(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/14 20060101AFI20240528BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240528BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240528BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20240528BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03G15/14 101Z
G03G15/20 510
G03G21/16 195
B65H5/38
G03G15/00 455
(21)【出願番号】P 2020126100
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】小林 高志
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊之
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277100(JP,A)
【文献】特開2002-347980(JP,A)
【文献】特開昭57-037361(JP,A)
【文献】特開平08-123226(JP,A)
【文献】実開昭61-101548(JP,U)
【文献】米国特許第06327444(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/14
G03G 15/20
G03G 21/16
B65H 5/38
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に対向するように配置された転写部と、
前記像担持体と前記転写部との間を通過する転写ベルトであって、前記像担持体に対向する平面である搬送面を有し、当該搬送面で媒体を搬送する転写ベルトと、
前記転写ベルトが張架された複数のローラと、
前記複数のローラのうち媒体搬送方向の下流側に設けられた下流側ローラに対向するように配置され、前記転写ベルトから前記媒体を分離する
、樹脂で形成された分離フィルムと
、
前記分離フィルムを支持する支持体と
を有し、
前記分離
フィルムは、前記媒体を案内する案内面を有し、
前記搬送面を延長した仮想平面を搬送基準面とすると、前記案内面は、前記搬送基準面までの距離が前記媒体搬送方向に進むにつれて短くなるような角度で配置され
、
前記支持体は、前記搬送基準面に対向し前記分離フィルムを支持する支持部と、前記下流側ローラに沿って延在する対向部とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記分離
フィルムの前記媒体搬送方向における下流側に配置され、定着ニップで現像剤像を前記媒体に定着する定着ユニットをさらに備え、
前記定着ユニットは、前記媒体を前記定着ニップに誘導する誘導面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送基準面に対する前記案内面のなす角度Aと、前記搬送基準面に対する前記誘導面のなす角度Bとが、A<Bを満たす
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記誘導面の一部は、前記搬送基準面上に位置する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記誘導面の一部は、前記案内面を延長した仮想平面上に位置する
ことを特徴とする請求項2から4までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着ニップと前記案内面とは、前記搬送基準面を挟んで互いに反対の側に位置する
ことを特徴とする請求項2から
5までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記分離フィルムは、前記支持体から前記転写ベルト側に突出する第1突出部を有し、
ことを特徴とする請求項
1から6までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記分離フィルムは、前記支持体から前記転写ベルトと反対側に突出する第2突出部を有する
ことを特徴とする請求項
1から7までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤像を媒体に転写し、定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、現像剤像を媒体に転写する転写ユニットと、現像剤像を媒体に定着する定着ユニットとを有する。転写ユニットと定着ユニットとの間には、媒体を定着ユニットに案内する案内部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、媒体が定着ユニットに到達する際に、媒体の幅方向両端で撓み量が異なる、いわゆるねじれが生じる場合がある。この状態で定着を行うと、擦れ等の印刷不良が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、媒体のねじれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、現像剤像を担持する像担持体と、像担持体に対向するように配置された転写部と、像担持体と転写部との間を通過する転写ベルトであって、像担持体に対向する平面である搬送面を有し、当該搬送面で媒体を搬送する媒体を搬送する搬送面を有する転写ベルトと、転写ベルトが張架された複数のローラと、複数のローラのうち媒体搬送方向の下流側に設けられた下流側ローラに対向するように配置され、転写ベルトから媒体を分離する、樹脂で形成された分離フィルムと、分離フィルムを支持する支持体とを有する。