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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20240528BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240528BHJP
   F25J 1/00 20060101ALN20240528BHJP
   F25J 1/02 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
F25B43/00 E
F25B1/00 396D
F25B43/00 K
F25B1/00 385A
F25B1/00 331G
F25J1/00 B
F25J1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136200
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032438
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓也
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187231(WO,A1)
【文献】特開2016-114308(JP,A)
【文献】特表2008-530511(JP,A)
【文献】米国特許第05377501(US,A)
【文献】独国特許発明第00946720(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象流体を冷却する冷却システムであって、
二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、
前記圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、
前記混合器で生成された前記混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、
前記減圧部で冷却された前記混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて前記圧縮機に供給する気液分離器と、
前記気液分離器から導出された前記混合冷媒と前記対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、
前記気液分離器は、
前記混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、
前記分離空間で分離された気体の二酸化炭素を前記中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、
前記分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに前記混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、
前記気化成分導出配管の下流側の一部は、複数の分岐管であり、
複数の前記分岐管のそれぞれの一部は、前記中空槽のうち前記貯留領域を内側に有する貯留壁と接触前記貯留壁を貫通して前記貯留領域に位置する、冷却システム。
【請求項2】
前記貯留領域に位置する複数の前記分岐管は、互いに鉛直方向に沿って並ぶ、請求項に記載の冷却システム。
【請求項3】
複数の前記分岐管は、前記貯留壁を貫通して前記中空槽の内部から外部に露出し、前記中空槽よりも下流側で1つの前記気化成分導出配管に収束する、請求項又はに記載の冷却システム。
【請求項4】
対象流体を冷却する冷却システムであって、
二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、
前記圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、
前記混合器で生成された前記混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、
前記減圧部で冷却された前記混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて前記圧縮機に供給する気液分離器と、
前記気液分離器から導出された前記混合冷媒と前記対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、
前記気液分離器は、
前記混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、
前記分離空間で分離された気体の二酸化炭素を前記中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、
