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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/4401 20180101AFI20240528BHJP
   G06F 8/60 20180101ALI20240528BHJP
【FI】
G06F9/4401
G06F8/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020072978
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021170226
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 建太
(72)【発明者】
【氏名】塩安 麻人
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 友樹
(72)【発明者】
【氏名】大津 正彦
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/079772(WO,A1)
【文献】特開2017-107283(JP,A)
【文献】江藤 博文,演習用Windows端末群のディスクレスによる安定運用,情報処理学会論文誌,日本,社団法人情報処理学会,2004年01月15日,第45巻 第1号,2-11ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/4401
G06F 8/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
通信回線を介して接続されたサーバ装置から自装置の起動に用いられる起動データを取得し、
前記起動データを用いて自装置を起動し、
前記起動された状態において処理の指示を取得し、
前記指示の取得に応じて、前記処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得し、
メモリをさらに備え、
前記起動データは第1起動データであり、前記処理データは第1処理データであり、
前記メモリは、前記第1起動データを用いて起動する場合よりも機能が制限された状態での自装置の起動に用いられる第2起動データと、前記処理よりも制限された処理の実行に用いられる第2処理データと記憶し、
前記プロセッサは、
前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2起動データを用いて、前記制限された状態で自装置を起動し、
前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2処理データを用いて前記制限された処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記処理データを用いて前記指示に従って前記処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記起動データとともに特定の処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定の処理は、処理の利用頻度に応じて決められる
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
記メモリは、前記取得された処理データを記憶し、
前記プロセッサは、
前記起動された状態において前記処理データを用いる処理の他の指示を取得し、
前記他の指示が取得されると、前記処理データを前記サーバ装置から取得せずに、前記メモリに記憶されている前記処理データを使用する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
自装置の識別子を前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置において前記識別子に関連付けられた前記起動データ及び前記処理データを取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
通信回線を介して接続されたサーバ装置から前記コンピュータの起動に用いられる起動データを取得するステップと、
前記起動データを用いて前記コンピュータを起動するステップと、
前記起動された状態において処理の指示を取得するステップと、
前記指示の取得に応じて、前記処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得するステップと
を実行させ、
前記起動データは第1起動データであり、前記処理データは第1処理データであり、
前記第1起動データを用いて起動する場合よりも機能が制限された状態での前記コンピュータの起動に用いられる第2起動データと、前記処理よりも制限された処理の実行に用いられる第2処理データとがメモリに記憶され、
