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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】部品の支持構造
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/10 20230101AFI20240528BHJP
   F16J 10/00 20060101ALI20240528BHJP
   F16C 35/00 20060101ALI20240528BHJP
   H02K 5/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C22C1/10 Z
F16J10/00 Z
F16C35/00
H02K5/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020066790
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161521
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113011
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田淵 元樹
(72)【発明者】
【氏名】浅田 俊昭
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-173472(JP,A)
【文献】特開2006-009088(JP,A)
【文献】特開2013-032244(JP,A)
【文献】特開2005-133870(JP,A)
【文献】特開平04-185245(JP,A)
【文献】特開2016-019308(JP,A)
【文献】実開平05-006173(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/10
F04C 2/18
F04D 1/08
F16C 35/00
F16J 10/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第1部品と、
前記第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第2部品と、
を備え、前記第1及び第2部品の一方が前記第1及び第2部品の他方を支持する支持構造であって、
前記第1部品は、特定方向において、前記第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で前記第2部品と向き合っており、
前記第2金属材料は、前記母材と、前記母材に混入された負熱膨張材料とからなり、
前記負熱膨張材料は、前記負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、前記第1部品と前記第2部品とが前記隙間を介して向き合っている場所での前記特定方向における前記第1部品の寸法と前記第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で前記母材に混入されており、
前記第1部品は、バルブであり、
前記第2部品は、前記バルブを摺動自在に支持するバルブボディであり、
前記バルブボディは、前記正の隙間を介して前記バルブと向き合っている第1対向面を含み、
前記負熱膨張材料は、前記第1対向面の周囲に位置する前記バルブボディの部位である第1周囲部のみにおいて前記母材に混入されている
ことを特徴とする部品の支持構造。
【請求項2】
前記第1周囲部は、前記バルブの外周側に位置する前記バルブボディの周壁を含む
ことを特徴とする請求項に記載の部品の支持構造。
【請求項3】
前記バルブが前記バルブボディ内に配置され、
前記バルブ及び前記バルブボディは、前記バルブの軸方向位置に応じて作動油の制御油圧を制御する油圧制御装置に備えられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の部品の支持構造。
【請求項4】
第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第1部品と、
前記第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第2部品と、
を備え、前記第1及び第2部品の一方が前記第1及び第2部品の他方を支持する支持構造であって、
前記第1部品は、特定方向において、前記第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で前記第2部品と向き合っており、
前記第2金属材料は、前記母材と、前記母材に混入された負熱膨張材料とからなり、
前記負熱膨張材料は、前記負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、前記第1部品と前記第2部品とが前記隙間を介して向き合っている場所での前記特定方向における前記第1部品の寸法と前記第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で前記母材に混入されており、
前記第1部品は、一対の軸受と前記一対の軸受によって回転自在に支持される一対の軸部を有する回転体とを前記複数の要素として含み、
前記第2部品は、前記一対の軸受を支持するケースであり、
前記一対の軸受のそれぞれは、前記回転体の軸方向において、前記回転体と前記ケースとによって挟まれており、
前記ケースは、前記負の隙間を介して前記一対の軸受と向き合っている一対の第2対向面を含み、
前記負熱膨張材料は、前記一対の第2対向面の周囲に位置する前記ケースの部位である第2周囲部のみにおいて前記母材に混入されている
ことを特徴とする部品の支持構造。
【請求項5】
前記第2周囲部は、前記一対の第2対向面の間を繋ぐ部位を含む
ことを特徴とする請求項に記載の部品の支持構造。
【請求項6】
前記ケースは、車両に搭載されるトランスアクスルの構成部品である前記回転体を収容するトランスアクスルケースである
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の部品の支持構造。
【請求項7】
第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第1部品と、
前記第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第2部品と、
を備え、前記第1及び第2部品の一方が前記第1及び第2部品の他方を支持する支持構造であって、
前記第1部品は、特定方向において、前記第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で前記第2部品と向き合っており、
前記第2金属材料は、前記母材と、前記母材に混入された負熱膨張材料とからなり、
前記負熱膨張材料は、前記負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、前記第1部品と前記第2部品とが前記隙間を介して向き合っている場所での前記特定方向における前記第1部品の寸法と前記第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で前記母材に混入されており、
前記第1部品は、回転電機のステータコアであり、
前記第2部品は、前記ステータコアの外周面に対向する内周面を有しかつ前記ステータコアを収容するケースであり、
前記ケースは、前記内周面から離れた位置において前記ステータコアを支持する支持部を含み、
前記ケースは、前記隙間を介して前記ステータコアの外周面と向き合っている第3対向面を含み、
前記負熱膨張材料は、前記第3対向面の周囲に位置する前記ケースの部位である第3周囲部のみにおいて前記母材に混入されている
ことを特徴とする部品の支持構造。
【請求項8】
第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第1部品と、
前記第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる第2部品と、
を備え、前記第1及び第2部品の一方が前記第1及び第2部品の他方を支持する支持構造であって、
前記第1部品は、特定方向において、前記第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で前記第2部品と向き合っており、
前記第2金属材料は、前記母材と、前記母材に混入された負熱膨張材料とからなり、
前記負熱膨張材料は、前記負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、前記第1部品と前記第2部品とが前記隙間を介して向き合っている場所での前記特定方向における前記第1部品の寸法と前記第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で前記母材に混入されており、
前記第1部品は、回転電機のステータコアであり、
前記第2部品は、前記ステータコアを収容するケースであり、
前記ステータコアは、前記ステータコアの外周側に位置する前記ケースの周壁に焼き嵌めされており、
前記ケースは、前記隙間を介して前記ステータコアの外周面と向き合っている第3対向面を含み、
前記負熱膨張材料は、前記第3対向面の周囲に位置する前記ケースの部位である第3周囲部のみにおいて前記母材に混入されている
ことを特徴とする部品の支持構造。
【請求項9】
前記第3周囲部は、前記ステータコアの外周側に位置する前記ケースの周壁を含む
