IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エアレスタイヤ 図1
  • 特許-エアレスタイヤ 図2
  • 特許-エアレスタイヤ 図3
  • 特許-エアレスタイヤ 図4
  • 特許-エアレスタイヤ 図5
  • 特許-エアレスタイヤ 図6
  • 特許-エアレスタイヤ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】エアレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20240528BHJP
   B60B 9/26 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60B9/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020133571
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029955
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山根 正勝
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101210(JP,A)
【文献】特開2016-130071(JP,A)
【文献】特開平01-314603(JP,A)
【文献】特開2017-081199(JP,A)
【文献】特開2020-125086(JP,A)
【文献】特開2021-066217(JP,A)
【文献】特開2021-066221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B60B 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレスタイヤであって、
接地面を有するトレッドリングと、前記トレッドリングのタイヤ半径方向の内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するためのスポークとを備え、
前記スポークは、タイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向の厚さよりも大きい板状の複数のスポーク板部を含み、
前記スポーク板部のそれぞれは、スポーク厚さ方向から見て、前記ハブ側の端縁である第1縁部と、前記トレッドリング側の端縁である第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを連結する一対の端縁である第3縁部及び第4縁部とを有し、
前記第1縁部は、前記第3縁部に対して鈍角かつ前記第4縁部に対して鋭角に延び、
前記第1縁部の厚さは、前記第4縁部から前記第3縁部にかけて漸減している、
エアレスタイヤ。
【請求項2】
前記第2縁部は、前記第3縁部に対して鋭角かつ前記第4縁部に対して鈍角に延び、
前記第2縁部の厚さは、前記第3縁部から前記第4縁部にかけて漸減している、請求項1に記載のエアレスタイヤ。
【請求項3】
前記第3縁部の厚さは、前記第2縁部から前記1縁部にかけて漸減している、請求項1又は2に記載のエアレスタイヤ。
【請求項4】
前記第4縁部の厚さは、前記第1縁部から前記第2縁部にかけて漸減している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項5】
前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さは、1.5mm以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項6】
前記第1縁部の前記第4縁部側の厚さは、前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さの2~3倍である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項7】
前記第2縁部の前記第4縁部側の厚さは、前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さに等しい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項8】
前記スポーク板部のそれぞれは、スポーク幅方向から見て、前記第1縁部側でタイヤ周方向の一方に突出するように湾曲する第1湾曲部と、前記第2縁部側でタイヤ周方向の他方に突出するように湾曲する第2湾曲部とを含み、
前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部は、それぞれ、前記第3縁部から前記第4縁部にわたり形成されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項9】
前記スポーク板部のそれぞれは、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを接続する接続部を含み、
