(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】画像検出装置およびそれを用いた情報機器
(51)【国際特許分類】
G06V 40/13 20220101AFI20240528BHJP
A61B 5/1172 20160101ALI20240528BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240528BHJP
【FI】
G06V40/13
A61B5/1172
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020129973
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄二
(72)【発明者】
【氏名】宇都 孝行
(72)【発明者】
【氏名】白石 海由
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215967(JP,A)
【文献】特開2003-263628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0097699(US,A1)
【文献】特開2011-183570(JP,A)
【文献】特開2004-245925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/12 -40/ 13
G06T 1/00
A61B 5/117- 5/1178
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子、発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー、及びノイズカット層を有し、前記発光素子から出射される波長域Aの光を用いて認証を行う画像検出装置であって、
前記ノイズカット層が、互いに異なる複数の熱可塑性樹脂層が交互に11層以上積層した多層積層フィルムであり、
前記ノイズカット層の一方の表面又は両表面に、波長域Aの光を透過し、波長域Bの光を吸収する色素を含む粘着層を有し、
前記ノイズカット層の波長域Aにおける平均透過率が50%以上であり、
波長域Bにおける平均透過率が20%以下であり、
前記波長域Aが、最大強度に対して20%以上の強度を有し、かつ400nm以上700nm以下の間に存在する波長域であり、
かつ、前記波長域Bが、650nm以上750nm以下の波長域であることを特徴とする、画像検出装置。
【請求項2】
前記波長域Aが400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満、600nm以上700nm以下の少なくとも一つの波長域である、請求項1に記載の画像検出装置。
【請求項3】
視野角制御層を更に含む、請求項1または2に記載の画像検出装置。
【請求項4】
前記視野角制御層が、マイクロレンズアレイ層及びコリメーター層の少なくとも一方を含む、請求項3に記載の画像検出装置
。
【請求項5】
前記多層積層フィルムの厚みが200μm以下である、請求項
1~4の何れかに記載の画像検出装置。
【請求項6】
前記多層積層フィルムの一方の表面又は両表面に粘着層を有し、かつ前記粘着層の厚みが30μm以下である、請求項
1~5の何れかに記載の画像検出装置。
【請求項7】
前記発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー、前記ノイズカット層、前記視野角制御層、及び前記発光素子がこの順に位置する、請求項
3に記載の画像検出装置。
【請求項8】
請求項1~
7の何れかに記載の画像検出装置備えることを特徴とする、情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検出装置およびそれを用いた情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティシステムの一つとして、事前に画像を登録して検知した画像と一致すると認証を行う画像検出装置がある。そして、このような画像検出装置については、画像を検出するための光源を装置内に内蔵したものが提案されている(特許文献1~2)。
【0003】
このような画像検出装置は、光源から照射した光を検出対象で反射させて、その反射光パターンを用いて認証を行うが、その際に検知対象からの反射光以外の方向から侵入するノイズ光による認証精度低下が問題となることがある。実際、このようなノイズ光を防ぐ手段として、遮光部材が提案されている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-182068号公報
【文献】特開2020-35327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2が開示する光源を内蔵した画像検出装置は、屋外や特定の照明環境下では画像の認証精度が著しく低下する課題があった。本発明は、このような課題を解決し、屋外や特定の照明環境下でも画像の認証精度を高く保つことができる画像検出装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記の課題を解決せんとするものである。すなわち、本発明の画像検出装置は、発光素子、発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー、及びノイズカット層を有し、前記発光素子から出射される波長域Aの光を用いて認証を行う画像検出装置であって、前記ノイズカット層の波長域Aにおける平均透過率が50%以上であり、波長域Bにおける平均透過率が20%以下であり、前記波長域Aが、最大強度に対して20%以上の強度を有し、かつ400nm以上700nm以下の間に存在する波長域であり、かつ、前記波長域Bが、650nm以上750nm以下の波長域であることを特徴とする、画像検出装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、従来では画像の認証精度が著しく低下する屋外や特定の照明環境下であっても、高い精度で画像を認証することができる画像検出装置およびそれを用いた情報機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】視野角制御層を含んだ本発明の画像検出装置の一例を示す模式図
【
図6】本発明の画像検出装置を備える情報機器の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者等は、従来の画像検出装置は画像を検出するセンサーの受光感度は光源から照射される光の波長範囲よりも広いことが多く、検知対象を透過したり、検知対象の表面で乱反射したりして、認証に用いる光源光以外の波長範囲の光がノイズとなることで、画像の認証精度を低下させていることを突き止めた。さらに本発明者らは、光源から照射される光の波長範囲における透過率は高く、それ以外の波長範囲における透過率は低いノイズカット層を用いることで、画像認証精度を高めることができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の画像検出装置は、発光素子、発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー、及びノイズカット層を有し、前記発光素子から出射される波長域Aの光を用いて認証を行う画像検出装置であって、前記ノイズカット層の波長域Aにおける平均透過率が50%以上であり、波長域Bにおける平均透過率が20%以下であり、前記波長域Aが、最大強度に対して20%以上の強度を有し、かつ400nm以上700nm以下の間に存在する波長域であり、かつ、前記波長域Bが、650nm以上750nm以下の波長域であることを特徴とする、画像検出装置である。以下に本発明の画像検出装置について具体的な態様を示しながら説明するが、本発明の画像検出装置は、係る例によって限定して解釈されるものではない。