前記分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに前記混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、
前記気化成分導出配管の下流側の部は、二酸化炭素の流通方向を少なくとも1回逆転させる蛇行管であり、
前記蛇行管に含まれる複数の直線部のそれぞれの一部は、前記中空槽のうち前記貯留領域を内側に有する貯留壁と接触し、前記貯留壁を貫通して前記貯留領域に位置する、却システム。
【請求項5】
前記貯留領域に位置する複数の前記直線部は、互いに鉛直方向に沿って並ぶ、請求項に記載の冷却システム。
【請求項6】
対象流体を冷却する冷却システムであって、
二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、
前記圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、
前記混合器で生成された前記混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、
前記減圧部で冷却された前記混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて前記圧縮機に供給する気液分離器と、
前記気液分離器から導出された前記混合冷媒と前記対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、
前記気液分離器は、
前記混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、
前記分離空間で分離された気体の二酸化炭素を前記中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、
前記分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに前記混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、
前記気化成分導出配管の下流側の部は、前記中空槽のうち前記貯留領域を内側に有する貯留壁と接触し、前記貯留壁の外面に巻かれる螺旋管である、却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素(CO)を冷媒として用いる冷却システムがある。二酸化炭素は、三重点(-56.6℃)以下の温度となると、一部が固体(ドライアイス)となる。そのため、冷却システム内で冷媒が低温となったときに冷媒中に固体が生成されると、配管閉塞や、二酸化炭素の気化量のばらつきなどを生じさせるおそれがある。特許文献1は、このような二酸化炭素の固体生成を抑えることができる、二酸化炭素に他の成分からなる溶媒を混合させた混合冷媒を用いる冷却システムに関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/187231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合冷媒が、主冷媒成分としての二酸化炭素と、二酸化炭素よりも沸点が高い副冷媒成分としての溶媒を含む非共沸性の混合冷媒である場合、減圧時に、混合冷媒から二酸化炭素のみを気化させる気液分離が行われる。ここで、熱交換器に導入される混合冷媒をより効率よく低温とするためには、気液分離時に、二酸化炭素の分離をより促進させることが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、混合冷媒からの気体の二酸化炭素の分離をより促進させるのに有利となる冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、対象流体を冷却する冷却システムであって、二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、混合器で生成された混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、減圧部で冷却された混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて圧縮機に供給する気液分離器と、気液分離器から導出された混合冷媒と対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、気液分離器は、混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、分離空間で分離された気体の二酸化炭素を中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、気化成分導出配管の下流側の一部は、複数の分岐管であり、複数の分岐管のそれぞれの一部は、中空槽のうち貯留領域を内側に有する貯留壁と接触貯留壁を貫通して貯留領域に位置する当該冷却システムでは、貯留領域に位置する複数の分岐管は、互いに鉛直方向に沿って並んでもよい。複数の分岐管は、貯留壁を貫通して中空槽の内部から外部に露出し、中空槽よりも下流側で1つの気化成分導出配管に収束してもよい。