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の部品の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部品の支持構造の一例として、次のような支持構造を有する油圧制御装置が開示されている。すなわち、この油圧制御装置では、バルブケース(バルブボディ)の内部に配置されたバルブスプール(バルブ)が、バルブボディによって往復方向に摺動自在に支持されている。より詳細には、バルブケースは、作動油の流入経路及び流出経路をそれぞれ複数有し、バルブスプールは、正の隙間を介してバルブケースに支持されている。このような構成を有するバルブによれば、バルブスプールの制御位置に応じて、作動油の油圧を制御することができる。
【0003】
また、特許文献2及び3には、負の熱膨張性を有する負熱膨張材料の組成の具体例が開示されている。特許文献4には、負熱膨張材料の製造方法が開示されている。特許文献5には、電子デバイスと銅等からなるヒートシンクとの間に、熱膨張率が低くかつ熱伝導率が少なくとも銅の1/3以上の複合材を挿入することで、熱による界面剥離を抑制する技術が開示されている。さらに、特許文献6には、磁性及び強誘電性を有するナノ粒子であって当該ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において負熱膨張率を有するナノ粒子からなる負熱膨張材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-359995号公報
【文献】国際公開第2014/030293号
【文献】特開2017-048071号公報
【文献】特開2017-048072号公報
【文献】特開2017-008337号公報
【文献】特開2010-029990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、バルブスプールとバルブケースとの間で熱膨張率の差を生じさせないようにするために、バルブスプールとバルブケースとを同じ材質で形成することが記載されている。このような構成を採用することで、両者の隙間が温度によって変化することに起因する作動油の漏れを抑制し、油圧の制御性の低下を抑制できる。
【0006】
しかしながら、一方の部品を他方の部品によって支持する支持構造においては、熱膨張率以外のコスト又は耐摩耗性などの各種の観点から、異種の金属材料を選択することを要求される場合がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一方の部品を他方の部品によって支持する支持構造において、線膨張係数の差に起因する弊害を低減しつつ異種の金属材料を選択可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る部材の支持構造は、第1部品と第2部品とを備え、第1及び第2部品の一方が第1及び第2部品の他方を支持する。第1部品は、第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第2部品は、第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第1部品は、特定方向において、第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で第2部品と向き合っている。第2金属材料は、母材と、母材に混入された負熱膨張材料とからなる。負熱膨張材料は、負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、第1部品と第2部品とが隙間を介して向き合っている場所での特定方向における第1部品の寸法と第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。第1部品は、バルブである。第2部品は、バルブを摺動自在に支持するバルブボディである。バルブボディは、正の隙間を介してバルブと向き合っている第1対向面を含む。負熱膨張材料は、第1対向面の周囲に位置するバルブボディの部位である第1周囲部のみにおいて母材に混入されている。
【0010】
バルブがバルブボディ内に配置されていてもよい。そして、バルブ及びバルブボディは、バルブの軸方向位置に応じて作動油の制御油圧を制御する油圧制御装置に備えられていてもよい。
【0012】
第1周囲部は、バルブの外周側に位置するバルブボディの周壁を含んでいてもよい。
【0015】
ケースは、車両に搭載されるトランスアクスルの構成部品である回転体を収容するトランスアクスルケースであってもよい。
【0016】
本発明の第2の態様に係る部材の支持構造は、第1部品と第2部品とを備え、第1及び第2部品の一方が第1及び第2部品の他方を支持する。第1部品は、第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第2部品は、第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第1部品は、特定方向において、第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で第2部品と向き合っている。第2金属材料は、母材と、母材に混入された負熱膨張材料とからなる。負熱膨張材料は、負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、第1部品と第2部品とが隙間を介して向き合っている場所での特定方向における第1部品の寸法と第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。第1部品は、一対の軸受と一対の軸受によって回転自在に支持される一対の軸部を有する回転体とを複数の要素として含む。第2部品は、一対の軸受を支持するケースである。一対の軸受のそれぞれは、回転体の軸方向において、回転体とケースとによって挟まれている。ケースは、負の隙間を介して一対の軸受と向き合っている一対の第2対向面を含む。負熱膨張材料は、一対の第2対向面の周囲に位置するケースの部位である第2周囲部のみにおいて母材に混入されてい
【0017】
第2周囲部は、一対の第2対向面の間を繋ぐ部位を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の第3の態様に係る部材の支持構造は、第1部品と第2部品とを備え、第1及び第2部品の一方が第1及び第2部品の他方を支持する。第1部品は、第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第2部品は、第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第1部品は、特定方向において、第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で第2部品と向き合っている。第2金属材料は、母材と、母材に混入された負熱膨張材料とからなる。負熱膨張材料は、負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、第1部品と第2部品とが隙間を介して向き合っている場所での特定方向における第1部品の寸法と第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。第1部品は、回転電機のステータコアである。第2部品は、ステータコアの外周面に対向する内周面を有しかつステータコアを収容するケースである。ケースは、内周面から離れた位置においてステータコアを支持する支持部を含む。ケースは、隙間を介してステータコアの外周面と向き合っている第3対向面を含む。負熱膨張材料は、第3対向面の周囲に位置するケースの部位である第3周囲部のみにおいて母材に混入されている。
本発明の第4の態様に係る部材の支持構造は、第1部品と第2部品とを備え、第1及び第2部品の一方が第1及び第2部品の他方を支持する。第1部品は、第1金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第2部品は、第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成され、1つ又は複数の要素からなる。第1部品は、特定方向において、第2部品によって正、ゼロ又は負の隙間を介して挟み込まれた状態で第2部品と向き合っている。第2金属材料は、母材と、母材に混入された負熱膨張材料とからなる。負熱膨張材料は、負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、第1部品と第2部品とが隙間を介して向き合っている場所での特定方向における第1部品の寸法と第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。第1部品は、回転電機のステータコアである。第2部品は、ステータコアを収容するケースである。ステータコアは、ステータコアの外周側に位置するケースの周壁に焼き嵌めされている。ケースは、隙間を介してステータコアの外周面と向き合っている第3対向面を含む。負熱膨張材料は、第3対向面の周囲に位置するケースの部位である第3周囲部のみにおいて母材に混入されている。
【0021】
第3周囲部は、ステータコアの外周側に位置するケースの周壁を含んでいてもよい。
【0022】
第1部品は、オイルポンプのポンプロータであってもよい。そして、第2部品は、ポンプロータを収容し、かつ、ポンプロータを回転自在に支持するポンプボディであってもよい。
【0023】