【0011】
本発明の画像検出装置は、発光素子を有する。ここで発光素子とは、画像を検出するための光を照射する光源をいう。発光素子の発光方式としては、後述の波長域Aの光を発するものであれば特に制限されず、例えば、LED(Light Emitting Diode)、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)、有機EL(Electro Luminescence)を利用した有機発光ダイオードなどが挙げられる。
【0012】
本発明の画像検出装置は、発光素子から出射される波長域Aの光を検知対象に照射して、その反射光パターンを発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサーによって検知して認証を行う。この波長域Aは、少なくとも最大強度に対して20%以上の強度を有する波長域が400nm以上700nm以下、好ましくは400nm以上650nm未満に存在することが必要である。このような態様とすることで、画像検出装置の利用者は認証するための光を視認することができ、照射光に対して検知対象を適切な位置に配することができる。なお、波長域Aは、指紋認証時の光の発光強度を分光器で測定することにより特定することができる。
【0013】
また、波長域Aが400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満、600nm以上700nm以下の少なくとも一つの波長域であることも好ましい。画像検出装置の構成によっては波長域Aを特定の波長範囲に絞ることで、光の視認性を損なわずに、発光素子や発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサーの組み合わせを容易にすることや、装置サイズを小型化することができる。なお、ノイズの検知を軽減する観点から、600nm以上700nm以下の波長域については、600nm以上650nm未満とすることも好ましい。
【0014】
本発明の画像検出装置が有するセンサーは、少なくとも発光素子の発光波長に受光感度を持つことが重要である。ここで「発光素子の発光波長に受光感度を持つ」とは、発光素子の発光波長の一部または全部を検出し、これを認証に用いることが可能なことをいう。検出方式としては、外部光電効果型と内部光電効果型が挙げられ、外部光電効果型としては光電子倍増管、光電管等が挙げられる。内部光電効果型は更に光伝導型、光起電型に分けられ、光伝導型は真正光電導セル、不純物光電導セル等が挙げられる。光起電型はフォトダイオード、フォトダイオードとトランジスタを組み合わせたフォトトランジスタ、フォトレジスタ等が挙げられる。フォトダイオードとしてはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)などが挙げられる。フォトトランジスタとしては、TFT(Thin Film Transistor)を用いた薄膜フォトトランジスタ等が挙げられる。
【0015】
本発明の画像検出装置は、ノイズカット層を有する。ノイズカット層は波長域Aの平均透過率が50%以上であり、650nm以上750nm以下で定義される波長域Bの平均透過率が20%以下であることが重要である。画像を検知する波長域である波長域Aの平均透過率が50%以上であることで、画像の検出強度が高くなり画像認証精度が高まる。また、ノイズとなる波長域Bの平均透過率が20%以下となることで、画像の識別精度が高くなり画像認証精度が高まる。波長域Aの平均透過率が高くなればなるほど、波長域Bの平均透過率が低くなればなるほど、検出したい画像とノイズとのコントラスト比が高くなり画像認証精度が高くなるため好ましい。
【0016】
ノイズカット層の、波長域Aの平均透過率を50%以上とし、波長域Bの平均透過率を20%以下とする方法としては、例えば光を吸収する色素を基材表面にコーティングする方法、基材内部に含ませる方法、光を反射する誘電体多層膜及びそれらを基材表面に形成する方法などが挙げられる。
【0017】
上記観点から、ノイズカット層の波長域Aにおける平均透過率は、好ましくは85%以上であり、透過率の限界から上限は100%である。また、ノイズカット層の波長域Bにおける平均透過率は10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。透過率の限界から下限は0%である。
【0018】
また、ノイズの遮蔽波長は広い方が好ましく、その帯域は650nm~800nmが好ましい。ノイズカット層の同帯域における平均透過率は20%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。ノイズカット層としては、光を吸収する色素を表面にコーティング又は内部に含ませた基材や、光を反射する誘電体多層膜及びそれらを基材表面に形成したものなどが挙げられる。
【0019】
本発明の画像検出装置の構成について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の画像検出装置の一例を示す模式図である。
図1の態様の画像検出装置においては、発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー2(以下、単にセンサー2ということがある。)と検知対象6の間にノイズカット層3が配され、センサー2の側面に発光素子1が配されている。発光素子1から出射される波長域Aの光4が検知対象6で反射され、その反射光がノイズカット層3を透過し、センサー2がこれを受光して画像認証を行う。検知対象6を透過したり、検知対象6の外側から侵入したり、検知対象6の表面で反射した波長域Bの光5(図には検知対象6を透過したもののみを表示)はノイズカット層3で遮蔽されることで、検出したい画像とノイズとのコントラスト比が高くなり画像認証精度が高くなる。ここで、センサー2とノイズカット層3の間に接着層や粘着層を設けることも可能である。また、ノイズカット層3と検知対象6の間に、ガラスなどの透明支持層を設けることも可能である。図示はしていないが、装置を保護するカバー部、登録した画像を保存する記憶部、検知した画像と登録した画像を照合する照合部、画像認証結果など情報を表示する表示部、これらを制御する制御部なども本発明の画像検出装置に含むことができる。本発明の画像検出装置の用途としては顔認証、虹彩認証、指紋認証などが挙げられ、これらの認証手段において検知対象6はそれぞれ順に顔、虹彩、指紋となる。特に指紋認証は本発明の画像検出装置に指を接触させて認証を行うため、検知対象6である指の外側から侵入する波長域Bの光5、検知対象の表面で反射する波長域Bの光5はほとんど存在せず、画像認証精度を高くすることができるため好ましい。