【0007】
本開示の第2の態様は、対象流体を冷却する冷却システムであって、二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、混合器で生成された混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、減圧部で冷却された混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて圧縮機に供給する気液分離器と、気液分離器から導出された混合冷媒と対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、気液分離器は、混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、分離空間で分離された気体の二酸化炭素を中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、気化成分導出配管の下流側の部は、二酸化炭素の流通方向を少なくとも1回逆転させる蛇行管であり、蛇行管に含まれる複数の直線部のそれぞれの一部は、中空槽のうち貯留領域を内側に有する貯留壁と接触し、貯留壁を貫通して貯留領域に位置する当該冷却システムでは、貯留領域に位置する複数の直線部は、互いに鉛直方向に沿って並んでもよい。更に、本開示の第3の態様は、対象流体を冷却する冷却システムであって、二酸化炭素を昇圧する圧縮機と、圧縮機で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒を生成する混合器と、混合器で生成された混合冷媒を減圧することにより冷却する減圧部と、減圧部で冷却された混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離させて圧縮機に供給する気液分離器と、気液分離器から導出された混合冷媒と対象流体とで熱交換させる熱交換器と、を備え、気液分離器は、混合冷媒を収容する分離空間を有する中空槽と、分離空間で分離された気体の二酸化炭素を中空槽の外部に導出させる気化成分導出配管と、を備え、分離空間は、二酸化炭素が分離されるときに混合冷媒が貯留される貯留領域を含み、気化成分導出配管の下流側の部は、中空槽のうち貯留領域を内側に有する貯留壁と接触し、貯留壁の外面に巻かれる螺旋管である
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、混合冷媒からの気体の二酸化炭素の分離をより促進させるのに有利となる冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る冷却システムの構成を示す概略図である。
図2】一実施形態における第1気液分離器の構成例を示す斜視図である。
図3】一実施形態における第1気液分離器の他の構成例を示す斜視図である。
図4】一実施形態における第1気液分離器の他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る冷却システム1の構成を示す概略図である。冷却システム1は、天然ガス液化装置や各種の冷凍装置などに採用されるものであり、冷却の対象となる対象流体も特に限定されるものではない。以下、冷却システム1での対象流体は、一例として、常温状態の天然ガスである。
【0012】
また、冷却システム1で採用される冷媒は、主冷媒成分としての二酸化炭素と、二酸化炭素よりも沸点が高い副冷媒成分としての溶媒を含む非共沸性の混合冷媒である。溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン等の液体であるが、これらに限定されない。冷媒として二酸化炭素を利用することは、二酸化炭素が非可燃性流体であるという安全性、又は、非フロン系流体であるという環境適合性などの観点から望ましい。また、冷媒として二酸化炭素を利用する場合であっても、上記のような混合冷媒として利用されることで、低温時に、冷媒中に固体すなわちドライアイスが生成されることを抑えることができる。
【0013】
冷却システム1は、圧縮機2と、冷却器3と、熱交換器4と、混合器5と、減圧部6と、第1気液分離器7と、第2気液分離器8とを備える。
【0014】
圧縮機2は、駆動装置としてのモータ2aを備え、導入された二酸化炭素を昇圧する。圧縮機2では、二酸化炭素は、例えば、約0.5MPaGから約10MPaGまで昇圧される。以下、圧縮機2により昇圧された二酸化炭素を「昇圧二酸化炭素」と表記する。
【0015】
冷却器3は、圧縮機2の下流側に設けられ、圧縮機2により昇圧されて高温となった昇圧二酸化炭素を冷却水等により冷却する。冷却器3を通過した昇圧二酸化炭素の温度は、例えば、約40℃である。
【0016】