ポンプボディは、正の隙間を介してポンプロータと向き合っている第4対向面を含んでいてもよい。そして、負熱膨張材料は、第4対向面の周囲に位置するポンプボディの部位である第4周囲部のみにおいて母材に混入されていてもよい。
【0024】
第4周囲部は、ポンプロータの外周側に位置するポンプボディの壁部を含んでいてもよい。
【0025】
ポンプボディの全体に対して負熱膨張材料を均一に混入させる場合、母材に対する負熱膨張材料の混入割合は、混入割合がゼロの場合と比べて第1金属材料と第2金属材料との線膨張係数の差を小さくする特定範囲内において第2金属材料の線膨張係数が第1金属材料の線膨張係数よりも小さくなる側の範囲内にあってもよい。
【0026】
第2部品の全体に対して負熱膨張材料を均一に混入させる場合、母材に対する負熱膨張材料の混入割合は、混入割合がゼロの場合と比べて第1金属材料と第2金属材料との線膨張係数の差を小さくする特定範囲内にあってもよい。
【0027】
混入割合は、特定範囲内において第2金属材料の線膨張係数を第1金属材料の線膨張係数と等しくする値であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上述のように、第1金属材料と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料は、当該母材と、母材に混入された負熱膨張材料とからなる。そして、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、第1部品と第2部品とが向き合っている場所での特定方向における第1部品の寸法と第2部品の寸法との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。これにより、一方の部品を他方の部品によって支持する支持構造において、線膨張係数の差に起因する弊害を低減しつつ異種の金属材料を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】バルブをバルブボディによって摺動自在に支持する実施の形態1に係る支持構造の一例を表した断面図である。
図2】第2金属材料の母材に対する負熱膨張材料の混入割合Rと線膨張係数との関係を模式的に表したグラフである。
図3】実施の形態1に係る部品の支持構造の効果を説明するためのグラフである。
図4】実施の形態1に係る変形例において範囲W3の選択による効果を説明するためのグラフである。
図5】負熱膨張材料をバルブボディに部分的に混入させた例を表した模式図である。
図6】回転体を回転自在に支持する一対の軸受をケースによって支持する実施の形態2に係る支持構造の具体例を表した断面図である。
図7】実施の形態2に係る部品の支持構造の効果を説明するためのグラフである。
図8図6に示すトランスアクスルケースに負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。
図9】締結具を介して回転電機のステータコアをケースによって支持する実施の形態3に係る支持構造の具体例を表した断面図である。
図10図9に示す回転軸の軸方向からトランスアクスルケース内のステータコアを見た図である。
図11】隙間C3の3つの設定例1~3及びそれらの効果を説明するためのグラフである。
図12図9に示すトランスアクスルケースに負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。
図13】焼き嵌めを利用して回転電機のステータコアをケースによって支持する実施の形態4に係る支持構造の具体例を表した断面図である。
図14】オイルポンプのポンプロータを、当該ポンプロータを収容するポンプボディによって回転自在に支持する実施の形態5に係る支持構造の具体例を表した断面図である。
図15図14に示すポンプボディに負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に説明される実施の形態及び変形例において、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。また、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0031】
1.実施の形態1
図1から図5を参照して、本発明の実施の形態1及びその変形例について説明する。本実施形態では、本発明に係る「部品の支持構造」の一態様として、「バルブをバルブボディによって摺動自在に支持する支持構造」が説明される。
【0032】
1-1.部品の支持構造の例
図1は、バルブをバルブボディによって摺動自在に支持する実施の形態1に係る支持構造の一例を表した断面図である。図1には、油圧制御装置10が表されている。油圧制御装置10は、バルブボディ12と、バルブボディ12の内部に配置されたバルブ(バルブスプール)14とを備えている。油圧制御装置10は、例えば車両に搭載され、より詳細には、典型的にはパワートレーンに搭載される。
【0033】
バルブボディ12には、図1に示すように、軸方向(紙面上下方向)に延びる円筒状の内部空間12aが形成されており、この内部空間12aの軸方向の両端は閉塞されている。そして、バルブボディ12の内周面には、複数(一例として6つ)のポート16が軸方向に所定間隔を置いて形成されている。また、内部空間12aの両端部には、リターンスプリング18がそれぞれ配置されている。バルブ14は、これらのリターンスプリング18によって両側から内部空間12aの中央に向けて付勢されている。
【0034】
バルブ14は、棒状に形成され、かつ、内部空間12aの中央側の4つのポート16を開閉するための複数(一例として3つ)のランド(大径部)20を有する。そして、内部空間12aの両端側に位置する2つのポート16から選択的に内部空間12aに供給される作動油の油圧は、バルブ14のランド20に作用する。これら2つのポート16からの油圧を調整することにより、バルブ14の軸方向位置が変化し、中央側の4つのポート16の開閉状態が変化する。その結果、油圧制御装置10から作動油の供給を受ける装置(図示省略)の制御油圧が変更される。
【0035】
上述の構成を有する油圧制御装置10では、バルブ14をバルブボディ12によって摺動自在に支持する支持構造が採用されている。なお、本実施形態では、このような支持構造を備える装置の例として油圧制御装置10が説明されているが、この支持構造は、油圧制御以外の目的で備えられるバルブ及びバルブボディに採用されてもよい。
【0036】
また、油圧制御装置10の例では、バルブ14が本発明に係る「第1部品」の一例に相当し、バルブボディ12が本発明に係る「第2部品」の一例に相当する。そして、より詳細には、この例では、ランド20の外周面20aは、バルブ14の径方向(本発明に係る「特定方向」の一例に相当)において、「正の隙間C1」を介して挟み込まれた状態でバルブボディ12の内周面12bと向き合っている。付け加えると、油圧制御装置10の例では、バルブ14(第1部品)は、バルブ14の周方向の全体において隙間C1を介してバルブボディ(第2部品)と向き合っている。
【0037】
なお、バルブをバルブボディによって摺動自在に支持する支持構造の他の例では、図1に示す例とは逆に、バルブの内周面と、バルブボディの外周面とが互いに向き合っていてもよい。
【0038】
1-2.負熱膨張材料の混入割合Rの設定例
「第1部品」に相当するバルブ14は、「第1金属材料」の一例である鉄(より詳細には、鉄系の材料)により形成されている。「第2部品」に相当するバルブボディ12は、一例としてアルミニウム(又はアルミニウム合金)を母材とする「第2金属材料」により形成されている。第2金属材料は、マグネシウム合金などの他の金属材料であってもよい。鉄(第1金属材料)の線膨張係数は11.7[ppm/℃]程度であり、アルミニウム(第2金属材料の母材)のそれは23[ppm/℃]である。すなわち、バルブボディ12は、バルブ14の材料(第1金属材料)と比べて線膨張係数の高い母材を有する第2金属材料により形成されている。
【0039】
そのうえで、第2金属材料は、母材であるアルミニウムと、当該母材に混入された負熱膨張材料とからなる。負熱膨張材料は、負の熱膨張性を有する。負熱膨張とは、温度が上昇すると体積が大きくなる通常の材料とは逆に、温度が上昇すると体積が小さくなることをいう。本発明に係る支持構造に適用可能な負熱膨張材料の具体例は特に限定されないが、例えば、Sm0.780.22S(一硫化サマリウムSmSのサマリウム原子の一部をイットリウム原子に置換して得られる化合物)、β-ユークリプタイト(LiAlSiO)、タングステン酸ジルコニウム(ZrW)、ビスマス-ニッケル酸化物(Bi0.95La0.05NiO)、又は鉛-バナジウム酸化物(Pb0.76La0.04Bi0.20VO)である。ここに例示された負熱膨張材料の線膨張係数[ppm/℃]は、次の通りである。
Sm0.780.22S:-65
β-ユークリプタイト(LiAlSiO):-7.6
タングステン酸ジルコニウム(ZrW):-9
ビスマス-ニッケル酸化物(Bi0.95La0.05NiO):-82
鉛-バナジウム酸化物(Pb0.76La0.04Bi0.20VO):-590
【0040】
図2(A)~図2(C)は、それぞれ、第2金属材料の母材に対する負熱膨張材料の混入割合Rと線膨張係数との関係を模式的に表したグラフである。上述のような負熱膨張材料が混入した第2金属材料の線膨張係数と混入割合R[vol%]との関係は、概略的には、図2(A)~図2(C)の何れかで示される特性(直線、下に凸の曲線、又は上に凸の曲線)で表せると考えられる。以下の説明は、図2(A)を例に挙げて行うが、図2(B)又は図2(C)の場合も同様である。なお、混入割合Rはwt%で特定されてもよい。また、図2(A)~図2(C)中の線膨張係数ゼロの位置は、一例であり、値α1よりは低くなるが負熱膨張材料の具体例に応じて異なるものとなる。
