(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240528BHJP
B29C 45/46 20060101ALI20240528BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240528BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240528BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20240528BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240528BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/46
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/241
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020092197
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英伸
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000752(JP,A)
【文献】特開2000-190367(JP,A)
【文献】特開平06-198713(JP,A)
【文献】特開2009-214167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 64/00 - 64/40
B22D 17/20
B22F 10/00 - 12/90
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化装置であって、
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、
前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、
前記ローターを収容
し、前記ローターの周方向に沿って流路溝が設けられたケースと、
前記ローターと前記バレルとの間に供給された材料を加熱する加熱部と、
前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、
シール溝および平坦面が設けられた蓋部材と、
前記シール溝内に配置されたシール部材と、
を備え、
前記蓋部材は、前記シール溝が前記流路溝に沿うように、かつ、前記平坦面が前記流路溝を覆うように配置されることで冷媒が流れる冷媒流路を画定し、
前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローター及び前記バレルの少なくとも一方に固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、
前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローター及び前記ケースの少なくとも一方に固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する、
可塑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記摩耗抑制部は、焼入れ処理が施された部材で構成される、可塑化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の可塑化装置であって
、
前記シール部材は、平坦部と凸条部とを有し、前記平坦部が前記シール溝の底面に接触し、かつ、前記凸条部が前記ケースのうちの前記流路溝に沿った面に接触するように前記シール溝内に配置されることによって前記冷媒流路をシールする、可塑化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記蓋部材には、前記流路溝を挟むように複数の前記シール溝が設けられ、
それぞれの前記シール溝には、前記シール部材が配置される、可塑化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記蓋部材の一部は、前記バレルに接触する、可塑化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置によって可塑化された前記材料を型に向けて吐出するノズルと、
を備える、射出成形装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置によって可塑化された前記材料をステージに向けて吐出するノズルと、
を備える、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、螺旋溝が設けられたローターと、ローターに対向して配置されたバレルと、ローターやバレルを収容するケーシングとを備える可塑化送出装置が開示されている。この可塑化送出装置は、回転するローターとバレルとの間に供給された材料を可塑化してバレルの中央部に設けられた開口部から送出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置において、ローターとケーシングとの対向部やローターとバレルとの対向部の摩耗を抑制するために、焼入れ処理が施されたローターやバレルやケーシングが用いられることが好ましい。しかし、焼入れ処理が施されたローターやバレルやケーシングに、切削加工を用いて溝や穴を形成することは加工難易度が高いので、加工コストの高コスト化等を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、材料を可塑化する可塑化部と、前記可塑化部によって可塑化された前記材料を成形型に射出するノズルと、を備える。前記可塑化部は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化する可塑化部と、前記可塑化部によって可塑化された前記材料をステージに吐出するノズルと、を備える。前記可塑化部は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す正面図。
