(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】現像装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G03G15/08 366
G03G15/08 310
(21)【出願番号】P 2020088922
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正之
(72)【発明者】
【氏名】久保 憲生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻美
(72)【発明者】
【氏名】田内 康大
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】又吉 晃
(72)【発明者】
【氏名】門田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】末浪 浩二
(72)【発明者】
【氏名】豊田 祐司
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-250290(JP,A)
【文献】特開2018-018058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列配置される第1搬送室および第2搬送室と、
前記第1搬送室および前記第2搬送室を長手方向に沿って区画する第1仕切壁と、
前記第1仕切壁の両端部側で前記第1搬送室および前記第2搬送室を連通させる連通部と、
磁性キャリアとトナーとを含む現像剤を補給する現像剤補給口と、
前記第2搬送室の下流側端部に設けられ、余剰の前記現像剤が排出される現像剤排出部と、を有する現像容器と、
前記現像容器に回転可能に支持され、前記第2搬送室内の前記現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、
回転軸と、前記回転軸の外周面に形成される第1搬送羽根とを有し、前記第1搬送室内の前記現像剤を第1方向に攪拌、搬送する第1攪拌搬送部材と、
回転軸と、前記回転軸の外周面に形成される第2搬送羽根とを有し、前記第2搬送室内の前記現像剤を前記第1方向と逆方向である第2方向に攪拌、搬送する第2攪拌搬送部材と、
を備え、
前記第2攪拌搬送部材は、
前記第2方向に対し前記第2搬送羽根の下流側に隣接して形成され、前記第2搬送羽根と逆方向に前記現像剤を搬送する搬送羽根で構成される規制部と、
前記第2方向に対し前記規制部の下流側に隣接して形成され、前記第2搬送羽根と同方向に現像剤を搬送して前記現像剤排出部から前記現像剤を排出する排出羽根と、
を備える現像装置において、
前記連通部は、前記第1方向の下流側において前記第1搬送室から前記第2搬送室に前記現像剤を受け渡す第1連通部と、前記第2方向の下流側において前記第2搬送室から前記第1搬送室に前記現像剤を受け渡す第2連通部と、で構成され、
前記現像容器は、前記第2方向に対し前記第2連通部の下流側において前記規制部に隣接して配置され、前記第1搬送室および前記規制部を区画する第2仕切壁と、
前記第1仕切壁と前記第2仕切壁に橋渡し状に連結され、前記第2連通部の上部を遮蔽する遮蔽部と、を有し、
前記遮蔽部の上端部と前記現像容器の内面との間に隙間が形成され
、
前記遮蔽部の上方に前記現像剤補給口を設けたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
互いに並列配置される第1搬送室および第2搬送室と、
前記第1搬送室および前記第2搬送室を長手方向に沿って区画する第1仕切壁と、
前記第1仕切壁の両端部側で前記第1搬送室および前記第2搬送室を連通させる連通部と、
磁性キャリアとトナーとを含む現像剤を補給する現像剤補給口と、
前記第2搬送室の下流側端部に設けられ、余剰の前記現像剤が排出される現像剤排出部と、を有する現像容器と、
前記現像容器に回転可能に支持され、前記第2搬送室内の前記現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、
回転軸と、前記回転軸の外周面に形成される第1搬送羽根とを有し、前記第1搬送室内の前記現像剤を第1方向に攪拌、搬送する第1攪拌搬送部材と、
回転軸と、前記回転軸の外周面に形成される第2搬送羽根とを有し、前記第2搬送室内の前記現像剤を前記第1方向と逆方向である第2方向に攪拌、搬送する第2攪拌搬送部材と、
を備え、
前記第2攪拌搬送部材は、
前記第2方向に対し前記第2搬送羽根の下流側に隣接して形成され、前記第2搬送羽根と逆方向に前記現像剤を搬送する搬送羽根で構成される規制部と、
前記第2方向に対し前記規制部の下流側に隣接して形成され、前記第2搬送羽根と同方向に現像剤を搬送して前記現像剤排出部から前記現像剤を排出する排出羽根と、
を備える現像装置において、
前記連通部は、前記第1方向の下流側において前記第1搬送室から前記第2搬送室に前記現像剤を受け渡す第1連通部と、前記第2方向の下流側において前記第2搬送室から前記第1搬送室に前記現像剤を受け渡す第2連通部と、で構成され、
前記現像容器は、前記第2方向に対し前記第2連通部の下流側において前記規制部に隣接して配置され、前記第1搬送室および前記規制部を区画する第2仕切壁と、
前記第1仕切壁と前記第2仕切壁に橋渡し状に連結され、前記第2連通部の上部を遮蔽する遮蔽部と、を有し、
前記遮蔽部の上端部と前記現像容器の内面との間に隙間が形成され、
前記遮蔽部の上端部に対向する前記現像容器の上面内側に、上向きに凹となる段差部を形成したことを特徴とす
る現像装置。
【請求項3】
前記遮蔽部の
下端部
