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特許7494614ロボットの教示制御方法、ロボットシステム、及び、コンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ロボットの教示制御方法、ロボットシステム、及び、コンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240528BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020125031
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021461
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴彦
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-194812(JP,A)
【文献】特開平8-328637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
G05B 19/18 ~ 19/416
19/42 ~ 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの動作プログラムを作成する際の教示制御方法であって、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する工程と、
(b)前記複数の教示点を表示部に表示する工程と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する工程であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、工程と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを受領する工程と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する工程と、
を含み、
前記工程(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する工程を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示される、教示制御方法。
【請求項2】
ロボットの動作プログラムを作成する際の教示制御方法であって、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する工程と、
(b)前記複数の教示点を表示部に表示する工程と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する工程であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、工程と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを受領する工程と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する工程と、
を含み、
前記工程(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する工程を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される、教示制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の教示制御方法であって、
前記動作値は、各教示点群に属する教示点ペアに対する速度又は加速度である、教示制御方法。
【請求項4】
請求項に記載の教示制御方法であって、
前記設定ツールの前記設定可能範囲は、前記教示点における軌跡の曲率に応じて変更される、教示制御方法。
【請求項5】
ロボットシステムであって、
ロボットと、
前記ロボットを制御する制御部と、
前記制御部に接続された表示部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、
(b)前記複数の教示点を前記表示部に表示する処理と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、
を実行し、
前記処理(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示される、ロボットシステム。
【請求項6】
ロボットシステムであって、
ロボットと、
前記ロボットを制御する制御部と、
前記制御部に接続された表示部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、
(b)前記複数の教示点を前記表示部に表示する処理と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、
を実行し、
前記処理(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される、ロボットシステム。
【請求項7】
作業対象物に対する作業を実行するロボットの教示制御をプロセッサーに実行させるコンピュータープログラムであって、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、
(b)前記複数の教示点を表示部に表示する処理と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、
を前記プロセッサーに実行させるように構成されており、
前記処理(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示される、コンピュータープログラム。
【請求項8】
作業対象物に対する作業を実行するロボットの教示制御をプロセッサーに実行させるコンピュータープログラムであって、
(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、
(b)前記複数の教示点を表示部に表示する処理と、
(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、
(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、
(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、
を前記プロセッサーに実行させるように構成されており、
前記処理(d)は、
