(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020112235
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大中 皓允
(72)【発明者】
【氏名】萩本 憲俊
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊也
(72)【発明者】
【氏名】高井 隆幸
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194637(JP,A)
【文献】特開2008-170815(JP,A)
【文献】特開平09-152787(JP,A)
【文献】特開2018-116167(JP,A)
【文献】特開2010-060811(JP,A)
【文献】特開2010-152063(JP,A)
【文献】特開2006-317479(JP,A)
【文献】特開2001-125446(JP,A)
【文献】特開2012-155253(JP,A)
【文献】特開2015-219377(JP,A)
【文献】特開2018-159722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/14-13/16
15/02
15/14-15/16
21/00
21/04
21/10-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーに張架され、表面にトナー像を担持して搬送するベルト状の像担持体と、
前記像担持体の表面に当接し、前記像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング部材と、
前記像担持体の内周面に当接し、前記像担持体を介して前記クリーニング部材と対向する回転体と、
を備え、
前記回転体は、外周に弾性層を有
し、
前記弾性層は、多孔質材料で形成され、最表層のセル径が150~400μmであり、前記回転体の軸方向の端部のセル径が前記軸方向の中央部のセル径よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記弾性層は、厚みが3mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性層は、アスカーC硬度が30~50の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材の前記像担持体への当接圧/当接角を変更する第1駆動機構と、
前記回転体の走行履歴に基づいて、前記第1駆動機構による前記クリーニング部材の前記像担持体への当接圧/当接角の変更を制御する当接制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クリーニング部材を前記像担持体に接離させる第2駆動機構と、
前記第2駆動機構による前記クリーニング部材の前記像担持体への接離状態を制御する接離制御部と、
を備え、
前記接離制御部は、画像形成動作の開始時に前記クリーニング部材を前記像担持体に当接させ、前記画像形成動作の終了時に前記クリーニング部材を前記像担持体から離間させることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中間転写ベルト方式の画像形成装置では、感光体に形成されたトナー像が中間転写ベルトに転写され、中間転写ベルトに転写されたトナー像が用紙に転写される。この過程で、トナーは完全には用紙に転写されずに、一部が中間転写ベルトの表面に残留する。中間転写ベルトの表面に残留するトナーは、新たな画像形成の妨げとなり、良好な転写画像を得られない原因となる。そのため、画像形成装置には、中間転写ベルトに当接して中間転写ベルト上に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレードを備えたクリーニング装置が設けられている。
【0003】
中間転写ベルトがローラー等のベルト支持部材に懸架される構成では、長時間の駆動や通紙により、中間転写ベルトの内周面に接触するローラーの表面に異物が付着することがある。ローラーの表面に付着した異物は、中間転写ベルトの裏面に転移し、その後中間転写ベルトの駆動により、クリーニングブレードの対向ローラーと中間転写ベルトの間に入り込んでしまうことがある。このような場合、中間転写ベルトは、異物により裏面から押し上げられて表面に凹凸が発生するため、クリーニングブレードのエッジが浮きあがり、クリーニング不良が生じるおそれがある。
【0004】
近年の高速度化に伴い、クリーニングブレードには、中間転写ベルトの摩擦係数変化の影響を受けにくい金属製ブレードを用いる構成が多くなっている。金属性ブレードを用いた場合、ゴム製ブレードと比較して、中間転写ベルトの凹凸に対する追従性が低くなる。したがって、上記のように、異物により中間転写ベルトが裏面から押し上げられて表面に凹凸が発生し、クリーニングブレードのエッジが浮きあがり、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0005】
上記課題を解決するために、下記のような先行技術が提案されている。
例えば、対向ローラーに対し、多数の間隙を有する発砲ポリウレタンを当接させてクリーニングする構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、トナーを掻き取るスクレーパー(金属ブレード)を、中間転写ベルトの支持部材の間で中間転写ベルトに圧接させる構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、対向ローラーに独立駆動機構及び接離機構を設け、逆回転動作により対向ローラーを清掃した後に中間転写ベルトを駆動させる構成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、中間転写ベルトに弾性層を設ける構成が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-125446号公報
