(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/36 20060101AFI20240528BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240528BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60T8/36
B60T13/74 G
B60T13/138 A
(21)【出願番号】P 2020080262
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】大竹 毅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-008107(JP,A)
【文献】国際公開第2019/185890(WO,A1)
【文献】特開平03-005265(JP,A)
【文献】特開平06-064517(JP,A)
【文献】特開平11-165626(JP,A)
【文献】特開2017-074890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/36
B60T 13/74
B60T 13/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電用のパワー端子を有し、回転軸の回転に応じて車輪に付与される制動力を調整可能なモータと、
前記パワー端子の延伸方向に直交するように配置されて前記パワー端子と接続された基板と、
前記基板に対向する位置に設けられたハウジングと、
を備え、
前記モータは、前記パワー端子が前記基板と対向するように、前記ハウジングと前記基板との間に設けられ、且つ前記ハウジングに設置されて
おり、
前記ハウジングには、前記モータが配置される凹部が形成されており、
前記ハウジングに形成され中心軸が前記モータの回転軸と平行になるように前記モータに対して径方向に並んで配置されたシリンダ部と、前記モータにより作動され前記シリンダ部内に設けられるピストンと、を含み、当該ピストンの移動により出力室の容積が増減するように構成された電動シリンダを備える、制動装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記ハウジングにおける前記基板に対向する面である第1表面側に開口し、
前記シリンダ部は、前記ハウジングにおける前記第1表面と反対側の面である第2表面側に開口する、請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記回転軸の回転を減速する減速機構を備え、
前記減速機構と前記モータとの間には、前記ハウジングが配置されている、請求項1
又は2に記載の制動装置。
【請求項4】
前記モータは、ブラシレスモータであって、前記回転軸の軸方向が前記基板に直交するように前記ハウジングに設置されており、
前記回転軸の前記基板側の端部に配置された被検出部材、及び前記基板に配置され前記被検出部材の位置を検出する検出部材を有する回転角センサを備える、請求項1~3の何れか一項に記載の制動装置。
【請求項5】
前記ハウジングに設けられた液圧回
路を備え、
前記液圧回路は、
前
記電動シリンダと、
前記出力室とマスタシリンダとを接続する第1液路と、
前記出力室とホイールシリンダとを接続する第2液路と、
前記第1液路に配置される電磁弁と、
前記第1液路に配置される圧力センサと、
を備える、請求項1~4
の何れか一項に記載の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力により制動力を調整する制動装置は、例えば特許第4355271号に開示されている。この装置は、モータによりポンプを作動させることで、ホイールシリンダの液圧を加減圧する。また、この装置では、モータの制御ユニットとモータとがハウジングを用いて一体化されている。ハウジングには、電磁弁や圧力センサを含む液圧回路が形成されている。ハウジングの一方側にモータが配置され、ハウジングの他方側に基板(ECU基板)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置の構成において、モータと基板とを接続させるためには、ハウジングに貫通孔を形成する必要がある。