分離フィルムは、媒体を案内する案内面を有する。搬送面を延長した仮想平面を搬送基準面とすると、案内面は、搬送基準面までの距離が媒体搬送方向に進むにつれて短くなるような角度で配置されている。支持体は、搬送基準面に対向し分離フィルムを支持する支持部と、下流側ローラに沿って延在する対向部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、媒体が案内面に案内されることで、媒体の幅方向両端の撓み量の差が減少し、媒体のねじれが抑制される。これにより、擦れ等の印刷不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の画像形成装置の基本構成を示す図である。
【
図2】実施の形態の定着ユニットを示す断面図である。
【
図3】実施の形態の定着ユニットを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態の定着ユニットの内部構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態の転写ユニットから定着ユニットまでの媒体の搬送案内のための構成を示す図である。
【
図6】実施の形態の分離フィルムおよび支持体を示す斜視図である。
【
図7】実施の形態における媒体の搬送状態を示す模式図である。
【
図8】実施の形態における媒体の搬送状態の他の例を示す模式図である。
【
図9】比較例における媒体の搬送状態を示す模式図である。
【
図10】比較例における媒体のねじれを示す模式図(A)、および媒体に生じる擦れを示す模式図(B)である。
【
図11】実施の形態と比較例とで擦れ発生率を比較して示す表である。
【
図12】実施の形態と比較例とで擦れ発生率を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<画像形成装置>
まず、本発明の実施の形態の画像形成装置について説明する。
図1は、本実施の形態の画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法によって画像を形成するものであり、例えばカラープリンタである。
【0010】
画像形成装置1は、媒体Pを供給する媒体供給部60と、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のトナー像(現像剤像)を形成する画像形成ユニットとしてのプロセスユニット10K,10Y,10M,10Cと、媒体Pにトナー像を転写する転写ユニット50と、媒体Pにトナー像を定着する定着ユニット20と、媒体Pを排出する媒体排出部80とを有する。
【0011】
これらの構成要素は、筐体1Aに収容されている。筐体1Aの上部には、開閉可能なトップカバー1Bが設けられている。媒体Pとしては、印刷用紙のほか、OHPシート、封筒、複写紙、特殊紙等を使用することができる。
【0012】
媒体供給部60は、媒体Pを積載状態で収容する給紙トレイ61と、給紙トレイ61に収容された一番上の媒体Pに当接するように配置されたピックアップローラ62と、ピックアップローラ62に隣接して配置されたフィードローラ63と、フィードローラ63に対向するように配置されたリタードローラ64とを有する。
【0013】
ピックアップローラ62は、給紙トレイ61の媒体Pに当接して回転し、給紙トレイ61から媒体Pを引き出す。フィードローラ63は、ピックアップローラ62によって引き出された媒体Pを搬送路に送り出す。リタードローラ64は、媒体Pの重送を防止するため、フィードローラ63による送り出し方向とは逆方向に回転し、媒体Pに搬送抵抗を付与する。
【0014】
媒体供給部60は、また、媒体Pの搬送路に沿って、2対のローラ対である搬送ローラ65,66を有する。搬送ローラ65は、レジストローラ65aとピンチローラ65bとで構成され、媒体Pの先端が両ローラのニップ部に当接してから所定のタイミングで回転を開始することで、媒体Pのスキューを矯正して搬送する。搬送ローラ66は、一対のローラで構成され、搬送ローラ65からの媒体Pを転写ユニット50に搬送する。
【0015】
プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cは、媒体Pの搬送路に沿って上流側から下流側(ここでは右側から左側)に配列されている。
【0016】
プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cの上方には、プリントヘッドとしての露光ヘッド18K,18Y,18M,18Cが、それぞれ感光体ドラム11に対向するように配置されている。露光ヘッド18K,18Y,18M,18Cは、トップカバー1Bに懸架されて支持されている。
【0017】
プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cは共通の構成を有するため、以下では「プロセスユニット10」として説明する。プロセスユニット10は、像担持体としての円筒状の感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ12と、感光体ドラム11の表面の静電潜像にトナー(現像剤)を付着させてトナー像を形成する現像剤担持体としての現像ローラ13とを備える。
【0018】