熱交換器4は、本実施形態では、一例としてプレートフィン型のマルチストリーム熱交換器である。熱交換器4は、例えば、第1流路4a、第2流路4b、第3流路4c、第4流路4d及び第5流路4eを含む。第1流路4aは、天然ガスを流通させる流路である。第2流路4bは、減圧部6で減圧されるとともに、主に二酸化炭素の気化により冷却され、第1気液分離器7で気体の二酸化炭素が分離された混合冷媒(約-55℃)を流通させる流路である。第2流路4bに混合冷媒が供給される方向は、第1流路4aに天然ガスが供給される方向と反対である。第3流路4cは、第1気液分離器7で分離した気体の二酸化炭素(約-55℃)を流通させる流路である。第3流路4cに二酸化炭素が供給される方向は、第1流路4aに天然ガスが供給される方向と反対である。第4流路4dは、溶媒を流通させる流路である。約35℃で第4流路4dに導入された溶媒は、第4流路4dを通過することにより、約-45℃まで冷却される。第4流路4dに溶媒が供給される方向は、第1流路4aに天然ガスが供給される方向と同一である。第5流路4eは、昇圧二酸化炭素を流通させる流路である。約40℃、約10MPaGで第5流路4eに導入された昇圧二酸化炭素は、第5流路4eを通過することにより、約-45℃まで冷却される。第5流路4eに昇圧二酸化炭素が供給される方向は、第1流路4aに天然ガスが供給される方向と同一である。
【0017】
混合器5は、熱交換器4の第4流路4dと第5流路4eとのそれぞれの出口側に接続され、第4流路4dから導出された溶媒と、第5流路4eから導出された昇圧二酸化炭素とを混合し、混合冷媒を生成する。
【0018】
減圧部6は、混合器5から導出され、混合器5の下流側にある第1気液分離器7に導入される混合冷媒を約10MPaGから約0.5MPaGまで減圧し、低温とする。減圧部6は、例えば、混合器5から第1気液分離器7へとつながる配管の途中に設けられたバルブであってもよい。
【0019】
第1気液分離器7は、減圧部6の下流側に設けられ、約-55℃程度に冷却された混合冷媒から気体の二酸化炭素を分離する。第1気液分離器7で分離した気体の二酸化炭素は、熱交換器4の第3流路4cに供給される。一方、第1気液分離器7で気体の二酸化炭素が分離された混合冷媒は、第1ポンプ9の駆動により、熱交換器4の第2流路4bに供給される。第1気液分離器7の具体的構成等については、以下で詳説する。
【0020】
第2気液分離器8は、熱交換器4の第2流路4bと第3流路4cのそれぞれの出口側に接続され、液体の溶媒と気体の二酸化炭素とを互いに分離させる。第2気液分離器8で分離した気体の二酸化炭素は、圧縮機2に供給される。一方、第2気液分離器8で分離した溶媒は、第2ポンプ10の駆動により、熱交換器4の第4流路4dに供給される。
【0021】
上記のような構造を有する冷却システム1は、熱交換器4の第1流路4aに天然ガスを流通させることで、常温(約25℃)から約-50℃まで天然ガスを冷却することができる。特に、冷却システム1によれば、熱交換器4において、減圧により気化した二酸化炭素で昇圧二酸化炭素を冷却することができるので、エネルギー効率を向上させるのに有利となる。また、冷却システム1によれば、熱交換器4において溶媒を冷却することもできるので、二酸化炭素との混合前の溶媒を二酸化炭素と同程度の温度にまで冷却し、結果として混合冷媒の温度をより低下させることができる。
【0022】
次に、本実施形態における第1気液分離器7の構成について、具体的に説明する。
【0023】
図2は、第1気液分離器7の構成を示す斜視図である。第1気液分離器7は、減圧部6から供給された混合冷媒Rを収容する分離空間S1を有する中空槽20を備える。中空槽20は、それぞれ例えばアルミニウム系の材料からなる、側壁20aと、上壁20bと、下壁20cとを含む。側壁20aの形状は、図中のZ方向に相当する鉛直方向に沿った軸を中心軸とした円筒形状である。ただし、中空槽20全体の大きさを含め、側壁20aの形状は、特に限定されるものではなく、例えば角型形状であってもよい。
【0024】
ここで、二酸化炭素が分離されるとき、減圧部6から供給された混合冷媒Rは、分離空間S1全体に満たされるのではなく、分離空間S1で気化された二酸化炭素を充満させる領域を残したまま、ある程度の高さ位置で液面を維持するように貯留される。以下、分離空間S1において二酸化炭素が分離されるときに混合冷媒Rが貯留される領域を「貯留領域S2」という。
【0025】
中空槽20には、混合冷媒Rの流通経路として、冷却システム1にそれぞれ含まれる混合冷媒導入配管11と液体成分導出配管12とが接続されている。なお、図2では、混合冷媒Rの進行方向が黒塗りの矢印で示されている。
【0026】
混合冷媒導入配管11は、図1に示すように減圧部6と中空槽20とを接続し、混合冷媒Rを減圧部6から中空槽20内の分離空間S1に導入させる。中空槽20における混合冷媒導入配管11の接続位置は、図2に示すように、側壁20aのうち、貯留領域S2にある混合冷媒Rの液面よりも上方に設定される。
【0027】