前記第1縁部から前記接続部までのタイヤ半径方向の距離は、前記第2縁部から前記接続部までのタイヤ半径方向の距離に等しい、請求項8に記載のエアレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧空気を用いることなく、自らの構造によって荷重を支持することができるエアレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッドリングとハブとをスポークで連結したエアレスタイヤが種々知られている。例えば、下記特許文献1には、スポークの外端側の圧縮剛性を、スポークの内端側の圧縮剛性よりも大きくしたエアレスタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-081199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエアレスタイヤは、スポークのタイヤ周方向の厚さを大きくすることで耐久性能の向上を試みているが、スポークの厚さを大きくすると乗り心地性能が低下するという問題があり、乗り心地性能と耐久性能との両立に関して更なる改善が要望されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、乗り心地性能と耐久性能とを高次元で両立し得るエアレスタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアレスタイヤであって、接地面を有するトレッドリングと、前記トレッドリングのタイヤ半径方向の内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するためのスポークとを備え、前記スポークは、タイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向の厚さよりも大きい板状の複数のスポーク板部を含み、前記スポーク板部のそれぞれは、スポーク厚さ方向から見て、前記ハブ側の端縁である第1縁部と、前記トレッドリング側の端縁である第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを連結する一対の端縁である第3縁部及び第4縁部とを有し、前記第1縁部は、前記第3縁部に対して鈍角かつ前記第4縁部に対して鋭角に延び、前記第1縁部の厚さは、前記第4縁部から前記第3縁部にかけて漸減していることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第2縁部は、前記第3縁部に対して鋭角かつ前記第4縁部に対して鈍角に延び、前記第2縁部の厚さは、前記第3縁部から前記第4縁部にかけて漸減しているのが望ましい。
【0008】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第3縁部の厚さは、前記第2縁部から前記1縁部にかけて漸減しているのが望ましい。
【0009】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第4縁部の厚さは、前記第1縁部から前記第2縁部にかけて漸減しているのが望ましい。
【0010】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さは、1.5mm以上であるのが望ましい。
【0011】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第1縁部の前記第4縁部側の厚さは、前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さの2~3倍であるのが望ましい。
【0012】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第2縁部の前記第4縁部側の厚さは、前記第1縁部の前記第3縁部側の厚さに等しいのが望ましい。
【0013】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記スポーク板部のそれぞれは、スポーク幅方向から見て、前記第1縁部側でタイヤ周方向の一方に突出するように湾曲する第1湾曲部と、前記第2縁部側でタイヤ周方向の他方に突出するように湾曲する第2湾曲部とを含み、前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部は、それぞれ、前記第3縁部から前記第4縁部にわたり形成されているのが望ましい。
【0014】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記スポーク板部のそれぞれは、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを接続する接続部を含み、前記第1縁部から前記接続部までのタイヤ半径方向の距離は、前記第2縁部から前記接続部までのタイヤ半径方向の距離に等しいのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアレスタイヤにおいて、スポークは、タイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向の厚さよりも大きい板状の複数のスポーク板部を含み、前記スポーク板部のそれぞれは、スポーク厚さ方向から見て、前記ハブ側の端縁である第1縁部と、前記トレッドリング側の端縁である第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを連結する一対の端縁である第3縁部及び第4縁部とを有している。このようなスポーク板部は、接地時の衝撃を吸収しつつ高い剛性を両立することができ、エアレスタイヤの乗り心地性能と耐久性能とを両立させることができる。
【0016】
本発明のエアレスタイヤにおいて、前記第1縁部は、前記第3縁部に対して鈍角かつ前記第4縁部に対して鋭角に延び、前記第1縁部の厚さは、前記第4縁部から前記第3縁部にかけて漸減している。
【0017】
このようなスポーク板部は、第1縁部の応力が集中し易いタイヤ軸方向の中央側である第3縁部側の厚さが小さく変形し易いので、第1縁部のタイヤ軸方向の中央側の歪みを緩和し、エアレスタイヤの耐久性能を向上させることができる。また、このスポーク板部は、第1縁部の厚さが漸減しているので、応力の局所的な変化を抑制し、エアレスタイヤの乗り心地性能を向上させることができる。このため、本発明のエアレスタイヤは、乗り心地性能と耐久性能とを高次元で両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のエアレスタイヤの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のエアレスタイヤの側面図である。