前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2起動データを用いて、前記制限された状態で前記コンピュータを起動するステップと、
前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2処理データを用いて前記制限された処理を実行するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線を介してオペレーションシステム等のデータを取得して起動するネットワークブートという技術が知られている。特許文献1には、起動の都度にネットワークを介してサーバから第1の組み込みソフトウェアを取得して揮発性記憶部に記憶させ、第1の組み込みソフトウェアが記憶された揮発性記憶部の記憶領域をマウント処理して第1の組み込みソフトウェアを実行可能な状態とする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-169729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置の機能が増えると、対応する処理の実行に必要なプログラムを含む処理データのデータ量が増加する。そのため、装置を起動する際に、起動に用いられる起動データと処理データとを両方とも取得すると、これらのデータの取得に時間がかかり、起動に要する時間が長くなる。
本発明は、起動の際に起動データと処理データとを両方とも取得する場合に比べて、起動に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、通信回線を介して接続されたサーバ装置から自装置の起動に用いられる起動データを取得し、前記起動データを用いて自装置を起動し、前記起動された状態において処理の指示を取得し、前記指示の取得に応じて、前記処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得し、メモリをさらに備え、前記起動データは第1起動データであり、前記処理データは第1処理データであり、前記メモリは、前記第1起動データを用いて起動する場合よりも機能が制限された状態での自装置の起動に用いられる第2起動データと、前記処理よりも制限された処理の実行に用いられる第2処理データと記憶し、前記プロセッサは、前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2起動データを用いて、前記制限された状態で自装置を起動し、前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2処理データを用いて前記制限された処理を実行することを特徴とする情報処理装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記処理データを用いて前記指示に従って前記処理を実行することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記起動データとともに特定の処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の情報処理装置において、前記特定の処理は、処理の利用頻度に応じて決められることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記メモリは、前記取得された処理データを記憶し、前記プロセッサは、前記起動された状態において前記処理データを用いる処理の他の指示を取得し、前記他の指示が取得されると、前記処理データを前記サーバ装置から取得せずに、前記メモリに記憶されている前記処理データを使用することを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記プロセッサは、自装置の識別子を前記サーバ装置に送信し、前記サーバ装置において前記識別子に関連付けられた前記起動データ及び前記処理データを取得することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、コンピュータに、通信回線を介して接続されたサーバ装置から前記コンピュータの起動に用いられる起動データを取得するステップと、前記起動データを用いて前記コンピュータを起動するステップと、前記起動された状態において処理の指示を取得するステップと、前記指示の取得に応じて、前記処理の実行に用いられる処理データを前記サーバ装置から取得するステップとを実行させ、前記起動データは第1起動データであり、前記処理データは第1処理データであり、前記第1起動データを用いて起動する場合よりも機能が制限された状態での前記コンピュータの起動に用いられる第2起動データと、前記処理よりも制限された処理の実行に用いられる第2処理データとがメモリに記憶され、前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2起動データを用いて、前記制限された状態で前記コンピュータを起動するステップと、前記サーバ装置と通信が行われない場合には、前記第2処理データを用いて前記制限された処理を実行するステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、起動の際に起動データと処理データとを両方とも取得する場合に比べて、起動に要する時間を短縮することができる。
