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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240528BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240528BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240528BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240528BHJP
   B42D 25/435 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/28
G02B5/22
B42D25/328 100
B42D25/435
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020103571
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196530
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正志
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107471(JP,A)
【文献】特開2010-173220(JP,A)
【文献】特表2003-520986(JP,A)
【文献】特開2009-262509(JP,A)
【文献】特表2006-504545(JP,A)
【文献】国際公開第2005/013369(WO,A1)
【文献】特開2009-134093(JP,A)
【文献】特開2009-134094(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084960(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043749(WO,A1)
【文献】特開2016-080848(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195367(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268261(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101331501(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/28
G02B 5/22
B42D 25/328
B42D 25/435
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザー加工部としての1以上の凹部を一方の主面に有している積層体を含んだ多層膜と、
前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記多層膜に可視域内の光を入射させた場合に前記他方の主面から射出される光を、この光の射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面であって、前記他方の主面から射出される前記光のうち、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させる反射面と、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層と
を備えた表示体。
【請求項2】
前記反射面は回折格子を含んだ請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記反射面は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の回折格子群を含み、前記複数の回折格子群の各々は、格子定数が互いに異なる第1乃至第3回折格子を含んだ請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
前記1以上の凹部は、1以上の第1凹部と、前記1以上の第1凹部とは深さが異なる1以上の第2凹部と、前記1以上の第1凹部及び前記1以上の第2凹部とは深さが異なる1以上の第3凹部とを含み、前記1以上の第1凹部の各々は前記第1回折格子の位置に設けられ、前記1以上の第2凹部の各々は前記第2回折格子の位置に設けられ、前記1以上の第3凹部の各々は前記第3回折格子の位置に設けられた請求項3に記載の表示体。
【請求項5】
前記光吸収層は、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第1回折格子と各々が向き合った1以上の第1光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第2回折格子と各々が向き合った1以上の第2光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第3回折格子と各々が向き合った1以上の第3光吸収部とを含み、前記1以上の第1光吸収部、前記1以上の第2光吸収部、及び前記1以上の第3光吸収部は、同じ色に着色している請求項4に記載の表示体。
【請求項6】
前記光吸収層は、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第1回折格子と各々が向き合った1以上の第1光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第2回折格子と各々が向き合った1以上の第2光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第3回折格子と各々が向き合った1以上の第3光吸収部とを含み、前記1以上の第1光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第2光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第3光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第1光吸収部と前記1以上の第2光吸収部と前記1以上の第3光吸収部とは色が異なる請求項4に記載の表示体。
【請求項7】
前記第1回折格子、前記第2回折格子及び前記第3回折格子は、第1方向から白色光で照明した場合に、前記第1方向とは異なる第2方向へ、それぞれ、赤色、緑色及び青色の回折光を射出し、前記1以上の第1光吸収部、前記1以上の第2光吸収部、及び前記1以上の第3光吸収部は、それぞれ、シアン色、マゼンタ色及びイエロー色に着色している請求項6に記載の表示体。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を含んだ表示体付き物品。
【請求項9】
屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備え、前記反射面は、前記1以上の凹部が設けられた前記積層体を含んだ多層膜に可視域内の光を入射させた場合に、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させるブランク媒体を準備することと、
前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することと
を含んだ表示体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により表示体を製造することと、
前記表示体を物品に支持させることと
を含んだ表示体付き物品の製造方法。
【請求項11】