【0041】
図2中の線膨張係数α1、α2、α3は、それぞれ、第1金属材料、第2金属材料の母材及び負熱膨張材料の線膨張係数に対応している。すなわち、混入割合Rが0%の場合、第2金属材料の線膨張係数は母材の線膨張係数α2と等しくなる。また、混入割合Rが100%の場合、第2金属材料の線膨張係数は負熱膨張材料の線膨張係数α3と等しくなる。そして、混入割合Rが0%から増加するにつれ、第2金属材料の線膨張係数が小さくなっていく。
【0042】
図2中の混入割合R1は、第2金属材料の線膨張係数が第1金属材料の線膨張係数α1と等しくなる場合の混入割合Rの値に相当する。また、線膨張係数α4は、混入割合Rが高いために第2金属材料の線膨張係数が第1金属材料の線膨張係数α1よりも低くなる場合において、第2金属材料と第1金属材料との間の線膨張係数α1の差(絶対値)が、第2金属材料の母材(混入割合Rがゼロ)と第1金属材料との差Δαと等しくなる時の線膨張係数の値に相当する。そして、混入割合R2は、混入割合Rが混入割合R1よりも高い側において第2金属材料が線膨張係数α4を有する時の混入割合Rの値に相当する。
【0043】
そのうえで、図2中に示される混入割合Rの特定範囲W1は、混入割合Rが0%よりも高く、R2よりも低い混入割合Rの範囲である。混入割合Rがこの特定範囲W1内にある場合には、「第1金属材料と第2金属材料との線膨張係数の差」は、混入割合Rがゼロの場合と比べて小さくなる。
【0044】
本実施形態では、「第2部品」に相当するバルブボディ12の材料(第2金属材料)は、上述の特定範囲W1内の混入割合R1となるように決定されている。より詳細には、本実施形態では、一例としてバルブボディ12の全体に対し、混入割合R1で負熱膨張材料が母材に均一に混入されている。このように負熱膨張材料が混入されたバルブボディ12は、例えば、鋳造によって製造することができる。より具体的には、例えば、母材であるアルミニウムの溶湯をバルブボディ12の成型のための型に流し込む前に、バルブボディ12の全体の体積に対して混入割合R1で負熱膨張材料を混入させるために必要な量の負熱膨張材料が、上記の溶湯に添加される。
【0045】
バルブボディ12の全体に対して負熱膨張材料を均一に混入させる場合において混入割合R1が選択されると、バルブボディ12は、バルブ14の第1金属材料(鉄)の線膨張係数α1と同等の線膨張係数を有するようになる。その結果、油圧制御装置10の温度が変化した時に、バルブボディ12は、バルブ14と同様の熱膨張特性で膨張又は収縮することになる。このことは、バルブ14とバルブボディ12とが正の隙間C1を介して向き合っている場所(図1参照)でのバルブ14の径方向におけるバルブ14の寸法L11とバルブボディ12の寸法L21との寸法差の温度変化(換言すると、隙間C1の温度変化)が、負熱膨張材料が混入されない場合(混入割合Rがゼロの場合)と比べて少なくなることを意味する。
【0046】
したがって、換言すると、本実施形態では、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、バルブ14(第1部品)とバルブボディ12(第2部品)とが隙間C1を介して向き合っている場所でのバルブ14の径方向(特定方向;後述の図5(B)参照))における寸法L11と寸法L21との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。
【0047】
1-3.効果
以上説明したように、本実施形態の油圧制御装置10が備えるバルブボディ12には、特定範囲W1に含まれる混入割合R1で部品(アルミニウム)の全体に対して負熱膨張材料が均一に混入されている。図3は、実施の形態1に係る部品の支持構造の効果を説明するためのグラフである。図3中の破線は、混入割合Rがゼロの比較例に対応し、実線は本実施形態の油圧制御装置10に対応している。
【0048】
図3に示す比較例では、母材(アルミニウム)のみからなる第2金属材料によってバルブボディが形成されている。このため、油圧制御装置10の温度が上昇した時、このバルブボディは、第1金属材料(鉄)により形成されるバルブ14よりも大きく膨張する。このため、バルブボディとバルブ14との隙間C1は、破線で示すように温度の上昇に対して大きな傾きで増大する。
【0049】
これに対し、本実施形態によれば、バルブボディ12はバルブ14と同様の熱膨張特性を有するため、隙間C1は、実線で示すように、比較例と比べて緩やかな傾きで温度の上昇に対して増大する。すなわち、比較例と比べて、温度変化に伴う隙間C1の変化(換言すると、図1に示す寸法L11と寸法L21との寸法差の温度変化)を抑制できるようになる。その結果、高温時に比較例と比べて隙間C1を介した作動油の漏れを抑制できるようになるので、油圧制御装置10による油圧制御の精度を高めることができる。また、バルブ14の摩耗及びかじりを簡易的に抑制できるようになるので、バルブ14の表面に被膜処理を施す等の対策を不要とし、バルブ14の製造コストを下げられる。
【0050】
1-4.変形例
(混入割合Rの他の設定例)
上述した実施の形態1においては、負熱膨張材料は、混入割合R1で母材に混入されている。しかしながら、混入割合Rは、図2に示す特定範囲W1内の値であれば、必ずしも混入割合R1に限られない。具体的には、混入割合R1よりも低い側の範囲W2(0<R<R1)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。この範囲W2では、混入割合R1の例と比べると、第2金属材料と第1金属材料との線膨張係数の差は大きくなるが、混入割合Rがゼロの例(比較例)と比べると、当該差を小さくできる。このため、範囲W2が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C1の変化を抑制できる効果が得られる。そして、範囲W2内において混入割合Rが混入割合R1に近づくにつれ、第2金属材料と第1金属材料との線膨張係数の差を小さくできるので隙間C1の変化の抑制効果が高まる。
【0051】
また、混入割合R1よりも高い側の範囲W3(R1<R<R2)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。この範囲W3においても、混入割合R1の例と比べると、第2金属材料と第1金属材料との線膨張係数の差は大きくなるが、混入割合Rがゼロの例(比較例)と比べると、当該差を小さくできる。このため、範囲W3が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C1の変化を抑制できる効果が得られる。そして、範囲W3内において混入割合Rが混入割合R1に近づくにつれ、第2金属材料と第1金属材料との線膨張係数の差を小さくできるので隙間C1の変化の抑制効果が高まる。
【0052】
そして、油圧制御装置10の例において範囲W3内の混入割合Rが選択された場合には、以下に図4を参照して説明する効果も得られる。図4(A)及び図4(B)は、実施の形態1に係る変形例において範囲W3の選択による効果を説明するためのグラフである。なお、図4(B)中の隙間C1の温度特性の各波形の紙面上下位置は、一例であり、隙間C1の初期設定によって変化する。このことは、上述の図3も同じである。
【0053】
油圧制御装置10の作動油の粘度と温度との間には、図4(A)に示すような関係がある。すなわち、作動油の粘度は、低温時に高く、かつ、温度が高くなるにつれ低下する。このため、仮に隙間C1が温度に依らずに一定であると仮定した場合、温度が高くなって粘度が低くなるほど、作動油が隙間C1を通って漏れ出し易くなる。その一方で、範囲W3内の混入割合Rが選択された場合には、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数α1よりも低くなる。その結果、油圧制御装置10の温度が上昇した時に、比較例とは逆に、内周側に位置するバルブ14(第1部品)の方が外周側のバルブボディ12(第2部品)と比べて大きく膨張することになる。このため、図4(B)に示すように、温度が高くなるにつれて隙間C1が小さくなる特性が得られる。つまり、温度が高くなるにつれ、作動油が漏れ出しにくくなるように隙間C1を変化させられるようになる。したがって、このような特性によって高温時に隙間C1が小さくなると、粘度が低くなっても隙間C1を通って作動油が漏れ出しにくくなる。以上のように、範囲W3が選択された場合には、混入割合R1又は範囲W2が選択された場合と比べて、高温時に作動油が隙間C1を通って漏れ出しにくくすることができ、油圧制御の精度をより効果的に高めることができる。
【0054】
(バルブボディに部分的に混入させた例)
図5(A)及び5(B)は、負熱膨張材料をバルブボディ12に部分的に混入させた例を表した模式図である。図5(B)は、図5(A)のX1-X1断面図である。なお、図5(A)では、バルブボディ12周りの構成の図示が模式的に簡略化されている。このことは、後述の図8、12及び15についても同様である。
【0055】
正の隙間C1を介してバルブ14と向き合っているバルブボディ12の内周面12bのことを、「第1対向面」と称する。そして、この第1対向面の周囲に位置するバルブボディ12の部位のことを、「第1周囲部」と称する。実施の形態1で説明されたバルブボディ12には、このような第1周囲部だけでなく、バルブボディ12の全体において混入割合R1で母材に均一に混ざるように負熱膨張材料が混入されている。このような例とは異なり、負熱膨張材料は、図5に示す例のように、第1周囲部のみを対象として混入されてもよい。第1周囲部は、バルブ14の外周側に位置するバルブボディ12の周壁12cである。
