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特許7494619クリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】クリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125853
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021942
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山田 千晶
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】出石 由美子
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1421(JP,A)
【文献】特開2009-220520(JP,A)
【文献】特開2020-59188(JP,A)
【文献】特開2019-162733(JP,A)
【文献】特開2018-75799(JP,A)
【文献】特開2016-150460(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153910(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0309251(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0266342(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0121531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、前記複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつ前記ノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、
前記払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、
前記払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより前記払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、
前記払拭機構は、
前記液調整部による前記払拭部材の外表面の押圧時に前記払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、
前記液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の前記複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、
前記液排出路は、前記複数の第1の細孔の内部空間と前記払拭機構の外部の空間とを連通するように、前記払拭部材に形成され、
前記払拭機構は、一方向に延びるように形成された軸部材をさらに含み、
前記払拭部材は、前記軸部材に取り付けられたローラであり、
前記液調整部は、前記払拭部材の一部を挟んで前記軸部材に対向するように配置され、
前記払拭部材は、前記払拭部材の外周面で開放されかつ前記払拭部材の周方向に延びる少なくとも1つの溝を前記液排出路として有する、クリーニング装置。
【請求項2】
ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、前記複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつ前記ノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、
前記払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、
前記払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより前記払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、
前記払拭機構は、
前記液調整部による前記払拭部材の外表面の押圧時に前記払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、
前記液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の前記複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、
前記払拭機構は、前記払拭部材を支持する支持部材をさらに含み、
前記液調整部は、前記払拭部材の少なくとも一部を挟んで前記支持部材に対向するように配置され、
前記液排出路は、前記複数の第1の細孔の内部空間と前記払拭機構の外部の空間とを連通するように、前記支持部材に形成され、
前記支持部材は、一方向に延びるように形成された軸部材であり、
前記払拭部材は、前記軸部材に取り付けられたローラであり、
前記軸部材の外周面には、前記一方向に延びる少なくとも1つの溝が形成され、
前記軸部材の前記外周面に形成された少なくとも1つの溝と前記払拭部材との間に形成される空間は、前記液排出路として機能する、クリーニング装置。
【請求項3】
ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、前記複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつ前記ノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、
前記払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、
前記払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより前記払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、
前記払拭機構は、
前記液調整部による前記払拭部材の外表面の押圧時に前記払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、
前記液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の前記複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、
前記払拭機構は、前記払拭部材を支持する支持部材をさらに含み、
前記液調整部は、前記払拭部材の少なくとも一部を挟んで前記支持部材に対向するように配置され、
前記液排出路は、前記複数の第1の細孔の内部空間と前記払拭機構の外部の空間とを連通するように、前記支持部材に形成され、
前記支持部材は、一方向に延びるように形成された中空の軸部材であり、
前記払拭部材は、前記軸部材に取り付けられたローラであり、
前記軸部材の外周面には、当該軸部材の内部空間と当該軸部材の外部とを連通する少なくとも1つの貫通孔が形成され、
前記少なくとも1つの貫通孔および前記軸部材の内部空間は、前記液排出路として機能する、クリーニング装置。
【請求項4】
ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、前記複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつ前記ノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、
前記払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、
前記払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより前記払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、
前記払拭機構は、
前記液調整部による前記払拭部材の外表面の押圧時に前記払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、
前記液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の前記複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、
前記払拭部材は、
前記液調整部により押圧される第1の面と、
前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記払拭機構は、
前記払拭部材を支持する支持部材と、
前記払拭部材の前記第2の面と前記支持部材とを連結するように設けられた中間連結部材とをさらに含み、
前記液調整部は、前記払拭部材の少なくとも一部および前記中間連結部材の少なくとも一部を挟んで前記支持部材に対向するように配置され、
前記中間連結部材は、複数の第2の細孔を有する第2の多孔質材料で形成され、
前記複数の第2の細孔の少なくとも一部は、前記第1の多孔質材料の前記複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きい断面積を有し、前記液排出路として機能する、クリーニング装置。
【請求項5】
前記支持部材は、一方向に延びるように形成された軸部材であり、
前記中間連結部材は、当該中間連結部材が前記軸部材を取り囲むように前記軸部材の外周面に取り付けられ、
前記払拭部材の前記第2の面は、当該払拭部材が前記中間連結部材を取り囲むように前記中間連結部材の外周面に取り付けられた、請求項記載のクリーニング装置。
【請求項6】
記録媒体に画像形成用のインクを吐出するノズル面を有するインクジェットヘッドと、
請求項1~のいずれか一項に記載のクリーニング装置とを備える、インクジェット画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体に画像形成用のインクを吐出するインクジェットヘッドのクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙または布帛等の種々の記録媒体に画像を形成するためにインクジェット画像形成装置が用いられる。インクジェット画像形成装置においては、例えばインクジェットヘッドに設けられた複数のノズルから記録媒体に画像形成用のインクが吐出される。画像形成に用いられたインクの液滴、紙粉または糸くず等が、汚染物質としてインクジェットヘッドに付着すると、高い精度で画像形成を行うことができない。そこで、インクジェットヘッドを洗浄する種々のクリーニング装置が提案されている。
【0003】