【0020】
図2は本発明の画像検出装置の一例を示す模式図であり、
図2の態様の画像検出装置においては、センサー2と検知対象6の間に発光素子を含む層7が配されている。
図2のような構成とすることで発光素子の設置位置の制限がなくなり画像検出装置の小型化が可能となる。このような態様においては、発光素子から出射される波長域Aの光4を検知対象6が反射してセンサー2が受光するため、発光素子を含む層7は、認証精度を高くする観点から、波長域Aの光の平均透過率が10%以上であることが好ましい。発光素子を含む層7の波長域Aの光の平均透過率を高める方法としては、例えば、透明基板上に発光素子を設置又は形成することで、発光素子や配線の存在しない部分で波長域Aの光を透過させる方法が挙げられる。また、透明基板上に発光素子を複数設置又は形成することも好ましく、例えば、5μm~100μmの四方のサイズの発光素子を5μm~100μmの間隔で格子状などの形状で配置することが好ましい。このような発光素子を含む層7としては有機ELを発光素子として用いることが好ましい。また、発光素子から検知対象6に向かって照射された光を阻害しないためにノイズカット層3は発光素子を含む層7の下部(センサー2側)に配置することが好ましい。
【0021】
本発明の画像検出装置は、画像認証精度を高める観点から、視野角制御層を更に含むことが好ましい。視野角制御層を含んだ本発明の画像検出装置の一例を示す模式図を
図3に示す。検知対象6で反射された波長域Aの光は通常、様々な方向に反射される。この光の中でセンサー2に対して法線方向の角度から傾いた光をセンサー2が受光すると、受光した画像のピントがずれて画像認証精度が低くなる。そこで、
図3のように視野角制御層を設けることでセンサー2が受光する光の角度を法線方向に限定することで画像認証精度を高めることができる。これらの発光素子を含む層7、センサー2、ノイズカット層3、視野角制御層8は
図3に示すように、センサー2、ノイズカット層3、視野角制御層8、発光素子を含む層7の順に位置することが好ましい。ノイズカット層3がセンサー2に接することで側面から侵入するノイズを遮蔽し易くなる。また、発光素子を含む層7が上部に位置することで発光素子から照射された光の損失を抑えて、検知対象6に照射することができる。この視野角制御層8は、マイクロレンズアレイ層及びコリメーター層の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0022】
図4はマイクロレンズアレイ層の一例を示す模式図(断面図)である。マイクロレンズアレイ層は半球状のマイクロレンズ9を基材10上に複数並べた構成を有する。このような態様とすることにより、様々な角度でマイクロレンズ9を通過した光をマイクロレンズ9の焦点距離で結像させることで受光した画像のピントを合わせることができ、画像認証精度を高めることができる。この焦点距離はマイクロレンズ9の屈折率と曲率半径で制御することができる。マイクロレンズアレイ層の材料としては、例えば、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ABS、トリアセチルセルロース等の樹脂やガラスなどが挙げられ、マイクロレンズ9と基材10の材料は同一であっても異なっていてもよい。マイクロレンズ9の曲率半径は画像検出装置の設計に合わせて設定できるが、一例として10μm~100μmが挙げられる。
【0023】
図5はコリメーター層の一例を示す模式図であり、符号11はコリメーター層の断面図を符号14はコリメーター層の上面図を示す。
図5に示す通りコリメーター層は透過部12と遮光部13が規則的に(例えば交互に)配置される構造を有し、透過部を通過する法線方向の角度の光のみ透過し、遮光部や透過部を斜めに通過する光を遮光することによって、センサー2が受光する光の角度を法線方向に限定することで画像認証精度を高める役割を担う。
図5のコリメーター層の上面
図14では、透過部12は遮光部13の中に円形かつ格子状で配置されているが、透過部12の形状や配置はこの限りではなく、透過部12は四角形や三角形などの多角形や楕円形などの形状とすることができ、また、格子状以外の形態で配置することもできる。
【0024】
透過部12は、波長域Aにおける平均透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。なお、透過部12の波長域Aにおける平均透過率の上限は、実現可能性の観点から100%となる。遮光部13は、波長域Aにおける平均透過率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下である。なお、遮光部13の波長域Aにおける平均透過率の下限は、実現可能性の観点から0%となる。透過部12の開口径は画像検出装置の設計に合わせて設定できるが一例として10μm~100μmが挙げられる。
【0025】
コリメーター層の作製方法としては、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ABS、トリアセチルセルロース等の樹脂やガラスといった材料にカーボンブラックなどの黒色材料を添加したシートを作製し、これでレーザーやメカニカルパンチャーなどで貫通孔をあける方法が挙げられる。このような方法で得られたコリメーター層は、貫通孔部分が透過部12となりそれ以外が遮蔽部13となる。また、さらに貫通孔部分に透明材料を充填させることで空隙を無くすこともできる。
【0026】
本発明の画像検出装置が有するノイズカット層として、光を吸収する色素を表面にコーティング又は内部に含ませた基材を用いる場合は、その光を吸収する色素は、有機系顔料や染料を用いることができる。有機系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アニリンブラック、アルカリブルー、フタロシアニン系顔料、シアニン系顔料などが挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、縮合多環系染料、反応染料、カチオン染料などが挙げられる。
【0027】
コーティング方法としてはハードコートや、粘着層、接着層などに上記色素を含有させて基材表面に形成コーティング層を形成させる方法が挙げられる。また、基材自体に上記色素を含ませる方法も挙げられる。コーティング層の材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、オレフィン樹脂などが挙げられる。コーティング層は検知する画像を透過し認証精度を高める観点から透明性が高いことが好ましい。また、その厚みは画像検出装置に組み込む際の装置設計の容易さや、画像検出装置に視野角制御層を更に含ませた場合に、視野角制御層によるピント合わせを阻害させない観点から薄い方が好ましく、具体的には50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。コーティング層の厚みの下限は特に設けないが、ハンドリングの観点から1μm程度である。基材としては、例えば、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ABS、トリアセチルセルロース等の樹脂やガラスなどを好適に用いることができる。基材は透明であることが好ましく、また、基材の厚みは薄い方が好ましく、より具体的には、100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。下限は特に設けないがハンドリングの観点から10μm程度である。また、基材を用いずに、コーティング層をセンサーの上に直接形成してもよい。