ブランク媒体と、前記ブランク媒体を支持した物品とを含んだブランク媒体付き物品であって、前記ブランク媒体は、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備え、前記反射面は、前記1以上の凹部が設けられた前記積層体を含んだ多層膜に可視域内の光を入射させた場合に、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させるブランク媒体付き物品を準備することと、
前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することと
を含んだ表示体付き物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品が真正品であることを証明する目的で、偽造や複製が困難なホログラムが利用されている。例えば、顔画像などの個人情報が記録されたカードに、ホログラムを含んだ透明フィルムを貼り合わせると、個人情報を改竄から保護することができる。また、紙幣や有価証券においてホログラムを使用すると、それらの不正な複製を抑止することができる。更に、近年、ID(identification)カード等に、ホログラムを利用して顔画像を記録することも提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-8746号公報
【文献】特開2014-16418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、ホログラムは、それ自体の偽造や複製が困難であるため、不正な複製を抑止することが望まれる様々な物品に使用されている。
【0005】
しかしながら、ホログラムを利用して顔画像などの画像をブランク媒体へオンデマンドで記録する場合、例えば、ホログラムを画素毎にブランク媒体上へ転写する必要がある。それ故、この方法により短時間で多数の表示体を製造するには、複数の製造装置を並列で稼働する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、構造色の画像を表示する表示体を短い時間で製造可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザー加工部としての1以上の凹部を一方の主面に有している積層体を含んだ多層膜と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記多層膜に可視域内の光を入射させた場合に前記他方の主面から射出される光を、この光の射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面であって、前記他方の主面から射出される前記光のうち、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させる反射面と、前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層とを備えた表示体が提供される。ここで、「可視域」は、350乃至750nmの波長域を意味する。
【0008】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る表示体と、前記表示体を支持した物品と
を含んだ表示体付き物品が提供される。
【0009】
本発明の第3側面によると、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備え、前記反射面は、前記1以上の凹部が設けられた前記積層体を含んだ多層膜に可視域内の光を入射させた場合に、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させるブランク媒体を準備することと、前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することとを含んだ表示体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第4側面によると、第3側面に係る方法により表示体を製造することと、前記表示体を物品に支持させることとを含んだ表示体付き物品の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第5側面によると、ブランク媒体と、前記ブランク媒体を支持した物品とを含んだブランク媒体付き物品であって、前記ブランク媒体は、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備え、前記反射面は、前記1以上の凹部が設けられた前記積層体を含んだ多層膜に可視域内の光を入射させた場合に、前記1以上の凹部に対応した部分で強め合う干渉を生じて前記多層膜を透過した光を、前記多層膜へ再度入射させるブランク媒体付き物品を準備することと、前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することとを含んだ表示体付き物品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図。
図2図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図。
図3図1に示す表示体のIII-III線に沿った断面図。
図4図1に示す表示体のIV-IV線に沿った断面図。
図5図1乃至図4に示す表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図。
図6図5に示すブランク媒体のVI-VI線に沿った断面図。
図7図1乃至図4に示す表示体の製造における凹部形成工程を示す平面図。
図8図7に示す構造のVIII-VIII線に沿った断面図。
図9】第1比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる光学的振る舞いを示す断面図。
図10】第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる光学的振る舞いを示す断面図。
図11】第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる他の光学的振る舞いを示す断面図。
図12】第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる更に他の光学的振る舞いを概略的に示す断面図。
図13】第1変形例に係る表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図。
図14】第2変形例に係る表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図。
図15】本発明の一実施形態に係る表示体付き物品を示す断面図。
図16図15に示す表示体付き物品の製造に使用可能なブランク媒体付き物品を示す断面図。
図17】多層膜の凹部に対応した部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルの一例を示すグラフ。
図18】多層膜の凹部に対応した部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルの他の例を示すグラフ。
図19】多層膜の凹部に対応した部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルの更に他の例を示すグラフ。
図20】例2の多層膜について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1に示す表示体のIII-III線に沿った断面図である。図4は、図1に示す表示体のIV-IV線に沿った断面図である。
【0015】
図1乃至図4に示す表示体1は、図2乃至図3に示すように、多層膜13と、前面層11と、反射層12と、背面層14と、光吸収層15とを含んでいる。表示体1の光吸収層15側の面は前面であり、その裏面は背面である。以下、各層の2つの主面のうち、表示体1の前面により近い面を前面と呼び、表示体1の背面により近い面を背面と呼ぶ。
【0016】