クリーニング装置の一例として特許文献1に記載されたインクジェット記録ヘッドメンテナンス機構は、記録ヘッドのノズルからインクを吐出し、被記録部材に当該インクによる画像を形成するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドのノズル形成面に接触しかつ前記記録ヘッドに対し相対的に移動することによってクリーニング動作を行うメンテナンス機構に関し、回転可能に軸支され、液体吸収性能および適度な圧力を加えることで吸収した液体を滲ます性能を有する弾性体により形成されるローラと、可撓性の弾性体で形成されるワイパーブレードと、前記ローラおよび前記ワイパーブレードを搭載する移動可能なキャリッジにより構成され、クリーニング動作前に、予め前記記録ヘッドから前記ローラに対してインクを吐出し吸収させておき、前記ローラで前記ノズル形成面を拭った後、前記ワイパーブレードで前記ノズル形成面をワイピングすることを特徴としている。さらに、上記のインクジェット記録ヘッドメンテナンス機構は、クリーニング動作終了時に、前記ローラを回転可能な方向へ所定角度回転させるとともに、この際に前記キャリッジ上に形成した掻き取り爪で、該ローラに付着する汚れを排出させることを特徴としている。
【0004】
しかしながら、上記のように、ローラに付着する汚れを掻き取り爪で取り除く構成では、実際には、ローラに付着する汚れを十分に排出させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-361879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、払拭部材の清浄度を高く維持することを可能にするクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面によれば、クリーニング装置は、ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、払拭機構は、液調整部による払拭部材の外表面の押圧時に払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、液排出路は、複数の第1の細孔の内部空間と払拭機構の外部の空間とを連通するように、払拭部材に形成され、払拭機構は、一方向に延びるように形成された軸部材をさらに含み、払拭部材は、軸部材に取り付けられたローラであり、液調整部は、払拭部材の一部を挟んで軸部材に対向するように配置され、払拭部材は、払拭部材の外周面で開放されかつ払拭部材の周方向に延びる少なくとも1つの溝を液排出路として有する
【0008】
そのクリーニング装置においては、液充填部において払拭部材に洗浄液が含浸される。洗浄液が含浸された払拭部材の外表面の少なくとも一部が、液調整部により押圧される。
【0009】
ここで、払拭機構は液排出路を有する。また、液排出路の断面積は第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きい。そのため、払拭部材が押圧されることにより払拭部材から排出されるべき洗浄液は、優先的に液排出路を通して払拭機構の外部に円滑に導かれ、排出される。それにより、払拭部材の内部から外部にかけて洗浄液の強力な流れが発生する。
【0010】
上記の洗浄液の流れは、払拭部材の内部に存在する汚染物質を液排出路から円滑に排出させるとともに、払拭部材の表面に付着する汚染物質をその表面から剥離する。また、上記の洗浄液の流れは、払拭部材から排出または剥離された汚染物質が払拭部材に再付着することを抑制するとともに、払拭部材から排出されるべき洗浄液が払拭部材の内部で滞留することを抑制する。したがって、払拭部材における洗浄液の含浸量が適切に調整される。これらの結果、払拭部材の清浄度を高く維持することが可能となり、高い清浄度を有する払拭部材によりノズル面を適切に払拭することが可能になる。
【0011】
排出路は、複数の第1の細孔の内部空間と払拭機構の外部の空間とを連通するように、払拭部材に形成される。
【0012】
この場合、液調整部による払拭部材の押圧時に、複数の第1の細孔の内部空間に存在する洗浄液が、払拭部材に形成された液排出路を通して払拭部材の外部に円滑に排出される。
【0015】
拭機構は、一方向に延びるように形成された軸部材をさらに含み、払拭部材は、軸部材に取り付けられたローラであり、液調整部は、払拭部材の一部を挟んで軸部材に対向するように配置され、払拭部材は、払拭部材の外周面で開放されかつ払拭部材の周方向に延びる少なくとも1つの溝を液排出路として有する。
【0016】
この場合、液調整部による払拭部材の押圧時に、複数の第1の細孔の内部空間に存在する洗浄液が少なくとも1つの溝を通して払拭部材の外部に円滑に排出される。
【0021】
この発明の他の局面によれば、クリーニング装置は、ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、払拭機構は、液調整部による払拭部材の外表面の押圧時に払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、払拭機構は、払拭部材を支持する支持部材をさらに含み、液調整部は、払拭部材の少なくとも一部を挟んで支持部材に対向するように配置され、液排出路は、複数の第1の細孔の内部空間と払拭機構の外部の空間とを連通するように、支持部材に形成され、支持部材は、一方向に延びるように形成された軸部材であり、払拭部材は、軸部材に取り付けられたローラであり、軸部材の外周面には、一方向に延びる少なくとも1つの溝が形成され、軸部材の外周面に形成された少なくとも1つの溝と払拭部材との間に形成される空間は、液排出路として機能する。
【0022】
この場合、液調整部による払拭部材の押圧時に、複数の第1の細孔の内部空間に存在する洗浄液が、軸部材の外周面に形成された少なくとも1つの溝を通して払拭部材の外部に円滑に排出される。
【0023】
この発明のさらに他の局面によれば、クリーニング装置は、ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、払拭機構は、液調整部による払拭部材の外表面の押圧時に払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、払拭機構は、払拭部材を支持する支持部材をさらに含み、液調整部は、払拭部材の少なくとも一部を挟んで支持部材に対向するように配置され、液排出路は、複数の第1の細孔の内部空間と払拭機構の外部の空間とを連通するように、支持部材に形成され、支持部材は、一方向に延びるように形成された中空の軸部材であり、払拭部材は、軸部材に取り付けられたローラであり、軸部材の外周面には、当該軸部材の内部空間と当該軸部材の外部とを連通する少なくとも1つの貫通孔が形成され、少なくとも1つの貫通孔および軸部材の内部空間は、液排出路として機能する。
【0024】
この場合、液調整部による払拭部材の押圧時に、複数の第1の細孔の内部空間に存在する洗浄液が、軸部材の外周面に形成された少なくとも1つの貫通孔および軸部材の内部空間を通して払拭部材の外部に円滑に排出される。
【0025】
この発明のさらに他の局面によれば、クリーニング装置は、ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、複数の第1の細孔を有する第1の多孔質材料で形成され、複数の第1の細孔内に洗浄液が浸入することにより洗浄液が含浸されることが可能でかつノズル面を払拭することが可能に構成された払拭部材を含む払拭機構と、払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、払拭部材の外表面の少なくとも一部を押圧することにより払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、払拭機構は、液調整部による払拭部材の外表面の押圧時に払拭部材に含浸された洗浄液の一部を当該払拭機構の外部の空間に導く液排出路を有し、液排出路の断面積は、第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きく、払拭部材は、液調整部により押圧される第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有し、払拭機構は、払拭部材を支持する支持部材と、払拭部材の第2の面と支持部材とを連結するように設けられた中間連結部材とをさらに含み、液調整部は、払拭部材の少なくとも一部および中間連結部材の少なくとも一部を挟んで支持部材に対向するように配置され、中間連結部材は、複数の第2の細孔を有する第2の多孔質材料で形成され、複数の第2の細孔の少なくとも一部は、第1の多孔質材料の複数の第1の細孔の各々の断面積よりも大きい断面積を有し、液排出路として機能する。
【0026】
この場合、液調整部による払拭部材の押圧時に、複数の第1の細孔の内部空間に存在する洗浄液が、中間連結部材の複数の第2の細孔の少なくとも一部を通して払拭部材の外部に円滑に排出される。
【0027】
好ましくは、支持部材は、一方向に延びるように形成された軸部材であり、中間連結部材は、当該中間連結部材が軸部材を取り囲むように軸部材の外周面に取り付けられ、払拭部材の第2の面は、当該払拭部材が中間連結部材を取り囲むように中間連結部材の外周面に取り付けられる。この場合、簡単な構成で、払拭部材の内側に洗浄液の液排出路が形成される。
【0028】
この発明のさらに他の局面によれば、インクジェット画像形成装置は、記録媒体に画像形成用のインクを吐出するノズル面を有するインクジェットヘッドと、上記のクリーニング装置とを備える。
【0029】
上記のクリーニング装置によれば、払拭部材の清浄度を高く維持することが可能となり、高い清浄度を有する払拭部材によりノズル面を適切に払拭することが可能である。それにより、記録媒体に形成される画像の画質劣化を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。
図3図1のクリーニングユニットの平面図である。
図4図3のクリーニングユニットのA-A線断面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。
図14】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第4の構成例を説明するための図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第5の構成例を説明するための図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第6の構成例を説明するための図である。
図17】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第7の構成例を説明するための図である。
図18】本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第7の構成例を説明するための図である。
図19】ノズルクリーニング試験の結果を示す一覧表である。
図20】他の実施の形態に係るクリーニングユニットの断面図である。
図21】他の実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。
図22】他の実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。
図23】他の実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。