プロセスユニット10は、また、現像ローラ13にトナーを供給する供給部材としての供給ローラ14と、現像ローラ13の表面に形成されるトナー層の厚さを規制する規制部材としての現像ブレード15と、感光体ドラム11の表面に残った転写残トナーを除去するクリーニングローラ16と、供給ローラ14にトナーを補給する現像剤収容体としてのトナーカートリッジ17とを有する。
【0019】
転写ユニット50は、媒体Pを吸着して走行する転写ベルト51と、転写ベルト51が超過された駆動ローラ52およびテンションローラ53とを有する。駆動ローラ(下流側ローラ)52は、媒体Pの搬送方向の下流側に配置され、テンションローラ53は、媒体Pの搬送方向の上流側に配置されている。駆動ローラ52は、ベルト駆動ローラの駆動力により、図中反時計回りに回転する。
【0020】
転写ユニット50は、また、各プロセスユニット10の感光体ドラム11に転写ベルト51を介して対向配置された転写部材としての転写ローラ54とを有する。転写ローラ54には、転写電圧が付与され、感光体ドラム11に形成された各色のトナー像を転写ベルト51上の媒体Pに転写する。
【0021】
定着ユニット20は、定着ベルト21と、ヒータ22と、加圧ローラ28とを有する。定着ベルト21の外周面と加圧ローラ28との間に、ニップ部が形成される。定着ユニット20は、媒体Pがニップ部を通過する際、トナー像に熱および圧力を加えて媒体Pに定着させる。定着ユニット20の構成については、後述する。
【0022】
媒体排出部80は、定着ユニット20を通過した媒体Pを搬送して排出口から排出する2組のローラ対である排出ローラ81,82を有する。画像形成装置1の上面には、排出ローラ81,82によって排出された媒体Pを載置するスタッカ部83が設けられている。
【0023】
図1において、画像形成装置1は、XY面に置かれているものとする。画像形成装置1の感光体ドラム11および各ローラの軸方向は、X方向である。X方向は、媒体Pの幅方向でもある。XY面においてX方向に直交する方向を、Y方向(ここでは前後方向)とする。また、XY面に直交する方向を、Z方向とする。
図1に示した例では、XY面は水平面であり、Z方向は鉛直方向である。
【0024】
Y方向に関しては、プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cを通過する際の媒体Pの移動方向における前方(進行方向)を+Y方向と称し、後方を-Y方向と称する。なお、プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cを通過する際の媒体Pの移動方向は、Y方向に対して所定角度傾斜している。
【0025】
但し、これらの方向は、画像形成装置1の構成の理解を容易にするためのものであり、画像形成装置1の使用時の向きを限定するものではない。
【0026】
<定着ユニットの構成>
図2は、定着ユニット20を示す断面図である。
図2に示すように、定着ユニット20は、定着体としての定着ベルト21と、発熱部としてのヒータ22と、ヒータホルダ23と、支持体としてのステイ24と、熱伝導板25と、離間板26と、加圧体としての加圧ローラ28とを有する。
【0027】
定着ベルト21は、無端状のベルトであり、幅方向はX方向である。定着ベルト21は、例えば、ステンレス鋼で形成された基層と、基層の表面にシリコーンゴムで形成された弾性層と、弾性層を覆いPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成された表面層とを有する。定着ベルト21は、加圧ローラ28に追従して矢印R1で示す方向に回動する。
【0028】
ヒータ22、ステイ24、ヒータホルダ23、熱伝導板25、および離間板26は、定着ベルト21の内周側に配置される。また、定着ベルト21は、ヒータ22によって内周側から加熱される。
【0029】
ヒータ22は面状ヒータであり、X方向に長い。ヒータ22は、発熱面側を定着ベルト21の内周に向けて配置されている。
【0030】
ステイ24は、ヒータ22、ヒータホルダ23、熱伝導板25および離間板26を支持する構造体であり、例えば金属で形成される。ステイ24は、X方向に直交する面において略コの字状の断面を有する。より具体的には、ステイ24は、Y方向に相対する2つの側板部24bと、側板部24bの+Z方向の端部同士をつなぐ天板部24aとを有する。
【0031】
ヒータホルダ23は、ステイ24に対してヒータ22を支持するものであり、ステイ24の加圧ローラ28側に固定されている。ヒータホルダ23は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂で形成される。
【0032】
ヒータホルダ23は、ステイ24の2つの側板部24bの内側に配置される2つの側板部23bと、側板部23bの-Z方向の端部同士をつなぐ底板部23aとを有する。ヒータホルダ23の底板部23aには、熱伝導板25を介して、ヒータ22が取り付けられている。
【0033】
熱伝導板25は、ヒータホルダ23の底板部23aとヒータ22との間に配置された板状部材である。熱伝導板25は、例えばステンレス(SUS)で形成されている。
【0034】
離間板26は、ヒータ22と定着ベルト21との間に配置された板状部材である。離間板26は、例えばガラスコーティングされたステンレスで形成されている。離間板26は、ヒータ22の熱を拡散させて定着ベルト21に伝達し、後述する定着ニップNにおける定着ベルト21の温度分布を均一化する作用を有する。
【0035】
離間板26は、Y方向の両端に一対の折り曲げ片26aを有する。各折り曲げ片26aは、ヒータホルダ23の底板部23aの溝部23cに挿入されて固定される。ヒータ22および熱伝導板25は、ヒータホルダ23の底板部23aと離間板26とに挟まれた状態で保持される。
【0036】