多層膜13は、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなる積層体を含んだ誘電体多層膜である。ここでは、多層膜13は、屈折率が互いに異なる誘電体層13a及び13bを交互に積層してなる積層体によって構成されている。後述するように、多層膜13は、上記積層体の前面を被覆した保護層を更に含むことができる。この保護層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0017】
多層膜13を構成している各層の厚さは、例えば、5nm乃至500μmの範囲内にある。
【0018】
多層膜13を構成している各層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。ここでは、多層膜13を、屈折率(材質)が異なる2種類の誘電体層13a及び13bで構成しているが、多層膜13は、屈折率(材質)が異なる3種類以上の誘電体層で構成してもよい。
【0019】
積層体の前面には、図1乃至図4に示すように、1以上の凹部として、第1凹部RRと第2凹部RGと第3凹部RBとが設けられている。第1凹部RRと第2凹部RGと第3凹部RBとは、ここでは、誘電体層13aのうち積層体の最表面に位置したものに設けられている。第3凹部RBは省略することができる。また、第2凹部RGも更に省略することができる。
【0020】
第1凹部RRと第2凹部RGと第3凹部RBとは、図2乃至図4に示すように、深さが互いに異なっている。ここでは、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの順に深さが浅くなっているが、それらの何れが最も浅くてもよく、また、それらの何れが最も深くてもよい。
【0021】
なお、図2乃至図4では、それら凹部の深さの相違を分かり易くするため、最前面側の誘電体層13aを他の誘電体層13a及び13bよりも厚く描いている。最前面側の誘電体層13aは、他の誘電体層13a及び13bの何れかと同じ厚さを有していてもよく、それらの何れかよりも薄くてもよい。
【0022】
多層膜13は、白色光を第1入射角で入射させた場合に、これら凹部が設けられていない位置で、例えば、可視域の全体に亘って高い透過率を示すか、又は、可視域の全体に亘って低い透過率を示す。ここでは、一例として、多層膜13は、白色光を第1入射角で入射させた場合に、これら凹部が設けられていない位置で、可視域の全体に亘って低い透過率を示すこととする。なお、「白色光」は、可視域の全体に亘ってほぼ等しい強度を有する光である。
【0023】
多層膜13のうち、第1凹部RRに対応した第1部分と、第2凹部RGに対応した第2部分と、第3凹部RBに対応した第3部分と、凹部が設けられていない部分とは、白色光を第1入射角で入射させた場合に異なる透過スペクトルを示す。第1乃至第3部分は、白色光を第1入射角で入射させた場合に、可視域内で最大又は最小の透過率を示す波長が異なっている。
【0024】
例えば、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第1凹部RRに対応した第1部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、第1波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより大きく、この第1波長域内の第1波長で最大の透過率を示す。この場合、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第2凹部RGに対応した第2部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、例えば、第2波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより大きく、この第2波長域内の第2波長で最大の透過率を示す。そして、この場合、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第3凹部RBに対応した第3部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、例えば、第3波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより大きく、この第3波長域内の第3波長で最大の透過率を示す。
【0025】
或いは、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第1凹部RRに対応した第1部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、第1波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより小さく、この第1波長域内の第1波長で最小の透過率を示す。この場合、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第2凹部RGに対応した第2部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、例えば、第2波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより小さく、この第2波長域内の第2波長で最小の透過率を示す。そして、この場合、多層膜13へ白色光を第1入射角で入射させた場合の透過スペクトルは、第3凹部RBに対応した第3部分では、凹部が設けられていない部分と比較して、例えば、第3波長域における透過率と他の波長域における透過率との比がより小さく、この第3波長域内の第3波長で最小の透過率を示す。
ここでは、一例として、多層膜13は前者の構成を採用していることとする。
【0026】
第1乃至第3波長域は、可視域内の互いに異なる波長域である。例えば、第2波長域の最長波長は第1波長域の最短波長よりも短く、第3波長域の最長波長は第2波長域の最短波長よりも短い。ここでは、一例として、第1、第2及び第3波長域は、それぞれ、赤色、緑色及び青色の波長域であるとする。
【0027】
前面層11、反射層12及び背面層14は、多層膜13の背面上に、この順に積層されている。
【0028】
前面層11は、例えば、透明樹脂からなる。この透明樹脂は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂の硬化物であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、接着剤又は粘着剤であってもよい。前面層11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0029】
前面層11の背面には、レリーフ構造が設けられている。レリーフ構造は、前面層11と反射層12との界面である反射面が、多層膜13に白色光を第1入射角で入射させた場合に、多層膜13の背面から射出される光を、この光の射出角とは異なる第2入射角で多層膜13の背面に入射させることを可能とする。
【0030】
ここでは、レリーフ構造は、反射面に、複数の第1回折格子DGRと、複数の第2回折格子DGGと、複数の第3回折格子DGBとを生じさせている。また、ここでは、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBの各々は、ブレーズド回折格子である。第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBは、それらを構成している溝又は稜の配列方向が互いに平行である。ここでは、それら溝又は稜の配列方向は、Y方向に平行である。
【0031】
第1回折格子DGRは、ブレーズ角及び格子線の空間周波数又は格子定数(線間隔)が互いに等しい。第2回折格子DGGは、ブレーズ角及び格子線の空間周波数又は格子定数(線間隔)が互いに等しい。第3回折格子DGBは、ブレーズ角及び格子線の空間周波数又は格子定数(線間隔)が互いに等しい。
【0032】