【
図2】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す断面図。
【
図11】第2実施形態の三次元造形装置の概略構成を示す断面図。
【
図12】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における射出成形装置10の概略構成を示す正面図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0010】
射出成形装置10は、射出部100と、型締部200と、制御部500とを備えている。射出成形装置10は、型締部200に装着された成形型210内に、射出部100から溶融材料を射出して成形品を成形する。本実施形態では、型締部200には、金属製の成形型210が装着されている。尚、型締部200に装着される成形型210は、金属製に限られず、樹脂製あるいはセラミック製でもよい。金属製の成形型210のことを金型と呼ぶことがある。
【0011】
射出部100と型締部200とは、それぞれ、基台20に固定されている。射出部100には、成形品の材料が投入されるホッパー30が接続されている。成形品の材料として、例えば、ペレット状に形成されたABS樹脂やポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。成形品の材料として、例えば、粉末状の金属が添加された熱可塑性樹脂やカーボンナノチューブが添加された熱可塑性樹脂が用いられてもよい。射出部100は、ホッパー30から供給された材料を可塑化して溶融材料にして、型締部200に装着された成形型210に溶融材料を射出する。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0012】
制御部500は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部500は、予め入力された成形条件に従って射出部100と型締部200とを制御する。成形条件とは、射出成形装置10によって成形品を成形するための条件である。例えば、基台20に設けられた操作パネル21をユーザー等が操作することによって、制御部500に成形条件が入力される。成形条件として、例えば、成形型210に射出される溶融材料の圧力を表す射出圧力や、成形型210に射出される溶融材料の流速を表す射出速度や、成形型210に射出される溶融材料の量を表す射出量等が入力される。尚、制御部500は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態における射出成形装置10の概略構成を示す断面図である。
図2には、上述した射出部100と型締部200と成形型210との断面が表されている。射出部100は、可塑化部110と、射出制御機構150と、ノズル160とを備えている。尚、可塑化部110のことを可塑化装置と呼ぶことがある。
【0014】
可塑化部110は、駆動モーター115と、スクリューケース120と、フラットスクリュー130と、バレル140と、後述する加熱部148とを備えている。可塑化部110は、ホッパー30から供給されたペレット状の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の溶融材料を生成して、溶融材料を射出制御機構150に供給する機能を有している。尚、フラットスクリュー130のことをローターと呼ぶことがある。
【0015】
スクリューケース120は、本体部121と、本体部121に固定された摩耗抑制部122とを有している。本体部121とバレル140との間には、冷却板170が配置されている。本体部121と冷却板170との間には、断熱板179が配置されている。尚、スクリューケース120や冷却板170や断熱板179の具体的な構成については後述する。本体部121のことをケースと呼ぶことがある。
【0016】
フラットスクリュー130は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー130は、スクリューケース120とバレル140とによって囲まれた空間に収容されている。フラットスクリュー130は、バレル140に対向する面に、溝部135が設けられた溝形成面132を有している。フラットスクリュー130の溝形成面132とは反対側の面には、駆動モーター115が接続されている。駆動モーター115は、制御部500の制御下で駆動される。駆動モーター115が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、中心軸RXを中心に回転する。
【0017】
図3は、フラットスクリュー130の構成を示す斜視図である。
図3には、フラットスクリュー130の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、フラットスクリュー130の溝形成面132には、溝部135が設けられている。フラットスクリュー130の溝形成面132の中央部137は、溝部135の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部137は、中心軸RX上に設けられている。
【0018】
フラットスクリュー130の溝部135は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部135は、中央部137から、フラットスクリュー130の外周に向かって弧を描くように渦状に設けられている。溝部135は、螺旋状やインボリュート曲線状に設けられてもよい。溝形成面132には、溝部135の側壁部を構成する凸条部136が設けられている。溝部135は、フラットスクリュー130の側面133に設けられた材料導入口134まで連続している。この材料導入口134は、溝部135に材料を受け入れる部分である。
【0019】