モータが貫通孔を介して基板に接続されるため、モータに給電するためのモータハーネスは長くなる。モータハーネスが長くなるほど、電力ロスが大きくなり、ノイズも受けやすく、組み付けの作業性も悪くなる。また、モータに回転角センサが設けられている場合、センサハーネスもハウジングの貫通孔を介して基板に接続されるため長くなる。このように、従来の制動装置には、モータと基板との接続ラインの短縮の観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、モータと基板との接続ラインを短くすることができ、且つ組み付け作業性の向上が可能な制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制動装置は、受電用のパワー端子を有し、回転軸の回転に応じて車輪に付与される制動力を調整可能なモータと、前記パワー端子の延伸方向に直交するように配置されて前記パワー端子と接続された基板と、前記基板に対向する位置に設けられたハウジングと、を備え、前記モータは、前記パワー端子が前記基板と対向するように、前記ハウジングと前記基板との間に設けられ、且つ前記ハウジングに設置されており、前記ハウジングには、前記モータが配置される凹部が形成されており、前記ハウジングに形成され中心軸が前記モータの回転軸と平行になるように前記モータに対して径方向に並んで配置されたシリンダ部と、前記モータにより作動され前記シリンダ部内に設けられるピストンと、を含み、当該ピストンの移動により出力室の容積が増減するように構成された電動シリンダを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータが、基板に対向するようにハウジングに設置されている。これにより、ハウジングにハーネス用の貫通孔を形成することなくモータと基板とを接続することができる。つまり、本発明によれば、ハウジングの大きさにかかわらずパワー端子と基板とを接続できるため、モータと基板との接続ラインを短くすることができる。また、パワー端子が貫通孔を介することなく基板に接続され、且つ基板がパワー端子と直交するように配置されるため、接続構成が簡略化される。これにより、組み付け作業性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の制動装置の構成図(模式断面図)である。
【
図3】本実施形態の制動装置の変形例を示す構成図である。
【
図4】本実施形態の制動装置の変形例を示す概念図である。
【
図5】本実施形態の制動装置の変形例を示す概念図である。
【
図6】本実施形態の制動装置の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図である。また、本実施形態及びその変形例において互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0010】
本実施形態の制動装置1は、
図1に示すように、モータ2と、基板3と、ハウジング4と、回転角センサ5と、電動シリンダ6と、を備えている。モータ2は、ブラシレスモータである。モータ2は、回転軸20と、回転軸20を回転させる本体部21と、本体部21と基板3とを接続する受電用のパワー端子22と、を備えている。回転軸20は、モータ2の出力シャフトである。回転軸20の両端部は、本体部21から突出している。なお、本開示のモータ2の設置位置に関する記載において、モータ2の位置は、本体部21の位置を意味する。
【0011】
本体部21は、図示略の巻線、ステータ、ロータ、及びそれらを収容するケースを備えている。パワー端子22は、本体部21に接続された複数の棒状(軸状)の導電体で構成されている。パワー端子22は、受電のために本体部21から突出している部分である。パワー端子22(パワー端子22の基端部すなわち本体部21側の端部)は、基板3に対向している。パワー端子22は、ハウジング4を介さず、本体部21から基板3に向けて突出している。パワー端子22は、基板3に形成された回路に接続されている。電力は、基板3からパワー端子22を介して本体部21に送電される。モータ2は、回転軸20の回転に応じて車輪に付与される制動力を調整可能に構成されている。なお、パワー端子22は、配線部(ハーネス)を介して基板3に接続されてもよい。