第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBは、それらを構成している傾斜面が同じ方向に傾いている。一例によれば、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBは、ブレーズ角が等しい。
【0033】
第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBは、格子線の空間周波数が互いに異なっている。ここでは、第1回折格子DGRは格子線の空間周波数が最も小さく、第3回折格子DGBは格子線の空間周波数が最も大きい。第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGB間での、格子線の空間周波数の大小関係は、これとは異なっていてもよい。
【0034】
第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBは、図1に示すように、複数の回折格子群DGTを構成している。回折格子群DGTは、互いに交差する第1及び第2方向に配列している。ここでは、回折格子群DGTは、X方向及びY方向に配列している。各回折格子群DGTは、3つの第1回折格子DGRと、3つの第2回折格子DGGと、3つの第3回折格子DGBとを含んでいる。
【0035】
第1凹部RRの各々は、図1及び図2に示すように、第1回折格子DGRの位置に設けられている。第2凹部RGの各々は、図1及び図3に示すように、第2回折格子DGGの位置に設けられている。第3凹部RBの各々は、図1及び図4に示すように、第3回折格子DGBの位置に設けられている。
【0036】
第1回折格子DGRは、多層膜13に白色光を第1入射角で入射させた場合に、多層膜13の第1凹部RRに対応した第1部分を透過した光(第1波長の光)を、多層膜13へ第2入射角で再度入射させるように、ブレーズ角及び格子定数(線間隔)が定められている。第1波長の光が赤色の光である場合、第1回折格子DGRを構成している格子線の空間周波数は、例えば、950乃至2050本/mmの範囲内とする。また、第1回折格子DGRのブレーズ角は、例えば、1°乃至89°の範囲内とする。
【0037】
第2回折格子DGGは、多層膜13に白色光を第1入射角で入射させた場合に、多層膜13の第2凹部RGに対応した第2部分を透過した光(第2波長の光)を、多層膜13へ第2入射角で再度入射させるように、ブレーズ角及び格子定数が定められている。第2波長の光が緑色の光である場合、第2回折格子DGGを構成している格子線の空間周波数は、例えば、950乃至2050本/mmの範囲内とする。また、第2回折格子DGGのブレーズ角は、例えば、第1回折格子DGRのブレーズ角と等しくする。
【0038】
第3回折格子DGBは、多層膜13に白色光を第1入射角で入射させた場合に、多層膜13の第3凹部RBに対応した第3部分を透過した光(第3波長の光)を、多層膜13へ第2入射角で再度入射させるように、ブレーズ角及び格子定数が定められている。第3波長の光が青色の光である場合、第3回折格子DGBを構成している格子線の空間周波数は、例えば、950乃至2050本/mmの範囲内とする。また、第3回折格子DGBのブレーズ角は、例えば、第1回折格子DGRのブレーズ角と等しくする。
【0039】
第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBの各々は、ブレーズド回折格子以外の回折格子であってもよい。それら回折格子がブレーズド回折格子以外の回折格子であり、第1、第2及び第3波長の光が、それぞれ、赤、緑及び青色の光である場合、それら回折格子の格子定数は、例えば、ブレーズド回折格子に関して上述した範囲内とする。
【0040】
また、第1乃至第3レリーフ構造が上記界面に生じさせる構造は、多層膜13に白色光を第1入射角で入射させた場合に、多層膜13を透過した光を、多層膜13へ第2入射角で再度入射させることができるものであれば、回折格子としての機能を有していなくてもよい。
【0041】
反射層12は、図2乃至図4に示すように、前面層11の背面を被覆している。反射層12は、透明材料又は不透明材料からなる。反射層12が透明材料からなる場合、その屈折率は、前面層11の屈折率とは異なっている。この透明材料としては、例えば、誘電体層13a及び13bについて例示した材料を使用することができる。また、不透明材料としては、例えば、アルミニウム、銀及びそれらの1以上を含んだ合金などの金属材料を使用することができる。反射層12は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0042】
背面層14は、反射層12の背面を被覆している。背面層14は、例えば、透明樹脂からなる。背面層14は、不透明であってもよい。背面層14を構成する樹脂は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂の硬化物であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、接着剤又は粘着剤であってもよい。背面層14は、省略することができる。
【0043】
光吸収層15は、多層膜13の前面のうち1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆している。即ち、光吸収層15は、多層膜13の前面のうち、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの何れも設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆している。
【0044】
光吸収層15は、図1乃至図4に示すように、1以上の第1光吸収部IRと、1以上の第2光吸収部IGと、1以上の第3光吸収部IBとを含んでいる。
【0045】
第1光吸収部IRの各々は、1以上の凹部が設けられていない位置で、第1回折格子DGRと向き合っている。即ち、第1光吸収部IRの各々は、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの何れも設けられていない位置で、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBと向き合うことなしに、第1回折格子DGRと向き合っている。第1光吸収部IRは、これと向き合った第1回折格子DGRからの回折光が観察者によって知覚されるのを防止する。
【0046】
第2光吸収部IGの各々は、1以上の凹部が設けられていない位置で、第2回折格子DGGと向き合っている。即ち、第2光吸収部IGの各々は、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの何れも設けられていない位置で、第3回折格子DGB及び第1回折格子DGRと向き合うことなしに、第2回折格子DGGと向き合っている。第2光吸収部IGは、これと向き合った第2回折格子DGGからの回折光が観察者によって知覚されるのを防止する。
【0047】
第3光吸収部IBの各々は、1以上の凹部が設けられていない位置で、第3回折格子DGBと向き合っている。即ち、第3光吸収部IBの各々は、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの何れも設けられていない位置で、第1回折格子DGR及び第2回折格子DGGと向き合うことなしに、第3回折格子DGBと向き合っている。第3光吸収部IBは、これと向き合った第3回折格子DGBからの回折光が観察者によって知覚されるのを防止する。
【0048】
第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBの各々は、例えば、プロセスインキなどのインキからなる着色層である。第1光吸収部IRは色が互いに等しく、第2光吸収部IGは色が互いに等しく、第3光吸収部IBは色が互いに等しい。即ち、第1光吸収部IRは、同じ色に着色している。第2光吸収部IGは、同じ色に着色している。第3光吸収部IBは、同じ色に着色している。
【0049】