図3】スポーク厚さ方向から見たスポーク板部の端面図である。
図4】スポーク板部の斜視図である。
図5図3のA方向から見たスポーク板部の端面図である。
図6図3のB方向から見たスポーク板部の端面図である。
図7図2のC-C線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のエアレスタイヤ1を示す斜視図であり、図2は、エアレスタイヤ1の側面図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態のエアレスタイヤ1は、接地面2aを有するトレッドリング2と、トレッドリング2のタイヤ半径方向内側に配されるハブ3と、トレッドリング2とハブ3とを連結するためのスポーク4とを備えている。
【0020】
ハブ3は、車両の車軸(図示省略)に固定される固定部3aを含むのが望ましい。このようなエアレスタイヤ1は、高圧空気を用いずに、ハブ3及びスポーク4によってトレッドリング2に作用する荷重を支持することができる。このため、本実施形態のエアレスタイヤ1は、パンクするおそれがない。
【0021】
本実施形態のスポーク4は、タイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向の厚さよりも大きい板状のスポーク板部5を含んでいる。このようなスポーク4は、トレッドリング2に荷重が作用したときに、ハブ3よりも上方に位置するスポーク板部5に引張力が作用し、ハブ3よりも下方に位置するスポーク板部5に圧縮力が作用することで、荷重を支持することができる。
【0022】
図3は、スポーク厚さ方向から見たスポーク板部5の端面図である。図3に示されるように、本実施形態のスポーク板部5のそれぞれは、スポーク厚さ方向から見て、ハブ3側の端縁である第1縁部6と、トレッドリング2側の端縁である第2縁部7とを含んでいる。スポーク板部5は、さらに、第1縁部6と第2縁部7とを連結する一対の端縁である第3縁部8及び第4縁部9を有するのが望ましい。このようなスポーク板部5は、接地時の衝撃吸収性と高い剛性とを両立することに好適であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能と耐久性能とを両立させることができる。
【0023】
本実施形態の第1縁部6は、第3縁部8に対して鈍角かつ第4縁部9に対して鋭角に延びている。すなわち、第1縁部6は、第3縁部8に対して鈍角の角度θ1を有し、かつ、第4縁部9に対して鋭角の角度θ2を有する端縁である。
【0024】
図4は、スポーク板部5の斜視図である。図3及び図4に示されるように、本実施形態の第1縁部6の厚さt1は、第4縁部9から第3縁部8にかけて漸減している。このようなスポーク板部5は、第1縁部6の応力が集中し易いタイヤ軸方向の中央側である第3縁部8側の厚さt2が小さく変形し易いので、第1縁部6のタイヤ軸方向の中央側の歪みを緩和し、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0025】
また、このようなスポーク板部5は、第1縁部6の厚さt1が漸減しているので、応力の局所的な変化を抑制し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。このため、本実施形態のエアレスタイヤ1は、乗り心地性能と耐久性能とを高次元で両立することができる。
【0026】
第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2は、好ましくは、1.5mm以上である。厚さt2が1.5mm以上であることで、スポーク4に必要な剛性を維持し、早期に破断することを抑制することができる。このような観点から、第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2は、より好ましくは、2.0mm以上であり、さらに好ましくは、2.5mm以上である。
【0027】
第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2は、好ましくは、4.0mm以下である。厚さt2が4.0mm以下であることで、第1縁部6のタイヤ軸方向の中央側の歪みを緩和し、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2は、より好ましくは、3.5mm以下であり、さらに好ましくは、3.0mm以下である。
【0028】
第1縁部6の第4縁部9側の厚さt3は、第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2の、好ましくは、2~3倍である。厚さt3が厚さt2の2倍以上であることで、タイヤ軸方向の中央側と端部側とにおける歪みをバランスよく分散することができる。厚さt3が厚さt2の3倍以下であることで、タイヤ軸方向の端部側に過度な歪みが発生することを抑制することができる。
【0029】
図1に示されるように、より好ましい態様として、トレッドリング2は、例えば、ゴム等の弾性体により、円筒状に形成されている。トレッドリング2は、走行時に路面に接地する接地面2aに複数の溝10が形成されるのが望ましい。接地面2aは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ブロック状のものであってもよく、複数の凹部が形成されていてもよい。
【0030】
図1及び図2に示されるように、ハブ3は、例えば、金属等の非弾性体により形成されている。ハブ3は、車軸に固定される円盤状の固定部3aと、スポーク4に連結される円筒状の円筒部3bとを有するのが望ましい。ハブ3の固定部3aは、例えば、複数の固定用孔が形成されている。ハブ3の固定部3aは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、専用の車軸に対して、ワンタッチで取付可能なものであってもよい。