請求項2に係る発明によれば、処理の実行に用いられる処理データが予め情報処理装置内に記憶されていなくても、処理データを用いて処理を実行することができる。
請求項3に係る発明によれば、処理の指示を取得した後に特定の処理の実行に用いられる処理データを取得する場合に比べて、特定の処理を迅速に実行することができる。
請求項4に係る発明によれば、利用頻度を反映して特定の処理を決定することができる。
請求項5に係る発明によれば、既に取得された処理データが再度取得されるのを防ぐことができる。
請求項6に係る発明によれば、情報処理装置に応じた起動データ及び処理データを取得することができる
求項1、7に係る発明によれば、サーバ装置と通信ができない場合であっても、制限された状態で起動して制限された処理を実行することができる。
請求項に係る発明によれば、起動の際に起動データと処理データとを両方とも取得する場合に比べて、起動に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】画像処理システム1の構成の一例を示す図である。
図2】画像処理装置10の構成の一例を示す図である。
図3】制御部11の構成の一例を示す図である。
図4】データベース21の一例を示す図である。
図5】画像処理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.構成
図1は、画像処理システム1の構成の一例を示す図である。画像処理システム1は、画像処理装置10とサーバ装置20とを備える。これらの装置は、インターネット等の通信回線30を介して接続されている。画像処理システム1においては、画像処理装置10はネットワークブート方式で起動される。
【0018】
図2は、画像処理装置10の構成の一例を示す図である。画像処理装置10は、コピー機能、プリント機能、スキャン機能、ファクシミリ機能等の画像を処理する複数の機能を有する。画像処理装置10は、本発明に係る情報処理装置の一例である。画像処理装置10は、起動の際に、通信回線30を介してサーバ装置20から起動に必要なデータをダウンロードする。ここでいう「データ」には、プログラムが含まれる。画像処理装置10は、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、画像読取部15と、画像形成部16とを備える。これらの部位は、バス17を介して接続されている。
【0019】
制御部11は、画像処理装置10の各部を制御する。記憶部12は、画像処理装置10の処理に関する各種のデータを記憶する。記憶部12には、例えばハードディスクドライブ又はSSD(Solid State Drive)が用いられる。操作部13は、利用者による画像処理装置10の操作に用いられる。操作部13には、例えばタッチパネルとボタンとが用いられる。表示部14は、利用者との情報をやり取りに用いられる各種の画面を表示する。表示部14には、例えば液晶ディスプレイが用いられる。画像読取部15は、画像を読み取ってデジタル信号に変換する。画像読取部15には、例えばイメージスキャナが用いられる。画像形成部16は、用紙等の記録媒体上に画像を形成する。画像形成部16には、例えばプリンターが用いられる。
【0020】
図3は、制御部11の構成の一例を示す図である。制御部11は、プロセッサ111と、揮発性メモリ112と、プロセッサ113と、揮発性メモリ114と、不揮発性メモリ115と、通信インターフェース116とを備える。これらの部位は、バス117を介して接続されてる。
【0021】
プロセッサ111は、揮発性メモリ112又は不揮発性メモリ115に記憶されたプログラムを実行することにより、画像処理装置10の各部を制御し、画像処理装置10の機能を実現する処理や表示部14の表示を制御する処理等の各種の処理を行う。プロセッサ111には、例えばCPU(Central Processing Unit)やASSP(Application Specific Standard Produce)が用いられる。また、プロセッサ111は、ミニCPU118を有する。ミニCPU118は、不揮発性メモリ115に記憶されたプログラムを実行することにより、画像処理装置10の起動に必要なデータをサーバ装置20から取得する処理を行う。
【0022】
揮発性メモリ112は、サーバ装置20から取得された、プロセッサ111が用いるデータを記憶する。揮発性メモリ112においては、電源が切断されると記憶内容が失われる。すなわち、揮発性メモリ112においては、電源が供給されている間に限り記憶内容が保持される。揮発性メモリ112には、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)が用いられる。
【0023】