【文献】特開2012-155253号公報
【文献】特開2015-219377号公報
【文献】特開2018-159722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の構成は、中間転写ベルトの裏面に異物が付着した場合、発砲ポリウレタンで異物が回収される前にクリーニングブレード当接面の裏面に到達するので、クリーニング不良が発生するおそれがある。
また、上記特許文献2記載の構成は、スクレーパーに対向物がないので、クリーニングブレードの波打ちによるクリーニング不良が発生するおそれがある。
また、上記特許文献3記載の構成は、接離機構を設ける必要があるため、コストアップするという課題がある。また、プレクリーニング動作を行う必要があるため、生産性がダウンするという課題がある。
また、上記特許文献4記載の構成は、中間転写ベルト裏面の異物による凹凸を緩衝できるレベルの厚みを確保することが困難である。また、弾性ベルト特有の変形・耐久性などの課題がある。
【0008】
本発明は、中間転写ベルトの裏面やクリーニングブレードの対向ローラーに付着した異物によるクリーニング不良の発生を抑制し、クリーニング性能の信頼性を向上させることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
画像形成装置において、
複数のローラーに張架され、表面にトナー像を担持して搬送するベルト状の像担持体と、
前記像担持体の表面に当接し、前記像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング部材と、
前記像担持体の内周面に当接し、前記像担持体を介して前記クリーニング部材と対向する回転体と、
を備え、
前記回転体は、外周に弾性層を有し、
前記弾性層は、多孔質材料で形成され、最表層のセル径が150~400μmであり、前記回転体の軸方向の端部のセル径が前記軸方向の中央部のセル径よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記クリーニング部材は、金属製であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記弾性層は、厚みが3mm以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記弾性層は、アスカーC硬度が30~50の範囲内であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記クリーニング部材の前記像担持体への当接圧/当接角を変更する第1駆動機構と、
前記回転体の走行履歴に基づいて、前記第1駆動機構による前記クリーニング部材の前記像担持体への当接圧/当接角の変更を制御する当接制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記クリーニング部材を前記像担持体に接離させる第2駆動機構と、
前記第2駆動機構による前記クリーニング部材の前記像担持体への接離状態を制御する接離制御部と、
を備え、
前記接離制御部は、画像形成動作の開始時に前記クリーニング部材を前記像担持体に当接させ、前記画像形成動作の終了時に前記クリーニング部材を前記像担持体から離間させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中間転写ベルトの裏面やクリーニングブレードの対向ローラーに付着した異物によるクリーニング不良の発生を抑制し、クリーニング性能の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の制御構造を示す機能ブロック図である。
【
図3】クリーニング装置近傍の概略構成を示す図である。
【
図4】対向ローラーの弾性層において、軸方向端部のセル径が軸方向中央部のセル径よりも大きくなっている様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置であり、
図1及び
図2に示すように、自動原稿搬送部2と、スキャナー部3と、画像形成部4と、給紙部5と、記憶部6と、操作表示部7と、制御部10と、を備えて構成されている。
【0022】
自動原稿搬送部2は、原稿Dを載置する載置トレイ、原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部3は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部3は、受光した反射光を電気信号に変換して制御部10に出力する。
【0023】
画像形成部4は、イエロー作像部Yと、マゼンタ作像部Mと、シアン作像部Cと、ブラック作像部Kと、中間転写ベルトTと、定着装置Fと、を備えて構成されている。
各作像部YMCKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を感光体41に形成し、感光体41に形成されたYMCK各色のトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。各作像部YMCKは、感光体41と、帯電装置42と、露光装置43と、現像装置44と、一次転写ローラー45と、二次転写ローラー46と、クリーニング装置47と、を備えて構成されている。なお、各作像部YMCKの構成及び動作は何れも同様であるため、以下、イエロー作像部Yを例に挙げて、画像形成部4が行う一連の画像形成動作について説明する。
【0024】
感光体41は、ドラム状の金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂からなる感光層が形成された有機感光体により構成され、反時計回りに回転駆動される。感光層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0025】
帯電装置42は、帯電チャージャーを用いて感光体41を一定の電位に帯電する。