図24】他の実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。
図25】他の実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。
図26】他の実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。
図27】他の実施の形態に係る払拭機構の第4の構成例を説明するための図である。
図28】他の実施の形態に係る払拭機構の第4の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係るクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
[1]インクジェット画像形成装置の基本構成
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1は、主として記録媒体搬送装置2、インク供給装置3およびクリーニング装置4を備える。
【0033】
記録媒体搬送装置2は、紙または布帛等の記録媒体mを搬送する。具体的には、記録媒体搬送装置2は、駆動ローラ21、従動ローラ22および張力制御ローラ23を備える。ここで、インクジェット画像形成装置1において、水平面内で直交する第1の方向D1および第2の方向D2を定義する。駆動ローラ21および従動ローラ22は、第1の方向D1に延びるようにかつ所定の距離をおいて第2の方向D2の方向に並ぶように配置されている。張力制御ローラ23は、第1の方向D1に延びるようにかつ駆動ローラ21と従動ローラ22との間の中間位置の下方に配置されている。
【0034】
駆動ローラ21、従動ローラ22および張力制御ローラ23の間には、搬送ベルト24が掛け渡されている。搬送ベルト24のうち駆動ローラ21の上端部と従動ローラ22の上端部との間に掛け渡される部分(以下、搬送吸着部と呼ぶ。)は、図示しない吸着装置により記録媒体mを吸着可能に構成され、記録媒体mの載置面として機能する。
【0035】
記録媒体搬送装置2は、さらに搬送駆動部29を備える。搬送駆動部29は、図1に太い実線の矢印a1で示すように、駆動ローラ21を回転させる。それにより、搬送ベルト24が回転する。インクジェット画像形成装置1の外部から、回転する搬送ベルト24の搬送吸着部上に記録媒体mが導かれる。搬送ベルト24上に導かれた記録媒体mは、図1に太い実線の矢印a2で示すように、搬送ベルト24の搬送吸着部により吸着されつつ従動ローラ22から駆動ローラ21に向く方向(第2の方向D2)に搬送される。なお、本例の記録媒体mは、帯状の布帛である。
【0036】
インク供給装置3は、記録媒体搬送装置2により搬送される記録媒体mに、画像形成用のインクを供給する。具体的には、インク供給装置3は、ヘッド部30およびヘッド移動部39を備える。ヘッド部30は、複数(本例では4個)のヘッドユニット31がヘッドキャリッジ32に収容された構成を有する。図1および図2では、ヘッドキャリッジ32の外形が一点鎖線で示される。
【0037】
ヘッドキャリッジ32においては、共通の構成を有する複数のヘッドユニット31が予め定められた順で並ぶように固定されている。図1の吹き出し内に、一のヘッドユニット31の下端部を下方から見た図が示される。図1の吹き出し内に示されるように、複数のヘッドユニット31の各々の底部には、当該ヘッドユニット31について予め定められた色のインクを吐出する複数のインクヘッドihが設けられる。本例のヘッドユニット31においては、第1の方向D1に並ぶように配置された一群のインクヘッドihと他の一群のインクヘッドihとが、第2の方向D2に2列で並ぶように配置されている。
【0038】
なお、各ヘッドユニット31においては、3以上の多数群(例えば、4つの群)のインクヘッドihが第2の方向D2に多数列(例えば、4つの列)で並ぶように配置されてもよい。
【0039】
ここで、図1に示される4つのヘッドユニット31のうち、記録媒体mの搬送方向における最初のヘッドユニット31(最も上流に位置するヘッドユニット31)に設けられるインクヘッドihは、イエローのインクを吐出する。また、記録媒体mの搬送方向における2番目のヘッドユニット31に設けられるインクヘッドihは、マゼンタのインクを吐出する。また、記録媒体mの搬送方向における3番目のヘッドユニット31に設けられるインクヘッドihは、シアンのインクを吐出する。さらに、記録媒体mの搬送方向における最後のヘッドユニット31(最も下流に位置するヘッドユニット31)に設けられるインクヘッドihは、ブラックのインクを吐出する。
【0040】
各ヘッドユニット31には、インクヘッドによるインクの吐出を制御する図示しないインクヘッド制御部が設けられている。以下の説明では、各ヘッドユニット31のインクヘッドihのうち、インクの吐出口が形成された面をノズル面と呼ぶ。
【0041】
ヘッドキャリッジ32は、複数のインクヘッドihのノズル面が搬送ベルト24の搬送吸着部に対向するように、記録媒体搬送装置2の上方の空間で上下動可能に支持される。ヘッド移動部39は、図1に示すように、記録媒体mへの画像形成時に、複数のヘッドユニット31が搬送ベルト24に近接する下方位置にヘッドキャリッジ32を移動させ、保持する。一方、ヘッド移動部39は、後述するノズルクリーニング時に、図2に示すように、複数のヘッドユニット31が搬送ベルト24から所定距離離間する上方位置にヘッドキャリッジ32を移動させ、保持する。これにより、上方位置にあるヘッドキャリッジ32と搬送ベルト24との間には空間が形成される。
【0042】
クリーニング装置4は、複数(本例では4個)のクリーニングユニット40およびクリーニングユニット移動部49を備える。複数のクリーニングユニット40は、インク供給装置3の複数のヘッドユニット31にそれぞれ対応するように設けられ、複数のヘッドユニット31のノズル面をそれぞれ洗浄可能に構成される。以下の説明では、クリーニングユニット40を用いてヘッドユニット31のノズル面を洗浄することをノズルクリーニングと呼ぶ。クリーニングユニット40の詳細は後述する。
【0043】
クリーニングユニット移動部49は、図1に示すように、記録媒体mへの画像形成時に、ヘッド部30および記録媒体搬送装置2から一定距離離間した待機位置にクリーニングユニット40を移動させ、保持する。一方、クリーニングユニット移動部49は、図2に白抜きの矢印で示すように、ノズルクリーニング時に、上方位置に保持されたヘッドキャリッジ32と搬送ベルト24との間の空間で複数のクリーニングユニット40を移動させる。
【0044】
[2]クリーニングユニット40の構成
図3図1のクリーニングユニット40の平面図であり、図4図3のクリーニングユニット40のA-A線断面図である。図4では、図3のクリーニングユニット40のA-A線断面図とともに、図1のヘッドユニット31の構成が一点鎖線で示される。
【0045】
図3および図4に示すように、クリーニングユニット40は、主として払拭部材41、液量調整部材42、回転駆動部43および貯留槽44を備える。払拭部材41は、後述する洗浄液に浸漬されることにより、洗浄液が含浸されることが可能に構成されている。また、払拭部材41は、洗浄液が含浸された状態で、その外表面の一部が押圧されることにより含浸された洗浄液が払拭部材41の外部に排出されること(絞り出されること)が可能に構成されている。
【0046】
具体的には、本実施の形態に係る払拭部材41は、柔軟性を有するスポンジ状の多孔質材料(いわゆる連続多孔質体)からなり、中空の丸棒形状を有する支持軸41aに取り付けられている。支持軸41aの中心軸に直交する断面において、払拭部材41は支持軸41aの外周面を取り囲む。この状態で、払拭部材41は、支持軸41aの中心軸から概ね一定距離離間した略円筒形状の外周面を有する。払拭部材41の構成の詳細は後述する。
【0047】
払拭部材41に用いることができる多孔質材料としては、連続気泡により構成された複数の細孔を有するポリウレタンまたはポリオレフィン等の高分子化合物が挙げられる。支持軸41aに用いることができる材料としては、高い剛性を有するとともに耐腐食性を有するステンレス等が挙げられる。
【0048】
なお、払拭部材41は、支持軸41aに対して着脱可能に構成されてもよい。また、支持軸41aは、中空の丸棒形状に代えて、無垢な丸棒形状を有してもよいし、角棒形状を有してもよい。
【0049】
支持軸41aの両端部およびそれらの近傍部分は、支持軸41aに払拭部材41が取り付けられた状態で、払拭部材41の両端部から突出している。支持軸41aの両端部およびそれらの近傍部分は、貯留槽44に固定された軸支持部41b,41cにより、それぞれ回転可能に支持されている。回転駆動部43は、例えばモータを含み、ノズルクリーニング時に支持軸41aを回転させる。それにより払拭部材41が支持軸41aとともに回転する。
【0050】
液量調整部材42は、筒形状を有し、無垢の丸棒形状を有する支持軸42aに取り付けられている。支持軸42aの中心軸に直交する断面において、液量調整部材42は、支持軸42aの外周面を取り囲む。この状態で、液量調整部材42は、支持軸42aの中心軸から概ね一定距離離間した略円筒形状の外周面を有する。本実施の形態においては、液量調整部材42は、例えばステンレスまたはアルミニウム合金等の金属材料により構成される。なお、液量調整部材42は、支持軸42aに対して着脱可能に構成されてもよい。また、支持軸42aは、無垢の丸棒形状に代えて、中空の丸棒形状を有してもよいし、角棒形状を有してもよい。あるいは、液量調整部材42は、支持軸42aと一体成型により作製されてもよい。この場合、液量調整部材42および支持軸42aは、単一部材で構成される。
【0051】
支持軸42aの両端部およびそれらの近傍部分は、支持軸42aに液量調整部材42が設けられた状態で、液量調整部材42の両端部から突出している。支持軸42aの両端部およびそれらの近傍部分は、貯留槽44に固定された軸支持部42b,42cにより、それぞれ回転可能に支持されている。
【0052】
2つの支持軸41a,42aは、支持軸41a,42a間の距離RLが、予め定められた基準長さで一定に保たれるように支持されている。基準長さは、払拭部材41の外周面の一部が液量調整部材42の外周面の一部で押圧されることにより払拭部材41の外周面の一部に所定深さのくぼみ(いわゆるニップ部)が形成されるように設定される。
【0053】
貯留槽44は、上部が開放された箱形状を有する。具体的には、貯留槽44は、周壁部44wおよび底面部44bを有する。周壁部44wは、図3に示すように、平面視で払拭部材41および液量調整部材42を取り囲む矩形状に形成されている。また、底面部44bは、図4に示すように、周壁部44wの下端を塞ぐように形成されている。
【0054】
支持軸41aは、払拭部材41のうち下端部を含む一部分が貯留槽44の内部に位置しかつ第2の方向D2に平行となるように、軸支持部41b,41cにより支持されている。一方、支持軸42aは、液量調整部材42の全体が貯留槽44よりも上方に位置しかつ第2の方向D2に平行となるように、軸支持部42b,42cにより支持されている。なお、支持軸42aは、液量調整部材42の一部が貯留槽44に貯留された洗浄液に浸漬するように設けられてもよい。
【0055】