各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含み、
前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットの教示制御方法、ロボットシステム、及び、コンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットの動作プログラムを作成する際に、隣接する2つの教示点で構成される教示点ペア毎に速度を設定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-328637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットの動作プログラムには教示点が多数含まれており、作業者はそのそれぞれの教示点ペアに対して速度を設定しなければならず、教示作業が煩雑であるという問題があった。このような問題は、複数の教示点に対して加速度や力などの他の動作値を設定する場合にも共通する問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、ロボットの動作プログラムを作成する際の教示制御方法が提供される。この教示制御方法は、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する工程と、(b)前記複数の教示点を表示部に表示する工程と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する工程であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、工程と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを受領する工程と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する工程と、を含む。前記工程(d)は、各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する工程を含む。前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示されるか、又は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、ロボットと、前記ロボットを制御する制御部と、前記制御部に接続された表示部と、を備える。前記制御部は、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、(b)前記複数の教示点を前記表示部に表示する処理と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、を実行する。前記処理(d)は、各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含む。前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示されるか、又は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、作業対象物に対する作業を実行するロボットの教示制御をプロセッサーに実行させるコンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、(b)前記複数の教示点を表示部に表示する処理と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、を前記プロセッサーに実行させるように構成されている。前記処理(d)は、各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する処理を含む。前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示されるか、又は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ロボットシステムの構成例の説明図。
図2】パーソナルコンピューターの機能ブロック図。
図3】教示点群と動作値の設定手順を示すフローチャート。
図4】教示点群と動作パラメーターの設定の様子を示す説明図。
図5】教示点群の分類結果の一例を示す説明図。
図6】動作値に制限がある場合の図5の変形例を示す説明図。
図7】動作値に制限がある場合の図5の他の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ロボットシステムの一例を示す説明図である。このロボットシステムは、ロボット100と、ロボット100を制御する制御装置200と、パーソナルコンピューター300と、ティーチングペンダント400と、を備える。図1には、互いに垂直な3つの方向X,Y,Zが示されている。X方向とY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。他の図においても必要に応じてこれらの方向を図示している。
【0010】
ロボット100は、アーム110と、基台120とを備えている。アーム110は、6つの関節で順次接続されている。アーム110の先端部であるアームエンド112には、力検出部140と、エンドエフェクター150が装着されている。本実施形態では、エンドエフェクター150として研磨装置が使用されており、エンドエフェクター150の先端には研磨材付きの回転体152が設けられている。この回転体152は、例えば、スピンドルに円盤状の研磨材が取り付けられたものである。但し、研磨装置以外の任意のエンドエフェクターを使用可能である。ロボット100の作業対象物であるワークWKは、テーブルTB上に設置されている。本実施形態では6軸ロボットを例示しているが、1個以上の関節を有する任意のアーム機構を有するロボットを用いることが可能である。また、本実施形態のロボット100は、垂直多関節ロボットであるが、水平多関節ロボットを使用してもよい。
【0011】
力検出部140は、エンドエフェクター150に加えられる外力を計測する6軸の力覚センサーである。力検出部140は、固有の座標系であるセンサー座標系において互いに直交する3つの検出軸を有し、各検出軸に平行な力の大きさと、各検出軸回りのトルク(力のモーメント)の大きさとを検出する。各検出軸に平行な力を「並進力」と呼ぶ。また、各検出軸回りのトルクを「回転力」と呼ぶ。本明細書において、「力」という用語は、並進力と回転力の両方を含む意味で使用される。
【0012】