【0056】
より具体的には、負熱膨張材料は、例えば、特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第1周囲部内の母材に均一に混入されてもよい。これにより、図1に示す寸法L11と寸法L21との寸法差の温度変化(隙間C1の温度変化)に与える影響の大きな部位を対象として、バルブボディ12の線膨張係数をバルブ14のそれに近づけることが可能となる。
【0057】
また、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて上記寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されていれば、必ずしも特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第1周囲部内の母材に均一に混入されていなくてもよい。すなわち、負熱膨張材料は、第1周囲部内の部位によって異なる混入割合R(ゼロを含む)で混入されていてもよい。具体的には、例えば、第1周囲部内のある部分では特定範囲W1の内外を問わずに高めの混入割合Rで混入され、第1周囲部内の他の一部分では混入されていなくてもよい。
【0058】
付け加えると、「第1周囲部」は、図5に示す設定例に代え、第1対向面の周囲に位置する部位であって負熱膨張材料の混入による隙間C1の温度変化(上記寸法差の温度変化)を抑制する効果を得るために必要な部位として、対象とする部品の支持構造に応じて適宜決定されればよい。このことは、後述の図8、12及び15についても同様である。
【0059】
以上のように部分的に負熱膨張材料が混入されたバルブボディ12(第2部品)は、例えば、三次元造型機を用いて製造することができる。このことは、後述の図8、12及び15に示す例についても同様である。
【0060】
また、第1周囲部以外のバルブボディ12の部位の一部又は全部については、第1周囲部から遠ざかるに従い、例えばゼロに向けて混入割合Rが連続的(又は段階的)に下げられるように負熱膨張材料が混入されてもよい。なお、このような例に係るバルブボディ12も、例えば、三次元造型機を用いて製造することができる。
【0061】
2.実施の形態2
次に、図6図8を参照して、本発明の実施の形態2及びその変形例について説明する。本実施形態では、本発明に係る「部品の支持構造」の他の態様として、「回転体を回転自在に支持する一対の軸受をケースによって支持する支持構造」が説明される。
【0062】
2-1.部品の支持構造の例
図6は、回転体を回転自在に支持する一対の軸受をケースによって支持する実施の形態2に係る支持構造の具体例を表した断面図である。図6には、車両に搭載されるパワートレーンに含まれるトランスアクスルケース30の内部構造の一例が表されている。トランスアクスルケース30には、差動装置(ディファレンシャルギヤ)32が収容されている。差動装置32は、ディファレンシャルギヤケース34を含む。ディファレンシャルギヤケース34は、回転体であり、一般に、鉄系材料(例えば、鋳鉄)により形成され、リングギヤ36と一体的に回転する。差動装置32は、車輪に駆動力を伝達するドライブシャフト38に連結されている。
【0063】
ディファレンシャルギヤケース34は、各ドライブシャフト38に対し、ドライブシャフト38をその外周側から覆うように円筒状に形成された一対の軸部(円筒軸部)34aを有する。一対の軸部34aは、一対の軸受40によって回転自在に支持されている。軸受40は、一例として円すいころ軸受であるが、アンギュラ玉軸受等の他の転がり軸受であってもよい。そして、一対の軸受40は、トランスアクスルケース30によって支持されている。より詳細には、トランスアクスルケース30は、各軸受40を支持する軸受支持穴30aを備えている。軸受40は、軸受支持穴30aに圧入によって固定されている。
【0064】
一対の軸受40のそれぞれは、ディファレンシャルギヤケース34の回転軸の軸方向Dにおいて、ディファレンシャルギヤケース34とトランスアクスルケース30とによって(後述のシム42を介して)挟まれている。より詳細には、トランスアクスルケース30は、図6の紙面左右方向に2つのピースに分割されており、この左右方向の両側から一対の軸受40及びディファレンシャルギヤケース34を(シム42を介して)挟み込むように組み付けられている。
【0065】
そして、図6に示す例では、一対の軸受40の一方(図6では、紙面右側)とこれに対向するトランスアクスルケース30との間には、リング状のシム42が介在している。厚さの異なる複数のシム42が用意され、トランスアクスルケース30の組み付けの際に、軸方向Dにおけるディファレンシャルギヤケース34、軸受40及びトランスアクスルケース30の各部の寸法のばらつきを吸収するために適した厚さのシム42が選定される。このように選定されたシム42を一方の軸受40とトランスアクスルケース30(の2つのピース)との間に介在させることにより、一対の軸受40のそれぞれに対して軸方向Dから所望の与圧(アキシャル荷重)を与えることができる。なお、与圧の利用により、ディファレンシャルギヤケース34の支持剛性を高めることができる。
【0066】
図6に示す例では、第1金属材料の一例である鉄(より詳細には、鉄系の材料)により形成された一対の軸受40、ディファレンシャルギヤケース34及びシム42が本発明に係る「複数の要素からなる第1部品」の一例に相当する。なお、一対の軸受40、ディファレンシャルギヤケース34及びシム42のそれぞれを構成する第1金属材料は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、上述の与圧の利用により、紙面右側の軸受40周りに関しては、シム42(第1部品)が「負の隙間C2」を介してトランスアクスルケース30(第2部品)と向き合っており、紙面左側の軸受40周りに関しては、軸受40(第1部品が「負の隙間C2」を介してトランスアクスルケース30(第2部品)と向き合っている。
【0067】
なお、一対の軸受40をディファレンシャルギヤケース34とトランスアクスルケース30とによって挟み込むことによって一対の軸受40に与圧を付与するうえで、シム42の存在は必ずしも必須ではない。シム42を利用しない場合には、一対の軸受40とディファレンシャルギヤケース34とが「第1部品」に相当する。
【0068】
一方、第2金属材料により形成されたトランスアクスルケース30が本発明に係る「第2部品」及び「ケース」の一例に相当する。第2金属材料の母材は、例えば、アルミニウム(又はアルミニウム合金)である。また、第2金属部品は、例えばマグネシウム合金であってもよい。
【0069】
なお、図6に示す例では、1つの要素であるトランスアクスルケース30が「第2部品」に相当しているが、「第2部品」についても、「第1部品」と同様に、複数の要素からなるものであってもよい。また、「第2部品」としての「トランスアクスルケース」に収容される回転体(トランスアクスルの構成部品)は、一対の軸受によって回転自在に支持されるものであればディファレンシャルギヤケース34に限られず、例えば、電動モータのロータであってもよい。さらに、「第2部品」としての「ケース」は、一対の軸受を支持するものであればトランスアクスルケース30に限られず、例えば、(トランスアクスルの構成部品ではない)電動モータの回転軸を支持する一対の軸受を支持するケースであってもよい。
【0070】
2-2.負熱膨張材料の混入割合Rの設定例
本実施形態においても、トランスアクスルケース30の母材(アルミニウム)には、負熱膨張材料が混入されている。混入割合Rは、実施の形態1及びその変形例と同様に特定範囲W内から選択でき、また、その一例は混入割合R1である。そして、本実施形態においても、一例としてトランスアクスルケース30の全体に対し、均一な混入割合R1で負熱膨張材料が母材に混入されている。すなわち、本実施形態においても、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、シム42又は軸受40(第1部品)とトランスアクスルケース30(第2部品)とが隙間C2を介して向き合っている場所での軸方向D(特定方向)における第1部品の寸法L12と第2部品の寸法L22との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。
【0071】
2-3.効果
以上説明したように、一対の軸受40を支持するトランスアクスルケース30には、混入割合R1で母材(アルミニウム)に対して負熱膨張材料が混入されている。これにより、鉄により形成された軸受40と同等の線膨張係数をトランスアクスルケース30に付与できる。その結果、実施の形態1と同様の理由により、混入割合Rがゼロの比較例と比べて、温度変化に伴う隙間C2の変化(上述の寸法差の温度変化)を効果的に抑制できるようになる。また、特定範囲W1内で混入割合R1以外の値が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C2の変化を抑制できる効果が得られる。
【0072】
そのうえで、与圧が加えられた一対の軸受40を利用する本実施形態では、次のような効果が得られる。図7は、実施の形態2に係る部品の支持構造の効果を説明するためのグラフである。混入割合Rがゼロの比較例では、トランスアクスルケース30の高温時に一対の軸受40の与圧を適切な値P1で確保した場合には、次のような課題がある。すなわち、図7中に破線で示すように、鉄(軸受)とアルミニウム(ディファレンシャルギヤケース)との線膨張係数の差に起因して、温度が低いほど与圧が過度に高くなってしまう。逆に、この比較例において低温時に適切な与圧を付与すると、高温時には与圧が不足してしまう。
