(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240528BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240528BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240528BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/14
G03G21/16 147
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2020128461
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】石森 啓太
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001279(JP,A)
【文献】特開2011-237555(JP,A)
【文献】特開2010-026379(JP,A)
【文献】特開昭62-211263(JP,A)
【文献】特開2001-235958(JP,A)
【文献】特開2006-072253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 21/14
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を挟持して搬送方向の下流側へ送り出す定着ニップ部と、
前記定着ニップ部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記媒体を挟持して前記搬送方向の下流側へ送り出す排出ニップ部と、
前記定着ニップ部と前記排出ニップ部との間に配され、前記媒体が搬送される速度である媒体搬送速度よりも低速のローラ周速度で回転するローラと
、
前記定着ニップ部と前記排出ニップ部との間に配され、前記媒体において現像剤が転写された面側をガイドする印刷面側ガイド面と
を有
し、
前記ローラは、
前記定着ニップ部に沿って前記搬送方向の下流側へ向かう仮想的な線よりも前記印刷面側ガイド面側に位置し、前記印刷面側ガイド面から離隔する側が、前記搬送方向の上流側から下流側へ向かう方向へ回転する
画像形成装置。
【請求項2】
前記ローラは、
前記媒体が前記ローラに当接した際に、前記媒体に対し前記搬送方向の上流側へ向かう力を加える
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ローラは、
前記媒体が前記ローラに当接した際に、前記媒体における、前記ローラと前記媒体とが当接した箇所よりも前記搬送方向の上流側を、前記ローラから離隔させる方向へ変形させる
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ローラは、
前記定着ニップ部に挟持されている状態の前記媒体に当接した際に、前記媒体における、前記ローラと前記媒体とが当接した箇所よりも前記搬送方向の上流側を、前記ローラから離隔させる方向へ変形させる
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着ニップ部を構成する定着部材及び加圧部材と、前記排出ニップ部を構成するローラ対とは、互いに同等の周速度で回転する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ローラは、
前記定着ニップ部を構成する定着部材及び加圧部材と、前記排出ニップ部を構成するローラ対とよりも、低速の前記ローラ周速度で回転する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ローラは、
前記媒体の剛性に応じた前記ローラ周速度で回転する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ローラは、
前記媒体の剛性が高い場合、低速の前記ローラ周速度で回転し、前記媒体の剛性が低い場合、高速の前記ローラ周速度で回転する
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ローラは、
前記媒体搬送速度の50[%]以下の前記ローラ周速度で回転する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ローラは、
所定の駆動源から駆動力が伝達され前記ローラ周速度で回転すると共に、前記媒体が当接すると、前記駆動源からの駆動力が伝達されなくなり、前記媒体からの搬送力が伝達され前記媒体搬送速度で回転する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ローラは、
前記定着ニップ部と前記排出ニップ部との両方に挟持された状態の前記媒体が当接すると、前記駆動源からの駆動力が伝達されなくなり、前記媒体からの搬送力が伝達され前記媒体搬送速度で回転する
請求項1
0に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ローラを前記駆動源に向かって所定の付勢力で付勢する付勢部材
をさらに有し、
前記ローラは、
前記駆動源に当接し前記駆動源から駆動力が伝達され前記ローラ周速度で回転すると共に、前記媒体から、前記付勢力よりも大きい押圧力で押圧された場合、前記駆動源から離隔して前記駆動源からの駆動力が伝達されなくなり、前記媒体からの搬送力が伝達され前記媒体搬送速度で回転する
請求項1
1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、例えば電子写真式プリンタ(以下ではこれを単にプリンタとも呼ぶ)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、現像剤で形成した現像剤像を用紙等の媒体に転写した後、該現像剤像を定着器により用紙に定着させる。
【0003】
このような画像形成装置が備える定着器では、定着ベルトと、加圧ローラと、定着ベルトの内側に配された加熱部材とを有するものがある。定着器は、定着ベルトと加圧ローラとを当接させながら回転させ、搬送されてくる媒体を、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成される定着ニップ部で挟んで加熱及び加圧することにより、媒体上の現像剤像を加熱溶融して媒体上に定着させ、定着器から排出ローラ対まで搬送して装置外に排出する。
【0004】