図3には、3つの溝部135と、3つの凸条部136と、を有するフラットスクリュー130の例が示されている。フラットスクリュー130に設けられる溝部135や凸条部136の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー130には、1つの溝部135のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部135が設けられていてもよい。また、溝部135の数に合わせて任意の数の凸条部136が設けられてもよい。
【0020】
図3には、材料導入口134が3箇所に形成されているフラットスクリュー130の例が図示されている。フラットスクリュー130に設けられる材料導入口134の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー130には、材料導入口134が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0021】
図4は、バレル140の構成を示す説明図である。
図2および
図4に示すように、バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向するスクリュー対向面142を有している。スクリュー対向面142の中央には、射出制御機構150およびノズル160に連通する連通孔146が設けられている。連通孔146は、フラットスクリュー130の中心軸RXの延長線上に設けられている。スクリュー対向面142における連通孔146の周りには、複数の案内溝144が設けられている。それぞれの案内溝144は、一端が連通孔146に接続されており、連通孔146からスクリュー対向面142の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝144は、溶融材料を連通孔146に導く機能を有している。尚、スクリュー対向面142には案内溝144が設けられていなくてもよい。
【0022】
図4に示すように、加熱部148は、バレル140に埋設されている。本実施形態では、加熱部148は、4本の棒状のヒーターによって構成されている。加熱部148の温度は、制御部500によって制御される。フラットスクリュー130の溝部135に供給された材料は、フラットスクリュー130の回転と加熱部148による加熱とによって可塑化して溶融材料にされ、連通孔146を通じて射出制御機構150に供給される。
【0023】
図2に示すように、射出制御機構150は、射出シリンダー151と、プランジャー152と、プランジャー駆動部153とを備えている。射出制御機構150は、射出シリンダー151内の溶融材料をノズル160から成形型210に射出する機能を有している。射出シリンダー151は、バレル140の連通孔146に接続された略円筒状の部材である。射出シリンダー151内には、可塑化部110の連通孔146から供給された溶融材料が貯留される。プランジャー152は、射出シリンダー151内に配置された軸状の部材である。プランジャー駆動部153は、射出シリンダー151の中心軸に沿ってプランジャー152を移動させる。プランジャー駆動部153は、モーターやギア等によって構成されている。プランジャー駆動部153は、制御部500の制御下で駆動される。プランジャー152が射出シリンダー151内を移動することによって、射出シリンダー151内に貯留された溶融材料がノズル160を通じて成形型210内に圧送される。
【0024】
成形型210は、固定型211と、可動型212とを備えている。可動型212と固定型211とは、互いに対面して配置され、その間に成形品の形状に相当する空間であるキャビティーCvを有している。キャビティーCvには、ノズル160から射出された溶融材料が充填される。
【0025】
型締部200は、固定盤220と、可動盤230と、タイバー240と、型駆動部250と、ボールねじ部260とを備えている。型締部200は、可動型212と固定型211との開閉を行う機能を有している。固定盤220は、タイバー240の先端部に固定されている。可動盤230は、タイバー240に沿って移動可能に構成されている。固定盤220には固定型211が固定され、可動盤230は可動型212が固定される。固定型211や可動型212は、例えば、ボルトやクランプによって固定される。本実施形態では、型駆動部250は、モーターやギア等によって構成されている。型駆動部250は、制御部500の制御下で駆動される。型駆動部250は、ボールねじ部260を介して可動盤230に接続されている。ボールねじ部260は、型駆動部250の発生させる動力を可動盤230に伝達して、可動盤230をタイバー240に沿って移動させる。可動盤230が移動することによって、固定型211に対して可動型212が移動する。換言すれば、可動盤230が移動することによって、成形型210が開閉される。
【0026】
射出成形装置10は、成形品を成形型210から離型させるためのエジェクターピン271を有する押出機構270が設けられている。エジェクターピン271は、可動型212に設けられた貫通孔に挿入されている。エジェクターピン271は、型開きの際に可動型212から突き出して、成形品を可動型212から押し出す。
【0027】
図5は、可塑化部110の構成を示す断面図である。
図6は、スクリューケース120の構成を示す第1の斜視図である。
図7は、スクリューケース120の構成を示す第2の斜視図である。
図5には、
図2とは異なる向きから視た可塑化部110の断面が表されている。
図5に示すように、フラットスクリュー130は、バレル140に対向する第1対向部501と、スクリューケース120に対向する第2対向部502と、第1非対向部511とを有している。バレル140は、フラットスクリュー130の第1対向部501に対向する第3対向部503と、第2非対向部512とを有している。スクリューケース120は、フラットスクリュー130の第2対向部502に対向する第4対向部504と、第3非対向部513とを有している。
【0028】