【0028】
本発明の画像検出装置が有するノイズカット層として光を反射する誘電体多層膜を用いる場合は、少なくとも屈折率の異なる層が交互に積層された構成であり、層としては無機物を主成分とする無機層と有機物を主成分とする有機層を用いることができる。誘電体多層膜においては、屈折率の異なる2種類の材料Aと材料Bが交互に積層された構成ではその反射波長は下記(1)式で決定され、下記(1)式を用いて波長域Aの平均透過率を高く波長域Bの平均透過率を低くすることが可能である。
【0029】
【0030】
ここでλは入射角度を0°とした際の反射波長nAは材料A層の面内屈折率、dAは材料A層の厚み、nBは材料B層の面内屈折率、dBは材料B層の厚みである。
【0031】
誘電体多層膜の一例として、基材(有機層若しくはその積層体)の少なくとも一方の表面に無機層を形成させたフィルムが挙げられる。このとき無機層の材料としては、酸化チタン、チタン酸鉛、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、鉛丹、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、黄鉛、酸化タンタル、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ、シリカ(二酸化ケイ素)、フッ化マグネシウムなどが挙げられる。無機層の形成方法としては、蒸着、スパッタ、コーティング等が挙げられる。無機層を表面に形成する基材(有機層)としては、環状ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ABS、トリアセチルセルロース等の樹脂やガラスなどを主成分とする層が挙げられる。基材は認証精度を高める観点から透明性が高いことが好ましい。また、基材の厚みは、画像検出装置に組み込む際の装置設計の容易さの観点から、薄い方が好ましく100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下である。下限は特に設けないがハンドリングの観点から10μm程度である。基材は、本発明の効果を損なわない限り単層構成でも積層構成でもよい。また、このような無機層をセンサーの上に直接形成することもできる。
【0032】
続いて、有機多層膜の一例について説明する。本発明の画像検出装置におけるノイズカット層は、互いに異なる複数の熱可塑性樹脂層が交互に11層以上積層した多層積層フィルムであることが好ましい。ここでいう熱可塑性樹脂の「異なる」とは、結晶性・非晶性、光学的性質、熱的性質の何れかが異なることをいう。光学的性質が異なるとは、屈折率が0.01以上異なることをいい、熱的性質が異なるとは、融点あるいはガラス転移温度が1℃以上異なっていることを表す。なお、一方の樹脂が融点を有しており、もう一方の樹脂が融点を有していない場合や、一方の樹脂が結晶化温度を有しており、もう一方の樹脂が結晶化温度を有していない場合も異なる熱的性質を有するものとする。異なる性質を持つ熱可塑性樹脂を積層することで、それぞれの熱可塑性樹脂の単一の層のフィルムではなし得ない機能をフィルムに与えることができる。
【0033】
ここで「互いに異なる複数の熱可塑性樹脂層が交互に11層以上積層した」とは、互いに異なる熱可塑性樹脂を主成分とする複数種の熱可塑性樹脂層が、一定のユニットを繰り返すように合計11層以上配置されていることをいう。このような態様の積層構成の具体例としては、熱可塑性樹脂Aを主成分とする層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを主成分とする層(B層)とが交互に11層以上積層(A/B/A/B・・、あるいはB/A/B/A・・)されてなる構成や、A層とB層と、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bとは異なる熱可塑性樹脂Cを主成分とする層(C層)とが交互に11層以上積層されてなる構成(例えば、A/B/C/A/B/C・・・のようにA/B/Cユニットが交互に積層されている構成、A/C/B/C/A/C/B/C・・・のようにA/CユニットとB/Cユニットが交互に積層されている構成)が挙げられる。なお「熱可塑性樹脂Aを主成分とする層」とは、層を構成する樹脂全体の70質量%以上100質量%以下を熱可塑性樹脂Aが占める層をいう。また、「熱可塑性樹脂Bを主成分とする層」とは、層を構成する樹脂全体の50質量%を超えて100質量%以下を熱可塑性樹脂Bが占める層をいう。
【0034】
また、少なくとも片方の表層が200nm以上の厚みを有することによって、該表層が内層の保護層として働き、押出時のフローマークの抑制、他のフィルムや成形体とのラミネート工程及びラミネート工程後における多層積層フィルム中の内層の変形抑制、耐押圧性などの効果を持つことができる。表層の厚みは好ましくは、1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上である。表層の厚みの上限は特に設けないが、フィルム厚み増加抑制の観点から好ましくは10.0μm、より好ましくは5.0μmである。
【0035】
多層積層フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)などのポリオレフィン、シクロオレフィンとしては、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルを用いることが好ましく、ポリエステルとしては芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。
【0036】
ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6-ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0037】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0038】
上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体並びにポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体の中から選択されるポリエステルを用いることが好ましい。
【0039】
また、多層積層フィルムは2種類の層(A層、B層)の繰り返し構造を有する場合、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの組み合わせとしては、両者のガラス転移温度の差の絶対値が20℃以下である組み合わせが好ましい。ガラス転移温度の差の絶対値を20℃以下とすることにより、多層積層フィルムを製造する際の延伸不良の発生を軽減することができるためである。
【0040】
