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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/027 20120101AFI20240528BHJP
【FI】
F16H57/027
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020104001
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196020
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-093565(JP,A)
【文献】特開2002-031216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、
前記ケース部材に上下方向に延びるように設けられ、前記ケース部材の内部を、第1の回転部材を収容する第1の収容室と第2の回転部材を収容する第2の収容室とに仕切る隔壁と、
前記ケース部材の下部に設けられ、前記ケース部材の壁部によって囲まれるブリーザ室とを備え、
前記壁部が前記隔壁を含んで構成される車両用動力伝達装置であって、
前記隔壁は、前記ブリーザ室に連通する下側連通路と、前記下側連通路よりも上方に形成された上側連通路とを有し、
前記ケース部材の上壁は、前記上側連通路と前記ケース部材の外部とを連通する大気通路を有し、
前記ケース部材に管部材が収容されており、
前記管部材は、第1の回転部材と第2の回転部材の間で前記隔壁に沿って上下方向に配索されており、一端部が前記隔壁に形成された前記下側連通路に取付けられるとともに、他端部が前記隔壁に形成された前記上側連通路に取付けられており、
前記管部材は、前記隔壁に形成された前記下側連通路と前記下側連通路よりも上方の前記隔壁に形成された前記上側連通路とを連通し
前記ケース部材の内部の圧力が上昇して前記ブリーザ室の圧力が上昇した場合に、前記ブリーザ室に連通し前記隔壁に形成された前記下側連通路、前記下側連通路に連通し前記隔壁に沿って配索された前記管部材、前記管部材に連通し前記隔壁に形成された前記上側連通路、前記上側連通路に連通した前記大気通路を通過させて前記ケース部材の圧力を外部に逃がすことを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記管部材は、前記第2の回転部材の軸方向で前記隔壁と前記第2の回転部材の間に位置し、かつ、前記第2の回転部材の軸方向で前記第2の回転部材と並んで設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記管部材は、金属から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される変速機等の動力伝達装置において、ケースの内部の圧力が上昇した場合に、ケースの圧力を外部に逃がすブリーザ装置が設けられたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されるブリーザ装置は、変速機構を収容するケースと、トルクコンバータを収容するハウジングとを有する変速機に設けられている。
【0004】
ブリーザ装置は、ケースの内部の上方に設けられ、ケースの内部とブリーザ通路を介して連通されるブリーザ室と、ケースの外周上面とハウジングの外周上面に設けられたブリーザホースとを備えている。
【0005】
ブリーザホースの一端部は、ブリーザ通路を介してブリーザ室に連通されており、ブリーザホースの他端部は、ハウジングの内部に連結されている。
【0006】
このブリーザ装置は、ケースの内部の圧力が上昇した場合に、ケースの圧力がブリーザ室、ブリーザ通路およびブリーザホースを介してハウジングの内部に逃がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-291326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のブリーザ装置にあっては、ブリーザホースがケースの外周上面とハウジングの外周上面に設けられているので、すなわち、ブリーザホースがケースの外部に設けられているので、ブリーザホースに外力(外乱)が加わり易い。
【0009】
このため、ブリーザホースが破損するおそれがあり、ブリーザホースの破損個所からケースやハウジングの内部に水が侵入するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、管部材に外力が加わることを抑制し、管部材が破損することを防止できる車両用動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ケース部材と、前記ケース部材に上下方向に延びるように設けられ、前記ケース部材の内部を、第1の回転部材を収容する第1の収容室と第2の回転部材を収容する第2の収容室とに仕切る隔壁と、前記ケース部材の下部に設けられ、前記ケース部材の壁部によって囲まれるブリーザ室とを備え、前記壁部が前記隔壁を含んで構成される車両用動力伝達装置であって、前記隔壁は、前記ブリーザ室に連通する下側連通路と、前記下側連通路よりも上方に形成された上側連通路とを有し、前記ケース部材の