液体成分導出配管12は、図1に示すように中空槽20と第1ポンプ9とを接続し、気体の二酸化炭素が分離された混合冷媒Rとしての液体成分を中空槽20から熱交換器4の第2流路4bに向けて導出させる。中空槽20における液体成分導出配管12の接続位置は、下壁20cのおおよそ中心位置に設定される。
【0028】
一方、第1気液分離器7は、混合冷媒Rから分離された気体の二酸化炭素としての気化成分を中空槽20の外部に導出させる気化成分導出配管21を備える。中空槽20における気化成分導出配管21の接続位置は、上壁20bのおおよそ中心位置に設定される。なお、図2では、気体の二酸化炭素の進行方向が白抜きの矢印で示されている。
【0029】
気化成分導出配管21を通じて導出された気体の二酸化炭素は、最終的には、冷却システム1に含まれる気体供給配管13を通じて熱交換器4の第3流路4cに供給される。ただし、本実施形態では、気化成分導出配管21は、気体供給配管13に接続される前に、中空槽20に戻る。つまり、気化成分導出配管21の下流側の一部は、中空槽20のうち貯留領域S2を内側に有する貯留壁20aと接触する。貯留壁20aは、すなわち、中空槽20の側壁20aの一部である。
【0030】
より具体的には、気化成分導出配管21は、上流側の一部である本管21aと、下流側の一部である複数の分岐管とを含む。図2に示す例では、複数の分岐管は、3つの分岐管、すなわち、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dである。
【0031】
本管21aの上流側の一端は、中空槽20の上壁20bに接続され、本管21aの下流側の一端は、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dの前端部に接続される。つまり、中空槽20の分離空間S1から導出された気体の二酸化炭素は、まず、本管21aを通じて第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dに導入され、分配される。
【0032】
第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dは、それぞれ、貯留壁20aを貫通して中空槽20の内部に進入し、貯留壁20aを再度、貫通して中空槽20の外部に露出する。第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dのうち、少なくとも貯留領域S2に位置する部分は、互いに鉛直方向に沿って並んでいる。
【0033】
ここで、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dのそれぞれの一部は、貯留領域S2に位置する。したがって、このような構成によれば、貯留領域S2にある混合冷媒Rと、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dを流通している気体の二酸化炭素との間で熱交換が行われることになる。
【0034】
そして、中空槽20から露出した第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dの後端部は、1つの気化成分導出配管21として収束し、気体供給配管13に接続される。
【0035】
次に、本実施形態に係る冷却システム1の作用及び効果について説明する。
【0036】
対象流体を冷却する冷却システム1は、二酸化炭素を昇圧する圧縮機2と、圧縮機2で昇圧された二酸化炭素に溶媒を混合させた混合冷媒Rを生成する混合器5と、混合器5で生成された混合冷媒Rを減圧することにより冷却する減圧部6とを備える。冷却システム1は、減圧部6で冷却された混合冷媒Rから気体の二酸化炭素を分離させて圧縮機2に供給する気液分離器を備える。また、冷却システム1は、気液分離器から導出された混合冷媒Rと対象流体とで熱交換させる熱交換器4を備える。気液分離器は、混合冷媒Rを収容する分離空間S1を有する中空槽20と、分離空間S1で分離された気体の二酸化炭素を中空槽20の外部に導出させる気化成分導出配管21とを備える。分離空間S1は、二酸化炭素が分離されるときに混合冷媒Rが貯留される貯留領域S2を含む。気化成分導出配管21の下流側の一部は、中空槽20のうち貯留領域S2を内側に有する貯留壁20aと接触する。
【0037】
ここで、気液分離器は、図1及び図2を用いて説明した冷却システム1の構成例における第1気液分離器7に相当する。
【0038】
第1気液分離器7の分離空間S1で行われる気液分離では、分離駆動力は、圧力差であり、特に気液分離の初期段階では混合冷媒Rへの二酸化炭素の溶解度差である。この場合、二酸化炭素は、貯留領域S2にある混合冷媒R中から気化していくので、気化した二酸化炭素(以下、単に「気化成分」と表記する。)が分離されている混合冷媒R(以下、単に「液体成分」と表記する。)の温度は、気化熱により徐々に低下する。このとき、もし、圧力差が小さくなり、かつ、液体成分の温度低下が大きくなると、液体成分中の二酸化炭素の溶解度が高くなり、結果として十分な気化量を確保することが難しくなることも考えられる。