第1対向部501と第2対向部502と第3対向部503と第4対向部504とのうちの少なくともいずれか一つは、焼入れ処理が施された部材の表面に設けられる。焼入れ処理とは、例えば炭素鋼やステンレス鋼等の鉄鋼材料を、その金属組織がオーステナイト組織になるまで加熱した後、急冷してマルテンサイト組織に変態させる熱処理のことを意味する。
【0029】
第1非対向部511の硬度と第2非対向部512の硬度と第3非対向部513の硬度とのうちの少なくともいずれか一つは、第1対向部501の硬度、第2対向部502の硬度、第3対向部503の硬度および第4対向部504の硬度よりも低い。硬度とは、ビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)によって測定された硬度のことを意味する。
【0030】
本実施形態では、フラットスクリュー130は、その全体が、焼入れ処理が施されたステンレス鋼であるSUS440Cで形成されている。バレル140は、その全体が、焼入れ処理が施されたステンレス鋼であるSUS440Cで形成されている。
図6に示すように、本実施形態では、スクリューケース120は、上述したとおり、本体部121と、摩耗抑制部122を有している。摩耗抑制部122は、本体部121とフラットスクリュー130との間に配置されており、本体部121に圧入によって固定されている。第4対向部504は、摩耗抑制部122の表面に設けられており、第3非対向部513は、本体部121の表面および内部に設けられている。本体部121は、焼入れ処理が施されていないステンレス鋼であるSUS440で形成されている。摩耗抑制部122は、焼入れ処理が施されたステンレス鋼であるSUS440Cで形成されている。つまり、本実施形態では、第1対向部501、第2対向部502、第3対向部503および第4対向部504は、焼入れ処理が施された部材の表面に設けられており、第1非対向部511および第2非対向部512は、焼入れ処理が施された部材の表面および内部に設けられており、第3非対向部513は、焼入れ処理が施されていない部材の表面および内部に設けられている。
【0031】
焼入れ処理が施されていないステンレス鋼であるSUS440のビッカース硬さは、約230HVであり、焼入れ処理が施されたステンレス鋼であるSUS440Cのビッカース硬さは、610~650HVである。そのため、摩耗抑制部122は、本体部121の硬度よりも高い硬度を有しており、フラットスクリュー130の硬度およびバレル140の硬度と同じ硬度を有している。換言すれば、第3非対向部513の硬度は、第1対向部501の硬度、第2対向部502の硬度、第3対向部503の硬度、第4対向部504の硬度、第1非対向部511の硬度および第2非対向部512の硬度よりも低い。
【0032】
図7には、
図6に矢印Aで示した方向から視たスクリューケース120が表されている。
図7に示すように、スクリューケース120の本体部121には、ホッパー30が接続される材料供給口125が設けられている。スクリューケース120の摩耗抑制部122には、摩耗抑制部122によって材料供給口125が塞がれないように切欠部126が設けられている。本実施形態では、本体部121には凸部127が設けられており、摩耗抑制部122には凹部128が設けられている。凸部127と凹部128とが係合することによって、摩耗抑制部122がフラットスクリュー130とともに本体部121に対して回転することが抑制される。
【0033】
図8は、冷媒流路190の構成を示す断面図である。スクリューケース120には、流路溝129が設けられている。流路溝129は、フラットスクリュー130の円周方向に沿って設けられている。本体部121とバレル140との間には、冷却板170が配置されている。冷却板170は、平坦面を有し、この平坦面によって流路溝129を覆うように本体部121に固定されている。本実施形態では、本体部121と冷却板170とバレル140とがボルトによって固定されている。流路溝129と冷却板170とによって冷媒が流れる冷媒流路190が画定されている。本実施形態では、冷媒として、水が用いられる。冷媒は、例えば、図示していないポンプから供給される。尚、冷却板170のことを蓋部材と呼ぶことがある。
【0034】
冷却板170には、流路溝129を挟むようにして2つのシール溝171A,171Bが設けられている。上述した流路溝129を覆う平坦面は、2つのシール溝171A,171Bの間に設けられている。各シール溝171A,171Bは、平坦な底面と、互いに向かう合う側壁面とを有している。各シール溝171A,171Bには、冷媒流路190をシールするためのシール部材180A,180Bが配置されている。本実施形態では、各シール溝171A,171Bは、流路溝129に沿って円環状に設けられている。各シール部材180A,180Bは、円環状に形成されている。各シール部材180A,180Bは、ゴム材料で形成されている。本実施形態では、各シール部材180A,180Bは、フッ素ゴムで形成されている。
【0035】
以下の説明では、流路溝129の外側に設けられたシール溝171Aのことを外周シール溝171Aと呼ぶことがあり、流路溝129の内側に設けられたシール溝171Bのことを内周シール溝171Bと呼ぶことがあり、外周シール溝171Aに配置されたシール部材180Aのことを外周シール部材180Aと呼ぶことがあり、内周シール溝171Bに配置されたシール部材180Bのことを内周シール部材180Bと呼ぶことがある。外周シール溝171Aと内周シール溝171Bとを特に区別せずに説明する場合には、単にシール溝171と呼ぶ。外周シール部材180Aと内周シール部材180Bとを特に区別せずに説明する場合は、単にシール部材180と呼ぶ。
図8において、外周シール溝171Aおよび外周シール部材180Aに係る構成要素には、符号の末尾に「A」を付し、内周シール溝171Bおよび内周シール部材180Bに係る構成要素には、符号の末尾に「B」を付している。以下の説明において、各構成要素の所属を特に区別せずに説明する場合は、符号の末尾に「A」や「B」を付さずに説明する。
【0036】
図9は、シール部材180構成を示す断面図である。