露光装置43は、制御部10からの画像データDyに基づいて感光体41の非画像領域を露光して露光した部分の電荷を除去し、感光体41の画像領域に静電潜像を形成する。
現像装置44は、感光体41に形成された静電潜像上に現像剤であるトナーを供給し、感光体41にイエローのトナー像を形成する。
【0026】
一次転写ローラー45は、感光体41に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。なお、他の作像部MCKも同様に、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。これにより、中間転写ベルトT上にYMCK各色のカラーのトナー像が形成される。
【0027】
中間転写ベルトTは、複数のローラーに張架され、表面にトナー像を担持して搬送するベルト状の像担持体であり、ローラーの回転に伴って回転駆動される。この中間転写ベルトTは、一次転写ローラー45により、対向するそれぞれの感光体41に圧着される。一次転写ローラー45のそれぞれには、印加された電圧に応じた転写電流が流れる。これにより、各感光体41の表面に現像された各トナー像は、それぞれ各一次転写ローラー45により順次中間転写ベルトTに一次転写される。
【0028】
二次転写ローラー46は、中間転写ベルトTに押圧されて従動回転することで、当該中間転写ベルトTに転写されて形成されたYMCK各色のトナー像を給紙部5の給紙トレイ51~53から搬送されてきた用紙Pに二次転写する。二次転写ローラー46は、中間転写ベルトTを介して二次転写対向ローラー461に当接して配置され、二次転写ローラー46と二次転写対向ローラー461との間で形成される転写ニップを用紙Pが通過することにより、中間転写ベルトT上のトナー像が、用紙Pに二次転写される。
【0029】
画像形成部4は、YMCK各色のトナー像が二次転写された用紙Pを定着装置Fにより加熱及び加圧し、その後所定の搬送路に通して機外に排出する。
以上が画像形成部4による一連の画像形成動作である。
【0030】
クリーニング装置47は、二次転写後の中間転写ベルトTの表面に残留した残留物(トナー)を除去する。
【0031】
給紙部5は、複数の給紙トレイ51~53を備えて構成され、各給紙トレイ51~53に種類の異なる複数の用紙Pを収容する。給紙部5は、所定の搬送路により収容される用紙Pを画像形成部4に給紙する。
【0032】
記憶部6は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリなどにより構成され、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部10から読み書き可能に記憶する。
【0033】
操作表示部7は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部71及び操作部72として機能する。
表示部71は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。ユーザーは、操作表示部7を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0034】
制御部10は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、CPUはROMに記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7等の画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する(
図2参照)。例えば、制御部10は、スキャナー部3からの電気信号を入力して各種画像処理を行い、画像処理により生成されたYMCK各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkを画像形成部4に出力する。また、制御部10は、画像形成部4の動作を制御して用紙Pに画像を形成する。
【0035】
以下、
図3及び
図4を参照して、クリーニング装置47近傍の構成を説明する。
クリーニング装置47は、
図3に示すように、中間転写ベルトTを張架する対向ローラーR1と対向する位置に配置され、二次転写後の中間転写ベルトTの表面に残留する残留物(転写残トナー)を除去する。クリーニング装置47は、クリーニングブレード471を中間転写ベルトTに常時当接させるブレードクリーニング方式を採用している。これにより、中間転写ベルトTの表面が清掃され、画像形成装置1から排出される用紙がトナー等により汚れないようになっている。
【0036】
クリーニングブレード(クリーニング部材)471は、中間転写ベルトTの回転方向に対してカウンター方向に当接しており、中間転写ベルトTの表面に残留するトナー等を掻き取る。クリーニングブレード471は、金属製であり、例えば、SUS304等のばね用ステンレス鋼で形成された厚みが0.1mmのブレードである。
【0037】
対向ローラー(回転体)R1は、中間転写ベルトTの内周面に当接し、中間転写ベルトTを介してクリーニングブレード471と対向している。対向ローラーR1は、芯金R11と、芯金R11の外周面に形成された弾性層R12と、を有する弾性体ローラーである。対向ローラーR1の外径寸法は、例えばΦ30mmである。弾性層R12は、厚みが5mm程度の発泡スポンジで形成されており、材質は例えばNBR(ニトリルゴム)であり、硬度は30~50(AskerC)程度である。
【0038】
上記の構成を備えることで、長時間の駆動や通紙により、中間転写ベルトT内周面に例えば1mm程度の紙粉凝集物等が付着して、対向ローラーR1との間に異物が挟まれた場合であっても、対向ローラーR1の弾性層R12が変形して、異物による中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することができる。したがって、クリーニングブレード471のエッジ先端の浮き上がりを防ぐことができるため、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0039】