そのような画像形成装置は、定着ベルトに巻き付いた媒体を分離する分離爪と、分離爪の先端よりも媒体の搬送方向の下流側に配され、回転することにより、定着ベルトから分離された媒体の搬送を案内し、媒体における現像剤像が形成された画像印刷面の摺動痕を抑制するローラとを有するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような画像形成装置においては、ローラにより媒体の画像印刷面が擦れにくいように搬送されるようにしているものの、十分ではない可能性があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、印刷品位を保ち得る画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、媒体を挟持して搬送方向の下流側へ送り出す定着ニップ部と、定着ニップ部よりも搬送方向の下流側に設けられ、媒体を挟持して搬送方向の下流側へ送り出す排出ニップ部と、定着ニップ部と排出ニップ部との間に配され、媒体が搬送される速度である媒体搬送速度よりも低速のローラ周速度で回転するローラと、定着ニップ部と排出ニップ部との間に配され、媒体において現像剤が転写された面側をガイドする印刷面側ガイド面とを設け、ローラは、定着ニップ部に沿って搬送方向の下流側へ向かう仮想的な線よりも印刷面側ガイド面側に位置し、印刷面側ガイド面から離隔する側が、搬送方向の上流側から下流側へ向かう方向へ回転するようにした。
【0009】
これにより本発明は、媒体がローラ側へ向かって定着ニップ部から排出された際に、媒体がローラに接触すると、媒体搬送速度とローラ周速度との速度差により、ローラから媒体へ、媒体を搬送方向の上流側へ戻すような力を加え、ローラから離隔するように媒体を弛ませることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷品位を保ち得る画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1の実施の形態による定着排出部の構成を示す左側面図である。
【
図3】第1の実施の形態によるローラセパレータの構成を示す正面図である。
【
図4】第1の実施の形態による定着排出部における用紙の形状を矯正した状態を示す左側面図である。
【
図5】第2の実施の形態による定着排出部の構成を示す左側面図である。
【
図6】第2の実施の形態によるローラセパレータ、ローラ及びばねの構成を示す正面図である。
【
図7】第2の実施の形態による定着排出部における用紙の形状を矯正した状態を示す左側面図である。
【
図8】第2の実施の形態による定着排出部における用紙突張状態(1)を示す左側面図である。
【
図9】第2の実施の形態による定着排出部における用紙突張状態(2)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタであり、略箱型の装置筐体2を有している。ここで、装置筐体2の図中右側を前面、図中左側を後面とし、装置筐体2の前面から後面へ向かう方向を後方向、後面から前面へ向かう方向を前方向、装置筐体2の下側から上側へ向かう方向を上方向、装置筐体2の上側から下側へ向かう方向を下方向、装置筐体2の図中手前側から奥側へ向かう方向を右方向、装置筐体2の図中奥側から手前側へ向かう方向を左方向とする。また以下では、用紙Pが進行する方向を搬送方向と呼び、この搬送方向と該用紙Pの厚さ方向とに直交する左右方向を搬送幅方向と呼ぶ。
【0014】
装置筐体2の内部には、その上部に、画像形成装置1で扱う複数色の現像剤(例えばブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のトナー)のそれぞれに対応する4個の画像形成ユニット3(3K、3Y、3M及び3C)が、用紙Pの搬送路Wに沿って前後方向に並べて設けられている。
【0015】
各画像形成ユニット3(3K、3Y、3M及び3C)は、感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)と、トナーカートリッジ5(5K、5Y、5M及び5C)とを有している。各画像形成ユニット3(3K、3Y、3M及び3C)は、感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)の表面に光を照射して露光することで感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)の表面に静電潜像を形成した後、この静電潜像にトナーカートリッジ5(5K、5Y、5M及び5C)から供給されるトナーを付着させることにより、感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)の表面にトナー画像を形成する。
【0016】
また装置筐体2の内部には、画像形成ユニット3(3K、3Y、3M及び3C)の下方に、転写ユニット6が設けられている。転写ユニット6は、搬送路Wに沿って後方へ走行自在に配設された環状の搬送ベルト7と、搬送ベルト7を間に挟んで感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)の下方に対向配置された転写ローラ(図示せず)とを有している。
【0017】
転写ローラは、感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)と搬送ベルト7との間を用紙Pが通過する際に、用紙Pをトナーとは逆極性に帯電させることにより、感光体ドラム4(4K、4Y、4M及び4C)上に形成された各色のトナー画像を用紙Pに転写する。
【0018】
さらに装置筐体2の内部における下部には、転写ユニット6の下方において、用紙Pを収容するトレイ9が設けられている。このトレイ9の近傍には、トレイ9に収容された用紙Pを1枚ずつ搬送路Wへと繰り出すホッピングローラ10が設けられている。さらに装置筐体2の内部には、トレイ9と転写ユニット6との間の搬送路W上に、用紙Pを搬送する搬送ローラ対等が設けられている。
【0019】
さらに装置筐体2の内部には、転写ユニット6に対する用紙Pの搬送方向の下流側である後側に、定着器11が設けられている。定着器11は、上側の定着ベルト20と下側の加圧ローラ22とを有しており、定着ベルト20と加圧ローラ22との間に形成される
図2に示す定着ニップ部NP1を用紙Pが通過する際に用紙Pを加熱及び加圧することにより、用紙Pにトナー画像を定着させる。
【0020】
