク吐出量およびインク吐出タイミングとに基づいて、インク吐出口18(対象ノズル)のフラッシング量を決定し、決定したフラッシング量のインクを対象ノズルから吐出させてフラッシングを実行させる。このような制御により、対象ノズルのフラッシング量が適切に決定されてフラッシングが実行されるため、インクの吐出性能を維持しながらフラッシングによるインク消費量を低減する効果を確実に得ることが可能となる。
【0083】
〔5.その他〕
以上では、開口部80(開口部群82)がA方向に等間隔で位置する第1搬送ベルト8を用いた例について説明したが、開口部80(開口部群82)がA方向に不定期に位置する(A方向に隣り合う開口部80(開口部群82)の間隔にばらつきがある)第1搬送ベルト8を用いた場合でも、本実施形態と同様の制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
【0084】
以上では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する場合について説明したが、第1搬送ベルト8を帯電させ、用紙Pを第1搬送ベルト8に静電吸着させて搬送するようにしてもよい(静電吸着方式)。この場合でも、本実施形態と同様のフラッシング制御を行うことにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
以上では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、本実施形態で述べた制御を適用することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
8 第1搬送ベルト(搬送ベルト)
13 レジストローラー対(記録媒体供給部)
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出口(ノズル、対象ノズル、非対象ノズル)
23 位置検知センサー(第1検知センサー、第2検知センサー)
80、80a、80b、80c、80d、80e 開口部
100 プリンター(インクジェット記録装置)
110 制御部
IM、IM1、IM3、IM2-1、IM3-1、IM3-2 画像形成領域
P、P1~P4 用紙(記録媒体)