力検出部140は、6軸の力を検出するセンサーである必要はなく、より少ない方向の力を検出するセンサーを使用してもよい。また、力検出部140をアーム110の先端に設ける代わりに、アーム110のいずれか1つ以上の関節に力検出部としての力センサーを設けても良い。なお、「力検出部」は、力を検出する機能を有していればよい。すなわち、「力検出部」は、力覚センサーのように直接的に力を検出する装置でもよく、或いは、IMU(Inertial Measurement Unit,慣性計測装置)や、アーム110のアクチュエーターの電流値から力を検出する装置のように、間接的に力を求める装置でもよい。また、「力検出部」は、ロボット100に外付けされてもよく、ロボット100に内蔵されていてもよい。
【0013】
ワークWKは、エンドエフェクター150の先端に設けられた回転体152で研磨される。研磨中は、力検出部140で検出された力が予め設定された目標力となるようにアーム110が制御される。この研磨作業は、力検出部140の出力に基づく力制御によって行われる作業である。但し、本開示は、力制御を伴わない作業にも適用可能である。
【0014】
図2は、パーソナルコンピューター300の機能を示すブロック図である。パーソナルコンピューター300は、プロセッサー310と、メモリー320と、インターフェイス回路330と、インターフェイス回路330に接続された入力デバイス340及び表示部350と、を有している。インターフェイス回路330は、制御装置200と接続されている。制御装置200には、ティーチングペンダント400が接続されている。
【0015】
プロセッサー310は、ロボット100の動作プログラムを作成する動作プログラム作成部312として機能する。動作プログラム作成部312は、作業者の指示に従って動作プログラムを作成する機能を有する。動作プログラム作成部312は、更に、作成された動作プログラムに従ってロボット100の動作をシミュレーションするシミュレーター機能も有することが好ましい。動作プログラム作成部312は、メモリー320に格納されたコンピュータープログラムをプロセッサー310が実行することによって実現される。但し、動作プログラム作成部312をハードウェア回路で実現してもよい。メモリー320には、ワークWKのCADデータや、動作プログラム作成部312で作成された動作プログラムが格納される。動作プログラムは、制御装置200に転送されて格納される。制御装置200は、この動作プログラムに従ってロボット100の制御を実行する。プロセッサー310は、本開示の「制御部」に相当する。
【0016】
図3は、教示点群の分類と各教示点群に対する動作値の設定手順を示すフローチャートである。図3の処理は、動作プログラム作成部312が動作プログラムを作成する際に実行する教示処理の一部である。図3の処理を制御する方法を「教示制御方法」とも呼ぶ。
【0017】
ステップS110では、動作プログラム作成部312が複数の教示点を取得し、ステップS120では、取得した複数の教示点を表示部350に表示する。教示点を取得する方法としては、主に2つ存在する。第1の取得方法は、ティーチングペンダント400を用いて入力された教示点を、制御装置200を介して取得する方法である。第1の取得方法では、ダイレクトティーチングによって複数の教示点を取得する方法も利用可能である。ダイレクトティーチングは、作業者がアーム110を動かすことによってアーム110の動作を教示する方法である。第2の取得方法は、ワークWKのCADデータの座標点を教示点として取得する方法である。具体的には、例えば、CADデータに含まれる複数の座標点を画面に表示し、その中の任意の座標点を作業者が選択することによって、複数の教示点を取得することができる。教示点を取得する際には、動作値の初期値も同時に取得することが好ましい。動作値の初期値は、ティーチングペンダント400又はパーソナルコンピューター300の入力デバイス340を用いて入力される。
【0018】
図4は、ステップS120で表示部350に表示されたウィンドウW10の一例を示している。このウィンドウW10は、複数の教示点を教示点群に分類するためのグルーピング領域W11と、各教示点群に対して動作パラメーターを設定するためのパラメーター設定領域W12とを含んでいる。動作パラメーターは、速度や加速度等のロボット100の動作値を設定するために使用されるパラメーターである。図4に示すように、ステップS120の時点では、ステップS110で取得された複数の教示点が1つのグループG1として分類されている。本開示において、「グループ」という語句は、教示点群を意味する。複数の教示点が垂直多関節ロボットの軌跡を表している場合には、立体的な軌跡になるので、3次元で表示されることが好ましい。なお、グルーピング領域W11において、教示点の位置の微調整や、不適切な教示点の削除を行うようにしてもよい。
【0019】
図4の例では、パラメーター設定領域W12は、各グループに対して動作パラメーターを設定するための2つの設定ツールT1,T2を含んでいる。第1の設定ツールT1で設定される動作パラメーターは、ロボット100のTCP(Tool Center Point)の動作速度に関するパラメーターである。動作速度を単に「速度」とも呼ぶ。TCPは、アームエンド112近傍の任意の位置に設定可能であるが、通常は、エンドエフェクター150の作業位置に設定される。第2の設定ツールT2で設定される動作パラメーターは、TCPの加速度に関するパラメーターである。図4の例では、設定ツールT1,T2はスライダーとして構成されているが、数値を入力するフィールドや、複数の候補値から1つを選択するプルダウンメニューなどの他の種類のツールを使用してもよい。但し、スライダーを利用すれば、作業者が動作パラメーターを視覚的に理解し易いという利点がある。
【0020】
設定ツールT1,T2は、動作値の絶対値を指定するものでもよく、或いは、動作値の現在値からの増減を指定するものでもよい。後者の場合に、各設定ツールT1,T2の中央は、動作値の現在値を変更しないことを意味し、また、中央より右側は現在値よりも大きな値に設定することを、中央より左側は現在値よりも小さな値に設定することを意味する。このとき、動作パラメーターは、例えば、動作値の現在値からの差分、又は、現在値に乗ずる係数として設定される。
【0021】
作業者は、2つの設定ツールT1,T2の一方又は両方を用いて動作パラメーターを設定することができる。例えば、各グループの教示点に対して動作速度のみを設定したい場合には、第1の設定ツールT1のみを使用してもよい。また、各グループの教示点に対して加速度のみを設定したい場合には、第2の設定ツールT2のみを使用してもよい。
【0022】
なお、パラメーター設定領域W12では、動作パラメーターとして、動作速度と加速度に関する動作パラメーターの他に、力制御の動作値に関する動作パラメーターを設定できるようにしてもよい。力制御の動作値は、例えば、押しつけ力である。