は、前記第1攪拌搬送部材および前記第2攪拌搬送部材の前記回転軸の上端部と下端部の間に重なる位置にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第1攪拌搬送部材および前記第2攪拌搬送部材の回転速度を複数段階に切り換え可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体上に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の現像装置と、
を含み、記録媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置およびそれを備えた画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤の補給を行うとともに余剰現像剤を排出する現像装置およびそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した潜像を、現像装置により現像しトナー像として可視化することを行っている。このような現像装置の一つとして、二成分現像剤を用いる二成分現像方式が採用されている。この種の現像装置は、現像容器内にキャリアとトナーとを含む二成分現像剤を収容し、像担持体に現像剤を供給する現像ローラー(現像剤担持体)を配設するとともに、現像容器内部の現像剤を搬送攪拌しながら現像ローラーへと供給する攪拌搬送部材を配設している。
【0003】
二成分現像方式の現像装置では、トナーは現像動作によって消費されていく一方、キャリアは消費されずに現像装置内に残る。従って、現像容器内でトナーとともに攪拌されるキャリアは攪拌頻度が多くなるにつれて劣化する。その結果、トナーに対するキャリアの帯電付与性能が徐々に低下してしまう。
【0004】
そこで、現像容器内にキャリアを含む現像剤を補給するCASS(Carrie Auto Streaming System)を備え、余剰となった現像剤を排出することで、帯電性能の低下を抑制するようにした現像装置が提案されている。
【0005】
ところで、現像剤は高湿環境になると嵩が減少し、低湿環境になると嵩が増加する傾向にあり、画像形成装置の使用環境によって現像容器内の現像剤の重量がばらついてしまう。その結果、高湿環境から低湿環境へ変化した場合の現像剤の排出量の急激な増加や、低湿環境から高湿環境へ変化した場合の現像剤の嵩不足による現像不良等が懸念される。
【0006】
例えば特許文献1には、現像装置内の現像剤を排出する排出口に向けて現像剤を排出する経路中に設けられた円板部に対して、排出方向上流側に設けられた返しスクリューの端部と円板部が接合されないように配置した現像装置が開示されている。この現像装置では、円板部と円板部の上流の搬送部との接合による現像剤の跳ね上げを抑制して現像剤排出量を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法では、現像容器内の現像剤の搬送速度や流動性が変化した際に、円板部付近の現像剤の流れが不安定になることがあり、現像容器内の現像剤の嵩が不安定になる可能性がある。そして、現像容器内の現像剤の嵩が低くなり過ぎると現像ローラーへの現像剤の供給量が不足し、画像濃度の低下や濃度ムラが発生するおそれがある。一方、現像容器内の現像剤の嵩が高くなり過ぎると補給されたトナーと現像剤との攪拌が不足し、トナーの帯電不良によりかぶり画像が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、現像剤の搬送速度や流動性が変化した場合でも現像容器内の現像剤の嵩の変化幅を小さくすることができる現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、現像容器と、現像剤担持体と、第1攪拌搬送部材と、第2攪拌搬送部材と、を備えた現像装置である。現像容器は、互いに並列配置される第1搬送室および第2搬送室と、第1搬送室および第2搬送室を長手方向に沿って区画する第1仕切壁と、第1仕切壁の両端部側で第1搬送室および第2搬送室を連通させる連通部と、磁性キャリアとトナーとを含む現像剤を補給する現像剤補給口と、第2搬送室の下流側端部に設けられ、余剰の現像剤が排出される現像剤排出部と、を有する。現像剤担持体は、現像容器に回転可能に支持され、第2搬送室内の現像剤を表面に担持する。第1攪拌搬送部材は、回転軸と、回転軸の外周面に形成される第1搬送羽根とを有し、第1搬送室内の現像剤を第1方向に攪拌、搬送する。第2攪拌搬送部材は、回転軸と、回転軸の外周面に形成される第2搬送羽根とを有し、第2搬送室内の現像剤を第1方向と逆方向である第2方向に攪拌、搬送する。第2攪拌搬送部材は、規制部と、排出羽根と、を備える。規制部は、第2方向に対し第2搬送羽根の下流側に隣接して形成され、第2搬送羽根と逆方向に現像剤を搬送する搬送羽根で構成される。排出羽根は、第2方向に対し規制部の下流側に隣接して形成され、第2搬送羽根と同方向に現像剤を搬送して現像剤排出部から現像剤を排出する。連通部は、第1方向の下流側において第1搬送室から第2搬送室に現像剤を受け渡す第1連通部と、第2方向の下流側において第2搬送室から第1搬送室に現像剤を受け渡す第2連通部と、で構成される。現像容器は、第2方向に対し第2連通部の下流側において規制部に隣接して配置され、第1搬送室および規制部を区画する第2仕切壁と、第1仕切壁と第2仕切壁に橋渡し状に連結され、第2連通部の上部を遮蔽する遮蔽部と、を有し、遮蔽部の上端部と現像容器の内面との間に隙間が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、第2連通部の上方に遮蔽部が設けられ、遮蔽部の上端部と現像容器の内面との間に隙間が形成されることにより、現像剤の搬送速度が速い場合は遮蔽部によって第2搬送室から第1搬送室への現像剤の移動が抑制され、規制部に到達する現像剤量を多くして現像容器からの現像剤排出量を一定に維持することができる。従って、現像剤の搬送速度や流動性が変化した場合の現像容器内の現像剤の嵩変動による現像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の現像装置3a~3dが搭載された画像形成装置100の概略断面図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る現像装置3aの側面断面図