図9には、変形前のシール部材180の断面が実線で表されており、変形後のシール部材180の断面が二点鎖線で表されている。シール部材180は、平坦部181と、平坦部181から突き出した凸条部182とを有している。シール部材180の円周方向に垂直な断面において、平坦部181は、矩形状の断面形状を有しており、凸条部182は、平坦部181の一辺から突き出したドーム状の断面形状を有している。以下の説明では、シール部材180のうちの凸条部182に設けられた曲面をシール部材180の上面と呼び、シール部材180の上面とは反対側に設けられた平坦面をシール部材180の底面と呼び、シール部材180の底面に対して垂直に設けられた平坦面をシール部材180の側面と呼ぶ。
【0037】
図8に示した外周シール溝171Aの底面に外周シール部材180Aの底面が接触し、かつ、外周シール溝171Aの外周側の側壁面に外周シール部材180Aの外周側の側面が接触するように、外周シール部材180Aは外周シール溝171Aに配置される。
図8に示した内周シール溝171Bの底面に内周シール部材180Bの底面が接触し、かつ、内周シール溝171Bの内周側の側壁面に内周シール部材180Bの内周側の側面が接触するように、内周シール部材180Bは内周シール溝171Bに配置される。本体部121と冷却板170とが固定される際に各シール部材180A,180Bの上面が本体部121に押し潰されて、各シール部材180A,180Bは変形する。各シール部材180A,180Bが変形することによって、各シール部材180A,180Bが本体部121や各シール溝171A,171Bの底面や各シール溝171A,171Bの側壁面に密着するので、冷媒流路190のシール性が確保される。冷媒流路190を流れる冷媒の圧力で各シール部材180A,180Bが押し潰されることによって、各シール部材180A,180Bと本体部121や各シール溝171A,171Bの底面や各シール溝171A,171Bの側壁面との密着性が高められる。
【0038】
図8に示すように、冷却板170の一部は、バレル140に接触している。本実施形態では、冷却板170は、ボルト穴が設けられた取付部175を有しており、バレル140のうちのスクリュー対向面142よりも外側の部分に取付部175が接触している。冷却板170のうちの取付部175よりも内側の部分とバレル140のうちのスクリュー対向面142よりも外側の部分との間には、断熱板179が配置されている。本実施形態では、断熱板179は、円環形状を有している。断熱板179の熱伝導率は、冷却板170の熱伝導率よりも低い。本実施形態では、冷却板170は、焼入れ処理が施されたステンレス鋼であるSUS440Cで形成されており、断熱板179は、ガラス繊維からなる主基材とケイ酸塩系バインダーからなる主材料とによって構成された複合材料で形成されている。
【0039】
図10は、冷却板170の取付部175の構成を示す斜視図である。本実施形態では、冷却板170には、5つの取付部175が設けられている。5つの取付部175は、冷却板170の円周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0040】
以上で説明した本実施形態の射出成形装置10によれば、フラットスクリュー130の第1対向部501および第2対向部502と、バレル140の第3対向部503と、スクリューケース120の第4対向部504は、比較的硬度の高い材料で形成されており、スクリューケース120の第3非対向部513は、比較的硬度の低い材料で形成されている。そのため、フラットスクリュー130の回転によって材料が擦りつけられる各対向部501~504の耐摩耗性を確保することができ、かつ、第3非対向部513に対する切削加工の容易性を確保できる。特に、本実施形態では、焼入れ処理が施されることによって耐摩耗性が高められた部材で摩耗抑制部122が構成されているので、第4対向部504の摩耗を効果的に抑制できる。また、本実施形態では、スクリューケース120の第3非対向部513は、焼入れ処理が施されていない本体部121の表面および内部に設けられており、スクリューケース120の第4対向部504は、焼入れ処理が施された後に本体部121に固定される摩耗抑制部122の表面に設けられている。そのため、本体部121に切削加工を施すことによって駆動モーター115や冷却板170等を取り付けるための穴や溝等を容易に形成でき、本体部121に摩耗抑制部122を固定することによってスクリューケース120の耐摩耗性を容易に確保できる。したがって、スクリューケース120全体に焼入れ処理が施された形態に比べて、スクリューケース120の耐摩耗性を確保しつつスクリューケース120の加工コストを低減できる。また、スクリューケース120全体に焼入れ処理を施した場合、焼入れ処理によってスクリューケース120の寸法が狙った寸法からずれることがある。本実施形態では、本体部121には焼入れ処理が施されていないので、本体部121を寸法精度良く形成できる。
【0041】
また、本実施形態では、シール部材180が平坦部181と凸条部182とを有しており、平坦部181の平坦な面がシール溝171の底面や側壁面に接触するので、円形断面を有するシール部材に比べてシール部材180とシール溝171の底面や側壁面との接触面積を確保しやすくできる。そのため、冷媒流路190のシール性を高めることができる。さらに、凸条部182がスクリューケース120に接触するので、冷却板170によってスクリューケース120の流路溝129を覆う際にスクリューケース120と冷却板170との間にシール部材180が噛み込まれることを抑制できる。特に、本実施形態では、流路溝129を挟むようにして、複数のシール部材180が配置されるので、冷媒流路190のシール性をさらに高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、バレル140のうちのスクリュー対向面142よりも外側に設けられた部分に冷却板170の取付部175が接触しているので、バレル140の熱が冷却板170を介して冷媒に効果的に伝達される。そのため、スクリュー対向面142の中央部に比べて、スクリュー対向面142の外周部が低温に保たれるので、フラットスクリュー130とバレル140との間で材料を安定して可塑化でき、可塑化した材料を連通孔146から安定して排出させることができる。特に、本実施形態では、冷却板170には5つの取付部175が冷却板170の円周方向に沿って等間隔で配置されているので、円周方向に沿ってスクリュー対向面142の温度にむらが生じることを抑制できる。さらに、冷却板170のうちの取付部175よりも内側の部分とバレル140のうちのスクリュー対向面142よりも外側の部分との間は、断熱板179によって断熱されているので、スクリュー対向面142の中央部の温度が低くなりすぎることが抑制される。