第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBは、同じ色に着色していてもよい。例えば、第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBは、黒色に着色していてもよい。この場合、表示体1は、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBからの回折光を知覚可能な条件下で表示するカラー画像に対応したモノクロ画像を、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBからの回折光を知覚不可能な条件下で表示する。即ち、この場合、表示体1が表示する画像は、観察条件を変化させることにより、カラー画像とモノクロ画像との間で切り替わる。
【0050】
或いは、第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBは、色が異なっていてもよい。例えば、第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBは、それぞれ、シアン色、マゼンタ色及びイエロー色に着色していてもよい。この場合、表示体1は、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBからの回折光を知覚可能な条件下で表示するカラー画像に対応したカラー画像を、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBからの回折光を知覚不可能な条件下で表示する。即ち、この場合、表示体1は、加法混色によってカラー画像を表示可能であるのに加え、これに対応したカラー画像を減法混色によって表示することも可能である。この場合、表示体1が表示する画像は、加法混色によるカラー画像と、これに対応した減法混色によるカラー画像との間で切り替わる。
【0051】
次に、この表示体1の製造方法について説明する。
図5は、図1乃至図4に示す表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図である。図6は、図5に示すブランク媒体のVI-VI線に沿った断面図である。図7は、図1乃至図4に示す表示体の製造における凹部形成工程を示す平面図である。図8は、図7に示す構造のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【0052】
表示体1の製造に際しては、先ず、図5及び図6に示すブランク媒体1Aを準備する。ブランク媒体1Aは、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBが積層体に設けられておらず、光吸収層15を含んでいないこと以外は、上述した表示体1と同様の構造を有している。
【0053】
次に、積層体へのレーザービーム照射によって、画像を記録する。具体的には、積層体の前面のうち、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBを形成すべき領域へ、レーザービームを照射する。これにより、図7及び図8に示すように、積層体の前面に、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBを形成する。
【0054】
ビームスポットの直径は、通常、数10μmである。従って、このレーザービーム照射により、例えば、開口径が数10μm以上の凹部を形成することができる。なお、レーザービームの照射によって形成する凹部の深さは、レーザー装置がパルスレーザーである場合、例えば、パルス光の照射回数を変更することにより調節することができる。
【0055】
その後、図2乃至図4に示すように、上記の積層体を含む多層膜13の前面のうち、1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層15を形成する。例えば、インクジェット印刷により、図1乃至図4に示す、第1光吸収部IR、第2光吸収部IG及び第3光吸収部IBを形成する。
以上のようにして、表示体1を得る。
【0056】
次に、この表示体1の光学効果について説明する。
図9は、第1比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる光学的振る舞いを示す断面図である。図9には、光吸収層15を省略し、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBを設けた多層膜13の背面側に、回折格子を含んだ反射面を設置する代わりに、平坦な反射面REFを多層膜13の背面に対して平行に設置したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明したのと同様の表示体を描いている。
【0057】
なお、図9には、簡略化のために、多層膜13の背面側に設置される構造として、反射面REFのみを描いている。また、ここでは、理解を容易にするために、この表示体は、以下のように設計されているとする。
【0058】
即ち、この表示体の前面を光源LSが射出する白色光L1で照明した場合、多層膜13のうち凹部が設けられていない部分では、第1入射角θ1で入射した白色光の全ての光成分は、弱め合う干渉を生じるとする。また、多層膜13のうち第1凹部RRに対応した第1部分では、第1入射角θ1で入射した白色光のうち、赤色域内の第1波長を有する光は、強め合う干渉を生じて多層膜13を透過し、他の波長を有する光は弱め合う干渉を生じるとする。また、多層膜13のうち第2凹部RGに対応した第2部分では、第1入射角θ1で入射した白色光のうち、緑色域内の第2波長を有する光L2は、強め合う干渉を生じて多層膜13を透過し、他の波長を有する光は弱め合う干渉を生じるとする。そして、多層膜13のうち第3凹部RBに対応した第3部分では、第1入射角θ1で入射した白色光のうち、青色域内の第3波長を有する光は、強め合う干渉を生じて多層膜13を透過し、他の波長を有する光は弱め合う干渉を生じるとする。
【0059】
上記の通り、第1入射角θ1で多層膜13へ入射した白色光L1のうち、緑色域内の第2波長を有する光L2は、第2凹部RGに対応した第2部分において強め合う干渉を生じて、多層膜13を透過する。この透過光としての光L2は、反射面REFによって反射される。反射面REFは、多層膜13の背面に対して平行に設置されており、この反射光としての光L2は、反射面REFによって正反射される。その結果、光L2は、その射出角と等しい入射角で多層膜13へ再度入射する。
【0060】
通常、多層膜13から反射面REFまでの距離は、第2凹部RGの開口幅と比較して十分に短い。それ故、反射光としての光L2の多くは、多層膜13の第2部分へ再度入射する。第1入射角θ1で第2部分へ再度入射した光L2は、強め合う干渉を生じて、多層膜13を透過する。
【0061】
従って、観察方向が適切であれば、第2部分は、第2波長を有する光L2を観察者OBの目に向けて射出する。そして、この条件下では、第1及び第3部分も、それぞれ、第1波長を有する光及び第3波長を有する光を、観察者OBの目に向けて射出する。
【0062】
但し、この条件下では、第2部分が射出する光L2の射出角は、光L1の入射角と等しい。そして、第1及び第3部分が射出する光の射出角も、光L1の入射角と等しい。それ故、観察者OBの目には、多層膜13において強め合う干渉を生じた光だけでなく、多層膜13によって正反射された光L1も入射する。従って、観察者OBは、カラー画像を知覚できないか、又は、カラー画像を知覚できたとしても、それを鮮明な画像として知覚することはできない。
【0063】
図10は、第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる光学的振る舞いを示す断面図である。図11は、第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる他の光学的振る舞いを示す断面図である。図12は、第2比較例に係る表示体を白色光で照明した場合に生じる更に他の光学的振る舞いを概略的に示す断面図である。図10乃至図12には、光吸収層15を省略したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明したのと同様の表示体を描いている。