上記層構成の多層積層フィルムの熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの組み合わせとしては、熱可塑性樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることも好ましい。両者のSP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。
【0041】
さらに、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bは、同一の基本骨格を供えることも好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、他方の熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレートと同一の基本骨格であるエチレンテレフタレート骨格を含むことが好ましい。このような態様とすることにより、積層精度が高まり、さらに積層界面での層間剥離が生じにくくなる。
【0042】
同一の基本骨格を有し、かつ、異なる性質を具備させるには、共重合体を用いることが好ましい。すなわち、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、他方の樹脂は、エチレンテレフタレート単位と他のエステル結合を持った繰り返し単位とで構成された樹脂を用いるような態様である。他の繰り返し単位を入れる割合(共重合量ということがある)としては、異なる性質を獲得する必要性から樹脂の全構成単位100mol%中5mol%以上が好ましく、一方、層間の密着性や、熱流動特性の差が小さいため各層の厚みの精度や厚みの均一性に優れることから90mol%以下が好ましい。共重合量は、より好ましくは10mol%以上80mol%以下、さらに好ましくは10mol%以上50mol%未満である。また、A層とB層はそれぞれ、複数種の熱可塑性樹脂がブレンド又はアロイされ用いられることも望ましい。複数種の熱可塑性樹脂をブレンド又はアロイさせることで、1種類の熱可塑性樹脂では得られない性能を得ることができる。
【0043】
多層積層フィルムは、熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレートを主成分とし、熱可塑性系樹脂Bがジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを含んでなり、さらに、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドのうち少なくとも何れか1つの共重合成分を含んでなるポリエステルを主成分とすることも好ましい。
【0044】
多層積層フィルムの反射スペクトルは層の屈折率と厚みによって決定され、例えば屈折率の異なる2種類の材料AとBが交互に積層された構成ではその反射波長は(1)式で決定され、(1)式を用いて波長域Aの平均透過率を高く波長域Bの平均透過率を低くすることが可能である。なお、多層積層フィルムにおいて、望ましい反射波長範囲及び反射率を調整する方法は、A層とB層の面内屈折率差、積層数、層厚み分布、製膜条件(例えば延伸倍率、延伸速度、延伸温度、熱処理温度、熱処理時間)の調整等が挙げられる。反射率が高くなり積層数が少なく済むことから、A層とB層の面内屈折率差は0.02以上が好ましく、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.08以上である。多層積層フィルムの各層の層厚みは均一であってもよく、分布を持っていても良い。層厚みに分布を持たせる場合は、フィルム面の一方から反対側の面へ向かって増加または減少する層厚み分布や、フィルム面の一方からフィルム中心へ向かって層厚みが増加した後減少する層厚み分布や、フィルム面の一方からフィルム中心へ向かって層厚みが減少した後増加する層厚み分布が好ましい。層厚み分布の変化の仕方としては、線形、等比、階差数列といった連続的に変化するものや、10層から50層程度の層がほぼ同じ層厚みを持ち、その層厚みがステップ状に変化するものが好ましい。
【0045】
積層数に関しては、望む反射率に応じて設計することが好ましく、好ましくは51層以上、より好ましくは201層以上、さらに好ましくは401層以上といった積層数を取り得ることができる。一方、積層数の上限は特に設けないが、例えば、積層精度や積層装置の大型化の観点から4001層程度となる。多層積層フィルムの厚みに制限は無いが、画像検出装置の組み込む際の装置設計の容易さから厚み200μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。フィルム厚みの下限としてはハンドリング性や十分な反射特性を持たせる観点から10μmとなる。また、本発明の画像検出装置に視野角制御層を更に含ませた場合は、視野角制御層によるピント合わせを阻害させない観点から、多層積層フィルムの厚みは50μm以下が好ましい。この場合の厚みの下限値についても、同様の観点から10μmとなる。なお、多層積層フィルムの厚みはダイヤルゲージを用いた厚み計により測定することができる。
【0046】
多層積層フィルムは、フィルムの表面にプライマー層、ハードコート層、耐磨耗性層、傷防止層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、光安定化層(HALS)、熱線吸収層、印刷層、ガスバリア層、粘着層などの機能性層を有していてもよい。これらの層は単層でも積層でもよく、また、1つの層に複数の機能を持たせてもよい。また、多層積層フィルム中に、紫外線吸収剤、光安定化剤(HALS)、熱線吸収剤、結晶核剤、可塑剤などの添加剤を有していてもよい。
【0047】
本発明の画像検出装置が有する多層積層フィルムの一方の表面又は両表面に粘着層を付与した構成も取り得ることができる。粘着層は透明であることが好ましく、その主成分としては例えばアクリル樹脂などが挙げられる。粘着層の厚みが厚い場合、多層積層フィルムを画像検出装置に組み込んだ際に多層積層フィルムに歪みが発生し検出した画像の質の低下を引き起こし画像認証精度の低下を引き起こす可能性がある。また、本発明の画像検出装置に視野角制御層を更に含ませた場合は、視野角制御層によるピント合わせが阻害される可能性がある。そのため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましい。粘着層厚みの下限は特には無いが粘着力を担保する観点から5μmとなる。この粘着層に波長域Aを透過し、波長域Bを吸収する色素を添加することも好ましい。このような態様とすると、多層積層フィルムによる波長域Bの遮蔽と色素による波長域Bの遮蔽が合わさることで、センサーで受光させるノイズ光量が減少し、検出したい画像とノイズとのコントラスト比が高くなり画像認証精度が高くなる。このような色素としては、有機系顔料であれば、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アニリンブラック、アルカリブルー、フタロシアニン系顔料、シアニン系顔料などが挙げられる。染料であれば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、縮合多環系染料、反応染料、カチオン染料などが挙げられる。
【0048】
以下に本発明の画像検出装置に用いられる多層積層フィルムを製造する具体的な態様の例を以下に記すが、本発明の画像検出装置に用いられる多層積層フィルムはかかる例によって限定して解釈されるものではない。