さらに装置筐体2の上端部には、用紙Pが排出されるスタッカ12が設けられている。さらに装置筐体2の内部には、定着器11とスタッカ12との間の搬送路W上に、用紙Pをスタッカ12へと排出する排出ローラ対26等が設けられている。さらに装置筐体2の内部には、搬送路W上の複数の箇所に、用紙Pを検知する媒体検知センサ等が設けられている。なお
図1では省略しているものの、装置筐体2の内部には、CPU(Central Processing Unit)等で構成される制御部、各ローラを駆動させるモータ等も設けられている。また装置筐体2の外部には、ユーザによる操作を受け付ける操作部等も設けられている。
【0021】
かかる構成において画像形成装置1は、トレイ9に収容されている用紙Pをホッピングローラ10により1枚ずつ搬送路Wへと繰り出す。搬送路Wへと繰り出された用紙Pは、転写ユニット6へと搬送され、転写ユニット6の搬送ベルト7により画像形成ユニット3K、3Y、3M及び3Cへと順に搬送される。ここで、各画像形成ユニット3K、3Y、3M及び3Cは、感光体ドラム4K、4Y、4M及び4Cの表面上に各色のトナー画像を形成する。このようにして感光体ドラム4K、4Y、4M及び4Cの表面上に形成されたトナー画像は、転写ローラにより用紙P上に転写され、これにより用紙P上にカラーのトナー画像が形成される。
【0022】
カラーのトナー画像が形成された用紙Pは、転写ユニット6から定着器11へと搬送される。定着器11は、トナー画像を用紙Pに定着させる。これにより用紙P上に画像が印刷されたことになる。その後、この用紙Pはスタッカ12へと搬送されスタッカ12上に排出される。
【0023】
[1-2.定着排出部の構成]
図2及び
図3に示すように、定着排出部14は、定着器11の定着ベルト20並びに加圧ローラ22、排紙搬送ガイド24(上側排紙搬送ガイド24u並びに下側排紙搬送ガイド24d)、セパレータ28及び排出ローラ対26により構成されている。
【0024】
定着部材としての定着ベルト20は、搬送路Wの上側において回転可能に支持されており、所定のヒータにより加熱される。この定着ベルト20は、付勢部材(図示せず)の付勢力により、定着ベルト20と加圧ローラ22とが接触する定着ニップ部NP1において加圧ローラ22に任意の押圧で押し付けられている。加圧ローラ22は、搬送路Wの下側において定着ベルト20と上下に対向するように回転可能に支持されている。
【0025】
加圧部材としての加圧ローラ22は、モータ(図示せず)から所定のギア(図示せず)等を介して駆動力が伝達されることにより、定着ニップ部NP1において搬送方向に沿うように
図2中で反時計回りに定着器周速度V1で回転する。定着ベルト20は、加圧ローラ22の回転に従動し、定着ニップ部NP1において搬送方向に沿うように
図2中で時計回りに定着ベルト20と同様の定着器周速度V1で回転する。
【0026】
このため定着器11は、定着ベルト20を加熱させると共に加圧ローラ22及び定着ベルト20を回転させることにより、トナー画像が転写され搬送路Wに沿って搬送されてくる用紙Pに熱及び圧力を加えて該トナー画像を定着させ、該搬送路Wに沿って後方向へ進行させる。これにより用紙Pは、画像データに基づいた画像が形成された状態、すなわち該画像が印刷された状態となる。
【0027】
排紙搬送ガイド24は、定着器11と排出ローラ対26との間において、搬送路Wに沿って配置された、互いに対向する2枚の板状の部材である上側排紙搬送ガイド24uと下側排紙搬送ガイド24dとによって構成されている。印刷面側ガイドとしての上側排紙搬送ガイド24uは、搬送路Wの上側に配置されており、円弧状に湾曲した印刷面側ガイド面としての上側排紙搬送ガイド面24uSが下側面に形成されている。非印刷面側ガイドとしての下側排紙搬送ガイド24dは、搬送路Wの下側に配置されており、上側排紙搬送ガイド面24uSとほぼ平行に円弧状に湾曲した非印刷面側ガイド面としての下側排紙搬送ガイド面24dSが上側面に形成されている。
【0028】
このように排紙搬送ガイド24は、上側排紙搬送ガイド面24uS及び下側排紙搬送ガイド面24dSにより、搬送路Wの上側及び下側をガイドする。これにより排紙搬送ガイド24は、定着器11から供給される用紙Pを上側排紙搬送ガイド面24uS及び下側排紙搬送ガイド面24dSにより後方ないし上方へガイドすることにより、排出ローラ対26の排出ニップ部NP2まで案内する。
【0029】
セパレータ28は、定着ニップ部NP1よりも搬送方向の下流側に設けられており、板金セパレータ30及びローラセパレータ32により構成されている。
【0030】
板金セパレータ30は、定着ニップ部NP1に対し、搬送方向の下流側における、定着ベルト20の回転方向側である上側に設けられている。この板金セパレータ30は、左側面視で英大文字の「L」のような形状の板状部材であり、画像形成装置1において搬送される用紙Pのうち最も搬送幅方向の幅が広い用紙Pの搬送幅方向の範囲である媒体通過範囲Rpよりも広い搬送幅方向の範囲に亘って搬送幅方向に沿って延びている。この板金セパレータ30は、前端部が定着ベルト20の表面の近傍に位置している。これにより板金セパレータ30は、定着ニップ部NP1を通過し定着ベルト20に巻き付いた用紙Pの先端(搬送方向の下流側端部)を定着ベルト20から剥がして用紙Pを定着ベルト20から分離させる。
【0031】
ローラセパレータ32は、板金セパレータ30よりも搬送方向の下流側において、定着ニップ部NP1に沿って後方へ向かう仮想的な定着ニップ部延長線Lよりも下端部が上側に位置するように設けられている。以下では、定着ニップ部延長線Lに沿って定着ニップ部NP1から搬送方向の下流側へ向かう方向を、定着ニップ部平行排出方向とも呼ぶ。このローラセパレータ32は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、媒体通過範囲Rpよりも広い搬送幅方向の範囲に亘って搬送幅方向に沿って延びており、所定の回転軸を中心として回転可能に支持されている。またローラセパレータ32は、左端部がモータ(図示せず)から所定のギア(図示せず)等を介して駆動力が伝達されることにより、
図2中で時計回りにセパレータ周速度V3で回転している。このセパレータ周速度V3は、定着器周速度V1よりも遅く、定着器周速度V1の25~50[%]程度に設定されている。
【0032】
ローラセパレータ32は、上側排紙搬送ガイド面24uSから、所定の距離だけ下方へ突出しており、定着ベルト20から剥がされて搬送方向の下流側へ向かう用紙Pの先端の上面と接触しつつ、