プロセッサ113は、揮発性メモリ114に記憶されたプログラムを実行することにより、画処理や画像読取部15及び画像形成部16の制御を行う。プロセッサ113には、例えばCPUやASIC(Application Specific Integrated Circuit)が用いられる。
【0024】
揮発性メモリ114は、サーバ装置20から取得された、プロセッサ113が用いるデータを記憶する。揮発性メモリ114においては、揮発性メモリ112と同様に、電源が切断されると記憶内容が失われる。揮発性メモリ114には、例えばDRAMが用いられる。
【0025】
不揮発性メモリ115は、固有情報と、ダウンロードシステムと、初期化プログラムとを記憶している。固有情報は、画像処理装置10に固有の情報である。固有情報は、画像処理装置10を一意に識別するものであり、本発明に係る識別子の一例である。ダウンロードシステムは、サーバ装置20からデータをダウンロードするためのプログラムである。初期化プログラムは、通信インターフェース116を初期化して起動するためのプログラムである。不揮発性メモリ115においては、電源が切断されても記憶内容が保持される。不揮発性メモリ115には、例えばシリアルEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)が用いられる。
【0026】
通信インターフェース116は、通信回線30に接続されている。通信インターフェース116は、通信回線30を介してサーバ装置20とデータ通信を行う。
【0027】
なお、画像処理装置10には、画像処理装置10の起動や処理に必要なデータは予め記憶されていない。これらのデータは、サーバ装置20に格納されている。
【0028】
サーバ装置20は、画像処理装置10の起動や処理に必要なデータを必要に応じて画像処理装置10に提供する。図1に示されるように、サーバ装置20には、これらのデータを有するデータベース21が格納されている。
【0029】
図4は、データベース21の一例を示す図である。データベース21には、固有情報と、データとが含まれる。このデータベース21においては、各画像処理装置10の固有情報に関連付けて、その画像処理装置10の起動や処理に必要なデータが格納されている。データには、画像処理装置10の起動に用いられる起動データと、画像処理装置10の処理の実行に用いられる処理データとが含まれる。起動データには、システムプログラムが含まれる。システムプログラムは、画像処理装置10の基本的な動作を実現するためのプログラムである。システムプログラムには、例えばメインOS(Operating System)やシステムフォントを示すフォントデータが含まれる。システムプログラムは、例えば国や言語毎に用意されている。日本の利用者が利用する画像処理装置10の固有情報には、日本向けのシステムプログラムが関連付けられている。処理データには、例えばアプリケーションプログラム(以下、「アプリ」という。)、プリント用フォントデータ、及び利用者データが含まれる。アプリは、画像処理装置10の機能を実現するためのプログラムである。アプリには、例えばコピー処理の実行に用いられるコピーアプリと、スキャン処理の実行に用いられるスキャンアプリと、ファクシミリ処理の実行に用いられるファクシミリアプリと、プリント処理の実行に用いられるプリントアプリとが含まれる。プリント用フォントデータは、プリント処理に用いられるフォントを示すデータである。プリント用フォントデータには、例えば複数種類のフォントを示すデータが含まれる。利用者データは、利用者のデータである。利用者データには、例えば電話帳を示す電話帳データ、画像の読み取りにより得られたスキャンデータ、及びプリントに用いられるプリントデータが含まれる。
【0030】
2.動作
以下の説明において、プロセッサ111、プロセッサ113、又はミニCPU118を処理の主体として記載する場合、これは揮発性メモリ112、揮発性メモリ114、又は不揮発性メモリ115に記憶されたプログラムと、このプログラムを実行するプロセッサ111、プロセッサ113、又はミニCPU118との協働により、プロセッサ111、プロセッサ113、又はミニCPU118が演算を行い又は他のハードウェア要素の動作を制御することにより、処理が行われることを意味する。
【0031】
図5は、画像処理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、利用者が画像処理装置10を利用するときに開始される。ステップS11において、利用者が操作部13を用いて電源を投入する操作を行うと、画像処理装置10の電源が投入される。ステップS12において、ミニCPU118は、不揮発性メモリ115に記憶された初期化プログラムを実行することにより、通信インターフェース116を初期化して起動する。これにより、通信インターフェース116の動作が開始される。
【0032】