【0049】
多層積層フィルムの積層構成が、熱可塑性樹脂Aを用いてなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを用いてなる層(B層)とが交互に11層以上積層(A/B/A/B・・)されてなる多層積層フィルムの場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から熱可塑性樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを用いる方法、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより11層以上に積層する。次いでその溶融体を、T型口金等を用いてシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸多層積層フィルムを得る。このときA層とB層の積層精度を高める方法としては、特開2007-307893号公報、特許第4691910号公報、特許第4816419号公報に記載されている方法を用いることが好ましい。また必要であれば、押田式に供給する前に各層に用いる熱可塑性樹脂を乾燥することも好ましい。
【0050】
また、多層積層フィルムの積層構成が、A層とB層と熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bとは異なる熱可塑性樹脂Cを用いてなる層(C層)とが交互に11層以上積層されてなる多層積層フィルム(例えば、A/B/C/A/B/C・・の構成を有するもの)の場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機BとC層に対応する押出機Cの3台から熱可塑性樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサー、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより11層以上に積層する。次いでその溶融体を、T型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸多層積層フィルムを得る。また必要であれば、各層に用いる熱可塑性樹脂を乾燥することも好ましい。
【0051】
続いて、この未延伸多層積層フィルムの延伸及び熱処理を施す。延伸方法としては、公知の逐次二軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法で二軸延伸することが好ましい。延伸温度は未延伸多層積層フィルムのガラス転移点温度以上、ガラス転移点温度+80℃以下の範囲にて行うことが好ましい。延伸倍率は、長手方向、幅方向それぞれ2倍~8倍の範囲が好ましく、より好ましくは3~6倍の範囲である。長手方向の延伸は、縦延伸機ロール間の速度変化を利用して延伸を行うことが好ましい。また、幅方向の延伸は、公知のテンター法を利用する。すなわち、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、フィルム両端のクリップ間隔を広げることで幅方向に延伸する。
【0052】
また、テンターでの延伸は同時二軸延伸を行うことも好ましい。同時二軸延伸を行う場合について説明する。冷却ロール上にキャストされた未延伸多層積層フィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。長手方向の延伸は、テンターのクリップ間の距離を広げることで、また、幅方向はクリップが走行するレールの間隔を広げることで達成される。本発明における延伸・熱処理を施すテンタークリップは、リニアモータ方式で駆動することが好ましい。その他、パンタグラフ方式、スクリュー方式などがあるが、中でもリニアモータ方式は、個々のクリップの自由度が高いため延伸倍率を自由に変更できる点でより優れている。
【0053】
さらに延伸後に熱処理を行うことも好ましい。熱処理温度は、延伸温度以上、A層の熱可塑性樹脂の融点-10℃以下の範囲にて行うことが好ましく、熱処理後に熱処理温度-30℃以下の範囲にて冷却工程を経ることも好ましい。また、フィルムの熱収縮率を小さくするために、熱処理工程中又は冷却工程中にフィルムを幅方向又は及び又は、長手方向に縮めること(リラックス)も好ましい。リラックスの割合としては1%~10%の範囲が好ましく、より好ましくは1~5%の範囲である。最後に巻取り機にてフィルムを巻き取ることによって多層積層フィルムを得ることができる。
【0054】
以下、本発明の情報機器について説明する。本発明の情報機器は、本発明の画像検出装置備えることを特徴とする。以下、その一例について図面を用いて説明する。
図6は本発明の画像検出装置を備える情報機器の一例を示す模式図である。
図6の情報機器はセンサー2、ノイズカット層3、視野角制御層8、発光素子を含む層7を有する画像検出装置に、タッチセンサー層15、円偏光板層16、カバー層17、筐体18を配した構成を有する。タッチセンサー層15、円偏光板層16、カバー層17、筐体18の設置やその設置場所は任意である。また、図示はしていないが、支持層、放熱層、衝撃吸収層、防水層、飛散防止層、画面保護層、加飾層などを任意に配置することもできる。さらに、図示はしていないが、登録した画像など電子情報を保存する記憶部、検知した画像と登録した画像を照合する照合部、画像認証結果など情報を表示する表示部、カメラ、スピーカー、GPS、外部に繋ぐ接続端子、これらを制御する制御部なども本発明の情報機器に含むことができる。発光素子を含む層7を表示部とすることで、情報表示と画像検知のための光の照射の両方を担うことができ好ましい。また、情報表示部のコントラスト、色域向上の観点と、画像検知のための光の波長制御の観点から発光素子を含む層7は有機ELを発光素子として用いることが好ましい。本発明の画像検出装置を備える情報機器は、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、ゲーム機、マンション等の建物のセキュリティゲートなどが挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の画像検出装置について具体的な実施例をあげて説明する。但し、以下、実施例1、3、5、6、及び8は参考例とする。
[ 物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0056】
(1)波長域A
光ファイバーを接続した分光器(浜松ホトニクス(株)製、C10083MD)その分光器と接続したパソコンを用いて、指紋認証時の光を光ファイバーに導くことで発光強度を測定し波長域Aを求めた。
【0057】
(2)平均透過率
日立製作所(株)製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)の標準構成(固体測定システム)にて、入射角度0°における波長400~800nmの透過率を1nm刻みで測定し、波長域Aと波長域Bと650nm~800nmの波長範囲についてそれぞれの平均透過率を求めた。
【0058】
(3)指紋認証テスト