【0043】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態における三次元造形装置50の概略構成を示す断面図である。三次元造形装置50は、造形ユニット55と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500とを備えている。造形ユニット55は、可塑化部110と、吐出部60とを備えている。可塑化部110の構成は、第1実施形態と同じである。
図11では、
図5に示した冷却板170や断熱板179や冷媒流路190等の図示が省略されている。可塑化部110には、ホッパー30が接続されている。吐出部60には、溶融材料を吐出するノズル61と、ノズル61からの溶融材料の吐出のオンオフを切り替えるバルブ70とが設けられている。バルブ70は、制御部500の制御下で駆動される。
【0044】
ステージ300は、ノズル61に対向する造形面310を有している。造形面310の上に三次元造形物が造形される。本実施形態では、造形面310は、水平方向に平行に設けられている。ステージ300は、移動機構400によって支持されている。
【0045】
移動機構400は、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、ステージ300を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態における移動機構400は、3つのモーターが発生させる動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成されている。各モーターは、制御部500の制御下で駆動される。尚、移動機構400は、ステージ300を移動させずに造形ユニット55を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。また、移動機構400は、ステージ300と造形ユニット55との両方を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。
【0046】
図12は、三次元造形装置50によって三次元造形物OBが造形される様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置50は、制御部500の制御下で、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させつつノズル61から溶融材料を吐出することによって、ステージ300の上に造形材料の層を積層して所望の形状の三次元造形物OBを造形する。
【0047】
以上で説明した本実施形態における三次元造形装置50によれば、第1実施形態と同様に、フラットスクリュー130の回転によって材料が擦りつけられる各対向部501~504の耐摩耗性を確保することができ、かつ、第3非対向部513に対する切削加工の容易性を確保できる。
【0048】
C.他の実施形態:
(C1)上述した第1実施形態における射出成形装置10および第2実施形態の三次元造形装置50では、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間に、本体部121に固定され、かつ、本体部121の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部122が設けられている。これに対して、スクリューケース120には摩耗抑制部122が設けられずに、フラットスクリュー130とスクリューケース120との間に、フラットスクリュー130に固定され、かつ、フラットスクリュー130の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部が設けられてもよい。また、スクリューケース120に摩耗抑制部122が設けられ、さらに、フラットスクリュー130とスクリューケース120との間に、フラットスクリュー130に固定され、かつ、フラットスクリュー130の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部が設けられてもよい。スクリューケース120に摩耗抑制部122が設けられない場合には、本体部121には耐摩耗性を確保するために焼入れ処理が施されることが好ましい。フラットスクリュー130に摩耗抑制部が固定される場合には、フラットスクリュー130には切削加工の容易性を確保するために焼入れ処理が施されていないことが好ましい。つまり、この場合には、第1非対向部511の硬度は、摩耗抑制部の表面に設けられた第2対向部502の硬度よりも低くてもよい。
【0049】