ステップS13において、ミニCPU118は、不揮発性メモリ115に記憶されたダウンロードシステムを実行することにより、通信インターフェース116によりサーバ装置20にアクセスする。これにより、画像処理装置10とサーバ装置20との間で通信の接続が確立される。ステップS14において、ミニCPU118は、不揮発性メモリ115に記憶された固有情報を通信インターフェース116からサーバ装置20に送信する。ここでは、固有情報が「001」であるものとする。
【0033】
ステップS15において、ミニCPU118は、通信インターフェース116によりサーバ装置20から自装置に対応する起動データと特定のアプリとをダウンロードする。特定のアプリは、画像処理装置10の特定の処理の実行に用いられるアプリである。特定の処理は、例えば必要最小限の処理であってもよい。ここでは、特定のアプリは、コピーアプリとプリントアプリであるものとする。例えばミニCPU118は、起動データ及び特定のアプリの取得要求をサーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、この取得要求に応じて、ステップS14において画像処理装置10から受信した固有情報と関連付けられた起動データ及び特定のアプリをデータベース21から読み出して画像処理装置10に送信する。図4に示す例では、「001」という固有情報に関連付けられた日本向けのシステムプログラム、コピーアプリ、及びプリントアプリが送信される。ミニCPU118は、通信インターフェース116にてこの起動データ及び特定のアプリを受信する。これにより、サーバ装置20から起動データ及び特定のアプリが取得される。このとき、特定アプリ以外のアプリ、プリント用フォント、利用者データは取得されない。
【0034】
ステップS16において、ミニCPU118は、ステップS15においてダウンロードされた起動データと特定のアプリとを揮発性メモリ112に展開する。例えば日本向けのシステムプログラム、コピーアプリ、及びプリントアプリが揮発性メモリ112に展開される。これにより、これらのデータが揮発性メモリ112に記憶される。
【0035】
ステップS17において、プロセッサ111は、揮発性メモリ112に記憶された起動データを用いて画像処理装置10を起動する。例えば、まずミニCPU118がプロセッサ111のリセットを解除する。これにより、プロセッサ111の動作が開始される。プロセッサ111は揮発性メモリ112に記憶されたシステムプログラムを実行する。これにより画像処理装置10が起動される。画像処理装置10が起動されると、例えば表示部14には、システムプログラムに含まれるフォントデータを用いて、メニュー画面が表示される。また、プロセッサ111は、揮発性メモリ112に記憶された特定のアプリを実行する。これにより、特定のアプリに対応する機能が起動される。例えばコピーアプリとプリントアプリとが実行され、コピー機能とプリント機能とが起動される。この例では、ファクシミリ機能とスキャン機能とは起動されない。このように、画像処理装置10の起動の際には、画像処理装置10の全ての機能が起動されるのではなく、一部の機能だけが起動される。
【0036】
ステップS18において、プロセッサ111は、画像処理装置10が起動された後、利用者が処理の実行を指示する操作を行うと、この処理の指示を取得する。この操作は、操作部13を用いて行われてもよいし、通信回線30を介して利用者の端末装置が接続されている場合には、端末装置を用いて行われてもよい。ここでは、プリント処理の実行を指示する操作が行われたものとする。この場合、この操作に応じて、プリント処理の指示が受け付けられる。
【0037】
ステップS19において、プロセッサ111は、ステップS18において取得された指示を解析して、対応する処理に必要な処理データを特定する。この指示には、例えば処理に必要な処理データを示す情報が含まれる。例えばプリント処理の指示が受け付けられた場合において、このプリント処理に必要なフォントが第1フォントであるときは、プリントアプリと、第1フォントを示す第1プリント用フォントデータとがプリント処理に必要な処理データとして特定される。
【0038】
ステップS20において、プロセッサ111は、ステップS19において特定された必要な処理データが全てダウンロードされているか否かを判定する。この判定は、例えば揮発性メモリ112に記憶されたダウンロードリストを参照して行われる。このダウンロードリストには、画像処理装置10が起動されてからダウンロードされたデータの識別情報が含まれる。必要な処理データが全てダウンロードされている場合(ステップS20の判定がYES)、プロセッサ111はステップS24に進む。一方、必要な処理データの少なくとも一部がダウンロードされていない場合(ステップS20の判定がNO)、プロセッサ111はステップS21に進む。例えばプリントアプリはダウンロードされているものの、第1プリント用フォントデータがダウンロードされていない場合には、ステップS20の判定がNOになる。
【0039】