光学式指紋認証機能の付いた有機ELディスプレイスマートフォンを用いた。このスマートフォンの指紋認証部分には、有機EL発光層の下側にコリメーターと指紋認証センサーが組み込まれていた。この通常構成と、コリメーターと指紋認証センサー間にノイズカット層を配置した構成について、スマートフォンの画面から50cm離れた位置に設置したランプを照射して指紋認証を実施した。指紋認証に成功した場合は○、失敗した場合は×とした。指紋認証時に指紋認証部分の発光強度を測定したところ波長域Aは440nm~476nm、503nm~561nmであった。ランプは以下の2種類をそれぞれ用いた。
ランプ1:高演色AAA昼白色 蛍光灯 20W
ランプ2:ハロゲンランプ 100W
(4)ガラス転移点温度、融点
樹脂ペレットを電子天秤で5mg計量し、アルミパッキンで挟み込みセイコーインスツルメント社(株)ロボットDSC-RDC220示差走査熱量計を用いて、JIS-K-7122(1987年)に従い、25℃から300℃まで20℃/分で昇温して測定を行った。データ解析は同社製ディスクセッションSSC/5200を用いた。得られたDSCデータからガラス転移点温度(Tg)、融点(Tm)を求めた。
【0059】
(5)屈折率
70℃で48時間にわたって真空乾燥した樹脂ペレットを280℃で溶融後、プレス機を用いてプレスし、その後急冷することで、厚み500μmのシートを作成した。作成したシートをアタゴ社製 アッベ屈折率計(NAR-4T)とNaD線ランプを用いて屈折率を測定した。
【0060】
(6)IV(固有粘度)
溶媒としてオルトクロロフェノールを用いて、温度100℃で20分溶解した後、温度25℃でオストワルド粘度計を用いて測定した溶液粘度から算出した。
【0061】
(7)積層数、積層構成
ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、日本電子(株)製 透過型電子顕微鏡(JEM-1400Plus)を用いて、加速電圧100kvの条件で観察することにより、多層積層フィルムの積層数と表層の厚みを確認した。なお、場合によってはコントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。
【0062】
(8)フィルムの厚み、各層の厚み
(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージ(2109-10)とダイヤルゲージスタンド(7002)を用いて厚みを測定した。具体的な手順は以下のとおりであり、以下最初に形成した粘着層を粘着層1、粘着層1形成後に形成した粘着層を粘着層2とする。粘着層1の厚みは既知の厚みの多層積層フィルムの片面に粘着層1を付与した後、粘着層1の外側に既知の厚みのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム(PET離型フィルム)を貼り合わせて、その積層体1の厚みを測定し「粘着層1厚み=積層体1厚み-多層積層フィルム厚み-PET離型フィルム厚み」から算出した。さらに粘着層1を付与した反対面側に粘着層2を付与して粘着層2の外側にPET離型フィルムを貼り合わせて、その積層体2の厚みを測定し「粘着層2厚み=積層体2厚み-積層体1厚み-PET離型フィルム厚み」から算出した。
【0063】
(フィルムに用いた樹脂)
樹脂A:IV=0.65のポリエチレンテレフタレート、屈折率1.58、Tg78℃、Tm254℃。
樹脂B:IV=0.64のポリエチレンナフタレートの共重合体(分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して6mol%共重合したポリエチレンナフタレート)、屈折率1.64、Tg95℃、Tm253℃。
樹脂C:IV=0.73のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分をジオール成分全体に対して33mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)、屈折率1.57、Tg80℃、Tm無し。
樹脂D:IV=0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して20mol%、スピログリコール成分をジオール成分全体に対して20mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)、屈折率1.55、Tg76℃、Tm無し。
【0064】
(実施例1)
A層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Aを、B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Dを用いた。樹脂Aおよび樹脂Dを、それぞれ、別々の押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂D=1.2になるように計量しながら、特開2007-307893号公報に記載されている方法で積層を行い、入射角度0°の反射波長が650nm~750nmの範囲になるように設計した301層フィードブロック(A層が151層、B層が150層)にて交互に合流させた。次いで、積層した溶融樹脂をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃、延伸倍率3.3倍で縦延伸を行い、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃の条件下で、4.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み37μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0065】
(実施例2)
実施例1で作成した多層積層フィルムの片面に色素としてBASF社製“LUMOGEN”(登録商標)788を5質量%添加した厚み25μmのアクリル粘着層を付与し、反対面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与してノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。なお、指紋認証テストの際には色素を添加した粘着層を上面にして配置した。
【0066】
(実施例3)
A層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Bを、B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Cを用いた。樹脂Bおよび樹脂Cを、それぞれ、別々の押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂D=1.2になるように計量しながら、特開2007-307893号公報に記載されている方法で積層を行い、入射角度0°の反射波長が650nm~800nmの範囲になるように設計した301層フィードブロック(A層が151層、B層が150層)にて交互に合流させた。次いで、積層した溶融樹脂をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃の条件下で、4.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み37μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