貯留槽44においては、周壁部44wに液導入部44iが設けられ、底面部44bに液排出部44dが設けられている。液導入部44iには、洗浄液供給系91が接続される。液排出部44dには、排液系92が接続される。洗浄液供給系91および排液系92の各々には、配管、ポンプ、バルブまたはレギュレータ等の流体関連機器が含まれる。
【0056】
洗浄液供給系91および排液系92は、貯留槽44内に払拭部材41の一部が浸漬する程度の一定量の洗浄液が貯留されるようにかつ新たな洗浄液で貯留槽44に貯留された古い洗浄液の少なくとも一部が置換されるように制御される。それにより、貯留槽44においては、払拭部材41の一部が常に清浄な洗浄液に浸漬される。
【0057】
払拭部材41は多孔質材料で構成されるので、払拭部材41のうち洗浄液に浸漬された部分には、清浄な洗浄液が含浸される。本実施の形態では、洗浄液として純水が用いられる。なお、洗浄液としては、純水の他、染料または顔料が除かれたインク液を用いることができる。あるいは、洗浄液としては、純水またはインク液に、界面活性剤、防腐剤または消泡剤が添加されたものを用いることもできる。
【0058】
図1のクリーニングユニット移動部49は、ノズルクリーニングが開始されると、待機位置にあるクリーニングユニット40を対象となるヘッドユニット31の側方の位置まで移動させる。その後、クリーニングユニット移動部49は、払拭部材41の上端部がヘッドユニット31のノズル面に順次接触するように、クリーニングユニット40を移動させる。図4の例では、クリーニングユニット40は、太い実線の矢印a3で示すように、第1の方向D1に移動される。このとき、回転駆動部43は、図4に太い実線の矢印a4で示すように、洗浄液に浸漬された払拭部材41の部分が液量調整部材42により押圧されつつノズル面に近づくように支持軸41aを回転させる。
【0059】
払拭部材41のうち液量調整部材42により押圧される部分では、図4に太い点線の矢印で示すように、貯留槽44内で含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41の外部に排出される(絞り出される)。それにより、払拭部材41の外周面のうち、当該払拭部材41の回転方向における液量調整部材42よりも下流でかつヘッドユニット31のノズル面よりも上流の部分では、洗浄液の含浸量がノズル面の洗浄に適した量に調整される。
【0060】
払拭部材41の回転時には、その回転に応じて液量調整部材42も回転する。具体的には、液量調整部材42は、液量調整部材42の外周面のうち払拭部材41に接触する部分が、払拭部材41の外周面の進行方向に向かって移動するように回転する。それにより、液量調整部材42と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。また、液量調整部材42と払拭部材41との接触に起因する汚染物質の発生が低減される。
【0061】
クリーニングユニット移動部49は、払拭部材41がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材41をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させる。それにより、ノズルクリーニングが終了する。
【0062】
クリーニングユニット40における上記の基準長さは、複数のヘッドユニット31のノズル面の形状、洗浄液の種類および払拭部材41の材料等を考慮して定められる。また、基準長さは、払拭部材41から排出されるべき洗浄液の量(絞り量)に対応するニップ部の深さndに応じて定められる。ニップ部の深さndは、払拭部材41における液量調整部材42の食い込み量である。なお、クリーニングユニット40においては、基準長さを適宜変更することが可能となるように、例えば軸支持部42b,42cが、軸支持部41b,41cに対して第1の方向D1に移動可能に構成されてもよい。
【0063】
払拭部材41に含浸された洗浄液が液量調整部材42により払拭部材41の外部に排出される際には、ノズルクリーニング時に払拭部材41の表面に付着した汚染物質が、払拭部材41の表面から剥離され、洗浄液とともに払拭部材41の外部に排出される。また、払拭部材41の内部に進入して残留した汚染物質が、洗浄液とともに払拭部材41の外部に排出される。排出された洗浄液は貯留槽44により受け止められ、排出される。それにより、払拭部材41の外周面のうち、当該払拭部材41の回転方向における液量調整部材42よりも下流でかつヘッドユニット31のノズル面よりも上流の部分は、清浄度が高い状態で維持される。
【0064】
このように、ノズルクリーニング時には、高い清浄度を有しかつ適切な量の洗浄液が含浸された払拭部材41により各ヘッドユニット31のノズル面が洗浄される。したがって、定期的にノズルクリーニングを行うことにより、長期に渡って、記録媒体mに形成される画像の画質劣化を低減することが可能になる。
【0065】
ところで、本実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、払拭部材41または支持軸41aが、当該払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。あるいは、払拭部材41と支持軸41aとの間に、当該払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成が設けられる。以下、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるとともにヘッドユニット31のノズル面を払拭するための構成を払拭機構と総称する。以下、払拭機構の具体的な構成例について説明する。
【0066】
[3]払拭機構の具体的な構成例
(1)第1の構成例
図5図7は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、払拭部材41が払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図5に、本実施の形態の第1の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。図6に、図5の払拭部材41および液量調整部材42の中央部を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。図7に、図5の払拭部材41および液量調整部材42の平面図が示される。なお、図5および図7では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。さらに、図7では、ヘッドユニット31が備える複数のインクヘッドihが二点鎖線で示される。
【0067】
図5に示すように、第1の構成例に係る払拭部材41は、支持軸41aに取り付けられたローラである。その払拭部材41の外周面には、当該払拭部材41の外表面から外方に向かって開放された複数の凹部412が形成されている。具体的には、払拭部材41の外周面のうち軸方向における複数(本例では3個)の部分の各々に、全周に渡って周方向に一定間隔で複数の凹部412が形成されている。各凹部412は、支持軸41aの中心軸に直交する方向に延びるように形成され、円形の開口断面を有する。その断面積(開口断面積)は、払拭部材41を形成する多孔質材料が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。また、各凹部412の深さ412d(図6)は、図4のニップ部の深さnd(払拭部材41における液量調整部材42の食い込み量)よりも大きくなるように設定されている。
【0068】
なお、払拭部材41を構成する多孔質材料のローラは、例えば抽出法を用いて作製することができる。具体的には、高分子化合物等で構成される主材料中に、後工程で除去可能な添加物を混合し、その混合体を成形した後、添加物を除去することにより作製することができる。凹部412は、例えば上記のようにして作製された多孔質材料のローラに純水を含浸させ、純水が含浸されたローラを凍結させた後、ドリルを用いて凍結状態にあるローラの外表面を穿孔することにより容易に形成することができる。
【0069】
ノズルクリーニング時には、ヘッドユニット31と払拭部材41とは、平面視で支持軸41aに直交する方向に相対的に移動する。そのため、図7に示すように、払拭部材41の外周面のうち軸方向における2つの部分がヘッドユニット31において2列に並ぶ複数のインクヘッドihのノズル面を払拭する。以下の説明では、払拭部材41の外周面のうち複数のインクヘッドihのノズル面を払拭する部分をノズル払拭部分と呼ぶ。ヘッドユニット31において複数のインクヘッドihが、支持軸41aの方向に複数列で並ぶ場合、払拭部材41の外周面には、複数のノズル払拭部分が存在することになる。
【0070】
ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分は、高い清浄度で維持されることが望まれる。また、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分には、適切な量の洗浄液が含浸されていることが望まれる。そこで、図7に示すように、本例の払拭部材41においては、周方向に並ぶ複数の凹部412からなる複数の凹部群は、払拭部材41の軸方向において各ノズル払拭部分を挟み込むように配置されている。
【0071】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、図7に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41内を軸方向に流れ、押圧されたノズル払拭部分の近傍に位置する複数の凹部412内に優先的に流れ込む。また、各凹部412内に流れ込んだ洗浄液は、当該凹部412の開口が液量調整部材42の外表面から外れた位置に移動することにより、その開口から払拭部材41の外部に円滑に導かれ、排出される。
【0072】
このようにして、払拭部材41の内部から外部にかけて洗浄液の強力な流れが発生することにより、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0073】
第1の構成例に係る払拭機構においては、払拭部材41の複数の凹部412内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0074】
(2)第2の構成例
図8図10は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、払拭部材41が払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図8に、本実施の形態の第2の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。図9に、図8の払拭部材41および液量調整部材42の中央部を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。図10に、図8の払拭部材41および液量調整部材42の平面図が示される。なお、図8および図10では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。さらに、図10では、ヘッドユニット31が備える複数のインクヘッドihが二点鎖線で示される。