ステップS21において、プロセッサ111は、不揮発性メモリ115に記憶されたダウンロードシステムを実行することにより、通信インターフェース116によりサーバ装置20にアクセスする。これにより、画像処理装置10とサーバ装置20との間で通信の接続が確立される。ステップS22において、プロセッサ111は、通信インターフェース116によりサーバ装置20から必要な処理データのうちダウンロードされていない処理データ(以下、「欠損処理データ」という。)をダウンロードする。例えばプロセッサ111は、欠損処理データの取得要求をサーバ装置20に送信する。この取得要求には、不揮発性メモリ115に記憶された固有情報が含まれてもよい。サーバ装置20は、この取得要求に応じて、画像処理装置10の固有情報と関連付けられた欠損処理データをデータベース21から読み出して画像処理装置10に送信する。図4に示す例において、欠損処理データが第1プリント用フォントデータである場合には、「001」という固有情報に関連付けられたプリント用フォントデータに含まれる第1プリント用フォントデータが送信される。プロセッサ111は、通信インターフェース116にてこの欠損処理データを受信する。これにより、サーバ装置20から欠損処理データが取得される。
【0040】
ステップS23において、プロセッサ111は、ステップS22においてダウンロードされた欠損処理データを揮発性メモリ112に展開する。例えば第1プリント用フォントデータが揮発性メモリ112に展開される。これにより、第1プリント用フォントデータが揮発性メモリ112に記憶される。
【0041】
ステップS24において、プロセッサ111は、ステップS18において取得された指示に従って、揮発性メモリ112に記憶された処理データを用いて処理を実行する。例えばプリント処理の指示に従って、プロセッサ111は、この指示に含まれる画像データに応じた画像を画像形成部16に形成させる。このとき、画像に含まれる文字については、揮発性メモリ112に記憶された第1プリント用フォントデータを用いて形成される。
【0042】
ステップS25において、プロセッサ111は、揮発性メモリ112に記憶されたダウンロードリストにステップS22においてダウンロードされた欠損処理データの識別情報を追加する。例えば第1プリント用フォントデータの識別情報がダウンロードリストに追加される。
【0043】
ステップS26において、プロセッサ111は、電源が切断されていない場合には(ステップS26の判定がNO)、上述したステップS18に戻り、次の処理の指示が取得されるまで待機する。次の処理の指示が取得されると、上述したステップS18以降の処理が繰り返される。ここで、新たな処理の指示(本発明に係る「他の指示」の一例)について、上述したステップS19においてこの処理に必要な処理データとして第1プリント用フォントデータが特定されたときは、ダウンロードリストを参照することにより第1プリント用フォントデータがダウンロードされていると判定される。そのため、第1プリント用フォントデータは再度ダウンロードされない。また、この場合には、上述したステップS24において実行される処理では、揮発性メモリ112に記憶されている第1プリント用フォントデータが用いられる。一方、利用者が操作部13を用いて電源を切断する操作を行うと、画像処理装置10の電源が切断され(ステップS26の判定がYES)、この処理が終了する。
【0044】
上述した実施形態によれば、起動の際に起動データであるシステムプログラムと処理データの一部である特定のアプリだけがダウンロードされるため、起動データと処理データとを全てダウンロードする場合に比べて、起動の際に取得されるデータ量が減り、その結果、起動に要する時間が短縮される。特に近年、画像処理装置10の機能の増加に伴ってアプリ全体のデータ容量が大きくなる傾向にある。そのため、起動の際に、全てのアプリをダウンロードすると、起動に要する時間が長くなる虞がある。しかし、上述した実施形態によれば、アプリ全体のデータ容量が大きい場合でも、起動に要する時間が長くなることが抑制される。
【0045】
また、上述した実施形態によれば、システムプログラム、アプリ、及びプリント用フォントはサーバ装置20からダウンロードして使用されるため、画像処理装置10にこれらのデータを記憶する不揮発性メモリを設けなくてよい。そのため、不揮発性メモリの数又は容量が減り、制御部11の製造コストが削減される。
【0046】
さらに、処理の実行に用いられるアプリやプリント用フォントがサーバ装置20からダウンロードして使用されるため、これらの処理データが予め画像処理装置10内に記憶されていなくても、処理データを用いて処理を実行することができる。さらに、起動の際に特定のアプリがダウンロードされるため、処理の指示を取得した後に特定のアプリが取得される場合に比べて、特定の処理を迅速に実行することができる。さらに、画像処理装置10の起動中に既にダウンロードされた処理データを用いる処理の他の指示が取得された場合には、揮発性メモリ112に記憶された処理データが用いられるため、既に取得された処理データが再度取得されるのを防ぐことができる。さらに、画像処理装置10の固有情報に関連付けられたシステムプログラム、アプリ、及びプリント用フォントがダウンロードされるため、画像処理装置10に応じた起動データ及び処理データを取得することができる。このとき、画像処理装置10が使用しない不要な起動データや処理データは取得されないため、このようなデータも取得される場合に比べて、取得されるデータ量が減り、その結果、起動又は処理に要する時間が短縮される。