上壁は、前記上側連通路と前記ケース部材の外部とを連通する大気通路を有し、前記ケース部材に管部材が収容されており、前記管部材は、第1の回転部材と第2の回転部材の間で前記隔壁に沿って上下方向に配索されており、一端部が前記隔壁に形成された前記下側連通路に取付けられるとともに、他端部が前記隔壁に形成された前記上側連通路に取付けられており、前記管部材は、前記隔壁に形成された前記下側連通路と前記下側連通路よりも上方の前記隔壁に形成された前記上側連通路とを連通し前記ケース部材の内部の圧力が上昇して前記ブリーザ室の圧力が上昇した場合に、前記ブリーザ室に連通し前記隔壁に形成された前記下側連通路、前記下側連通路に連通し前記隔壁に沿って配索された前記管部材、前記管部材に連通し前記隔壁に形成された前記上側連通路、前記上側連通路に連通した前記大気通路を通過させて前記ケース部材の圧力を外部に逃がすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように上記の本発明によれば、管部材に外力が加わることを抑制し、管部材が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の左側面図である。
図2図2は、図1のII-II方向矢視断面図である。
図3図3は、図2のIII-III方向矢視断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV方向矢視断面図である。
図5図5は、図2のV-V方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、ケース部材と、ケース部材に設けられ、ケース部材の内部を、第1の回転部材を収容する第1の収容室と第2の回転部材を収容する第2の収容室とに仕切る隔壁と、ケース部材に設けられ、ケース部材の壁部によって囲まれるブリーザ室とを備え、壁部が隔壁を含んで構成される車両用動力伝達装置であって、隔壁は、ブリーザ室に連通する下側連通路と、下側連通路よりも上方に形成された上側連通路とを有し、ケース部材の上壁は、上側連通路とケース部材の外部とを連通する大気通路を有し、ケース部材に管部材が収容されており、管部材は、隔壁上に配索されて一端部が下側連通路に取付けられるとともに、他端部が上側連通路に取付けられており、下側連通路と上側連通路とは、管部材を通して連通されている。
【0015】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、管部材に外力が加わることを抑制し、管部材が破損することを防止できる。
【実施例
【0016】
以下、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から図5は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置を示す図である。
【0017】
図1から図5において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0018】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1には変速機2が搭載されており、変速機2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。本実施例の車両1は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両である。
【0019】
変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、フロントケース5と、センタケース6と、リヤケース7と、エクステンションケース8とを備えている。実施例の変速機2は、本発明の車両用動力伝達装置を構成し、変速機ケース4は、本発明のケース部材を構成する。
【0020】
フロントケース5の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0021】
センタケース6は、フロントケース5の後方に設置されており、ボルト31Aによってセンタケース6に連結されている。
【0022】
リヤケース7は、センタケース6の後方に設置されており、ボルト31Bによってセンタケース6に連結されている。エクステンションケース8は、リヤケース7の後方に設置されており、ボルト31Cによってリヤケース7に連結されている。
【0023】
すなわち、フロントケース5、センタケース6、リヤケース7およびエクステンションケース8は、前側から後側に向かって前後方向に並んで設置されている。
【0024】
図3に示すように、フロントケース5の内部には隔壁5Wが設けられている。隔壁5Wは、フロントケース5の内部をトルクコンバータ室(以下、トルコン室という)5Aとクラッチ室5Bとに仕切っている。
【0025】
トルコン室5Aにはトルクコンバータ10が収容されており、クラッチ室5Bにはフライホイール11および摩擦クラッチ12が収容されている。センタケース6、リヤケース7およびエクステンションケース8には図示しない変速機構が収容されている。
【0026】
トルクコンバータ10は、エンジン3から動力が伝達される流体継手であり、エンジン3の動力を変速機構に伝達する。フライホイール11は、図示しないボルトによってトルクコンバータ10のタービン軸10A(図2参照)が締結されており、フライホイール11にはトルクコンバータ10を介してエンジン3の動力が伝達される。