【0075】
図8に示すように、第2の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラである。その払拭部材41の外周面には、当該払拭部材41の外表面から外方に向かって開放された複数の溝部413が形成されている。具体的には、払拭部材41の外周面のうち軸方向における複数(本例では3個)の部分の各々に、全周に渡って周方向に延びる一定幅の溝部413が形成されている。払拭部材41の外周面に平行な溝部413の断面積(開口断面積)は、払拭部材41を形成する多孔質材料が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。また、各溝部413の深さ413d(図9)は、図4のニップ部の深さnd(払拭部材41における液量調整部材42の食い込み量)よりも大きくなるように設定されている。
【0076】
なお、溝部413は、例えば多孔質材料からなるローラに純水を含浸させ、純水が含浸されたローラを凍結させた後、凍結状態にあるローラの外周面の一部を鋭利な刃物で切削することにより容易に形成することができる。あるいは、溝部413は、複数のローラを組み合わせることにより形成されてもよい。具体的には、一の払拭部材41は、外径および厚みが小さいローラを外径および厚みが大きい2つのローラで挟み込むことにより作製されてもよい。この場合、外径および厚みが大きい2つのローラの間に、溝部413が形成される。
【0077】
上記のように、本実施の形態に係る払拭部材41の外周面においては、軸方向に並ぶ2つのノズル払拭部分が存在する。そのため、図10に示すように、本例の払拭部材41においても、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、周方向に延びる複数の溝部413は、払拭部材41の軸方向において各ノズル払拭部分を挟み込むように配置されている。
【0078】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、図10に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41内を軸方向に流れ、押圧されたノズル払拭部分の近傍に位置する溝部413内に優先的に流れ込む。また、溝部413内に流れ込んだ洗浄液は、溝部413の開口から払拭部材41の外部に円滑に導かれ、排出される。
【0079】
これにより、第2の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0080】
第2の構成例に係る払拭機構においては、払拭部材41の複数の溝部413内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0081】
(3)第3の構成例
図11図13は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、払拭部材41が払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図11に、本実施の形態の第3の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。図12に、図11の払拭部材41および液量調整部材42の中央部を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。図13に、図11の払拭部材41および液量調整部材42の平面図が示される。なお、図11および図13では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0082】
図11に示すように、第3の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラである。その払拭部材41には、一端部(一端面)から他端部(他端面)にかけて軸方向に延びる複数(例えば8個)の貫通孔414が形成されている。複数の貫通孔414は、払拭部材41を支持軸41aが延びる方向に見て、支持軸41aの中心軸を基準として等角度間隔でかつ支持軸41aの中心を基準とする円上に並ぶように形成されている。払拭部材41の両端部において、各貫通孔414の内部空間は開放されている。各貫通孔414の断面積(開口断面積)は、払拭部材41を形成する多孔質材料が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。
【0083】
なお、貫通孔414は、例えば多孔質材料からなるローラに純水を含浸させ、純水が含浸されたローラを凍結させた後、深穴加工用のドリルを用いて凍結状態にあるローラの一端部から他端部にかけて穿孔を行うことにより容易に形成することができる。
【0084】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、図12に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41内で、押圧された外表面の近傍に位置する貫通孔414内に優先的に流れ込む。また、貫通孔414内に流れ込んだ洗浄液は、図13に太い点線の矢印で示すように、当該貫通孔414内で払拭部材41の軸方向に流れることにより、払拭部材41の両端部から払拭部材41の外部に円滑に導かれ、排出される。
【0085】
これにより、第3の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0086】
第3の構成例に係る払拭機構においては、払拭部材41の複数の貫通孔414内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0087】
(4)第4の構成例
図14は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第4の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、支持軸41aが払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図14に、本実施の形態の第4の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。なお、図14では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0088】
図14に示すように、第4の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラである。ここで、本例の支持軸41aの外周面のうち払拭部材41が取り付けられる部分には、軸方向に延びる多数の溝部416が形成されている。
【0089】
図14の吹き出し内に、払拭部材41の一部が切り欠かれた状態で、支持軸41aの一端部近傍の外観斜視図が示される。図14の吹き出し内に示すように、本例の支持軸41aは、払拭部材41が取り付けられる取付部415を有する。取付部415は、支持軸41aの他の部分に比べて外径が大きく形成されている。また、取付部415の外周面には、一端部から他端部にかけて支持軸41aの軸方向に延びる複数(例えば16個)の溝部416が形成されている。これらの溝部416は、支持軸41aの外周面を切削加工することにより容易に形成される。
【0090】
このような構成により、取付部415の外周面上に払拭部材41が取り付けられた状態で、払拭部材41により閉塞された複数の溝部416の内部空間が洗浄液の排出路として機能する。払拭部材41の軸方向に直交する各溝部416の内部空間の断面積(開口断面積)は、払拭部材41を形成する多孔質材料が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。
【0091】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、払拭部材41の内周面から支持軸41aの複数の溝部416内に優先的に流れ込む。また、溝部416内に流れ込んだ洗浄液は、当該溝部416内で支持軸41aの軸方向に流れることにより、取付部415の両端部から払拭部材41および支持軸41aの外部に円滑に導かれ、排出される。
【0092】
これにより、第4の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0093】
第4の構成例に係る払拭機構においては、支持軸41aの複数の溝部416内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0094】
(5)第5の構成例
図15は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第5の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、支持軸41aが払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図15に、本実施の形態の第5の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。なお、図15では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0095】
図15に示すように、第5の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラである。ここで、本例の支持軸41aの外周面には、支持軸41aの内部空間と外部空間とを連通する多数の貫通孔417が形成されている。
【0096】
図15の吹き出し内に、払拭部材41の一部が切り欠かれた状態で、支持軸41aの一端部近傍の外観斜視図が示される。図15の吹き出し内に示すように、本例の支持軸41aの外周面においては、支持軸41aの軸方向に一定の間隔をおいて、周方向に並ぶように複数の貫通孔417が形成されている。これらの貫通孔417は、ドリルを用いて支持軸41aの外周面を穿孔することにより容易に形成される。
【0097】
このような構成により、支持軸41aに払拭部材41が取り付けられた状態で、払拭部材41により覆われた複数の貫通孔417の内部空間と支持軸41aの内部空間とが、洗浄液の排出路として機能する。各貫通孔417の開口面積および払拭部材41の軸方向に直交する支持軸41aの内部空間の断面積(開口断面積)は、払拭部材41を形成する多孔質材料が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。
【0098】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、払拭部材41の内周面から支持軸41aの複数の貫通孔417を通して支持軸41a内に優先的に流れ込む。また、支持軸41a内に流れ込んだ洗浄液は、当該支持軸41a内で支持軸41aの軸方向に流れることにより、支持軸41aの両端部から払拭部材41および支持軸41aの外部に円滑に導かれ、排出される。
【0099】
これにより、第5の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0100】