【0073】
これに対し、混入割合R1で負熱膨張材料が混入された第2金属材料を利用する本実施形態によれば、上述のように、温度変化に伴う隙間C2の変化を効果的に抑制できる。このことは、図7中に実線で表されるように温度変化に対する与圧の変化を小さくできることに繋がる。より詳細には、比較例と比べて低温時の設定与圧を低くできるので、軸受寿命、軸受損失及び軸支持剛性を良好に保つことが可能となる。
【0074】
2-4.変形例
(混入割合Rの他の設定例)
実施の形態2において説明した支持構造に関しても、混入割合R1に代え、範囲W2又はW3(図2参照)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。
【0075】
(トランスアクスルケースに部分的に混入させた例)
図8は、図6に示すトランスアクスルケース30に負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。図8に示すように負の隙間C2を介して一対の軸受(シム42を利用する図8では、紙面右側はシム42であり、紙面左側は軸受40)と向き合っているトランスアクスルケース30の壁面30bのことを、「一対の第2対向面」と称する。そして、この第2対向面の周囲に位置するトランスアクスルケース30の部位のことを、「第2周囲部」と称する。
【0076】
図8に示す例では、負熱膨張材料は、第2周囲部のみを対象として母材に混入されている。第2周囲部は、一対の第2対向面(壁面30b)を繋ぐ部位30cである。より具体的には、負熱膨張材料は、例えば、特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第2周囲部内の母材に均一に混入されてもよい。これにより、図6に示す寸法L12と寸法L22との寸法差の温度変化(隙間C2の温度変化)に与える影響の大きな部位を対象として、トランスアクスルケース30の線膨張係数を鉄系の軸受40、ディファレンシャルギヤケース34及びシム42のそれらに近づけることが可能となる。
【0077】
また、既述した油圧制御装置10の例と同様に、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて上記寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されていれば、必ずしも特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第2周囲部内の母材に均一に混入されていなくてもよい。すなわち、負熱膨張材料は、第2周囲部内の部位によって異なる混入割合R(ゼロを含む)で混入されていてもよい。具体的には、例えば、第2周囲部内のある部分では特定範囲W1の内外を問わずに高めの混入割合Rで混入され、第2周囲部内の他の一部分では混入されていなくてもよい。
【0078】
さらに、第2周囲部以外のトランスアクスルケース30の部位の一部又は全部については、第2周囲部から遠ざかるに従い、例えばゼロに向けて混入割合Rが連続的(又は段階的)に下げられるように負熱膨張材料が混入されてもよい。
【0079】
3.実施の形態3
次に、図9図12を参照して、本発明の実施の形態3及びその変形例について説明する。
【0080】
3-1.部品の支持構造の例
本実施形態では、本発明に係る「部品の支持構造」の他の態様として、「締結具を介して回転電機のステータコアをケースによって支持する支持構造」が説明される。
【0081】
図9は、締結具を介して回転電機のステータコアをケースによって支持する実施の形態3に係る支持構造の具体例を表した断面図である。図9には、車両に搭載されるパワートレーンに含まれるトランスアクスルケース50の内部構造の一例が表されている。トランスアクスルケース50には、回転電機52が収容されている。回転電機とは、電動機及び発電機のうちの少なくとも一方の機能を有するものをいう。回転電機52は、回転軸54と一体的に回転するロータ56と、ロータ56の外周側に位置するステータコア58と、ステータコア58に巻き付けられたステータコイル60とを含む。
【0082】
ステータコア58は、本発明に係る「第1部品」の一例に相当し、第1金属材料により形成されている。第1金属材料は、磁性材料であり、その一例は鉄(より詳細には、鉄系の磁性材料)である。より詳細には、ステータコア58は、例えば、鉄を母材とする電磁鋼板を積層して構成されている。
【0083】
図10は、図9に示す回転軸54の軸方向からトランスアクスルケース50内のステータコア58を見た図である。図10に示すように、トランスアクスルケース50には、ステータコア58を支持するための複数(一例として3つ)の支持部(例えば、ボス部)50aが設けられている。ステータコア58の外周面58aには、これらの支持部50aに対応する貫通孔58bが形成されている。ステータコア58は、貫通孔58bに挿入されるボルト等の締結具(図示省略)を介して、トランスアクスルケース50の支持部50aによって支持されている。また、トランスアクスルケース50は、ステータコア58の外周面58aに対向する内周面50bを有する。図10には、トランスアクスルケース50の内周面50bを含む周壁50cが二点鎖線で表されている。各支持部50aは、内周面50bから離れた位置に設けられている。
【0084】
上述の構成を有するトランスアクスルケース50は、本発明に係る「第2部品」の一例に相当する。トランスアクスルケース50は、第2金属材料により形成されている。そして、このトランスアクスルケース50の内周面50bは、「隙間C3」を介してステータコア58の外周面58aと向き合っている。この隙間C3の具体的な設定例は、図11(A)~11(C)を参照して後述される。第2金属材料の母材は、例えば、アルミニウム(又はアルミニウム合金)である。また、第2金属材料は、例えばマグネシウム合金であってもよい。なお、第2金属材料により形成され、ステータコアを収容するケースは、トランスアクスルケース以外に、トランスアクスル用ではない他の用途で用いられる回転電機のケースであってもよい。
【0085】
3-2.負熱膨張材料の混入割合Rの設定例
本実施形態においても、トランスアクスルケース50の母材(アルミニウム)には、負熱膨張材料が混入されている。混入割合Rは、実施の形態1及びその変形例と同様に特定範囲W内から選択でき、また、その一例は混入割合R1である。そして、本実施形態においても、一例としてトランスアクスルケース50の全体に対し、均一な混入割合R1で負熱膨張材料が母材に混入されている。すなわち、本実施形態においても、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、ステータコア58(第1部品)とトランスアクスルケース50(第2部品)とが隙間C3を介して向き合っている場所でのステータコア58の径方向(特定方向)における第1部品の寸法L13と第2部品の寸法L23との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。
【0086】
3-3.効果
以上説明したように、トランスアクスルケース50には、混入割合R1で母材(アルミニウム)に対して負熱膨張材料が混入されている。これにより、鉄(電磁鋼板)により形成されたステータコア58と同等の線膨張係数をトランスアクスルケース50に付与できる。その結果、実施の形態1と同様の理由により、混入割合Rがゼロの比較例と比べて、温度変化に伴う隙間C3の変化(上述の寸法差の温度変化)を効果的に抑制できるようになる。また、特定範囲W1内で混入割合R1以外の値が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C3の変化を抑制できる効果が得られる。
【0087】
上述のように温度変化に伴う隙間C3の変化を効果的に抑制できる効果は、隙間C3の設定との関連において次のような効果に繋がる。図11(A)~11(C)は、それぞれ、隙間C3の3つの設定例1~3及びそれらの効果を説明するためのグラフである。
【0088】
温度変化に対して隙間C3を実質的にゼロ相当で保持できれば、ステータコア58の外周面58aをトランスアクスルケース50の内周面50bに対して安定的に適度に接触させた状態が得られる。このことは、ステータコア58の放熱性能を高めるうえで有効である。その一方で、隙間C3が負側で大きく設定されていると、トランスアクスルケース50がステータコア58を締め付ける力(与圧)が過大となり、ステータコア58のゆがみに起因する回転電機52の効率低下が懸念される。
【0089】
図11(A)に示す比較例1(混入割合R=0)の設定では、低温域において過大とならない程度の負の隙間C3が設定されている。この設定によれば、温度が上昇すると、隙間C3が正となり、ステータコアがトランスアクスルケースから離れてしまう。その結果、ステータコアの放熱性能が低下する。
【0090】
これに対し、負熱膨張材料の混入によって隙間C3の温度変化を抑制可能な本実施形態の構成によれば、設定例1を採用することができる。設定例1によれば、図11(A)に示すように、低温下での隙間C3の設定は比較例1と同等であるが、温度変化が生じても隙間C3を実質的にゼロ近辺で(より詳細には、ステータコア58とトランスアクスルケース50の接触が確保される負側におけるゼロ近辺で)保持できるようになる。このため、広い温度範囲において、トランスアクスルケース50を利用したステータコア58の放熱効果が良好に得られるようになる。
【0091】