【
図3】第1実施形態の現像装置3aの攪拌部を示す平面断面図
【
図4】
図3における現像剤排出部20h周辺の拡大図
【
図5】
図4における下流側連通部20f周辺を攪拌搬送室21側から見た図
【
図6】第1実施形態の現像装置3aの、第1仕切壁20aを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図
【
図7】第1実施形態の現像装置3aの、下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図
【
図8】第1実施形態の現像装置3aにおける、遮蔽部57の高さと現像剤の安定体積との関係を示すグラフ
【
図9】第1実施形態の現像装置3aにおける、攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26の回転速度と現像剤の安定体積との関係を示すグラフ
【
図10】第1実施形態の現像装置3aの、遮蔽部57の上方に段差部60を設けた変形例の下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図
【
図11】本発明の第2実施形態に係る現像装置3aの現像剤排出部20h周辺の平面断面図
【
図12】
図11における下流側連通部20f周辺を攪拌搬送室21側から見た図
【
図13】第2実施形態の現像装置3aの、下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の現像装置3a~3dが搭載された画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(
図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの画像を順次形成する。
【0014】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により
図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写される。さらに、トナー像が二次転写された転写紙Pは、定着部13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを
図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0015】
トナー像が二次転写される転写紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0016】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。回転可能に配設された感光体ドラム1a~1dの周囲および下方には、感光体ドラム1a~1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2cおよび2dと、各感光体ドラム1a~1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a~1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3cおよび3dと、感光体ドラム1a~1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7a、7b、7cおよび7dが設けられている。
【0017】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーおよびキャリアを含む現像剤が補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0018】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0019】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が転写紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された転写紙Pは定着部13へと搬送される。
【0020】
定着部13に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0021】
図2は、画像形成装置100に搭載される本発明の第1実施形態に係る現像装置3aの側面断面図である。なお、以下の説明では
図1の画像形成部Paに配置される現像装置3aを例示するが、画像形成部Pb~Pdに配置される現像装置3b~3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、現像装置3aは、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器20を備えており、現像容器20は第1仕切壁20aによって攪拌搬送室21、供給搬送室22に区画されている。攪拌搬送室21および供給搬送室22には、コンテナ4a(