【0039】
これに対して、本実施形態では、気化成分導出配管21の下流側の一部を、貯留領域S2を内側に有する貯留壁20aと接触させる。気化成分導出配管21には、貯留領域S2にある液体成分よりも高温である気化成分が流通しているので、中空槽20から外部に導出された気化成分と、液体成分との間で、気化成分導出配管21及び貯留壁20aを介した熱交換が行われる。これにより、貯留領域S2内の混合冷媒Rでの二酸化炭素を主とした蒸発熱が気化成分側の顕熱で補われることになるため、貯留領域S2内の液体成分の温度が上昇する。その結果、二酸化炭素の気化をより促進させることができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、混合冷媒Rからの気体の二酸化炭素の分離をより促進させるのに有利となる冷却システム1を提供することができる。
【0041】
また、冷却システム1では、気化成分導出配管21の下流側の一部は、貯留壁20aを貫通して貯留領域S2に位置してもよい。
【0042】
この冷却システム1によれば、貯留領域S2において、液体成分が気化成分導出配管21と直接接触することになるので、液体成分と、気化成分導出配管21を流通している気化成分との間での熱交換をより効率よく行わせることができる。
【0043】
また、冷却システム1では、気化成分導出配管21の下流側の一部は、複数の分岐管であってもよい。このとき、複数の分岐管のそれぞれの一部は、貯留壁20aを貫通して貯留領域S2に位置してもよい。
【0044】
ここで、複数の分岐管は、図2を用いて説明した第1気液分離器7の構成例における第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dに相当する。
【0045】
この冷却システム1によれば、例えば、貯留領域S2に位置する気化成分導出配管21の下流側の一部が1つのみである場合よりも、例えば同径の複数の分岐管を貯留領域S2に位置させることで、液体成分と気化成分との熱交換面積を大きくすることができる。つまり、分岐管は、2つあってもよいし、4つ以上あってもよい。
【0046】
また、冷却システム1では、貯留領域S2に位置する複数の分岐管は、互いに鉛直方向に沿って並んでもよい。
【0047】
貯留領域S2でいう鉛直方向は、混合冷媒Rの液面が変化する方向、すなわち、混合冷媒Rが増減する方向である。したがって、この冷却システム1によれば、分離空間S1における混合冷媒Rの貯留量が変化した場合でも、貯留領域S2において液体成分と気化成分との熱交換がなされにくくなる領域を減らすことができる。
【0048】
また、冷却システム1では、複数の分岐管は、貯留壁20aを貫通して中空槽20の内部から外部に露出し、中空槽20よりも下流側で1つの気化成分導出配管21に収束してもよい。
【0049】
この冷却システム1によれば、第1気液分離器7は、気化成分の供給対象、例えば、冷却システム1の上記の構成例でいう熱交換器4の第3流路4cに対して、気体供給配管13を介して1つの気化成分導出配管21で接続される。したがって、第1気液分離器7の構成、ひいては冷却システム1の構成の簡素化に有利となる。
【0050】
ここで、本実施形態における第1気液分離器7に関して、液体成分と接する気化成分導出配管21の下流側の一部の設置本数や管径などは、適宜、変更可能である。
【0051】
例えば、分岐管の設置本数を適宜変更することで、第1気液分離器7で分離対象となる二酸化炭素の濃度値や、混合冷媒Rの温度や圧力などの各種条件に合わせて、液体成分と気化成分との間で適切な熱交換を行わせることができる。つまり、液体成分と気化成分との間で適切な熱交換を行わせることができるのならば、液体成分と接する気化成分導出配管21の下流側の一部の本数は1つでもよい。また、図2に示す例では、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dの3つの分岐管が鉛直方向に沿って1列に並んでいるが、鉛直方向に沿った更に複数の分岐管列が存在するものとしてもよい。
【0052】
また、第1分岐管21b、第2分岐管21c及び第3分岐管21dのような複数の分岐管が存在する場合、各分岐管の管径は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、隣り合う分岐管同士の間隔も、一定であってもよいし、分岐管同士ごとに異なっていてもよい。
【0053】
また、冷却システム1が備える、減圧部6で冷却された混合冷媒Rから気体の二酸化炭素を分離させて圧縮機2に供給する気液分離器の具体的構成は、図2に示したような第1気液分離器7の構成に限られない。
【0054】
図3は、第1気液分離器7の他の構成例としての第1気液分離器17を示す概略図である。第1気液分離器17では、図2に示す第1気液分離器7と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