【0064】
なお、図10図11及び図12には、簡略化のために、多層膜13の背面側に設置される構造として、それぞれ、第2回折格子DGG、第1回折格子DGR及び第3回折格子DGBのみを描いている。また、ここでも、理解を容易にするために、多層膜13は、図9を参照しながら説明したのと同様に設計されているとする。
【0065】
この表示体では、図10に示すように、第1入射角θ1で多層膜13へ入射した白色光L1のうち、緑色域内の第2波長を有する光L2は、第2凹部RGに対応した第2部分において強め合う干渉を生じる。第2部分において強め合う干渉を生じた光L2は、多層膜13を透過し、第2回折格子DGGに入射する。第2回折格子DGGは、光L2を回折し、光L3として多層膜13へ第2入射角θ2で再度入射させる。
【0066】
多層膜13の透過特性は、入射光の入射角に応じて変化する。例えば、上記の通り、多層膜13のうち第2凹部RGに対応した第2部分では、第1入射角θ1で入射した第2波長の光L2は強め合う干渉を生じ、高い透過率を示す。そして、第2部分は、第1入射角θ1で入射した他の波長の光については、第2波長の光ほど高い透過率は示さない。しかしながら、第2部分は、第1入射角θ1とは異なる第2入射角θ2で入射した第2波長の光L3について高い透過率を示す可能性がある。
【0067】
従って、適切な設計を採用した場合には、第2部分は、第2波長を有する光L2を観察者OBの目に向けて射出する。そして、第1及び第3部分も、適切な設計を採用した場合には、それぞれ第1波長を有する光及び第3波長を有する光を、観察者OBの目に向けて射出する。
【0068】
また、上記の通り、第2入射角θ2は、第1入射角θ1とは異なっている。それ故、第1乃至第3部分が観察者OBの目に向けて射出する光の射出角も、第1入射角θ1とは異なっている。従って、観察者OBの目には、多層膜13によって正反射された光L1は入射せずに、多層膜13を透過した光のみが入射する。それ故、この場合、観察者OBは、図9を参照しながら説明した場合と比較して、カラー画像をより鮮明な画像として知覚することができる。
【0069】
しかしながら、多層膜13のうち凹部が設けられていない部分に入射した光L1の一部は、多層膜13を透過する。そして、この透過光は、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG又は第3回折格子DGBによって回折される。この回折光は、光L3として多層膜13へ入射し、その一部は多層膜13を透過する。
【0070】
多層膜13のうち凹部が設けられていない部分を透過した光L3であっても、図11及び図12に示すように、観察者OBの目に入射しなければ、上述したカラー画像のノイズにはならない。しかしながら、多層膜13のうち凹部が設けられていない部分を透過した光L3の一部は、観察者OBの目に入射する。
【0071】
図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1は、光吸収層15を含んでいる。光吸収層15は、多層膜13のうち凹部が設けられていない部分における光の透過を抑制する。従って、この表示体1によると、カラー画像を極めて鮮明な画像として表示することができる。
【0072】
以上の通り、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1は、図5及び図6を参照しながら説明したブランク媒体1Aの多層膜13に対するレーザー描画と、光吸収層15の形成とを行うことにより製造することができる。レーザー描画は、ホログラムを画素毎にブランク媒体上へ転写するプロセスと比較して、遥かに短時間で完了することができる。また、光吸収層15の形成も、例えば、インクジェット印刷を利用することにより、比較的短い時間で完了することができる。従って、上述した技術によると、構造色の画像を表示する表示体を短い時間で製造することが可能となる。
【0073】
また、先の説明から明らかな通り、この表示体1の製造には、高度且つ複雑な光学設計が必要であり、また、高い精度が要求される。従って、この表示体1は、偽造が困難である。
【0074】
上記の表示体1には、様々な変形が可能である。
図13は、第1変形例に係る表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図である。図14は、第2変形例に係る表示体の製造に使用可能なブランク媒体を示す平面図である。
【0075】
図13に示すブランク媒体1A2は、以下の構成を採用したこと以外は、図5及び図6を参照しながら説明したブランク媒体1Aと同様である。即ち、図13のブランク媒体1A2では、各回折格子群DGTにおいて、第1回折格子DGRはY方向に配列し、第2回折格子DGGはY方向に配列し、第3回折格子DGBはY方向に配列している。そして、各回折格子群DGTにおいて、第1回折格子DGRの列と、第2回折格子DGGの列と、第3回折格子DGBの列とは、この順序でX方向に配列している。
【0076】
図14に示すブランク媒体1A3は、以下の構成を採用したこと以外は、図5及び図6を参照しながら説明したブランク媒体1Aと同様である。即ち、図14のブランク媒体1A3では、各回折格子群DGTにおいて、第1回折格子DGRは2方向に配列し、第2回折格子DGGは2方向に配列し、第3回折格子DGBは2方向に配列している。
【0077】
このように、各回折格子群DGTにおける、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBの配置には、様々な変形が可能である。
【0078】
各回折格子群DGTにおいて、第1回折格子DGRの数、第2回折格子DGGの数及び第3回折格子DGBの数の各々は、3以外であってもよい。また、各回折格子群DGTにおいて、第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBの1種又は2種は省略することができる。
【0079】
次に、表示体付き物品について説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る表示体付き物品を概略的に示す断面図である。
この表示体付き物品100は、例えば、印刷物である。表示体付き物品100は、例えば、紙幣、有価証券、証明書類、クレジットカード、パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体、又は、内容物を包装する包装体である。
【0080】
表示体付き物品100は、上記の表示体1と、これを支持した物品110とを含んでいる。
【0081】
物品110は、これが印刷物である場合、印刷基材と、これに設けられた印刷層を含んでいる。印刷基材の材質は、例えば、プラスチック、金属、紙、又はそれらの複合体である。
【0082】
表示体1は、その前面が表示体付き物品100の外部と隣接するように、物品110によって支持されている。表示体1は、例えば、この物品110の表面に貼り付けるか又はこの物品110内に埋め込むことにより、物品110に支持させることができる。
【0083】
この表示体付き物品100は、例えば、表示体1を予め製造しておき、これを物品110に支持させることにより製造することができる。或いは、この表示体付き物品100は、以下の方法によって製造することもできる。
【0084】
図16は、図15に示す表示体付き物品の製造に使用可能なブランク媒体付き物品を示す断面図である。
図16に示すブランク媒体付き物品100Aは、多層膜13に、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBが設けられていないこと以外は、表示体付き物品100と同様の構造を有している。即ち、このブランク媒体付き物品100Aは、ブランク媒体1Aと、これを支持した物品110とを含んでいる。ブランク媒体付き物品100Aは、ブランク媒体1Aの代わりに、上述したブランク媒体1A2又は1A3を含んでいてもよい。
