(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】車両の周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240528BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20240528BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240528BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240528BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240528BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240528BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20240528BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240528BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240528BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G08G5/00 A
G08G1/00 D
H04N7/18 J
G08B21/02
G08B21/00 U
G08B25/00 510M
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64D47/08
B64D45/00 A
(21)【出願番号】P 2020087631
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
(72)【発明者】
【氏名】安竹 昭
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-053821(JP,A)
【文献】特開2014-164538(JP,A)
【文献】特開2017-182511(JP,A)
【文献】特開2016-138853(JP,A)
【文献】特開2017-013653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08G 5/00
G08G 1/00-99/00
G08B 19/00-21/24
G08B 23/00-31/00
B64C 13/18
B64C 39/02
B64D 47/08
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、
前記車両へ乗車する乗員の位置情報に基づいて、前記乗員の前記車両への接近を検出する接近検出部と、
前記飛行体を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記接近検出部が前記車両への前記乗員の接近を検出した場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の周辺を撮影し、前記撮影部が撮影した画像を前記乗員が携帯する表示部を有する携帯端末に送信するよう制御
し、
前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記車両の周辺に存在する不審者を検出する画像解析部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像解析部が前記不審者を検出した場合、不審者検出情報を前記携帯端末に送信するよう制御し、
前記飛行体は、所定の警報動作を行う警報手段をさらに有し、
前記制御部はさらに、前記画像解析部が前記不審者を検出したことを条件として、前記警報手段が前記不審者に対する警報動作を実行するよう制御する、車両の周辺監視システム。
【請求項2】
車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、
前記車両へ乗車する乗員の位置情報に基づいて、前記乗員の前記車両への接近を検出する接近検出部と、
前記飛行体を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記接近検出部が前記車両への前記乗員の接近を検出した場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の周辺を撮影し、前記撮影部が撮影した画像を前記乗員が携帯する表示部を有する携帯端末に送信するよう制御し、
前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記車両の周辺に存在する不審者を検出する画像解析部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像解析部が前記不審者を検出した場合、不審者検出情報を前記携帯端末に送信するよう制御し、
前記飛行体は、所定の警報動作を行う警報手段をさらに有し、