図1参照)から供給されるトナーおよびキャリアを現像容器20内の現像剤と混合して攪拌し、トナーを帯電させるための攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26がそれぞれ回転可能に配設されている。
【0023】
攪拌搬送室21内に配設される攪拌搬送スクリュー25は、回転軸25aと、回転軸25aに一体に設けられ、回転軸25aの軸方向に一定のピッチで螺旋状に形成される第1搬送羽根25bとを有する。回転軸25aは現像容器20に回転可能に軸支されている。攪拌搬送スクリュー25が回転することによって、攪拌搬送室21内の現像剤を攪拌しながら所定方向(現像ローラー31の軸方向の一方側)に搬送する。
【0024】
供給搬送室22内に配設される供給搬送スクリュー26は、回転軸26aと、回転軸26aに一体に設けられ、第1搬送羽根25bと同方向を向く(巻き方向が同一の)羽根で螺旋状に形成される第2搬送羽根26bとを有する。回転軸26aは、攪拌搬送スクリュー25の回転軸25aと平行に配置され、現像容器20に回転可能に軸支されている。供給搬送スクリュー26が回転することによって、供給搬送室22内の現像剤を攪拌しながら攪拌搬送スクリュー25と反対方向に搬送し、現像ローラー31に供給する。
【0025】
攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26によって現像剤が攪拌されつつ軸方向(
図2の紙面と垂直な方向)に搬送され、第1仕切壁20aの両端部に形成された上流側連通部20eおよび下流側連通部20f(
図3参照)を介して攪拌搬送室21、供給搬送室22間を循環する。即ち、攪拌搬送室21、供給搬送室22、上流側連通部20e、下流側連通部20fによって現像容器20内に現像剤の循環経路が形成されている。
【0026】
現像容器20は
図2の右斜め上方に延在しており、現像容器20内において供給搬送スクリュー26の右斜め上方には現像ローラー31が配置されている。そして、現像ローラー31の外周面の一部が現像容器20の開口部20bから露出し、感光体ドラム1aに対向している。現像ローラー31は、
図2において反時計回り方向に回転する。現像ローラー31には、直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧が印加される。
【0027】
現像ローラー31は、
図2において反時計回り方向に回転する円筒状の現像スリーブと、現像スリーブ内に固定された複数の磁極を有するマグネット(図示せず)とで構成されている。なお、ここでは表面がローレット加工された現像スリーブを用いているが、表面に多数の凹形状(ディンプル)を形成したものや、表面がブラスト加工された現像スリーブを用いることもできる。
【0028】
また、現像容器20には規制ブレード27が現像ローラー31の長手方向(
図2の紙面と垂直方向)に沿って取り付けられている。規制ブレード27の先端部と現像ローラー31表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0029】
次に、現像装置3aの攪拌部の構成について詳細に説明する。
図3は第1実施形態の現像装置3aの攪拌部を示す平面断面図(
図2のAA′矢視断面図)であり、
図4は、
図3における現像剤排出部20h周辺の部分拡大図である。
図5は、
図4における下流側連通部20f周辺を攪拌搬送室21側から見た図である。
【0030】
現像容器20には、攪拌搬送室21、供給搬送室22、第1仕切壁20a、第2仕切壁20c、上流側連通部20e、および下流側連通部20fが形成され、その他に、現像剤補給口20g、現像剤排出部20h、上流側壁部20i、および下流側壁部20jが形成されている。なお、攪拌搬送室21において、
図3の左側を上流側、
図3の右側を下流側とし、また、供給搬送室22において、
図3の右側を上流側、
図3の左側を下流側とする。従って、連通部および壁部は、供給搬送室22を基準として上流側および下流側と呼称している。
【0031】
第1仕切壁20aは、現像容器20の長手方向に延びて攪拌搬送室21と供給搬送室22を並列させるように区画している。第2仕切壁20cは、下流側壁部20jの内壁面から突出し、規制部52を構成する螺旋羽根の外周面に対向するように第1仕切壁20aの延長線上に形成されている。
【0032】
第1仕切壁20aの長手方向の右側端部は、上流側壁部20iの内壁部とともに上流側連通部20eを形成する。一方、第1仕切壁20aの長手方向の左側端部は、第2仕切壁20cとともに下流側連通部20fを形成する。
【0033】
図5に示すように、下流側連通部20fの上部は、第1仕切壁20aと第2仕切壁20cとに橋渡し状に連結される遮蔽部57によって遮蔽されている。即ち、下流側連通部20fは第1仕切壁20a、第2仕切壁20c、および遮蔽部57に囲まれたトンネル状の開口である。遮蔽部57の上方には現像容器20の内面との間に間隔(クリアランス)dが形成されている。
【0034】
現像剤補給口20gは、現像容器20の上部に設けられたコンテナ4a(
図1参照)から新たなトナーおよびキャリアを現像容器20内に補給するための開口であり、攪拌搬送室21の上流側(
図3の左側)に配置される。
【0035】
現像剤排出部20hは、現像剤の補給によって攪拌搬送室21および供給搬送室22内で余剰となった現像剤を排出する。現像剤排出部20hは、供給搬送室22の下流側端部に供給搬送室22の長手方向に連続して設けられる。
【0036】
攪拌搬送スクリュー25は、攪拌搬送室21の長手方向の両端部側まで延び、第1搬送羽根25bは上流側連通部20eおよび下流側連通部20fにも対向して設けられている。回転軸25aは現像容器20の上流側壁部20iと下流側壁部20jに回転可能に軸支されている。