【0085】
このようなブランク媒体付き物品100Aを予め準備し、そのブランク媒体1Aへのレーザービーム照射によって、表示体付き物品100を製造してもよい。
【0086】
なお、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBを形成した積層体の前面が露出していると、表示体1又は表示体付き物品100の使用時に、それら凹部が摩擦等によって変形する可能性がある。それ故、積層体の前面には、透明材料からなる保護層を設けることが好ましい。
【0087】
保護層は、上記積層体の前面のみを覆うものであってもよく、表示体1の前面と物品110の前面とを覆うものであってもよい。
【0088】
厚い保護層は、多層膜13における干渉に影響を及ぼさない。他方、薄い保護層は、多層膜13における干渉に影響を及ぼし得る。即ち、後者の場合、保護膜は多層膜13の一部として用いられる。従って、この場合、多層膜13は、保護層を含んだ状態で上述した光学特性を示すように設計する。
【実施例
【0089】
以下に、具体例を記載する。
(例1)
本例では、以下の構成を採用したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明したのと同様の表示体1を製造した。
【0090】
ここでは、第1回折格子DGRとしては、格子線の空間周波数が1150本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。第2回折格子DGGとしては、格子線の空間周波数が1320本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。第3回折格子DGBとしては、格子線の空間周波数が1550本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。
【0091】
多層膜13は1つの誘電体層13aと1つの誘電体層13bとで構成した。誘電体層13aの材料としては屈折率が1.98であるものを使用し、その厚さは700nmとした。誘電体層13bの材料としては屈折率が1.28であるものを使用し、その厚さは650nmとした。
【0092】
誘電体層13a上には、保護層を形成した。保護層の材料としては屈折率が2.5であるものを使用し、その厚さは、多層膜13における干渉に影響を及ぼさない程度に十分に大きくした。
【0093】
第1凹部RRは、第1部分の厚さが600nmとなるように形成した。第2凹部RGは、第2部分の厚さが300nmとなるように形成した。そして、第3凹部RBは、第3部分の厚さが200nmとなるように形成した。光吸収層15は省略した。
【0094】
上記の構造を採用した多層膜13について、法線方向から白色光で照明した場合の透過スペクトルを、計算機シミュレーションによって求めた。その結果を、図17乃至図19に示す。
【0095】
図17は、多層膜13の第3凹部RBに対応した第3部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルを示すグラフである。図18は、多層膜13の第2凹部RGに対応した第3部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルを示すグラフである。図19は、多層膜13の第1凹部RRに対応した第3部分について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルを示すグラフである。
【0096】
図示しないが、多層膜13の凹部を設けていない部分の透過率は、可視域の全体に亘ってほぼ一定である。
【0097】
これに対し、図17に示す透過スペクトルでは、青色域の透過率が、可視域内の他の波長域の透過率と比較してより低い。即ち、第3部分を透過する光は、青色域の強度が低く、緑色域及び赤色域の強度が高い。従って、第3部分を透過する光はイエロー色に見える。
【0098】
また、図18に示す透過スペクトルでは、緑色域の透過率が、可視域内の他の波長域の透過率と比較してより低い。即ち、第2部分を透過する光は、緑色域の強度が低く、青色域及び赤色域の強度が高い。従って、第2部分を透過する光は、マゼンタ色に見える。
【0099】
そして、図19に示す透過スペクトルでは、赤色域の透過率が、可視域内の他の波長域の透過率と比較してより低い。即ち、第1部分を透過する光は、赤色域の強度が低く、青色域及び緑色域の強度が高い。従って、第1部分を透過する光は、シアン色に見える。
【0100】
他方、第1、第2及び第3ブレーズド回折格子は、法線方向から白色光で照明した場合に、それぞれ、赤色、緑色及び青色の強い一次回折光を、法線方向に対して傾いた同一方向へ射出する。即ち、第1、第2及び第3ブレーズド回折格子の組み合わせは、可視域のほぼ全体に亘って略均一な反射率を有し、入射光をその入射角とは異なる反射角で反射する反射面として機能する。
【0101】
従って、この表示体1は、回折画像として、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBの配列に対応したパターンを有するカラー画像を表示し得る筈である。
【0102】
実際、上記のようにして製造した表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して45°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、カラー画像を回折画像として表示した。
【0103】
(例2)
本例では、以下の構成を採用したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明したのと同様の表示体1を製造した。
【0104】
ここでは、回折格子群DGTには、図14を参照しながら説明した構造を採用した。第1回折格子DGR、第2回折格子DGG及び第3回折格子DGBの各々は、一辺が20μmの正方形状とした。第1回折格子としては、格子線の空間周波数が1150本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。第2回折格子としては、格子線の空間周波数が1350本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。第3回折格子としては、格子線の空間周波数が1550本/mmであるブレーズド回折格子を形成した。
【0105】
多層膜13は、4つの誘電体層13aと3つの誘電体層13bとで構成した。誘電体層13aの材料としては二酸化チタンを使用し、誘電体層13bの材料としては二酸化珪素を使用した。4つの誘電体層13aの厚さは、前面層11側から順に、55nm、55nm、45nm及び55nmとした。また、3つの誘電体層13bの厚さは、前面層11側から順に、15nm、15nm及び25nmとした。
【0106】
本例では、第1凹部RR、第2凹部RG及び第3凹部RBは形成しなかった。また、本例では、光吸収層15も形成しなかった。
【0107】
上記の構造を採用した多層膜13について、法線方向から白色光で照明した場合の透過スペクトルを、計算機シミュレーションによって求めた。その結果を、図20に示す。
【0108】
図20は、例2の多層膜について計算機シミュレーションによって求めた透過スペクトルを示すグラフである。図20に示すように、この多層膜13は、緑色の光に対して高い透過率を示すように設計されている。
【0109】
この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して45°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、表示面全体に広がった緑色の画像を回折画像として表示した。
【0110】