【0047】
3.変形例
上述した実施形態は、本発明の一例である。本発明は、上述した実施形態に限定されない。また、上述した実施形態が以下の例のように変形して実施されてもよい。このとき、以下の2以上の変形例が組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
上述した実施形態において、通信回線30に通信障害が発生した場合にも画像処理装置10を利用できるように、記憶部12が起動や処理に用いられるデータを記憶していてもよい。記憶部12は、本発明に係るメモリの一例である。このとき、記憶部12には、図4に示すデータベース21において「001」という固有情報に関連付けられた全てのデータが記憶されていてもよいし、このデータの一部、例えばシステムプログラムと特定のアプリだけが記憶されていてもよい。或いは、画像処理装置10が通常の動作モードよりも機能が制限された制限モードを有している場合、記憶部12には、制限モード用の起動データと、制限モード用の処理データとが記憶されていてもよい。上述した実施形態において説明した起動データは、通常の動作モードでの画像処理装置10の起動に用いられるものであり、本発明に係る第1起動データの一例である。一方、制限モード用の起動データは、制限モードでの画像処理装置10の起動に用いられるものであり、本発明に係る第2起動データの一例である。制限モード用の起動データには、例えば制限モード用のシステムプログラムが含まれる。また、上述した実施形態において説明した処理データは、通常の動作モードでの処理の実行に用いられるものであり、本発明に係る第1処理データの一例である。一方、制限モード用の処理データは、制限モードでの処理の実行に用いられるものであり、本発明に係る第2処理データの一例である。制限モード用の処理データには、例えば制限モード用のアプリが含まれる。プロセッサ111は、通信回線30を介してサーバ装置20にアクセスできずサーバ装置20と通信が行われない場合には、記憶部12に記憶された制限モード用の起動データ及び制限モード用の処理データを揮発性メモリ112に展開する。この場合、プロセッサ111は、制限モード用の起動データを用いて、制限モードで画像処理装置10を起動する。例えば制限モード用のシステムプログラムを実行することにより、制限モードで画像処理装置10が起動される。この場合、画像処理装置10は、通常の動作モードで起動する場合よりも機能が制限された状態になる。例えば制限モードでは、画像処理装置10の動作に必要最低限の機能以外は無効になっていてもよい。また、プロセッサ111は、制限モード用の処理データを用いて制限モードで処理を実行する。例えば制限モード用のプリントアプリを実行することにより、制限モードでプリント処理が実行される。この場合、通常の動作モードでプリント処理を実行する場合に比べて、制限されたプリント処理が実行される。例えば制限モードでは、プリント処理の色や使用可能なプリントフォントの種類等が通常の動作モードに比べて限定されていてもよい。この変形例によれば、サーバ装置20と通信ができない場合であっても、制限された状態で起動して制限された処理を実行することができる。
【0049】
上述した実施形態において、通信回線30に通信障害が発生した場合にも画像処理装置10を利用できるように、サーバ装置20とは異なる取得先から起動データ及び処理データが取得されてもよい。例えば画像処理装置10に対して他の画像処理装置が通信回線30とは異なる他の通信回線を介して接続されている場合において、他の画像処理装置が起動データ及び処理データを記憶しているときは、プロセッサ111は、他の画像処理装置から起動データ及び処理データを取得してもよい。例えば他の画像処理装置がシステムプログラム、アプリ、プリント用フォントを記憶している場合には、この画像処理装置からこれらのデータがダウンロードされてもよい。この変形例によれば、サーバ装置20と通信ができない場合であっても、起動して処理を実行することができる。
【0050】
上述した実施形態において、特定のアプリは、予め決められていてもよいし、対応する処理の利用頻度に応じて決められてもよい。例えば処理毎に利用頻度を計数し、利用頻度が高い指定数の処理に対応するアプリが特定のアプリとして用いられてもよい。例えばファクシミリ処理の利用頻度が最も高いときは、ファクシミリアプリが特定のアプリに含まれてもよい。この変形例によれば、利用頻度を反映して特定の処理を決定することができる。或いは、利用者により利用する処理が予め設定されている場合には、特定のアプリには設定された処理に対応するアプリが特定のアプリに含まれてもよい。例えばスキャン処理が利用する処理として設定されている場合には、スキャンアプリが特定のアプリに含まれてもよい。
【0051】