【0012】
基板3は、ブレーキECU30(電子制御ユニット)を構成する回路基板(ECU基板)である。基板3には、例えばCPUやメモリ等が配置されている。基板3は、主に、モータ2と、後述する液圧回路9に配置された電子部品とを制御する。基板3は、パワー端子22の延伸方向(軸方向や長手方向ともいえる)に直交するように配置され、パワー端子22に接続されている。
【0013】
モータ2は、回転軸20の軸方向が基板3に直交するようにハウジング4に設置されている。モータ2は、パワー端子22が基板3と対向するように、ハウジング4と基板3との間に設けられ、且つハウジング4に設置されている。以下、説明において、回転軸20の軸方向のうち、本体部21から基板3に向かう方向を「軸方向一方」と称し、その反対方向を「軸方向他方」と称する。モータ2は、回転軸20の軸方向他端部を除いて、ハウジング4の第2表面4bより軸方向一方側に配置されている。
【0014】
ハウジング4は、基板3に対向する位置に設けられている。ハウジング4は、液圧回路9が設けられた金属ブロックである。ハウジング4は、多面体状(例えば直方体状)に形成され、複数の表面を備えている。具体的に、ハウジング4は、基板3に対向する第1表面4aと、第1表面4aの反対側の面(背向する面)である第2表面4bと、2つの表面4a、4bをつなぐ複数の側面4cと、を備えている。第1表面4aはハウジング4の軸方向一端面であり、第2表面4bはハウジング4の軸方向他端面であるといえる。第1表面4a及び基板3は、カバー部材42により覆われている。カバー部材42は凹形状に形成されている。第2表面4bは、蓋部材43により覆われている。
【0015】
モータ2は、第1表面4aに設置されている。第1表面4aには、モータ2が収容される凹部41が形成されている。凹部41は、軸方向一方に開口し軸方向他方に底面を有している。凹部41の底面は、モータ2を介して基板3に対向している。つまり、凹部41の底面は、第1表面4aの一部を構成しているといえる。このように、ハウジング4には凹部41が形成され、モータ2は当該凹部41に配置されている。凹部41の底面には、回転軸20が挿通される貫通孔411が形成されている。モータ2は、例えば弾性部材を介して凹部41に固定されている。
【0016】
回転角センサ5は、回転軸20の基板3側の端部(軸方向一端部)に配置された被検出部材51、及び基板3に配置され被検出部材51の位置を検出する検出部材52を有している。本実施形態の回転角センサ5は、MRセンサ(磁気式角度センサ)である。被検出部材51は、回転軸20の軸方向一端面に固定されている。被検出部材51は、磁石を備えて構成されている。検出部材52は、基板3における被検出部材51に対向する位置に配置されている。検出部材52は、センサ素子を備えて構成されている。回転角センサ5は、基板3同様、カバー部材42と第1表面4aとで区画された基板収容室11(シールされた空間)に配置されている。
【0017】
電動シリンダ6は、シリンダ部61と、ピストン62と、出力室63と、減速機構64と、直動変換部材65と、を備えている。シリンダ部61は、ハウジング4の一部により、軸方向他方に開口し軸方向一方に底面を有する有底円筒状に形成されている。シリンダ部61は、ハウジング4の第2表面4bに形成された凹部により構成されている。
【0018】
ピストン62は、軸方向への移動により制動力を調整する部材である。ピストン62は、シリンダ部61に軸方向に摺動可能に収容されている。シリンダ部61及びピストン62は、モータ2の回転軸20と平行になるように配置されている。換言すると、シリンダ部61及びピストン62の中心軸は、回転軸20と平行である。ピストン62は、軸方向他方に開口し軸方向一方に底面を有する有底円筒状に形成されている。
【0019】
出力室63は、シリンダ部61とピストン62とにより形成(区画)されている。出力室63は、シリンダ部61内に形成されている。出力室63の容積は、ピストン62の移動に応じて増減する。つまり、出力室63の容積は、ピストン62が軸方向一方に移動するほど減少し、ピストン62が軸方向他方に移動するほど増大する。出力室63は、ピストン62の移動に応じて加減圧される。
【0020】
