(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240528BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240528BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240528BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/12 C
B60C11/13 A
(21)【出願番号】P 2020103864
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0129289(US,A1)
【文献】特開平11-020413(JP,A)
【文献】特表2015-512352(JP,A)
【文献】特開2015-134576(JP,A)
【文献】特開2018-001803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00、11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大き
く、
前記第1縦細溝は、少なくとも1か所で曲がっている、
タイヤ。
【請求項2】
前記複数の第1サイプ及び前記複数の第2サイプは、それぞれ、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1縦細溝は、外側ショルダーブロックをタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1サイプの深さ及び前記第2サイプの深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記第2ブロック片のタイヤ軸方向の最大の幅は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅の40%~60%である、
タイヤ。
【請求項6】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複
数の内側ショルダーブロックに区分され、
前記内側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅よりも小さい、
タイヤ。
【請求項7】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複数の内側ショルダーブロックに区分され、
前記内側ショルダーブロックの少なくとも1つには、タイヤ周方向に延びる第2縦細溝が設けられ、
前記第2縦細溝の深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きい、
タイヤ。
【請求項8】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複数の内側ショルダーブロックに区分され、
前記内側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第2縦細溝によって、前記内側トレッド端側の第3ブロック片と、前記外側トレッド端側の第4ブロック片とに区分され、
前記第3ブロック片には、複数の第3サイプが設けられ、
前記第4ブロック片には、複数の第4サイプが設けられ、
前記第4ブロック片の前記第4サイプの合計本数は、前記第3ブロック片の前記第3サイプの合計本数と同じである、
タイヤ。
【請求項9】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記複数の周方向溝は、最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝を含み、
前記外側ショルダー周方向溝は、前記複数の周方向溝のうち最も小さい溝幅を有する、
タイヤ。
【請求項10】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記外側ショルダー横溝の前記第1ブロック片に面する部分の最大の溝幅は、前記外側ショルダー横溝の前記第2ブロック片に面する部分の最大の溝幅よりも大きい、
タイヤ。
【請求項11】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、
前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、
前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、
前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きく、
前記第1サイプ及び前記第2サイプは、それぞれ、底部が隆起したタイバーを有する、
タイヤ。
【請求項12】
前記タイバーが設けられた部分の深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きい、請求項11に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部のパターン要素を規定することにより、旋回性能と氷雪路における旋回時の限界挙動とをバランス良く向上させた空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の高性能化に伴い、冬期での使用を前提としたタイヤには、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能のさらなる向上が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、前記外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分され、前記外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、前記外側トレッド端側の第1ブロック片と、前記内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分され、前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられ、前記第2ブロック片の前記第2サイプの合計本数は、前記第1ブロック片の前記第1サイプの合計本数よりも大きい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の第1サイプ23及び前記複数の第2サイプ24は、それぞれ、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1縦細溝は、外側ショルダーブロックをタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1縦細溝は、少なくとも1か所で曲がっているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1サイプの深さ及び前記第2サイプの深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きいのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第2ブロック片のタイヤ軸方向の最大の幅は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅の40%~60%であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1サイプ及び前記第2サイプは、それぞれ、底部が隆起したタイバーを有するのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記タイバーが設けられた部分の深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部を含み、前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複数の内側ショルダーブロックに区分され、前記内側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ軸方向の最大の幅よりも小さいのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部を含み、前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複数の内側ショルダーブロックに区分され、前記内側ショルダーブロックの少なくとも1つには、タイヤ周方向に延びる第2縦細溝が設けられ、前記第2縦細溝の深さは、前記第1縦細溝の深さよりも大きいのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部を含み、前記内側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝によって複数の内側ショルダーブロックに区分され、前記内側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第2縦細溝によって、前記内側トレッド端側の第3ブロック片と、前記外側トレッド端側の第4ブロック片とに区分され、前記第3ブロック片には、複数の第3サイプが設けられ、前記第4ブロック片には、複数の第4サイプが設けられ、前記第4ブロック片の前記第4サイプの合計本数は、前記第3ブロック片の前記第3サイプの合計本数と同じであるのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の周方向溝は、最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝を含み、前記外側ショルダー周方向溝は、前記複数の周方向溝のうち最も小さい溝幅を有するのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝の前記第1ブロック片に面する部分の最大の溝幅は、前記外側ショルダー横溝の前記第2ブロック片に面する部分の最大の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
【
図5】
図1の内側ミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
【
図6】比較例のタイヤの外側ショルダー陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬期での使用を前提とした乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで表示されている(図示省略)。
【0023】
トレッド部2は、外側トレッド端Toとの内側トレッド端Tiとの間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、前記周方向溝3に区分された5つの陸部4とで構成されている。すなわち、本発明のタイヤ1は、所謂5リブタイヤとして構成されている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、3本の周方向溝3と4つの陸部4で構成された所謂4リブタイヤでも良い。
【0024】
外側トレッド端Toは、車両装着時に車両外側に位置することが意図されたトレッド端であり、内側トレッド端Tiは、車両装着時に車両内側に位置することが意図されたトレッド端である。外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0025】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。なお、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0026】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0027】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0028】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0029】
周方向溝3は、例えば、外側ショルダー周方向溝5、外側クラウン周方向溝6、内側クラウン周方向溝7及び内側ショルダー周方向溝8を含む。外側ショルダー周方向溝5は、複数の周方向溝3のうち最も外側トレッド端To側に設けられている。外側クラウン周方向溝6は、外側ショルダー周方向溝5の内側トレッド端Ti側に隣り合っており、外側ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。内側クラウン周方向溝7は、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に設けられている。内側ショルダー周方向溝8は、内側クラウン周方向溝7と内側トレッド端Tiとの間に設けられている。
【0030】
周方向溝3は、タイヤ周方向に直線状に延びるものや、ジグザグ状に延びるもの等、種々の態様を採用し得る。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝5、内側クラウン周方向溝7及び内側ショルダー周方向溝8が、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。一方、外側クラウン周方向溝6は、ジグザグ状に延びている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0031】