第5の構成例に係る払拭機構においては、支持軸41aの複数の貫通孔417および支持軸41a内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0101】
(6)第6の構成例
図16は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第6の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aに加えて、払拭部材41と支持軸41aとの間に設けられる中間連結部材418を含む。中間連結部材418が払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図16に、本実施の形態の第6の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。なお、図16では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0102】
図16に示すように、第6の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラである。ここで、本例の支持軸41aと払拭部材41との間には、支持軸41aの外周面と払拭部材41の内周面とを連結するように中間連結部材418が設けられている。
【0103】
中間連結部材418は、払拭部材41と同様に、多孔質材料で構成される。ここで、中間連結部材418を構成する多孔質材料としては、払拭部材41を構成する多孔質材料よりも空隙率が大きい多孔質材料が用いられる。それにより、中間連結部材418が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)は、払拭部材41が有する複数の細孔の断面積(開口断面積)よりも大きい。
【0104】
第6の構成例においては、払拭部材41に用いる多孔質材料として例えばポリエチレン等の樹脂の発泡材を用いるとともに、中間連結部材418に用いる多孔質材料として例えば金属製のスポンジ等を用いることができる。
【0105】
図16の吹き出し内に、払拭部材41の一部が切り欠かれた状態で、支持軸41aの一端部近傍の外観斜視図が示される。図16の吹き出し内に示すように、本例の支持軸41aの外周面上には、支持軸41aを取り囲むように中間連結部材418が取り付けられている。また、中間連結部材418をさらに取り囲むように、払拭部材41が取り付けられている。このような構成により、第6の構成例では、中間連結部材418が有する複数の細孔の内部空間が洗浄液の排出路として機能する。
【0106】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、ノズル払拭部分を含む外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部は、払拭部材41の内周面から中間連結部材418の外周面を通して中間連結部材418内(中間連結部材418の細孔内)に優先的に流れ込む。また、中間連結部材418内に流れ込んだ洗浄液は、当該中間連結部材418の細孔内を支持軸41aの軸方向に流れることにより、中間連結部材418の両端部から中間連結部材418の外部に円滑に導かれ、排出される。
【0107】
これにより、第6の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0108】
第6の構成例に係る払拭機構においては、中間連結部材418を構成する多孔質材料の複数の細孔が本発明の液排出路に相当する。
【0109】
(7)第7の構成例
図17および図18は、本発明の一実施の形態に係る払拭機構の第7の構成例を説明するための図である。本例の払拭機構は、払拭部材41および支持軸41aを含み、払拭部材41が払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。図17に、本実施の形態の第7の構成例に係る払拭部材41および液量調整部材42の外観斜視図が示される。図18に、図17の払拭部材41および液量調整部材42の平面図が示される。なお、図17および図18では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0110】
図17に示すように、第7の構成例に係る支持軸41aは、払拭部材41が取り付けられる取付部419を有する。取付部419は、支持軸41aにおける他の部分に比べて外径が大きく形成されている。
【0111】
取付部419の外周面には、5mm~10mm程度の一定幅を有しかつ一定の厚みを有する帯状の払拭部材41がらせん状に貼り付けられている。払拭部材41のらせんピッチは略一定である。取付部419の外周面上で、軸方向において隣り合う払拭部材41の複数の部分の間には隙間gaが形成されている。
【0112】
第7の構成例に係る払拭部材41は、第1の構成例に係る払拭部材41と同様に、支持軸41aに取り付けられたローラとして機能する。それにより、払拭部材41の外周面の一部は、ノズル払拭部分として機能する。なお、本例の払拭部材41も、上記の各種の例と同様に、柔軟性を有するスポンジ状の多孔質材料からなる。
【0113】
ノズルクリーニング時に支持軸41aが回転されることにより、払拭部材41の外周面の一部が液量調整部材42により押圧される。このとき、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部は、支持軸41aの軸方向に流れ、払拭部材41の複数の部分間に形成された隙間ga内の空間に優先的に流れ込む。また、隙間ga内に流れ込んだ洗浄液は、当該隙間ga内で支持軸41aの周方向に流れることにより、払拭部材41の外部に円滑に導かれ、排出される。
【0114】
これにより、第7の構成例に係る払拭機構においても、第1の構成例に係る払拭機構を用いる場合と同様に、払拭部材41の内部に存在する汚染物質および払拭部材41の表面に付着する汚染物質が払拭部材41から円滑に排出される。それにより、払拭部材41のノズル払拭部分が高い清浄度で維持される。また、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが抑制され、ノズル面に接触する直前のノズル払拭部分における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0115】
なお、第7の構成例に係る払拭部材41は、上記の例に限らず、以下のように作製されてもよい。例えば、取付部419の外周面の全体に数mm程度の一定の厚みを有するシート状の払拭部材41を貼り付ける。その後、払拭部材41の外周面を一定幅でかつ一定の深さでらせん状に切削する。
【0116】
第7の構成例に係る払拭機構においては、取付部419の外周面上でらせん状に取り付けられる払拭部材41の軸方向における複数の部分間の隙間gaが本発明の液排出路に相当する。
【0117】
[4]実施の形態の効果
本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1においては、インク供給装置3に設けられる複数のヘッドユニット31のノズル面が、複数のクリーニングユニット40によりそれぞれ洗浄される(ノズルクリーニング)。
【0118】
クリーニングユニット40においては、払拭部材41の一部が貯留槽44内の洗浄液に浸漬されることにより、払拭部材41に洗浄液が含浸される。ノズルクリーニング時に、支持軸41aが回転されることにより、払拭部材41における洗浄液が含浸された部分が液量調整部材42により押圧される。
【0119】
ここで、上記の第1~第7の構成例に係る払拭機構は、液排出路として、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を払拭部材41の外部に円滑に排出させる構成を有する。また、液排出路に相当する構成の断面積(開口断面積)は、払拭部材41を構成する多孔質材料に形成された複数の細孔の各々の断面積(開口断面積)よりも大きい。そのため、払拭部材41が押圧されることにより払拭部材41から排出されるべき洗浄液は、優先的に液排出路を通して払拭機構の外部に円滑に導かれ、排出される。それにより、払拭部材41の内部から外部にかけて洗浄液の強力な流れが発生する。
【0120】
上記の洗浄液の流れは、払拭部材41の内部に存在する汚染物質を液排出路から円滑に排出させるとともに、払拭部材41の表面に付着する汚染物質をその表面から剥離する。また、上記の洗浄液の流れは、払拭部材41から排出または剥離された汚染物質が払拭部材に再付着することを抑制するとともに、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することを抑制する。したがって、払拭部材41における洗浄液の含浸量が適切に調整される。
【0121】
これらの結果、高い清浄度を有する払拭部材41によりノズル面を適切に払拭することが可能になる。
【0122】
なお、上記のようにして、払拭部材41における汚染物質の残留および払拭部材41における洗浄液の過剰に吸収が抑制されることにより、経時的な払拭部材41の弾性低下を抑制することも可能になる。それにより、ノズルクリーニング時にノズル面に対する払拭部材41の押圧力を適正に保つことも可能になる。
【0123】
[5]ノズルクリーニング試験
本発明者らは、上記の第1~第5の構成例に係る払拭部材41の各々について、ノズルクリーニングが所定回数繰り返された後、どの程度清浄度が保たれるのかを確認するために、以下に説明するノズルクリーニング試験を行った。
【0124】
まず、本発明者らは、図4の一のヘッドユニット31およびクリーニングユニット40を備える実験装置を作製した。その実験装置においては、一方向に延びるヘッドユニット31のノズル面の全体が払拭部材41で払拭されるように、ヘッドユニット31と払拭部材41とが一方向に相対的に移動可能に構成される。
【0125】
次に、本発明者らは、実験装置用の払拭機構として、第1、第2、第3、第4および第5の構成例に係る払拭機構を第1、第2、第3、第4および第5の実施例に係る払拭機構として作製した。また、本発明者らは、実験装置用の払拭機構として、後述する第1、第2および第3の比較例に係る払拭機構をさらに作製した。
【0126】
実験装置においては、各実施例および比較例に係る払拭部材41は、当該払拭部材41のうち下端部から直径の1/4の高さまでの範囲に位置する部分が貯留槽44内の洗浄液に浸漬されるように固定した。また、実験装置においては、液量調整部材42として、8mmの直径を有するステンレス製の丸棒を用いた。液量調整部材42は、ニップ部の深さndが4mmとなるように固定した。さらに、実験装置に用いられるヘッドユニット31においては、複数のインクヘッドihが2列に並ぶ図1の吹き出し内の構成とは異なり、15mmの幅を有する複数のインクヘッドihを1列に並ぶように配置した。そのため、払拭部材41の外周面においては、軸方向における略中央部が一のノズル払拭部分として機能する。第1~第5の実施例および第1~第3の比較例に係る払拭機構の各部の寸法は、具体的には以下のように設定した。
【0127】