減速機構64は、回転軸20の回転を減速させる機構である。減速機構64は、複数のギヤにより構成されている。減速機構64は、モータ2の回転軸20と直動変換部材65のねじ軸651とを複数のギヤにより接続している。減速機構64は、回転軸20の回転を減速して直動変換部材65に伝達する。回転軸20の軸方向一端部には被検出部材51が固定され、回転軸の軸方向他端部には減速機構64のギヤが固定されている。
【0021】
直動変換部材65は、減速機構64を介して伝わった回転軸20の回転運動を、ピストン62の直線運動(軸方向の運動)に変換する部材である。直動変換部材65は、例えばボールねじ機構であって、ねじ軸651と、ねじ軸651の外周側に配置されたナット652と、ボール(図示略)と、を備えている。ねじ軸651とナット652は、ボールを介して噛み合っている。
【0022】
ねじ軸651は棒状部材であって、その外周面にはボールが転動可能な溝(図示略)が形成されている。回転軸20の回転は、減速機構64を介してねじ軸651に伝達される。したがって、ねじ軸651は、回転軸20の回転に応じて回転する。ナット652の内周面には、ボールが転動可能な溝(図示略)が形成されている。
【0023】
ボールは、ねじ軸651の溝とナット652の溝との間に配置されている。ナット652は、ねじ軸651の回転に応じて軸方向に移動する。ピストン62は、ナット652の軸方向一方側に配置されている。ピストン62は、ナット652の軸方向への移動に応じて軸方向に移動する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ハウジング4には、出力室63とマスタシリンダ7とを接続する第1液路91、及び出力室63とホイールシリンダ8とを接続する第2液路92が形成されている。第1液路91には、マスタカット弁として機能する電磁弁93が配置されている。電磁弁93は、ハウジング4の第1表面4aに形成された凹部に配置され、その一部が第1表面4aから基板3側に突出している。電磁弁93の接続端子は、基板3の回路に接続されている。
【0025】
また、第1液路91(又は第2液路92)には、圧力センサ94が配置されている。圧力センサ94は、出力室63の液圧を検出する。圧力センサ94は、ハウジング4の第1表面4aに形成された凹部に配置され、その一部が第1表面4aから基板3側に突出している。圧力センサ94の接続端子(スプリング状の端子)は、基板3の回路に接続されている。
【0026】
このように、液圧回路9は、ピストン62の移動により出力室63の容積が増減するように構成された電動シリンダ6と、出力室63とマスタシリンダ7とを接続する第1液路91と、出力室63とホイールシリンダ8とを接続する第2液路92と、第1液路91に配置される電磁弁93及び圧力センサ94と、を備えている。なお、図面の表示上、第2液路92は、ピストン62に接近して表示されているが、出力室63の軸方向一端部に接続されている。
【0027】
図2に示すように、本例では、ハウジング4に2つの液圧回路9が設けられている。各液圧回路9は、マスタシリンダ7とホイールシリンダ8との間に配置されている。マスタシリンダ7は、タンデム型のマスタシリンダであって、ブレーキ操作部材Zの操作に応じて移動する2つのピストン71を備えている。各ピストン71は、付勢部材により初期位置に向けて付勢されている。マスタシリンダ7の内部には、2つのピストン71で区画された2つのマスタ室72が形成されている。マスタ室72の容積は、ピストン71の移動に応じて増減する。マスタシリンダ7は、2つのマスタ室72が同圧となるように構成されている。
【0028】
各マスタ室72には、ブレーキ液を貯留するリザーバ73が接続されている。マスタ室72とリザーバ73との連通状態は、ピストン71が初期位置から所定量移動することで遮断される。また、一方のマスタ室72(ブレーキ操作部材Zから遠い方のマスタ室72)には、ストロークシミュレータ74が接続されている。また、マスタ室72とストロークシミュレータ74との間にはシミュレータカット弁75が配置されている。ストロークシミュレータ74は、ブレーキ操作に対して反力(反力圧)を発生させる装置である。シミュレータカット弁75は、ノーマルクローズ型の電磁弁であって、通常制御時(正常時)には開いている。
【0029】