第1気液分離器17は、図2に示す第1気液分離器7での気化成分導出配管21に代えて、下流側の一部が、気化成分の流通方向を少なくとも1回逆転させる蛇行管22bである気化成分導出配管22を備える。具体的には、気化成分導出配管22は、上流側の一部である本管22aと、下流側の一部である複数の直管部を含む蛇行管22bとを含む。図3に示す例では、複数の直管部は、3つの直管部、すなわち、第1直管部22c、第2直管部22d及び第3直管部22eである。この場合、本管22a、第1直管部22c、第2直管部22d及び第3直管部22eは、それぞれ連続して繋がる。そして、第3直管部22eの後端は、気体供給配管13に接続される。
【0056】
第1直管部22cの設置位置に対して、第2直管部22dは、第2直管部22dを流通する気化成分の流通方向が第1直管部22cを流通する気化成分の流通方向とは反対となるように設置される。同様に、第2直管部22dの設置位置に対して、第3直管部22eは、第3直管部22eを流通する気化成分の流通方向が第2直管部22dを流通する気化成分の流通方向とは反対となるように設置される。そして、第1直管部22c、第2直管部22d及び第3直管部22eのそれぞれの一部は、貯留壁20aを貫通して貯留領域S2に位置する。
【0057】
このような第1気液分離器17によれば、貯留領域S2に位置する複数の直管部は、図2に示す第1気液分離器7における複数の分岐管と同等に機能する。つまり、図3に示す例で言えば、貯留領域S2にある液体成分と、第1直管部22c、第2直管部22d及び第3直管部22eを連続的に流通する気化成分との間で熱交換を行わせることができる。
【0058】
また、第1気液分離器17においても、貯留領域S2に位置する複数の直線部は、互いに鉛直方向に沿って並んでもよい。このような第1気液分離器17を備えた冷却システム1によっても、分離空間S1における混合冷媒Rの貯留量が変化した場合でも、貯留領域S2において液体成分と気化成分との熱交換がなされにくくなる領域を減らすことができる。
【0059】
図4は、第1気液分離器7の他の構成例としての第1気液分離器27を示す概略図である。第1気液分離器27では、図2に示す第1気液分離器7と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
第1気液分離器27は、図2に示す第1気液分離器7での気化成分導出配管21に代えて、下流側の一部が貯留壁30aの外面に巻かれる螺旋管31bである気化成分導出配管31を備える。この場合、まず、第1気液分離器27に備わる中空槽30の概略形状は、図2等に示す中空槽20の概略形状と同等であるが、気化成分導出配管31を貯留壁20aに貫通させないので、中空槽20よりも簡素化される。つまり、中空槽30は、中空槽20における側壁20a、貯留壁20a、上壁20b及び下壁20cにそれぞれ対応した側壁30a、貯留壁30a、上壁30b及び下壁30cを有するが、側壁20aには気化成分導出配管31を貫通させる穴は存在しない。
【0061】
一方、気化成分導出配管31は、上流側の一部である本管31aと、下流側の一部である螺旋管31bとを含む。螺旋管31bの後端は、気体供給配管13に接続される。螺旋管31bは、貯留壁30aに接触している。
【0062】
このような第1気液分離器27によれば、気化成分導出配管31には気化成分が流通しているので、中空槽30から外部に導出された気化成分と、貯留領域S2にある液体成分との間で、螺旋管31b及び貯留壁30aを介した熱交換を行わせることができる。
【0063】
また、螺旋管31bの巻き数についても、第1気液分離器27で分離対象となる二酸化炭素の濃度値や、混合冷媒Rの温度や圧力などの各種条件に合わせて、液体成分と気化成分との間で適切な熱交換を行わせることができるような巻き数に適宜設定してよい。
【0064】
なお、図1を用いて説明した冷却システム1の基本構成は、第1気液分離器7等を適用させることができる冷却システムの例示である。したがって、例えば、第1気液分離器7等から供給された気体の二酸化炭素(気化成分)は、熱交換器4を介さずに、直接、圧縮機2又は第2気液分離器8に導入されるような構成もあり得る。
【0065】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記の実施形態のすべての構成要素、および請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 冷却システム
2 圧縮機
5 混合器
6 減圧部
7 第1気液分離器
17 第1気液分離器
27 第1気液分離器
20 中空槽
20a 貯留壁
21 気化成分導出配管
21b 第1分岐管
21c 第2分岐管
21d 第3分岐管
22 気化成分導出配管
22b 蛇行管
22c 第1直管部
22d 第2直管部
22e 第3直管部
30 中空槽
30a 貯留壁
31 気化成分導出配管
31b 螺旋管
混合冷媒
S1 分離空間
S2 貯留領域
図1
図2
図3
図4