前記制御部はさらに、警報動作の実行命令を前記携帯端末から受信したことを条件として、前記警報手段が前記不審者に対する警報動作を実行するよう制御する、車両の周辺監視システム。
【請求項3】
前記車両に接近する前記乗員の視界において前記車両又は周辺障害物に基づき死角となっている領域が、前記撮影部による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する飛行経路作成部をさらに備え、
前記制御部は、前記飛行経路作成部が作成した前記飛行経路で前記飛行体が飛行するよう制御する、請求項
1又は2に記載の車両の周辺監視システム。
【請求項4】
前記飛行経路作成部は、前記車両の床下領域が前記撮影部による撮影範囲にさらに含まれるような前記飛行経路を作成する、請求項
3に記載の車両の周辺監視システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両に前記乗員が乗車したことを検知した場合に前記飛行体を前記車両に帰艦させる、請求項
1~
4のいずれか一つに記載の車両の周辺監視システム。
【請求項6】
前記飛行体はケーブルに接続されており、
前記ケーブルを巻き取る巻き取り装置をさらに備え、
前記制御部は、前記飛行体を前記車両に帰艦させる際に、前記巻き取り装置に前記ケーブルを巻き取らせる、請求項
5に記載の車両の周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カメラを備えた飛行体を車両に搭載し、車内のナビゲーション装置からの制御により車両上空で飛行体を飛行させることによって撮影画像を取得し、その撮影画像の解析結果に基づいて車両の走行支援等を行うナビゲーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗員が運転を開始するために駐車中の車両に接近してきた時に、強盗犯等の不審者に乗員が襲われる可能性がある。乗員が目視によって警戒しながら車両に接近したとしても、不審者が車両又は周辺構造物の死角等に潜んでいた場合には、乗員が目視によってその不審者を発見することは困難である。従って、乗員が駐車中の車両に接近する時に、車両周辺の安全を確実に確認できる手段の実現が望まれる。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたナビゲーションシステムによると、飛行体のカメラによる撮影画像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両に接近してきた時の安全確認に活用することは、何ら考えられていない。上記特許文献1に開示されたナビゲーションシステムによると、ユーザが車内のナビゲーション装置を操作することによって飛行体を制御するため、ユーザが車両に乗車する前には飛行体を飛行させることはできない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、飛行体の撮影部による撮影画像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両に接近してきた時の安全確認に活用することが可能な、車両の周辺監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両の周辺監視システムは、車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、前記車両へ乗車する乗員の位置情報に基づいて、前記乗員の前記車両への接近を検出する接近検出部と、前記飛行体を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記接近検出部が前記車両への前記乗員の接近を検出した場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の周辺を撮影し、前記撮影部が撮影した画像を前記乗員が携帯する表示部を有する携帯端末に送信するよう制御し、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記車両の周辺に存在する不審者を検出する画像解析部をさらに備え、前記制御部は、前記画像解析部が前記不審者を検出した場合、不審者検出情報を前記携帯端末に送信するよう制御し、前記飛行体は、所定の警報動作を行う警報手段をさらに有し、前記制御部はさらに、前記画像解析部が前記不審者を検出したことを条件として、前記警報手段が前記不審者に対する警報動作を実行するよう制御することを特徴とするものである。
【0008】
この態様によれば、制御部は、接近検出部が車両への乗員の接近を検出した場合に、飛行体が車両から離陸し、撮影部が車両の周辺を撮影し、撮影部が撮影した画像を乗員が携帯する携帯端末に送信するよう、飛行体を制御する。従って、乗車前に乗員が手動による操作入力を行うことなく、車両の周辺(予め設定された所定範囲、例えば、車両を中心とする半径5~10メートル程度の範囲)の画像が携帯端末の表示部に自動的に表示される。その結果、飛行体の撮影部による撮影画像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両に接近してきた時の安全確認に活用することが可能となる。