ヒータ22と定着ベルト21の内周面との間には、摩擦抵抗を低減するため、液体潤滑剤27(潤滑油)を介在させることが望ましい。液体潤滑剤27は、例えば、定着ベルト21の内周面に塗布される。
【0037】
加圧ローラ28は、X方向を軸方向とするローラであり、X方向の回転軸C1を中心として回転可能に支持されている。加圧ローラ28は、定着ベルト21を介してヒータ22に圧接され、定着ニップNを形成する。
【0038】
加圧ローラ28は、例えば快削鋼(SUM)等の金属で構成されたシャフト281と、シャフト281の表面を覆いシリコーンゴムで構成された弾性層282とを有する。シャフト281のX方向の一端部(軸部)には、定着モータの駆動力が伝達される。これにより、加圧ローラ28が矢印R2で示す方向に回転する。
【0039】
加圧ローラ28の表面の温度は、温度センサ29(
図1)によって検出される。温度センサ29は、例えばサーミスタであるが、例えば非接触センサであってもよい。温度センサ29の検知信号は温度調節回路に送られ、ヒータ22の加熱制御が行われる。
【0040】
次に、定着ユニット20の各要素の支持構造について説明する。
図3は、定着ユニット20の外形を示す斜視図である。定着ユニット20は、ハウジング30によって覆われている。ハウジング30の-Y側には導入口32が形成され、+Y側には排出口が形成されている。導入口32には、媒体Pが矢印Fで示す方向に導入される。
【0041】
図4は、定着ユニット20の内部構成を示す斜視図である。
図4に示すように、定着ユニット20は、定着ユニット20の各要素を支持する固定フレーム35を有する。固定フレーム35は、定着ユニット20のX方向の両端に位置する一対のサイドプレート35bと、これらを支持する基台部35aとを有する。加圧ローラ28は、一対のサイドプレート35bに取り付けられた軸受部によって回転可能に支持されている。
【0042】
一対のサイドプレート35bのX方向の内側には、一対の回動フレーム33(
図4では一方のみ示されいる)が設けられている。回動フレーム33は、X方向の回動軸C2を中心として回動可能に、サイドプレート35bに取り付けられている。
【0043】
各回動フレーム33には、略円筒状のフランジ部材34が取り付けられている。各フランジ部材34の一部は、定着ベルト21のX方向端部の内周側に挿入されており、定着ベルト21を内周側から支持する。
【0044】
各回動フレーム33には、ステイ24(
図2)のX方向端部が固定されている。ステイ24と、ステイ24に支持される各部材(定着ベルト21、ヒータ22、ヒータホルダ23、熱伝導板25および離間板26)は、一対の回動フレーム33によって支持される。
【0045】
各サイドプレート35bには、付勢部材36が取り付けられている。付勢部材36は、例えばコイルばねである。付勢部材36は、回動フレーム33を、定着ベルト21が加圧ローラ28から離間する方向に回動するように付勢する。
【0046】
各サイドプレート35bには、図示しないカムが回転可能に取り付けられており、X方向に延在する連結シャフト39で互いに連結されている。カムは、カムモータからの回転伝達によって回転する。
【0047】
カムの回転により、回動フレーム33が第1の方向(定着ベルト21が加圧ローラ28から離間する方向)または第2の方向(定着ベルト21が加圧ローラ28に当接する方向)に回動する。
【0048】
定着動作時には、定着ベルト21が加圧ローラ28に当接し、定着ニップN(
図2)が形成される。一方、定着動作の終了後は、定着ベルト21は加圧ローラ28から離間し、定着ニップNが開放される。
【0049】
<画像形成装置の動作>
画像形成装置1の動作は、以下の通りである。画像形成装置1の制御部は、上位装置から印刷コマンドと印刷データを受信すると、画像形成動作を開始する。まず、ピックアップローラ62が回転し、給紙トレイ61内の媒体Pを搬送路に送り出し、搬送ローラ65,66が媒体Pを転写ユニット50まで搬送する。
【0050】
転写ユニット50では、駆動ローラ52の回転により転写ベルト51が走行し、転写ベルト51が媒体Pを吸着保持して搬送する。媒体Pは、プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cの順に通過する。
【0051】
制御部100は、各プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cにおいて、各色のトナー像の形成を行う。すなわち、各プロセスユニット10の帯電ローラ12、現像ローラ13および供給ローラ14に、帯電電圧、現像電圧および供給電圧がそれぞれ印加される。
【0052】
また、各プロセスユニット10の感光体ドラム11が回転し、感光体ドラム11の回転に伴って、帯電ローラ12、現像ローラ13および供給ローラ14も回転する。帯電ローラ12は、その帯電電圧により、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。露光ヘッド18は感光体ドラム11の表面を露光し、静電潜像を形成する。
【0053】
感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ13に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム11の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像は、転写ローラ54に印加された転写電圧により、転写ベルト51上の媒体Pに転写される。
【0054】
このように、各プロセスユニット10K,10Y,10M,10Cで形成された各色のトナー像が媒体Pに順次転写され、互いに重ね合される。各色のトナー像が転写された媒体Pは、転写ベルト51によってさらに搬送され、定着ユニット20に到達する。