【0023】
ステップS130では、作業者がグルーピング領域W11において複数の教示点を1つ以上のグループに分類し、動作プログラム作成部312がその分類結果を取得する。グループへの分類方法としては、種々の方法を使用可能である。例えば、第1の方法は、複数の教示点をマウスクリックやタッチ操作によって選択する方法である。第2の方法は、複数の教示点を含む領域を囲うことによって選択する方法である。第3の方法は、複数の教示点の始点と終点を選択することによってそれらの間の教示点を選択する方法である。
【0024】
なお、ステップS130では、複数の教示点が1つ以上のグループに分類されるが、グループの数は2個以上とすることが好ましい。また、少なくとも1つのグループは、3つ以上の教示点を含むことが好ましい。この理由は、より多くの教示点を含むようにグループを分類すれば、グループの数が減るので、各グループに対する動作パラメーターの設定作業がより容易になるからである。
【0025】
ステップS140では、作業者が各グループに対する動作パラメーターを設定し、動作プログラム作成部312がその動作パラメーターを受領する。
【0026】
図5は、複数の教示点が4つのグループG1~G4に分類された状態を示す説明図である。作業者は、グルーピング領域W11において、複数の教示点を4つのグループG1~G4に分類している。このとき、各グループを取り囲む枠と、各グループの識別符号が表示されることが好ましい。また、グルーピング領域W11に表示された複数の教示点のすべてが、いずれかのグループに分類されることが好ましい。パラメーター設定領域W12には、各グループに対する動作パラメーターの設定ツールT1,T2が表示されている。作業者は、各グループに対する動作パラメーターを個別に設定可能である。図5の例では、スライダーとして構成された設定ツールT1,T2を使用して、各グループに対する動作速度と加速度の動作パラメーターが設定されている。力制御パラメーターも同様に設定される。ウィンドウW10内の「適用」ボタンが押されると、動作プログラム作成部312は、設定された各グループの分類と、各グループに対する動作パラメーターとを取得する。
【0027】
なお、或るグループの中に、動作値を設定できる範囲に制限がある教示点が含まれている場合には、パラメーター設定領域W12における動作パラメーターの設定可能範囲が、変更可能な範囲に自動的に変更された状態で表示されることが好ましい。この例としては、例えば、以下で説明する図6図7の例を使用可能である。
【0028】
図6は、動作値に制限がある場合の図5の変形例を示す説明図である。この例では、パラメーター設定領域W12において、グループG2の動作速度の動作パラメーターの全範囲が、設定可能範囲R1と、設定不可範囲R2とに視覚的に区別されて表示されている。グループG4も同様である。作業者は、設定可能範囲R1内でのみ動作速度の動作パラメーターを設定することができる。加速度についても同様に、設定可能範囲を変更してもよい。
【0029】
上述したような動作値の制限は、各グループに属する教示点における軌跡の曲率に応じて生じることが多いので、設定ツールT1の設定可能範囲を、教示点における軌跡の曲率に応じて変更されるようにしてもよい。具体的には、教示点における軌跡の曲率が大きな場合には、動作値の動作パラメーターは小さな範囲に制限される。こうれば、教示点で構成される軌跡の曲率に応じて、設定ツールの設定可能範囲を適切に変更できる。なお、或る教示点における軌跡の曲率は、例えば、その教示点を中心とする3つの連続した教示点で規定される円の半径から算出できる。或いは、ワークWKのCADデータを利用可能な場合には、その教示点における面の曲率をCADデータから取得するようにしてもよい。
【0030】
図7は、動作値に制限がある場合の図5の他の変形例を示す説明図である。この例では、パラメーター設定領域W12において、グループG2の設定ツールT1のスライダーの大きさは変わらないが、その設定可能範囲が通常の全範囲であるー100%~100%よりも狭い範囲であることを作業者が認識できるように、上限値と下限値が変更されている。グループG4も同様である。作業者は、この狭い範囲でのみ動作速度の動作パラメーターを設定することができる。
【0031】
上述した図6図7の例のように、動作パラメーターの設定可能範囲が、各グループに対して個別に決められる範囲で表示されるようにすれば、各グループに適した設定可能範囲を有する設定ツールを用いて、動作パラメーターを容易に設定できる。一方、図5の例のように、動作パラメーターの設定可能範囲を、各グループのすべてについて同一の範囲で表示されるようにすれば、各グループに共通した設定可能範囲を有する設定ツールを用いて動作パラメーターを容易に設定できる。
【0032】
ステップS150では、動作プログラム作成部312が、ステップS140で設定された動作パラメーターを用いて、各グループに対する動作値を設定する。上述したように、動作パラメーターが、動作値の現在値からの差分、又は、現在値に乗ずる係数として設定されている場合には、この動作パラメーターを用いて、各グループに属する各教示点ペアに対して動作速度や加速度の新たな動作値が設定される。一方、動作パラメーターが、動作値の絶対値として設定されている場合には、動作パラメーターの値そのものが新たな動作値として設定される。なお、「教示点ペア」は、複数の教示点で構成される軌跡において連続する任意の2つの教示点を意味する。なお、押しつけ力などの力制御パラメーターは、各教示点ペアに対してではなく、個々の教示点に対して設定される。本開示において、「各グループに対して動作値が設定される」という文言は、このような2つの場合の両方を包含する意味で使用される。
【0033】
図4図7の例において、各グループに属する各教示点ペアに対しては、動作値として速度又は加速度が設定される。本開示における「速度又は加速度」という語句は、速度のみの場合と、加速度のみの場合と、速度及び加速度の場合と、の3つの場合を包含する意味で使用される。例えば、或る教示点ペアに対して速度と加速度の両方を目標値として設定することも可能である。この場合に、教示点ペアのうちの第1の教示点から第2の教示点に向けてロボット100のTCPが移動する動作を想定する。このとき、第1の教示点から移動を開始し、目標速度に達するまでは目標加速度でTCPを移動させ、目標速度に達した後は目標速度を維持したままで第2の教示点に到達するようにロボット100が制御される。
【0034】
ステップS150が終了すると、動作プログラム作成部312は、それまでに設定された条件に従って動作プログラムを作成してメモリー320に格納する。