【0037】
供給搬送スクリュー26は現像ローラー31の軸方向長さ以上の長さを有し、更に、上流側連通部20eに対向する位置まで延びている。回転軸26aは、攪拌搬送スクリュー25の回転軸25aと平行に配置され、現像容器20の上流側壁部20iと現像剤排出部20hに回転可能に軸支されている。供給搬送スクリュー26の回転軸26aには、第2搬送羽根26bとともに、規制部52および排出羽根53が一体に成型されている。
【0038】
規制部52は、供給搬送室22内で下流側に搬送された現像剤を塞き止め、且つ、所定量以上になった現像剤を現像剤排出部20hに搬送する。規制部52は、回転軸26aに設けられる螺旋羽根からなり、第2搬送羽根26bと逆方向を向く(逆巻きの)螺旋羽根で形成され、且つ、第2搬送羽根26bの外径と略同じで第2搬送羽根26bのピッチより小さく設定されている。また、規制部52は、現像容器20の内壁部との間に所定の隙間を形成している。この隙間を通過して余剰の現像剤が現像剤排出部20hに移動する。
【0039】
現像剤排出部20h内の回転軸26aには排出羽根53が設けられている。排出羽根53は、第2搬送羽根26bと同じ方向を向く螺旋羽根からなり、第2搬送羽根26bより螺旋羽根のピッチおよび外径が小さくなっている。回転軸26aが回転すると排出羽根53も回転し、規制部52を乗り越えて現像剤排出部20h内に搬送された余剰現像剤は、
図4の左側に送られて図示しない現像剤排出口より現像容器20の外部に排出される。
【0040】
現像容器20の外壁面には、歯車61~64が配設されている。歯車61、62は回転軸43bに固着され、歯車64は回転軸26aに固着され、歯車63は、現像容器20に回転可能に保持されて、歯車62、64に噛合している。
【0041】
現像駆動モーター(図示せず)によって歯車61が回転すると、攪拌搬送スクリュー25が回転する。攪拌搬送室21内の現像剤は第1搬送羽根25bによって主搬送方向(第1方向、矢印P方向)に搬送され、その後、上流側連通部20eを通って供給搬送室22内に搬送される。更に、歯車62~64を介して供給搬送スクリュー26が回転すると、供給搬送室22内の現像剤が第2搬送羽根26bによって主搬送方向(第2方向、矢印Q方向)に搬送される。新たに現像剤を補給していない現像時には、現像剤はその嵩を大きく変動させながら攪拌搬送室21から上流側連通部20eを通って供給搬送室22内に搬送され、規制部52を乗り越えることなく、下流側連通部20fを通って攪拌搬送室21に搬送される。
【0042】
このように現像剤は、攪拌搬送室21から、上流側連通部20e、供給搬送室22、および下流側連通部20fと循環しながら攪拌されて、攪拌された現像剤が現像ローラー31に供給される。
【0043】
次に、現像剤補給口20gから現像剤が補給される場合について説明する。現像によってトナーが消費されると、コンテナ4aから現像剤補給口20gを介して攪拌搬送室21内にトナーおよびキャリアを含む現像剤が補給される。
【0044】
補給された現像剤は、現像時と同様に、攪拌搬送スクリュー25によって、攪拌搬送室21内を主搬送方向(矢印P方向)に搬送され、その後、上流側連通部20eを通って供給搬送室22内に搬送される。更に、供給搬送スクリュー26によって、現像剤は供給搬送室22内の現像剤を主搬送方向(矢印Q方向)に搬送される。回転軸26aの回転に伴って規制部52が回転すると、規制部52によって、主搬送方向とは逆方向(逆搬送方向)の搬送力が現像剤に付与される。この規制部52によって現像剤が塞き止められて嵩高となり、余剰の現像剤(現像剤補給口20gから補給された現像剤と同量)が規制部52を乗り越えて、現像剤排出部20hを介して現像容器20の外部に排出される。
【0045】
図4に示すように、供給搬送スクリュー26は、第2搬送羽根26bと規制部52との間に円板55が配置されている。円板55は、第2搬送羽根26b、規制部52、および排出羽根53と共に合成樹脂によって回転軸26aと一体に成型される。
【0046】
第2搬送羽根26bによって主搬送方向(矢印Q方向)に搬送される現像剤の搬送力が円板55により塞き止められて一旦弱められる。そして、規制部52により現像剤に逆方向の搬送力が付与されて現像剤を主搬送方向と逆方向に押し戻す。即ち、円板55は供給搬送室22から規制部52に向かう現像剤の搬送力(圧力)を低減する役割を果たしている。その結果、規制部52および下流側連通部20fへ移動する現像剤面の波立ち(変動)が抑制され、現像剤の搬送速度に係わらず規制部52付近にほぼ一定量の現像剤を滞留させることができる。
【0047】
そして、現像剤補給口20gから現像剤が補給され、現像容器20内の現像剤の嵩が増加すると、規制部52の上流側に滞留する現像剤が円板55および規制部52を乗り越えて排出羽根53(現像剤排出部20h)に移動し、現像剤排出部20hから余剰の現像剤が排出される。現像剤排出部20hからの現像剤の排出が収まった時点で現像容器20内の現像剤の嵩が安定する。嵩が安定したときの現像剤の体積を安定体積とする。
【0048】
本発明の画像形成装置100では、搬送される転写紙Pの厚みや種類、出力画像の種類に応じてプロセス速度が二段階に切り換えられる。即ち、転写紙Pが普通紙である場合や文字原稿を出力する場合は通常の駆動速度(以下、全速モードという)で画像形成処理が行われ、転写紙Pが厚紙である場合や写真画像を出力する場合は通常よりも低速(以下、減速モードという)で画像形成処理が行われる。これにより、転写紙Pとして厚紙を用いる場合や写真画像を出力する場合に十分な定着時間を確保して画質を向上させることができる。
【0049】