【0031】
スポーク4は、例えば、熱硬化性樹脂等の弾性を有する樹脂により形成されている。本実施形態のスポーク4は、複数のスポーク板部5と、ハブ3に連結される内側円筒部11と、トレッドリング2に連結される外側円筒部12とを含んでいる。このようなスポーク4は、ハブ3及びトレッドリング2に強固に連結することができ、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。なお、スポーク4は、例えば、内側円筒部11と外側円筒部12とが省略されて、スポーク板部5が直接トレッドリング2及びハブ3に連結されてもよい。
【0032】
図1及び図3に示されように、スポーク板部5は、例えば、内側円筒部11及び外側円筒部12に曲面部5aを介して一体的に形成される。なお、内側円筒部11と外側円筒部12とが省略される場合は、スポーク板部5は、トレッドリング2及びハブ3に曲面部5aを介して連結されるのが望ましい。このような曲面部5aは、応力集中を緩和することができ、エアレスタイヤ1の耐久性能をより向上させ得る。
【0033】
スポーク板部5は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜して配されている。スポーク板部5のタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、好ましくは、2~10°である。傾斜角度が2°以上であることで、タイヤ周方向における剛性を向上し、エアレスタイヤ1の耐久性能が向上させることができる。傾斜角度が10°以下であることで、タイヤ周方向における剛性が過多となることを抑制し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0034】
図3に示されるように、本実施形態の第2縁部7は、第3縁部8に対して鋭角かつ第4縁部9に対して鈍角に延びている。すなわち、第2縁部7は、第3縁部8に対して鋭角の角度θ3を有し、かつ、第1縁部6に対して鈍角の角度θ4を有する端縁である。このようなスポーク板部5は、接地時の衝撃吸収性と高い剛性とを両立することに好適であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能と耐久性能とを両立させることができる。
【0035】
第2縁部7と第3縁部8とのなす角度θ3は、第1縁部6と第4縁部9とのなす角度θ2に等しいのが望ましい。第2縁部7と第4縁部9とのなす角度θ4は、第1縁部6と第3縁部8とのなす角度θ1に等しいのが望ましい。このため、スポーク板部5は、スポーク厚さ方向から見て、略平行四辺形状をなしている。
【0036】
図4に示されるように、本実施形態の第2縁部7の厚さt4は、第3縁部8から第4縁部9にかけて漸減している。このようなスポーク板部5は、第2縁部7の応力が集中し易いタイヤ軸方向の中央側である第4縁部9側の厚さt5が小さく変形し易いので、第2縁部7のタイヤ軸方向の中央側の歪みを緩和し、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0037】
また、このようなスポーク板部5は、第1縁部6の厚さt4が漸減しているので、応力の局所的な変化を抑制し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。このため、本実施形態のエアレスタイヤ1は、乗り心地性能と耐久性能とを高次元で両立することができる。
【0038】
第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5は、好ましくは、1.5mm以上である。厚さt5が1.5mm以上であることで、スポーク4に必要な剛性を維持し、早期に破断することを抑制することができる。このような観点から、第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5は、より好ましくは、2.0mm以上であり、さらに好ましくは、2.5mm以上である。
【0039】
第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5は、好ましくは、4.0mm以下である。厚さt5が4.0mm以下であることで、第2縁部7のタイヤ軸方向の中央側の歪みを緩和し、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5は、より好ましくは、3.5mm以下であり、さらに好ましくは、3.0mm以下である。
【0040】
第2縁部7の第3縁部8側の厚さt6は、第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5の、好ましくは、2~3倍である。厚さt6が厚さt5の2倍以上であることで、タイヤ軸方向の中央側と端部側とにおける歪みをバランスよく分散することができる。厚さt6が厚さt5の3倍以下であることで、タイヤ軸方向の端部側に過度な歪みが発生することを抑制することができる。
【0041】
第2縁部7の第4縁部9側の厚さt5は、例えば、第1縁部6の第3縁部8側の厚さt2に等しい。第2縁部7の第3縁部8側の厚さt6は、例えば、第1縁部6の第4縁部9側の厚さt3に等しい。このようなスポーク板部5は、タイヤ半径方向のバランスが良好であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0042】
図5は、図3のA方向から見たスポーク板部5の端面図である。図4及び図5に示されるように、本実施形態の第3縁部8の厚さt7は、第2縁部7から第1縁部6にかけて漸減している。このようなスポーク板部5は、第3縁部8の厚さt7が漸減しているので、応力の局所的な変化を抑制し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0043】