図2中で時計回りに回転する。このためローラセパレータ32は、用紙Pにおいてトナー画像が形成された上面である画像印刷面が上側排紙搬送ガイド面24uSと摺動することで発生するトナー画像の擦れを低減し、かつ、用紙Pを搬送方向の下流側にガイドする。ここで、用紙Pにおいてトナー画像が形成されていない下面である画像非印刷面は、下側排紙搬送ガイド面24dSと摺動する可能性がある。しかしながら、画像非印刷面には、トナー画像が形成されていないため、下側排紙搬送ガイド面24dSと摺動しても、トナー画像が擦れることはなく、大きな問題は発生しない。これに対し、画像印刷面は、定着ニップ部NP1により加熱された直後でトナーが未だ熱い状態であり固まっていないため、該トナーに外部から物体が接触し圧力が加わると、該トナーが変形しやすくなっている。
【0033】
またローラセパレータ32は、
図2中で時計回りに常に回転することにより、用紙Pの搬送方向の下流側端部と接触した際に、用紙Pがローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間に入り込み用紙ジャムが発生してしまうことを防止している。
【0034】
排出ローラ対26は、排紙搬送ガイド24の上端近傍に配置されており、前側のローラと後側のローラとが接触する排出ニップ部NP2において搬送路Wを概ね前後から挟んで互いに対向すると共に互いに当接する一対のローラにより構成されている。排出ローラ対26は、モータ(図示せず)から所定のギア(図示せず)等を介して駆動力が伝達されることにより、排出ニップ部NP2において搬送方向に沿うように、それぞれ、搬送路Wの前側のローラが
図2中で時計回りに排出ローラ周速度V2で、搬送路Wの後側のローラが
図2中で反時計回りに排出ローラ周速度V2で回転する。このため排出ローラ対26は、搬送路W上にある用紙Pに対して上側後方向へ向かう駆動力を伝達する。この排出ローラ周速度V2は、定着器周速度V1と同等に設定されている。具体的に、排出ローラ周速度V2は、定着器周速度V1に対して、±1.2[%]の範囲の速度に収まるように設定されている。このため、用紙Pが搬送される搬送速度V0は、定着器周速度V1及び排出ローラ周速度V2と同等になっている。
【0035】
ここで、
図2に実線で示す用紙最短挟持状態ルートRTsのように、用紙Pが、ローラセパレータ32に画像印刷面が接触し、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2とによって挟持された状態における、該用紙Pに沿った定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間の長さを最短挟持間隔とする。この最短挟持間隔は、画像形成装置1において取り扱われる用紙Pのうち搬送方向の長さが最も短い用紙Pである最小用紙における搬送方向の長さよりも十分に短く設定されている。このため、用紙Pは、搬送方向の下流側端部が排出ニップ部NP2に到達した際、搬送方向の上流側が定着ニップ部NP1に未だ挟持されている状態となる。
【0036】
また、用紙Pが用紙最短挟持状態ルートRTsに沿っているとき、該用紙Pと上側排紙搬送ガイド面24uSとの間隔は、該用紙Pと下側排紙搬送ガイド面24dSとの間隔よりも十分に狭く設定されている。
【0037】
ところで、用紙Pは、重力の影響、用紙P自体の剛性(こし)、吸湿の状態や、定着されたトナー量等の種々の条件により、定着ニップ部NP1を通過してから排出ニップ部NP2に到達するまで、様々な搬送ルートを通る。例えば、
図2に破線で示す用紙理想ルートRTiのように、用紙Pが定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において、下側排紙搬送ガイド面24dS側へ弛みをもった状態で搬送されると、画像印刷面が上側排紙搬送ガイド面24uSと接触しないため、理想的である。一方、用紙Pが定着ニップ部NP1に挟持された状態で定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上側排紙搬送ガイド面24uS側(上側)に向かって排出されると、画像印刷面が上側排紙搬送ガイド面24uSと接触する可能性があるため、トナー画像が擦られ、画像不良になる可能性がある。
【0038】
[1-3.定着排出部の動作]
以下では、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間における様々な用紙Pの搬送状態について説明する。
【0039】
[1-3-1.理想的な搬送の状態の場合]
用紙Pが、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し下側排紙搬送ガイド面24dS側(下側)に向かって排出され、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pに弛みがある用紙理想ルートRTi(
図2)で搬送される場合について説明する。
【0040】
この場合、定着ニップ部NP1から排出された用紙Pは、定着ニップ部NP1の定着器周速度V1で搬送される。用紙Pは、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し下方向へ向かって排出されたため、下側へ弛んでいる状態になり、ローラセパレータ32には接触せずに、定着器周速度V1を維持したまま搬送方向の下流側に向かって搬送される。
【0041】
続いて用紙Pは、排出ニップ部NP2に噛み込まれることにより排出ローラ周速度V2で搬送される。このとき、排出ローラ周速度V2は定着器周速度V1と同等であるため、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pの搬送速度V0は定着器周速度V1及び排出ローラ周速度V2と同等で維持される。このため用紙Pは、弛んでいる状態を維持したまま、排出ローラ周速度V2(すなわち定着器周速度V1)で搬送される。
【0042】
このとき、用紙Pは、用紙理想ルートRTiから、用紙最短挟持状態ルートRTsへ向かって搬送ルートが変化しつつ搬送される可能性はある。しかしながら、最短挟持間隔と、用紙Pの搬送方向の長さとの関係から、用紙Pが用紙最短挟持状態ルートRTsへ変化しきる前の段階で、該用紙Pの搬送方向の上流側端部が定着ニップ部NP1から排出される。このため用紙Pは、ローラセパレータ32に押し付けられることなく搬送される。
【0043】
[1-3-2.用紙がローラセパレータに向かって排出された場合]
一方、用紙Pが、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上側排紙搬送ガイド面24uS側(上側)に向かって排出され、ローラセパレータ32に接触するルートで搬送される場合について説明する。
【0044】