【0055】
定着ユニット20では、加圧ローラ28が回転し、これに追従して定着ベルト21が回転する。また、ヒータ22が所定の定着温度まで加熱される。転写ユニット50から定着ユニット20に搬送された媒体Pは、定着ベルト21と加圧ローラ28との間の定着ニップNを通過する際に加熱および加圧され、トナー像が媒体Pに定着される。
【0056】
トナー像が定着した媒体Pは、排出ローラ81,82により、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部83上に積載される。これにより、媒体Pへのカラー画像の形成が完了する。
【0057】
<転写ユニットと定着ユニットとの間の媒体の搬送案内>
図5は、転写ユニット50と定着ユニット20との間の媒体Pの搬送案内のための構成を示す図である。媒体Pは、転写ベルト51の表面に吸着して搬送される。転写ベルト51の表面のうち、プロセスユニット10側の平坦な部分を、搬送面51aとする。すなわち、転写ベルト51の表面(外周面)のうち、駆動ローラ52とテンションローラ53との間に位置し且つ感光体ドラム11に対向する平面を、搬送面51aとする。
【0058】
転写ベルト51の搬送面51aを延長した仮想平面を、搬送基準面Sと称する。搬送基準面Sは、X方向に平行であるが、XY面(水平面)に対して角度αだけ傾斜している。定着ユニット20の定着ニップNは、搬送基準面Sよりも上側(+Z側)に位置している。
【0059】
媒体Pは、転写ベルト51が駆動ローラ52の表面に沿って湾曲する部分で、転写ベルト51から分離して定着ユニット20側に搬送される。
【0060】
媒体Pを転写ベルト51から分離し、定着ユニット20側に案内するため、駆動ローラ52の+Y側には、分離部材としての分離フィルム41が配置されている。分離フィルム41は、定着ユニット20に近い位置に配置されるため、耐熱性の高い樹脂、例えばポリカーボネート等で構成される。
【0061】
分離フィルム41は、転写ベルト51から媒体Pを分離し易いよう、転写ベルト51の駆動ローラ52の外周に沿って湾曲している表面(符号51bで示す)に対向するように配置される。
【0062】
分離フィルム41は、支持体42によって支持されている。支持体42は、例えば板金で構成される。支持体42は、分離フィルム41が固定される平板状の支持部421と、支持部421の-Y側の端部から下方に延在する対向部422とを有する。
【0063】
支持部421は、搬送基準面Sに対向する支持面を有し、その支持面に分離フィルム41が固定されている。対向部422は、支持部421の駆動ローラ52の表面に沿って延在している。対向部422は、分離フィルム41の第1突出部411(後述)が媒体Pに当接して下方に屈曲したときに分離フィルム41を支える。
【0064】
分離フィルム41の表面は平坦面であり、媒体Pを案内する案内面41aとなる。案内面41aは、搬送基準面Sよりも下方(-Z方向)に位置している。案内面41aは、X方向に平行であるが、XY面に対して角度βだけ傾斜している。案内面41aは、搬送基準面Sまでの距離が、定着ユニット20に近付くほど(すなわち+Y方向に)短くなるような角度で配置されている。
【0065】
案内面41aのXY面に対する傾斜角度βは、上記の角度αよりも大きい(β>α)。搬送基準面Sを基準とすると、案内面41aは、搬送基準面Sに対して角度A(=β-α)だけ傾斜している。
【0066】
分離フィルム41は、支持部421から駆動ローラ52側(-Y側)に突出する第1突出部411と、支持部421から定着ユニット20側(+Y側)に突出する第2突出部412とを有する。
【0067】
分離フィルム41の第1突出部411は、媒体Pを転写ベルト51から分離し易いよう、駆動ローラ52の表面に沿って湾曲する転写ベルト51の表面51bの近傍まで達している。但し、転写ベルト51に傷が付かないようにするため、分離フィルム41の第1突出部411の先端は、転写ベルト51の表面から僅かに離間している。
【0068】
分離フィルム41の第2突出部412は、媒体Pとして厚紙を用いた場合に、媒体Pに当接して変形することで媒体Pの撓み領域を確保するものである(
図8参照)。
【0069】
図6は、分離フィルム41および支持体42を示す斜視図である。分離フィルム41および支持体42は、いずれもX方向に長い。分離フィルム41と支持体42とを合わせて、分離ユニット40とも称する。
【0070】
分離フィルム41のX方向の長さは、例えば、310mmである。分離フィルム41のY方向の幅は、例えば、11.5mmである。なお、分離フィルム41のX方向の長さは、転写ベルト51の幅と同じである。
【0071】
支持体42は、分離フィルム41のX方向両端からさらに突出しており、画像形成装置1の筐体1A(
図1)内の所定箇所に取り付けられる。
【0072】
分離フィルム41のX方向中央の+Y側には、切欠き413が形成される。この切欠き413は、媒体Pを検知するセンサレバー55(
図1)と干渉しないようにするためのものである。
【0073】
センサレバー55(
図1)は、転写ユニット50と定着ユニット20との間に配置され、媒体Pの前端に当接して倒伏するように構成されている。センサレバー55が倒伏すると、図示しない光学センサがこれを検知して検知信号を発する。この検知信号は、媒体Pのジャムが発生したときに、転写ユニット50と定着ユニット20との間に媒体Pがあるか否かの判断に用いられる。
【0074】
分離フィルム41は、転写ベルト51の幅(X方向寸法)の全域に対向するように設けられていることが望ましい。但し、分離フィルム41を、例えば転写ベルト51の幅方向両端部(X方向両端部)のみに対向するように設けても良い。