【0010】
また、この態様によれば、制御部は、画像解析部が不審者を検出した場合、不審者検出情報を携帯端末に送信するよう制御する。これにより、車両に接近してきた乗員に対して注意喚起を行うことができる。
【0012】
また、この態様によれば、画像解析部が不審者を検出した場合に、飛行体の警報手段が不審者に対して警報動作を実行するため、不審者を退散させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る車両の周辺監視システムは、車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、前記車両へ乗車する乗員の位置情報に基づいて、前記乗員の前記車両への接近を検出する接近検出部と、前記飛行体を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記接近検出部が前記車両への前記乗員の接近を検出した場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の周辺を撮影し、前記撮影部が撮影した画像を前記乗員が携帯する表示部を有する携帯端末に送信するよう制御し、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記車両の周辺に存在する不審者を検出する画像解析部をさらに備え、前記制御部は、前記画像解析部が前記不審者を検出した場合、不審者検出情報を前記携帯端末に送信するよう制御し、前記飛行体は、所定の警報動作を行う警報手段をさらに有し、前記制御部はさらに、警報動作の実行命令を前記携帯端末から受信したことを条件として、前記警報手段が前記不審者に対する警報動作を実行するよう制御することを特徴とするものである。
【0014】
この態様によれば、制御部は、接近検出部が車両への乗員の接近を検出した場合に、飛行体が車両から離陸し、撮影部が車両の周辺を撮影し、撮影部が撮影した画像を乗員が携帯する携帯端末に送信するよう、飛行体を制御する。従って、乗車前に乗員が手動による操作入力を行うことなく、車両の周辺(予め設定された所定範囲、例えば、車両を中心とする半径5~10メートル程度の範囲)の画像が携帯端末の表示部に自動的に表示される。その結果、飛行体の撮影部による撮影画像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両に接近してきた時の安全確認に活用することが可能となる。
また、この態様によれば、制御部は、画像解析部が不審者を検出した場合、不審者検出情報を携帯端末に送信するよう制御する。これにより、車両に接近してきた乗員に対して注意喚起を行うことができる。
また、この態様によれば、乗員が携帯端末から警報動作の実行命令を入力した場合に、飛行体の警報手段が不審者に対して警報動作を実行するため、不審者を退散させることができる。
【0015】
上記態様において、前記車両に接近する前記乗員の視界において前記車両又は周辺障害物に基づき死角となっている領域が、前記撮影部による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する飛行経路作成部をさらに備え、前記制御部は、前記飛行経路作成部が作成した前記飛行経路で前記飛行体が飛行するよう制御することが望ましい。
【0016】
この態様によれば、飛行経路作成部は、乗員の車両への接近方向に応じて生じる乗員の視界からの死角が撮影部による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する。従って、画像解析部によって、死角に潜む不審者を確実に検出することができる。
【0017】
上記態様において、前記飛行経路作成部は、前記車両の床下領域が前記撮影部による撮影範囲にさらに含まれるような前記飛行経路を作成することが望ましい。
【0018】
この態様によれば、飛行経路作成部は、車両の床下領域が撮影部による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する。従って、画像解析部によって、車両の床下領域に潜む不審者を確実に検出することができる。
【0019】
上記態様において、前記制御部は、前記車両に前記乗員が乗車したことを検知した場合に前記飛行体を前記車両に帰艦させることが望ましい。
【0020】
この態様によれば、制御部は、車両に乗員が乗車したことを検知した場合に飛行体を車両に帰艦させる。従って、車両の走行開始前に飛行体を帰艦させることができるため、走行開始後に飛行体が周辺の障害物等に接触する事態を予め回避できる。
【0021】
上記態様において、前記飛行体はケーブルに接続されており、前記ケーブルを巻き取る巻き取り装置をさらに備え、前記制御部は、前記飛行体を前記車両に帰艦させる際に、前記巻き取り装置に前記ケーブルを巻き取らせることが望ましい。
【0022】