この場合、定着ニップ部NP1から排出された用紙Pは、定着ニップ部NP1の定着器周速度V1で搬送される。用紙Pは、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上方向へ向かって排出されたため、搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32の周側面に接触する。このとき用紙Pは、定着ニップ部NP1に挟持された片持ち状態で定着ニップ部NP1から押し出される力で、用紙Pの剛性によりローラセパレータ32に押圧されるように接触する。またこのとき用紙Pは、搬送方向の下流側端部が、定着器周速度V1よりも遅いセパレータ周速度V3で回転するローラセパレータ32の周側面から、定着器周速度V1-セパレータ周速度V3の速度差の分だけ、搬送方向の上流側へ戻される力を受ける。このため用紙Pは、ローラセパレータ32への押圧が維持される限り、定着器周速度V1とセパレータ周速度V3との速度差の影響により、
図4に示すように、ローラセパレータ32との接触箇所よりも搬送方向の上流側において、下側への弛みが発生していく。用紙Pは、弛みが生じることにより、用紙理想ルートRTiか、それに近い搬送ルートで搬送される。
【0045】
また用紙Pは、ローラセパレータ32の周側面に接触する際、搬送方向の上流側端部が定着ニップ部NP1に挟持された片持ち状態となっている。このため用紙Pは、ローラセパレータ32の周側面に接触した際、該ローラセパレータ32へ強く押し付けられる力を受けないため、画像印刷面がローラセパレータ32と擦れてトナー画像が擦れてしまうことはない。
【0046】
また上述したように、用紙最短挟持状態ルートRTsにある用紙Pと上側排紙搬送ガイド面24uSとの間隔は、用紙最短挟持状態ルートRTsにある用紙Pと下側排紙搬送ガイド面24dSとの間隔よりも十分に狭く設定されている。このため用紙Pは、搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32の周側面に接触した際に、ローラセパレータ32との接触箇所よりも搬送方向の上流側において上側へ弛んだとしても、搬送されるに連れて、より空間が大きく空いている下側へ弛むこととなる。
【0047】
このように用紙Pは、ローラセパレータ32により、搬送方向の下流側端部近傍に弛むきっかけを与えられると、搬送されるに連れて、搬送方向の上流側も弛んでいく。続いて用紙Pは、排出ニップ部NP2に噛み込まれることにより排出ローラ周速度V2で搬送される。このとき、排出ローラ周速度V2は定着器周速度V1と同等であるため、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pの搬送速度V0は定着器周速度V1及び排出ローラ周速度V2と同等で維持される。このため用紙Pは、弛んでいる状態を維持したまま、排出ローラ周速度V2(すなわち定着器周速度V1)で搬送される。
【0048】
このとき、用紙Pは、用紙理想ルートRTiに近い状態から、用紙最短挟持状態ルートRTs(
図4)へ向かって搬送ルートが変化しつつ搬送される可能性はある。しかしながら、上述したように、最短挟持間隔と、用紙Pの搬送方向の長さとの関係から、用紙Pが用紙最短挟持状態ルートRTsへ変化しきる前の段階で、該用紙Pの搬送方向の上流側端部が定着ニップ部NP1から排出される。このため用紙Pは、ローラセパレータ32に押し付けられることなく搬送される。
【0049】
また用紙Pは、搬送方向の下流側端部が排出ニップ部NP2に到達した際、排出ニップ部NP2に挟持される箇所よりも搬送方向の上流側は、下側に撓んでいるためローラセパレータ32よりも下方に位置している。このため用紙Pは、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2とによって挟持されたとき、ローラセパレータ32の周側面へ押し付けられる力を受けないため、画像印刷面がローラセパレータ32と擦れてトナー画像が擦れてしまうことはない。
【0050】
[1-4.効果等]
以上の構成において画像形成装置1は、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間に配されたローラセパレータ32を、搬送速度V0(すなわち定着器周速度V1)よりも低速の周速度であるセパレータ周速度V3で回転させるようにした。このため画像形成装置1は、用紙Pがローラセパレータ32側へ向かって上方向へ定着ニップ部NP1から排出された際に、用紙Pがローラセパレータ32に接触すると、定着器周速度V1とセパレータ周速度V3との速度差により、ローラセパレータ32から用紙Pへ、用紙Pを搬送方向の上流側へ戻すような力を加えることができる。
【0051】
これにより画像形成装置1は、定着ニップ部NP1により用紙Pを搬送方向の下流側へ押し出している間、ローラセパレータ32と用紙Pとの接触箇所よりも搬送方向の上流側をローラセパレータ32から離間する下方向へ弛ませることができる。よって画像形成装置1は、ローラセパレータ32に強く押し付けられないか、又は接触しない搬送ルートを通るように、用紙Pの搬送ルートを矯正できる。
【0052】
かくして画像形成装置1は、用紙Pの画像印刷面がローラセパレータ32に強く押し付けられることによる画像印刷面の擦れを防止でき、用紙Pの変形や画像不良の発生を防止し、印刷品位を保つことができる。
【0053】
ここで、仮にローラセパレータ32が
図2中で時計回りに回転していない場合、用紙Pの搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32に接触した際に、用紙Pが上方向へ向かい、ローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間に入り込み用紙ジャムが発生してしまう可能性がある。
【0054】
これに対し画像形成装置1は、定着ニップ部NP1に沿って後方へ向かう仮想的な定着ニップ部延長線Lよりも下端部が上側(すなわち上側排紙搬送ガイド面24uS側)に位置するように、ローラセパレータ32を配置すると共に、ローラセパレータ32を
図2中で時計回りに回転させるようにした。このため画像形成装置1は、ローラセパレータ32の周側面における、上側排紙搬送ガイド面24uSから離隔する側である下半分において、用紙Pがローラセパレータ32に接触した際に、用紙Pの搬送方向に沿う方向である後方に向かう成分を含む力を用紙Pに加えることができる。
【0055】