【0075】
図5に戻り、定着ユニット20の導入側すなわち-Y側には、媒体Pを定着ニップNに誘導する誘導部31が形成されている。誘導部31は、定着ユニット20のハウジング30(
図3)において、導入口32の下側に形成されている。
【0076】
誘導部31は、分離フィルム41を通過してきた媒体Pを定着ニップNに誘導する誘導面31aを有する。誘導面31aは、X方向と平行であるが、XY面に対して角度γだけ傾斜している。誘導面31aは、誘導面31aと定着ニップNとのZ方向の距離が、定着ユニット20に近付くほど(すなわち+Y方向に)短くなるような角度に設けられている。
【0077】
誘導面31aの傾斜角度γは、角度α,βよりも大きい(γ>β、γ>α)。搬送基準面Sを基準とすると、誘導部31の誘導面31aは、搬送基準面Sに対して角度B(=γ-α)だけ傾斜している。
【0078】
誘導面31aの搬送基準面Sに対する角度Bは、案内面41aの搬送基準面Sに対する角度Aよりも大きい(B>A)。そのため、案内面41aに沿って搬送されてきた媒体が、スムースに誘導面31aに沿って案内される。
【0079】
誘導面31aの一部は、分離フィルム41の案内面41aを延長した仮想平面T上に位置する。すなわち、案内面41aに沿って搬送されてきた媒体P(例えば薄紙)を、確実に誘導面31aに当接させ、誘導面31aに沿って案内することができる。
【0080】
また、誘導面31aの一部は、搬送基準面S上に位置している。すなわち、案内面41aに接触せずに、搬送基準面Sに沿って搬送されてきた媒体P(例えば厚紙)を、確実に誘導面31aに当接させ、誘導面31aに沿って案内することができる。
【0081】
誘導部31の上端と誘導面31aとの間には、湾曲面31bが形成されている。この湾曲面31bは、媒体Pの引っ掛かりを防止し、媒体Pを定着ニップNに滑らかに誘導するためのものである。
【0082】
<作用>
図7は、転写ユニット50から定着ユニット20までの媒体Pの搬送状態を示す。ここでは、媒体Pとして、比較的変形し易い(坪量の小さい)媒体すなわち薄紙を用いた例を示す。また、
図7では、媒体PのX方向の一端部(左端部)の軌跡を破線Lで示し、媒体PのX方向の他端部(右端部)の軌跡を破線Rで示す。
【0083】
転写ベルト51によって搬送された媒体Pは、転写ベルト51が駆動ローラ52の外周面に沿って湾曲を開始する位置を過ぎると、転写ベルト51から分離する。転写ベルト51から分離した媒体Pは、搬送基準面Sから一旦離れる方向に進むが、分離フィルム41の案内面41aに当接して、案内面41aに沿って進む。
【0084】
案内面41aは、搬送基準面Sに対して角度A(
図5)だけ傾斜している。また、案内面14aは、搬送基準面Sまでの距離が+Y方向ほど短くなるような角度で配置されている。そのため、媒体Pが案内面41aに沿って進むにつれて、媒体Pは搬送基準面Sに接近する。
【0085】
媒体Pは、さらに、誘導部31の誘導面31aに当接し、誘導面31aに沿って進む。誘導面31aは、搬送基準面Sに対して角度Aよりも大きい角度B(
図5)だけ傾斜しているため、案内面41aから進んできた媒体Pが誘導面31aに当接し、誘導面31aに 沿って定着ニップNに誘導される。
【0086】
このように媒体Pは、転写ユニット50と定着ユニット20との間で、分離フィルム41の案内面41aおよび誘導部31の誘導面31aに案内され、やや撓んだ状態を保ちながら搬送される。
【0087】
ここで、媒体Pが薄紙の場合、媒体Pの転写ベルト51からの分離タイミングが、媒体Pの幅方向両端(X方向両端)で異なる場合がある。
図7に示した例では、媒体Pの右端部Rは、転写ベルト51が湾曲を開始した位置の近傍で転写ベルト51から分離している。これに対し、媒体Pの左端部Lは、媒体Pの右端部よりもやや遅れて転写ベルト51から分離している。
【0088】
このように媒体Pの右端部Rと左端部Lとで転写ベルト51からの分離タイミングが異なると、媒体Pの右端部Rと左端部Lとで撓み量が異なる、いわゆる媒体Pのねじれが生じる。媒体Pがねじれた状態で定着ニップNに誘導されると、後述するように印刷不良につながる可能性がある(
図10(A),(B)参照)。
【0089】
しかしながら、本実施の形態では、分離フィルム41の案内面41aと搬送基準面Sとの距離が+Y方向に進むほど短くなり、従って媒体Pが案内面41aに沿って進むほど搬送基準面Sに接近する。そのため、媒体Pの右端部と左端部とで転写ベルト51からの分離タイミングが異なる場合であっても、媒体Pの右端部Rと左端部Lとの撓み量の差が低減する。従って、媒体Pのねじれの発生が抑制され、印刷不良が抑制される。
【0090】
また、誘導部31の誘導面31aの一部が、分離フィルム41の案内面41aを延長した仮想平面T上に位置するため、案内面41aに沿って進んだ媒体Pが誘導面31aに当接し、誘導面31aに沿って定着ニップNにスムースに誘導される。
【0091】
図8は、転写ユニット50から定着ユニット20までの媒体Pの搬送状態の他の例を示す。ここでは、媒体Pとして、比較的変形しにくい(坪量の大きい)媒体すなわち厚紙を用いた例を示す。
【0092】
この場合には、媒体Pは、転写ベルト51が湾曲を開始した位置の近傍で転写ベルト51から分離し、分離フィルム41にはあまり接触せずに、搬送基準面Sに沿って進む。そして、媒体Pは、分離フィルム41の第2突出部412に当接し、第2突出部412を変形させながら誘導部31に向けて進む。誘導部31の誘導面31aに到達した媒体Pは、誘導面31aに誘導され、定着ニップNに到達する。
【0093】
媒体Pが厚紙の場合には、薄紙の場合と異なり、転写ベルト51からの分離タイミングが幅方向両端で異なるという状況は生じにくい。