図6は、図3のB方向から見たスポーク板部5の端面図である。図4及び図6に示されるように、本実施形態の第4縁部9の厚さt8は、第1縁部6から第2縁部7にかけて漸減している。このようなスポーク板部5は、第4縁部9の厚さt8が漸減しているので、応力の局所的な変化を抑制し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0044】
図3ないし図6に示されるように、本実施形態のスポーク板部5のそれぞれは、スポーク幅方向から見て、タイヤ周方向の一方に突出するように湾曲する第1湾曲部13と、タイヤ周方向の他方に突出するように湾曲する第2湾曲部14とを含んでいる。
【0045】
第1湾曲部13は、例えば、第1縁部6側に配される。第2湾曲部14は、例えば、第2縁部7側に配される。本実施形態の第1湾曲部13及び第2湾曲部14は、それぞれ、第3縁部8から第4縁部9にわたり形成されている。このようなスポーク板部5は、第1湾曲部13と第2湾曲部14とが変形することにより、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0046】
本実施形態の第1湾曲部13及び第2湾曲部14は、それぞれ、第3縁部8から第4縁部9にわたり略同一の振幅を有している。第1湾曲部13及び第2湾曲部14のそれぞれの振幅は、好ましくは、2~12mmである。
【0047】
第1湾曲部13及び第2湾曲部14の振幅が2mm以上であることで、接地時の衝撃を確実に吸収し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。このような観点から、第1湾曲部13及び第2湾曲部14の振幅は、より好ましくは、3mm以上、さらに好ましくは、5mm以上である。
【0048】
第1湾曲部13及び第2湾曲部14の振幅が12mm以下であることで、剛性の低下を抑制し、エアレスタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、第1湾曲部13及び第2湾曲部14の振幅は、より好ましくは、10mm以下、さらに好ましくは、8mm以下である。
【0049】
本実施形態のスポーク板部5のそれぞれは、第1湾曲部13と第2湾曲部14とを接続する接続部15を含んでいる。接続部15は、例えば、第3縁部8から第4縁部9にかけて、スポーク幅方向に直線状に延びている。このような接続部15は、第1湾曲部13と第2湾曲部14との間の歪みを緩和し、エアレスタイヤ1の乗り心地性能と耐久性能とを両立させることに役立つ。
【0050】
第1縁部6から接続部15までのタイヤ半径方向の距離L1は、第2縁部7から接続部15までのタイヤ半径方向の距離L2に等しいのが望ましい。このようなスポーク板部5は、タイヤ半径方向のバランスが良好であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。なお、距離L1と距離L2とは、例えば、互いに異なるものであってもよい。
【0051】
図7は、図2のC-C線の断面図である。図1及び図7に示されるように、本実施形態のスポーク板部5は、タイヤ軸方向の一方側へ傾斜する第1スポーク板部5Aと、第1スポーク板部5Aとは反対側に傾斜する第2スポーク板部5Bとを含んでいる。このようなスポーク板部5は、タイヤ軸方向の剛性バランスが良好であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能と耐久性能とを両立させることができる。
【0052】
第1スポーク板部5Aと第2スポーク板部5Bとは、タイヤ周方向に交互に配されるのが望ましい。スポーク板部5は、第1スポーク板部5Aと第2スポーク板部5Bとで1対としたとき、好ましくは、タイヤ周方向に20~30対が配される。このようなスポーク板部5は、タイヤ周方向の剛性バランスが良好であり、エアレスタイヤ1の乗り心地性能と耐久性能とを両立させることができる。
【0053】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0054】
図1の基本構造を有するエアレスタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、乗り心地性能と耐久性能とがテストされた。主な共通仕様及びテスト方法は、次のとおりである。
【0055】
<共通仕様>
トレッドリング幅 : 145mm
トレッドリング外径 : 588mm
トレッドリング内径 : 537mm
ハブ外径 : 14インチ
スポーク本数 : 24対
スポーク板部の傾斜角度 : 4°
第1湾曲部及び第2湾曲部の振幅: 6mm
【0056】
<乗り心地性能>
乗り心地性能を示す代表的な指標として、荷重3.0kNでの縦バネ定数が測定された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が小さいほど、乗り心地性能が良好であることを示す。
【0057】
<耐久性能>
ドラム試験機を用い、荷重3.0kN、速度60km/hの条件で、エアレスタイヤに損傷が生じるまでの走行距離が測定された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きいほど、耐久性が優れていることを示す。
【0058】
テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0059】
テストの結果、実施例のエアレスタイヤは、比較例に対して、乗り心地性能と耐久性能とを向上させており、乗り心地性能と耐久性能とを高次元で両立していることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1 エアレスタイヤ
2 トレッドリング
2a 接地面
3 ハブ
4 スポーク
5 スポーク板部
6 第1縁部
7 第2縁部
8 第3縁部
9 第4縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7