なお、弾性層R12は、厚みが3mm以上であることが好ましい。厚みを3mm以上とすることで、弾性層R12内に異物(最大1mm程度)をより確実に緩衝することができるので、異物による中間転写ベルトT表面の凹凸の発生をより確実に抑制することができる。
また、弾性層R12は、アスカーC硬度が30~50の範囲内であることが好ましい。アスカーC硬度が30未満である場合、弾性層R12に変形が生じるおそれがあり、耐久性に不安が生じるからである。一方、アスカーC硬度が50を超える場合、異物を緩衝することが困難となり、中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することが困難であるからである。
【0040】
対向ローラーR1の弾性層R12は、多孔質材料である発泡スポンジで形成されている。弾性層R12は、
図4に示すように、軸方向中央部のセル径をd1、軸方向端部のセル径をd2としたとき、d1<d2となっている。最表層のセル径は、例えば、d1=150μm、d2=400μm程度であり、飛散したトナーや紙粉等の小径の粒子がセル内に埋没するように形成されている。一般に、印字動作等により紙粉等の異物が中間転写ベルトTの内側に混入する場合、開口部近傍である軸方向端部に付着する可能性が高い。したがって、対向ローラーR1の軸方向端部のセル径d2を軸方向中央部のセル径d1よりも大きくする(d1<d2)ことにより、中間転写ベルトTの内側に異物が混入した場合であっても、対向ローラーR1の表層(弾性層R12)のセル内に異物を埋没させやすくすることができるため、クリーニング装置47近傍における中間転写ベルトTの凹凸の発生を抑制することが可能となり、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0041】
なお、弾性層R12は、最表層のセル径が150~400μmであることが好ましい。最表層のセル径が150μm未満である場合、異物を吸収することができず、中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することが困難であるからである。一方、最表層のセル径が400μmを超える場合、弾性層R12を形成する発泡スポンジが削れやすくなってしまい、耐久性に不安が生じるからである。
【0042】
また、クリーニング装置47は、
図3に示すように、駆動装置472を備えている。
駆動装置472は、クリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの当接状態(当接圧/当接角)を変更する。すなわち、駆動装置472は、本発明の第1駆動機構として機能する。
制御部10は、対向ローラーR1の走行距離、耐久枚数、環境等の情報に基づいて、駆動装置472の移動量を決定する。すなわち、制御部10は、対向ローラーR1の走行履歴に基づいて、駆動装置472によるクリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの当接圧/当接角の変更を制御する本発明の当接制御部として機能する。制御部10は、対向ローラーR1が経年変化等により小径化し、当接力が弱くなった場合であっても、当接圧や当接角が適正状態に維持されるように調整する。
【0043】
また、駆動装置472は、クリーニングブレード471を中間転写ベルトTに接離させることができる。すなわち、駆動装置472は、本発明の第2駆動機構として機能する。
制御部10は、駆動装置472によるクリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの接離状態を制御する。すなわち、制御部10は、本発明の接離制御部として機能する。
対向ローラーR1の弾性層R12は、クリーニングブレード471が当接された状態で長期間放置された場合、局所的に変形してしまうおそれがある。そこで、制御部10は、画像形成動作の開始時にクリーニングブレード471を中間転写ベルトTに当接させ、画像形成動作の終了時にクリーニングブレード471を中間転写ベルトTから離間させる制御を行う。これにより、例えば、画像形成動作が長期間行われず、対向ローラーR1がクリーニングブレード471に当接した状態で放置された場合であっても、弾性層R12の変形を抑制することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1は、複数のローラーに張架され、表面にトナー像を担持して搬送するベルト状の像担持体(中間転写ベルトT)と、中間転写ベルトTの表面に当接し、中間転写ベルトTの表面に残留したトナーを除去するクリーニング部材(クリーニングブレード471)と、中間転写ベルトTの内周面に当接し、中間転写ベルトTを介してクリーニングブレード471と対向する回転体(対向ローラーR1)と、を備える。また、対向ローラーR1は、外周に弾性層R12を有する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、長時間の駆動や通紙により、中間転写ベルトT内周面に例えば1mm程度の紙粉凝集物等が付着して、対向ローラーR1との間に異物が挟まれた場合であっても、対向ローラーR1の弾性層R12が変形して、異物による中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することができる。したがって、クリーニングブレード471のエッジ先端の浮き上がりを防ぐことができるため、クリーニング不良の発生を抑制することが可能となり、クリーニング性能の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、クリーニングブレード471は、金属製である。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、中間転写ベルトTの凹凸に対する追従性が低く、エッジが浮きあがりやすい金属製のクリーニングブレード471を用いる場合であっても、エッジ先端の浮き上がりを防ぐことができるため、クリーニング不良の発生をより確実に抑制することが可能となり、クリーニング性能の信頼性をより確実に向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12は、厚みが3mm以上である。