外側ショルダー周方向溝5又は内側ショルダー周方向溝8の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。外側クラウン周方向溝6又は内側クラウン周方向溝7の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの3%~15%である。望ましい態様では、内側クラウン周方向溝7の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離は、外側クラウン周方向溝6の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離よりも大きい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0032】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。望ましい態様では、周方向溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの2.0%~5.0%である。本実施形態では、4本の周方向溝3の内、外側ショルダー周方向溝5が最も小さい溝幅を有している。
【0033】
陸部4は、外側ショルダー陸部11、外側ミドル陸部12、クラウン陸部15、内側ミドル陸部14及び内側ショルダー陸部13を含む。外側ショルダー陸部11は、外側トレッド端Toを含んでいる。外側ミドル陸部12は、外側ショルダー周方向溝5と外側クラウン周方向溝6との間に区分されている。クラウン陸部15は、外側クラウン周方向溝6と内側クラウン周方向溝7との間に区分されている。内側ミドル陸部14は、内側ショルダー周方向溝8と内側クラウン周方向溝7との間に区分されている。内側ショルダー陸部13は、内側トレッド端Tiを含む。
【0034】
図2には、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部12の拡大図が示されている。
図2に示されるように、外側ショルダー陸部11は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝18によって複数の外側ショルダーブロック20に区分されている。
【0035】
外側ショルダーブロック20の少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝19によって、外側トレッド端To側の第1ブロック片21と、内側トレッド端Ti側の第2ブロック片22とに区分されている。
【0036】
第1ブロック片21には、複数の第1サイプ23が設けられている。また、第2ブロック片22には、複数の第2サイプ24が設けられている。
【0037】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つのサイプ壁の間の幅が0.6mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.1~0.5mmであり、より望ましくは0.2~0.4mmである。本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、前記幅が上述の範囲とされている。なお、本明細書では、ある切れ込み要素の横断面において、幅が0.6mm以下の領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が0.6mmを超える領域を一部に含むものであっても、サイプ(溝要素を含むサイプ)として扱うものとする。また、ある切れ込み要素の横断面において、幅が0.6mmよりも大きい領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が0.6mm以下の領域を一部に含むものであっても、溝(サイプ要素を含む溝)として扱うものとする。
【0038】
本発明では、1つの第2ブロック片22に配された第2サイプ24の合計本数N2は、1つの第1ブロック片21に配された第1サイプ23の合計本数N1よりも大きい。本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能を向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0039】
氷上でのブレーキ時は、ブロックの倒れ込みを防ぐため、外側ショルダーブロック20における外側トレッド端To側のサイプの本数が少ない方が望ましい。一方、氷上での一般的な速度における旋回時には、ドライ路面走行時と比較して、横Gが小さく、接地面の最大長が、外側ショルダー陸部11の踏面の内、比較的タイヤ軸方向内側の領域に形成される傾向がある。本発明では、第2サイプ24の合計本数N2を第1サイプ23の合計本数N1よりも大きくすることにより、上述のブロックの倒れ込みを防ぎつつ、前記領域に多くサイプを配置することができ、ひいては氷上でのブレーキ性能及び旋回性能が向上すると推察される。
【0040】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0041】
外側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、トレッド幅TW(
図1に示され、以下、同様である。)の15%~30%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0042】
外側ショルダー横溝18は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度θ1で延びている。外側ショルダー横溝18は、外側ショルダー周方向溝5に連通する本体部18aと、本体部18aの外側トレッド端To側に連なる拡幅部18bとを含んでいる。本体部18aは、例えば、外側ショルダー横溝18の全体の長さの50%以上の長さを有している。また、本体部18aの溝幅W3は、外側ショルダー周方向溝5の溝幅W4よりも大きい。拡幅部18bは、例えば、本体部18aよりも大きい溝幅W5を有している。拡幅部18bの溝幅W5は、本体部18aの溝幅W3の103%~110%である。これにより、外側ショルダー横溝18の第1ブロック片21に面する部分の最大の溝幅は、外側ショルダー横溝18の第2ブロック片22に面する部分の最大の溝幅よりも大きい。このような外側ショルダー横溝18は、優れた雪上性能を発揮するのに役立つ。
【0043】