マスタシリンダ7(マスタ室72)は、液路76を介して液圧回路9の第1液路91に接続されている。一方の液路76には、マスタ室72の液圧を検出する圧力センサ77が接続されている。なお、液路76、圧力センサ77、及び/又はマスタシリンダ7は、液圧回路9同様、ハウジング4に設けられてもよい。
【0030】
ホイールシリンダ8は、液圧回路9の第2液路92に接続されている。ホイールシリンダ8の液圧が増大するほど、車輪に付与される制動力は増大する。一方のホイールシリンダ8は例えば右前輪に設けられ、他方のホイールシリンダ8は例えば左前輪に設けられている。この場合、制動装置1は、前輪に液圧制動力を付与する。なお、制動装置1は、後輪又は前後輪に接続されてもよい。
【0031】
通常制御時、電磁弁93は閉じられ、シミュレータカット弁75は開けられている。ブレーキ操作部材Zが操作されると、ブレーキECU30は、ストロークセンサ78及び圧力センサ77の検出値に基づいて目標ホイール圧を設定する。ブレーキECU30は、目標ホイール圧及び圧力センサ94の検出値に基づいて、モータ2を制御し、電動シリンダ6を制御する。
【0032】
電動シリンダ6のピストン62が軸方向一方に移動すると、出力室63の容積が減少し、第2液路92を介して出力室63からホイールシリンダ8にブレーキ液が供給される。つまり、出力室63及びホイールシリンダ8が加圧される。ピストン62が軸方向他方に移動すると、出力室63の容積が増大し、出力室63及びホイールシリンダ8が減圧される。なお、例えば電源失陥などの異常時には、ノーマルオープン型の電磁弁である電磁弁93が開かれ、ノーマルクローズ型の電磁弁であるシミュレータカット弁75が閉じられる。これにより、ブレーキ操作部材Zの操作に応じて、マスタシリンダ7からホイールシリンダ8にブレーキ液が供給される。
【0033】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、モータ2が、基板3に対向するようにハウジング4に設置されている。これにより、ハウジング4にハーネス用の貫通孔を形成することなく、モータ2と基板3とを接続することができる。つまり、本実施形態によれば、ハウジング4の大きさにかかわらずパワー端子22と基板3とを接続できるため、モータ2と基板3との接続ラインを短くすることができる。また、パワー端子22が貫通孔を介することなく基板3に接続され、且つ基板3がパワー端子22と直交するように配置されるため、接続構成が簡略化される。これにより、組み付け作業性の向上が可能となる。
【0034】
また、モータ2がハウジング4に形成された凹部41に配置されているため、制動装置1の小型化及びモータ2の放熱性の向上が可能となる。モータ2の本体部21の周囲を金属製のハウジング4が囲むことで、本体部21の放熱が促される。
【0035】
また、回転角センサ5の被検出部材51が回転軸20の軸方向一端部に固定され、検出部材52が基板3に固定されている。これにより、モータ2の回転角(回転位置)を精度良く検出することができる。また、センサ用ハーネスが不要となり、ハウジング4にハーネス用の貫通孔を設ける必要もない。つまり、構成の簡略化、レイアウトの自由度向上、及び組み付け作業性の向上が可能となる。
【0036】
また、電動シリンダ6のピストン62がモータ2の回転軸20と平行に配置されることで、制動装置1の小型化が可能となる。また、液圧回路9が少ない装置(電動シリンダ6、電磁弁93、及び圧力センサ94)で構成されているため、ハウジング4の大型化が抑制される。
【0037】
また、電磁弁93は、ハウジング4のうちモータ2が配置される面と同一の面(すなわち第1表面4a)に配置されている。これにより、両者を別々の面に配置する場合と比べて制動装置1の小型化設計が容易となる。また、圧力センサ94も、モータ2の配置面と同一の面に配置されている。これによっても制動装置1の小型化が可能となる。
【0038】
また、圧力センサ94は、モータ2から離れて配置されている。本例では、ハウジング4において、モータ2と圧力センサ94との間に電動シリンダ6が配置されており、その分両者が離間している。これにより、モータ2の駆動により生じるノイズの圧力センサ94への影響を抑制することができる。本例では、電磁弁93もモータ2から離間して配置されている。なお、圧力センサ94にシールドが設けられてもよい。
【0039】