第1の実施例に係る払拭機構(図5図7の例に対応)については、払拭部材41の外径を30mmに設定した。また、払拭部材41の一のノズル払拭部分を挟み込むように、周方向に2列で並ぶ複数の凹部412を形成した。各凹部412の各々の内径は4mmに設定した。凹部412の深さ412dはニップ部の深さndよりも大きい寸法として5mmに設定した。
【0128】
第2の実施例に係る払拭機構(図8図10の例に対応)については、払拭部材41の外径を30mmに設定した。また、払拭部材41の一のノズル払拭部分を挟み込むように、周方向に2列で延びる2つの溝部413を形成した。また、溝部413の深さ413dはニップ部の深さndよりも大きい寸法として5mmに設定した。
【0129】
第3の実施例に係る払拭機構(図11図13の例に対応)については、払拭部材41の外径を30mmに設定した。また、払拭部材41には、払拭部材41の軸方向に延びる8個の貫通孔414を支持軸41aを取り囲むように形成した。各貫通孔414の内径は2mmに設定した。
【0130】
第4の実施例に係る払拭機構(図14の例に対応)については、払拭部材41の外径を30mmに設定した。また、本例では、支持軸41aのうち払拭部材41が取り付けられる取付部415の外周面に、軸方向に延びる16個の溝部416を周方向に等間隔で並ぶように形成した。各溝部416の周方向の幅は1.4mmに設定した。また、溝部416の深さは0.7mmに設定した。
【0131】
第5の実施例に係る払拭機構(図15の例に対応)については、払拭部材41の外径を30mmに設定した。また、本例では、支持軸41aの外周面全体に支持軸41aの内部と外部とを連通する複数の貫通孔417を多数形成した。支持軸41aの外周面においては、複数の貫通孔417が分散配置される。
【0132】
第1の比較例に係る払拭機構(図5図7の例に対応)の各部の寸法は、複数の凹部412の深さ412dをニップ部の深さndよりも小さい寸法(2mm)に設定した点を除いて、第1の実施例に係る払拭機構と同様に設定した。
【0133】
第2の比較例に係る払拭機構(図8図10の例に対応)の各部の寸法は、2つの溝部413の深さ413dをニップ部の深さndよりも小さい寸法(2mm)に設定した点を除いて、第2の実施例に係る払拭機構と同様に設定した。
【0134】
第3の比較例に係る払拭機構は、払拭部材41の外周面に複数の凹部412が形成されない点を除いて、第1の実施例に係る払拭機構と同様の構成を有するように作製した。そのため、第3の比較例に係る払拭機構においては、払拭部材41の外表面は全体に渡って滑らかな円筒形状を有する。
【0135】
本発明者らは、上記の複数の払拭機構の作製後、複数の払拭機構を実験装置に順次取り付け、払拭機構ごとに、所定量のインクが吐出された後のヘッドユニット31の洗浄(ノズルクリーニング)を所定回数繰り返した後の払拭部材41の清浄度を測定した。
【0136】
具体的には、各払拭機構における払拭部材41の清浄度は、次のように測定した。まず、本発明者らは、ノズルクリーニング試験用の複数の払拭機構の各々について、当該払拭機構を用いたノズルクリーニングを複数回繰り返した。このとき、ヘッドユニット31のノズル面からは、ノズルクリーニングが行われるごとに、水系顔料マゼンタインクを所定量吐出させた。各払拭機構についての複数回のノズルクリーニングの終了後、本発明者らは、当該払拭機構が備える払拭部材41の上端近傍部分を切り出し、切り出されたサンプルに波長450nmの光を照射した。また、当該サンプルから反射される光をフォトダイオードで受光することにより、フォトダイオードから出力される受光信号の強度(以下、反射光量出力と呼ぶ。)を清浄度として測定した。
【0137】
図19は、ノズルクリーニング試験の結果を示す一覧表である。図19に示すように、未使用の払拭部材41について測定される反射光量出力が5.0[V]である場合に、第1、第2、第3、第4および第5の実施例に係る払拭部材41について測定された反射光量出力は、2.5[V]、2.8[V]、2.0[V]、2.0[V]および2.5[V]であった。一方、第1、第2および第3の比較例に係る払拭部材41について測定された反射光量出力は、1.3[V]、1.4[V]および1.0[V]であった。
【0138】
清浄度は、反射光量出力の値が未使用の払拭部材41について測定された5.0[V]に近いほど高い。したがって、第1~第5の実施例に係る払拭部材41は、複数回のノズルクリーニングが繰り返される場合でも、清浄度が比較的高い状態で維持されることがわかる。このことは、第1~第5の実施例に係る払拭部材41に本発明の液排出路に相当する構成が設けられることにより、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時に、払拭部材41の内部から外部に洗浄液が円滑に排出されたことに起因すると考えられる。
【0139】
これに対して、第3の比較例に係る払拭部材41の清浄度は最も低い。このことは、第3の比較例に係る払拭機構に本発明の液排出路に相当する構成が設けられていないことにより、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時に、払拭部材41の内部から外部に洗浄液が円滑に排出されなかったことに起因すると考えられる。
【0140】
第1および第2の比較例に係る払拭機構においては、払拭部材41に形成されている凹部412および溝部413の深さが、設定されているニップ部の深さndよりも小さい。そのため、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時には、凹部412および溝部413の内部空間の大部分が液量調整部材42により押しつぶされる。この場合、払拭部材41において絞り出されるべき洗浄液が、凹部412および溝部413の内部に流れ込むことができず、払拭部材41の内部から外部にかけて強力な洗浄液の流れが形成されない。したがって、第1および第2の比較例に係る払拭部材41の清浄度が比較的低いことは、凹部412および溝部413の内部空間が本発明の液排出路として機能しないことに起因すると考えられる。
【0141】
[6]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、払拭部材41は、支持軸41aに取り付けられることにより、ノズル面を洗浄するローラとして構成されるが、本発明はこれに限定されない。クリーニングユニット40においては、払拭部材41は、ローラ以外の構成を有してもよい。
【0142】
図20は、他の実施の形態に係るクリーニングユニット40の断面図である。図20の断面図は、図4の断面図に対応する。以下、図20のクリーニングユニット40について、図3および図4のクリーニングユニット40と異なる点を説明する。
【0143】
図20に示すように、本例のクリーニングユニット40においては、直方体形状を有する回転台座48が、支持軸41aに固定されている。回転台座48は、支持軸41aの方向に一定距離延びるように設けられている。回転台座48が有する複数の面のうち支持軸41aから最も離間した一面上に、直方体形状を有する払拭部材47が取り付けられている。払拭部材47は、上記の払拭部材41と同様に、柔軟性を有するスポンジ状の多孔質材料からなる。
【0144】
このクリーニングユニット40においては、支持軸41aが回転することにより、回転台座48が支持軸41aとともに回転する。それにより、払拭部材47が、第1の方向D1に平行な鉛直面内で、支持軸41aを中心とする円を描くように移動する。そのため、図20に点線で示すように、払拭部材47が最も下方に位置する場合には、払拭部材47が貯留槽44内の洗浄液に浸漬される。それにより、払拭部材47の全体に渡って洗浄液が含浸される。一方、払拭部材47が液量調整部材42と同じ高さに位置する場合には、払拭部材47の一面が液量調整部材42により押圧される。それにより、払拭部材47における洗浄液の含浸量が調整される。他方、払拭部材47が最も上方に位置する場合には、払拭部材47の上端部がヘッドユニット31のノズル面に接触する。それにより、ノズル面の洗浄が可能になる。
【0145】
図20のクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニングの開始時に、回転駆動部43(図3)が、支持軸41aを回転させることにより払拭部材47を最も下方の位置まで移動させる。次に、回転駆動部43は、図20に太い実線の矢印a5で示すように、洗浄液に浸漬された払拭部材47が液量調整部材42により押圧されつつ最も上方の位置まで移動するように支持軸41aを回転させる。
【0146】
その後、クリーニングユニット移動部49(図1)は、上記実施の形態と同様に、待機位置にあるクリーニングユニット40を対象となるヘッドユニット31の側方の位置まで移動させる。また、クリーニングユニット移動部49は、図20に太い実線の矢印a6で示すように、払拭部材47がヘッドユニット31のノズル面に順次接触するように、クリーニングユニット40を移動させる。
【0147】
クリーニングユニット移動部49は、払拭部材47がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材47をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させる。それにより、ノズルクリーニングが終了する。
【0148】
なお、クリーニングユニット移動部49は、ヘッドユニット31に対してクリーニングユニット40を一方向に移動させる場合に限らず、ヘッドユニット31に対してクリーニングユニット40を逆方向に移動させる場合にも払拭部材47をノズル面に接触させてもよい。
【0149】
ここで、他の実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、払拭部材47および回転台座48が払拭機構として機能する。他の実施の形態に係る払拭機構として適用可能な第1~第4の構成例について説明する。
【0150】
図21および図22は、他の実施の形態に係る払拭機構の第1の構成例を説明するための図である。図21に、他の実施の形態の第1の構成例に係る払拭部材47および回転台座48の外観斜視図が示される。図22に、ノズルクリーニング時の図21の払拭部材47の平面図が示される。なお、図21および図22では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。さらに、図22では、ヘッドユニット31が備える複数のインクヘッドihが二点鎖線で示される。
【0151】
図22に示すように、本例の払拭部材47には、上記実施の形態に係る払拭部材41と同様に、ヘッドユニット31において2列に並ぶ複数のインクヘッドihのノズル面を払拭するための2つのノズル払拭部分が存在する。
【0152】
図21および図22に示すように、本例の払拭部材47においては、支持軸41aが延びる方向において各ノズル払拭部分を挟み込むように、合計3つの溝部471が形成されている。このような構成により、液量調整部材42による払拭部材47の押圧時には、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部がその近傍に位置する溝部471内に優先的に流れ込み、払拭部材47の外部に円滑に排出される。図21および図22の構成例では、払拭部材47の複数の溝部471内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0153】