この態様によれば、制御部は、飛行体を車両に帰艦させる際に、巻き取り装置にケーブルを巻き取らせる。これにより、飛行体を迅速に回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、飛行体の撮影部による撮影画像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両に接近してきた時の安全確認に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両周辺監視システムの適用例を示す図である。
【
図5】飛行体制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】車両の制御部による飛行体の制御フローを示すフローチャートである。
【
図10】飛行体の撮影部が、ブロック塀の陰に潜む不審者を撮影している状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両周辺監視システムの適用例を示す図である。車両1には、車両1の車外を飛行可能な飛行体2が搭載されている。車両1の所定箇所(この例ではリアウインドウ上)には、飛行体2の発着台3が配置されている。発着台3は、飛行体2が離着陸を行うための水平な発着面を有する。発着面の下方には、巻き取りリール19(
図1には表れない)が配置されている。巻き取りリール19は、給電用のケーブルであるテザー4が巻装された回転軸(図略)を有している。発着面の略中央部には貫通孔が設けられており、巻き取りリール19の回転軸に巻装されたテザー4は、この貫通孔内を挿通して発着面の上方に引き出され、飛行体2に接続されている。
【0027】
図2は、飛行体2の外観を模式的に示す図である。飛行体2は、いわゆるクワッドコプター型のドローンとして構成されている。飛行体2は、本体部111と、本体部111の前面に配置されたカメラ112と、本体部111の四隅に配置されたプロペラ113と、本体部111の左右両面から垂直に延在するシャフト114と、本体部111を内包する網目球体状の緩衝部材115とを備えている。本体部111と緩衝部材115とは、シャフト114によって互いに固定されている。本体部111の底面にテザー4が接続されている。
【0028】
図3は、飛行体2の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように飛行体2は、通信部21、撮影部22、駆動部23、位置検出部24、姿勢検出部25、照明部26、及びスピーカ27を有している。また、飛行体2は、これら各処理部の動作を制御することによって飛行体2の全体の制御を司る制御部20を有している。さらに、飛行体2は、これら各処理部及び制御部20に駆動電力を供給する電力供給部29を有している。電力供給部29は、テザー4に接続されている。飛行体2の駆動電力を、テザー4を介して車両1側から供給することにより、飛行体2へのバッテリの搭載を省略でき、その結果、飛行体2の軽量化が図られている。飛行体2の総重量は、重量に基づく飛行規制の対象となる制限重量(例えば200グラム)未満である。
【0029】
通信部21は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、後述する車両1側の通信部122との間で双方向にデータ通信を行う。但し、テザー4内にデータ通信線を追加することにより、通信部21と通信部122とが当該データ通信線を介して有線通信を行う構成としても良い。
【0030】
撮影部22は、
図2に示したカメラ112を含む。撮影部22によって撮影される画像には、静止画像(写真)及び動画像(映像)の双方が含まれる。以下の説明では、撮影部22によって映像が撮影される場合を例にとる。撮影部22は、カメラ112によって撮影された映像の映像データを、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録するとともに、リアルタイムで出力する。なお、映像データの記録は車両1側で行っても良い。
【0031】
駆動部23は、
図2に示したプロペラ113のプロペラシャフトを回転駆動するためのモータを含む。駆動部23は、4つのプロペラ113の回転方向及び回転速度を個別に制御する。これにより、飛行体2は、前進、後進、上昇、降下、旋回、及びホバリング等の任意の飛行動作を行うことができる。
【0032】
位置検出部24は、GPS受信機及び高度センサ等を含み、飛行体2の位置をリアルタイムに検出することにより、その検出された位置を示す位置データを出力する。
【0033】
姿勢検出部25は、加速度センサ、ジャイロセンサ、及び方位センサ等を含み、飛行体2の姿勢をリアルタイムに検出することにより、その検出された姿勢を示す姿勢データを出力する。
【0034】
照明部26は、警報手段として機能し、飛行体2の本体部111の前面を含む1以上の面に配置されたLED等の任意の照明装置を含む。
【0035】
スピーカ27は、警報手段として機能し、飛行体2の本体部111の所定箇所に配置されており、予め準備された音声データを再生することにより、所定の警報メッセージ又は警報音を出力することができる。
【0036】
制御部20は、撮影部22から出力された映像データ、位置検出部24から出力された位置データ、及び姿勢検出部25から出力された姿勢データを、リアルタイムで通信部21から車両1に送信する。