実施例3で作成した多層積層フィルムの片面に色素としてBASF社製“LUMOGEN”(登録商標)788を3質量%添加した厚み25μmのアクリル粘着層を付与し、反対面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。なお、指紋認証テストの際には色素を添加した粘着層を上面にして配置した。
【0068】
(実施例5)
B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Dを用いたこと以外は実施例3と同様の方法にて厚み37μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0069】
(実施例6)
B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Cを用いたこと以外は実施例1と同様の方法にて厚み37μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0070】
(実施例7)
実施例6で作成した多層積層フィルムの片面に色素としてBASF社製“LUMOGEN”(登録商標)788を5質量%添加した厚み25μmのアクリル粘着層を付与し、反対面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られたフィルム(多層積層フィルム)とノイズカット層の物性とノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。なお、指紋認証テストの際には色素を添加した粘着層を上面にして配置した。
【0071】
(実施例8)
A層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Bを、B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Cを用いた。樹脂Bおよび樹脂Cを、それぞれ、別々の押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂D=1.3になるように計量しながら、特開2007-307893号公報に記載されている方法で積層を行い、入射角度0°の反射波長が650nm~750nmの範囲になるように設計した201層フィードブロック(A層が101層、B層が100層)にて交互に合流させた。次いで、積層した溶融樹脂をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃の条件下で、4.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み25μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0072】
(実施例9)
実施例8で作成した多層積層フィルムの片面に色素としてBASF社製“LUMOGEN”(登録商標)788を5質量%添加した厚み25μmのアクリル粘着層を付与し、反対面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。なお、指紋認証テストの際には色素を添加した粘着層を上面にして配置した。
【0073】
(比較例1)
ノイズカット層を配置しない状態で指紋認証テストを行った結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
A層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Aを、B層を構成する熱可塑性樹脂として樹脂Cを用いた。樹脂Aおよび樹脂Cを、それぞれ、別々の押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が樹脂A/樹脂C=1.3になるように計量しながら、特開2007-307893号公報に記載されている方法で積層を行い、入射角度0°の反射波長が650nm~750nmの範囲になるように設計した201層フィードブロック(A層が101層、B層が100層)にて交互に合流させた。次いで、積層した溶融樹脂をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸多層積層フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃、延伸倍率3.3倍で縦延伸を行い、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃の条件下で、4.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み25μm(両表層の厚み2μm)の多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムの両表面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られた多層積層フィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。
【0075】
(比較例3)
樹脂Aを押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、Tダイに供給してシート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃、延伸倍率3.3倍で縦延伸を行い、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施した後、そのフィルム両面の処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。その後、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃の条件下で、4.0倍横延伸した後、230℃で熱処理及び5%の幅方向リラックスを実施し、100℃で冷却した後、厚み37μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に色素としてセシウム酸化タングステンを10質量%添加した厚み25μmのアクリル粘着層を付与し、反対面に厚み25μmのアクリル粘着層を付与しノイズカット層を作成した。得られたフィルムとノイズカット層の物性、及びノイズカット層を配置した指紋認証テストの結果を表1に示す。なお、指紋認証テストの際には色素を添加した粘着層を上面にして配置した。
【0076】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、従来では画像の認証精度が著しく低下する屋外や特定の照明環境下であっても、高い精度で画像を認証することができる画像検出装置およびそれを用いた情報機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:発光素子
2:発光素子の発光波長に受光感度を持つセンサー
3:ノイズカット層
4:発光素子から出射される波長域Aの光
5:波長域Bの光
6:検知対象
7:発光素子を含む層
8:視野角制御層
9:マイクロレンズ
10:基材
11:コリメーター層の断面図
12:透過部
13:遮光部
14:コリメーター層の上面図
15:タッチセンサー層
16:円偏光板層
17:カバー層
18:筐体