上述したように全速モードと減速モードとの切り換えが行われると、攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度も変化するため、現像容器20内の現像剤の搬送速度が急激に変化する。その結果、現像容器20内で現像剤の偏りが生じて現像剤の嵩(現像剤面)が変動するため、現像剤排出部20hから排出される現像剤量も変化し、現像容器20内の現像剤量が変化する。
【0050】
具体的には、現像剤の搬送速度(攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度)が速くなると、現像容器20内の現像剤の重量が一定であっても現像剤の嵩は高くなる。例えば、現像剤の搬送速度を速くすると、現像剤が規制部52の下流側に到達する前に供給搬送室22側から下流側連通部20fを通過して攪拌搬送室21側に受け渡される場合がある。その結果、規制部52に到達する現像剤が減少し、現像剤排出部20hから現像剤が排出されにくくなってしまう。本実施形態では、下流側連通部20fの上方に配置される遮蔽部57の高さを調整することで、現像剤の排出量を調整する。
【0051】
図6は、第1実施形態の現像装置3aの、第1仕切壁20aを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図(
図4のBB′矢視断面図)である。
図6に示すように、第1仕切壁20aは攪拌搬送室21および供給搬送室22の上面まで延在しており、攪拌搬送室21および供給搬送室22を長手方向(
図6の紙面と垂直な方向)に沿って完全に区画している。
【0052】
図7は、第1実施形態の現像装置3aの、下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図(
図4のCC′矢視断面図)である。
図7に示すように、遮蔽部57の上端部と、現像容器20(攪拌搬送室21および供給搬送室22)の内面との間には間隔dが形成されている。
【0053】
現像剤の搬送速度が速い場合においては、供給搬送室22から攪拌搬送室21に受け渡される現像剤量が増加し、供給搬送室22と円板55との隙間を乗り越えて規制部52に到達する現像剤量が減少する。そこで、遮蔽部57の高さ(遮蔽幅)を調整することによって、供給搬送室22から攪拌搬送室21への現像剤の移動を規制する。
【0054】
現像剤の搬送速度が速い場合は、下流側連通部20fを通過する現像剤と、供給搬送室22から遮蔽部57を乗り越えて上方の間隔dを通過した現像剤が攪拌搬送室21へ移動する。その結果、遮蔽部57を設けない構成に比べて攪拌搬送室21への現像剤の移動が抑制され、規制部52に移動する現像剤が増加する。一方、現像剤の搬送速度が遅い場合は供給搬送室22から下流側連通部20fを通過した現像剤のみが攪拌搬送室21へ移動する。これにより、現像剤の搬送速度に係わらず規制部52に到達する現像剤量を一定にすることができ、現像剤排出量のバラツキを抑えて現像容器20内の現像剤の嵩を安定させることができる。
【0055】
供給搬送室22から攪拌搬送室21に受け渡される現像剤量を調整するためには、間隔dと、遮蔽部57の高さhおよび開口幅w(
図5参照)の調整が重要となる。間隔dが小さすぎると、現像剤の搬送速度が速くなったときに現像剤が遮蔽部57を乗り越えることができず、供給搬送室22内の現像剤の嵩が増加する。現像装置3aの小型化の観点から間隔dは最小限にすることが好ましいが、搬送速度が速い場合でも現像剤が遮蔽部57を乗り越えることができるように間隔dを設定する必要がある。
【0056】
また、遮蔽部57の下端部57aは、攪拌搬送スクリュー25の回転軸25a、供給搬送スクリュー26の回転軸26aの上端部と下端部の間(
図7の領域R)に重なる位置にあることが好ましい。即ち、遮蔽部57の高さhは、間隔dおよび下端部57aの位置に基づいて決定される。また、開口幅wは、現像容器20内に充填される現像剤量や現像剤の仕様に応じて決定される。
【0057】
図8は、遮蔽部57の高さh(開口上埋め幅)と現像剤の安定体積および安定重量との関係を示すグラフである。
図8では、プロセス速度を70枚/min、下流側連通部20fの開口幅wを15mm、20mm、25mmに設定し、開口上埋め幅を4mm、5mm、6mに変化させたときの現像剤の安定体積および安定重量の変化について示している。
【0058】
図8に示すように、開口幅wが15mm(×のデータ系列)、20mm(△のデータ系列)、25mm(●のデータ系列)のいずれについても、開口上埋め幅が大きくなるにつれて現像剤の安定体積および安定重量が減少している。これは、遮蔽部57の高さhが大きくなると供給搬送室22から攪拌搬送室21への現像剤の移動が規制され、規制部52に向かう現像剤量が多くなるため、結果として現像剤の排出量が増加するためである。
【0059】
図9は、攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26の回転速度と現像剤の安定体積および安定重量との関係を示すグラフである。
図9では、下流側連通部20fの開口幅wを15mm、遮蔽部57の高さh(開口上埋め幅)を5mmに設定し、攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26の回転速度を139rpm、278rpm、449rpm(印字速度20枚/min、40枚/min、70枚/minに対応)に変化させたときの現像剤の安定体積および安定重量の変化について示している。
【0060】