【0037】
図4は、車両1の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように車両1は、バッテリ制御部11、飛行体制御部12、警報制御部13、車両情報検出部14、通信部15、及び接近検出部51を有している。また、車両1は、これら各処理部の動作を制御することによって車両1の全体の制御を司る制御部10を有している。さらに、車両1は、これら各処理部及び制御部10に駆動電力を供給するバッテリ18を有している。テザー4は、バッテリ18に接続されている。また、車両1は、巻き取りリール19を有している。巻き取りリール19の駆動電力は、バッテリ18から供給される。巻き取りリール19は、テザー4が巻装された回転軸(図略)と、当該回転軸を回転駆動するためのモータ(図略)とを有している。巻き取りリール19は、飛行体2の飛行状況に応じた適正量のテザー4が回転軸から繰り出されるように、モータによる回転軸の駆動によってテザー4の送出及び回収を制御する。
【0038】
バッテリ制御部11は、バッテリ18の充放電動作を制御する。また、バッテリ制御部11は、バッテリ18からテザー4への電力供給の開始及び停止を制御する。
【0039】
飛行体制御部12は、飛行体2の飛行を制御する。飛行体制御部12の詳細については後述する。
【0040】
警報制御部13は、車両1の照明装置(ヘッドライト、テールライト、ルームライト、及びハザードランプ等)の点灯又は消灯を制御する照明コントローラを含む。また、警報制御部13は、車両1のホーンの吹鳴を制御するホーンコントローラを含む。
【0041】
車両情報検出部14は、車両1の各種情報を検出する。車両情報検出部14の詳細については後述する。
【0042】
通信部15は、予め登録されたユーザの携帯端末50との間で、Bluetooth(登録商標)、無線LAN、又は公衆電話回線網等の任意の無線通信方式によって、双方向にデータ通信を行う。携帯端末50は、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、又はスマートキー等であり、表示部(LCD又は有機EL等)及び位置検出部(GPS受信機等)を有する。なお、表示部と位置検出部とが別端末に実装されていても良い。
【0043】
接近検出部51は、車両1の位置情報と携帯端末50の位置情報とに基づいて、携帯端末50を携帯したユーザの、車両1への接近及びその接近方向を検出する。接近検出部51は、車両1の位置情報を車両情報検出部14のGPS受信機148(
図8)から取得し、携帯端末50の位置情報を携帯端末50から通信部15を介して取得する。接近検出部51は、車両1の位置に対する携帯端末50の位置の時系列変化を観測することにより、車両1への携帯端末50の接近及びその接近方向を検出する。接近検出部51は、車両1と携帯端末50との間の距離が所定値(例えば20m)未満となった場合に、携帯端末50を携帯したユーザが車両1に接近したことを検出する。
【0044】
図5は、飛行体制御部12の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように飛行体制御部12は、通信部122、飛行経路作成部123、操縦信号生成部124、撮影信号生成部125、リール制御部126、警報信号生成部127、及び映像解析部128を有している。また、飛行体制御部12は、これら各処理部の動作を制御する制御部121を有している。
【0045】
通信部122は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、上述した飛行体2側の通信部21との間で双方向にデータ通信を行う。通信部122は、飛行体2側の通信部21から送信された映像データ、位置データ、及び姿勢データを受信する。
【0046】
操縦信号生成部124は、飛行経路作成部123が作成した飛行経路に沿って飛行体2を飛行させるための操縦信号を、通信部122が受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて生成する。
【0047】
撮影信号生成部125は、飛行体2の飛行状況に応じて、飛行体2の撮影部22に対して撮影を開始させるための撮影開始信号、及び、撮影を停止させるための撮影停止信号を生成する。
【0048】
リール制御部126は、巻き取りリール19を制御する。具体的にリール制御部126は、飛行体2の飛行状況に応じた適正量のテザー4が巻き取りリール19の回転軸から繰り出されるように、モータによる回転軸の駆動によってテザー4の送出及び回収を制御する。
【0049】
警報信号生成部127は、飛行体2の照明部26に所定の警報照明の照射(例えば高輝度フラッシュ光の連続照射)を実行させ、かつ、飛行体2のスピーカ27に所定の警報音の出力(例えば大音量アラーム又は撮影音の連続出力)を実行させるための警報信号を生成する。但し、警報動作は、警報照明の照射及び警報音の出力の一方でも良い。
【0050】