よって画像形成装置1は、ローラセパレータ32に用紙Pの搬送方向の下流側端部が接触した際に、用紙Pの搬送方向の下流側端部に対し、ローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間から離れる方向である、下方向及び後方向へ向かう力を加え、ローラセパレータ32の下側に案内することができる。
【0056】
これにより画像形成装置1は、用紙Pがローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間に入り込み用紙ジャムが発生してしまうことを防止できる。
【0057】
以上の構成によれば画像形成装置1は、媒体としての用紙Pを挟持して搬送方向の下流側へ送り出す定着ニップ部NP1と、定着ニップ部NP1よりも搬送方向の下流側に設けられ、用紙Pを挟持して搬送方向の下流側へ送り出す排出ニップ部NP2と、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間に配され、用紙Pが搬送される速度である媒体搬送速度としての搬送速度V0よりも低速のローラ周速度としてのセパレータ周速度V3で回転するローラセパレータ32とを設けるようにした。
【0058】
これにより画像形成装置1は、用紙Pがローラセパレータ32側へ向かって定着ニップ部NP1から排出された際に、用紙Pがローラセパレータ32に接触すると、搬送速度V0とセパレータ周速度V3との速度差により、ローラセパレータ32から用紙Pへ、用紙Pを搬送方向の上流側へ戻すような力を加え、ローラセパレータ32から離隔するように用紙Pを弛ませることができる。
【0059】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、第2の実施の形態による画像形成装置101は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、定着排出部14に代わる定着排出部114を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0060】
[2-2.定着排出部の構成]
図2及び
図3と対応する部材に同一符号を付した
図5及び
図6に示すように、第2の実施の形態による定着排出部114は、第1の実施の形態による定着排出部14と比較して、ローラ40、ばね42及びローラ支持部44が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0061】
駆動源としてのローラ40は、ローラセパレータ32における左端部よりもやや右側の下側に配置され、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、周側面の一部分をローラセパレータ32の周側面に接触させている。このローラ40は、モータ(図示せず)から所定のギア(図示せず)等を介して駆動力が伝達されることにより、
図5中で反時計回りにセパレータ周速度V3で回転している。このセパレータ周速度V3は、第1の実施の形態と同様に、定着器周速度V1の25~50[%]程度に設定されている。
【0062】
ローラセパレータ32は、左右両端部が円筒形状のローラ支持部44により回転可能に支持されている。またローラ支持部44は、通常状態よりも圧縮された状態の付勢部材としてのばね42の下端部が固定されており、該ばね42から、下方向に向かって付勢されている。このためローラセパレータ32は、ばね42の付勢力によりローラ40に任意の押圧力で押し付けられている。
【0063】
このためローラセパレータ32は、
図5及び
図6に示すように、ローラ40に押し付けられている間は、ローラ40から駆動力が伝達されることにより、ローラ40の回転に従動して
図5中で時計回りにセパレータ周速度V3で回転する。一方、ローラセパレータ32は、
図5及び
図6と対応する部材に同一符号を付した
図8及び
図9に示すように、用紙Pが下側から接触することによりばね42の付勢力を上回る力を受けてばね42が圧縮され、ローラセパレータ32が持ち上げられた場合は、ローラ40から離隔する。このためローラセパレータ32は、ローラ40から駆動力が伝達されなくなり、接触する用紙Pの搬送方向の下流側への移動に従動して
図8中で時計回りに搬送速度V0で回転する。
【0064】
[2-3.定着排出部の動作]
以下では、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間における様々な用紙Pの搬送状態について説明する。
【0065】
[2-3-1.理想的な搬送の状態の場合]
用紙Pが、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し下側排紙搬送ガイド面24dS側(下側)に向かって排出され、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pに弛みがある用紙理想ルートRTi(
図5)で搬送される場合について説明する。
【0066】
この場合、定着ニップ部NP1から排出された用紙Pは、定着ニップ部NP1の定着器周速度V1で搬送される。用紙Pは、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し下方向へ向かって排出されたため、下側へ弛んでいる状態になり、ローラセパレータ32には接触せずに、定着器周速度V1を維持したまま搬送方向の下流側に向かって搬送される。
【0067】
続いて用紙Pは、排出ニップ部NP2に噛み込まれることにより排出ローラ周速度V2で搬送される。このとき、排出ローラ周速度V2は定着器周速度V1と同等であるため、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pの搬送速度V0は定着器周速度V1及び排出ローラ周速度V2と同等で維持される。このため用紙Pは、弛んでいる状態を維持したまま、排出ローラ周速度V2(すなわち定着器周速度V1)で搬送される。
【0068】
[2-3-2.用紙がローラセパレータに向かって排出された場合]
一方、用紙Pが、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上側排紙搬送ガイド面24uS側(上側)に向かって排出され、ローラセパレータ32に接触するルートで搬送される場合について説明する。
【0069】