(C2)上述した第1実施形態における射出成形装置10および第2実施形態の三次元造形装置50では、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間に摩耗抑制部122が設けられている。これに対して、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間に摩耗抑制部122が設けられずに、フラットスクリュー130とバレル140との間に、フラットスクリュー130に固定され、かつ、フラットスクリュー130の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部が設けられてもよい。また、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間に摩耗抑制部122が設けられずに、フラットスクリュー130とバレル140との間に、バレル140に固定され、かつ、バレル140の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部が設けられてもよい。フラットスクリュー130に摩耗抑制部が固定される場合には、フラットスクリュー130には切削加工の容易性を確保するために焼入れ処理が施されていないことが好ましい。つまり、この場合には、第1非対向部511の硬度は、摩耗抑制部の表面に設けられた第1対向部501の硬度よりも低くてもよい。また、バレル140に摩耗抑制部が固定される場合には、バレル140には切削加工の容易性を確保するために焼入れ処理が施されていないことが好ましい。つまり、この場合には、第2非対向部512の硬度は、摩耗抑制部の表面に設けられた第3対向部503の硬度よりも低くてもよい。
【0050】
(C3)上述した第1実施形態における射出成形装置10および第2実施形態の三次元造形装置50では、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間に摩耗抑制部122が設けられている。これに対して、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間だけでなく、フラットスクリュー130とバレル140との間にも摩耗抑制部が設けられてもよい。例えば、フラットスクリュー130とスクリューケース120の本体部121との間には、本体部121に固定された摩耗抑制部122と、フラットスクリュー130に固定され、かつ、フラットスクリュー130の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部とが設けられ、フラットスクリュー130とバレル140との間には、フラットスクリュー130に固定され、かつ、フラットスクリュー130の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部と、バレル140に固定され、かつ、バレル140の硬度よりも高い硬度を有する摩耗抑制部とが設けられてもよい。
【0051】
(C4)上述した第1実施形態における射出成形装置10および第2実施形態の三次元造形装置50では、フラットスクリュー130の第1対向部501および第2対向部502と、バレル140の第3対向部503と、スクリューケース120の第4対向部504とは、それぞれ、焼入れ処理が施された部材の表面に設けられている。これに対して、フラットスクリュー130の第1対向部501および第2対向部502と、バレル140の第3対向部503と、スクリューケース120の第4対向部504とのうちの少なくともいずれか一つは、焼入れ処理が施されていない部材の表面に設けられてもよい。この場合、焼入れ処理が施されていない部材として、例えば、チタン合金等のように比較的高い硬度を有する材料で形成された部材が用いられることが好ましい。
【0052】
(C5)上述した第1実施形態における射出成形装置10および第2実施形態の三次元造形装置50では、冷媒流路190のシール性を確保するために、平坦部181と凸条部182とを有するシール部材180が用いられている。これに対して、シール部材180は、平坦部181と凸条部182とを有しなくてもよい。例えば、シール部材180として、円形断面を有する一般的なOリングが用いられてもよい。
【0053】
(C6)上述した第1実施形態における射出成形装置10、および、第2実施形態の三次元造形装置50では、流路溝129を挟んで外周シール溝171Aと内周シール溝171Bとが設けられている。これに対して、外周シール溝171Aと内周シール溝171Bとのいずれか一方が設けられていなくてもよい。
【0054】
(C7)上述した第1実施形態における射出成形装置10、および、第2実施形態の三次元造形装置50では、冷却板170の一部である取付部175は、バレル140に接触している。これに対して、冷却板170は、バレル140に接触する部分を有しなくてもよい。
【0055】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0056】
(1)本開示の第1の形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
この形態の可塑化装置によれば、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、バレルとの対向部の摩耗を抑制しつつローターに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がバレルに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつバレルに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、ケースとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がケースに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保できる。
【0057】
(2)上記形態の可塑化装置は、前記摩耗抑制部は、焼入れ処理が施された部材で構成されてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、摩耗抑制部が設けられた部分の摩耗を効果的に抑制できる。
【0058】
(3)上記形態の可塑化装置は、シール溝および平坦面が設けられた蓋部材と、前記シール溝内に配置されたシール部材と、を備え、前記ケースは、前記ローターの周方向に沿って設けられた流路溝を有し、前記蓋部材は、前記平坦面が前記流路溝を覆うことによって冷媒が流れる冷媒流路が画定され、かつ、前記シール溝が前記流路溝に沿うように配置され、前記シール部材は、平坦部と凸条部とを有し、前記平坦部が前記シール溝の底面に接触し、かつ、前記凸条部が前記ケースのうちの前記流路溝に沿った面に接触するように前記シール溝内に配置されることによって前記冷媒流路をシールしてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、シール部材の平坦部がシール溝の底面に接触するので、円形断面を有するシール部材に比べてシール部材とシール溝の底面との接触面積を確保しやすくでき、さらに、凸条部がケースに接触するので、蓋部材によってケースの流路溝を覆う際にケースと蓋部材との間にシール部材が噛み込まれることを抑制できる。