【0027】
図2に示すタービン軸10Aは、タービン軸10Aの後端部に設けられ、フライホイール11に締結される締結部であり、締結部よりも前側は、図3に示すように締結部よりも小径の軸であって、クラッチ室5Bから隔壁5Wを通してトルコン室5Aに収容され、トルクコンバータ10に連結されている。
【0028】
変速機構は、例えば、図示しない複数の入力ギヤを有する入力軸9と、入力ギヤに噛み合う図示しない複数のカウンタギヤを有する図示しないカウンタ軸とを備えている。
【0029】
変速機構は、エンジン3の動力を入力軸9から入力ギヤおよびカウンタギヤを介してカウンタ軸に伝達し、カウンタ軸から図示しない出力軸を介して図示しないディファレンシャル装置に伝達する。
【0030】
摩擦クラッチ12は、前後方向でトルクコンバータ10と変速機構の間に設置されている。摩擦クラッチ12は、フライホイール11に締結されることやフライホイール11から離隔されることにより、エンジン3の動力を変速機構に伝達し、また、変速機構に伝達することを遮断する。
【0031】
本実施例のトルコン室5Aは、本発明の第1の収容室を構成し、クラッチ室5Bは、本発明の第2の収容室を構成する。トルクコンバータ10は、本発明の第1の回転部材を構成し、フライホイール11および摩擦クラッチ12は、本発明の第2の回転部材を構成する。なお、クラッチ室5Bは、フロントケース5のみに形成されてもよく、フロントケース5とセンタケース6に形成されてもよい。
【0032】
図3に示すように、フロントケース5の内部にはオイルポンプ24が設置されている。オイルポンプ24は、トルクコンバータ10と隔壁5Wの間に設けられており、トルクコンバータ10によって回転駆動される。
【0033】
トルクコンバータ10には図示しないロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ締結用のオイルが供給されると、エンジンの動力を流体を介さずに入力軸9に伝達する。
【0034】
ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ解除用のオイルが供給されると、エンジン3の動力を、流体を介して入力軸9に伝達する。
【0035】
図1図2に示すように、フロントケース5の下部にはオイルパン21が設けられており、オイルパン21にはオイルが貯留されているとともに、バルブボディ22が設置されている。図2に示すようにオイルパン21の外周縁にはフランジ部21Aが形成されている。
【0036】
フロントケース5の下部にはオイルパン締結部5Cが形成されており、オイルパン締結部5Cは、バルブボディ22の周囲を取り囲むようにしてフロントケース5の底壁5Dから下方に突出している。フランジ部21Aは、ボルト20によってオイルパン締結部5Cの下部に締結されている。
【0037】
バルブボディ22は、フロントケース5の底壁5Dと隔壁5Wの下面に図示しないボルトによって締結されている。フロントケース5の底壁5Dとオイルパン締結部5Cとオイルパン21とによって囲まれる空間は、バルブボディ室23を構成しており、バルブボディ22は、バルブボディ室23に設置されている。すなわち、本実施例のバルブボディ22は、フロントケース5の下部に設置されている。
【0038】
バルブボディ22は、いずれも図示しないレギュレータ、ロックアップバルブおよび電磁ソレノイド等を備えている。
【0039】
バルブボディ22は、レギュレータによってオイルパンに貯留されるオイルを調圧する。 バルブボディ22は、電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動されると、ロックアップバルブによっていずれも図示しないロックアップクラッチ締結用の油路またはロックアップクラッチ解除用の油路を選択するように切換えられる。
【0040】
電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動され、ロックアップクラッチ締結用の油路が選択されると、レギュレータによって調圧されたオイルは、オイルポンプ24によってロックアップクラッチ締結用の油路を通してロックアップクラッチに供給される。これにより、ロックアップクラッチが締結され、エンジン3の動力がロックアップクラッチを介して入力軸9に伝達される。
【0041】
電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動され、ロックアップクラッチ解除用の油路が選択されると、レギュレータによって調圧されたオイルは、オイルポンプ24によってロックアップクラッチ解除用の油路を通してロックアップクラッチに供給される。これにより、ロックアップクラッチが解除され、エンジン3の動力が流体を介して入力軸9に伝達される。
【0042】
図2図5に示すように、フロントケース5の下部にはブリーザ室14が形成されている。
【0043】
ブリーザ室14は、フロントケース5の左側壁5Eとフロントケース5の左周壁5Fとフロントケース5の後壁5Gと隔壁5Wとによって囲まれており、バルブボディ室23に連通されている。
【0044】