次に、図11(B)に示す比較例2(混入割合R=0)では、広い温度範囲において負の隙間C3を設定することにより、高温下でも放熱効果を得るという設計思想が採用されている。しかしながら、この設定によれば、低温下において負の隙間C3が過大となってしまう。その結果、ステータコアのゆがみに起因する回転電機の効率低下が懸念される。これに対し、本実施形態の設定例2によれば、高温下で比較例2と同等の負の隙間C3を設定しつつ、低温下で負の隙間C3が過大となることに起因する回転電機の効率低下を抑制できる。すなわち、広い温度範囲において放熱効果を確保しつつ、低温下での与圧低下によって回転電機の効率低下を抑制できる。
【0092】
次に、図11(C)に示す比較例3(混入割合R=0)では、回転電機の効率低下を避けることが最も優先され、各温度域においてステータコアをトランスアクスルケースに接触させない設計思想が採用されている。しかしながら、この設定によれば、トランスアクスルケースを利用した放熱性能の向上を図れない。これに対し、本実施形態の設定例3によれば、低温下での隙間C3を正側でゼロ相当としつつ、温度上昇に伴う隙間C3の拡大が抑制される設定が得られる。これにより、回転電機の効率低下を回避しつつ、ステータコア58とトランスアクスルケース50との間に介在して断熱層として機能する空気層が、温度上昇に伴って大きくなることが抑制される。このため、比較例3と比べると、トランスアクスルケース50への放熱効果を高めつつ回転電機の効率低下を回避できる設定が得られる。
【0093】
3-4.変形例
(混入割合Rの他の設定例)
実施の形態3において説明した支持構造に関しても、混入割合R1に代え、範囲W2又はW3(図2参照)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。
【0094】
(トランスアクスルケースに部分的に混入させた例)
図12(A)及び図12(B)は、図9に示すトランスアクスルケース50に負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。図12(B)は、図12(A)のX2-X2断面図である。図12(A)、12(B)に示すように隙間C3を介してステータコア58の外周面58aと向き合っているトランスアクスルケース50の内周面50bのことを、「第3対向面」と称する。そして、この第3対向面の周囲に位置するトランスアクスルケース50の部位のことを、「第3周囲部」と称する。
【0095】
図12に示す例では、負熱膨張材料は、第3周囲部のみを対象として母材に混入されている。第3周囲部は、ステータコア58の外周側に位置するトランスアクスルケース50の周壁50cである。より具体的には、負熱膨張材料は、例えば、特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第3周囲部内の母材に均一に混入されてもよい。これにより、図9に示す寸法L13と寸法L23との寸法差の温度変化(隙間C3の温度変化)に与える影響の大きな部位を対象として、トランスアクスルケース50の線膨張係数をステータコア58のそれに近づけることが可能となる。
【0096】
また、負熱膨張材料が混入される第3周囲部は、より好ましくは、ステータコア58の外周側に位置する周壁50cとともに、図12(A)に示す側壁50dを含んでいてもよい。側壁50dは、回転軸54の両端に位置するトランスアクスルケース50の壁部である。この側壁50dも第3周囲部に含まれる場合には、側壁50dにおけるステータコア58側の表面も、「第3対向面」に相当する。
【0097】
また、既述した油圧制御装置10の例及びトランスアクスルケース30の例と同様に、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて上記寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されていれば、必ずしも特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第3周囲部内の母材に均一に混入されていなくてもよい。すなわち、負熱膨張材料は、第3周囲部内の部位によって異なる混入割合R(ゼロを含む)で混入されていてもよい。具体的には、例えば、第3周囲部内のある部分では特定範囲W1の内外を問わずに高めの混入割合Rで混入され、第3周囲部内の他の一部分では混入されていなくてもよい。
【0098】
さらに、第3周囲部以外のトランスアクスルケース50の部位の一部又は全部については、第3周囲部から遠ざかるに従い、例えばゼロに向けて混入割合Rが連続的(又は段階的)に下げられるように負熱膨張材料が混入されてもよい。
【0099】
4.実施の形態4
次に、図13を参照して、本発明の実施の形態4及びその変形例について説明する。
【0100】
4-1.部品の支持構造の例
本実施形態では、本発明に係る「部品の支持構造」の他の態様として、「焼き嵌めを利用して回転電機のステータコアをケースによって支持する支持構造」が説明される。
【0101】
図13は、焼き嵌めを利用して回転電機のステータコアをケースによって支持する実施の形態4に係る支持構造の具体例を表した断面図である。図13に示す構成は、以下に説明する点を除き、図9に示す構成と同じである。
【0102】
具体的には、図13に示す例では、トランスアクスルケース70内に収容される回転電機72は、ロータ56及びステータコイル60とともに、ステータコア74を含む。そのうえで、本実施形態では、ステータコア74(第1部品)は、ステータコア74の外周側に位置するトランスアクスルケース70(第2部品)の周壁70cに焼き嵌めされている。したがって、ステータコア74の外周面74aと内周面70bとの隙間C4は負の隙間である。このように、本実施形態では、ステータコア74は、負の隙間C4を介してトランスアクスルケース70によって支持されている。
【0103】
4-2.負熱膨張材料の混入割合Rの設定例
本実施形態においても、トランスアクスルケース70の母材(アルミニウム)には、負熱膨張材料が混入されている。混入割合Rは、実施の形態1及びその変形例と同様に特定範囲W内から選択でき、また、その一例は混入割合R1である。そして、本実施形態においても、一例としてトランスアクスルケース70の全体に対し、均一な混入割合R1で負熱膨張材料が母材に混入されている。すなわち、本実施形態においても、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、ステータコア74(第1部品)とトランスアクスルケース70(第2部品)とが隙間C4を介して向き合っている場所でのステータコア74の径方向(特定方向)における第1部品の寸法(図10中の寸法L13と同様)と第2部品の寸法(図10中の寸法L23と同様)との寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。
【0104】
4-3.効果
以上説明したように、トランスアクスルケース70には、混入割合R1で母材(アルミニウム)に対して負熱膨張材料が混入されている。これにより、鉄(電磁鋼板)により形成されたステータコア74と同等の線膨張係数をトランスアクスルケース70に付与できる。その結果、実施の形態1と同様の理由により、混入割合Rがゼロの比較例と比べて、温度変化に伴う隙間C4の変化(上述の寸法差の温度変化)を効果的に抑制できるようになる。また、特定範囲W1内で混入割合R1以外の値が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C4の変化を抑制できる効果が得られる。
【0105】
そのうえで、本実施形態によれば、実施の形態2の軸受40の与圧の設定に関する効果(図7参照)と同様に、温度変化に対する焼き嵌め圧力(ステータコア74が焼き嵌めによりトランスアクスルケース70から受ける圧力)の変化を小さくできる。より詳細には、比較例(混入割合R=0)と比べて低温時に焼き嵌め圧力を低くできるので、大きな焼き嵌め圧力に起因するステータコア74の歪みを抑制して回転電機72の効率低下を抑制できる。一方、高温時には、図11(A)、11(B)に示す設定例1、2と同様に、ステータコア74からトランスアクスルケース70への放熱性能を高めることもできる。
【0106】
4-4.変形例
(混入割合Rの他の設定例)
実施の形態4において説明した支持構造に関しても、混入割合R1に代え、範囲W2又はW3(図2参照)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。
【0107】
(混入部位の他の例)
ステータコア74の支持のために焼き嵌めを利用する実施の形態4に記載の支持構造においても、図12及び図12(B)を参照して説明した例のように混入部位が決定されてもよい。
【0108】
5.実施の形態5
次に、図14及び図15を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。
【0109】
5-1.部品の支持構造の例
本実施形態では、本発明に係る「部品の支持構造」の他の態様として、「オイルポンプのポンプロータを、当該ポンプロータを収容するポンプボディによって回転自在に支持する支持構造」が説明される。
【0110】
図14は、オイルポンプのポンプロータを、当該ポンプロータを収容するポンプボディによって回転自在に支持する実施の形態5に係る支持構造の具体例を表した断面図である。図14には、車両に搭載されるパワートレーンに含まれるトランスアクスルケース80の内部構造の一例が表されている。トランスアクスルケース80には、回転電機82が収容されている。回転電機82のロータ84と一体的に回転する回転軸86の一端側には、オイルポンプ88が配置されている。