【0094】
また、媒体Pが特に厚い場合には、転写ベルト51から分離したのち、分離フィルム41に全く接触しないまま誘導部31に到達する場合もある。このような場合であっても、誘導部31の誘導面31aの一部が搬送基準面S上に位置するため、媒体Pが誘導面31aに沿って定着ニップNにスムースに誘導される。
【0095】
<比較例>
図9は、比較例における転写ユニット50から定着ユニット20までの媒体Pの搬送状態を示す図である。比較例では、分離フィルム91の構成が、実施の形態1の分離フィルム41と異なる。
【0096】
すなわち、比較例の分離フィルム91は、転写ベルト51から媒体Pを分離させるために設けられているが、分離フィルム91の案内面91aは、搬送基準面Sと平行である。分離フィルム91の材質は、実施の形態1の分離フィルム41と同様である。
【0097】
分離フィルム91は、板金等で構成された支持体92で支持されている。支持体92は、分離フィルム91を案内面91aが搬送基準面Sと平行になるように支持している点で、実施の形態1の支持体42と異なる。
【0098】
比較例において、薄紙である媒体Pの転写ベルト51からの分離タイミングが幅方向両端で異なった場合について説明する。
図9に示した例では、媒体Pの右端部Rは、転写ベルト51が湾曲を開始した位置の近傍で、転写ベルト51から分離している。これに対し、媒体Pの左端部Lは、媒体Pの右端部Rよりもやや遅れて転写ベルト51から分離している。
【0099】
転写ベルト51から遅く分離した媒体Pの左端部Lの移動量は、媒体Pの右端部Rの移動量よりも多くなる。そのため、
図10(A)に示すように、媒体Pの左端部Lの撓み量が右端部Rの撓み量よりも多くなる。すなわち、媒体Pが、ねじれた状態で搬送される。
【0100】
比較例では、分離フィルム91は搬送基準面Sと平行に設けられていため、分離フィルム91によって転写ベルト51の幅方向両端の撓み量の差を減少させることができない。
【0101】
このように媒体Pがねじれた状態で定着ニップNに誘導され、定着ベルト21と加圧ローラ28との間で挟まれると、撓み量の少ない媒体Pの右端部と定着ベルト21との間で摩擦が生じる。その結果、媒体P上のトナー像に、
図10(B)に示すように濃度の濃い部分(むら)が生じる。このようなむらを、「擦れ」と称する。
【0102】
これに対し、本実施の形態では、
図7に示したように、分離フィルム41の案内面41aが、搬送基準面Sまでの距離が+Y方向に進むほど短くなるような角度で配置されている。そのため、媒体Pが案内面41aに沿って進むほど、媒体Pが搬送基準面Sに接近する。
【0103】
その結果、媒体Pの右端部Rと左端部Lとで転写ベルト51からの分離タイミングが異なったとしても、分離フィルム41に沿って案内されることで、媒体Pの右端部Rと左端部Lとの撓み量の差(移動量の差)が減少する。従って、媒体Pのねじれの発生が抑制され、比較例のような印刷不良(擦れ)が抑制される。
【0104】
次に、本実施の形態と比較例における擦れの発生に関する実験結果について説明する。実験では、本実施の形態の画像形成装置1を用いた場合と、分離フィルム41の代わりに比較例の分離フィルム91を用いた場合とで、100枚の媒体Pにテスト画像を連続印刷し、100枚の全てを目視で観察し、擦れの有無を確認した。画像形成装置としては、本実施の形態および比較例とも3台の画像形成装置を用いて各100枚(それぞれ計300枚)の媒体Pに連続印刷を行い、全ての印刷結果を目視観察した。
【0105】
画像形成装置1としては、
図1に示した画像形成装置1(カラープリンタ)を用い、マゼンタのプロセスユニット10Mを用いてテスト画像を形成した。テスト画像としては、デューティ比が20%のベタ画像を用いた。
【0106】
印刷条件は、温度25度、相対湿度50%の環境(NN環境)と、温度10度、相対湿度20%の環境(LL環境)と、温度30度、相対湿度80%の環境(HH環境)の3環境で行った。
【0107】
媒体Pとしては、薄紙P1の代表として、坪量60g/m2のアスクル株式会社製「マルチペーパーマイナス6%」を用いた。また、厚紙P2の代表として、坪量90g/m2のモンディ株式会社製「カラーコピー(CC)90」を用いた。
【0108】
上記の通り連続印刷を行った300枚の媒体Pのうち、擦れが観察された媒体Pの枚数をカウントし、擦れ発生率(%)とした。例えば、300枚の媒体Pのうちの3枚に擦れが観察された場合には、擦れ発生率は1%とした。結果を
図11に示す。
【0109】
図12は、
図11に示した実験結果を示すグラフである。
図12において、C
NNおよびE
NNは、それぞれ比較例および本実施の形態の画像形成装置によるNN環境での実験結果を示す。C
LLおよびE
LLは、それぞれ比較例および本実施の形態の画像形成装置によるLL環境での実験結果を示す。C
HHおよびE
HHは、それぞれ比較例および本実施の形態の画像形成装置によるHH環境での実験結果を示す。
【0110】
図11および
図12から明らかなように、媒体Pとして厚紙P2(坪量90g/m
2)を用いた場合には、本実施の形態および比較例のいずれにおいても、3環境の全てにおいて、擦れは観察されていない。
【0111】
一方、媒体Pとして薄紙P1(坪量60g/m2)を用いた場合には、3環境の全てにおいて、比較例では擦れが観察され、本実施の形態では擦れは観察されていない。
【0112】
この結果から、本実施の形態では、分離フィルム41の案内面41aが、搬送基準面Sまでの距離が+Y方向に進むほど短くなるような角度で配置されているため、媒体Pの右端部Rと左端部Lとの撓み量の差(移動量の差)が減少し、擦れの発生が抑制されていることが理解される。
【0113】