上述した実施形態において、通信回線30の通信速度に応じて、起動の際にサーバ装置20から取得するデータを減らしてもよい。この場合、サーバ装置20に格納された起動データ及び処理データには、予め優先順位が付される。例えばシステムプログラムには「1」という最も高い優先順位が付され、アプリには「2」という二番目に高い優先順位が付される。ミニCPU118は、通信回線30の通信速度を取得し、この通信速度が閾値より低い場合には、優先順位が「1」のシステムプログラムだけをサーバ装置20からダウンロードする。この場合、起動の際には、優先順位が「2」のアプリはダウンロードされない。この変形例によれば、通信回線30の通信速度が低い場合に、起動に要する時間が長くなることが抑制される。
【0052】
上述した実施形態において、処理の指示が取得されない期間にサーバ装置20から処理データがダウンロードされてもよい。この場合、プロセッサ111は、処理の指示が取得されない期間において、ダウンロードされていない処理データをサーバ装置20から順番にダウンロードする。このとき、ダウンロードされていない全ての処理データがダウンロードされてもよいし、画像処理装置10が今回起動される前の過去の期間において利用者の利用頻度が閾値以上の処理の実行に用いられる処理データだけがダウンロードされてもよい。或いは、ダウンロードされていない全ての処理データが対応する処理の利用頻度に応じた順番でダウンロードされてもよい。利用者による処理の利用頻度は、例えば画像処理装置10が今回起動される前の過去の期間における利用履歴に基づいて算出される。この利用履歴は、例えばサーバ装置20又は不揮発性メモリ115に記憶され、サーバ装置20又は不揮発性メモリ115から取得される。また、処理の指示が取得されない期間において通信回線30の通信量が閾値以下の場合に限り、処理データがダウンロードされてもよい。この変形例によれば、特定の処理以外の処理についても迅速に実行することができる。
【0053】
上述した実施形態において、処理データには、プロセッサ113が実行するプログラムが含まれていてもよい。このプロセッサ113が実行するプログラムには、例えば画処理を実行させるためのプログラム、画像読取部15を制御するためのプログラム、及び画像形成部16を制御するためのプログラムが含まれる。プロセッサ111は、プロセッサ113が実行するプログラムをダウンロードすると、これらのプログラムを揮発性メモリ112に一旦展開した後、揮発性メモリ112から揮発性メモリ114に展開する。また、プロセッサ111は、プロセッサ113のリセットを解除する。これにより、プロセッサ113の動作が開始される。プロセッサ113は、揮発性メモリ114に記憶されたプログラムを実行することにより、対応する処理を実行する。
【0054】
上述した実施形態において、ダウンロードシステム及び初期化プログラムは、不揮発性メモリ115に代えてミニCPU118のレジスタに記憶されていてもよい。また、上述した実施形態において説明したプロセッサ111、プロセッサ113、及びミニCPU118の処理は例示である。プロセッサ113がプロセッサ111の処理の少なくとも一部を行ってもよいし、プロセッサ111がミニCPU118の処理の少なくとも一部を行ってもよい。さらに、制御部11は、必ずしもプロセッサ111、プロセッサ113、及びミニCPU118を備えていなくてもよい。一つ又は二つのプロセッサがプロセッサ111、プロセッサ113、及びミニCPU118の処理を行ってもよいし、4以上のプロセッサが協働してプロセッサ111、プロセッサ113、及びミニCPU118の処理を行ってもよい。
【0055】
上述した実施形態において、本発明に係る情報処理装置は画像処理装置10に限定されない。情報処理処置は、例えばプリンター、イメージスキャナ、ファクシミリ機、コピー機、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等、プログラムを実行することにより装置を起動し処理を実行する装置であればどのような装置であってもよい。
【0056】
上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0057】
また上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0058】
本発明は、画像処理装置10において実行されるプログラムとして提供されてもよい。画像処理装置10は、本発明に係るコンピュータの一例である。このプログラムは、インターネットなどの通信回線を介してダウンロードされてもよいし、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録した状態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:画像処理システム、10:画像処理装置、11:制御部、12:記憶部、13:操作部、14:表示部、15:画像読取部、16:画像形成部、20:サーバ装置、111:プロセッサ、112:揮発性メモリ、113:プロセッサ、114:揮発性メモリ、115:不揮発性メモリ、116:通信インターフェース、118:ミニCPU
図1
図2
図3
図4
図5