図9に示すように、印字速度20枚/min、40枚/min、70枚/minのいずれについても、現像剤の安定体積は150cc~160cc、安定重量は290~310gの範囲で推移した。以上の結果より、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設けることで、攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26の回転速度に係わらず現像剤の安定体積を一定に維持できることがわかる。
【0061】
なお、遮蔽部57の高さhは、上方に隙間dが確保できるのであれば、現像容器20内の現像剤循環部の上面(第1仕切壁20aの上端部)と同じ高さまで到達していてもよい。また、使用される現像剤やプロセス線速に応じて、攪拌搬送スクリュー25および供給搬送スクリュー26の回転軸25a、26aよりも上方であって搬送羽根25b、26bの上端部までの間で適宜調整してもよい。
【0062】
図10は、第1実施形態の現像装置3aの遮蔽部57の上方に段差部60を設けた変形例の、下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の断面図である。
図10に示すように、現像容器20の内面に上向きに凹となる段差部60を形成することで、遮蔽部57を所定の高さに維持しつつ、現像剤が遮蔽部57を乗り越えて移動するために十分な間隔dを確保することができる。段差部60の高さおよび幅は現像剤の流動性や搬送速度に応じて設定すればよい。
【0063】
図11は、本発明の第2実施形態に係る現像装置3aの現像剤排出部20h周辺の断面拡大図である。
図12は、
図11における下流側連通部20f周辺を攪拌搬送室21側から見た図である。
図13は、第2実施形態の現像装置3aの、下流側連通部20fを含む攪拌搬送室21および供給搬送室22の縦断面図(
図11のCC′矢視断面図)である。本実施形態では、遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gを配置している。現像装置3aの他の部分の構成は第1実施形態と同様である。
【0064】
遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gを配置することで、
図12および
図13に示すように遮蔽部57の上方に空間を形成することができる。これにより、現像剤の搬送速度が速い場合に遮蔽部57によって供給搬送室22から攪拌搬送室21への現像剤の移動を規制し、供給搬送室22内の現像剤の嵩が一定以上になった場合は現像剤が供給搬送室22から遮蔽部57を乗り越えて攪拌搬送室21に円滑に移動する。従って、第1実施形態と同様に現像剤の搬送速度に係わらず規制部52に到達する現像剤量を一定にすることができ、現像剤排出量のバラツキを抑えて現像容器20内の現像剤の嵩を安定させることができる。
【0065】
また、遮蔽部57付近は、供給搬送室22から攪拌搬送室21への現像剤の移動が規制されるとともに、規制部52による現像剤の押し戻しが発生する、現像剤の滞留が発生し易い位置である。そこで、現像剤補給口20gを遮蔽部57の上方に配置することで、補給された塊状の現像剤が分散され易くなる。従って、補給された現像剤が現像容器20内を循環する現像剤と十分に混合されるため、現像剤中のトナーの帯電量を安定化することができる。
【0066】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。上記各実施形態では
図2に示したような現像ローラー31を備えた現像装置3a~3dを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、現像剤を担持する磁気ローラーを設け、磁気ローラーから現像ローラー31にトナーのみを移動させてトナー層を形成し、現像ローラー31上のトナー層を用いて静電潜像を現像する現像装置等、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる種々の現像装置に適用可能である。
【0067】
また、上記各実施形態では、現像剤排出部20hの上流側において現像剤を滞留させるために、供給搬送スクリュー26に第2搬送羽根26bと逆位相の螺旋羽根からなる規制部52と円板55とを設けているが、現像剤を滞留させる構成はこれに限定されるものではない。例えば、円板55を設けずに規制部52のみを設けてもよいし、規制部52と複数の円板55との組み合わせや、規制部52を複数の円板のみで構成してもよい。
【0068】
また、本発明は
図1に示したタンデム式のカラープリンターに限らず、デジタル或いはアナログ方式のモノクロ複写機、モノクロプリンター、カラー複写機、ファクシミリ等、二成分現像方式を用いた種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0069】
図1に示すような画像形成装置100において、現像剤の搬送速度を変化させた場合の現像装置3a~3d内の現像剤量の変化について調査した。なお、試験は感光体ドラム1aおよび現像装置3aを含むシアンの画像形成部Paにおいて行った。
【0070】
試験方法としては、
図4、
図5に示したような、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設け、遮蔽部57の上方に間隔dを形成した第1実施形態の現像装置3aを本発明1、
図11、
図12に示したような、遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gを配置した第2実施形態の現像装置3aを本発明2とし、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設けない現像装置3aを比較例とした。
【0071】