【0111】
オイルポンプ88は、ポンプロータ90とポンプボディ92とを含む。ポンプボディ92には、ポンプロータ90を収容する円筒凹状のポンプロータ収容穴92aが形成されている。ポンプロータ90は、ポンプボディ92によって(より詳細には、ポンプロータ収容穴92aによって)回転自在に支持されている。ポンプロータ90は、回転軸86の内側に挿入されたポンプ駆動軸94によって回転駆動される。
【0112】
より具体的には、オイルポンプ88は、一例として公知の内接ギヤ式のトロコイドポンプである。ポンプロータ90は、星形状の外歯が形成されたインナーロータ96と、円柱状に形成されたアウターロータ98とからなる。アウターロータ98には、インナーロータ96を回転自在に収容するインナーロータ収容室(図示省略)が形成されている。このインナーロータ収容室には、インナーロータ96の外歯と噛み合い、かつ、当該外歯と異なる数の星形状の内歯が形成されている。また、インナーロータ収容室は、ポンプボディ92のポンプロータ収容穴92aの側壁92a1と連通している。側壁92a1には、インナーロータ収容室と連通するオイル吸入ポート及びオイル排出ポート(ともに図示省略)が形成されている。上述のポンプ駆動軸94は、インナーロータ96を回転駆動する。インナーロータ96の回転中心とアウターロータ98の回転中心とは互いに偏心している。アウターロータ98は、インナーロータ96の回転に伴い、インナーロータ96と偏心した状態で同じ回転方向に回転する。そして、これら2つのロータ96、98の回転中に生じる外歯と内歯との隙間の変化に伴うインナーロータ収容室の容積変化を利用して、オイル吸入ポートからインナーロータ収容室に吸入されたオイルがオイル排出ポートから排出される。なお、側壁92a1と反対側に位置するインナーロータ収容室の端部は、プレート100によって閉塞されている。
【0113】
図14に示すオイルポンプ88の例では、ポンプロータ90が本発明に係る「第1部品」の一例に相当し、ポンプボディ92が本発明に係る「第2部品」の一例に相当する。ポンプロータ90は、第1金属材料の一例である鉄(より詳細には、鉄系の材料)によって形成されており、ポンプボディ92の母材の一例はアルミニウム(又はアルミニウム合金)である。また、第2金属材料は、例えばマグネシウム合金であってもよい。そして、ポンプロータ90に含まれるアウターロータ98の外周面98aは、この外周面98aの外周側に位置するポンプボディ92の内周面92a2と微小な正の隙間C5を介して向き合っている。また、ポンプボディ92の側壁92a1は、ポンプロータ90の側壁90aと微小な正の隙間C5’を介して向き合っている。
【0114】
5-2.負熱膨張材料の混入割合Rの設定例
本実施形態においても、ポンプボディ92の母材(アルミニウム)には、負熱膨張材料が混入されている。混入割合Rは、実施の形態1及びその変形例と同様に特定範囲W内から選択でき、また、その一例は混入割合R1である。そして、本実施形態においても、一例としてポンプボディ92の全体に対し、均一な混入割合R1で負熱膨張材料が母材に混入されている。すなわち、本実施形態においても、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて、ポンプロータ90(第1部品)とポンプボディ92(第2部品)とが隙間C5を介して向き合っている場所での特定方向における寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されている。この例における寸法差には、図14に示すように、ポンプロータ90の径方向(特定方向)における第1部品の寸法L14と第2部品の寸法L24との寸法差と、ポンプロータ90の幅方向(特定方向)における第1部品の寸法L14’と第2部品の寸法L24’との寸法差とが該当する。
【0115】
5-3.効果
以上説明したように、ポンプロータ90を回転自在に支持するポンプボディ92には、混入割合R1で母材(アルミニウム)に対して負熱膨張材料が混入されている。これにより、鉄により形成されたポンプロータ90と同等の線膨張係数をポンプボディ92に付与できる。その結果、実施の形態1と同様の理由により、混入割合Rがゼロの比較例と比べて、温度変化に伴う隙間C5及びC5’の変化(上述の2つの寸法差の温度変化)を効果的に抑制できるようになる。また、特定範囲W1内で混入割合R1以外の値が選択された場合であっても、比較例と比べて温度変化に伴う隙間C5及びC5’の変化を抑制できる効果が得られる。
【0116】
そのうえで、オイルポンプ88の例では、上記オイル排出ポートに向かわずに隙間C5及びC5’を介して漏れるオイルの量が増えると、オイルポンプ88の容積効率が低下する。混入割合Rがゼロの比較例では、高温時に隙間C5及びC5’が大きくなることで、容積効率が低下し易い。これに対し、本実施形態のオイルポンプ88によれば、温度変化に伴う隙間C5及びC5’の変化を効果的に抑制できる効果が得られるため、高温時の容積効率を高めることができる。
【0117】
5-4.変形例
(混入割合Rの他の設定例)
実施の形態5において説明した支持構造に関しても、混入割合R1に代え、範囲W2又はW3(図2参照)内の任意の値が混入割合Rとして選択されてもよい。付け加えると、この支持構造においても、範囲W3の選択により、実施の形態1において図4(A)及び図4(B)を参照して説明した効果が得られる。すなわち、混入割合R1又は範囲W2が選択された場合と比べて、作動油の粘度が低くなる高温時に作動油が隙間C5及びC5’を通って漏れ出しにくくすることができ、オイルポンプ88の容積効率をより効果的に高めることができる。
【0118】
(ポンプボディに部分的に混入させた例)
図15(A)及び図15(B)は、図14に示すポンプボディ92に負熱膨張材料を部分的に混入させた例を表した模式図である。図15(B)は、図15(A)中の矢視X3の方向からオイルポンプ88を見た図である。図15(A)に示すように隙間C5及びC5’を介してポンプロータ90と向き合っているポンプボディ92の内周面92a2及び側壁92a1の表面を、それぞれ「第4対向面」と称する。そして、これらの第4対向面の周囲に位置するポンプボディ92の部位のことを、「第4周囲部」と称する。
【0119】
図15に示す例では、負熱膨張材料は、第4周囲部のみを対象として母材に混入されている。第4周囲部は、ポンプロータ90の外周側に位置するポンプボディ92の壁部92bである。この壁部92bは、より詳細には、内周面92a2からポンプロータ90の径方向に所定の幅を有するリング状の部位として特定される。
【0120】
より具体的には、負熱膨張材料は、例えば、特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第4周囲部内の母材に均一に混入されてもよい。これにより、隙間C5及びC5’の温度変化に与える影響の大きな部位を対象として、ポンプボディ92の線膨張係数をポンプロータ90のそれに近づけることが可能となる。
【0121】
また、負熱膨張材料が混入される第4周囲部は、より好ましくは、上述の壁部92bとともに、壁部92cを含んでいてもよい。壁部92cは、より詳細には、側壁92a1に含まれる部位であって、側壁92a1の表面からポンプロータ90の軸方向に所定の幅を有する円板状の部位として特定される。
【0122】
また、既述した油圧制御装置10の例及びトランスアクスルケース30、50、70の例と同様に、負熱膨張材料は、当該負熱膨張材料が混入されない場合と比べて上記寸法差の温度変化を少なくする量で母材に混入されていれば、必ずしも特定範囲W1内の任意の混入割合Rで第4周囲部内の母材に均一に混入されていなくてもよい。すなわち、負熱膨張材料は、第4周囲部内の部位によって異なる混入割合R(ゼロを含む)で混入されていてもよい。具体的には、例えば、第4周囲部内のある部分では特定範囲W1の内外を問わずに高めの混入割合Rで混入され、第3周囲部内の他の一部分では混入されていなくてもよい。
【0123】
さらに、第4周囲部以外のポンプボディ92の部位の一部又は全部については、第4周囲部から遠ざかるに従い、例えばゼロに向けて混入割合Rが連続的(又は段階的)に下げられるように負熱膨張材料が混入されてもよい。
【0124】
以上説明した各実施の形態に記載の例及び他の各変形例は、明示した組み合わせ以外にも可能な範囲内で適宜組み合わせてもよいし、また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形してもよい。
【符号の説明】
【0125】
10 油圧制御装置
12 バルブボディ
12b バルブボディの内周面(第1対向面)
12c バルブボディの周壁(第1周囲部)
14 バルブ
20 バルブのランド
20a ランドの外周面
30 トランスアクスルケース
20b トランスアクスルケースの壁面(一対の第2対向面)
30c 一対の第2対向面(壁面30b)を繋ぐ部位(第2周囲部)
34 ディファレンシャルギヤケース
40 軸受
42 シム
50、70、80 トランスアクスルケース
50b、70b トランスアクスルケースの内周面(第3対向面)
50c、70c トランスアクスルケースの周壁(第3周囲部)
50d トランスアクスルケースの側壁(第3周囲部)
58、74 回転電機のステータコア
88 オイルポンプ
90 ポンプロータ
92 ポンプボディ
92a1 ポンプボディの側壁(第4対向面)
92a2 ポンプボディのポンプロータ収容穴の内周面(第4対向面)
92b、92c ポンプボディ92の壁部(第4周囲部)
98 ポンプロータのアウターロータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15