映像解析部128は、飛行体2の撮影部22によって撮影された車両周辺の映像を、通信部122を介して取得する。また、映像解析部128は、携帯端末50を携帯したユーザの車両1への接近方向を、接近検出部51から取得する。映像解析部128は、飛行体2の離陸直後に撮影された車両周辺の映像を解析することにより、ユーザの車両1への接近方向に応じて生じるユーザの視界からの死角領域を特定する。つまり、車両1に接近する乗員の視界において車両1又は周辺障害物に基づき死角となっている領域を特定する。映像解析部128は、例えば、ユーザの車両1への接近方向に対して、車両1の車体の陰となる領域、及び、車両1の周辺のブロック塀又は駐車車両等の視界遮蔽物の陰となる領域を、死角領域として特定する。
【0051】
また、映像解析部128は、飛行体2の撮影部22によって撮影された映像内に不審者が含まれている場合に、その不審者を検出する。映像解析部128は、例えば、撮影映像内に含まれている全ての人物をパターンマッチング等によって特定し、上記で特定した死角領域内で一定時間以上連続して静止している人物が存在する場合に、その人物を不審者として検出する。なお、映像解析部128は、上記の例に限らず、任意の不審者検出アルゴリズムを使用することができる。例えば、人物の表情に基づいて精神状態を推定し、攻撃的な精神状態の人物を不審者として検出しても良い。
【0052】
飛行経路作成部123は、上記の死角領域を特定するために車両の周辺(予め設定された所定範囲、例えば、車両1を中心とする半径5~10メートル程度の範囲)の映像を取得する離陸直後の段階においては、所定の規定経路を飛行経路として作成する。規定経路は、例えば、車両1の上空を飛行体2に旋回飛行させる規定経路(
図6)、又は、車両1の右後方から左前方に向かって車両1の上空を斜行(高度変化を伴っても良い)しながら横断する斜行横断経路(
図7)等である。また、飛行経路作成部123は、死角領域が特定された後の段階においては、例えば、特定された全ての死角領域を順に撮影するために飛行体2を移動飛行させる最短経路を、予定飛行経路として作成する。また、飛行経路作成部123は、車両1の床下領域(フロアパネル底面と地面との隙間の領域)を撮影するために飛行体2を移動飛行させる経路を、予定飛行経路に含めても良い。
【0053】
制御部121は、操縦信号生成部124によって生成された操縦信号、撮影信号生成部125によって生成された撮影開始信号及び撮影停止信号、並びに警報信号生成部127によって生成された警報信号を、リアルタイムで通信部122から飛行体2に送信する。
【0054】
図8は、車両情報検出部14の機能構成を示す図である。
図8に示すように車両情報検出部14は、ドアロックセンサ141、ドア開閉センサ142、シートセンサ143、始動検知センサ144、車内侵入検知センサ146、及びGPS受信機148を含む。
【0055】
ドアロックセンサ141は、車両1のドアの施錠状態/解錠状態を検出する。ドア開閉センサ142は、車両1のドアの開状態/閉状態を検出する。シートセンサ143は、車両1のシートへの人員の着座状態を検出する。始動検知センサ144は、イグニッションセンサにより、又は、バッテリと走行モータとを接続するリレースイッチのオン/オフ状態を検出することにより、車両1の駆動力発生装置(エンジン又は走行モータ等)の始動状態/停止状態を検出する。車内侵入検知センサ146は、駐車中の車両1の車内を監視エリアとして、その監視エリア内における侵入者の有無を検知する。GPS受信機148は、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて車両1の現在地を特定し、その現在地を示す位置情報を出力する。
【0056】
図9は、車両1の制御部10による飛行体2の制御フローを示すフローチャートである。まずステップSP11において制御部10は、駐車中の車両1に携帯端末50を携帯したユーザが接近したことを接近検出部51が検出したか否かを判定する。具体的に、制御部10は、始動検知センサ144が車両1の駆動力発生装置が停止状態であることを検出し、車内侵入検知センサ146が車両1の車内が無人であることを検出し、かつ、ドアロックセンサ141が車両1の全ドアが施錠状態であることを検出したことにより、車両1が駐車中であることを検出する。接近検出部51は、車両1が駐車中の状態で、車両1の位置情報を車両情報検出部14のGPS受信機148から取得し、携帯端末50の位置情報を携帯端末50から通信部15を介して取得する。接近検出部51は、車両1の位置に対する携帯端末50の位置の時系列変化を観測することにより、車両1への携帯端末50の接近及びその接近方向を検出する。
【0057】
接近検出部51が車両1への携帯端末50の接近を検出しない場合(ステップSP11:NO)は、制御部10はステップSP11の処理を繰り返し実行する。
【0058】
接近検出部51が車両1への携帯端末50の接近を検出した場合(ステップSP11:YES)は、次にステップSP12において制御部10は、飛行体制御部12に飛行体2の離陸制御を実行させる。具体的には