この場合、定着ニップ部NP1から排出された用紙Pは、定着ニップ部NP1の定着器周速度V1で搬送される。用紙Pは、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上方向へ向かって排出されたため、搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32の周側面に接触する。このとき用紙Pは、定着ニップ部NP1に挟持された片持ち状態で定着ニップ部NP1から押し出される力で、用紙Pの剛性によりローラセパレータ32に押圧されるように接触する。またこのときローラセパレータ32は、用紙Pから押圧される力を受けるが、用紙Pは定着ニップ部NP1による片持ち状態のため、用紙Pの剛性による押圧しか受けない。このためローラセパレータ32は、ばね42を縮めるほどの力は用紙Pからは受けずに、ローラ40と接触し続け、セパレータ周速度V3での回転を維持する。またこのとき用紙Pは、搬送方向の下流側端部が、定着器周速度V1よりも遅いセパレータ周速度V3で回転するローラセパレータ32の周側面から、定着器周速度V1-セパレータ周速度V3の速度差の分だけ、搬送方向の上流側へ戻される力を受ける。このため用紙Pは、ローラセパレータ32への押圧が維持される限り、定着器周速度V1とセパレータ周速度V3との速度差の影響により、
図7に示すように、ローラセパレータ32との接触箇所よりも搬送方向の上流側において、下側への弛みが発生していく。用紙Pは、弛みが生じることにより、用紙理想ルートRTiか、それに近い搬送ルートで搬送される。
【0070】
続いて用紙Pは、排出ニップ部NP2に噛み込まれることにより排出ローラ周速度V2で搬送される。このとき、排出ローラ周速度V2は定着器周速度V1と同等であるため、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間において用紙Pの搬送速度V0は定着器周速度V1及び排出ローラ周速度V2と同等で維持される。このため用紙Pは、弛んでいる状態を維持したまま、排出ローラ周速度V2(すなわち定着器周速度V1)で搬送される。
【0071】
[2-3-3.用紙が定着ニップ部と排出ニップ部とに挟持された状態で突っ張った状態になった場合]
次に、通常は発生しない状態ではあるものの、
図8に実線で示す用紙突張状態ルートRTtのように、用紙Pがローラセパレータ32に押し付けられつつ、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2とに挟持され突っ張る用紙突張状態になった場合について説明する。
【0072】
この用紙突張状態は、例えば、定着器11の媒体搬送速度が排出ローラ周速度V2よりも遅い速度になった場合に発生する。加圧ローラ22は、経年劣化で回転速度が遅くなることはない。しかしながら、加圧ローラ22の表面への異物付着による媒体搬送力の低下や、ゴム層の潰れによる外径変化により、定着器11の媒体搬送速度が定着器周速度V1よりも低下する可能性がある。この場合、定着器周速度V1は排出ローラ周速度V2よりも遅くなる。このため用紙Pの搬送方向の下流側端部が排出ニップ部NP2に到達すると、定着ニップ部NP1が用紙Pを繰り出す速度よりも速く定着ニップ部NP1から排出ローラ対26が用紙Pを搬送方向の下流側へ引っ張るようになる。それに加えて、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間の搬送路Wは、後方かつ上方へ向かって湾曲している。このため、加圧ローラ22が定着器周速度V1よりも遅い速度で回転するようになった場合に、用紙Pが、定着ニップ部NP1から定着ニップ部平行排出方向に対し上側排紙搬送ガイド面24uS側(上側)に向かって排出され、用紙Pの搬送方向の下流側端部が排出ニップ部NP2に到達すると、用紙突張状態になる可能性がある。このとき用紙Pは、搬送速度V0(すなわち排出ニップ部NP2の排出ローラ周速度V2)で搬送されつつ、ローラセパレータ32に下側から接触した状態で突っ張っている。
【0073】
このためローラセパレータ32は、用紙Pの張力による押圧で上方向へ持ち上げられ、ローラ40から離隔し、ローラ40から駆動力が伝達されなくなる。ローラセパレータ32は、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との両方に用紙Pが挟持されている間は、用紙Pが両持ち状態であるため、片持ち状態の場合と比較して、上方向へ強く押圧され、ばね42が圧縮されつつ持ち上げられる。
【0074】
このときローラセパレータ32は、ローラ40からのセパレータ周速度V3の駆動力が伝達されなくなると同時に、用紙Pから押圧されて搬送速度V0の駆動力を受け、用紙Pの搬送方向の下流側への移動に従動して、セパレータ周速度V3よりも高速である搬送速度V0(すなわち排出ローラ周速度V2)で回転する。
【0075】
用紙Pの搬送方向の上流側端部が定着ニップ部NP1から排出されると、用紙Pは排出ニップ部NP2による片持ち状態となり、ばね42を圧縮するほどの力が用紙Pからローラセパレータ32へ加わらなくなる。このためローラセパレータ32は、下方向へ下がりローラ40と接触し、ローラ40からセパレータ周速度V3の駆動力を受け、セパレータ周速度V3で回転する。
【0076】
ところで、用紙突張状態においても用紙Pがローラセパレータ32に接触しない程度にローラセパレータ32を現在の位置よりも上側に配置し、用紙突張状態になっても、用紙Pがローラセパレータ32に接触しないようにすることも考えられる。しかしながら、画像形成装置1内部においてローラセパレータ32を配置可能なスペースは限られているため、ローラセパレータ32を用紙突張状態においても用紙Pがローラセパレータ32に接触しない程度に上方に配置することは困難である。
【0077】
[2-4.効果等]
以上の構成において画像形成装置101は、ローラ40から駆動を伝達させてローラセパレータ32をセパレータ周速度V3で従動するように回転させるようにした。これと共に画像形成装置101は、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2とで両持ち状態で突っ張った用紙Pがローラセパレータ32を上方へ押圧した際は、用紙Pによりローラセパレータ32をローラ40から離間させてローラ40からの駆動力を遮断し、ローラセパレータ32に用紙Pから搬送力を伝達させて、セパレータ周速度V3よりも高速の周速度である搬送速度V0で従動するように回転させるようにした。すなわち画像形成装置101は、ローラセパレータ32を、通常時はセパレータ周速度V3でローラ40に従動回転させる一方、用紙Pが両持ち状態で突っ張ってローラセパレータ32に接触した場合は用紙Pに従動回転させるように切り替えるようにした。
【0078】