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12内に異物(最大1mm程度)をより確実に緩衝することができるので、異物による中間転写ベルトT表面の凹凸の発生をより確実に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12は、アスカーC硬度が30~50の範囲内である。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12の耐久性を確保しつつ、中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することができるので、クリーニング性能の信頼性をより確実に向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12は、多孔質材料で形成されている。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12のセル内に異物を埋没させることができるため、クリーニング装置47近傍における中間転写ベルトTの凹凸の発生を抑制することが可能となり、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12は、最表層のセル径が150~400μmである。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12の耐久性を確保しつつ、中間転写ベルトT表面の凹凸の発生を抑制することができるので、クリーニング性能の信頼性をより確実に向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、弾性層R12は、対向ローラーR1の軸方向の端部のセル径が、軸方向の中央部のセル径よりも大きい。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、中間転写ベルトTの内側に異物が混入した場合であっても、弾性層R12のセル内に異物を埋没させやすくすることができるため、クリーニング装置47近傍における中間転写ベルトTの凹凸の発生を抑制することが可能となり、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、クリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの当接圧/当接角を変更する第1駆動機構(駆動装置472)と、対向ローラーR1の走行履歴に基づいて、駆動装置472によるクリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの当接圧/当接角の変更を制御する当接制御部(制御部10)と、を備える。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、対向ローラーR1が経年変化等により小径化し、当接力が弱くなった場合であっても、当接圧や当接角が適正状態に維持されるように調整することができるので、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、クリーニングブレード471を中間転写ベルトTに接離させる第2駆動機構(駆動装置472)と、駆動装置472によるクリーニングブレード471の中間転写ベルトTへの接離状態を制御する接離制御部(制御部10)と、を備える。また、制御部10は、画像形成動作の開始時にクリーニングブレード471を中間転写ベルトTに当接させ、画像形成動作の終了時にクリーニングブレード471を中間転写ベルトTから離間させる。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、例えば、画像形成動作が長期間行われず、対向ローラーR1がクリーニングブレード471に当接した状態で放置された場合であっても、弾性層R12の変形を抑制することができるので、弾性層R12の耐久性を確保することが可能となり、クリーニング性能の信頼性をより確実に向上させることができる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、金属製のクリーニングブレード471を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ゴム製のクリーニングブレード471を用いるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、弾性層R12の軸方向の全面にセルが形成されている構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、軸方向端部のみにセルが形成されるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、駆動装置472を第1駆動機構及び第2駆動機構として機能させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、第1駆動機構として機能させる駆動装置と、第2駆動機構として機能させる駆動装置と、を個別に設けるようにしてもよい。
【0057】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
2 自動原稿搬送部
3 スキャナー部
4 画像形成部
41 感光体
42 帯電装置
43 露光装置
44 現像装置
45 一次転写ローラー
46 二次転写ローラー
47 クリーニング装置
471 クリーニングブレード(クリーニング部材)
472 駆動装置(第1駆動機構、第2駆動機構)
T 中間転写ベルト(像担持体)
R1 対向ローラー(回転体)
R11 芯金
R12 弾性層
F 定着装置
5 給紙部
6 記憶部
7 操作表示部
71 表示部
72 操作部
10 制御部(当接制御部、接離制御部)