左側壁5Eは、オイルパン締結部5Cの左端部に連絡されており、オイルパン締結部5Cの左端部から上方に延びている。図2において、左側壁5Eを含んだ壁部のうち、左側壁5Eとオイルパン締結部5Cの範囲を矢印で示す。
【0045】
左周壁5Fは、左側壁5Eに対してタービン軸10A側(右側)に位置しており、底壁5Dから左斜め上方に湾曲して延び、上端がフロントケースの上壁5Hに連絡されている。
【0046】
図2に示すように、フロントケース5は、右周壁5Iを備えており、右周壁5Iは、左周壁5Fに対して右方に位置し、底壁5Dと上壁5Hとを連絡している。左周壁5Fと右周壁5Iは、摩擦クラッチ12の外径に沿って湾曲している。
【0047】
左側壁5Eは、オイルパン締結部5Cの左端部から上方に立ち上がっており、上端が左周壁5Fに連絡されている。
【0048】
後壁5Gは、オイルパン締結部5Cの後端部に連絡されており、オイルパン締結部5Cの後端部から上方に立ち上がり、左周壁5Fと底壁5Dの後端部に連絡されている。すなわち、ブリーザ室14は、バルブボディ室23の左方から上方に膨出する空間から構成されている。本実施例の左側壁5E、左周壁5F、後壁5Gおよび隔壁5Wは、本発明の壁部を構成する。
【0049】
図5に示すように、隔壁5Wには下側連通路5aが形成されており、下側連通路5aは、ブリーザ室14に連通されている。
【0050】
図3図4に示すように、隔壁5Wには上側連通路5bが形成されている。フロントケース5の上壁5Hには大気通路5cが形成されており、大気通路5cの一端部は、上側連通路5bに連通されている。
【0051】
大気通路5cの他端部は開口している。図3に示すように、大気通路5cにはブリーザパイプ15が取付けられており、大気通路5cは、ブリーザパイプ15を通してフロントケース5の外部(すなわち、大気)に連通されている。これにより、上側連通路5bは、大気通路5cおよびブリーザパイプ15を通してフロントケース5の外部に連通されている。
【0052】
ブリーザパイプ15にはオイル漏出防止用のブリーザキャップ15Aが取付けられている。ブリーザキャップ15Aとブリーザパイプ15の上部の開口端との間には空気が流れる隙間が形成されており、この隙間を通してブリーザパイプ15の内部と外部とが連通されている。
【0053】
図2図4に示すように、フロントケース5の内部には金属製のパイプ16が設置されており、パイプ16は、隔壁5W上に配索されている。なお、金属材料として種類は限定されない。
【0054】
パイプ16の下端部には下側管部16Aが設けられている。下側管部16Aは、下側連通路5aに取付けられており、下側管部16Aは、パイプ16に連通されているとともに、下側連通路5aを介してブリーザ室14に連通されている。
【0055】
パイプ16の上端部には上側管部16Bが設けられている。上側管部16Bは、上側連通路5bに取付けられており、上側管部16Bは、パイプ16に連通されているとともに、上側連通路5bを介して大気通路5cに連通されている。
【0056】
これにより、上側連通路5bと下側連通路5aとは、パイプ16を通して連通されている。本実施例の下側管部16Aは、本発明の管部材の一端部を構成し、上側管部16Bは、本発明の管部材の他端部を構成する。
【0057】
図2に示すように、パイプ16は、入力軸9に対して左周壁5F側に設置されており、左周壁5Fに沿って傾斜している。
【0058】
具体的には、パイプ16は、下側管部16Aに対して上側管部16Bが右斜め上方に位置するように傾斜しており、左周壁5Fと平行に延びている。本実施例のパイプ16、下側管部16Aおよび上側管部16Bは、本発明の管部材を構成する。
【0059】
図4に示すように、パイプ16は、フライホイール11と摩擦クラッチ12の軸方向で隔壁5Wとフライホイール11の間に位置しており、フライホイール11と摩擦クラッチ12の軸方向でフライホイール11および摩擦クラッチ12と並んで設置されている(図2参照)。
【0060】
なお、図2において、フライホイール11は図示省略しているが、フライホイール11の外径と摩擦クラッチ12の外径は同程度の大きさである。
【0061】
また、フライホイール11と摩擦クラッチ12の軸方向とは、前後方向に延びるフライホイール11と摩擦クラッチ12の回転中心軸の方向であり、フライホイール11と摩擦クラッチ12の回転中心軸と入力軸9の回転中心軸は同一軸である。
【0062】
本実施例の下側連通路5a、上側連通路5b、大気通路5c、ブリーザパイプ15、パイプ16、下側管部16Aおよび下側管部16Aは、ブリーザ部17を構成する。
【0063】
次に、作用を説明する。
バルブボディ室23の温度が低下すると、ブリーザ室14の圧力が低下する。ブリーザ室14の圧力が大気圧よりも低くなると、外気がブリーザパイプ15を通して大気通路5cに吸い込まれる。
【0064】
大気通路5cに吸い込まれた外気は、上側連通路5bおよび上側管部16Bを通してパイプ16に吸い込まれ、パイプ16から下側管部16Aおよび下側連通路5aを通してブリーザ室14に吸い込まれる。これにより、ブリーザ室14の圧力が大気圧に維持される。
【0065】
一方、バルブボディ室23の温度が上昇すると、ブリーザ室14の圧力が上昇する。ブリーザ室14の圧力が大気圧より高くなると、ブリーザ室14の空気が下側連通路5aおよび下側管部16Aを通してパイプ16に導入され、パイプ16から上側管部16B、下側連通路5a、大気通路5cおよびブリーザパイプ15を通して外部に排出される。これにより、ブリーザ室14の圧力が大気圧に維持される。