本発明1、2および比較例の現像装置3aの現像容器22に、それぞれ現像剤(トナー濃度6%)175ccを充填し、常温常湿環境下(25℃、50%)で攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度を139rpm、278rpm、449rpmの3水準に変化させて現像装置3aを駆動し、現像剤を攪拌搬送した。現像剤排出口22hからの現像剤の排出が収まった時点で現像容器22内に存在する現像剤量(安定重量、安定体積)を測定した。
【0072】
本発明1、2および比較例に用いる攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の第1搬送羽根25b、26bは、外径が18mmの螺旋羽根であり、第1仕切壁20aの高さは15mmである。また、規制部52は、外径18mmの3枚の逆巻きの螺旋羽根で構成されており、第2仕切壁20cの高さは8mmである。排出羽根53は、外径8mmの螺旋羽根である。第2搬送羽根26b、規制部52と供給搬送室22の上面との間隔(クリアランス)は1.5mmであり、排出羽根53と現像剤排出部22hの上面との間隔は1.5mmである。
【0073】
本発明1、2の現像装置3aにおける遮蔽部57の高さhは5mmである。また、本発明1の現像装置3aでは遮蔽部57の上方に5mmの間隔dが形成されており、本発明2の現像装置3aでは遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gによる空間が形成されている。
【0074】
現像剤量の測定方法は、本発明1、2および比較例の現像装置3aを試験機に搭載し、攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度(攪拌搬送室21、供給搬送室22内の現像剤の搬送速度)を変化させて現像剤を攪拌した後、現像装置3aを取り外して重量を測定した。測定された現像装置3aの重量から現像剤を取り除いた空の現像装置3aの重量を差し引いて現像剤量(安定重量)を算出した。また、算出された現像剤量を嵩密度で除算して安定体積を算出した。攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度と安定体積との関係を表1に示す。
【0075】
【0076】
表1から明らかなように、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設け、遮蔽部57の上方に間隔dを形成した本発明1、遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gを配置した本発明2では、攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度を変化させた場合でも安定体積のばらつきは小さかった。
【0077】
これに対し、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設けない比較例では、攪拌搬送スクリュー25、供給搬送スクリュー26の回転速度が大きくなるにつれて安定体積が大きくなった。以上の結果より、本発明1、2の現像装置3aでは、比較例に比べて現像剤の搬送速度が変化した場合でも現像剤の安定体積を一定に維持することができ、現像剤の嵩不足や嵩過剰による現像不良等の発生を効果的に抑制できることが確認された。
【実施例2】
【0078】
本発明の現像装置3a~3dによるトナー飛散の抑制効果について調査した。なお、試験は感光体ドラム1aおよび現像装置3aを含むシアンの画像形成部Paにおいて行った。試験方法としては、実施例1で用いた本発明2および比較例の現像装置3aの現像容器22に、それぞれ現像剤(トナー濃度6%)175ccを充填し、常温常湿環境下(25℃、50%)で印字率2%のテスト画像を2000枚連続印字した後、印字率10%、50%、80%のテスト画像を500枚連続印字したときの現像装置3aのトナー飛散による汚れを目視により観察した。結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
表2から明らかなように、遮蔽部57の上方に現像剤補給口20gを配置した本発明2では、印字率10%、40%、80%のいずれにおいてもトナー飛散の発生は認められなかった。これに対し、下流側連通部20fの上方に遮蔽部57を設けず、現像剤開口部20gを配置しなかった比較例では、印字率80%の場合にトナー飛散が発生した。
【0081】
以上の結果より、本発明2の現像装置3aでは、比較例に比べて補給される現像剤の分散性が向上し、トナー帯電量が安定するため、トナーの帯電量不足によるトナー飛散の発生を抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤の補給を行うとともに余剰現像剤を排出する現像装置およびそれを備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、現像剤の流動性や搬送速度が変化した場合でも現像容器内の現像剤の嵩および重量の変化幅を小さくできる現像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
3a~3d 現像装置
20 現像容器
20a 第1仕切壁
20c 第2仕切壁
22e 上流側連通部(第1連通部)
20f 下流側連通部(第2連通部)
20g 現像剤補給口
20h 現像剤排出部
21 攪拌搬送室(第1搬送室)
22 供給搬送室(第2搬送室)
25 攪拌搬送スクリュー(第1攪拌搬送部材)
26 供給搬送スクリュー(第2攪拌搬送部材)
31 現像ローラー(現像剤担持体)
52 規制部
53 排出羽根
55 円板
57 遮蔽部
60 段差部
100 画像形成装置