図3~5を参照して、まずバッテリ制御部11は、バッテリ18からテザー4を介して飛行体2への電力供給を開始する。次に操縦信号生成部124は、飛行経路作成部123によって作成された上記規定経路の飛行経路に沿って飛行体2を飛行させるための操縦信号を生成する。また、撮影信号生成部125は、飛行体2の撮影部22に対して撮影を開始させるための撮影開始信号を生成する。次に通信部122は、その操縦信号及び撮影開始信号を飛行体2に送信する。次に飛行体2側の通信部21は、車両1側の通信部122から送信された操縦信号及び撮影開始信号を受信する。次に駆動部23は、その操縦信号に基づいてプロペラ113を駆動することにより、上記規定経路に沿って飛行体2を飛行させるための制御を開始する。これにより、発着台3から飛行体2が離陸する。また、撮影部22はカメラ112による撮影を開始し、位置検出部24は飛行体2の位置検出を開始し、姿勢検出部25は飛行体2の姿勢検出を開始する。制御部20は、撮影部22から出力された映像データ、位置検出部24から出力された位置データ、及び姿勢検出部25から出力された姿勢データを、リアルタイムで通信部21から車両1に送信する。制御部10は飛行体2から受信した映像データを通信部15に転送し、通信部15はその映像データを携帯端末50に送信する。これにより、カメラ112によって撮影された映像が携帯端末50の表示部に表示される。なお、撮影部22から出力された映像データは、車両1を介さずに、飛行体2から携帯端末50に直接送信されても良い(以下同様)。
【0059】
次にステップSP13において制御部10は、飛行体制御部12に飛行体2の飛行制御及び撮影制御を継続させる。操縦信号生成部124は、通信部122が通信部21から受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて、上記規定経路に沿って飛行体2を飛行させるための操縦信号を生成する。上記と同様に、この操縦信号が飛行体2に送信されることによって、飛行体2の飛行が制御される。また、制御部121は、通信部122が通信部21から受信した映像データを映像解析部128に転送する。映像解析部128は、カメラ112によって撮影された車両周辺の映像を解析することにより、ユーザの車両1への接近方向に応じて生じるユーザの視界からの死角領域を特定する。次に飛行経路作成部123は、特定された全ての死角領域を順に撮影するために飛行体2を移動飛行させる最短経路を、予定飛行経路として作成する。ここで、飛行経路作成部123は、車両1の床下領域を撮影するために飛行体2を移動飛行させる経路を、予定飛行経路に含めても良い。次に操縦信号生成部124は、通信部122が通信部21から受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて、当該予定飛行経路に沿って飛行体2を飛行させるための操縦信号を生成する。上記と同様に、この操縦信号が飛行体2に送信されることによって、飛行体2の飛行が制御される。また、制御部10は、飛行体2から受信した映像データを通信部15から携帯端末50に送信する。これにより、カメラ112によって撮影された映像が携帯端末50の表示部に表示される。
【0060】
図10は、飛行体2の撮影部22が、ブロック塀300の陰に潜む不審者400を撮影している状況を示す図である。これにより、乗員200の視界からの死角領域に存在する不審者400の映像が、乗員200が携帯する携帯端末50の表示部に表示される。
【0061】
次にステップSP14において制御部10は、カメラ112によって撮影された映像内において映像解析部128が不審者を検出したか否かを判定する。
【0062】
不審者が検出された場合(ステップSP14:YES)は、次にステップSP15において制御部10は、車両1の周辺で不審者が検出されたことを示す不審者検出情報を、通信部15から携帯端末50に送信する。また、制御部10は、警報信号生成部127に警報信号を生成させるとともに、不審者に対して飛行体2を正対させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる。生成された警報信号及び操縦信号は、通信部122から飛行体2に送信される。これにより、飛行体2は、不審者に正対した位置でホバリングしながら、不審者に対して警報動作(警報照明の照射及び警報音の出力)を実行する。なお、不審者が検出された場合には、制御部10が警報信号生成部127に加えて警報制御部13を制御することにより、飛行体2の照明部26及びスピーカ27に加えて車両1の照明装置及びホーンを用いて警報動作を実行しても良い。また、制御部10は、不審者が検出された場合に直ちに警報動作を実行させるのではなく、警報動作の実行の要否を問い合わせるメッセージを、通信部15から携帯端末50に送信しても良い。この場合、制御部10は、ユーザの操作入力によって携帯端末50から送信された警報動作の実行命令を、通信部15が受信したことを条件として、飛行体2(及び車両1)に警報動作を実行させる。
【0063】
警報動作の実行を開始した後、制御部10はステップSP14の処理を再度実行する。警報動作によっても不審者が退散しない場合は、映像解析部128は引き続き不審者を検出するため、制御部10は引き続きステップSP15の処理を実行する。
【0064】