また、この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して35°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、観察方向の傾き角が45°の場合ほど明るくはないが、表示面全体に広がった緑色の画像を回折画像として表示した。
【0111】
更に、この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して55°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、観察方向の傾き角が45°の場合ほど明るくはないが、表示面全体に広がった緑色の画像を回折画像として表示した。
【0112】
(例3)
本例では、以下の点を除き、例2と同様の表示体1を製造した。
即ち、第2回折格子DGGに対応した何れの位置にも第2光吸収部IGを形成することなしに、第1回折格子DGRに対応した全ての位置に第1光吸収部IRを形成し、第3回折格子DGBに対応した全ての位置に第3光吸収部IBを形成した。第1光吸収部IR及び第3光吸収部IBは、黒色のインキをインクジェット印刷することにより形成した。
【0113】
この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して45°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、表示面全体に広がった緑色の画像を回折画像として表示した。
【0114】
また、この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して35°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、回折画像を表示しなかった。
【0115】
更に、この表示体1を、Z方向から白色光で照明し、X方向に垂直であり且つZ方向に対して55°傾いた方向から観察した。その結果、この表示体1は、回折画像を表示しなかった。
【0116】
例2及び例3の結果から明らかなように、光吸収層15は、ノイズの少ない回折画像の表示を可能とする。
【0117】
本発明の説明を、ブレーズド回折格子を使った例で行っているが、本発明の適用は1次元的な周期性があれば回折格子形状によらず、例えば三角関数断面でも矩形波断面でも使うことができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、1以上の凹部を一方の主面に有している積層体を含んだ多層膜と、
前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記多層膜に可視域内の光を入射させた場合に前記他方の主面から射出される光を、この光の射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面と、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層と
を備えた表示体。
[2]
前記反射面は回折格子を含んだ項1に記載の表示体。
[3]
前記反射面は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の回折格子群を含み、前記複数の回折格子群の各々は、格子定数が互いに異なる第1乃至第3回折格子を含んだ項1に記載の表示体。
[4]
前記1以上の凹部は、1以上の第1凹部と、前記1以上の第1凹部とは深さが異なる1以上の第2凹部と、前記1以上の第1凹部及び前記1以上の第2凹部とは深さが異なる1以上の第3凹部とを含み、前記1以上の第1凹部の各々は前記第1回折格子の位置に設けられ、前記1以上の第2凹部の各々は前記第2回折格子の位置に設けられ、前記1以上の第3凹部の各々は前記第3回折格子の位置に設けられた項3に記載の表示体。
[5]
前記光吸収層は、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第1回折格子と各々が向き合った1以上の第1光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第2回折格子と各々が向き合った1以上の第2光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第3回折格子と各々が向き合った1以上の第3光吸収部とを含み、前記1以上の第1光吸収部、前記1以上の第2光吸収部、及び前記1以上の第3光吸収部は、同じ色に着色している項4に記載の表示体。
[6]
前記光吸収層は、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第1回折格子と各々が向き合った1以上の第1光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第2回折格子と各々が向き合った1以上の第2光吸収部と、前記1以上の凹部が設けられていない位置で前記第3回折格子と各々が向き合った1以上の第3光吸収部とを含み、前記1以上の第1光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第2光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第3光吸収部は色が互いに等しく、前記1以上の第1光吸収部と前記1以上の第2光吸収部と前記1以上の第3光吸収部とは色が異なる項4に記載の表示体。
[7]
前記第1回折格子、前記第2回折格子及び前記第3回折格子は、第1方向から白色光で照明した場合に、前記第1方向とは異なる第2方向へ、それぞれ、赤色、緑色及び青色の回折光を射出し、前記1以上の第1光吸収部、前記1以上の第2光吸収部、及び前記1以上の第3光吸収部は、それぞれ、シアン色、マゼンタ色及びイエロー色に着色している項6に記載の表示体。
[8]
項1乃至7の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を含んだ表示体付き物品。
[9]
屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備えたブランク媒体を準備することと、
前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することと
を含んだ表示体の製造方法。
[10]
項9に記載の方法により表示体を製造することと、
前記表示体を物品に支持させることと
を含んだ表示体付き物品の製造方法。
[11]
ブランク媒体と、前記ブランク媒体を支持した物品とを含んだブランク媒体付き物品であって、前記ブランク媒体は、屈折率が異なる2以上の誘電体層からなり、レーザービーム照射によって1以上の凹部が一方の主面に形成される積層体と、前記積層体の他方の主面と各々が向き合い、前記他方の主面から射出された可視域内の光を、その射出角とは異なる入射角で前記他方の主面に入射させる反射面とを備えたブランク媒体付き物品を準備することと、
前記ブランク媒体への前記レーザービーム照射により前記1以上の凹部を形成することと、
前記一方の主面のうち前記1以上の凹部が設けられていない領域を少なくとも部分的に被覆した光吸収層を形成することと
を含んだ表示体付き物品の製造方法。
【符号の説明】
【0118】
1…表示体、1A…ブランク媒体、1A2…ブランク媒体、1A3…ブランク媒体、11…前面層、12…反射層、13…多層膜、13a…誘電体層、13b…誘電体層、14…背面層、15…光吸収層、100…表示体付き物品、100A…ブランク媒体付き物品、110…物品、DGB…第3回折格子、DGG…第2回折格子、DGR…第1回折格子、DGT…回折格子群、IB…第3光吸収部、IG…第2光吸収部、IR…第1光吸収部、L1…白色光、L2…光、L3…光、LS…光源、OB…観察者、RB…第3凹部、REF…反射面、RG…第2凹部、RR…第1凹部。
図1
図2
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