【0035】
ステップS160では、動作プログラム作成部312が、動作プログラムに従って、ロボット100の動作シミュレーションを実行する。この動作シミュレーションは、作業者が、ウィンドウW10内の「シミュレーション」ボタンを押すことによって開始される。
【0036】
ステップS170では、作業者が、ステップS160で行われた動作シミュレーションを観察して、動作値の設定が適切か否かを判定する。適切でない場合には、ステップS140に戻り、作業者が、各グループに対する動作パラメーターを必要に応じて調整する。動作プログラム作成部312は、調整された動作パラメーターを受領すると、上述したステップS150~S170を再度実行する。動作値の設定が適切であることが確認された場合には、図3の処理を終了する。
【0037】
以上のように、上記実施形態では、複数の教示点を1つ以上のグループに分類し、各グループに対して動作値を設定するので、教示作業を容易に行うことが可能である。
【0038】
・他の実施形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態(aspect)によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0039】
(1)本開示の第1の形態によれば、ロボットの動作プログラムを作成する際の教示制御方法が提供される。この教示制御方法は、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する工程と、(b)前記複数の教示点を表示部に表示する工程と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する工程であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、工程と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを受領する工程と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する工程と、を含む。
この教示制御方法によれば、複数の教示点を1つ以上のグループに分類し、各グループに対して動作値を設定するので、教示作業を容易に行うことができる。
【0040】
(2)上記教示制御方法において、前記動作値は、各教示点群に属する教示点ペアに対する速度又は加速度であるものとしてもよい。
この教示制御方法によれば、速度又は加速度を教示点ペア毎に容易に設定できる。
【0041】
(3)上記教示制御方法において、前記工程(d)は、各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する工程を含み、前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、前記1つ以上の教示点群のすべてについて同一の範囲で表示されるものとしてよい。
この教示制御方法によれば、各教示点群に共通した設定可能範囲を有する設定ツールを用いて動作パラメーターを容易に設定できる。
【0042】
(4)上記教示制御方法において、前記工程(d)は、各教示点群について、前記動作パラメーターを設定するための設定ツールを前記表示部に表示する工程を含み、前記設定ツールにおける前記動作パラメーターの設定可能範囲は、各教示点群に対して個別に決められる範囲で表示されるものとしてもよい。
この教示制御方法によれば、各教示点群に適した設定可能範囲を有する設定ツールを用いて、動作パラメーターを容易に設定できる。
【0043】
(5)上記教示制御方法において、前記設定ツールの前記設定可能範囲は、前記教示点における軌跡の曲率に応じて変更されるものとしてもよい。
この教示制御方法によれば、教示点で構成される軌跡の曲率に応じて、設定ツールの設定可能範囲を適切に変更できる。
【0044】
(6)本開示の第2の形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、ロボットと、前記ロボットを制御する制御部と、前記制御部に接続された表示部と、を備える。前記制御部は、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、(b)前記複数の教示点を前記表示部に表示する処理と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理を実行する処理と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、を実行する。
このロボットシステムによれば、複数の教示点を1つ以上のグループに分類し、各グループに対して動作値を設定するので、教示作業を容易に行うことができる。
【0045】
(7)本開示の第3の形態によれば、作業対象物に対する作業を実行するロボットの教示制御をプロセッサーに実行させるコンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、(a)3つ以上の複数の教示点を取得する処理と、(b)前記複数の教示点を表示部に表示する処理と、(c)前記複数の教示点を1つ以上の教示点群に分類する分類処理の結果を取得する処理であって、前記1つ以上の教示点群のうちの少なくとも1つは前記複数の教示点のうちの少なくとも3つを含む、処理と、(d)前記1つ以上の教示点群の中の各教示点群に対する動作値を設定するために使用される動作パラメーターを取得する処理と、(e)前記動作パラメーターを用いて、各教示点群に対する前記動作値を設定する処理と、を前記プロセッサーに実行させる。
このコンピュータープログラムによれば、複数の教示点を1つ以上のグループに分類し、各グループに対して動作値を設定するので、教示作業を容易に行うことができる。
【0046】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、ロボットとロボット制御装置とを備えたロボットシステム、ロボット制御装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…ロボット、110…アーム、112…アームエンド、120…基台、140…力検出部、150…エンドエフェクター、152…回転体、200…制御装置、300…パーソナルコンピューター、310…プロセッサー、312…動作プログラム作成部、320…メモリー、330…インターフェイス回路、340…入力デバイス、350…表示部、400…ティーチングペンダント
図1
図2
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図5
図6
図7