映像解析部128が不審者を検出しない場合(ステップSP14:NO)は、次にステップSP16において制御部10は、飛行体2による予定飛行経路の飛行及び撮影が完了したことにより、飛行体制御部12に飛行体2の帰艦制御を実行させる。操縦信号生成部124は、通信部122が受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて、飛行体2を発着台3に向けて飛行させるための操縦信号を生成する。上記と同様に、この操縦信号が飛行体2に送信されることによって飛行体2の飛行が制御され、飛行体2は発着台3に帰艦する。次に、撮影信号生成部125は、飛行体2の撮影部22に対して撮影を停止させるための撮影停止信号を生成する。撮影停止信号は飛行体2に送信され、撮影部22はカメラ112による撮影を停止する。その後、バッテリ制御部11は、バッテリ18から飛行体2への電力供給を停止する。
【0065】
本実施の形態に係る車両周辺監視システムによれば、制御部10は、接近検出部51が車両1への乗員の接近を検出した場合に、飛行体2が車両1から離陸し、撮影部22が車両1の周辺を撮影し、撮影部22が撮影した映像を携帯端末50に送信するよう、飛行体2を制御する。従って、乗車前に乗員が手動による操作入力を行うことなく、車両1の周辺(予め設定された所定範囲、例えば、車両1を中心とする半径5~10メートル程度の範囲)の映像が携帯端末50の表示部に自動的に表示される。その結果、飛行体2の撮影部22による撮影映像を、運転開始のために乗員が駐車中の車両1に接近してきた時の安全確認に活用することが可能となる。
【0066】
また、制御部10は、映像解析部128によって不審者が検出された場合、不審者検出情報を携帯端末50に送信する。これにより、車両1に接近してきたユーザに対して注意喚起を行うことができる。
【0067】
また、飛行経路作成部123は、乗員の車両1への接近方向に応じて生じる乗員の視界からの死角が撮影部22による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する。従って、映像解析部128によって、死角に潜む不審者を確実に検出することができる。
【0068】
また、飛行経路作成部123は、車両1の床下領域が撮影部22による撮影範囲に含まれるような飛行経路を作成する。従って、映像解析部128によって、車両1の床下領域に潜む不審者を確実に検出することができる。
【0069】
<変形例>
上記実施の形態では、制御部10は飛行体2による予定飛行経路の飛行及び撮影が完了した場合に飛行体2を車両1に帰艦させたが、予定飛行経路の撮影が完了する前であっても、飛行体2の帰艦命令がユーザによって携帯端末50から操作入力され、通信部15が当該帰艦命令を受信した場合には、制御部10は直ちに飛行体2を車両1に帰艦させても良い。具体的に、制御部10は、通信部15が携帯端末50から帰艦命令を受信すると、通信部122が受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて、飛行体2を現在位置から発着台3に向けて飛行させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる。この操縦信号が飛行体2に送信されることによって飛行体2の飛行が制御され、飛行体2は発着台3に帰艦する。
【0070】
また、制御部10は、予定飛行経路の撮影が完了する前であっても、ユーザが車両1に乗車したことを検出した場合には、直ちに飛行体2を車両1に帰艦させても良い。具体的に、制御部10は、車両1の運転席ドアの開閉動作が行われたことをドア開閉センサ142が検出したことにより、あるいは、当該開閉動作の後に車両1の運転席への人員の着座をシートセンサ143が検出したことにより、ユーザが車両1に乗車したことを検出する。この場合、制御部10は、通信部122が受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて、飛行体2を現在位置から発着台3に向けて飛行させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる。この操縦信号が飛行体2に送信されることによって飛行体2の飛行が制御され、飛行体2は発着台3に帰艦する。
【0071】
なお、予定飛行経路の撮影完了前に飛行体2を帰艦させる場合には、制御部10は、飛行体2を帰艦させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる代わりに、リール制御部126によって巻き取りリール19の回転軸を高速に回転駆動させることによって、飛行体2を強制的に回収しても良い。これにより、飛行体2を迅速に回収することが可能となる。
【0072】
本変形例によれば、車両1の走行開始前に飛行体2を帰艦させることができるため、車両1が走行を開始した後に飛行体2が周辺の障害物等に接触する事態を予め回避できる。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
2 飛行体
4 テザー
10 制御部
12 飛行体制御部
14 車両情報検出部
16 表示部
17 操作入力部
19 巻き取りリール
22 撮影部
26 照明部
27 スピーカ
50 携帯端末
51 接近検出部
123 飛行経路作成部
128 映像解析部