【0066】
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施例の変速機2は、フロントケース5に設けられ、フロントケース5の内部を、トルクコンバータ10を収容するトルコン室5Aと、フライホイール11および摩擦クラッチ12を収容するクラッチ室5Bとに仕切る隔壁5Wを備えている。
【0067】
また、変速機2は、フロントケース5に設けられ、左側壁5Eと左周壁5Fと後壁5Gと隔壁5Wとによって囲まれるブリーザ室14を備えている。
【0068】
隔壁5Wは、ブリーザ室14に連通する下側連通路5aと、下側連通路5aよりも上方に形成された上側連通路5bとを有し、フロントケース5の上壁5Hは、上側連通路5bとフロントケース5の外部とを連通する大気通路5cを有する。
【0069】
フロントケース5にはパイプ16が収容されている。パイプ16は、隔壁5W上に配索されて下側管部16Aが下側連通路5aに取付けられているとともに、上側管部16Bが上側連通路5bに取付けられており、下側連通路5aと上側連通路5bがパイプ16を通して連通されている。
【0070】
このように本実施例の変速機2は、ブリーザ部17の一部を構成するパイプ16をフロントケース5に収容することにより、パイプ16に外力(外乱)が加わることを防止でき、パイプ16が破損することを防止できる。
【0071】
これにより、パイプ16の破損個所から水等が侵入することを抑制し、オイルパン21に貯留されるオイルに水等が混入することを防止でき、オイルが劣化することを防止できる。
【0072】
また、フロントケース5に直に形成される連通路の一部をパイプ16に置き換えることにより、フロントケース5に形成される連通路を簡素化できる。このため、フロントケース5の製造作業の作業性を向上でき、結果的に変速機ケース4の製造作業の作業性を向上できる。
【0073】
また、パイプ16を屈曲させる等してパイプ16の形状を複雑にすることにより、オイルパン21に貯留されるオイルがパイプ16に吸い込まれた場合に、パイプ16を流れるオイルが大気通路5cに排出されることを抑制できる。このため、ブリーザパイプ15からオイルが漏出されることを防止できる。
【0074】
また、下側連通路5aと下側連通路5aを繋げるパイプ16の形状を自由にレイアウトできるので、パイプ16の設置の自由度を向上できる。このため、フライホイール11や摩擦クラッチ12にパイプ16が干渉することを防止でき、フライホイール11や摩擦クラッチ12を容易に設置できる。
【0075】
また、本実施例の変速機2によれば、パイプ16は、フライホイール11と摩擦クラッチ12の軸方向で隔壁5Wとフライホイール11の間に位置し、かつ、フライホイール11と摩擦クラッチ12の軸方向でフライホイール11と摩擦クラッチ12と並んで設置されている。
【0076】
これにより、フライホイール11と隔壁5Wの間の空きスペースにパイプ16を設置でき、フロントケース5の内部にパイプ16の専用の設置スペースを設けることを不要にできる。
【0077】
このため、変速機ケース4が入力軸9の軸方向に長くなることを防止でき、変速機ケース4が大型化することを防止できる。
【0078】
また、本実施例の変速機2によれば、パイプ16は、金属から構成されているので、パイプ16によって隔壁5Wを補強でき、隔壁5Wの剛性を高くできる。このため、フロントケース5の剛性を高くでき、結果的に変速機ケース4の剛性を高くできる。
【0079】
また、本実施例の変速機2は、パイプ16をフロントケース5の内部に設置したので、パイプ16をフロントケース5の外部に設置することを不要にでき、変速機2の上方に車載部材を設置するスペースを確保できる。
【0080】
なお、本実施例の変速機2は、トルコン室5Aが第1の収容室を構成し、クラッチ室5Bが第2の収容室を構成しているが、クラッチ室5Bが第1の収容室を構成し、トルコン室5Aが第2の収容室を構成してもよい。
【0081】
この場合には、フライホイール11および摩擦クラッチ12が第1の回転部材を構成し、トルクコンバータ10が第2の回転部材を構成する。なお、パイプ16は、金属製であるが、金属に限定されるものではなく、合成樹脂等から構成されてもよい。
なお、本実施例の車両用動力伝達装置は、変速機に適用されているが、変速機に限定されるものではない。
【0082】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0083】
2...変速機(車両用動力伝達装置)、4...変速機ケース(ケース部材)、5A...トルコン室(第1の収容室)、5a...下側連通路、5B...クラッチ室(第2の収容室)、5b...上側連通路、5c...大気通路、5D...底壁(壁部)、5E...左側壁(壁部)、5F...左周壁(壁部)、5G...後壁(壁部)、5W...隔壁(壁部)、10...トルクコンバータ(第1の回転部材)、11...フライホイール(第2の回転部材)、12...摩擦クラッチ(第2の回転部材)、14...ブリーザ室、16...パイプ(管部材)、16A...下側管部(管部材、管部材の一端部)、16B...上側管部(管部材、管部材の他端部)
図1
図2
図3
図4
図5