このため画像形成装置101は、搬送速度V0で移動する用紙Pがローラセパレータ32に接触した際に、搬送速度V0よりも低速であるセパレータ周速度V3で回転していたローラセパレータ32を、搬送速度V0と等速で回転させることができる。よって画像形成装置101は、移動速度の早い用紙Pが、用紙Pの移動速度よりも遅い回転速度で回転するローラセパレータ32に接触し、速度差により画像印刷面が擦れてしまうことを防止できる。これにより画像形成装置101は、用紙Pの画像印刷面がローラセパレータ32に強く接触してトナー画像が擦られ、画像不良になってしまうことを防止できる。
【0079】
その他の点においても、第2の実施の形態による画像形成装置101は、第1の実施の形態による画像形成装置1とほぼ同様の作用効果を奏し得る。
【0080】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、セパレータ周速度V3を、定着器周速度V1の25~50[%]程度にする場合について述べた。本発明はこれに限らず、セパレータ周速度V3を、定着器周速度V1の0[%]以上25[%]未満や50[%]よりも大きく100[%]未満等、種々の値としても良い。要は、セパレータ周速度V3を搬送速度V0(すなわち定着器周速度V1)よりも低速にすれば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0081】
ここで、セパレータ周速度V3を、定着器周速度V1に対し低速にすると、用紙Pがローラセパレータ32に接触した際に用紙Pを弛みやすくできるものの、用紙Pの搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32に接触した際に、用紙Pが上方向へ向かい、ローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間に入り込みやすくなる。一方、セパレータ周速度V3を、定着器周速度V1よりも低速であるものの高速にすると、用紙Pの搬送方向の下流側端部がローラセパレータ32に接触した際に、用紙Pがローラセパレータ32と上側排紙搬送ガイド面24uSとの隙間に入り込みにくくなるものの、用紙Pがローラセパレータ32に接触した際に搬送方向の上流側へ戻される力が弱くなり、用紙Pが下側排紙搬送ガイド面24dSに向かって弛みにくくなる。これらを考慮し、画像形成装置1は、少なくとも、セパレータ周速度V3を、定着器周速度V1の50[%]以下にすると良い。
【0082】
また、用紙Pが固かったり厚かったりして剛性が高い場合、弛みにくくなり、弛ませるためにセパレータ周速度V3と定着器周速度V1との大きな速度差が必要になるため、セパレータ周速度V3を定着器周速度V1に対し特に低速にすれば良い。一方、用紙Pが柔らかかったり薄かったりして剛性が低い場合、弛みやすくなり、弛ませるために必要なセパレータ周速度V3と定着器周速度V1との速度差は小さくなるため、セパレータ周速度V3を定着器周速度V1よりも低速かつ定着器周速度V1に近い速度にすれば良い。
【0083】
さらに上述した第2の実施の形態においては、用紙Pが下側から接触することにより、ばね42の付勢力を上回る力を受けてばね42が圧縮されると、ローラセパレータ32が持ち上げられる場合について述べた。本発明はこれに限らず、用紙突張状態になる可能性があるタイミングである、用紙Pの搬送方向の下流側端部が排出ニップ部NP2に到達したことをセンサにより検出すると、アクチュエータを駆動してローラセパレータ32を持ち上げても良い。その場合、用紙突張状態ルートRTtではなく用紙理想ルートRTiで用紙Pが搬送された場合であっても、ローラセパレータ32が持ち上がることになるが、特に問題はない。
【0084】
さらに上述した第1の実施の形態においては、定着ニップ部NP1と排出ニップ部NP2との間に配されたローラセパレータ32を含む定着排出部14に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、媒体を受け渡しするユニット間に配されたローラや、媒体を搬送するローラ間に配されたローラ等、媒体を搬送し受け渡す各部に本発明を適用しても良い。この場合、画像印刷面のトナーが未だ熱い状態であり外力で変形しやすい状態である、定着ニップ部NP1により加熱された直後に本発明を適用すると、本発明の効果を顕著に奏する。
【0085】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成装置1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、定着器を有するファクシミリ機、MFP(MultiFunction Printer:複合機)、複写機等の装置にも本発明を適用して良い。
【0086】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0087】
さらに上述した第1の実施の形態においては、定着ニップ部としての定着ニップ部NP1と、排出ニップ部としての排出ニップ部NP2と、ローラとしてのローラセパレータ32とによって、画像形成装置としての画像形成装置1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる定着ニップ部と、排出ニップ部と、ローラとによって、画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、画像形成装置に画像を印刷させるコンピュータの他、イメージスキャナやファクシミリ装置、或いは複写機等、画像に関する種々の処理を行う種々の電子機器でも利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1、101……画像形成装置、2……装置筐体、3……画像形成ユニット、4……感光体ドラム、5……トナーカートリッジ、6……転写ユニット、7……搬送ベルト、9……トレイ、10……ホッピングローラ、11……定着器、12……スタッカ、14、114……定着排出部、20……定着ベルト、22……加圧ローラ、24……排紙搬送ガイド、24u……上側排紙搬送ガイド、24d……下側排紙搬送ガイド、24uS……上側排紙搬送ガイド面、24dS……下側排紙搬送ガイド面、26……排出ローラ対、28……セパレータ、30……板金セパレータ、32……ローラセパレータ、40……ローラ、42……ばね、44……ローラ支持部、NP1……定着ニップ部、NP2……排出ニップ部、Rp……媒体通過範囲、V0……搬送速度、V1……定着器周速度、V2……排出ローラ周速度、V3……セパレータ周速度、RTi……用紙理想ルート、RTt……用紙突張状態ルート、RTs……用紙最短挟持状態ルート、P……用紙。