また、ハウジング4の第1表面4aは、ハウジング4に固定されたカバー部材42で覆われている。したがって、第1表面4a側に配置された基板3、モータ2、電磁弁93、及び圧力センサ94は、カバー部材42により覆われている。これにより、1つのカバー部材(シール性が高い部材)により、モータ2、基板3、及び電子部品を保護することができる。
【0040】
本実施形態では、
図2に示すように1つのホイールシリンダ8に対して1つのモータ2が割り当てられている。
図2の液圧回路9では、モータ2の小型化および電磁弁数の低減が可能となる。このため、本実施形態の構成を適用することで制動装置を効果的に小型化できる。
【0041】
本実施形態では、減速機構64とモータ2(本体部21)との間にハウジング4が配置されている。
図1に示すように、減速機構64は、基板収容室11(ハウジング4とカバー部材42により囲われた空間)ではなく、ハウジング4と蓋部材43により囲われた背面室12に配置されている。モータ2と減速機構64とがハウジング4を挟んで対向配置されている。これにより、減速機構64に塗られた潤滑材、減速機構64が作動することによって生じる摩耗粒子、又は出力室63から漏れだすブレーキ液が、基板3に付着するおそれがなく、またこれらから基板3を保護する機構を別途設ける必要がない。モータ2と減速機構64との間には、基板収容室11と背面室12とを区画するハウジング4が配置されているといえる。
【0042】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、
図3に示すように、制動装置1は、液圧の力ではなくピストン620の移動による直接的な押圧力により、ブレーキパッド101がディスクロータ102に押し当てられる構成であってもよい。この構成であっても、モータ2は、ハウジング4の第1表面4aの凹部41に配置されている。
【0043】
図3の例では、ピストン620が減速機構64及び直動変換部材65を介して回転軸20と同軸に連結されている。つまり、回転軸20の軸方向他方にピストン620が配置されている。回転軸20の回転に応じてピストン620が軸方向に移動する。ピストン620の軸方向他方への移動により、ピストン620がキャリパ100の一方のブレーキパッド101に当接して押圧する。キャリパ100の構成により、2つのブレーキパッド101がディスクロータ102を挟み込み、車輪に摩擦による制動力が付与される。このように、ピストンは、電動シリンダ6を構成するものに限らず、移動により制動力を調整するように構成されればよい。また、小型化又はレイアウトの自由度の観点で、ピストンは、回転軸20と平行又は同軸に配置されることが好ましい。
【0044】
また、
図4に示すように、第1表面4aに凹部41がなく、モータ2の本体部21が第1表面4a上に配置されてもよい。また、
図5に示すように、モータ2の本体部21全体が凹部41内に配置されてもよい。凹部41には、本体部21の少なくとも一部が収容されているといえる。また、
図6に示すように、本体部21全体が凹部41内に配置され、且つ凹部41が蓋部材43により覆われてもよい。蓋部材43は、例えば、弾性部材(例えばOリング)を介して本体部21を軸方向他方に押圧するように、凹部41に圧入固定されてもよい。これにより、モータ2のガタツキが抑制される。
【0045】
また、回転角センサ5は、MRセンサに限らず、例えば光学式のエンコーダやレゾルバ等でもよい。また、被検出部材51及び検出部材52の配置も上記実施形態に限られない。例えば検出部材52が回転軸20の外周側に配置されてもよい。また、減速機構64はなくてもよい。また、直動変換部材65はボールねじを用いない構成(例えば電動パーキングブレーキで用いられる構成)であってもよい。また、モータ2は、ブラシレスモータでなくてもよい。また、本開示における「直交」には製造誤差や公差によりズレが生じた状態も含まれる(例えば85~95度)。本開示における「平行」も同様である。
【符号の説明】
【0046】
1…制動装置、2…モータ、20…回転軸、22…パワー端子、3…基板、4…ハウジング、41…凹部、5…回転角センサ、51…被検出部材、52…検出部材、6…電動シリンダ、62、620…ピストン、63…出力室、64…減速機構、65…直動変換部材、7…マスタシリンダ、8…ホイールシリンダ、9…液圧回路、91…第1液路、92…第2液路、93…電磁弁、94…圧力センサ。