なお、上記の説明では、転写ベルト51から媒体Pを分離する分離部材の一例として、分離フィルム41について説明したが、分離フィルムに限らず、他の分離部材(例えば、樹脂製の分離プレートなど)を用いてもよい。
【0114】
また、上記の説明では、誘導面31aを有する誘導部31が定着ユニット20の一部であったが、定着ユニット20とは別に誘導面31aを設けても良い。すなわち、転写ユニット50よりも下流側で、定着ユニット20よりも上流側に誘導面31aが設けられていればよい。
【0115】
また、上記の説明では、転写ベルト51の搬送面51aが水平面(XY面)に対して傾斜していたが、転写ベルト51の搬送面51aは水平であってもよい。
【0116】
また、上記の説明では、定着ユニット20が定着ベルト21と加圧ローラ28とを有していたが、他の種類の定着ユニット、例えば定着ローラと加圧ローラとを有する定着ユニットを用いてもよい。
【0117】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、実施の形態の画像形成装置1は、現像剤像を担持する感光体ドラム11(像担持体)と、感光体ドラム11に対向するように配置された転写ローラ54(転写部)と、感光体ドラム11と転写ローラ54との間を通過し、感光体ドラム11に対向する搬送面51a(平面)を有し、当該搬送面51で媒体Pを搬送する転写ベルト51と、転写ベルト51が張架された駆動ローラ52およびテンションローラ53と、これらのローラのうち媒体搬送方向の下流側に設けられた駆動ローラ52(下流側ローラ)に対向するように配置され、転写ベルト51から媒体Pを分離する分離フィルム41(分離部材)とを有する。分離フィルム41は、媒体Pを案内する案内面41aを有する。案内面41aは、搬送面51aを延長した仮想平面である搬送基準面Sまでの距離が、媒体搬送方向(+Y方向)に進むにつれて短くなるような角度で配置されている。
【0118】
このように構成されているため、媒体Pの転写ベルト51からの分離タイミングが幅方向両端で異なったとしても、媒体Pが分離フィルム41の案内面41aに沿って搬送基準面Sに近付くように案内されるため、媒体Pの幅方向両端の移動量の差を減少させることができる。これにより、媒体Pのねじれの発生を抑制し、印刷不良(擦れ)の発生を抑制することができる。
【0119】
また、定着ユニット20が誘導面31aを有するため、分離フィルム41の案内面41aを通過した媒体Pを、誘導面31aを介して定着ニップNに誘導することができる。
【0120】
また、搬送基準面Sに対する案内面41aのなす角度Aと、搬送基準面Sに対する誘導面31aのなす角度BとがA<Bを満たすため、案内面41aを通過した媒体Pを誘導面31aに当接させ、スムースに定着ニップNに誘導することができる。
【0121】
また、誘導面31aの一部が搬送基準面S上に位置するため、厚紙等の媒体Pが案内面41aに接触することなく搬送されたとしても、媒体Pを確実に誘導面31aに当接させ、スムースに定着ニップNに誘導することができる。
【0122】
また、誘導面31aの一部が、案内面41aを延長した仮想平面T上に位置するため、案内面41aに沿って搬送された媒体Pを確実に誘導面31aに当接させ、スムースに定着ニップNに誘導することができる。
【0123】
また、樹脂で形成された分離フィルム41は変形し易いため、媒体Pを転写ベルト51から効率よく分離させることができる。
【0124】
また、分離フィルム41が、支持体42から転写ベルト51側に突出する第1突出部411を有しているため、この第1突出部411により、転写ベルト51に付着している媒体Pを転写ベルト51から分離させることができる。
【0125】
また、分離フィルム41が、支持体42から転写ベルト51と反対側(定着ユニット20側)に突出する第2突出部412を有しているため、第2突出部412の変形により、媒体Pの撓み領域を確保することができる。
【0126】
上記の実施の形態では、カラー画像を形成する画像形成装置について説明したが、本発明は単色(モノクロ)画像を形成する画像形成装置に適用することもできる。また、本発明は、例えば、電子写真方式を利用して媒体に画像を形成する画像形成装置(例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ、複合機等)およびその定着ユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 画像形成装置、 10,10K,10Y,10M,10C プロセスユニット、 11 感光体ドラム(像担持体)、 12 帯電ローラ(帯電部材)、 13 現像ローラ(現像在担持体)、 14 供給ローラ(供給部材)、 15 現像ブレード(現像剤規制部材)、 17 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 18,18K,18Y,18M,18C 露光ヘッド(露光装置)、 20 定着ユニット、 21 定着ベルト、 22 ヒータ、 23 ヒータホルダ、 24 ステイ、 25 熱伝導板、 26 離間板、 27 液体潤滑剤、 28 加圧ローラ、 29 温度センサ、 30 ハウジング、 31 誘導部、 31a 誘導面、 31b 湾曲面、 32 導入口、 33 回動フレーム、 35 固定フレーム、 41 分離フィルム(分離部材)、 41a 案内面、 42 支持体、 50 転写ユニット、 51 転写ベルト、 51a 表面(搬送面)、 52 駆動ローラ(下流側ローラ)、 53 テンションローラ、 54 転写ローラ(転写ローラ)、 55 センサレバー、 60 媒体供給部、 80 媒体排出部、 411 第1突出部、 412 第2突出部、 413 切欠き、 421 支持部、 422 基部。