図23および図24は、他の実施の形態に係る払拭機構の第2の構成例を説明するための図である。図23に、他の実施の形態の第2の構成例に係る払拭部材47および回転台座48の外観斜視図が示される。図24に、ノズルクリーニング時の図23の払拭部材47および回転台座48の平面図が示される。なお、図23および図24では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0154】
図23および図24に示すように、本例の払拭部材47は、回転台座48が有する複数の面のうち支持軸41aから最も離間した一面の略中央部に取り付けられている。払拭部材47には、支持軸41aの軸方向に延びる複数(例えば6個)の貫通孔472が形成されている。複数の貫通孔472は、払拭部材47が取り付けられる回転台座48の一面に平行でかつ支持軸41aに対して直交する方向に並んでいる。このような構成により、液量調整部材42による払拭部材47の押圧時には、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部が複数の貫通孔472内に優先的に流れ込み、払拭部材47の外部に円滑に排出される。図23および図24の構成例では、払拭部材47の複数の貫通孔472内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0155】
図25および図26は、他の実施の形態に係る払拭機構の第3の構成例を説明するための図である。図25に、他の実施の形態の第3の構成例に係る払拭部材47および回転台座48の外観斜視図が示される。図26に、ノズルクリーニング時の図25の払拭部材47および回転台座48の平面図が示される。なお、図25および図26では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0156】
図25および図26に示すように、本例の払拭部材47は、回転台座48が有する複数の面のうち支持軸41aから最も離間した一面の略中央部に取り付けられている。ここで、回転台座48のうち払拭部材47が取り付けられる一面には、払拭部材41の軸方向に延びる複数(例えば8個)の溝部481が形成されている。複数の溝部481は、さらに支持軸41aに対して直交する方向に並んでいる。このような構成により、液量調整部材42による払拭部材47の押圧時には、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部が回転台座48の複数の溝部481内に優先的に流れ込み、払拭部材47の外部に円滑に排出される。図25および図26の構成例では、回転台座48の複数の溝部481内の空間が本発明の液排出路に相当する。
【0157】
図27および図28は、他の実施の形態に係る払拭機構の第4の構成例を説明するための図である。図27に、他の実施の形態の第4の構成例に係る払拭部材47および回転台座48の外観斜視図が示される。図28に、ノズルクリーニング時の図27の払拭部材47および回転台座48の平面図が示される。なお、図27および図28では、ノズルクリーニング時のヘッドユニット31の一部が一点鎖線で示される。
【0158】
図27および図28に示すように、本例の払拭部材47は、回転台座48が有する複数の面のうち支持軸41aから最も離間した一面489の略中央部に取り付けられている。ここで、回転台座48は、内部空間を形成する中空構造を有する。
【0159】
回転台座48の一面489のうち払拭部材47が取り付けられる部分には、複数の貫通孔482が略一定間隔でマトリクス状に並ぶように形成されている。本例の各貫通孔482は円形状を有するが、各貫通孔482は多角形状を有してもよいし、楕円形状を有してもよい。また、回転台座48のうち一面489に対向する他面には、図示しない液排出孔が形成されている。回転台座48においては、複数の貫通孔482および液排出孔は、回転台座48内部の空間と回転台座48の外部の空間とを連通する。このような構成により、液量調整部材42による払拭部材47の押圧時には、ノズル払拭部分に含浸された洗浄液の一部が回転台座48の複数の貫通孔482内に優先的に流れ込み、回転台座48の内部空間に導かれる。また、回転台座48の内部空間に導かれた洗浄液は、図示しない液排出孔を通して回転台座48の外部に排出される。図27および図28の構成例では、回転台座48の複数の貫通孔482、回転台座48の内部空間および回転台座48の液排出孔が本発明の液排出路に相当する。
【0160】
(2)上記実施の形態に係るクリーニング装置4においては、クリーニングユニット移動部49は、クリーニングユニット40を一方向(第1の方向D1)に移動させることにより払拭部材41がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材41をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させるが、本発明はこれに限定されない。
【0161】
クリーニングユニット移動部49は、クリーニングユニット40を一方向に移動させる場合に限らず、クリーニングユニット40を待機位置まで移動させる場合にも、払拭部材41をノズル面に接触させてもよい。
【0162】
(3)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、支持軸42aは軸支持部42b,42cによりそれぞれ回転可能に支持されているが、本発明はこれに限定されない。支持軸42aは、軸支持部42b,42cにより回転不可能に支持されていてもよい。
【0163】
(4)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、液量調整部材42は支持軸42aの外周面を取り囲むように円筒形状を有するが、本発明はこれに限定されない。液量調整部材42は、例えば平坦な板形状を有してもよいし、平坦な金網形状を有してもよいし、平坦な櫛形状を有してもよい。
【0164】
(5)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、液量調整部材42は払拭部材41の外周面のうち上下方向における中央部分を押圧するが、本発明はこれに限定されない。液量調整部材42は、払拭部材41の外周面のうち上端部を押圧するように設けられてもよい。
【0165】
(6)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時に、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、主として払拭部材41または払拭部材41の内側に形成された隙間または細孔等の液排出路を通して排出される。ここで、液量調整部材42には、払拭部材41を構成する多孔質材料の細孔よりも大きい開口断面を有しかつ払拭部材41に含浸された洗浄液を払拭部材41の外部に導く流路が形成されてもよい。
【0166】
この場合、ノズルクリーニング時には、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41または払拭部材41の内側に形成された液排出路とともに、液量調整部材42内に形成された流路を通して払拭部材41から排出される。それにより、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時に、払拭部材41に含浸された洗浄液がより円滑に払拭部材41の外部に排出される。したがって、払拭部材41がより清浄に保たれる。
【0167】
(7)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時に、払拭部材41が回転し、払拭部材41における洗浄液の含浸量が調整されるが、本発明はこれに限定されない。クリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時以外の時点(例えば待機時等)で、払拭部材41の回転、貯留槽44への洗浄液の供給および貯留槽44からの洗浄液の排出が行われてもよい。これにより、払拭部材41の清浄度をより高い状態で維持することが可能になる。また、払拭部材41の乾燥を防止することができるので、払拭部材41が乾燥することによる汚染物質の発生が防止される。
【0168】
(8)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、図3および図4に記載された構成に加えて、払拭部材41のうち洗浄液に浸漬された部分を局部的に押圧する部材が設けられてもよい。例えば、図4に示される断面図において、払拭部材41の下端部のみを支持軸41aに向かって押圧する新たな押圧部材が貯留槽44の底部またはその近傍に設けられてもよい。この場合、貯留槽44に貯留された洗浄液中で、払拭部材41の内部と外部との間に洗浄液の流れが発生する。それにより、洗浄液に浸漬された状態で、払拭部材41の内部または表面に存在する汚染物質が除去されるので、払拭部材41の清浄度をさらに向上させることができる。
【0169】
[7]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、インクヘッドihがインクジェットヘッドの例であり、払拭部材41を構成する多孔質材料が第1の多孔質材料の例であり、貯留槽44、洗浄液供給系91および排液系92が液充填部の例であり、液量調整部材42、支持軸42aおよび軸支持部42b,42cが液調整部の例である。
【0170】
また、支持軸41aが軸部材および支持部材の例であり、払拭部材41に形成された溝部413が溝の例であり、払拭部材41に形成された貫通孔414が孔の例であり、支持軸41aに形成された複数の溝部416が軸部材の外周面に形成された少なくとも1つの溝の例である。
【0171】
また、支持軸41aに形成された複数の貫通孔417が軸部材の内部空間と軸部材の外部とを連通する少なくとも1つの貫通孔の例であり、中間連結部材418を構成する多孔質材料が第2の多孔質材料の例である。
【0172】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0173】
1…インクジェット画像形成装置,2…記録媒体搬送装置,3…インク供給装置,4…クリーニング装置,21…駆動ローラ,22…従動ローラ,23…張力制御ローラ,24…搬送ベルト,29…搬送駆動部,30…ヘッド部,31…ヘッドユニット,32…ヘッドキャリッジ,39…ヘッド移動部,40…クリーニングユニット,41…払拭部材,41a,42a…支持軸,41b,41c,42b,42c…軸支持部,42…液量調整部材,43…回転駆動部,44…貯留槽,44b…底面部,44d…液排出部,44i…液導入部,44w…周壁部,47…払拭部材,48…回転台座,49…クリーニングユニット移動部,91…洗浄液供給系,92…排液系,412…凹部,412d,413d…深さ,413…溝部,414…貫通孔,415…取付部,416…溝部,417…貫通孔,418…中間連結部材,419…取付部,471…溝部,472…貫通孔,481…溝部,482…貫通孔,489…一面,ga…隙間,ih…インクヘッド,m…記録媒体
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