第1縦細溝19は、例えば、外側ショルダーブロック20をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。第1縦細溝19の溝中心線と外側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の中心位置とのタイヤ軸方向の距離は、外側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の幅W2の10%以下である。また、第1縦細溝19は、外側ショルダー横溝18の本体部18aに連通している。これにより、第2ブロック片22のタイヤ軸方向の最大の幅は、外側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の最大の幅の40%~60%である。
【0044】
第1縦細溝19は、少なくとも1か所で曲がっている。本実施形態の第1縦細溝19は、2か所で鈍角に折れ曲がっている。このような第1縦細溝19は、氷上で多方向に摩擦力を提供する。なお、本明細書において、「溝が折れ曲がる」とは、少なくとも、溝中心線の曲がっている領域の長さが3mm以下である態様を含むものとする。
【0045】
第1縦細溝19の溝幅W6は、0.6mmよりも大きい。前記溝幅W6は、例えば、0.8~2.0mmであり、望ましくは1.0~1.5mmである。第1縦細溝19の深さは、例えば、1.5~3.0mmである。このような第1縦細溝19は、外側ショルダーブロック20の剛性を維持しつつ、氷上での旋回性能を向上させる。
【0046】
本実施形態の第1サイプ23の合計本数N1は、例えば、3~5である。第2サイプ24の合計本数N2は、例えば、4~6である。第1ブロック片21及び第2ブロック片22の偏摩耗を抑制する観点から、合計本数N2は、合計本数N1の1.10~2.50倍であるのが望ましい。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0047】
第1サイプ23及び第2サイプ24は、タイヤ軸方向成分がタイヤ周方向成分よりも大きい。第1サイプ23及び第2サイプ24は、それぞれ、各ブロック片をタイヤ軸方向に横断しているのが望ましい。本実施形態では、第1サイプ23及び第2サイプ24は、それぞれ、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されている。各サイプがジグザグ状に延びる場合、前記角度は、サイプの両端を結ぶ仮想線で測定されるものとする。また、第1サイプ23及び第2サイプ24は、外側ショルダー横溝18と略平行に配される。ここで、略平行とは、サイプと横溝との角度差が5°以下である態様を含む。また、第1ブロック片21及び第2ブロック片22には、タイヤ周方向成分がタイヤ軸方向成分よりも大きいサイプが設けられていない。これにより、氷上でのトラクション性能及びブレーキ性能がより一層向上する。
【0048】
第1サイプ23及び第2サイプ24の少なくとも1本は、その長さ方向にジグザグ状に延びている。望ましい態様では、第1サイプ23及び第2サイプ24の少なくとも1本は、その深さ方向にもジグザグ状に延びる所謂3Dサイプとして構成されている。このような第1サイプ23及び第2サイプ24は、互いに向き合うサイプ壁同士が接触したとき、ブロックの過度な倒れ込みを抑制し、氷上でのブレーキ性能を向上させる。
【0049】
タイヤ周方向に並んだ複数の第1サイプ23、及び、タイヤ周方向に並んだ複数の第2サイプ24の内、少なくとも、外側ショルダー横溝18に隣接するサイプは、3Dサイプとして構成されるのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態では、外側ショルダーブロック20に設けられた全てのサイプが3Dサイプとして構成されている。これにより、上述の効果が確実に発揮される。
【0050】
図3には、第1サイプ23及び第2サイプ24の構成を説明する図として、
図2の第1サイプ23のA-A線断面図が示されている。なお、以下で説明される第1サイプ23の構成は、第2サイプ24にも適用することができる。また、
図3では、3Dサイプとして構成された第1サイプ23の折れ曲がり部分が2点鎖線で示されている。
図3に示されるように、第1サイプ23の最大の深さd1は、第1縦細溝19の最大の深さよりも大きいのが望ましい。第1サイプ23の前記深さd1は、第1縦細溝19の前記深さの2.50~4.00倍である。このような第1サイプ23は、優れた吸水性を発揮することができる。
【0051】
本実施形態の第1サイプ23は、底部が隆起したタイバー25を有する。タイバー25は、例えば、第1サイプ23の第1縦細溝19とは反対側の端部に設けられた端部タイバー26と、第1サイプ23の長さ方向の中央部に設けられた中央タイバー27とを含む。中央タイバー27は、例えば、第1サイプ23をその長さ方向に3等分したときの中央の領域に設けられている。より望ましい態様では、中央タイバー27の少なくとも一部が、第1サイプ23の長さ方向の中心位置と重複している。このような端部タイバー26及び中央タイバー27は、第1サイプ23が過度に開くのを抑制でき、氷上でのブレーキ性能を向上させる。
【0052】
中央タイバー27の高さh1は、例えば、端部タイバー26の高さよりも小さい。中央タイバー27の高さh1は、第1サイプ23の最大の深さd1の40%~60%である。また、中央タイバー27の幅W7は、端部タイバー26の幅よりも小さい。また、中央タイバー27の幅W7は、例えば、第1縦細溝19の溝幅W6の80%~120%である。このような中央タイバー27は、第1サイプ23の吸水性を維持しつつ、第1サイプ23の過度な開きを抑制することができる。なお、前記幅W7は、例えば、中央タイバー27の最大高さの50%の高さで測定される。
【0053】
同様に観点から、タイバー25が設けられた部分の深さは、いずれも、第1縦細溝19の深さよりも大きいのが望ましい。
【0054】
図2に示されるように、外側ミドル陸部12には、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ミドル横溝29が設けられている。外側ミドル横溝29は、外側ミドル陸部12を横断している。これにより、外側ミドル陸部12は、複数の外側ミドルブロック30に区分されている。
【0055】
外側ミドル横溝29は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では、右下がりである。)に傾斜している。外側ミドル横溝29のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、45°以下であり、望ましくは15~25°である。このような外側ミドル横溝29は、氷上でのブレーキ性能と旋回性能とをバランス良く向上させる。