【0059】
(4)上記形態の可塑化装置は、前記蓋部材には、前記流路溝を挟むように複数の前記シール溝が設けられ、それぞれの前記シール溝には、前記シール部材が配置されてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、流路溝を挟むように複数のシール部材が配置されるので、冷媒流路のシール性をさらに高めることができる。
【0060】
(5)上記形態の可塑化装置は、前記蓋部材の一部は、前記バレルに接触してもよい。
この形態の可塑化装置によれば、バレルの熱が蓋部材を介して冷媒に効果的に伝達されるので、バレルの中央部に比べてバレルの外周部を低温に保つことができる。そのため、ローターとバレルとの間で材料を安定して可塑化でき、可塑化した材料を連通孔から安定して排出させることができる。
【0061】
(6)本開示の第2の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、材料を可塑化する可塑化部と、前記可塑化部によって可塑化された前記材料を成形型に射出するノズルと、を備える。前記可塑化部は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
この形態の射出成形装置によれば、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、バレルとの対向部の摩耗を抑制しつつローターに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がバレルに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつバレルに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、ケースとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がケースに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保できる。
【0062】
(7)本開示の第3の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化する可塑化部と、前記可塑化部によって可塑化された前記材料をステージに吐出するノズルと、を備える。前記可塑化部は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が設けられた溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターを収容するケースと、前記ローターとバレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、前記ローターと前記バレルとの間と前記ローターと前記ケースとの間とのうちの少なくとも一方に設けられた摩耗抑制部と、を備える。前記ローターと前記バレルとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記バレルに固定され、前記ローターと前記バレルとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有し、前記ローターと前記ケースとの間に前記摩耗抑制部が設けられる場合、前記摩耗抑制部は、前記ローターまたは前記ケースに固定され、前記ローターと前記ケースとのうちの前記摩耗抑制部が固定される一方のビッカース硬さよりも高いビッカース硬さを有する。
この形態の三次元造形装置によれば、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、バレルとの対向部の摩耗を抑制しつつローターに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとバレルとの間に設けられた摩耗抑制部がバレルに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつバレルに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がローターに固定される場合には、ケースとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保でき、ローターとケースとの間に設けられた摩耗抑制部がケースに固定される場合には、ローターとの対向部の摩耗を抑制しつつケースに対する切削加工の容易性を確保できる。
【0063】
本開示は、可塑化装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、射出成形装置、三次元造形装置等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…射出成形装置、30…ホッパー、50…三次元造形装置、55…造形ユニット、100…射出部、110…可塑化部、115…駆動モーター、120…スクリューケース、121…本体部、122…摩耗抑制部、129…流路溝、130…フラットスクリュー、135…溝部、140…バレル、146…連通孔、148…加熱部、150…射出制御機構、160…ノズル、170…冷却板、171…シール溝、179…断熱板、180…シール部材、181…平坦部、182…凸条部、190…冷媒流路、200…型締部、210…成形型、270…押出機構、300…ステージ、400…移動機構、500…制御部、501…第1対向部、502…第2対向部、503…第3対向部、504…第4対向部、511…第1非対向部、512…第2非対向部、513…第3非対向部