【0056】
外側ミドル横溝29の外側トレッド端To側の端部は、外側ショルダー横溝18の内側トレッド端Ti側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複するのが望ましい。これにより、雪上走行時、外側ショルダー周方向溝5と外側ショルダー横溝18及び外側ミドル横溝29との交差部分で固い雪柱が生成され、これがせん断されることにより大きな反力が得られる。したがって、雪上性能が向上する。
【0057】
本実施形態では、外側クラウン周方向溝6が長傾斜部6aとこれよりも小さい長さの短傾斜部6bとを含むジグザグ状に延びており、外側ミドル横溝29の少なくとも1本が短傾斜部6bに連通している。さらに望ましい態様では、短傾斜部6bに連通する外側ミドル横溝29と長傾斜部6aに連通する外側ミドル横溝29とがタイヤ周方向に交互に設けられている。このような外側ミドル横溝29は、短傾斜部6bとの交差部分で固い雪柱を生成できる。
【0058】
外側ミドルブロック30には、ミドル途切れ溝32が設けられている。ミドル途切れ溝32は、外側クラウン周方向溝6から延びかつ外側ミドルブロック30内で途切れている。また、ミドル途切れ溝32の溝幅W8は、外側ショルダー横溝18の溝幅及び外側ミドル横溝29の溝幅よりも小さい。このようなミドル途切れ溝32は、外側ミドルブロック30の剛性を維持しつつ、氷上でのブレーキ性能を向上させることができる。
【0059】
ミドル途切れ溝32は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。望ましい態様では、ミドル途切れ溝32と外側ミドル横溝29との角度差が5°以下とされる。このようなミドル途切れ溝32は、外側ミドルブロック30の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0060】
外側ミドルブロック30には、複数の外側ミドルサイプ33が設けられている。外側ミドルサイプ33は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向とは逆向きの第2方向(本明細書の各図では右上がり)に傾斜している。外側ミドルサイプ33のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。なお、サイプがジグザグ状に延びている場合、その傾斜の向き及び角度は、サイプの両端を結ぶ仮想直線で測定されるものとする。
【0061】
図4には、内側ショルダー陸部13の拡大図が示されている。
図4に示されるように、内側ショルダー陸部13は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝34によって複数の内側ショルダーブロック35に区分されている。
【0062】
内側ショルダー横溝34は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。本実施形態では、内側ショルダー横溝34のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、外側ショルダー横溝18のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、内側ショルダー横溝34のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、5~15°である。このような内側ショルダー横溝34は、氷上でのブレーキ性能と旋回性能とをバランス良く向上させる。
【0063】
内側ショルダーブロック35のタイヤ軸方向の最大の幅W9は、例えば、トレッド幅TWの15%~25%である。より望ましい態様では、内側ショルダーブロック35のタイヤ軸方向の最大の幅W9は、前記外側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の最大の幅W2よりも小さい。これにより、旋回時の操舵の手応えがリニアになり、操縦安定性が向上する。
【0064】
内側ショルダーブロック35の少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第2縦細溝38によって、内側トレッド端Ti側の第3ブロック片41と、外側トレッド端To側の第4ブロック片42とに区分されている。
【0065】
第2縦細溝38は、例えば、内側ショルダーブロック35をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。第2縦細溝38の溝中心線と内側ショルダーブロック35のタイヤ軸方向の中心位置とのタイヤ軸方向の距離は、内側ショルダーブロック35のタイヤ軸方向の最大の幅W9の10%以下である。また、第2縦細溝38は、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。これにより、第4ブロック片42のタイヤ軸方向の最大の幅は、内側ショルダーブロック35のタイヤ軸方向の最大の幅W9の40%~60%である。
【0066】
第2縦細溝38の溝幅W10は、0.6mmよりも大きい。前記溝幅W10は、例えば、0.8~2.0mmであり、望ましくは1.0~1.5mmである。第2縦細溝38の深さは、例えば、1.5~3.0mmである。望ましい態様では、第2縦細溝38の深さは、第1縦細溝19の深さよりも大きい。このような第2縦細溝38は、氷上での旋回性能を高めるのに役立つ。
【0067】
第3ブロック片41には、複数の第3サイプ43が設けられている。第4ブロック片42には、複数の第4サイプ44が設けられている。本実施形態では、1つの第4ブロック片42に配された第4サイプ44の合計本数N4は、1つの第3ブロック片41に配された第3サイプ43の合計本数N3よりも大きい。これにより、氷上でのブレーキ性能と旋回性能とがバランス良く向上する。
【0068】
さらに他の実施形態では、第4ブロック片42の第4サイプ44の合計本数N4は、第3ブロック片41の第3サイプ43の合計本数N3と同じでも良い。このような実施形態では、内側ショルダーブロック35の偏摩耗が抑制されるとともに、外側ショルダーブロック20が発生するノイズと内側ショルダーブロック35が発生するノイズとの周波数帯域を分散させ、ひいてはノイズ性能を向上させることができる。
【0069】
本実施形態の第3サイプ43の合計本数N3は、例えば、3~5である。第4サイプ44の合計本数N4は、例えば、4~6である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0070】
第3サイプ43及び第4サイプ44は、タイヤ軸方向成分がタイヤ周方向成分よりも大きい。第3サイプ43及び第4サイプ44は、それぞれ、各ブロック片をタイヤ軸方向に横断しているのが望ましい。さらに望ましい態様では、第3ブロック片41及び第4ブロック片42には、タイヤ周方向成分がタイヤ軸方向成分よりも大きいサイプが設けられていない。これにより、氷上でのトラクション性能及びブレーキ性能がより一層向上する。
【0071】
また、第3サイプ43及び第4サイプ44には、上述の第1サイプ23の構成を適用することができる。
【0072】
図5には、内側ミドル陸部14及びクラウン陸部15の拡大図が示されている。
図5に示されるように、内側ミドル陸部14は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ミドル横溝46によって複数の内側ミドルブロック48に区分されている。
【0073】
内側ミドル横溝46は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に対して傾斜している。内側ミドル横溝46のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、45°以下であり、かつ、外側ショルダー横溝18のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、内側ミドル横溝46の前記角度θ4は、25~35°である。
【0074】
内側ミドルブロック48には、折れ曲がり溝50が設けられている。折れ曲がり溝50は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜した第1溝部51及び第2溝部52と、これらの間に配されかつタイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した第3溝部53とを含んでいる。折れ曲がり溝50は、これらの溝部によってN字状に折れ曲がっており、かつ、内側ミドルブロック48を横断している。このような折れ曲がり溝50は、氷上及び雪上走行時において多方向に摩擦力を提供する。
【0075】
折れ曲がり溝50の第1溝部51は、内側クラウン周方向溝7に連通している。第2溝部52は、内側ショルダー周方向溝8に連通している。第2溝部52の溝幅は、第1溝部51の溝幅よりも小さい。第3溝部53の溝幅は、第2溝部52の溝幅よりも小さい。このような折れ曲がり溝50は、内側ミドルブロック48の偏摩耗を抑制しつつ、氷上性能を向上させる。
【0076】
内側ミドルブロック48には、複数の内側ミドルサイプ54が設けられている。内側ミドルサイプ54は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。このような内側ミドルサイプ54は、他のサイプと相俟って多方向に摩擦力を発揮し、氷上でのブレーキ性能と旋回性能とをバランス良く向上させる。
【0077】
内側ミドルサイプ54には、上述の第1サイプ23の構成を適用することができる。
【0078】
クラウン陸部15は、タイヤ軸方向に延びる複数のクラウン横溝56に区分された複数のクラウンブロック58を含んでいる。
【0079】
クラウン横溝56は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2方向に対して傾斜している。クラウン横溝56のタイヤ軸方向に対する角度θ5は、45°以下であり、かつ、外側ショルダー横溝18のタイヤ軸方向に対する角度θ1よりも大きい。クラウン横溝56の前記角度θ5は、例えば、15~25°である。
【0080】
クラウンブロック58には、例えば、第1途切れ溝61及び第2途切れ溝62が設けられている。第1途切れ溝61は、外側クラウン周方向溝6から延びかつクラウンブロック58内で途切れている。第2途切れ溝62は、内側クラウン周方向溝7から延びかつクラウンブロック58内で途切れている。このような第1途切れ溝61及び第2途切れ溝62は、クラウンブロック58の剛性を維持しつつ、氷上性能及び雪上性能を向上させるのに役立つ。
【0081】
クラウンブロック58には、複数のクラウンサイプ60が設けられている。クラウンサイプ60は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。クラウンサイプ60には、上述の第1サイプ23の構成を適用することができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0083】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ195/65R15のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、
図6に示される外側ショルダー陸部aを有するタイヤが試作された。
図6に示されるように、比較例のタイヤは、第1ブロック片bに設けられた第1サイプcの合計本数N1と第2ブロック片dに設けられた第2サイプeの合計本数N2とが同一である。比較例のタイヤは、上述の構成を除き、
図1に示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤについて、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0JJ
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪230kPa
テスト車両:排気量1500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0084】
<氷上でのブレーキ性能>
上記テスト車両で氷上を走行し、氷上でのブレーキ性能が運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷上でのブレーキ性能が優れていることを示す。
【0085】
<氷上での旋回性能>
上記テスト車両で氷上を走行し、氷上での旋回性能が運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷上での旋回性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0086】
【0087】
表1に示されるように、実施例のタイヤは、氷上でのブレーキ性能及び旋回性能を向上させていることが確認できた。
【符号の説明】
【0088】
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
11 外側ショルダー陸部
18 外側ショルダー横溝
19 第1縦細溝
20 外側ショルダーブロック
21 第1ブロック片
22 第2ブロック片
23 第1サイプ
24 第2サイプ
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端